収益認識会計基準公表に伴う法人税法の改正
―法人税法 22 条の 2 を巡る「別段の定め」論議を中心として―
泉 絢 也
Ⅰ はじめに
平成 30 年度(2018 年度)税制改正において,法人税法上の資産の販売等に係る収益の 計上時期(帰属時期)及び計上額等に関して具体的な定めを有する法人税法 22 条の 2 が 創設された。この改正は,平成 30 年 3 月 30 日に企業会計基準委員会が収益の認識に関し て包括的で詳細な内容を定める企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」(以下
「収益認識会計基準」という)及び企業会計基準適用指針第 30 号「収益認識に関する会 計基準の適用指針」を公表したことに伴うものである(1)。
内国法人の各事業年度の所得の金額は,当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損 金の額を控除した金額であり,通常,この場合の当該事業年度の益金の額に算入すべき金 額の太宗を占めるのは,当該事業年度の収益の額である(法法 21,22)。よって,収益を いつ,いくらの金額で計上すべきであるかという点は,法人税法上の所得金額を適正に計 算するために,極めて基本的かつ重要な論点の 1 つである。これまで,かかる収益の計上 時期(年度帰属)や収益の額を規律する最も重要な規定は,法人税法 22 条という所得計 算の通則規定であったが,今回の改正では同条よりも,資産の販売等に係る収益に関して 明確で具体的な定めをなす法人税法 22 条の 2 がここに加えられたことになる。
法人税法 22 条の原型は,昭和 40 年の法人税法全文改正で作られた。同条に関する改正 を振り返ると,昭和 42 年に公正処理基準に従った計算を要請する規定(現行法人税法 22 条 4 項)が挿入され,その後,数回にわたり,資本等取引(現行法人税法 22 条 5 項)に 関する細かな改正を経験したにすぎない。収益の計上時期や計上額について通則的な規定 ともいわれる法人税法 22 条の 2 を 22 条の改正の支流に加えるならば,インパクトのある ものとしては,今回の改正は昭和 42 年以来のものといってよい。
法人税法 22 条の 2 という新規定の影響を考えるに,表面上は相応の影響力を有するよ うに映る。連結財務諸表のみならず個別財務諸表にも適用される収益認識会計基準は,実 現主義や販売基準などの収益に係る諸原則を定める企業会計原則に優先するものとされて いる(収益認識会計基準 1 項)。仮に,法人税法 22 条の 2 と収益認識会計基準それぞれが 定める収益認識のルールが相違する場合には,企業は法人税の申告に当たり,煩雑な申告
(1)「収益および費用の年度帰属をめぐって,きわめて多くの租税争訟が生じているが,これらの個別の問題の 大部分については,企業会計上その取扱は白紙の状態である」ことが指摘されてきたが(金子宏『租税法〔第 23 版〕』350 頁(弘文堂 2019)の脚注(20)),収益の認識については,わが国にも包括的で詳細な会計基準が 誕生したことになる。
〔論 説〕
調整を強いられる可能性もある。
中小企業は,収益認識会計基準を強制適用されるわけではないが,任意に適用すること は可能である。とはいえ,今回の税制改正で導入された資産の販売等に係る収益に関する 新規定は,その適用に当たり,直接的には,収益認識会計基準を適用しているか否かを問 うものではない。新規定は中小企業にも一律に適用されうる。また,今回の税制改正では,
返品調整引当金や長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例といった既存 の規定を廃止等する改正も行われている。これらの点で,中小企業にも改正の影響がある ことはいうまでもない。
法人税法 22 条の 2 という新規定が呼び込む理論的関心の程度についても決して小さい ものとはいえない。例えば,法人税法上の収益の計上時期に関しては,22 条 2 項や 4 項 という抽象的な定めの下で裁判例や学説が堆積されてきた。そこに突如現れた 22 条の 2 という“新参者”がどのように立ち振る舞うのか,過去の裁判例や学説と新規定との関係 はどのように整理されるのか,など理論的関心が尽きることはない。また,創設されて間 もない新規定ではあるが,国税庁,研究者又は実務家の見解を概観するだけでも,既にそ の読み方や解釈等について見解の相違が散見されており,興味深い。
以上を踏まえて,本稿では,新設された法人税法 22 条の 2 の研究の一環として(2),22 条の 2 を巡る「別段の定め」の論議を中心に考察する。具体的には,議論の下地造りの意 味も含めて,法人税法 22 条の 2 第 1 項ないし 4 項について,その規定内容や論者の見解 の不一致が生じている論点の検討を行った上で(後記Ⅱ),〔1〕22 条の 2 各項の「別段の 定め」の具体的範囲及び〔2〕22 条の 2 が 22 条 2 項の「別段の定め」に該当するかとい う点(後記Ⅲ)を考察するとともに,これと関連して 22 条 4 項を巡る「別段の定め」の 論議(後記Ⅳ)を検討する。
Ⅱ 法人税法 22 条の 2 の規定内容等
後の議論との関係上,法人税法 22 条の 2 第 1 項ないし 4 項を中心に,新規定の内容を 確認するとともに,論者における見解の相違等について論及する。
1 法人税法 22 条の 2 の概観
法人税法 22 条の 2 の規定内容を簡単にまとめると次のようになる。
第 1 項
収益の計上時期
資産の販売等に係る収益の計上時期について,目的物引渡日・役務提供日に計上す ることを原則とするもの
第 2 項 資産の販売等に係る収益の計上時期について,目的物引渡日・役務提供日の近接日に,
確定決算により計上することを可能とするもの
第 3 項 資産の販売等に係る収益の計上時期について,目的物引渡日・役務提供日の近接日に,
申告調整により計上することを可能とするもの
(2) 泉絢也「連載 収益認識会計基準と法人税法 22 条の 2 及び関係法令通達の論点研究」プロフェッションジャー ナル 314 号以降も参照。
第 4 項
収益の計上額
資産の販売等に係る収益の計上額について,資産の引渡時の価額又は提供した役務 につき通常得べき対価の額相当額とするもの
第 5 項 資産の販売等に係る収益の計上額について,引渡時の価額又は通常得べき対価の額 は貸倒れや資産の買戻しの可能性の影響を考慮しないとするもの
第 6 項 現物配当 無償による資産の譲渡に係る収益の額について,金銭以外の資産による利益又は剰 余金の分配及び残余財産の分配又は引渡しその他これらに類する行為としての資産 の譲渡に係る収益の額を含むとするもの
第 7 項 政令委任 資産の販売等に係る収益の額につき修正の経理をした場合の処理その他第 1 項から 第 4 項までの規定の適用に関し必要な事項を定めることを政令に委任するもの
また,法人税法 22 条の 2 第 7 項からの委任を受けた同法施行令 18 の 2 は,修正の経理 を行った場合の取扱い等について定めている(3)。
2 法人税法 22 条の 2 第 1 項に関する補足
(1) 収益の計上時期のルールとしての引渡・役務提供基準 法人税法 22 条の 2 第 1 項は次のとおり定めている。
内国法人の資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供(以下この条において「資産の販売 等」という。)に係る収益の額は,別段の定め(前条第 4 項を除く。)があるものを除き,
その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の所得の 金額の計算上,益金の額に算入する。
〔下線筆者〕
