密 教 文 化
チ
ャ
ン
デ
ィ
・
ム
ン
ド
ゥ
ー
の
八
大
菩
薩
松
長
恵
史
イ ン ド ネ シ ア 諸 島 は、 約 二 二 〇 〇 〇 の 島 々 に よ っ て 構 成 さ れ て い る。 こ れ ら の 島 々 は 東 西 約 五 〇 〇 〇 キ ロ、 南 北 約 一 八 〇 〇 〇 キ ロ に も 及 ぶ。 イ ン ド ネ シ ア 諸 島 は 地 理 的 に 海 洋 交 通 の 要 所 に 当 た り、 比 較 的 早 い 周 期 で 東 西 の 文 化 が 流 入 し て き た。 そ れ ゆ え に 数 々 の 文 化 が 複 合 化 し、 独 自 の 文 化 を 作 り あ げ て い る。 ジ ャ ワ 島 は 東 西 に 長 い 島 で、 お も に 西 部 ・ 中 部 ・ 東 部 の 三 つ の 文 化 圏 に 分 割 で き る。 中 部 ジ ャ ワ に は、 密 教 お よ び ヒ ン ド ゥ ー 教 の 遺 跡 が 一 四 か 所 に 存 在 す る。 こ れ ら の 遺 跡 は、 通 常 ﹁ チ ャ ン デ ィ ﹂ と 呼 ば れ る。 こ れ ら の ﹁ チ ャ ン デ ( 1) イ ﹂ は、 図 像 学 的 見 地 か ら 多 く の 研 究 が 行 わ れ て い る。 そ の 中 で も、 フ ラ ン ス の 学 者A・フ ー シ ェ の 研 究 お よ び、 佐 ( 2) ( 3) ( 4) 和 隆 研 博 士 ・ 高 田 修 博 士 の ま と ま っ た 研 究 が あ る。 ま た、 千 原 大 五 郎 氏 は 建 築 学 の 立 場 か ら 考 察 を 加 え て い る。 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー は、 中 部 ジ ャ ワ の 中 心 都 市 で あ る ジ ョ ク ジ ャ カ ル タ の 北 西 に 位 置 し て い る。 こ の 遺 跡 の 約 三 キ ロ 西 方 に は、 チ ャ ン デ ィ ・ ボ ル ブ ド ー ル、 さ ら に、 こ れ ら 両 遺 跡 の ほ ぼ 中 央 に は チ ャ ン デ ィ ・ パ オ ン が あ る。 こ れ ら 三 つ の チ ャ ン デ ィ は 一 直 線 に 位 置 し て お り、 一 つ の 遺 跡 グ ル ー プ と 考 え ら れ て い る。 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー は、 他 の 中 部 ジ ャ ワ の 遺 跡 と 同 様 に 安 山 岩 の ブ ロ ッ ク 状 の 切 り 石 を 積 み 上 げ て 建 造 さ れ て い る。 こ の 石 積 み 建 築 は 一 八 三 四 年 ま で は 土 中 に 埋 ま っ て い た が、 一 八 九 七 年 か ら 一 九 〇 八 年 に か け て 修 復 さ れ、 今 日 の 姿 と な っ た。 し か し、現 存 の 建 築 物 の 内 部 に 小 さ な 建 築 物 を 含 み、 現 在 目 に す る 建 築 は 後 に 増 広 さ れ た も の で あ る。 こ の 遺 跡 は、 五 〇 メ ー ト ル ×一 一 〇 メ ー ト ル の 敷 地 内 の 南 側 に 位 置 し て お り、 現 在 は 残 っ て い な い が、 そ の 北 側 に は 木 造 の ヴ ィ ハ ー ラ が あ っ た。 こ の 石 積 み 建 築 の 主 堂 の 基 壇 は 二 八 メ ー ト ル ×二 四 メ ー ト ル で、 頂 上 の ス ト ゥ ー パ は 現 存 し て い な い も の の、 全 高 が 二 六 ・ 五 メ ー ト ル あ っ た と 思 わ れ る。 ま た、 中 部 ジ ャ ワ の 仏 教 遺 跡 に 代 表 さ れ る ﹁ 飾 り ス ト ゥ ー パ ﹂ を 四 八 個 主 堂 の 上 に の せ て い る。 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 建 築 年 代 は 明 ら か で は な い が、 八 二 四 年 の 年 号 を も つ カ ラ ン テ ィ ナ ー 碑 文 の 内 容 か ら、 ( 5) 七 九 〇 年 か ら 八 〇 〇 年 頃 の 建 造 と さ れ て い る。 そ の 後 の 調 査 で チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 壁 の 一 部 よ り、 古 代 ジ ャ ワ 語 が 記 さ れ た 断 片 が 発 見 さ れ た。 そ の 文 字 が チ ャ ン デ ィ ・ ボ ル ブ ド ー ル か ら 発 見 さ れ た 文 字 と 共 通 性 を 持 つ こ と よ ( 6) り、 チ ャ ン デ ィ ・ ボ ル ブ ド ー ル の 建 築 年 代 と 同 時 期、 も し く は や や 早 い 時 期 の 建 築 と み な す 意 見 も あ る。 い ず れ に し て も、 八 世 紀 中 頃 か ら 九 世 紀 中 頃 に 中 部 ジ ャ ワ で 密 教 王 朝 と し て 勢 力 を 伸 ば し た シ ャ イ レ ー ン ド ラ 朝 の 建 立 で あ る と み な し て よ い で あ ろ う。 ( 7) チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 研 究 は そ れ ほ ど 多 く な い。 現 在 ま で の 研 究 と し て は、 フ ラ ン ス の A・フ ー シ ェ や イ ン ド ( 8) ( 9) ネ シ ア の ス デ ィ マ ン お よ び、 そ れ ら の 研 究 を ふ ま え た 伊 東 照 司 氏 の も の が あ る。 そ の ほ か に、 ロ ー ケ ー シ ュ ・ チ ャ ン (10) (11) ド ラ や 宇 治 谷 裕 顕 氏 の 他 の 遺 跡 も 含 め た 研 究 が あ る。 先 学 諸 氏 は、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 外 壁 面 に 浮 き 彫 り さ れ た 八 体 の 菩 薩 を 中 心 に そ の 論 を 進 め て い る。 し か し、 そ れ ら の 研 究 は、 八 体 の 菩 薩 を 一 つ の 集 合 体 と 見 て い な い も の も 含 め、 単 に 一 種 類 の 経 典 か ら 考 察 さ れ て い る も の が 多 い。 数 多 い 経 典 ・ 儀 軌 に 説 か れ て い る 八 大 菩 薩 の 種 類 や 配 列 の 考 察 を 行 っ た う え で、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 大 菩 薩 を 比 定 し た 研 究 は な い。 筆 者 は、 一 九 九 〇 年 に 二 度 に 渡 り、 中 部 ジ ャ ワ の 密 教 遺 跡 お よ び 遺 品 の 現 地 調 査 を 行 っ た。 こ の 小 論 で は、 そ の 現 地 調 査 の 結 果 を 踏 ま え て、 ま ず は、 文 献 資 料 に 説 か れ る 八 大 菩 薩 の 種 類 と 配 列 形 式 の 分 類 を 行 な う。 さ ら に、 イ ン ド ネ シ ア の 密 教 に 多 大 な 影 響 を 与 え た と 考 え ら れ る イ ン ド の 八 大 菩 薩 の 遺 品 と 比 較 す る こ と に よ り、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 入 大 菩 薩 の 考 察 を 行 う。 ( 一) 文 献 資 料 に み ら れ る 八 大 菩 薩 通 常、 八 尊 の 有 力 な 菩 薩 の 集 合 体 を 八 菩 薩 も し く は 八 大 菩 薩 と 呼 ぶ。 こ の 八 体 の 菩 薩 の 集 合 体 に つ い て は、 望 月 信 (12) (13) 亨 博 士 や 岩 鶴 密 雲 氏 の 研 究 が あ る。 (14) 最 近 の 研 究 と し て は、 頼 富 本 宏 博 士 の イ ン ド ・ チ ベ ッ ト ・ 中 国 の 広 範 囲 に わ た っ た 報 告 が あ げ ら れ る。 頼 富 本 宏 博 士 は、 八 尊 の 菩 薩 の 集 合 体 を イ ン ド を は じ め 中 国 ・ チ ベ ッ ト ・ 中 央 ア ジ ア ・ 東 南 ア ジ ア ・ 朝 鮮 半 島 ・ 日 本 に 見 出 だ し (15) (16) 得 る と さ れ て い る。 日 本 で は 醍 醐 寺 の 八 大 菩 薩 図 や、 東 寺 観 智 院 収 蔵 の 薬 師 如 来 を 中 尊 と す る 八 大 菩 薩 図 は よ く 知 ら れ て い る と こ ろ で あ る。 こ の よ う に、 八 大 菩 薩 の 集 合 体 は 多 種 多 様 で あ る と 考 え ら れ る が、 経 典 ・ 儀 軌 の 中 で は ど の よ う に 説 か れ る の で あ ろ う か。 ﹃ 大 正 新 脩 大 蔵経﹄のな か で 八 尊 の 菩 薩 の 集 合 体 を 見 出 だ す こ と の で き る 経典・儀 軌 は 四 四 本 あり、八 菩薩・も し
く は 八 大 菩 薩 の 呼 称 が 使 わ れ て い る。 こ れ ら 四 四 本 の 中 で 八 尊 の 菩 薩 の 名 称 を 示 す の は 三 七 本 あ り、 大 別 し て 七 つ の グ ル ー プ に 分 類 で き る。 そ れ ら の グ ル ー プ を 表 に 示 し て お く。 グ ル ープ(1) グル ープ(2) グル ープ(3) チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 グル ープ(4) グ ル ープ(5) グ ルー プ(6)
