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トピックスレポート 経済構造改革の成否を左右する人事考課制度改革 -GDP 至上主義からの脱却を目指す - 清水顕司 ( ジェトロ中国北アジア課課長代理 ) 中国共産党中央組織部 ( 人事部に相当 ) は 2013 年 12 月 9 日 地方の党 政府指導グループと指導幹部の政績考課活動の改善に関す

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- 1 - 中国経済 2014.4

中国の社会の変化

田端 祥久 (ジェトロ 北京事務所長) 「表通りを歩く女性が随分とおしゃれになったなぁ。」昨年、5年振りの北京に着任した 際にそのように感じた。女性のファッションは社会を映す鏡とは思うものの、そういうこ とにしか関心がないのかと思われると困るので、中国の社会の変化について、いくつか興 味深い点に触れてみたい。 まず、GDP。2013 年の中国の GDP(速報値)は 56 兆 9,000 億元である。これを本年1 月1日のレート(17.4 円/元)で円換算すると 989 兆円となる。2013 年(年度)の日本の GDP(実績見込み)は 484 兆円である。2010 年に日本の GDP が中国に抜かれたことが 話題になったが、その後3年で倍になったこととなる(円安の影響があり、為替レートの マジック的な側面はある)。倍化かどうかは置いても、7.7%(2013 年速報値)で成長する 経済は、人々の行動や社会に大きな影響を与えるだろう。女性にこだわる訳ではないが、 中国の最近の流行語である「剰女」「辣媽」「女漢子」(ご関心の向きはお調べください)な どは、そうした一端で生じた社会現象ということだろう。 次に、1人当たりGDP。1人当たり GDP が1万ドルに達すると、消費行動に大きな変 化が見られる(衣服の本来の機能だけでなく見た目の良さにもこだわるなど)との説があ る。中国では、1人当たり GDP が1万ドルを超える都市の数は、北京オリンピック前年 の2007 年には3都市、都市人口は約 1,261 万人だった。5年後の 2012 年には、一気に拡 大し、45 都市、2億 4,000 万人となった。女性がおしゃれになっているのは、どうも北京 だけではなさそうだ。 では、中国の社会の変化は経済力のみか?高等教育への進学状況を見ると、別の変化が 進行しつつあることに気が付く。2012 年の高等教育進学者数は、約 700 万人である。2000 年頃の 200 万人規模から急拡大した。高等教育進学率という観点では約 30%であり、日 本の約 80%と比べれば低いが、年間 700 万人もの高等教育生が生み出される社会という のはどんな変革力を持つのだろうか。 さらに、留学生の数。2012 年の中国人留学生の数(出国者数)は、約 40 万人である(こ れも急拡大しており、2000 年頃は約4万人だった)。米国の大学に在学中の中国人留学生 は約24 万人(2012/2013 学年度)であり、約2万人の日本人留学生の 12 倍である。 また、さらに注目すべき変化は、中国への外国人留学生の数が急増していることである。 米国人留学生は、2003 年の 4,000 人から 2012 年には2万 4,000 人に増加した(なお、同 年の日本への米国人留学生の数は2,000 人)。中国と海外との人的ネットワークが厚みを増 して形成されつつあるように見える。 これらの数値は、中国の社会をどのように変えることとなるのだろうか。中国の経済社 会の先行きについては悲観的な見方もあるが、経済力だけでなく知識水準を兼ね備え、国 際社会とつながった多くの若い人材が社会変化の原動力となるだろう。向上した購買力で 海外の先端ファッションを取り入れるだけでなく、新しいトレンド、新しいライフスタイ ル、新しいビジネスが中国から発信されるようになるのではないだろうか。

