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国際法の受容と近代化・主権国家・在来秩序の変容 /持続

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Academic year: 2021

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国際法の受容と近代化・主権国家・在来秩序の変容

/持続

著者 秋月 望

雑誌名 明治学院大学国際学部付属研究所研究所年報 =

Annual report of the Institute for International Studies

号 11

ページ 53‑54

発行年 2008‑12

URL http://hdl.handle.net/10723/503

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国際法の受容と近代化・主権国家・在来秩序の変容/持続

秋 月 望

  先日、北京オリンピックの聖火リレーを契機に、チベット問題が大きくマスコミで取り上げられた。

しかし、ニュースとしての大きな扱いに比して問題の所在が明らかになったとは言い難い。特に日本 や韓国では、チベットに名を借りた「反中国」意識の噴出という側面も否めない。

  チベットにおける3月の「騒乱」から聖火リレーへの抗議行動が続く中で、チベット仏教の最高指 導者ダライ・ラマ14世は、「チベットの独立は求めない。外交や防衛は中国のもとにあることで構わ ないが、仏教、文化、教育、環境に関して我々は中国のもとで自治を持ちたい」と述べている。これ は、ダライ・ラマ自身が19886月のストラスブールにおける欧州議会で表明した「中国からの独 立なき自治」の路線をそのまま継承したものである。ただ、この「独立なき自治」については、具体 的イメージとして描き難い部分がある。なぜならば、他者に外交や防衛だけを完全に委ねた「自治」

が主権概念の中でどのように成立し得るのか、また、宗教や文化等は外交や防衛と切り離すことが可 能なのかといった現代社会における根元的な問題がそこに横たわっているからである。

  筆者は、以前、「魚允中における〈独立〉と〈自主〉」という論文で、朝鮮開化期における朝鮮と清 の関係について考察したことがある。19 世紀後半、朝鮮の官僚魚允中は、外部世界から朝鮮への圧 力に対抗するため清との華夷的宗属関係を利用しようとして、日本や清に対して「朝鮮は〈自主〉で はあっても〈独立〉ではない」と言明したことがあった。もちろん、21 世紀のチベットの状況とは 時代背景も異なるし、用いられている用語の概念も同一ではない。

  また、イギリスからの香港返還と「一国二制度」について、ダライ・ラマがチベットの未来像とも 重ね合わせて発言していることから、チベットの「独立なき自主」は、前近代の宗属関係との連関性 ではなく、社会主義・資本主義といったイデオロギーや生産様式の共存の問題としてとらえることが できるかもしれない。しかし、「一国二制度」の発想もまた、一つの広がりである〈天下〉の中には 多様なあらゆるものが共存し得るという世界観の具現化という仮説も成り立つ。

  すなわち、チベットの「中国からの独立なき自治」も、西欧秩序の受容以前の在来秩序という文脈 の中でも検討されるべきといえよう。

  前近代の華夷的宗属関係にあっては、中原に存在した王朝国家とその周辺にある諸国家の間に存在 した引力とその反作用との中で、現行の国際法や主権国家の枠組みでは把握できない国家(王朝)関 係を結んでいた。それが国際法(万国公法)の受容過程でどのように変容し、今日にどのような影響 を保持しているのかという問題意識からアプローチしている我々の研究プロジェクトにとって、チベ ットの〈自治〉と〈独立〉の言説は、まさに核心論点の一つである。

  冷戦構造のもとで、社会主義イデオロギーに立脚して安定しているかに見えていた多民族国家とし ての中国の民族政策は、冷戦の終焉とともに矛盾を露呈するようになってきた。特に、国境の外側に 国家を有する民族(朝鮮、モンゴル)や強固な宗教的背景を有する民族に対する辺境政策や少数民族

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政策は、主権の限界線としての国境線の設定の当否疑義とも相まって様々な難関に直面している。

  本プロジェクトでは、東アジア世界の境界や領域をめぐる問題を、国際法と主権国家の枠組みのみ で切り取って解釈するのではなく、前近代までの伝統的な世界観の変容と持続の問題意識をも加味し ながら考察を進めていく。これによって、様々な局面で起こっている摩擦と葛藤について、その解決 にいささかなりとも新たな展望を提示できればと考えている。

※本報告書は国際学部付属研究所共同研究『世界秩序の変容と国家−「万国公法」の受容と中華システ ム−』の中間報告書である。

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