下線部分を省略して読むと,法人税法 22 条の 2 第 1 項について,内国法人の資産の販 売等に係る収益の額は益金の額に算入することを定めていることが際立つが,これでは意 味がない。法人税法 22 条 2 項を逆から述べているのとあまり変わらないからである。こ のことは,「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入 すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資産の販売,有償又は無償による資産の譲 渡又は役務の提供,無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る 当該事業年度の収益の額とする」と定める法人税法 22 条 2 項を,便宜上,22 条の 2 第 1 項に合わせて,次のとおり読み替えると理解しやすい。
内国法人の資産の販売,有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資 産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額は,(中 略)当該事業年度の益金の額に算入する。
(3) 長島弘「収益認識基準対応としての法人税法 22 条の 2 の問題点」会計・監査ジャーナル 30 巻 12 号 116 頁は,
法人税法施行令 18 条の 2 第 4 項において,同法 22 条の 2 第 5 項に関する定めを設けていることに着目し,
「第 1 項から第 4 項までの規定の適用に関し必要な事項を定める」とする 22 条の 2 第 7 項の政令委任の文 言又は同項から委任を受けて定められているはずの当該施行令の規定内容に問題があると指摘される。
資産の販売等に係る収益の額が益金の額に算入すべき金額に含まれることは法人税法 22 条 2 項が既に,しかも明確に定めていることであり,重ねて,22 条の 2 第 1 項が定め ることはない。少なくとも,法人税法 22 条の 2 第 1 項の意義がそこにあるとは解し難い。
このことに関して,立案担当者も,次のとおり,資産の販売等に係る収益を益金の額に 算入するかどうかについては引き続き法人税法 22 条 2 項の規定によることとし,その時 期及び金額について 22 条の 2 で規定されていると解説している(4)。
法人税法第 22 条の 2 の新設により,資産の販売等についてはその益金算入時期及び益 金算入額について明確にする規定が設けられる一方,同法第 22 条第 2 項から資産の販 売等は除外されていません。すなわち,資産の販売等に係る収益を益金の額に算入する かどうかについては引き続き法人税法第 22 条第 2 項の規定によることとし,その時期 及び金額について同法第 22 条の 2 で規定されていると整理されたことになります。し たがって,法人税法第 22 条第 2 項も資産の販売等に係る収益の益金算入の根拠規定の 一つとなります。
このように見てくると,「別段の定め(前条第 4 項を除く。)があるものを除き,その資 産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の所得の金額の計 算上,」という省略した部分にこそ,法人税法 22 条の 2 第 1 項の存在意義があるという推 測が働く。しかも,省略した部分のうち,「別段の定め(前条第 4 項を除く。)があるもの を除き,」という部分は競合しうる規定間の交通整理の役目を果たすものである。このこ とからすれば,残された「その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の 属する事業年度の所得の金額の計算上」という部分が重要なのではないかという見立てが 成り立つ。
このような観点から法人税法 22 条の 2 第 1 項を眺めてみると,収益の額をどの事業年 度で計上すべきであるかという収益の計上時期(時間的帰属)の規範としての顔が浮かび 上がってくる。同項は,収益の額は「その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の 提供の日」の属する事業年度において,益金の額に算入することとしており,いわば引渡・
役務提供基準を採用したものといえる。
(2) 引渡基準の具体的中身や出荷基準等の位置付けに関する見解の不一致
国税庁,研究者又は実務家との間で,引渡基準の具体的中身,あるいは出荷基準や検収 基準の位置付け等に関する見解の不一致が生じていることを簡単に指摘しておく。平成 30 年度税制改正を受けて改正された法人税基本通達 2-1-2 は,次のとおり定めている。
棚卸資産の販売に係る収益の額は,その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額 に算入するのであるが,その引渡しの日がいつであるかについては,例えば出荷した日,
船積みをした日,相手方に着荷した日,相手方が検収した日,相手方において使用収益
(4) 藤田泰弘ほか「法人税法等の改正」『平成 30 年度 税制改正の解説』273 頁。https://www.mof.go.jp/tax_
policy/tax_reform/outline/fy2018/explanation/pdf/p0265-0354.pdf〔令和元年 9 月 15 日最終閲覧〕
ができることとなった日等当該棚卸資産の種類及び性質,その販売に係る契約の内容等 に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収 益計上を行うこととしている日によるものとする。この場合において,当該棚卸資産が 土地又は土地の上に存する権利であり,その引渡しの日がいつであるかが明らかでない ときは,次に掲げる日のうちいずれか早い日にその引渡しがあったものとすることがで きる。
(1) 代金の相当部分(おおむね 50%以上)を収受するに至った日
(2) 所有権移転登記の申請(その登記の申請に必要な書類の相手方への交付を含む。)
をした日
〔下線筆者〕
この通達によれば,国税庁は,出荷基準や検収基準は「目的物の引渡しの日」という法 人税法 22 条の 2 第 1 項が定める引渡基準の範疇に含まれると解していることがわかる。
かような国税庁の理解を受け入れる論者も見受けられる(5)。
他方で,出荷基準又は検収基準は,引渡基準ではなく,法人税法 22 条の 2 第 2 項が定 める「目的物の引渡しの日に近接する日」という近接日基準の範疇に含まれると理解する 見解もある。例えば,酒井克彦教授は,法人税法 22 条の 2 第 2 項は第 1 項に示された引渡・
役務提供基準以外の処理を許容するものであるとし,かかる引渡・役務提供基準以外の処 理について,「考えられる実務的処理として,例えば,『出荷基準』や『検収基準』といっ たものが挙げられ」るとされる(6)。このほか,出荷基準は近接日基準の範疇であると解す るもの(7),検収基準は引渡・役務提供基準の範疇だが出荷基準は近接日基準の範疇である と解するもの(8)がある。金子宏教授も,「検修日〔ママ〕基準」は法人税法 22 条の 2 第 1 項の引渡・役務提供基準ではなく,2 項の近接日基準の範疇に含まれると解されている(9)。 法令ではない通達や上記各見解の内容を受け入れるためには,その法的根拠を検証する 必要があることはいうまでもないし,上記各見解の論拠は必ずしも十分に説明されていな いという問題もあるが,紙幅の都合上,上記のように見解の不一致が生じていることを述
