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(その2:配線用遮断器における電磁反発力の解析)

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(1)

     有限要素法による磁界解析の応用研究

(その2:配線用遮断器における電磁反発力の解析)

伊藤昭吉* 河瀬順洋*1*

Appl jcation of Magnetic Field Analysis by Finite Element Met,hods

(Part 2 : Analysis of Repulsion Forces in Molded Case Circuit Breakers)

Shokichi l to* and Vosh i hiro Kawase

 Recently, current l imiting molded・ case circuit breakers by which faults are ruptured rapidly and reliablli土y of power supPly is raisen are widely used in Iarge power dis七ribu七ion systems。   lt  is necessary for the optimum design to analyze the repulsion forces on七he con七act sys七e旧s in七he circuit breakers.  ln this paper, 七he forces genera七ed elec七roma8ne七ically are ob七ained by 2−D and 3−D デini七e elemenも 朔ethod taking into account magnet ic saturation of the i ron yoke by which the repu lsion forces are forced. And then, the djfferences between 2−D and 3−D finite e]ement analysis are discussed. As the result of d iscussion, i t is concluded tha七 3−D analysis can quan七lta七lvely calculate 七he repulsion forces in circuit breakers。

1. まえがき

 近年の大電力配電系統では、非常に大きな短絡事故電流 を遮断する必要がある。しかも、急速に遮断して事故が広 がらないようにして、電力供給の信頼性を高めることが強 く望まれている。事故を感知して遮断器の引き外し機構の 爪が外された後で、遮断器の接点が開き始める通常の遮断 器では、この要望に亦えられない。これに応えるものとし て、爪が外れるのを待たないで、接点に流れる事故電流で 作られる電磁反発力を利用して、高速度で開く機能を備え た配線用遮断器がある。このような遮断器は、限流形配線 用遮断器と呼ばれ、事故電流が最大値に達する前に遮断を 始めるので、事故の系統に接続されている機器のダメージ が軽減される効果ももたらす。

 この配線用遮断器の設計では、事故電流によって接点部 に発生する電磁力の大きさの解析が必要になるほか、接点 問のアークを消弧室内に磁気駆動するための電磁力の大き さの解析も必要になる。アークの磁気駆動力の解析につい ては、すでに前鞭Dで報告した。ここでは、磁性体の非 線形を考慮した三次元有限要素法の磁界解析〔2)を応用し て、隈流形配線用遮断器の電磁反発力の詳細な解析を行っ ている。これまで、三流形配線用遮断器の電磁反発力の解

 * 電気工学科

** 岐阜大学 工学部 電子情報工学科

  平成5年8月9日受理

析を行った報告(3・4)は少なく、しかも、それらの解析は 実際の形状と合わないモデルを用いた二次元解析で得られ ているから、定量的な解析ではなくて定性的な解析で終わ っている。三次元解析で得られた結果と従来の二次元解析

(5)による結果とを比較して、この三次元解析による方法 が限流形配線用遮断器の電磁反発力の大きさを計算で求め る設計、ずなわちコンピュータ支援設計(CAD)に使え ることを明らかにする。

 解析に用いた三次元有限要素法の計算のためのハードウ エアとソフトウエアの詳細については前町で述べているの で省略する。

2. 三次元非線形静磁界解析法

2.1基礎方程式

 磁気ベクトルポテンシャルAを用いた三次元静磁界の基 礎方程式は次式で与えられる。

rot( v rot A )= ,Jlo (1)

ここで、 Je:強制電流密度、レ:等方性磁性材料の磁気 抵抗率

2.2有限要素法による非線形静磁界解析

 非線形反復手法にニュートン・ラプソン法を用いれば、

解くべきマトリクスは次式になる。

(2)

津山高専紀要第32号 (1993)

      [eGi) {.6u,} 一 一一(G,}

       (2>

        (i,ノ== 1,2,……,nu)

ここで、nuは未知節点の総数、 Glは(1)式にガラーキン法 を適用したときの残差で、fi U」は次式で定義されるベクト ルである。

{δ吻}冨{δんノ,δん,,δAti}7 (3)