こ れ ら 経 典 ・ 儀 軌 の な か で、 八 尊 の 菩 薩 の 集 合 体 を 最 も 早 く 説 く の は、 一 七 九 年 支 婁 迦 識 訳 出 の ﹃ 般 舟 三 昧 経 ﹄ で あ る。 こ の 経 典 に あ ら わ れ る 菩 薩 は、 そ の 後 ﹃ 佛 説 灌 頂 七 萬 二 千 神 王 護 比 丘 呪 経 ﹄ 巻 第 八 ・ ﹃ 観 虚 空 蔵 菩 薩 経 ﹄ に 引 き 継 が れ る。 第 二 番 目 の グ ル ー プ は、 二 八 九 年 竺 法 護 訳 出 と さ れ る ﹃ 佛 説 離 垢 施 女 経 ﹄ に 記 述 さ れ、 ﹃ 大 宝 積 経 ﹄ 第 三 三 巻 の 無 垢 施 菩 薩 鷹 辮 会 ・ ﹃ 得 無 垢 女 経 ﹄ に 引 き 継 が れ る。 グル ープ(7) チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 第 三 番 目 の グ ル ー プ は、 薬 師 如 来 を 中 尊 と す る 八 大 菩 薩 の グ ル ー プ で あ る。 こ の グ ル ー プ は 畠 戸 梨 蜜 多 羅 の 三 一 七 年 か ら 三 二 二 年 の 訳 出 の ﹃ 佛 説 灌 頂 七 萬 二 千 神 王 護 比 丘 呪 経 ﹄ 巻 第 十 二 に 説 か れ る。 さ ら に 八 尊 の 菩 薩 名 は 記 述 さ れ て い な い が、 六 五 〇 年 に 玄 弉 が 訳 出 し た ﹃ 薬 師 琉 璃 光 如 来 本 願 功 徳 経 ﹄ と そ の 同 本 異 訳 で あ る 義 浄 の 七 〇 七 年 訳 出 の ﹃ 薬 師 琉 璃 光 七 佛 本 願 功 徳経﹄に 引 き 継 が れ る。 玄 弉 お よ び 義 浄 の 訳 経 に 示 さ れ る 八 大 菩 薩 は、 ﹃ 佛 説 灌 頂 七 萬 二 千 神 (17) 王 護 比 丘 呪 経 ﹄ 巻 第 一 二 か ら の 引 用 で あ る と 推 測 さ れ る。 ま た 八 大 菩 薩 の 配 列 に つ い て は、 後 で 述 べ る が、 東 寺 観 智 院 収 蔵 の 薬 師 如 来 を 中 尊 と す る 曼 茶 羅 は こ の グ ル ー プ の 経 典 に 基 づ い て い る。 こ の 曼 茶 羅 の 八 大 菩 薩 は、 薬 師 如 来 の 左 右 に 四 尊 つ つ 配 さ れ る が、 こ の グ ル ー プ の 経 典 に は 菩 薩 配 列 の 記 述 は な い。 つ ぎ に 第 四 番 目 の グ ル ー フ は、 支 謙 の 二 二 三 年 か ら 二 五 三 年 の 訳 出 の ﹃ 佛 説 無 量 門 微 密 持 経 ﹄ に 基 づ く も の で あ る。 こ の 系 列 の 経 典 は 不 空 訳 出 の ﹃ 出 生 無 辺 門 陀 羅 尼 経 ﹄ に 至 る ま で 全 部 で 九 本 現 存 し て い る。 ま た、 わ ず か な サ ン ス ク リ ッ ト 本 の 断 片 と チ ベ ッ ト 訳 本 が 残 さ れ て い る。 チ ベ ッ ト 訳 本 に つ い て は 堀 内 寛 仁 教 授 に よ り、 漢 訳 経 典 と の 比 較 研 究 (18) が 行 わ れ て い る。 こ れ ら チ ベ ッ ト 訳 本 を ふ く む 一 〇 本 の 経 典 に は、 八 尊 の 菩 薩 が 一 つ の 集 合 体 と し て 説 か れ て い る。 第 五 番 目 の グ ル ー プ は、 三 一 七 年 か ら 四 二 〇 年 に か け て の 訳 出 と さ れ る ﹃ 七 佛 八 菩 薩 所 説 大 陀 羅 尼 神 呪 経 ﹄ に 説 か れ る。 さ ら に 七 六 五 年 の 湛 然 撰 述 と さ れ る ﹃ 止 観 輔 行 傳 ﹄ の 中 に 同 名 の 八 大 菩 薩 が 確 認 で き る。 以 上 の 五 つ の グ ル ー プ に 説 か れ る 八 尊 の 菩 薩 の 集 合 体 は 比 較 的 早 期 に 成 立 し た と 考 え ら れ る。 次 に 示 す 二 つ の グ ル ー プ の 八 大 菩 薩 の 記 述 は、 七 世 紀 以 降 に し か 見 い 出 せ な い。 六 つ 目 の グ ル ー。 フ は ﹃ 真 実 摂 経 ﹄ お よ び ﹃ 理 趣 経 ﹄ 系 の 経 典 ・ 儀 軌 に 説 か れ る 八 大 菩 薩 で あ る。 ﹃ 真 実 摂 経 ﹄ お よ び そ の 漢 訳 本 で あ る 三 経 典 の う ち の 不 空 訳 本 と 施 護 訳 本 の 二 本 に、 ま た 玄 弉 訳 の ﹃ 般 若 理 趣 分 ﹄ ・ 金 剛 智 訳 の ﹃ 理 趣 般
若 経 ﹄ ・ 不 空 の ﹃ 般 若 理 趣 経 ﹄ お よ び ﹃ 理 趣 釈 ﹄ ・ 施 護 訳 の ﹃ 偏 照 般 若 経 ﹄ さ ら に、 ﹃ 理 趣 広 経 ﹄ と さ れ る 法 賢 訳 に、 同 種 の 尊 格 が 説 か れ て い る。 こ れ ら の グ ル ー プ の 八 大 菩 薩 は、 最 も 早 く 訳 出 さ れ た 玄 弉 訳 の ﹃ 般 若 理 趣 分 ﹄ を は じ め と し て、 多 く の 大 菩 薩 の 上 首 の 大 菩 薩 と し て 説 か れ る。 こ れ ら ﹃ 理 趣 経 ﹄ 系 の 経 典 に 説 か れ る 曼 茶 羅 は、 栂 尾 祥 雲 博 (19) (20) 士 や 酒 井 真 典 博 士 に よ っ て、 チ ベ ッ ト 訳 を 含 め た 研 究 が 行 わ れ て い る。 最 後 の グ ル ー プ は、 観 音 ・ 弥 勒 ・ 虚 空 蔵 ・ 普 賢 ・ 金 剛 手 ・ 文 殊 ・ 除 蓋 障 ・ 地 蔵 の 八 尊 の 菩 薩 で 構 成 さ れ る も の で あ る。 こ の グ ル ー プ の 菩 薩 は 六 六 三 年 の 那 提 訳 の ﹃ 師 子 荘 厳 王 菩 薩 請 問 経 ﹄ に 最 も 早 く 見 い 出 し う る。 こ の グ ル ー プ の 八 大 菩 薩 は 金 剛 智 ・ 善 無 畏 ・ 不 空 ・ 法 賢 等 の 訳 出 経 典 の 中 に 取 り 上 げ ら れ る。 ま た、 こ の 系 列 の 八 大 菩 薩 は、 後 に ﹃ 秘 (21) (22) 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ の 聖 者 流 の ﹁ 阿 閾 三 二 尊 マ ン ダ ラ ﹂ や ニ ン マ 派 の ﹁ 寂 静 四 二 尊 マ ン ダ ラ ﹂ の 中 に 取 り 入 れ ら れ て い る。 ま た、 ﹃ 大 日 経 ﹄ に も 一 つ の 集 合 体 と し て は 八 大 菩 薩 を 説 か な い も の の ﹃ 師 子 荘 厳 王 菩 薩 請 問 経 ﹄ と 同 じ 尊 名 が 記 さ れ て い る。 ﹃ 大 日 経 ﹄ は 七 世 紀 中 頃 の 成 立 と さ れ て お り、 ﹃ 師 子 荘 厳 王 菩 薩 請 問 経 ﹄ も 七 世 紀 中 頃 に 訳 出 さ れ て い る。 こ れ ら の 経 典 の イ ン ド 撰 述 時 期 の 前 後 関 係 は 明 ら か で は な い。 し か し、 七 世 紀 中 頃 以 降、 つ ま り イ ン ド 中 期 密 教 が 盛 ん に な っ た 頃 よ り、 こ の グ ル ー プ の 八 大 菩 薩 は 一 つ の 重 要 な 集 合 体 と し て 取 り 上 げ ら れ た と 考 え ら れ る。 以 上 の よ う に、 八 菩 薩 お よ び 八 大 菩 薩 を 説 く 経 典 は 七 つ の グ ル ー プ に 分 類 で き る。 ま た、 密 教 経 典 に 見 い 出 し う る 八 大 菩 薩 は お も に 第 六 番 目 の グ ル ー プ と 第 七 番 目 の グ ル ー プ の 二 系 統 の 八 大 菩 薩 で あ る。 こ れ ら 二 系 統 の 八 大 菩 薩 は、 そ れ ぞ れ の 密 教 教 理 の 中 で 体 系 化 さ れ、 同 時 期 に 並 存 し て い た と 考 え ら れ る。 し か し、 無 上 喩 伽 部 の 密 教 経 典 に は 第 七 番 目 の グ ル ー プ の 八 大 菩 薩 が 取 り 入 れ ら れ た。 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 (23) こ れ ら の グ ル ー プ の ほ か に ﹃ 大 方 広 菩 薩 文 殊 師 利 根 本 儀 軌 経 ﹄ の な か に 八 大 菩 薩 が 説 か れ る と す る 見 解 が あ る。 し か し、 こ の 経 典 で は、 中 尊 の 左 右 に 八 尊 つ つ 菩 薩 を 配 し て お り、 む し ろ 一 六 大 菩 薩 と 理 解 さ れ る の で こ こ で は 含 め な い こ と に し た。 つ ぎ に、 こ れ ら 八 大 菩 薩 が ど の よ う に 配 さ れ る か を 考 察 す る。 ま ず、 前 述 の 八 大 菩 薩 を 説 く 経 典 の な か で 最 も 早 く 菩 薩 の 配 列 が あ ら わ れ る の は ﹃ 師 子 荘 厳 王 菩 薩 請 問 経 ﹄ で あ る。 こ の 経 典 に は、 (24) ニ ニ ス ヲ ク ト ノ ハ ハ ヒ ノ ヒ テ ヲ ハ ニ ス ﹁ 道 場 之 庭當レ作二方壇一。名二 曼 茶 羅ー。 廣 挟 随 時 其 最 小 者 縦 廣 四 指。 或 一 傑 手。用三種 種 香 及 以二鯨物ー。 或 地 上 作。 方 院 ニ ス ヲ ノ ス ル ヲ ヲ ト 之 内 列 ニ 入 圓 場 一為 レ欲ニ供 養 八 菩 薩 一故。 