(5) 例えば,成松洋一『Q & A 収益認識における会計・法人税・消費税の異同点』130 頁(税務研究会出版局 2019)では,「収益認識基準において,出荷基準や着荷基準も検収基準の『代替的な取扱い』として認めら れていますので,法人税でもこれらが認められています。しかし,出荷基準や着荷基準は,収益認識基準で も『代替的な取扱い』として容認されていますので,棚卸資産の引渡しがあった日に『近接する日』に収益 計上するものではありません」と解説されている。もっとも,収益認識会計基準で代替的な取扱いとして容 認されていることと引渡基準又は近接日基準との関係は必ずしも明らかではない。あくまで法人税基本通達 2-1-2 に示された行政解釈を前提とした実務解説として受け止めるべきかもしれない。菊谷正人「『収益認識 に関する会計基準』に対する法人税法の対応」法学志林 55 巻 3 号 33 頁も参照。
(6) 酒井克彦『プログレッシブ税務会計論Ⅲ』225 頁(中央経済社 2019)。
(7) EY 新日本有限責任監査法人編『企業への影響からみる収益認識基準実務対応 Q&A』116 頁(清文社 2018),島田眞一「新収益会計基準と法人税法との関係について」租税研究 833 号 327 頁参照。
(8) 山本史枝『奇跡の通達改正』54 頁以下(清文社 2019)参照。
(9) 金子・前掲注(1)356 頁参照。増田英敏『リーガルマインド租税法〔第 5 版〕』164 頁(成文堂 2019)も同旨。
上記のほか,役務提供基準を役務提供「完了」基準と解すべきかという論点もある。役務提供「完了」基準 をとる見解として,小林裕明「収益認識会計基準と税法における年度帰属原則との乖離」青山アカウンティ ング・レビュー8 号 50 頁参照。
べるにとどめる。ただし,次の点を指摘しておく。
・法人税法 22 条の 2 第 1 項が定める引渡・役務提供基準自体,解釈の余地を残すもので あり,その意義を深掘りして検討する必要がある。その際,上記通達が求める合理性や 継続性の法的根拠も検討の対象となる。
・出荷基準や検収基準と一口にいっても棚卸資産の種類や性質,個々の契約や商慣習等に より,その具体的内容や状況は異なりうるため,個別の事例に対峙する場面では,出荷 基準や検収基準といった中間概念を通さずに,より直接的に引渡基準該当性を精査する 必要が出てくる。
・法人税法 22 条の 2 第 1 項は,資産の販売等に係る収益に関して,表面上,少なくとも 22 条 2 項よりも,明確で具体的な文言を擁しているが,その中身を検討すると,その 規範内容は多分に解釈の余地を残す,あるいは評価的要素を含み持つのではないかとい う不安に駆られる。
・特定の収益計上基準や企業の個別の収益計上処理が法人税法 22 条の 2 第 1 項(の引渡・
役務提供基準)の範疇であるのか,3 項経由も含めて 2 項(の近接日基準)の範疇であ るのかという点は,次に見るように,2 項を適用するには(近接日要件以外の)所定の 要件を満たす必要があるため,実務上,大きな影響を及ぼす可能性がある。
3 法人税法 22 条の 2 第 2 項・第 3 項に関する補足
(1) 収益の計上時期のルールとしての近接日基準 法人税法 22 条の 2 第 2 項は次のとおり定めている。
内国法人が,資産の販売等に係る収益の額につき一般に公正妥当と認められる会計処理 の基準に従つて当該資産の販売等に係る契約の効力が生ずる日その他の前項に規定する 日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合には,
同項の規定にかかわらず,当該資産の販売等に係る収益の額は,別段の定め(前条第四 項を除く。)があるものを除き,当該事業年度の所得の金額の計算上,益金の額に算入する。
法人税法 22 条の 2 第 2 項は,一定の要件を満たした場合には,1 項の規定にかかわらず,
資産の販売等に係る収益の額について,目的物の引渡日又は役務の提供日に「近接する日」
の属する事業年度の益金の額に算入することを定めている。法人税法 22 条の 2 第 1 項が 資産の販売等に係る収益の計上時期のルールとして引渡・役務提供基準を採用しているの に対し,2 項はいわば近接日基準の採用を認めたものといえよう。
また,法人税法 22 条の 2 第 3 項は次のとおり定めている。
内国法人が資産の販売等を行つた場合(当該資産の販売等に係る収益の額につき一般に 公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて第一項に規定する日又は前項に規定する 近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合を除く。)
において,当該資産の販売等に係る同項に規定する近接する日の属する事業年度の確定 申告書に当該資産の販売等に係る収益の額の益金算入に関する申告の記載があるとき は,その額につき当該事業年度の確定した決算において収益として経理したものとみな
して,同項の規定を適用する。
法人税法 22 条の 2 第 3 項は,内国法人が資産の販売等を行った場合において,その資 産の販売等に係る資産の引渡日又は役務提供日に近接する日の属する事業年度の確定申告 書に,その資産の販売等に係る収益の額の益金算入に関する申告の記載があるときは,そ の額につき,その事業年度の確定した決算において収益として経理したものとみなして,
法人税法 22 条の 2 第 2 項の規定を適用することを定めている。
法人税法 22 条の 2 第 2 項は,近接日基準に基づく収益計上に当たって確定決算による 経理を求めていた。法人税法 22 条の 2 第 3 項は,当初申告において近接日基準に基づく 申告調整を行ったときは,その申告調整額につき当該事業年度の確定した決算において収 益として経理したものとみなして,2 項の規定を適用することを認める(「確定申告書」
の定義について法人税法 2 条 31 号参照)。かように 3 項は,確定決算による収益経理を行っ ていない場合においても,申告調整を通じて近接日基準による収益計上が認められる道を 確保している。
法人税法 22 条の 2 は,1 項だけを見ると,厳格な引渡・役務提供基準を採用している ように見えるが,確定決算による収益経理又は申告調整に基づいて引渡しの日又は役務提 供の日の近接する日に収益を計上することを認める 2 項や 3 項等の規定と合わせて見る と,全体としては会計基準の線に沿い,会計基準との調和を図っているという指摘がなさ れている(10)。上記のような法人税法 22 条の 2 第 1 項ないし 3 項の関係に鑑みた指摘であ ろう。
(2) 法人税法 22 条の 2 第 3 項の位置付けや 2 項との関係に関する見解の不一致 ア 2 要件充足不要説と 2 要件充足必要説
法人税法 22 条の 2 第 3 項の位置付けや同項と 2 項との関係をどう理解すべきであるか という点について,見解が分かれている。法人税法 22 条の 2 第 3 項は,申告調整により 近接日基準に基づく収益計上が認められる可能性を確保したものであるが,その要件と法 律効果を 2 項のそれと比較してみよう。
(10)金子・前掲注(1)357 頁参照。
要件
法人税法 22 条の 2 第 2 項 法人税法 22 条の 2 第 3 項
① 内国法人が資産の販売等を行ったこと
② 当該資産の販売等に係る収益の額に つき一般に公正妥当と認められる会計 処理の基準に従っていること
③ 当該資産の販売等に係る契約の効力 が生ずる日その他の 1 項に規定する日 に近接する日の属する事業年度の確定 した決算において収益として経理した こと
④ 別段の定め(法人税法 22 条 4 項を除 く)に該当する場合でないこと
❶ 内国法人が資産の販売等を行ったこと
❷ 当該資産の販売等に係る収益の額に つき一般に公正妥当と認められる会計 処理の基準に従って 1 項に規定する日 又は 2 項に規定する近接する日の属す る事業年度の確定した決算において収 益として経理した場合でないこと
❸ 当該資産の販売等に係る 2 項に規定 する近接する日の属する事業年度の確 定申告書に当該資産の販売等に係る収 益の額の益金算入に関する申告の記載 があること