 (2)式のマトリクスを解き、6  UJが十分小さくなるまで 反復計算すれば、磁気ベクトルポテンシャルの非線形解が 得られる。

3. 電磁反発力の計算法

 磁界中の電流には、フレミングの左手法則に従う電磁力 が作用する。この力Rは次式で表される。

IT =1×B (4)

ここで、1:導体の電流、B:導体中の磁束密度  有隈要素に分割された導体に働く力は、各要素に働く力 fを合成することで求められる。

(a)閉路状態

y

Fl

F2

可動導体

o o

4. 電磁反発力解析のためのモデル

 解析には、電磁反発力を増大させるU字形の磁性体ヨーー クを設けた限流形配線用遮断器を取り上げた。

 図1はこの遮断器の解析に関係する部分の概略の構造を 示す。同図の(a)は、遮断器の接点が開く直前の状態を 示し、また、図の(b)は接点が最大に開いた状態を示し

ている。

4.1電磁反発力の解析のための二次元のモデル化

 図1(b)のような構造を二次元モデルで表そうとすれ ば、y−z面に平行などこかの垂直断面の形状でモデル化 するしかない。従って、ヨークの中心に断面を決めれば、

解析すべき二次元モデルは図2(a)に示された形になる。

図からわかるように、二次元モデルでは、上下の接点問を 流れるアーク電流の影響が無視されてしまうことになるの で、正確で定量的な解析結果は決して得られない。また、

図2(a)の二次元モデルに対応する接点構造は図2(b)

に那された形になるので、V字形に開いた導体とは似ても 似つかない形になるから、さらに不正確な解析結果が得ら れてしまうことになる。

﹇1﹈

可動導体        U字形ヨーク       Fり

dzw z

z2『2馳 一ク

o

固定導体 z

x (a)二次元モデル (b)接点構造

アーク

(b>最大開極状態

O 字U X■

y

Z

  図1 限流形配線用遮断器の接点構造

Fig・1 Cont,act system of a current 1 imiting molded    case c i rcu i t breaker

 図2限流形配線用遮断器の二次元モデル化

Fig.2 2−D modeling of the current, limiting molded    case circu i t breaker

4.2電磁反発力の解析のための三次元モデル化

 解析領域の四面体要素の三次元分割は、二次元分割図の 積み上げ方式をとっているので、三次元モデル化では、分 割を容易にするためと導体とアークの電流の連続性を保つ ため、接点、導体およびアーークの断面積を岡一にした形状 とする。対称性菜考慮すれば解析モデルは1/2でよい。

4.3解析モデル

 図3と図4に解析に用いた三次元モデルの形状寸法を示 す。図3は閉路状態、図4は最大開極状態のモデルである。

二次元解析のモデルは、図5に示すように、U字形ヨーク の中心の断面図の形状としている。

(3)

︑葭畷

卜上下

40

  ど

判1

    7一=

F一一一一一一一一一一一一.一,一一一一一m::一::L:

3.2511.25

 図3

Fig.3

      吻けい2     t65

三次元モデル(閉路状態)

3−D model (closed position)

      3,2511.25       −IM

閉路状態

最大開極状態

tr 1

 2

  図4 三次元モデル(最大開極状態)

Fig.4 3−D rnodel (maximum opened position・i)

5,000A

5・ 二次元解析と三次元解析の結果および比較検討

5.1二次元有隈要素法による磁界解析結果

 図5は、閉路状態と最大開極状態の二次元モデルを示す、

 図6は、5,000A、10,000Aと20,000Aの遮断電流におい て得られた磁束分布の例を示す。

↑︒卜 潭.O唄 ﹇﹈口

器.= ll

9

卜£.eっ一ト

u

 ロ

ー,ge−2

10,000A

v 20,000A

(a)閉路状態 (b)最大開極状態

図5 二次元モデル

 Fig.5 2−D model

 図6 磁束分布(二次元解析)

Fis.6 Flux distributions (2−b analysis)

(4)

津山高専紀要第32号 (1993)