視 点

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トピックスレポート

中国経済2014.4 - 2 -

経済構造改革の成否を左右する人事考課制度改革

-GDP 至上主義からの脱却を目指す-

清水 顕司 (ジェトロ 中国北アジア課 課長代理) 〔要 旨〕 □ 中国共産党中央組織部(人事部に相当)は 2013 年 12 月9日、「地方の党・政府指導グ ループと指導幹部の政績考課活動の改善に関する通知」(以下、「通知」)を発表し、地 方幹部の人事に影響を与える政績(政治・行政上の成績)の考課基準について新たな改 善点を示した。 □ 「通知」の最大の特徴は、「地域の GDP とその成長率だけを政績考課の主な指標とし てはならない」とGDP 至上主義からの脱却を明示し、資源消費、環境保護、過剰生産 能力の解消などの指標に重きを置くことが示されたことである。 □ 同年 11 月 15 日に発表された第 18 期中央委員会第3回全体会議の「中国共産党・改革 の全面的深化をめぐる若干の重要問題の決定」において、政績評価の重点項目の変更が 示された。GDP 成長率は政績の最重点項目ではなくなり、資源消費、環境保護、過剰 生産、新規債務などの指標に重きを置き、就業や住民収入、社会保障などをより重視す るとの方針が打ち出された。 □ この方針をもとに作成された「通知」からは、経済構造改革に本腰を入れて取り組もう とする習近平指導部の強い意思がうかがえる。過剰生産、債務増加、環境問題、所得分 配・格差など、中国が直面する問題には政治の過度な介入、特に地方政府と市場との関 係に起因する問題が多い。経済構造改革の成否は地方幹部のビヘイビアを変革できるか 否にかかっているともいえる。 □ 2014 年3月5日から開催された全国人民代表大会(全人代)を前に、31 省・市・自治 区が発表した2014 年の GDP 成長率目標は、広東省を除くすべての地方政府が前年比 で引き下げ、もしくは据え置いている。足元の経済状況を反映している部分もあろう が、「通知」で考課重点項目が調整されたことも少なからず影響しているようだ。 □ 大多数の地方政府が目標値を引き下げ・据え置いている状況から、生産過剰、新規債務 の増加などにつながる無駄な投資と債務を増やさず、モラルハザードをこれ以上深刻 化させないという中央政府の方針が、徐々に地方政府にも浸透し始めているかにもみ える。 □ 他方で、今後は考課指標が多様化・複雑化していくことも否めない。中央組織部はルー ル化・簡素化するとしているものの、公平感をいかに担保するか、難しい課題も多い。

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中国経済2014.4 - 12 -

現地レポート

急速に拡大する中国のロボット市場と進出日本企業の課題

劉 元森 (ジェトロ 上海事務所) 〔要 旨〕 □ 中国で産業用ロボットの導入が積極的に進められている背景には、人件費の高騰と熟練 労働者の不足を解消するほか、生産性の向上で製造拠点としての優位性を取り戻すこと と、単純作業の工場からハイテク工場にイメージアップさせ、若者を呼び戻す目的もあ る。 □ 国際ロボット連盟(IFR)の発表によると、2012 年の中国の産業用ロボット設置台数 は、統計対象となっていない中小企業の生産量などを含むと2万8,000~3万 5,000 台 に上り、国別ではすでに日本を上回って世界最大である。 □ 効率や品質に寄与するロボット産業に対し、重慶市や上海市、安徽省などでは行政主導 で産学官一体となって産業育成に力を入れている。国も有望な新興産業とみて、財政補 助金を給付する政策を実施している。 □ 活発化するロボット市場に合わせて、半年余りで四つの業界関連団体が相次いで設立さ れた。中国企業は生産拡大や異業種からの参入・提携などを積極的に行った結果、小規 模な企業が乱立している模様だ。 □ 急速に高まるロボットの需要に、外資系大手ロボット企業は2013 年から新規生産・増 産を本格化している。日本メーカーはロボットの耐久性や機能性など品質の点で優位に 立つが、高いコストパフォーマンスで採算が取れる製品の開発は最重要課題だろう。 中国の15~59 歳の労働人口は、2012 年末時点で前年比 345 万人減の9億 3,727 万人と 初めて減少に転じ、2013 年も前年比で 244 万人減少した。一人っ子政策や養育費の上昇 の影響を受け、今後も労働人口の減少は避けられない。 一方、沿海東部を中心に人件費が急騰している。上海市の法定最低賃金は2003 年に 570 元(月給)だったが、2013 年には 2.8 倍の 1,620 元に上昇し、年平均伸び率は 11.0%に 達した。同時期に北京市で3.0 倍、広東省深圳市で 2.7 倍、江蘇省蘇州市で 2.7 倍と各都 市ではいずれもほぼ上海市と同様の上げ幅で賃上げを実施している。 人件費の急騰や労働力不足への対応策として、東南アジアや中国内陸部に移転する企業 もある一方、産業用ロボットの活用で生産コストの抑制を図る企業も増えている。とりわ け、軽工業品の生産が盛んな浙江省では、政府主導で産業用ロボットの導入に毎年 5,000 億元の投資を計画し、製造拠点としての優位性を取り戻すことを狙っている。 世界の産業用ロボットメーカーで構成する国際ロボット連盟(IFR)は、中国のロボッ ト設置台数が2012 年に世界最大規模となり、今後も急速に拡大していくと予測している。