何 等為レ入。 観 世 音 菩 薩。 弥 勒 菩 薩。 虚 空 蔵 菩 薩。 普 賢 菩 薩。 執 金 剛 手 菩 レ ナ リ レ ノ ナ リ 薩。 文 殊 師 利 菩 薩。 止 諸 障 菩 薩。 地 蔵 菩 薩。 如 是 長 者。 此 入 曼 茶 羅 最 勝 法 門。 是 彼 不 可 思 議 光 明 如 来 所 説。 ﹂ と 記 さ れ て お り、 方 院 の 内 部 に 八 大 菩 薩 を 配 す る こ と が 説 か れ て お り、 ﹁ 八 曼 茶 羅 ﹂ と 名 付 け ら れ て い る。 さ ら に、 金 剛 智 訳 出 の ﹃ 結 護 念 諦 法 普 通 諸 部 ﹄ に、 ﹁ 八 曼 茶 羅 ﹂ の 主 名 号 と し て、 八 大 菩 薩 の 真 言 と 尊 名 が 記 さ れ て (25) い る。 ま た、 不 空 訳 の ﹃ 八 大 菩 薩 曼 茶 羅 経 ﹄ に も、 同 様 の ﹁ 八 曼 茶 羅 ﹂ を 建 立 す る こ と が 説 か れ て お り、 八 大 菩 薩 の (26) 持 物 等 の 特 徴 が 詳 し く 記 さ れ て い る。 し か し、 こ れ ら の 経 典 に は、 ﹃ 師 子 荘 厳 王 菩 薩 請 問 経 ﹄ で は 説 か れ て い な か つ た 中 尊 の 毘 盧 遮 那 が 説 か れ て お り、 ﹁ 八 曼 茶 羅 ﹂ 中 央 に 中 尊 を 加 え た 九 尊 の 集 合 体 を 見 い 出 し う る。 こ れ ら の 経 典 よ り、 如 来 を 中 尊 と し、 さ ら に ﹁ 八 曼 茶 羅 ﹂ と し て 八 大 菩 薩 を 中 尊 の 周 囲 に 配 す る 形 式 が 確 認 で き る。 さ ら に、 こ の 形 式 を ﹁ 九 位 ﹂ と 名 づ け る 儀 軌 が 存 在 す る。 不 空 訳 出 の ﹃ 佛 頂 尊 勝 陀 羅 尼 念 諦 儀 軌 法 ﹄ に (27) ヲ キ ヲ テ レ ニ ノ ト ニ ズ ヲ ニ ズ ヲ ノ ニ ズ ヲ ﹁ 石 上 磨 白 檀 香 用塗二 九 位ー。其 九 位 者。 中 央 安 二毘 盧 遮 那 佛 位ー。 右 邊安二観 自 在 菩 薩 位ー。 観 自 在 後。安ニ慈 氏 菩 薩 位ー。
ノ ニ ズ ヲ ノ ノ ニ ズ ヲ ノ ニ ズ ヲ 毘 盧 遮 那 位 後。安二虚 空 蔵 菩 薩 位ー。 此 菩 薩 左 邊。安二普 賢 菩 薩 位ー。 毘 盧 遮 那 佛 位 左 邊。安二金 剛 手 菩 薩 位ー。 金 剛 手 ノ ニ ズ ヲ ノ ニ ズ ヲ ノ ニ ズ ヲ レ ヲ ク 菩 薩 位 下。 安二文 珠 師 利 菩 薩 位ー。 毘 盧 遮 那 佛 前。 安ニ除 蓋 障 菩 薩 位ー。 除 蓋 障 菩 薩 位 右 邊。 安 二地 蔵 菩 薩 位ー。 是名ニ ト ニ ヒ ヲ レ ニ 九 位ー。 並 用 二 白 檀 香 一塗 レ 之。 ﹂ と 記 さ れ て い る。 こ の 儀 軌 に は 白 檀 香 を 用 い た ﹁ 九 位 ﹂ の 塗 法 が 説 か れ て い る。 こ の ﹁ 九 位 ﹂ は 明 ら か に、 ﹁ 八 曼 茶 羅 ﹂ の 八 大 菩 薩 の 形 式 に 中 尊 を 加 え た も の で あ る。 以 上 の よ う に、 八 大 菩 薩 の 配 列 の 形 式 は、 ﹁ 八 曼 茶 羅 ﹂ と ﹁ 九 位 ﹂ が あ り、 い ず れ の 場 合 も 方 院 の 八 方 に 八 大 菩 薩 を 配 す る 形 式 で あ る。 ま た、 ﹃ 理 趣 経 ﹄ 系 の 曼 茶 羅 に も、 八 大 菩 薩 の 配 列 を 示 す も の が、 い く 種 類 か 存 在 す る。 紙 面 に 限 り も あ る の で 詳 し (28) く は 触 れ ら れ な い が、 こ の 系 列 の 経 典 で は、 八 大 菩 薩 と 中 尊 を ﹁ 九 位 ﹂ に 配 す る ﹁ 説 会 曼 茶 羅 ﹂ と、 ﹁ 八 輻 輪 ﹂ の 形 式 (29) (30) に 円 形 に 配 す る ﹁ 普 集 曼 茶 羅 ﹂、 さ ら に、 ﹃ 理 趣 広 経 ﹄ に 説 か れ る 八 大 菩 薩 を 四 方 向 に 二 尊 つ つ 配 す る 形 式 が 認 め ら れ る。 以 上 の 文 献 資 料 か ら、 八 大 菩 薩 の 配 列 に は つ ぎ の 三 種 が あ る と 判 断 で き る。 (1) 方 院 の 八 方 向 に 配 す る 形 式 (2) 中 尊 の 廻 り に 円 形 に 配 す る 形 式 (3) 中 尊 の 四 方 向 に 二 尊 つ つ 配 す る 形 式 以 上 の よ う に、 漢 訳 経 興 ・ 儀 軌 で は 八 尊 の 菩 薩 の 集 合 体 は 七 つ の グ ル ー プ に 分 類 で き、 三 種 類 の 配 列 形 式 を 見 い 出 し う る。 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 八 大 菩 薩 を 説 く 経 典 は、 こ れ ら 漢 訳 経 典 ・ 儀 軌 の ほ か に チ ベ ッ ト 大 蔵 経 の 分 類 で ﹃ 大 日 経 ﹄ に 並 ぶ チ ャ リ ヤ ー タ ン (31) ト ラ の 一 つ と さ れ る ﹃ 金 剛 手 灌 頂 タ ン トラ﹄(Arya-Vajrapanyabhiseka) が あ る。 こ の 経 典 は、 八 大 (32) 菩 薩 の 配 列 方 位 を 知 る う え で 重 要 な 経 典 で あ る。 ﹃ 金 剛 手 灌 頂 タ ン ト ラ ﹄ は ﹃ 大 日 経 ﹄ の 先 駆 経 ・興 と さ れ て お り、 そ の 内 容 は ﹃ 大 日 経 ﹄ に 類 似 し て い る。 つ ぎ に、 八 大 菩 薩 の 尊 名 の 比 定 を 行 う た め の 重 要 な 手 が か り で あ る 菩 薩 の 持 物 な ど の 特 徴 を 示 す 経 典 ・ 図 像 資 料 の 記 述 を 表 に ま と め て 示 し て お く。
こ れ ら の 文 献 資 料 の 記 述 は、 出 入 り が は げ し く、 こ れ ら の 資 料 の み で は、 菩 薩 の 尊 名 を 比 定 す る の は 困 難 で あ る。 こ れ ら の 文 献 資 料 で は、 観 音 ・ 金 剛 手 の 持 物 は 比 較 的 安 定 し て い る も の の、 他 の 六 尊 の 持 物 は 一 定 し て い な い。 特 に、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 虚 空 蔵 と 普 賢 と の 区 別、 除 蓋 障 と 地 蔵 と の 区 別 は、 い ず れ も 同 種 の 持 物 を 手 に す る 場 合 が 多 く 判 断 し に く い。 ( 二) イ ン ド に お け る 八 大 菩 薩 の 遺 品 イ ン ド ネ シ ア の 文 化 は、 イ ン ド 文 化 の 影 響 を 強 く 受 け て い る。 ま た、 同 様 に イ ン ド ネ シ ア の 密 教 も 例 外 で は な い。 イ ン ド ネ シ ア の 密 教 の 解 明 に 重 要 な 手 が か り を 与 え て く れ る イ ン ド の 密 教 遺 跡 の 研 究 調 査 は、 す で に 数 多 く 行 わ れ て い る。 ま た、 最 近 に な っ て イ ン ド に 現 存 す る 八 大 菩 薩 の 遺 品 が 報 告 さ れ て い る。 八 大 菩 薩 の 遺 品 は、 イ ン ド で は お も に 二 つ の 地 域 に 集 中 し て い る。 イ ン ド で 最 も 多 く 八 大 菩 薩 の 遺 品 が 現 存 す る の は、 西 イ ン ド の マ ハ ー ラ ー シ ュ ト ラ 州 に 位 置 す る エ ロ ー ラ 石 窟 で あ る。 エ ロ ー ラ 石 窟 は、 仏 教 を は じ め と し、 ヒ ン ド ゥ ー 教 や ジ ャ イ ナ 教 の 石 窟 で 構 成 さ れ る。 そ の 中 の 第 一 窟 か ら 第 一 二 窟 ま で が 仏 教 窟 で あ る。 こ れ ら 仏 教 窟 の な か で、 ラ ー シ ュ ト ラ ク ー タ 朝 の 八 世 紀 後 半 か ら、 一 〇 世 紀 初 頭 の 開 窟 と さ れ る 第 一 一 窟 ・ 第 一 二 窟 の 後 期 窟 に 八 大 菩 薩 が 確 認 で き る。 こ れ ら の 石 窟 に 現 存 す る 八 大 菩 薩 は、 全 部 で 一 一 遺 品 あ る が、 第 一 二 窟 の 二 階 と 三 階 に は、 中 尊 如 来 の 左 右 に 五 尊 つ つ 菩 薩 が 配 さ れ て お り、 そ れ ら を 八 大 菩 薩 と 呼 べ る か ど う か は 慎 重 を 期 さ な け れ ば な ら な い。 つ ぎ に、 八 大 菩 薩 の 遺 品 が 集 中 し て い る の は、 東 イ ン ド の オ リ ッ サ 州 で あ る。 オ リ ッ サ 現 存 の 八 大 菩 薩 の 遺 品 や オ (33) リ ッ サ の 歴 史 に つ い て は、 頼 富 本 宏 博 士 に よ っ て 詳 し い 研 究 が な さ れ て い る。 オ リ ッ サ 州 は、 八 世 紀 中 頃 か ら 勢 力 を 振 う バ ウ マ カ ラ 朝 の 影 響 下 で 密 教 が 盛 ん に 行 わ れ た。 ま た、 九 世 紀 初 め に パ ー ラ 朝 第 三 代 の デ ー ヴ ァ パ ー ラ 王 が オ リ