法律効果
法人税法 22 条の 2 第 2 項 法人税法 22 条の 2 第 3 項 1 項の規定にかかわらず,当該資産の販売
等に係る収益の額は,当該事業年度の所得 の金額の計算上,益金の額に算入する。
上記❸の額につき当該事業年度の確定し た決算において収益として経理したもの とみなして,2 項の規定を適用する。
上記に示した法人税法 22 条の 2 第 2 項の要件のうち比較的重要な次の 3 つを抜き出し て簡略化し,それぞれに適当な名称を付してみる。
② 一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うこと(公正処理基準準拠要件)
③ 近接日の属する事業年度の確定した決算において収益経理を行うこと(近接日にお ける確定決算収益経理要件(11))
④ 別段の定め(法人税法 22 条 4 項を除く)がないこと(別段の定め不存在要件)
法人税法 22 条の 2 第 3 項は,当該事業年度の確定した決算において収益として経理した ものとみなして,2 項の規定を適用する旨定めている。かような 3 項について,同項の❶な いし❸の要件を満たせば,直ちに 2 項の適用があると解すべきであろうか。言い換えれば,
3 項を経由して 2 項を適用する場合には,3 項を経由せずに 2 項を直接適用する場合に求め
(11)近接日要件と確定決算収益経理要件に細分化して,説明することも可能であろう。
られるはずの②公正処理基準準拠要件及び④別段の定め不存在要件をいずれも満たす必要 はない(以下,このような立場を「2 要件充足不要説」という)と解すべきであろうか。
立案担当者は 2 要件充足不要説を採用していないようである。すなわち,立案担当者は,
法人税法 22 条の 2 第 3 項について,次のとおり解説している(12)。
この③〔筆者注:法人税法 22 条の 2 第 3 項〕によってみなされるのはその日において「収 益として経理したこと」のみであり,その申告調整による収益認識日が一般に公正妥当 と認められる会計処理に従った収益認識日であることとはみなされないことから,申告 調整により収益認識日を変更して上記②〔筆者注:法人税法 22 条の 2 第 2 項〕を適用 するためには,その変更後の収益認識日が一般に公正妥当と認められる会計処理の基準 に従った場合の収益認識日である必要があります。
この解説は,2 要件充足不要説に対置されるところの 2 要件充足必要説を採用したもの と解される。
他方,2 要件充足不要説を採用していると思われる見解も示されている。例えば,長島 弘教授は,法人税法 22 条の 2 第 3 項について,「一般に公正妥当と認められる会計処理の 基準(以下,法 22 条の 2 第 2 項及び第 3 項のものを『収益公正処理基準』とする。)に従っ た,目的物の引渡し等の日又はその日に近接する日の属する事業年度における収益計上を していない場合の規定である。そしてその場合にも,1 項又は 2 項に定める事業年度にお いて益金加算した場合には,確定した決算で収益に計上したものとして,これを認めると いうものである」,「ここで問題は,なぜ,収益公正処理基準に従ったわけでもないのにも かかわらず,2 項で規定するその日に近接する日の属する事業年度における益金計上を認 め得るのかという点である。2 項の規定は,本来計上すべき目的物の引渡し等の日の属す る事業年度ではないが,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従った会計処理の 結果を尊重するというものであるところ,その前提根拠を欠いている場合に,なぜそれを 認めるのであろうか」という疑問を示されている(13)。
また,長島教授は,法人税法 22 条の 2 第 3 項について,「1 項と 2 項には『別段の定めが あるものを除き』とあるところ,この 3 項にはそれがない」という指摘もなされている(14)。
(12)藤田ほか・前掲注(4)275 頁。
(13)長島・前掲注(3)114 頁。長島弘「新法人税法 22 条の 2 の問題点」税制研究 74 号 94 頁以下も参照。また,
酒井・前掲注(6)257 頁は,「無償取引については,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って益 金経理要件〔筆者注:本稿でいうところの③近接日における確定決算収益経理要件を指すと思われる。以下 同じ〕を充足することが困難であるため,法人税法 22 条の 2 第 2 項の適用のみを前提とすると,契約日基 準を採用することができないことになる。しかしながら,同条 3 項を適用することにより,必ずしも益金経 理要件を必要とせず,確定申告記載要件を充足することで契約日基準の採用を認めようとするのである」と いう見解を示される。この見解は,法人税法 22 条の 2 第 3 項を通じて 2 項を適用する場合には,少なくと も 2 項の②公正処理基準準拠要件は要求されないことを前提としている可能性もあるが,22 条の 2 第 3 項は 1 項及び 2 項の「別段の定め」であるという解釈を大前提としていることや 22 条の 2 各項の「別段の定め」
の具体的範囲について立案担当者と異なる立場であること(後述)に注意を要するため(酒井・同書 255 頁 以下参照),他の見解と単純に比較することは妥当でない面もある。
(14)長島・前掲注(3)114 頁参照。
イ 2 要件充足不要説の検討
法人税法 22 条の 2 第 3 項は,文理上,上記❸の申告調整額につき当該事業年度の確定 した決算において収益として経理したものとみなして,2 項の規定を適用するとしている が,このような定め方がなされた場合に,通常,2 項の他の要件を度外視して 2 項を適用 する趣旨の定めであると解すべきであろうか。次の条文例を思い浮かべると,そのように 速断することは躊躇される。
例えば,法人税法 3 条は「人格のない社団等は,法人とみなして,この法律(別表第二 を除く。)の規定を適用する」と定めている。この規定の趣旨は,法人税法の各規定の要件 を等閑視して,3 条により法人とみなされる人格のない社団等について,当該各規定が定 める各要件の充足の有無にかかわらず当該各規定を適用するものでないことは自明である。
また,法人税法 10 条の 3 は,「普通法人又は協同組合等が公益法人等に該当することと なる場合には,その該当することとなる日の前日に当該普通法人又は協同組合等が解散し たものとみなして,次に掲げる規定その他政令で定める規定を適用する」としている。こ こでいう「次に掲げる規定」として,法人の解散等の場合における欠損金の繰戻しによる 還付について定める 80 条 4 項と連結欠損金の繰戻しによる還付について定める 81 条の 31 第 4 項がある。法人税法 10 条の 3 の適用がある場合に,法人の解散という要件以外の 欠損金の繰戻しの還付要件を満たしていないにもかかわらず,80 条 4 項又は 81 条の 31 第 4 項の適用があると解することができないことは明白である。
もちろん,みなし規定の適用があることによって,他方の規定の要件をすべて充足する ことになるような関係の場合は別であるが,法人税法 22 条の 2 第 2 項と 3 項の関係はそ のようなものではない。
さらにいえば,2 要件充足不要説は,法人税法 22 条の 2 第 2 項は複数の要件を用意し ているものの,3 項について,2 項の③近接日における確定決算収益経理要件のみを取り 出して充足したものと「みなし」た上で,他の 2 つの要件を度外視して 2 項の適用を認め るものであると説明することになる。このことにどのような意義があるのか。わざわざ確 定した決算で収益経理したものとみなすことの意義はどこにあるのか。3 項を独立して又 は単体で適用すれば足りるのではないか。2 要件充足不要説を採用するならば,法人税法 22 条の 2 第 3 項の法律効果部分は,端的に,「当該資産の販売等に係る収益の額は,当該 事業年度の所得の金額の計算上,益金の額に算入する。」などと定めたはずではないか(15)。 かような疑問が惹起される。