5.2三次元有限要素法による磁募解析結果

 図7は、閉路状態の導体とU字形ヨークの三次元要素分 割図を示す。図8は、最大開極状態の導体とアークの部分 およびU字形ヨークの三次元要素分割図を示す。

  U字形ヨーク y

し、

  z 固定導体

可動導体

周Z

y

N

隔梛

N

受    z

(a) s,oooA

y

、  、 、

、 、 1

、 11∠1

可動 、1 導体

固定 「   ,  9

導体 「    ,   ,

ヨーク y

︑一﹁︑︑声こ︵L︐ljl

 /

x z    x

(b)10,000A (c) 20,000A

図7 三次元要素分割図(閉路状態の導体およびヨーク)

Fig.7 3−D mesh (conductors and yoke i n the closed    position)

yし∵ ダZ

図8 三次元要素分割図(最大磁極状態の導体、

   アークおよびヨーク)

Fig.8 3−D raesh (conductors, arc and yoke i n    the max irnum opened pos i t i on)

 図9は、最大開極状態における5,000A、10,000Aと20,

000Aの遮断電流において得られta磁束密度ベクトルの分布 の例を示す。

5.3電磁反発力の計算結果

 有限要素法による磁界解析の結果得られだ導体部分の磁 束密度を用いて、(4)式から二次元および三次元解析の場 合の電磁反発力の計算式が得られる。解析に取り上げた嫡 流形配線用遮断器の接点構造は一点切り構造であるから、

可動導体は回転動作となる。それ故、電磁反発力はトルク

[N・rn]で表す式で求める。

  図9 磁束密度ベクトル図

Fig.9 Flux density vectors at y−z plane(x=O)

(1)二次元解析の電磁反発力(トルク)の計算式  電磁力が発生している導体の微小長さdzにかかるトルク dTは、図2を参照して次式のように表される。

  dT=z.Fv.dz=z.1.Bx.dz (5)

ここで、Fy:単位長あたりの電磁力のy方向成分、 B。:

導体の磁束密度のx方向成分、1:導体の電流

 有功要素に分割された導体では、ヨーク間の導体長(Z2

−2a)に働く全トルクTは次式で求められる。

・誘㍗dTr乃梶」・…B・・…zdz

  ほ =Σli〔e)Bix(e)(z22−z!2)/2   i冨1

(6)

ここで、Ii(e):要素eの電流、B;,(e):要素eの磁束 密度のx方向成分

 図10と図11は二次元解析で得られた遮断器の閉路状 態と最大開極状態の電磁反発力と電流の関係を示す。

(2)三次元解析の電磁反発力(トルク)の計算式

 三次元直角座標を図1のように決めれば、可動導体全体 に働く電磁反発力(トルク)は、各要素に働く力によって 生ずるトルクを加え合わせることで得られ、次式で求めら れる。

     ロ

   T=:Σ1i{eきLCe》Biz(e♪ri(。》     (7)

     i=1

ここで、Ii(e》:要素eの電流、 Biz(e):要素eの磁束 密度のZ方向成分、正iCe):要素eの電流方向の平均長さ、

rlくe):可動導体の回転中心から要素eの重心までの距離

(5)

有限要素法による磁界解析の応用研究(その2:配線用遮断器における電磁反発力の解析) 伊藤・河瀬

且。

8

  e

:  4

  2 in

  o 鯉一2

 −4

一e

    ×

〉く

.,ii//

x

    ヨけ 電流  1 (kA)

且o

e

TO

F,

図10 二次元解析による電磁反発力と遮断電流の関係     (閉路状態)

Fig.10 Relationship between repulsion force and     interrupting current by 2−D analysis     (closed position>

6  4  2  0  

2

      一︵E.Z︶﹂尺趙圏

4

/イ×

F,

図12

Fig.12

1 0    2 0 電流  1(kA)

F,

三次元解析による電磁反発力と遮断電流の関係

(閉路状態)

Relationship between repulsion force and interrupting current by 3−D ana}2}sg−ig一

(closed position)

日 4

乞 2

風  o

輝一2

      F

._。二4二∫

一一一一一..一一一Mh一黶D.一.一一一 ...一一一一一一一一一一.sL.L2je

     電流  1 (kA) F:

G

.  4

V   2 千ぐ o

R;O 一 ,

      F       /

     _一て二×F

as一O 2 0  電流1(・r㍍=

図11 二次元解析による電磁反発力と遮断電流の関係     (最大開極状態)