ッ サ 北 部 に 勢 力 を の ば し て お り、 オ リ ッ サ の 密 教 遺 品 が パ ー ラ 朝 美 術 の 影 響 を 受 け て い る 可 能 性 も あ る。 オ リ ッ サ 州 に は、 ラ ト ナ ギ リ ・ ウ ダ ヤ ギ リ ・ ラ リ タ ギ リ お よ び キ ッ チ ン グ 博 物 館 に、 合 計 六 遺 品 が 現 存 し て い る。 (34) そ の 他 に も、 像 高 ニ メ ー ト ル 程 の 立 像 で 三-四 種 の 八 大 菩 薩 の グ ル ー フ が あ る と 報 告 さ れ て い る。 さ ら に、 こ れ ら の (35) 地 域 以 外 に ビ ハ ー ル 州 の ナ ー ラ ン ダ ー 博 物 館 に 貴 重 な 八 大 菩 薩 の 遺 品 が 現 存 し て い る。 こ の 遺 品 は、 約 一 メ ー ト ル 弱 の 黒 色 玄 武 石 の 横 長 パ ネ ル 状 の 石 に 八 大 菩 薩 が 浮 き 彫 り さ れ て い る。 こ の 遺 品 は 保 存 状 態 が よ く、 八 大 菩 薩 の 尊 名 比 定 に 必 要 な 特 徴 が 判 別 し や す い。 ま た、 こ の よ う な 台 座 に 浮 き 彫 り さ れ た と 思 わ れ る 八 大 菩 薩 の 遺 品 は、 ネ パ ー ル に (36) も 現 存 し て い る。 (37) 以 上 の よ う に、 イ ン ド に は 八 大 菩 薩 の 遺 品 が 多 数 現 存 し て い る。 し か し、 こ れ ら の 菩 薩 に は 一 切 尊 名 の 記 入 が な い た め、 そ の 尊 名 比 定 は、 数 多 く 現 存 す る 八 大 菩 薩 の 遺 品 の 特 徴 を 比 較 研 究 し た 上 で 文 献 資 料 と 照 合 す る の が 最 も 有 効 な 手 が か り で あ る と 思 わ れ る。 こ の 小 論 で は、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 を 考 察 す る の が 目 的 で あ る の で、 イ ン ド に 現 存 す る 八 大 菩 薩 の 遺 品 の す べ て に は 触 れ ら れ な い。 し か し、 こ れ ら の 八 大 菩 薩 の す べ て に 共 通 性 は 見 い 出 せ な い も の の、 エ ロ ー ラ 石 窟 の 遣 品 と オ リ ッ サ の 遺 品 の 間 に は、 明 ら か に 表 現 方 法 や 配 列 方 法 の 相 違 が 認 め ら れ る。 今 回 の チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 現 地 調 査 で、 壁 面 に 施 さ れ た 八 大 菩 薩 の 表 現 方 法 が 馬 イ ン ド ネ シ ア へ の 文 化 の 重 要 な 流 れ の 上 で の 起 点 と 考 え ら れ る イ ン ド の オ リ ッ サ 地 区 や ビ ハ ー ル 地 区 の 八 大 菩 薩 と 極 め て 類 似 し て い る こ と が 判 明 し た。 さ て、 イ ン ド の 東 海 岸 に 面 し た 地 区 に は、 前 述 の よ う に オ リ ッ サ を 中 心 に 八 大 菩 薩 の 遺 品 が 数 多 く 報 告 さ れ て い る。 (38) こ の 地 域 の 遺 品 に つ い て は、 実 際 に 目 に し た こ と が な い の で、 前 述 の 頼 富 本 宏 博 士 の 研 究 に 基 づ い て 考 察 す る。 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 オ リ ッ サ の 八 大 菩 薩 は、 つ ぎ の 二 種 の 形 態 に 分 類 で き る。 (1) 一 つ の 石 の 中 央 に 中 尊 如 来 を ほ ど こ し、 そ の 周 囲 に 小 像 で 配 さ れ る も の。 (2) 一 石 一 体 の 高 浮 き 彫 り の 像 (1) の 一 つ の 石 で 中 尊 如 来 の 周 囲 に 配 さ れ る 八 大 菩 薩 の 遺 品 は、 ラ ト ナ ギ リ 第 一 僧 院 に 三 遺 品、 上 部 欠 損 の も の が ウ ダ ヤ ギ リ と ラ リ タ ギ リ 収 蔵 庫 内 に 各 一 遺 品 ず つ、 さ ら に、 マ ユ ル ブ ハ ン ジ ャ 州 の キ ッ チ ン グ 博 物 館 に、 左 右 不 対 称 の 遺 品 が 一 つ 報 告 さ れ て い る。 (2) の 一 石 一 体 の 高 浮 き 彫 り の 八 大 菩 薩 の グ ル ー プ は、 ラ リ タ ギ リ 収 蔵 庫 に 現 存 す る 二 〇 数 体 の 菩 薩 像 に、 カ ル カ ッ タ の イ ン ド 博 物 館 に 収 蔵 さ れ て い る 二 体 の 菩 薩 像 を 含 め、 三-四 種 の 八 大 菩 薩 の グループ が 形 成 さ れ る と 報 告 さ れ て ラ トナ ギ リ[A] (1)(不 明) (2)蓮華 上 金 剛杵 (3)青蓮 華上 梵 爽 (4)(不 明) 触 地 印 如 来 龍華 ・宝冠仏塔(5) 三 蕾の華(6) 蓮 華(7) 蓮華上宝珠(8) ラ ト ナ ギ リ[B] (1)(不 明) (2)蓮華 上 金 剛杵 (3)青蓮華 上 梵 爽 (4)(不 明) 触 地 印 如 来 龍華 ・宝冠仏塔(5) 三蕾 の華(6) 蓮 華(7) 蓮華上宝珠(8) パ タ ー ン(1) (1)(不 明) (2)蓮華 上 金 剛 杵 (3)青蓮 華 上 梵 爽 (4)(不 明) 如 来 龍華 ・宝冠仏塔(5) 三蕾の華(6) 蓮 華(7) 蓮華上宝珠(8)
い る。 こ れ ら の オ リ ッ サ 地 区 の 八 大 菩 薩 の 中 か ら、 比 較 的 八 大 菩 薩 の 持 物 等 の 特 徴 の 判 別 が 可 能 な ラ ト ナ ギ リ 第 一 僧 院 奥 祠 堂 横 の 二 つ の 遺 品 の 持 物 等 の 特 徴 を 前 ペ ー ジ に 示 し て お く。 こ れ ら の 遺 品 に 見 い 出 せ る 持 物 の 配 列 を、 パ タ ー ン(1) と す る。 こ れ ら の 八 大 菩 薩 の 尊 名 比 定 は、 頼 富 本 宏 博 士 に よ り 詳 し く 報 告 さ れ て い る。 博 士 は イ ン ド に 現 存 す る 八 大 菩 薩 の 遺 品 の そ れ ぞ れ の 菩 薩 の 持 物 か ら、 次 の よ う に 尊 名 比 定 を 行 っ て い る。 観 音 蓮 華 弥 勒 水 瓶 と 龍 華 金 剛 手 金 剛 杵 虚 空 蔵 刀 剣 文 殊 梵 來 地 蔵 宝 珠 普 賢 宝 蓮 除 蓋 障 瞳 幡 こ れ ら の 尊 名 比 定 は、 数 多 く の 現 存 す る 八 大 菩 薩 の 遺 品 の 現 地 調 査 に 基 づ い た も の で、 信 頼 の 高 い も の と 思 わ れ る チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 が、 筆 者 は 別 の 角 度 か ら こ れ ら の 八 大 菩 薩 の 尊 名 比 定 を 行 っ て み た い。 オ リ ッ サ の 入 大 菩 薩 の 尊 名 比 定 に 重 要 な 手 が か り を 与 え る 遺 品 が あ る。 先 に 記 し た ビ バ ー ル 州 の ナ ー ラ ン ダ ー 博 物 館 に 収 蔵 さ れ て い る 八 大 菩 薩 の 遺 品 で あ る。 こ の 遺 品 に は、 中 尊 の 触 地 印 如 来 の 左 右 に 八 大 菩 薩 が 四 尊 つ つ 浮 き 彫 り さ れ て い る。 ナ ー ラ ン ダ ー 博 物 館 の 八 大 菩 薩 の 持 物 を 示 し て お く。 蓮 華 上 宝 珠 蓮 華 上 金 剛 杵 三 蕾 の 華 ( 宝 蓮) 龍 華 触 地 印 如 来 蓮 華 青 蓮 華 上 梵 爽 刀 剣 瞳 幡 こ の ナ ー ラ ン ダ ー の 遺 品 は、 パ ー ラ 朝 で 行 わ れ た 密 教 の 影 響 を 強 く 受 け て い る と 考 え ら れ る。 パ ー ラ 朝 で 流 行 し た 密 教 の な か で、 重 要 な 位 置 を し め る 経 典 と し て、 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ (Guhyasamaja) が あ る。 こ の 経 典 の
