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光照射による二酸化炭素の有機物化

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Academic year: 2021

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(1)

Vo1. 31  (1994) 

│論文│

光照射による二酸化炭素の有機物化

中 村 勝 一 , 林 文 彦 *

Conversion of earbon d i o x i d e  t o  organie eompounds by the  i r r a d i a  t i o n  o f  s o l a r  r a y s  

K a t s u i c h i  

NAKAMURA 

and Fumihiko 

H A  Y ASHI* 

(Received: 30 November, 1994) 

Conversion of an inorganic compound (C02) to  some organic compounds was examined in  a  manner of irradiation of solar rays. 

COsaturated water was circulated through an arrangement of pipes  with a gas  sampling  port and a COsupply cylinder, a pump, a reaction vessel and a storage vesse 1.

The reaction vessel was a si1lica made test  tube (2.3 cmcb, 17 cmh)  and sett1ed in  the sun  light. 

The storage vessel also contained COsuturated water and holded a ro11  of a safety vesse1.  After several days irradiation, the products were extructed by the use of diethylether, and  followed by some examinations, gaschromatography, IR spectrum measurements and  GC‑Mass  measurements. 

The resu1ts showed that COconverted to some alcohols and some hydrocarbons. 

1 . は じ め に

その温室効果の故に,地球温暖化の元凶と目されて いる二酸化炭素は,一方では光合成におけるごとし 有機化合物の有力な炭素源であるoしたがって,二酸 化炭素を比較的簡単な方法を用いて,有用な有機化合 物に変換できるならば,地球温暖化防止と有用資源の 獲得という一石二鳥の効果をもたらす。その上,この 変換のエネノレギーとして, Solar  Energyを利用すれ ば,新たな公害を生み出す乙となく, Solar  Energy  を何時でも,何処でも使用できる形に貯える乙とにな

近畿大学原子力研究所,577東大阪市小若江3‑4‑1

*近畿大学理工学部原子炉工学科

乙の論文は1994年12月, 日本太陽エネノレギー学会 .日本風力エネルギー協会合同研究発表会におい て発表したものである。

oこのような考えにもとづいて,すでに二酸化炭素 一水系への紫外線照射による,二酸化炭素の有機物化 について報告したω が,今回太陽光を用いて実験し たので,その結果について報告する。

2 .   実験と結果

実験装置は前報で用いたものを修正して用いた。

反応;槽は,前回は紫外線ランプを内部線源として用 いたが,今回は太陽光を用いるため,紫外線を通す石 英製の試験管〈内径 2.3cm,長さ 17cm)とし,図l に示したように,貯留ビン,チューブ・ローラーポン プを配置し,テフロンチューブで連結した。途中に,

ガスサンプリング口,二酸化炭素補給口を設けた。二 酸化炭素流量は, 100ml/minとした。照射による二酸 化炭素濃度の低下は,二酸化炭素ボンベより補給口を 通して補給した。図 2に↑印で示したのは,乙の補給

(2)

/// 

安 全 ピ ン

安 貯

全 留

ピ棺i プ ボ化

ン 時

べ素 図1 実 験 装 置

反応槽

による濃度の上昇である。

照射光量は.LI ‑COR. INC. (盟和商事株式会社〉

製の LI‑1776Solar Monitorを用いて,その光量子 数を測定した。

照射中の二酸化炭素の量的変化は,ガスクロマトグ ラフ(カラム;Porapak N.オーブン温度;40oC.キ ャリアーガス;ヘリウム 1kg!cm2)で調べた。結果は 図2~r示した通りであった。

照射終了後,反応槽,貯留槽内のすべての液から,

生成物をジエチノレエーテルを用いて抽出し,完全に脱 水後,分離カラムにOV‑lを,キャリアーガスにヘリ

ウム (lkg/cmりを用いてガPスクロマトグラフィーを 行なった。乙の時の昇温プログラムは,初期温度;40  Oc.初期時間 4分,プログラムレート;10oc/min. 

最終温度;120oC.最終時間;15minとした.結果を 図3に示した。

また,生成物を NaCl上にコーテイングして,赤 外線吸収スペクトノレを測定した。図4~とそれを示し

T

図3で見られた,主な生成物と思われる 1‑‑6のピ ークについて.GC‑Massスペクトノレを測定した。結 果を図5--10~r示した。

b

J 6

f

持 富

E

20  40  60  80  照射光量 (E/m2

図2 太陽光照射による二酸化炭素の減少

Detector  FID  Column  OV‑l 

Program  Initial  Temp. 

lnitial  Time  Rate 

Final  Final  Carrier 

400C  4 min. 