加えて,法人税法 22 条の 2 第 3 項の適用がある場合には,2 項の④別段の定め不存在 要件を充足する必要がないとするとどうなるか。例えば,立案担当者の解説にあるよう に(16),ここでいう別段の定めに,有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入につ いて定める法人税法 61 条の 2 が該当するとしよう(17)(もっとも,酒井克彦教授は,法人 税法 61 条の 2 は 22 条 2 項の「別段の定め」であり,22 条の 2 第 1 項や 2 項の「別段の
(15)「法人税法 22 条の 2 第 1 項の規定にかかわらず,」又は「前各項の規定にかかわらず,」などの文言を挿入す ることも考えられる。
(16)藤田ほか・前掲注(4)273~274 頁参照。
(17)渡辺徹也『スタンダード法人税法〔第 2 版〕』126 頁(弘文堂 2019)も立案担当者の解説と同様の理解を示される。
定め」ではないこと及び 22 条の 2 第 3 項が 2 項の「別段の定め」に該当するという見解 を示されている(18))。
そうすると,有価証券の譲渡に係る収益の計上時期について,法人税法 61 条の 2 第 1 項が定める約定日基準ではなく,22 条の 2 第 3 項の適用により,申告調整による約定日 基準以外の近接日基準を採用する余地が出てくる。2 項経由では認められないにもかかわ らず,3 項経由であればその採用が認められる可能性があることになる。しかも,法人税 法 61 条の 2 第 1 項は,所得の金額について益金の額から損金の額を控除するというグロ ス計算を要請する 22 条と異なり,ネット計算,すなわち有価証券の譲渡に係る譲渡利益 額を益金の額,譲渡損失額を損金の額に算入することを定めている。よって,収益の額の みに法人税法 22 条の 2 第 3 項を適用した場合,譲渡原価の額については 22 条 3 項と 61 条の 2 のいずれを適用するのか,という問題が発生してしまう(もちろん,61 の 2 は後 述する「別段の定め」ルートを通るため 22 条の 2 の適用はないなど,解釈により,問題 を解決することはありうる。また,61 条の 2 は「収益」という語を用いておらず 22 条の 2 と規律範囲が重なるのかという疑念も残るため,63 条や 64 条の方が好例かもしれない)。
以上の考察から,次のような整理を示しておきたい。法人税法 22 条の 2 第 3 項は,資産 の販売等に係る収益の額について,申告調整により,資産の販売等に係る資産の引渡日又は 役務提供日に近接する日の属する事業年度の益金の額に算入することを同項単独で認めるも のではない。近接日基準による益金算入を認める直接の規定は,あくまで法人税法 22 条の 2 第 2 項である。すなわち,法人税法 22 条の 2 第 2 項は,資産の販売等に係る収益の額につ いて,一定の要件を満たした場合には,1 項の規定によらずに(引渡・役務提供基準によら ずに),近接日基準により益金の額に算入することを規定しており,3 項は,かかる一定の要 件のうち,近接日の属する事業年度の確定した決算において収益経理を行うこと(③近接日 における確定決算収益経理要件)という 1 つの要件を満たす効果をもたらすものにすぎない。
よって,法人税法 22 条の 2 第 3 項の適用がある場合でも,2 項の他の要件である②公 正処理基準準拠要件及び④別段の定め不存在要件を満たさない限り,資産の販売等に係る 収益の額について,申告調整により,資産の販売等に係る資産の引渡日又は役務提供日に 近接する日の属する事業年度の益金の額に算入することは認められない。
なお,3 項を適用する場合にも②公正処理基準準拠要件が問われるとすれば,資産の販 売等に係る収益の計上時期について,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従っ たものであるという条件の下に,引渡・役務提供日基準から離れて近接日基準をとること が許されている,という理解が妥当することになろう。
4 法人税法 22 条の 2 第 4 項に関する補足
法人税法 22 条の 2 第 4 項は次のとおり定めている。
内国法人の各事業年度の資産の販売等に係る収益の額として第一項又は第二項の規定に より当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入する金額は,別段の定め(前条
(18)酒井・前掲注(6)255~257 頁参照。
第四項を除く。)があるものを除き,その販売若しくは譲渡をした資産の引渡しの時に おける価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額とする。
法人税法 22 条の 2 第 4 項は,大雑把にいえば,資産の販売等に係る収益の額として,1 項又は 2 項により益金の額に算入する金額が時価ないし適正な価額であることを明らかに したものである(19)。法人税法 22 条 2 項について,資産の譲渡が代金の受入れその他資産 の増加を来すべき反対給付を伴わないものであっても,譲渡時における資産の適正な価額 に相当する収益があると認識すべきものであることを明らかにした規定であると判示した 南西通商株式会社事件の最高裁平成 7 年 12 月 19 日第三小法廷判決(民集 49 巻 10 号 3121 頁)を彷彿させる規定である。かように,法人税法 22 条の 2 第 4 項は,必ずしも契 約金額(契約で定められた対価の額)ないし当該取引に係るインプットの金額を収益の額 としているわけではないことに注意を要する。
また,どの時点の時価であるかという点を明らかにしていることに法人税法 22 条の 2 第 4 項の意義を見いだすことも可能である。資産の販売又は譲渡に係る収益の益金算入額つ いて,同項は「資産の引渡しの時における」価額としているからである。法人税法 22 条の 2 第 2 項の適用がある場合には引渡日に近接する日で益金算入するのであるが,その益金 算入額は,4 項を文字どおり適用すれば,その近接日の価額ではなく引渡時の価額となる。
他方,役務提供については,「その提供をした役務につき通常得べき対価の額」とされ ており,どの時点の対価の額であるかという点が明記されていない。「資産の販売又は譲 渡に係る『収益の額』とすべき資産の『時価』に関して,時点を示して『資産の引渡し時 における価額』と規定するのであれば,本来は,役務の提供に係る『収益の額』とすべき 役務の『時価』に関しても,同様に,時点を示して規定するべきである」(20)という批判も ありうる。もちろん,「通常得べき対価の額」という文言との関係で,役務提供がいつな されたものであるかといった時間的要素を考慮するという見解が成り立つ可能性はある。
この点について,法人税法 22 条の 2 第 4 項は,「役務提供時に」通常得るべき対価の額 に相当する金額と規定するものであるという見解も示されている。例えば,酒井克彦教授 は,法人税法 22 条の 2 第 4 項について,「収益の額は,『資産引渡時の価額』または『役 務提供時に通常得るべき対価の額に相当する金額』と規定する」として補充的な解釈をな されている(21)。
(19)法人税法 22 条の 2 第 4 項が「価額」と「対価の額」をどのように使い分けているのかは明らかではないが,
「対価の額」を時価ないし適正な価額であると解釈する際の参考となる裁判例として,東京高裁平成 26 年 6 月 12 日判決(訟月 61 巻 2 号 394 頁),東京高裁平成 27 年 11 月 18 日判決(税資 265 号順号 12753)参照。