根 本 タ ン ト ラ で あ る 第 一 七 章 ま で に は、 八 大 菩 薩 は 説 か れ て い な い が、 少 し 時 代 は 下 が る も の の、 聖 者 流 の 成 就 法 で (39) あ る ﹃ ビ ン デ ィ ー ク リ タ サ ー ダ ナ ﹄ (Pindikrtasadhana) に ﹃ 師 子 荘 厳 王 菩 薩 請 問 経 ﹄ 以 降 の 経 典 に 見 い 出 し う る 系 列 の 入 大 菩 薩 が 存 在 す る。 そ こ に は、 触 地 印 の 阿 閾 を 中 尊 と し、 八 大 菩 薩 を 四 方 向 に 二 尊 つ つ 配 す る ﹁ 阿 閾 三 二 尊 マ ン ダ ラ ﹂ が 説 か れ て い る。 こ こ に 示 さ れ る 八 大 菩 薩 は、 三 面 六 腎 で あ り、 弥 勒 が 龍 華 を 持 つ こ と は 記 さ れ て い る も (40) の の、 そ の 他 の 七 尊 の 持 物 の 記 述 は な い。 こ の マ ン ダ ラ の 八 大 菩 薩 は、 つ ぎ の よ う に 四 方 向 に 配 さ れ る。 東 方 弥 勒 ・ 地 蔵 南 方 金 剛 手 ・ 虚 空 蔵 西 方 世 自 在 ( 観 音)・文 殊 北 方 除 蓋 障 ・ 普 賢 こ の ﹁ 阿 閾 三 二 尊 マ ン ダ ラ ﹂ と ナ ー ラ ン ダ ー の 遺 品 の 八 大 菩 薩 の 配 置 の 図 を 下 記 に 示 し て お く。 ナ ー ラ ン ダ ー の 遺 品 に 示 さ れ る 持 物 に よ っ て 菩 薩 名 が 比 定 可 能 な も の は、 蓮 華 上 に 金 剛 杵 を の せ る 金 剛 手 と、 蓮 華 を 手 に す る 観 音、 さ ら に、 ﹃ ピ ン デ ィ ー ク リ タ サ ー ダ ナ ﹄ に も 記 述 さ れ る 龍 華 を 持 阿 閤三 二 尊 マ ン ダ ラ ナ ー ラン ダー 博 物 館 蓮 華 上 宝 珠 蓮 華 上 金 剛 杵 三 蕾 の 華 龍 華 触 地 印 如 来 蓮 華 青 蓮 華 上 梵 爽 刀 剣 瞳 播 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 物 と す る 弥 勒 の 三 尊 で あ る。 こ れ ら 比 定 可 能 な 三 尊 を ベ ー ス に、 ﹃ 阿 閾 三 二 尊 マ ン ダ ラ ﹄ と ナ ー ラ ン ダ ー の 遺 品 を 比 較 す れ ば、 次 の よ う に な る。 蓮 華 上 宝 珠 虚 空 蔵 南 蓮 華 上 金 剛 杵 金 剛 手 南 三 蕾 の 華 地 蔵 東 龍 華 弥 勒 東 触 地 印 如 来 蓮 華 観 音 西 青 蓮 華 上 梵 來 文 殊 西 刀 剣 普 賢 北 瞳 幡 除 蓋 障 北 以 上 の よ う に、 ﹃ 阿 閾 三 二 尊 マ ン ダ ラ ﹄ の 東 ・ 南 の 四 尊 が 中 尊 の 左 側 に、 西 ・ 北 の 四 尊 が 中 尊 の 右 側 に 配 さ れ て い る と 判 断 す る こ と が で き る。 こ れ ら の 比 定 の 根 拠 と な る ﹃ ピ ン デ ィ ー ク リ タ サ ー ダ ナ ﹄ に は、 弥 勒 以 外 の 八 大 菩 薩 の 持 物 は 説 か れ て お ら ず、 ま た、 ナ ー ラ ン ダ ー 博 物 館 の 遺 品 に も 尊 名 の 記 入 が な い た め、 こ の 比 定 方 法 は あ く ま で も 推 測 の 域 を 出 な い。 し か し、
パ ー ラ 朝 の 作 例 と 考 え ら れ る ナ ー ラ ン ダ ー の 遺 品 が、 無 上 喩 伽 部 の 儀 軌 の 影 響 を 受 け て い る 可 能 性 は 高 い。 ま た、 オ リ ッ サ 地 区 の 八 大 菩 薩 も、 ナ ー ラ ン ダ ー の 遺 品 と 八 大 菩 薩 の 持 物 の 構 成 が 類 似 し て い る。 先 に 比 定 し た ナ ー ラ ン ダ ー の 八 大 菩 薩 の 尊 名 を、 表 現 方 法 が 類 似 し て い る オ リ ッ サ 地 区 の パ タ ー ン(1) の 八 大 菩 薩 の 配 列 に 照 合 す る と つ ぎ の よ う に な る。 オ リ ッ サ 地 区 の パ タ ー ン(1) の 八 大 菩 薩 の 尊 名 は、 以 上 の よ う に 比 定 で き、 中 尊 如 来 の 左 側 の(1) と(4) の 位 置 に は、 普 賢 か 除 蓋 障 の い ず れ か が 配 さ れ る と 考 え ら れ る。 こ れ ら 八 大 菩 薩 の 尊 名 と 持 物 の 関 係 に お い て、 共 通 性 が 見 い 出 せ る の (41) は、 観 音 ・ 金 剛 手 ・ 弥 勒 ・ 文 殊 の 四 尊 に 限 ら れ る。 そ の 他 の 四 尊 に つ い て は、 一 定 し た 規 則 は 認 め ら れ な い。 次 に、 オ リ ッ サ の 八 大 菩 薩 の 遺 跡 を 手 が か り に チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー に 残 さ れ る 八 大 菩 薩 の 尊 名 の 比 定 と、 菩 薩 の 配 列 の 考 察 を 行 う。 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 に は イ ン ド の 遺 跡 と 同 様 に 尊 名 記 入 が な く、 尊 名 の 比 定 は そ れ ぞ れ の 菩 薩 の 持 物 等 の 特 微 お よ び 八 尊 の 菩 薩 の 配 列 方 位 か ら 考 察 す る こ と に な る。 ま ず、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 の 菩 薩 配 列 の 方 位 と 持 物 等 の 特 徴 を 示 し て お く。 パ タ ー ン(1) (1)(不 明) (2)金 剛手 (3)文 殊 (4)(不 明) 如 来 弥 勒(5) 地 蔵(6) 観 音(7) 虚空蔵(8) チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 前 記 の 図 は、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 の 配 列 位 置 と 方 位 を 示 し、 さ ら に 遺 跡 の 正 面 を 中 心 に 左 右 に 分 け、 八 大 菩 薩 の 持 物 等 の 特 徴 を 示 し た。 こ の 図 に 基 づ き、 先 学 の 尊 名 比 定 お よ び、 筆 者 の 考 察 も あ わ せ て 表 記 し て お く。 三 蕾 の華(4) (5)金 剛 杵 蓮 華(3) (6)蓮華 上 梵 爽 龍 華 ・宝 冠 仏塔(2) (7)青蓮華 上 刀 剣 蓮 華 上 宝珠(1) (8)(欠 損)
こ の チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 の 持 物 等 の 特 徴 の 構 成 を、 イ ン ド の 八 大 菩 薩 の 遺 品 と 比 較 す れ ば、 先 に 考 察 し た オ リ ッ サ 地 域 に 見 い 出 さ れ た パ タ ー ン(1) の 八 大 菩 薩 の 特 徴 の 構 成 に 類 似 し て い る。 イ ン ド 現 存 の パ タ ー ン(1) の 八 大 菩 薩 の 尊 名 か ら、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 の 尊 名 を 考 察 す れ ば、 次 の よ う に な る。 こ れ ら 両 地 域 に 共 通 し て 見 い 出 せ る 八 大 菩 薩 の グ ル ー フ は、 い か な る 経 典 ・ 儀 軌 に 基 づ く の で あ ろ う か。 前 述 し た ﹃ 金 剛 手 灌 頂 タ ン ト ラ ﹄ に は、 第 三 院 の 八 方 向 に 八 大 菩 薩 を 配 す る (42) 形 式 が 説 か れ て い る。 こ の 経 典 の 八 大 菩 薩 の 配 列 の 形 式 は ﹁ 八 曼 茶 羅 ﹂ を 取 り 入 れ て い る こ と は 明 ら か で あ る。 こ こ に は、 そ れ ぞ れ の 菩 薩 の 配 列 方 位 が 定 め ら れ て お り、 こ の タ ン ト ラ は 方 位 記 述 の あ る 限 ら れ た 資 料 で あ る と 言 え る。 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー も 入 大 菩 薩 の 配 列 方 位 を 知 る う え で、 貴 重 な 遺 跡 あ 地 蔵(4) (5)金 剛 手 観 音(3) (6)文 殊 弥 勒(2) (7)普 賢 虚 空 蔵(1) (8)除 蓋 障(?) チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 る。 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー と ﹃ 金 剛 手 灌 頂 タ ン ト ラ ﹄ の 菩 薩 配 列 と 配 列 方 位 を 比 較 す る。 前 記 の 表 の よ う に ﹃ 金 剛 手 灌 頂 タ ン トラ﹄の 菩 薩 配 列 を、 右 廻 り に 約 九 〇 度 回 転 さ せ、 さ ら に、 金 剛 手 を 南 方 に、 さ ら に 文 殊 と 普 賢 を 右 廻 り に 一 つ ず つ 移 動 さ せ れ ば、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 菩 薩 配 列 に な る。 こ の よ う に、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 の 配 列 は、 お お む ね ﹃ 金 剛 手 灌 頂 タ ン トラ﹄の 菩 薩 配 列 を取り入 れ、 さ ら に 東 西 南 北 の 四 方 向 に 二 尊 ず つ 配 し た 形 式 で あ る と 考 え ら れ る。 八 大 菩 薩 を 四 方 向 に 二 尊 ず つ 配 す る 形 式 は、 ﹃ 理 趣 広 経 ﹄ 系 マ ン ダ ラ に 現 れ る。 さ ら に、 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン トラ﹄の 聖 者 流 ﹁ 阿 閾 三 二 尊 マ ン ダ ラ ﹂ お よ び ニ ン マ 派 の ﹁ 寂 静 四 二 尊 マ ン ダ ラ ﹂ が、 こ の 形 式 を 引 き 継 い で い る こ と は 前 述 し 金 剛 手 灌 頂 タン トラ チ ャ ン デ ィ ー ・ ム ン ド ゥ ー