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中国経済2014.4 - 22 -

現地レポート

開発が進む広西チワン族自治区の区都・南寧市

濱田 哲一 (ジェトロ 広州事務所 次長) 〔要 旨〕 □ ベトナムと国境を接する広西チワン族自治区の区都南寧市は、ASEAN との交通の要衝 としての地位が高まっている。 □ 隣接する広東省、貴州省との間の高速鉄道の整備や空港のターミナル増設、ASEAN と の国際線開設など交通インフラの整備とともに、市内においてもマスタープランに沿っ て地下鉄建設など新しい街づくりが進んでいる。また、電子情報分野や物流分野などで、 世界的に著名な企業の誘致に成功している。 □ 市内の東西を結ぶ建設中の地下鉄沿いに、新しい商業施設や不動産が次々と開業してい る。人口が着実に増加し、10%を超える高い経済成長率を維持していることから、中長 期的には消費市場としての可能性も秘めている。 広西チワン族自治区の区都南寧市は、亜熱帯モンスーン気候に属し、1年中緑に囲まれ ていることから「緑城」とも称される。都市発展と環境との調和という考え方の下、緑と 花が溢れる街づくりが進められており、街の緑化率は約 40%に達している。一方、近年、 ASEAN との交通の要衝としての地位が高まっており、インフラ整備が急速に進展してい る。本稿では、開発が進む南寧市の状況について報告する。 <ASEANとの結び付きを強める南寧市> 古代の南寧は百越国の領地だったが、秦の始皇帝の嶺南征服(紀元前214 年)により桂 林郡に属し、漢の郁林郡としての管轄を経て、318 年に東晋が今の南寧市に晋興県を置き、 郡府もそこに置いたのが、今日の南寧市の始まりと言われている。 唐の時代に邕(よう)州が設置され、これが今日の南寧の簡称である邕(よう)の起源 となった。元代に邕州路が南寧路に改められ、南寧の名が起こった。広西省に属したのは 清の時代で、1949 年に人民解放軍が南寧に入城し、1950 年に南寧市人民政府が正式に成 立、1958 年、現在の広西チワン族自治区成立に伴い、南寧市が自治区区都となった。 南寧市は、6市轄区・6県を管轄、3カ所の国家レベルの開発区を有する。総人口は2012 年末で714万人、うち市区の人口は275万人で、同自治区の政治、経済、文化、教育、科学 技術、金融の中心となっている。2002年から2012年の10年間で、人口が約10%、全社会固 定資産投資総額が15倍以上、社会消費財小売総額が約5倍、財政は収入・支出ともに約8 倍に増加するなど、経済規模の拡大が目覚ましい(図表1)。2013年のGRP(域内総生産) は前年比10.3%増の2,803億5,400万元と高成長を記録している。