(20)朝長英樹「『収益認識に関する会計基準等への対応』として平成 30 年度に行われた税法・通達改正の検証(3)」
T&Amaster751 号 25 頁。
(21)酒井克彦『プログレッシブ税務会計論Ⅰ〔第 2 版〕』20 頁(中央経済社 2018),酒井・前掲注(6)226 頁。谷 口勢津夫『税法基本講義〔第 6 版〕』378 頁(弘文堂 2018)も参照。なお,役務は,資産と異なり,提供の 時に消費されると考えられるため「提供の時における」と時点を明示して特定する必要がなかったと解する ものとして,片山智裕『ケーススタディでおさえる収益認識会計基準』36 頁(第一法規 2019)参照。
Ⅲ 法人税法 22 条の 2 を巡る「別段の定め」論議
法人税法 22 条の 2 を巡る「別段の定め」論議という枠組みで捉えると,議論の軸とし て次の 2 つを立てることができる(22)。
〔1〕法人税法 22 条の 2 各項の「別段の定め」の具体的範囲 〔2〕法人税法 22 条の 2 における他の規定の「別段の定め」該当性
以下,〔1〕について簡述した上で,〔2〕について,法人税法 22 条の 2 が 22 条 2 項の「別 段の定め」に該当するかという点を検討する。
1 〔1〕法人税法 22 条の 2 各項の「別段の定め」の具体的範囲
法人税法 22 条の 2 第 1 項,2 項又は 4 項の「別段の定め」に該当するのはどの規定か。
立案担当者は,法人税法 22 条の 2 第 1 項の「別段の定め」の具体的例示として,以下の 法人税法の規定を挙げ,2 項の「別段の定め」も同様であると解説している(23)。
・第 61 条(短期売買商品の譲渡損益及び時価評価損益)
・第 61 条の 2(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)
・第 62 条の 5 第 2 項(現物分配による資産の譲渡)
・第 63 条(リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度)
・第 64 条(工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度)
・所得税法等の一部を改正する法律(平成 30 年法律第 7 号)附則第 28 条の規定により なおその効力を有するものとされる同法 2 条の規定による改正前の法人税法第 63 条
(長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度)
また,立案担当者は,法人税法 22 条の 2 第 4 項の「別段の定め」の具体的例示として,
以下の法人税法の規定を挙げている(24)。
・第 61 条(短期売買商品の譲渡損益及び時価評価損益)
・第 61 条の 2(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)
・第 62 条から第 62 条の 5 まで(組織再編成による資産の譲渡)
・第 63 条(リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度)
・第 64 条(工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度)
・所得税法等の一部を改正する法律(平成 30 年法律第 7 号)附則第 28 条の規定により なおその効力を有するものとされる同法第 2 条の規定による改正前の法人税法第 63 条(長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度)
(22)このほか,租税特別措置法が法人税法 22 条の 2 の「別段の定め」に該当するかという論点などもある。参 考として,酒井克彦「租税特別措置法は法人税法 22 条にいう『別段の定め』か」中央・ロージャーナル 12 巻 2 号 153 頁以下参照。
(23)藤田ほか・前掲注(4)273~274 頁参照。
(24)藤田ほか・前掲注(4)275 頁参照。
立案担当者の上記解説について,法人税法 61 条の 2 を例として考えてみたい。法人税 法 61 条の 2 第 1 項は有価証券の譲渡損益の計上時期について,「その譲渡に係る契約をし た日〔中略〕の属する事業年度の所得の金額の計算上,益金の額又は損金の額に算入する」
として,いわゆる約定日基準を定めている。このことに鑑みて,立案担当者は,法人税法 61 条の 2 について,収益の計上時期として引渡基準を定める 22 条の 2 第 1 項や近接日基 準を定める 2 項の「別段の定め」であると解しているのであろう。
また,法人税法 61 条の 2 第 1 項は,有価証券の譲渡対価の額について「その有価証券 の譲渡の時における有償によるその有価証券の譲渡により通常得べき対価の額(第二十四 条第一項(配当等の額とみなす金額)の規定により第二十三条第一項第一号又は第二号(受 取配当等の益金不算入)に掲げる金額とみなされる金額がある場合には,そのみなされる 金額に相当する金額を控除した金額)」と規定している。このことに着目することで,立 案担当者は,法人税法 61 条の 2 について,収益の額として益金の額に算入する金額を販 売又は譲渡をした資産の引渡しの時における価額とする 22 条の 2 第 4 項の「別段の定め」
であると整理しているのであろう。
なお,法人税法 22 条は,別段の定めがあるものを除き,収益の額から原価・費用・損 失の額を控除し,課税所得を算出するというグロス計算を求めているが,61 条の 2 第 1 項は譲渡利益額を益金の額に算入し,譲渡損失額を損金の額に算入することを規定してい る。いわば,有価証券の譲渡損益に係る課税所得金額の計算について,法人税法 22 条 2 項又は 3 項を通じたグロス計算ではなく,ネット計算を求めている。課税所得の算出の仕 方という点からすれば,法人税法 61 条の 2 第 1 項は 22 条 2 項や 3 項の「別段の定め」で あるともいえよう。
上記の立案担当者のものとは異なる見解も示されている。すなわち,酒井克彦教授は,
法人税法 61 条の 2 は 22 条 2 項の「別段の定め」であり,22 条の 2 第 1 項や 2 項の「別 段の定め」ではないこと及び法人税法 22 条の 2 第 3 項が 2 項の「別段の定め」に該当す るという見解を示されている(25)。法人税法 22 条の 2 各項が定める「別段の定め」の具体 的範囲については更なる議論の余地があろう(26)。
2 〔2〕法人税法 22 条の 2 は 22 条 2 項の「別段の定め」であるか(概要)
〔2〕法人税法 22 条の 2 における他の規定の「別段の定め」該当性,とりわけ法人税法 22 条の 2 が 22 条 2 項の「別段の定め」に該当するのか,という問題を中心に検討してみたい。
学説は,既に積極説と消極説に分断されている。積極説として,渡辺徹也教授は,「22 条の 2 は,別段の定めのトップバッターです。かつて別段の定めは 23 条(受取配当の益金 不算入)から始まっていました。平成 30 年度改正では,22 条と 23 条との間に,あえて 22
(25)酒井・前掲注(6)255~257 頁参照。
(26)小林磨寿美=大野貴史『中小企業の取引における収益認識の税務と会計の実務』13 頁(税務経理協会 2019)
は,「法人税法 22 条の 2 は,収益認識基準にも対応する法人税法上の収益の額についての取扱いの原則を示 しているものである。したがって,1 項,2 項及び 4 項で『別段の定め』として除かれているのは,この 22 条の 2 という法人税法上の収益認識基準に対する別段の定め,つまり,収益認識基準を適用した場合に,法 人税法との間で調整が必要な部分であり,カッコ書きの『前条第 4 項を除く』は,もっと大きな枠組みでの 税法独自の計算基準が尊重されるという意味である」という見解を示される。