た。 こ の 形 式 は、 ﹃ 師 子 荘 厳 王 菩 薩 請 問 経 ﹄ に 見 ら れ る ﹁ 八 曼 茶 羅 ﹂ の 形 式 よ り も、 そ れ ぞ れ の 経 興 や マ ン ダ ラ の 成 立 年 代 か ら み て、 遅 れ る こ と は 承 認 さ れ る と 思 わ れ る。 つ ま り、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 の 配 列 形 式 は、 ﹁ 八 曼 茶 羅 ﹂ の 八 方 向 に 配 す る 形 式 か ら、 ﹃ 理 趣 広 経 ﹄ 系 に 初 め て あ ら わ れ る 八 大 菩 薩 を 四 方 向 に 二 尊 ず つ 配 す る 形 式 へ の 変 化 過 程 の 形 式 を 取 る も の と 考 え ら れ る。 さ て、 こ の 八 大 菩 薩 を 四 方 向 に 配 す る 形 式 で あ る が、 い か な る 理 由 に 基 づ き こ の よ う な 配 列 形 式 を 取 る の で あ ろ う か。 残 念 な が ら、 明 確 に 示 す 文 献 資 料 は 現 存 し な い。 以 上 の 考 察 に よ り、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 壁 面 に 浮 き 彫 り さ せ た 八 大 菩 薩 は、 イ ン ド 東 北 部 の 八 大 菩 薩 の 遺 品 と 共 通 性 を も ち、 さ ら に ﹃ 金 剛 手 灌 頂 タ ン ト ラ ﹄ に 基 づ く 菩 薩 配 列 が 取 り 入 れ ら れ て い る と 考 え ら れ る。 で は、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 入 大 菩 薩 の 表 現 方 法 は い か な る 文 献 資 料 に 基 づ く の で あ ろ う か。 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 の 配 列 形 式 の 典 拠 と な る ﹃ 金 剛 手 灌 頂 タ ン ト ラ ﹄ に は、 八 大 菩 薩 の 持 物 が 次 の よ う に 説 か れ る。 (43) 文 殊 青 蓮 華 上 金 剛 杵 普 賢 如 意 宝 珠 金 剛 手 金 剛 杵 除 蓋 障 如 意 宝 珠 虚 空 蔵 刀 剣 弥 勒 大 浄 瓶 観 音 蓮 華 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 地 蔵 大 宝 チ ヤ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 で、 こ の 記 述 と 一 致 す る の は 観 音 と 金 剛 手 の み で あ る。 そ の 他 の 六 尊 に つ い て は 一 致 し な い が、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 菩 薩 が 前 述 の よ う に 比 定 可 能 で あ ろ う か。 ︹ 北 面(1) の 菩 薩 ︺ 左 手 に 蓮 華 の 茎 を 持 ち、 そ の 上 に 宝 珠 を の せ て い る。 こ の 持 物 を 標 識 と す る 菩 薩 と し て は、 除 蓋 障 も し く は 虚 空 蔵 が 考 え ら れ る。 前 述 の 胎 蔵 系 資 料 の 中 で は、 こ の 持 物 は 不 思 議 慧 菩 薩 の 標 識 と さ れ る 傾 向 が あ り、 除 蓋 障 は 如 意 宝 鐘 を 持 物 と し て い る。 虚 空 蔵 は ﹃ 胎 蔵 旧 図 様 ﹄ を は じ め と し、 ﹃ 虚 空 蔵 菩 薩 能 満 諸 願 最 勝 心 陀 羅 尼 求 聞 持 法 ﹄ に、 蓮 華 上 宝 珠 を 持 (44) 物 と す る こ と が 説 か れ て お り、 こ の 菩 薩 を 虚 空 蔵 と 比 定 可 能 で あ る。 (北面(1)の菩薩)
-68-︹ 北 面(2) の 菩 薩 ︺ 左 手 に 龍 華 (Nagakesa) を 持 ち、 宝 冠 に 仏 塔 が 施 さ れ て い る。 龍 華 は , 大 日 経 ﹄ を は じ め と す る 胎 蔵 系 資 料 や、﹃ 八 大 菩 薩 曼 茶 羅 経 ﹄ ・ ﹃ 金 剛 手 灌 頂 タ ン ト ラ ﹄ に は 全 く 記 述 さ れ な い。 (45) (46) し か し、 龍 華 は 少 し 時 代 は 下 が る が、 ﹃ 三 百 尊 図 像 集 ﹄ や ﹃ ス ヴ ァ ヤ ン ( 47) (48) ブ ー プ ラ ー ナ ﹄ の チ ベ ッ ト 資 料 お よ び、 ﹃ サ ー ダ ナ マ ー ラ ー ﹄ や ﹃ ,畳 シ ュ パ ン ナ ヨ ー ガ ー ヴ ァ リ ー ﹄ の イ ン ド 図 像 資 料 に 記 述 さ れ て い る。 こ れ ら の 記 述 よ り、 龍 華 を 手 に す る の は 弥 勒 で あ る こ と が わ か る。 イ ン ド に お け る 弥 勒 の 作 例 も 数 多 く 見 い 出 せ る。 パ ー ラ 朝 以 前 の 弥 勒 の 作 例 は、 手 に 水 瓶 を 持 ち、 宝 冠 に 仏 塔 を の せ て い る。 や が て グ プ タ 期 お よ び ポ ス ト ・ グ プ タ 期 に な る と 龍 華 が 弥 勒 の 持 物 と し て 現 れ る よ う に な り、 パ ー ラ 朝 に 入 る と 逆 に 水 瓶 が 見 ら れ な く な る。 ま た、 宝 冠 に 仏 塔 を 配 す る 作 例 も、 パ ー ラ 朝 以 前 に は 観 音 に も 見 い 出 せ る。 宝 冠 の 仏 塔 が 弥 勒 の 標 識 と し て 定 着 す る の は、 パ ー ラ 朝 以 降 で あ (49) る と す る 報 告 が あ る。 (北面(2)の菩薩) チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 ︹ 東 面(3) の 菩 薩 ︺ 左 手 に 茎 を 握 り、 そ の 上 部 に は 三 つ の 蕾 状 の 華 が 表 現 さ れ て い る。 宝 冠 に は、 何 か が 施 さ れ た よ う な 跡 が 残 る。 さ (50) ら に、 こ の 菩 薩 に は 中 尊 如 来 の 両 脇 侍 に 装 飾 さ れ る こ と の 多 い、 や や 太 め の 絡 腋 が 施 さ れ て い る。 こ の や や 太 め の 絡 腋 は、 イ ン ド ネ シ ア 出 土 の 金 銅 像 の 観 音 に も 多 く 見 い 出 せ る。 ま た、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 堂 内 に 現 存 す る 転 法 輪 印 如 来 の 左 脇 侍 に は、 宝 冠 に 定 印 仏 が 施 さ れ た 観 音 が 安 置 さ れ て お り、 同 様 の 絡 腋 に 飾 ら れ て い る。 さ ら に、 チ ャ ン デ ィ ・ ボ ル ブ ド ゥ ー ル の 壁 面 の 第 二 回 廊 に 浮 き 彫 り さ れ る 観 音 も、 同 様 の 表 現 方 法 で 描 か れ て (51) い る。 以 上 の こ と か ら、 こ の 菩 薩 は 観 音 で あ る と 比 定 で き る。 し か し、 こ の 菩 薩 が 左 手 に 持 っ て い る 三 つ の 蕾 状 の 華 が 問 題 と な る。 西 イ ン ド の エ ロ ー ラ 石 窟 の 前 期 窟 の 観 音 は、 未 開 敷 の 蓮 華 を 手 に し て い る。 こ の 石 窟 に 見 い 出 せ る 未 開 敷 蓮 華 は、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 観 音 と 同 様 に 蕾 状 に 表 現 さ れ て い る。 こ の こ と か ら、 こ の 三 つ の 蕾 状 の 華 は 未 開 敷 の 蓮 華 で あ る と 判 断 で き、 こ の 菩 薩 は 観 音 で あ る と 考 え ら れ る。 (東面(3)の菩薩)
-70-︹ 束 而(4) の 菩 薩 ︺ 左 手 に 茎 を 握 り、 そ の 上 部 に 前 述 の 観 音 よ り、 や や 小 さ め の 三 つ の 蕾 状 の 華 を の せ て い る。 こ の 三 つ の 蕾 状 の 華 も 未 開 敷 蓮 華 と 判 断 す る こ と も 可 能 で あ る が、 若 干 形 状 が 異 な っ て い る。 (52) こ の 持 物 と 類 似 し た 持 物 を 手 に す る 菩 薩 は、 チ ャ ン デ ィ ・ ボ ル ブ ド ゥ ー ル の 第 四 回 廊 の ﹃ 普 賢 菩 薩 行 願 讃 ﹄ の 仏 伝 (53) 図 に 表 現 さ れ て い る。 こ の チ ャ ン デ ィ ・ ボ ル ブ ド ゥ ー ル の 菩 薩 は 普 賢 で あ る と さ れ て い る。 ま た、 パ ー ラ 朝 期 の 図 嫌 資 料 で あ る ﹃ ニ シ ュ パ ン ナ ヨ ー ガ ー ヴ ァ リ ー ﹄ に 記 さ れ る 地 蔵 が、 蓮 華 の 上 に ﹁ カ ル パ ヴ リ (54) ク シ ャ ﹂ (Kalpavrksa) と い う 華 を の せ た 持 物 を 手 に す る こ と が 記 述 さ れ て い る。 こ の 記 述 に 基 づ き、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー に 表 現 さ れ る 三 つ の 蕾 状 の 華 を こ の ﹁ カ ル パ ヴ リ ク シ ャ ﹂ と し、 こ の 菩 薩 を 地 蔵 と す る 意 見 が あ (55) る。 さ ら に、 こ の 三 つ の 蕾 状 の 華 を 蓮 華 上 の 如 意 宝 珠 と す る 意 見 も あ り、 こ れ ら の 研 究 で は、 こ の 菩 薩 は 地 蔵 で あ る と 比 定 さ れ て い る。 こ の よ う に、 こ の 菩 薩 に 関 し て は、 様 々 な 見 解 が 出 さ れ て い る。 イ ン ド に お い て も、 こ の 三 つ の 蕾 状 の 華 を 持 物 と す る 菩 薩 の 遺 品 を 見 い 出 す こ と が で き る。 前 述 の パ ー ラ 朝 期 の 作 例 と 考 え ら れ る 八 大 菩 薩 の 中 の 一 尊 が、 三 つ (東面(4)の菩薩) チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