Fig.11 Relationship between repulsion force and     interrupting current by 2−D analv.sis     (maximum opened position)

図13 三次元解析による電磁反発力と遮断電流の関係     (最大開極状態)

Fig.13 Relationship between repulsion force and     interrupt;ing current by 3−D anal).itsis     (maxi murn opened position)

 図12は、遮断器の閉路状態の電磁反発力と電流の関係 を示す。図中のF!は上部導体に働く電磁反発力、F2は下 部導体に働く電磁反発力、Fは合成の電磁反発力である。

 図13は、遮断器の最大開極状態の電磁反発力と電流の 関係を示す。

ど大きな違いは見られないが、遮断器の最大開極状態では、

その違いの割合が大きくなる。これより、二次元解析では 実際の形状と異なるモデルを使った数値計算のため、一見 定量的に見える結果が得られても、それは定性的な比較に 使える結果しか得られないことが明かである。

5.4二次元解析と三次元解析の比較

 二次元解析と三次元解析によって得られた電磁反発力の 計算結果から、両者の問に違いを生じることがわかる。遮 断器の閉路状態では二次元解析と三次元解析の問にそれほ

6. むすび

 ワークステーション用に開発された有限要素法による三 次元非線形磁界解析法を用いて、限流形配線用遮断器の電

(6)

津山高専紀要 第32号  (1993>

磁反発力が定量的に求められることを明らかにした。従来 の設計では、二次元非線形磁界解析による定性的検討か、

もしくは実験的検討によるcut&tryの手法が用いられ、

最適な製品開発までの設計・試作開発期間が長くなり、そ れに伴う試作コストの増大などの無駄が避けられなかっta。

本手法を応用すれば、遮断器・開閉器および接触器などの 製品開発の最適設計にかかるコストの大幅な削減ができる。

 本研究で得られた結果をまとめると以下のようになる。

 二次元解析では、三次元的な導体の形状を考慮できない し、接点間を流れるア・一・ク電流の影響を無視してしまうの で、定量的検討はできず定性的検討しかできない。

 これに対して、三次元解析では、

(1)電磁反発力に影響を与えるアークの電流が含まれだ三 次元形状のモデルによる磁界解析によって、開極に使われ

る電磁反発力が定量的に求められる。

(2)最大開極状態では、固定導体によりU字形ヨークの磁 気飽和が起こって、上部導体と下部導体の電磁反発力に影 響を与える。

(3)閉路状態の遮断電流と電磁反発力の関係は、おおよそ 遮断電流の2乗に比例して増大するが、電流が大きくなる と磁気飽和の影響が現れる。

(の最大開港状態の遮断電流と電磁反発力の関係は、固定 導体の電流によるU字形ヨークの磁気飽和の影響が強くな

り、増加の割合が小さく直線変化に近くなるが、三次元解 析では、アーク電流による電磁反発力の増加が考慮される ので、二次元解析の結果より大きくなる。

 最後に、常々ご指導を頂いている岡山大学工学部教授中 田高義先生に深謝いたします。なお、本研究費の一部は、

中国電力技術研究財団の平成4年度研究補助金によったこ とを付記する。

参考文献

(1)伊藤、河瀬:『有限要素法による磁界解析の応用研究   (配線用遮断器におけるアーク磁気駆動力の解析)」

 津山工業高等専門学校紀要30号、13頁(平4)

(2)河瀬、菊池、伊藤:「直流電磁石の過渡動作特性の三  次元数値解析」、電学論B、111巻、10号、1051頁(平  3)

(3)J.A,Wafer: Low Voltage CurreRt Lieniting Breakers  Using the Slot Motor Principle ,A713B Conf・ Rec・

 tEEE 1AS Annu. Meeting,15th,Vo1.112,p406(1980)

(4)A.Abri et a1.:  Finite Element Analysis EIectro−

 magnets And Contact Systems l n Low Voltage  Circu i t Breakers , }EEE Tr. on Mag., Vol.26 No.2  p.960(1990)

(5)中田、伊藤、河瀬:r有限要素法による交直電磁石の  設計と応用」森北出版(平4)

参照

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