条の 2 という条文を入れて,益金の認識に関するルールを規定しました。その理由を一言 でいえば,国際会計基準等の影響を受けて,日本の企業会計において採用された収益認識 に関する新会計基準に対する法人税法上の対応ということになります」と説明される(27)。 他方,消極説として,酒井克彦教授は,法人税法 22 条の 2 は 22 条 4 項の「別段の定め」
であって,22 条 2 項の「別段の定め」ではない(22 条 2 項の「別段の定め」は 23 条以下 である)と整理される(28)。
立案担当者の解説を見ても,積極説又は消極説のいずれであるかは判然としない。立案 担当者の解説は法人税法 22 条の 2 が 22 条 4 項の「別段の定め」に該当すると理解してい ることを明確に読み取ることができるような書きぶりであることなどと対比すると,立案 担当者は消極説を採用していると見る余地はあるかもしれない(29)。以下では,積極説及 び消極説の根拠について検討を加える。
3 法人税法 22 条の 2 は 22 条 2 項の「別段の定め」であるか(積極説の検討)
(1) 法人税法 22 条の 2 の格納場所ないし配置場所
上述のとおり,渡辺徹也教授は,法人税法 22 条の 2 は 22 条 2 項の「別段の定め」であ るとする積極説を明示的に採用している。ここでは,積極説の根拠の候補として,法人税 法 22 条の 2 の格納場所ないし配置場所を手掛かりとしたアプローチを提案してみたい。
渡辺教授が積極説を採用する根拠は必ずしも明らかではないが,「平成 30 年度改正では,
22 条と 23 条との間に,あえて 22 条の 2 という条文を入れて,益金の認識に関するルー ルを規定しました」という上記説明部分からすると,法人税法 22 条の 2 の格納場所ない し配置場所を 1 つの根拠として抱懐されている可能性はある。
法人税法 22 条の 2 は,法人税法第二編第一章第一節のうち,従来から益金の額に係る 別段の定めの格納場所として認識されている「第三款 益金の額の計算」に格納された(視 点①)。しかも,「第三款 益金の額の計算」に「第一目 収益の額」を創設し,そこに格 納された(視点②)。逆にいえば,法人税法 22 条のおさめられている「第二款 各事業年 度の所得の金額の計算の通則」には格納されなかった(視点③)。
(27)渡辺・前掲注(17)115 頁。なお,渡辺教授は,法人税法 22 条の 2 について,22 条 4 項の「別段の定め」で もあるという立場を示されている(渡辺・同書 125 頁参照)。金子友裕「法人税法 22 条の 2 創設の意義」経 営論集 92 号 88 頁も明示的に積極説を採用しておられる。
(28)酒井・前掲注(6)286 頁以下参照。
(29)酒井克彦教授は,立案担当者が消極説を採用するものであると理解されている。酒井・前掲注(6)286 頁参照。
《法人税法の目次の抜粋》
法人税法 22 条の 2 が 22 条の格納場所である第二編第一章第一節「第二款 各事業年度 の所得の金額の計算の通則」に格納されなかったこと(視点③)にあらわれているように,
各事業年度の所得の金額の計算の通則としては,依然として,22 条こそが最重要規定で ある。法人税法 22 条の 2 は,22 条の見出しが掲げていた「各事業年度の所得の金額の計算」
に関する定めというよりも,「益金の額」ないし「収益の額」の計算に関する定めにすぎ ない(視点①や②と関わる。法人税法 22 条の見出しを削除する改正については後述)。
法人税法 22 条の 2 について特筆すべきことは,収益の計上時期や計上額に関して,22 条 2 項よりも明確かつ具体的な文言を用いていることである。このように考えてみると,
「各事業年度の所得の金額の計算の通則」としては,法人税法 22 条の 2 創設後において も依然として,22 条が最重要規定であるが,資産の販売等に係る収益の計上時期と計上 額に関する通則(的規定)としては,22 条の 2 創設後においては,同条の方が 22 条より も重要であるという見方が成り立つ。
別段の定めの議論に与える示唆を述べるならば,法人税法 22 条の 2 が益金の額の計算 に係る別段の定めの格納場所として理解されてきた「第三款 益金の額の計算」に格納さ れたこと(視点①)をもって,22 条の 2 が 22 条 2 項の「別段の定め」に該当することの 証左であるという見方に結び付く。積極説の根拠の候補の 1 つとなるのである。
また,法人税法 22 条の 2 が 22 条の格納場所である「第二款 各事業年度の所得の金額 の計算の通則」に格納されなかったこと(視点③)も積極説の根拠の候補の 1 つになりう るし,やや議論の先取りになってしまうが,消極説への反論にもなりうる。法人税法 22 条の 2 が 22 条 2 項の「別段の定め」ではないとすれば,なぜ 22 条の 2 は「第二款 各事 業年度の所得の金額の計算の通則」に格納されなかったのかという疑問が生じるからであ る(視点③)。消極説がいうように法人税法 22 条の 2 が 22 条の「別段の定め」ではない とすれば,所得の金額の計算の通則規定の一部として,22 条の 2 を「第二款 各事業年 度の所得の金額の計算の通則」に配置したはずではないかという疑問と言い換えてもよい。
すると,法人税法 22 条の 2 について,22 条がおさめられている「第二款 各事業年度 の所得の金額の計算の通則」に格納されなかったこと(視点③)の理由に関心が寄せられ る。その説明の候補として,例えば,次のようなものがありうる。
・法人税法 22 条は,各事業年度の所得の金額について「当該事業年度の益金の額から 当該事業年度の損金の額を控除した金額」となることを明らかした上で,益金(収益)
の額のみならず,損金(原価・費用・損失)の額や資本等取引に関する定めを有して いる。このような法人税法 22 条と比較すると,22 条の 2 は,22 条の見出しが掲げて いたような「各事業年度の所得の金額の計算」に関する定めというよりも「益金の額」
ないし「収益の額」の計算にすぎない(このことは視点①や②と関係する)。
・法人税法 22 条は,収益の計上時期や計上額を規律する定めのほか,「資産の販売,有 償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資産の譲受けその他の取引 で資本等取引以外のものに係る」というように収益の発生原因,あるいはいかなるも のを益金の額に含めるべきであるかということや益金の額に算入すべき金額に収益の 額が含まれることを規律する定めを有している。このような法人税法 22 条と比較す ると,22 条の 2 は,資産の販売又は譲渡及び役務の提供に係る収益のみを規律し,
しかもその計上時期や計上額のみを規律しているにすぎない。よって,「第二款 各 事業年度の所得の金額の計算の通則」に格納することは適当ではない面がある。
上記説明は「(積極説側が)消極説への反論として視点③を持ち出すこと」に対する「(消 極説側からの)再反論の契機」となりうる。法人税法 22 条の 2 は,22 条の「別段の定め」
ではないため,確かに,所得の金額の計算の通則規定の一部として「第二款 各事業年度 の所得の金額の計算の通則」に配置すべきであったが,上記説明に掲げられているような 事情が存在したことから,かような配置を採用しなかったにすぎない。よって,改正法が 採用した条文配置は,法人税法 22 条の 2 が 22 条の「別段の定め」であることを積極的に 裏付けるものではない,と(消極説側からの)再反論の素材として利用されるのである。