-71-密 教 文 化 の 蕾 状 の 華 を 標 識 と し て い る。 先 の 考 察 で、 こ の 菩 薩 は 地 蔵 で あ る と 認 め ら れ た。 パ ー ラ 朝 の 影 響 下 で 作 像 さ れ た 地 蔵 の 持 物 は、 こ の 三 つ の 蕾 状 の 華 で あ る と 考 え ら れ、 同 じ く パ ー ラ 朝 期 の 図 像 資 料 で あ る﹃ ニ シ ュ パ ン ナ ヨ ー ガ ー ヴ ァ リ 一 ﹄ に 記 さ れ る ﹁ カ ル パ ヴ リ ク シ ャ ﹂ が、 こ の 三 つ の 蕾 状 の 華 で あ る 可 能 性 が あ る。 こ の よ う に、 パ ー ラ 朝 期 の 美 術 の 影 響 が 強 い と 考 え ら れ る チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 の 地 蔵 も、 三 つ の 蕾 状 の 華 を 手 に す る と い う 表 現 方 法 が 取 ら れ た も の と 考 え ら れ る。 ︹ 南 面(5) の 菩 薩 ︺ こ の 菩 薩 は、 右 手 に 大 き な 独 鈷 の 金 剛 杵 を 握 っ て い る こ と よ り、 金 剛 手 と 考 え ら れ る。 し か し、 イ ン ド に 現 存 す る 八 大 菩 薩 の な か の 金 剛 手 は 独 鈷 を 握 る こ と は な く、 独 特 の 作 例 で あ る と 言 え る。 ︹ 南 面(6) の 菩 薩 ︺ 左 手 に 青 蓮 華 ( ウ ト パ ラ) の 茎 を 手 に し、 そ の 上 に 梵 爽 を の せ て い る。 こ の 持 物 を 標 識 と す る 菩 薩 は 文 殊 と 考 え ら れ る。 (56) イ ン ド の 文 殊 の 作 例 に つ い て は、 頼 富 本 宏 博 士 の 詳 し い 研 究 が あ る。 (南面(5)の菩薩)
そ れ に よ れ ば、 イ ン ド に 現 存 す る 文 殊 は、 ア ラ パ チ ャ ナ (Arpacana) ・ マ ン ジ ュ ヴ ァ ラ (Manjuvara)・シ ッ ダ エ ー カ ヴ ィ ー ラ (Arpacana) ・ マ ン ジ ュ ゴ ー シ ャ (Arpacana) に 分 類 さ れ る。 チ ャ ン デ イ ・ ム ン ド ゥ ー の 文 殊 は、 シ ッ ダ エ ー カ ヴ ィ ー ラ に 属 す る と 考 え ら れ る。 前 述 の 胎 蔵 系 資 料 の 中 で は、 ﹃ 胎 蔵 旧 図 様 ﹄ お よ び ﹃ 現 図 胎 蔵 曼 茶 羅 ﹄ の 文 殊 が こ の 持 物 を 手 に し て い る。 ︹ 西 面(7) の 菩 薩 ︺ 左 手 に 蓮 華 の 茎 を 握 り、 そ の 上 に 刀 剣 を の せ て い る。 ﹃ 胎 蔵 図 像﹄・﹃胎 蔵 旧 図 様﹄・﹃現 図 胎 蔵 曼 茶羅﹄の 各 胎 蔵 系 図 像 資 料 で は、 刀 剣 は 普 賢 お よ び 虚 空 蔵 の 持 物 と さ れ る 傾 向 が 認 め ら れ る。 こ の 持 物 を 手 に す る 菩 薩 の 尊 名 比 定 は 非 常 に 困 難 で あ る が、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 と 類 似 性 を も つ イ ン ド 東 北 部 の 八 大 菩 薩 の 遣 品 か ら 考 え て も、 刀 剣 を 持 物 と す る 菩 薩 は 普 賢 で あ る と 考 え ら れ る。 ︹ 西 面(8) の 菩 薩 ︺ こ の 菩 薩 は 欠 損 が 激 し く、 そ の う え 上 部 が 修 復 さ れ て お ら ず、 残 念 な が ら こ の 菩 薩 の 持 物 等 の 特 徴 は、 一 切 判 断 で (南面(6)の菩薩) チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 き な い。 し か し、 イ ン ド の 八 大 菩 疏 の 作 例 か ら 判 断 す れ ば、 八 大 菩 薩 を 構 成 す る 最 後 の 一 尊 で あ る 除 蓋 障 で あ り、 そ の 持 物 は 如 意 宝 瞳 で あ っ た と 判 断 で き る。 以 上 の よ う に、 ﹃ 金 剛 手 灌 頂 タ ン ト ラ ﹄ に 説 か れ る 八 大 菩 薩 の 表 現 記 述 と、 チ ャ ン デ イ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 の 表 現 方 法 と は 完 全 に 一 致 し な い が、 前 述 の イ ン ド の 八 大 菩 薩 の 遺 品 か ら 考 察 し た チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 の 尊 名 は 前 記 の よ う に 比 定 可 能 で あ る。 現 在、 イ ン ド お よ び 周 辺 地 域 で 発 見 さ れ て い る 密 教 遺 跡 と、 文 献 資 料 (57) と が あ ま り 一 致 し な い こ と は、 す で に 先 学 に よ り 縮 摘 さ れ て い る。 今 回 比 定 し た チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 の 表 現 方 法 と も 完 全 に 一 致 す る 文 献 資 料 は 見 当 た ら な い。 た だ、 八 大 菩 薩 の 特 徴 を 示 す 図 像 資 料 の 中 で、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩 の 持 物 等 の 特 徴 と、 最 も 共 通 性 が 見 い 出 せ る も の と し て、 ﹃ 胎 蔵 旧 図 様 ﹄ と ﹃ 現 図 胎 蔵 曼 茶 羅 ﹄ が あ げ ら れ る。 ま た、 各 種 胎 蔵 系 図 像 資 料 の 中 で、 ﹃ 胎 蔵 旧 図 様 ﹄ が 最 も 八 大 菩 薩 の 体 系 が 整 理 さ れ て お り、 ﹃ 大 日 経 ﹄ が、 大 乗 仏 教 で 数 多 く 作 像 さ れ た 菩 薩 の 表 現 方 法 に 多 大 な 影 響 を 与 え た こ と は 歪 め な い 事 実 で あ る と 思 わ れ る。 こ の よ う に、 ﹃ 大 日 経 ﹄ に 基 づ く 胎 蔵 系 資 料 で は、 八 大 菩 薩 が 重 要 な 構 (西面(7)の菩薩)
成 要 素 と な る。 し か し、 八 大 菩 薩 そ の も の の 成 立 は、 ﹃ 師 子 荘 厳 王 菩 薩 請 問経﹄等 の ﹁ 入 曼 茶羅﹂を 説 く 諸 経 典 に 見 ら れ る よ う に、 本 来、 独 立 し て 流 行 し て い た と 考 え ら れ、 ﹃ 大 日 経 ﹄ は そ の 影 響 を 受 け 八 大 菩 薩 を 取 り 入 れ た と 考 え る の が 妥 当 で あ る と 思 わ れ る。 イ ン ド に 現 存 す る 密 教 遺 跡 の 研 究 は 最 近 盛 ん に 行 わ れ て い る。 し か し、 現 存 す る 胎 蔵 系 の 図 像 資 料 の 数 に 比 し て、 イ ン ド で 発 見 さ れ た 遺 品 で ﹃ 大 日 経 ﹄ に 基 づ く も の と し て は 胎 蔵 大 日 如 来 を 除 い て ほ と ん ど 報 告 さ れ て い な い。 現 状 で は ﹃ 大 日 経 ﹄ と イ ン ド 現 存 の 密 教 遺 跡 を 結 び つ け る の は 非 常 に 困 難 で あ る た め、 八 大 菩 薩 を ﹃ 大 日 経 ﹄ の 重 要 な 構 成 要 素 と 見 る こ と に は 異 存 は な い。 し か し、 ﹃ 大 日 経 ﹄ に 八 大 菩 薩 の 呼 称 が 使 わ れ て い な い こ と か ら み て も、 八 大 菩 薩 の 遺 晶 の み を も っ て ﹃ 大 日 経 ﹄ と 直 接 関 係 づ け る の は、 多 少 の 危 険 が 伴 う と 考 え ら れ る。 以 上 の こ と か ら、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 壁 而 に 施 さ れ た 八 大 菩 薩 は 次 の よ う に 考 え ら れ る。 ○ 八 大 菩 薩 の 配 列 方 法 は、 ほ ぼ ﹃ 金 剛 手 灌 頂 タ ン ト ラ ﹄ の 配 列 形 式 に 基 づ い て い る。 ○ 八 大 菩 薩 の 表 現 方 法 に は、 胎 蔵 系 図 際 資 料 と 同 様 の 作 風 が 取 り 入 れ ら れ て い る。 ま た、 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 壁 面 に は、 こ れ ら の 八 大 菩 薩 以 外 に も、 多 管 の 女 神 の 座 像 や 菩 薩 の 立 像 が 浮 き 彫 (西面(8)の菩薩) チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 り さ れ て い る。 