10

C/min.

Temp.  120  oC  Time  15min.  I‑Ie (1 l~g /cm

3 照射生成物のガスクロマトグラム

‑ 20

(3)

Vol.  31  (1994) 

3 .   結果の検討

図21と見られるように,二酸化炭素はおよそ1.3‑‑ 1.8%/E/m2 (O.58X 1O‑1‑‑O.80X 10‑1mol/E/m2)の割 合で減少している。受光面積はおよそ O.78XI0

m2 であるから,量子収率はO.74X10‑5となる。

図3からは,図中に1...6で示した主たる生成物の ピークを見ることができるo

乙れらの生成物は,図4から.‑OH C3,300cm‑1)を 持つ物質,一CH(2, 920cm-1• 2, 860cm‑1, 1, 460cm‑1 ,  1,375cm‑1)を持つ物質. >C=C< (1,645cm‑ ,1 720cm‑1)を持つ物質,或いはそれらのうちのこ個或 いはすべてを持つ物質の混合物であることを示してお

り,明らかに有機物が生成した乙とを示しているD

%  100 

近畿大学原子力研究所年報 図3中のピーク1のGC‑MassスペクトJレ(図5)か らは,乙の物質は分子量88であり,分子式は

C

5

H

12

0 .

C4Hs02が考えられる。前者はpentanol,後者はbu‑ tene‑diolと見られるが,前者を 2‑pentanol,後者を l‑butene‑2 , 3‑diolと見れば, M/Z 43の顕著なピー クは説明できるが, MjZ 73(CHs)のピークの小さ いこと,および赤外線吸収スベクトノレで.>C=Cく 構造を示している乙とから,後者の可能性が高い。

図3中のピーク2は,その GC‑Massスベクトノレ

〈図6)から,ピーク1の物質にさらに‑CH2および H20 が付加した物質の可能性が,きわめて高い。

さらに,図3のピーク 3, 4, 5, 6はその GC‑

Massスペクトノレ(図7,8, 9, 10)に見られるよ うに,それぞれ, C15H s2 • C16Hsh C1sH ss • C2oH42の 分子式を持つ飽和炭化水素であると思われる。

80 

60 

40 

20 

4000  3000  2000  1500  1000  500  図4 照射生成物の赤外線吸収スペクトノレ

Cln‑1. 

100弱

43 

Fhu A

8

ω

︿ 宮司 63

50  100  150  M / Z   図5 ピーク 1のマススペクトル

(4)

100 96 

100  96 

~

43 

(¥j 

ft, "d 

8

F !:I

怠~.......  <1:  Q ) 、

100  96 

105  120 

8

H . 8 H H .

2

︿

2 4

百官民

50  100  150  M / Z  

250  M / Z  

︒ ︒ ロ

d

u a

A︿

2

0

図6 ピーク 2のマススペクトノレ

57 

7 1  

85 

50  100  150  200  図7 ピーク3のマススペクトJ

57  43  71 

85 

50  100  150  200  図8 ピーク4のマススペクトJ

‑ 22

250  M / Z  

(5)

1 .  

100

57 

I 43 

1I1  (I)~

s::; 

......噌

活 再'( 1 ) 可..明r

71  85 

50  100  150  200  250  300 

M/Z  図9 ピーク5のマススペクトノレ

100  96 

57  71  43 

︿

85 

127 

50  100  150  200  250  300 

M/Z  図10 ピーク6のマススペクトノレ

4 . ま と め

乙のことにより,太陽エネルギーを貯蔵し得る乙とが 立証された。

炭酸ガスー水系への太陽光照射によって,前報で報 告した紫外線照射とほぼ同様の結果を得た。すなわ ち,単に太陽光中で,水に二酸化炭素を循環させる,

という簡単な方法により,公害物質と目されている二 酸化炭素を燃料として有用な有機化合物化変換でき,

参 考 文 献

(1)  中村,紫外線照射による二酸化炭素の有機物 化,平成3年度日本太陽エネルギー学会・日本風 力エネルギー協会合同研究発表会講演要旨集.

οっ

図 21 と見られるように,二酸化炭素はおよそ 1 . 3 ‑ ‑ 1.8%/E/m 2  (O.58X  1 O ‑ 1 ‑‑O.80X 1 0 ‑ 1 m o l / E / m 2 ) の割 合で減少している。受光面積はおよそ O.78XI0 → m2 であるから,量子収率はO.74X10‑ 5 となる。 図 3 からは,図中に 1

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