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特 集

中国経済2014.4 - 32 -

中国の対外貿易と対内直接投資

-2013 年の回顧と 2014 年の展望-

馬 成三 (福山大学 経済学部 教授) 〔要 旨〕 □ 2013 年の中国の貿易総額は初めて4兆ドルを突破し、財の貿易では米国を抜き、世界一 に浮上した。輸入ではまだ米国に及ばないものの、米国との差は約15%に縮小した。 □ 中国の対日貿易は2年連続で減少し、中国貿易に占める日本の地位低下が進んでいる。 長い間、日本は中国にとって最大の輸入相手国であったが、2013 年には中国の輸入に 占める日本のシェアはピークだった 1980 年代半ばの4分の1以下に低下し、中国の輸 入国・地域として韓国に抜かれて第4位に転落した。 □ 2013 年の中国の対内直接投資は、欧米や香港からの投資の増加で前年の「マイナス成長」 から「プラス成長」に転じた。業種別に見ると、長らくシェアの大半を占めていた製造 業への投資が減少し、サービス業への投資が初めて5割を超えた。日本の対中投資は減 少したものの、依然高い水準を保っている。 □ 中国の貿易企業は人件費や原材料などコスト増大や人民元高、他の国・地域との競争の 激化に悩まされており、地方政府を含む中国政府は「脱GDP 一辺倒」への路線転換を 進めている。こうした情勢を前にして、2014 年の中国貿易の前年比伸び率は 2013 年と 同様、1ケタにとどまるとみられる。 □ 2014 年は中国共産党第 18 期中央委員会第3回全体会議に採択された「中国共産党・ 改革の全面的深化をめぐる若干の重要問題の決定」を実行する初年度で、中国の外資 政策も量から質へと構造の改善を重視する姿勢を強めている。ASEAN など他の途上国 との誘致競争の激化もあって、製造業の対中投資は高い水準を維持しつつも伸び悩み が続くと予想される一方、サービス業への投資は引き続き拡大する可能性が高い。 2012 年 10 月の中国共産党第 18 期全国代表大会で誕生した習近平新指導部にとって、 2013 年は試練の年であった。年初から中国経済に関して「ハードランディング」「バブル 崩壊」「腰折れ懸念」などの言葉が日本を含む内外で飛び交ったが、ふたを開けてみると、 中国の2013 年の実質 GDP 成長率は 7.7%と、従来の目安とされる8%を2年続けて下回 ったものの、政府目標の7.5%を達成した。 人件費高騰や人民元高、主要市場の需要不振などが伝えられる中、中国の貿易総額は前 年比7.6%増の4兆 1,603 億ドルと初めて4兆ドルを超え、財の貿易では米国を抜き、世 界一に浮上した。前年に減少した対内直接投資も回復し、中でもサービス業への投資が過 去最高を記録した。

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グラフでみる中国経済動向 中国経済2014.4 - 52 -

主要経済指標:2013 年実績と 2014 年目標

〔注〕2013 年の目標の数値は 2013 年の全人代で示されたもの。 〔出所〕全国人民代表大会(2014 年3月) 2014 年3月5日に開幕した第 12 期全国人民代表大会(全人代)の「政府活動報告」に おいて李克強首相は、2014 年は改革を全面的に深化させ、開放をさらに拡大し、革新によ る発展促進戦略を実施し、中国の特色のある新しいタイプの工業化・情報化・都市化・農 業現代化の道を進み、パターン転換・構造調整・レベルアップ促進を加速させると述べた。 また、発展の質と効率をしっかりと向上させ、社会主義の経済建設・政治建設・文化建設・ 社会建設・エコ文明建設を全力で推し進め、経済の持続的で健全な発展と社会の調和・安 定を実現するとした。 2014 年の経済・社会発展目標として、実質 GDP 成長率を 2013 年と同じ 7.5%前後、 消費者物価指数(CPI)上昇率を 3.5%前後とした。 目標 実績 実質GDP成長率 7.5%前後 7.7% 7.5%前後 全社会固定資産投資額(名目) 18.0%増 19.3%増 17.5%増 社会消費品小売総額(名目) 14.5%増 13.1%増 14.5%増 貿易総額 8.0%前後増 7.6%増 7.5%前後増 消費者物価指数(CPI) 3.5%前後上昇 2.6%上昇 3.5%前後上昇 マネーサプライ(M2) 13.0%前後 13.6%増 13.0%前後 失業率(都市部、登録) 4.6%以下 4.05% 4.6%以下 財政赤字 1兆2,000億元 1兆2,000億元 1兆3,500億元 項目 2013年 2014年目標

参照

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