さ ら に、 堂 内 に は 転 法 輪 印 如 来 を 中 尊 と す る 観 音 菩 薩 と 金 剛 手 菩 薩 の 両 脇 侍 の 丸 彫 り 像 が 現 存 し て い ( 58) る。 こ れ ら チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 全 体 の 尊 像 構 成 は、 金 剛 智 訳 の ﹃ ゼ 倶 豚 佛 母 准 提 大 明 陀 羅 尼経﹄お よ び、 そ の (59) 同 本 異 訳 で あ る 不 空 訳 の ﹃ 七 倶 砥 佛 母 所 説 准 提 陀 羅 尼 経 ﹄ の 後 半 部 分 に 付 加 さ れ て い る ﹃ 七 倶 豚 准 提 陀 羅 尼 念 諦 儀 軌 ﹄ の 記 述 内 容 と 極 め て 類 似 し て い る こ と が、 今 回 の 現 地 調 査 で 明 か と な っ た。 ま た、 そ れ ら の 尊 像 は エ ロ ー ラ 石 窟 に 現 存 す る 密 教 尊 像 と も 高 い 類 似 性 が 認 め ら れ、 中 部 ジ ャ ワ の 密 教 が、 イ ン ド の オ リ ッ サ ・ ビ ハ ー ル 地 域 の み な ら ず、 イ ン ド 西 北 地 域 の 密 教 の 影 響 を 受 け て い る 可 能 性 も 考 え ら れ る。 こ れ ら の 考 察 に つ い て は、 次 の 機 会 に 詳 し く 報 告 し た い。 註 ( 1) ( 2) 佐 和 隆 研 ﹃ イ ン ド ネ シ ア の 遺 跡 と 美 術 ﹄ 日 本 放 送 出 版 協 会 昭 和 四 八 年。 ﹃ 佛 像 の 流 傳 ﹄ イ ン ド ・ 東 南 ア ジ ア 篇 法 蔵 館 昭 和 四 六 年。 ( 3) 高 田 修 ﹃ 印 度 南 海 の 仏 教 美 術 ﹄ 創 芸 社 昭 和 一 八 年。 ( 4) 千 原 大 五 郎 ﹃ イ ン ド ネ シ ア 社 寺 建 築 史 ﹄ 日 本 放 送 出 版 協 会 昭 和 五 〇 年。 ( 5) C
asparis, J. G. de: Prasasti Indonesia,
B angdung, 1950, pp. 175-182. ( 6) 千 原 大 五 郎 前 掲 書 一 七 〇 頁 -一 八 〇 頁。 ( 7) ( 8) ( 9) 伊 東 照 司 ﹁ 不 空 金 剛 と チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ッ ト ﹂ ﹃ イ ン ド ネ シ ア ー そ の 文 化 社 会 と 日 本 ﹄ 早 稲 田 大 学 出 版 部 一 七 九 頁。 ( 10) ロ ー ケ ー シ ュ ・ チ ャ ン ド ラ ﹁ 胎 蔵 界 曼 茶 羅 と し て の チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ト ﹂ 密 教 文 化 一 五 五 号。 ( 11) 宇 治 谷 裕 顕 ﹃ ボ ロ ブ ド ゥ ー ル の 研 究 ﹄ ア ジ ァ 文 化 交 流 セ ン タ ー 昭 和 六 二 年 三 八 六 頁-四 四 〇 頁。 ( 12) 望 月 信 亨 ﹃ 仏 教 大 辞 典 ﹄ 第 四 巻 四 二 一 八 頁-四 二 一
九 頁。 ( 13) 岩 鶴 密 雲 ﹁ 八 大 菩 薩 と そ の 曼 奈 羅 ﹂ 密 教 研 究 五 六 号。 ( 14) 頼 富 本 宏 ﹁ イ ン ド の 八 大 菩 薩 ﹂ ﹃ 密 教 仏 の 研 究 ﹄ 法 蔵 館 一 九 九 〇 年 六 〇 七 頁 -六 二 二 頁。 ﹁ チ ベ ッ ト の 八 大 菩 薩 ﹂ ﹃ 密 教 仏 の 研 究 ﹄ 六 二 二 頁-六 三 二 頁。 ﹁ 八 大 菩 薩 像 に つ い て ﹂ ﹃ 密 教 美 術 の 原 像 ﹄ 法 蔵 館 昭 和 五 七 年、 一 一 四 頁-一 二 七 頁。 ( 15) ﹃ 大 正 大 蔵 経 ﹄ 図 像 部 第 六 巻 二-九 頁。 ( 16) ﹃ 大 正 大 蔵 経 ﹄ 図 像 部 第 三 巻 中 ﹃ 別 尊 雑 記 ﹄ 三 三 頁。 ( 17) 玄 弉 お よ び 義 浄 の 訳 経 に は、 八 大 菩 薩 の 呼 称 は 使 わ れ て い る も の の、 八 尊 の そ れ ぞ れ の 名 称 は 説 か れ て い な い。 ( 18) 堀 内 寛 仁 ﹁ 西 蔵 訳 ﹃ 出 生 無 辺 門 陀 羅 尼 経 ﹄ 及 び ﹃ 広 釈 ﹄ ・ 和 訳 ﹂(一)-(六) 密 教 文 化 四 六 ・ 七 九-八 一 ・ 八 三 ・ 八 四 号。 ( 19) 栂 尾 祥 雲 ﹃ 理 趣 経 の 研 究 ﹄ 密 教 文 化 研 究 所 昭 和 三 三 年。 ( 20) 酒 井 真 典 ﹁ 八 輻 輪 マ ン ダ ラ に つ い て ﹂ 密 教 文 化 八 七 号。 ( 21) ソ ナ ム ギ ャ ム ツ ォ 他 ﹃ 西 蔵 曼 奈 羅 集 成 ﹄ 第 四 三 図 講 談 社 昭 和 五 八 年。 ( 22) 田 中 公 明 ﹃ 曼 茶 羅 イ コ ノ ロ ジ ィ ﹄ 平 河 出 版 社 一 九 八 七 年 二 四 九 頁。 ( 23) 望 月 信 亨 前 掲 書、 四 二 一 八 頁 -四 二 一 九 頁。 ( 24) ﹃ 大 正 大 蔵 経 ﹄ 第 一 四 巻 六 九 七 頁 下 -六 九 八 頁 上。 ( 25) ﹃ 同 ﹄ 第 一 九 巻 九 〇 四 頁 下。 ( 26) ﹃ 同 ﹄ 第 二 〇 巻 六 七 五 頁 中 -下。 ( 27) ﹃ 同 ﹄ 第 一 九 巻 三 六 四 頁 下。 ( 28) ﹃ 同 ﹄ 第 一 九 巻 六 〇 七 頁 下。 ( 29) ﹃ 同 ﹄ 第 一 九 巻 六 一 五 頁 中。 ( 30) ﹃ 同 ﹄ 第 八 巻 七 八 七 頁 中。 ( 31) 東 北 M 四 九 六 ( 32) 酒 井 真 典 ﹃ 大 日 経 の 成 立 に 関 す る 研 究 ﹄ 高 野 山 出 版 社 昭 和 三 七 年。 ( 33) 頼 富 本 宏 ﹁ オ リ ッ サ の 歴 史 ﹂ ・ ﹁ 八 大 菩 薩 像 に つ い て ﹂ ﹃ 密 教 美 術 の 原 像 ﹄ 法 蔵 館 昭 和 五 七 年 七 五 頁 -九 〇 頁 ・ 一 一 四 頁 1 一 二 七 頁。 ( 34) 頼 富 本 宏 ﹁ 八 大 菩 薩 像 に つ い て ﹂ 一 二 四 頁-一 二 五 頁。 ( 35) 頼 富 本 宏 ﹁ イ ン ド の 八 大 菩 薩 ﹂ 六 一 七 頁。 ( 36)
K. R. van Kooi J.: Religion in
g
ra
phy of Religions LEIDEN, 1978.
( 37) 前 記 の 八 大 菩 薩 以 外 に ナ ー ラ ン ダ ー 出 土 の 金 銅 製 の 仏 塔 に、 八 大 菩 薩 を 配 し た 遺 品 が 報 告 さ れ て い る。 ( 38) 頼 富 本 宏 ﹁ 八 大 菩 薩 像 に つ い て ﹂ ﹃ 密 教 美 術 の 原 像 ﹄ 一 一 四 頁-一 二 七 頁。 ﹃ 密 教 仏 の 研 究 ﹄ 六 一 二 頁 -六 二 チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ー の 八 大 菩 薩
密 教 文 化 二 頁。 ( 39) ( 40) ( 41) こ れ ら の 四 尊 は、 中 尊 の 左 側 に 金 剛 手 ・ 文 殊、 右 側 に 観 音 ・ 弥 勒 が 配 さ れ る 傾 向 が あ る。 ( 42) 海 片No. 496 fol. 335 1-6. ( 43) 海 許No. 496 fol. 335 1-6. ( 44) ﹃ 大 正 大 蔵 経 ﹄ 第 二 〇 巻 六 〇 二 頁。 ( 45) ( 46) ア モ ー ガ ・ ヴ ァ ジ ュ ラ、 ヴ ァ ジ ュ ラ チ ャ ー ル ヤ 著 高 岡 秀 暢 訳 ﹃ ネ パ ー ル 百 八 観 音 紹 介 ﹄ 百 八 観 音 木 刻 図 像 集 刊 行 会 昭 和 五 七 年 六 七 頁 -七 九 頁。 ( 47) ( 48) ( 49) 宮 地 昭 ﹁ イ ン ド に お け る 弥 勒 図 像 の 変 遷 ﹂ ﹃ 論 叢 仏 教 美 術 史 ﹄ 吉 川 弘 文 館 昭 和 六 一 年 二 三 頁-七 三 頁。 ( 50) 逸 見 梅 栄 ﹃ 印 度 に 於 け る 礼 拝 像 の 形 式 研 究 ﹄ 東 京 美 術 昭 和 五 七 年 四 二 二 頁 -四 二 四 頁。 ( 51) 並 河 万 里 他 ﹃ ボ ル ブ ド ゥ ー ル ﹄ 平 凡 社 昭 和 四 六 年 一 五 一 図。 ( 52) ﹃ 大 正 大 蔵 経 ﹄ 第 一 〇 巻 漁 二 九 七。 ( 53) 山 本 智 教 ﹁ 密 教 の 文 化 ﹂ ﹃ 講 座 密 教 ﹄ 第 四 巻 春 秋 社 一 九 七 七 年 三 八 頁。 ( 54)
B. Bhattacharyya, op. cit, P.85.
( 55) 伊 東 照 司 前 掲 論 文 一 五 二 頁 -一 五 三 頁。 ロ ー ケ ー シ ュ ・ チ ャ ン ド ラ ﹁ 胎 蔵 界 曼 茶 羅 と し て の チ ャ ン デ ィ ・ ム ン ド ゥ ト ﹂ 七 頁。 ( 56) 頼 富 本 宏 ﹁ イ ン ド 現 存 の 文 殊 菩 薩 像 ﹂ ﹃ 仏 教 思 想 史 論 集 ﹄(1) 成 田 山 仏 教 研 究 所 昭 和 六 三 年 六 八 三 頁-七 一 六 頁。 ﹁ 文 献 資 料 に 見 る 文 殊 菩 薩 の 図 像 表現﹂﹃雲 井 昭 善 博 士 ・ 古 稀 記 念 ・ 仏 教 と 異 宗 教 ﹄ 平 楽 寺 書 店 一 九 八 五 年 三 二 一 頁 -三 三 八 頁。 ( 57) 頼 富 本 宏 ﹁ イ ン ド の 八 大 菩 薩 像 に つ い て ﹂ 五 七 五 頁 ( 58) ﹃ 大 正 大 蔵 経 ﹄ 第 二 〇 巻No. 一 〇 七 五。 ( 59) ﹃ 同 ﹂ 第 二 〇 巻No. 一 〇 七 六。