しかしながら,別の視点から更に考察を進めることも可能である。上記説明は,法人税 法 22 条の 2 を 22 条と一応切り離して観察するものである。かように,法人税法 22 条と の関係性を顧みずに 22 条の 2 の規定を単体として見て,上記説明にあるように法人税法 22 条の 2 の性格を捉えることの妥当性については検討の余地もある。
少なくとも,法人税法 22 条の 2 を 22 条の格納場所である「第二款 各事業年度の所得 の金額の計算の通則」に格納していれば,同条とともに,「各事業年度の所得の金額の計
算の通則」を構成する規定として評価する余地が出てくる。例えば,法人税法 22 条に 6 項以降を設けることも選択肢に入れて,22 条の 2 の規定内容を 22 条に組み込む,あるい は,「第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則」の中に「第一目 各事業年度の所 得の金額の計算の通則」と「第二目 資産の販売等に係る収益の額の計算の通則」を設け て,第一目に 22 条,第二目に 22 条の 2 を配置することも考えられよう。
かような例を出すと,改正法が,法人税法 22 条の 2 について,22 条のおさめられてい る「第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則」に格納しなかったこと(視点③)が より強調される。すなわち,法人税法 22 条の 2 を 22 条の格納場所である「第二款 各事 業年度の所得の金額の計算の通則」に配置した場合,法人税法 22 条の 2 は,22 条とともに,
「各事業年度の所得の金額の計算の通則」を構成する余地があるにもかかわらず,改正法 はそうしなかった。
このことを考慮すると,法人税法 22 条の 2 をもって,22 条の一部であるかのように捉 えられることを避けたのか,あるいは,やはり,法人税法 22 条の 2 を 22 条 2 項の「別段 の定め」として性格付けることとしたという見方も検討の対象に入り込んでくる。法人税 法 22 条の 2 が 22 条の格納場所である「第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則」
に格納されなかったこと(視点③)も積極説の根拠の候補の 1 つになりうることになる。
もっとも,ここまで深読みをすることは妥当でなく,単に法人税法 22 条の規定を大幅に 手直しすることは回避したいという考慮が働いた可能性もありうる。
(2) 法人税法 22 条 2 項の見出しを削除する改正
法人税法 22 条の 2 が「第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則」に格納されな かった理由の候補として挙げた上記説明は,22 条の 2 の性格に関するものである。かか る説明は,「第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則」は「通則」という部分に相 応の重きを置くことを前提としたものと見ることもできる。そうであれば,「各事業年度 の所得の金額の計算」とされていた法人税法 22 条の見出しが平成 30 年度税制改正により 削除されたことと結び付けて,議論を展開しうる。
法人税法 22 条には「各事業年度の所得の金額の計算」という見出しが付されていたが,
平成 30 年度改正においてこれを削る改正がなされている。改正後においても,法人税法 22 条は,「第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則」に存在する唯一の条文である ことに変わりはないため,かかる見出しを削除した趣旨は必ずしも明らかではない。改正 の趣旨について,酒井克彦教授は,かかる条文見出しと同じ機能を法人税法 22 条の 2 に 持たせようとしたことにあると推察される(30)。
条文における見出しは,条文の内容を簡潔に表現するものであり,これを付けることに よって,条文の規定している内容の理解と検索の便に供しようとするものである(31)。第 二款の款名である「各事業年度の所得の金額の計算の通則」と平成 30 年度改正で削除さ れた 22 条の見出しである「各事業年度の所得の金額の計算」とを比べてみると,「通則」
という部分を除き,同一の表現であることに気が付く。本則が章,節等に区分され,当該
(30)酒井・前掲注(6)240 頁参照。
(31)法制執務研究会編『新訂 ワークブック法制執務〔第 2 版〕』186 頁(ぎょうせい 2018)参照。
章,節等が 1 条から成る場合に,当該条に見出しを付ける必要があるかどうかについては,
見出しが章名等と異なる表現となるときは,当然見出しを付けることになるが,それが章 名等と同じような表現になるときは,見出しを付ける実益がない(章名等が見出しの役割 をも果たす)から,見出しを付けないのが一般的である(32)。
このことを踏まえると,法人税法 22 条の見出しを削除した今回の改正は,第二款の款 名と同じような表現の見出しを 22 条に存置させておくことは意味がないと考えたにすぎ ないという見方も出てくる(そうであれば,第二款の「各事業年度の所得の金額の計算の 通則」という款名は,最後の「通則」の部分まで意識して読んだ方がよさそうである)。
単純に,「章・節等が一条から成る場合には見出しを省略することができる」(33)のである から省略したにすぎないという見方もありうる一方,わざわざ現存する見出しを削除して いるのであるから,そのことに相応の意義を見いだそうとする志向も理解できる。そもそ も,法人税法 22 条や 22 条の 2 のみならず,第三款以降の規定についても「各事業年度の 所得の金額の計算」であることに変わりはない。法人税法 22 条 2 項の見出しが削除され たことには,かような考慮が働いていた可能性もある。
かように法人税法 22 条の見出しを削除した趣旨を論決することには困難を伴うが,い ずれにしても,第二款の款名は,存置されているとおり,やはり最後の「通則」の部分ま で意識して読んだ方がよいのではないかと考える。かように「第二款」が各事業年度の所 得の金額の計算の「通則」に係る条項をおさめるべき場所であることを強調することは,
上記(1)の議論にも影響を与えよう。
(3) 法人税法 22 の 2 が実際に 22 条 2 項の「別段の定め」といえるような規定であるか 法人税法 22 の 2 が実際に 22 条 2 項の「別段の定め」といえるような規定であるかとい う実際上の視点にも言及しておこう。特に法人税法 22 条の 2 については,例えば,その 第 1 項は「益金の額に算入する」と締めくくられており,一見すると,22 条 2 項の「収 益の額」とは別ルートで益金の額に算入する規定であるかのように見えるが,その主語は
「収益の額」となっている。ここでいう「収益の額」は法人税法 22 条 2 項の「収益の額」
を指していると解するならば,22 条の 2 と 22 条 2 項は規律範囲が重なっていることにな るから,22 条の 2 が 22 条 2 項の「別段の定め」に該当するという可能性を肯定できる。
かような見方は,規律範囲が重なっているからこそ,「別段の定めがあるものを除き」と いう交通整理の規定が必要となるという理解を前提とする。
(4) 小括
積極説の根拠の候補として,法人税法 22 条の 2 の格納場所ないし配置場所を手掛かり とした考察を試みた。かかるアプローチのみによって法人税法 22 条の 2 を 22 条 2 項の「別 段の定め」であると断ずることには不安も覚えるが,少なくとも 22 条の 2 の解釈を進め る際の手掛かりの 1 つであると考える(34)。
(32)石毛正純『法制執務詳解〔新版Ⅱ〕』46 頁(ぎょうせい 2012)参照。
(33)法制執務研究会・前掲注(31)186 頁。