• 検索結果がありません。

アフリカにおける自然資源の持続的利用と地域開発 : 最終報告書

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "アフリカにおける自然資源の持続的利用と地域開発 : 最終報告書"

Copied!
37
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

アフリカにおける自然資源の持続的利用と地域開発 : 最終報告書

著者 勝俣 誠

雑誌名 明治学院大学国際学部付属研究所研究所年報 =

Annual report of the Institute for International Studies

号 11

ページ 13‑48

発行年 2008‑12

URL http://hdl.handle.net/10723/507

(2)

「アフリカにおける自然資源の持続的利用と地域開発」

最終報告書

研究プロジェクト代表

  本報告書は、報告発表と第三者によるコメントの2部からなっている。まず第1部はプロジェクト に参加した研究者と外部の協力者が20082月に3日間にわたり開催した3年間の研究成果を踏ま えた8つの発表を中心に構成されている。

  第2部は、本研究会にのみ参加し、社会人類学の視点から考察した坂井真紀子氏によるコメントで ある。なお本報告の作成に関し、本研究会の記録を無償で引き受けてくれた同氏に心から感謝したい。

また多忙にもかかわらず休暇をとって事例報告をしていただいた内野香美氏にも心からお礼を言いた い。

目  次 第Ⅰ部 報告1. ケニア 平山

報告2. セネガル Diop 報告3. ギニア 古市

報告4. セネガル 内野 報告5. 屋久島・ウガンダ 手塚 報告6. ウガンダ 古市 報告7. コンゴ民主共和国 古市 報告8. 屋久島 手塚 第Ⅱ部 学術コメント 坂井

日にち:2008213日(水)~ 215日(金)

場 所:ラフォーレ伊東

1日目(213日) 参加者:勝俣、Diop、手塚、平山、坂井

イントロダクション

メインテーマ:フィールド調査をもとに、森林の資源の持続的利用と人びとの生活について研究。

伊東での合宿の目的:上記テーマについて、古市が東アフリカを、勝俣が西アフリカを担当。平山が あとから参加。最終年に3年間の研究成果を分かち合う。

第Ⅰ部:研究報告編

(3)

自己紹介

Mansour Diop(以下Diop):環境保全省の森林局の林務官(ティエス Thiès 州)。職務は、住民の生 活を改善しながら、自然の保全を行なうこと。サヘル地域において、水不足や、樹木の減少など、

近年ますます乾燥化が進んでいることを生活の中で実感している。植林の努力が必要。今回の発表 では、私たちが現在取り組んでいる活動を紹介する予定。植えることと同時に、森林資源の伐採条 件を改善して住民の最低限の消費(薪、炭、建設など)を確保しつつ、消費量を節約する努力も必 要。改良かまどの普及などの活動を行なっている。

      ウォロフ語 « ban+ak+suff(粘土+砂)» foyer amélioré 改良かまど

また、20 年前より青年協力隊による緑の推進プロジェクトの担当として、長く日本のボランティ ア青年たちと交流を続けてきた。当時プロジェクトの委員だった勝俣先生とはそのとき以来の学び 合う友人。

手塚堅至(以下 手塚):鹿児島県出身、23 年前に家族とともに屋久島に移住、屋久島で調査してい た古市さんと知り合う。ヤクタネゴヨウという絶滅危惧種の保全活動の NGO をやっている。今回 20056月に古市さんの調査地(ウガンダ・カリンズ森林)で行なった周辺の住民たちの森林 利用や生活形態に関する調査の結果を発表する予定。森の中のベースキャンプからバイクで毎日イ ンフォーマント 5 家族を訪問。2000 年には安渓遊地さんの交流プログラムで、ケニアのカカメガ 森林を訪問。翌年はカカメガの人びとを屋久島に招待し、森林保全に関する交流をおこなった。

坂井真紀子(以下 坂井):緑のサヘルで 1994−98 年にチャドにコーディネーターとして駐在、その 後パリ第一大学で開発社会学を専攻(チャド南部における参加型村落開発について)、去年12月に 学位取得、帰国。

平山恵(以下 平山):もともとは公衆衛生の専門。80年代後半にはカリブ海諸国でNGOとして活動。

ハイチとドミニカ共和国の国境では、森林の減少を目の当たりにする。コスタリカでは「動物の回 廊」プロジェクト(動物を地面に走らせ、その分に含まれた様々な種をまく)、裸足のタクソノミ スト(植物分類学者)プロジェクト=人びとに地域の有用植物の知識を伝播するプロジェクトに関 わった。

内野香美(以下 内野):セネガルの協力隊で野菜隊員としてティエスに赴任。その後、複数の NGO でマリ、セネガルなどで砂漠化防止の活動など、その後コンサルタント。現在は JICA で地球環境 部野給水分野の担当(20083月まで)

勝俣誠(以下 勝俣):本研究会の代表。最後の3年間のまとめシンポジウムの結果を報告したい。将 来は成果をまとめ、一般向けに出版を考えている。自然科学系ではなく開発経済学が専門。西アフ リカとくにセネガルがフィールド。ただ開発からの視点だけではものが見えなくなる。社会開発や 自然科学など様々な分野の人と共同研究し成果をまとめたいと思う。

(4)

発表1(平山) ケニアにおけるFFSFarmers Field School)の実践と考察

  FFS FAOが支援している活動で、80年代に農薬の過剰使用の問題をきっかけに始まった。当時

Dirty Dozen(汚い12種類の農薬)といわれる農薬がダンピングされ途上国に流れ込み、社会問題

となっていた。フィリピンやインドネシアのCBO(Community based Organization)やPAN(Pesticide

Action Network)などが中心となって始まった活動。農民が力をつけるサポートをFAOがサポートを

始めた。

  そもそも80年代初めに京都の環境NGO(地球人Earth People)で農薬問題に取り組んだのが、FFS との最初の出会い。まさかアフリカでまたFFSに出会うとは思っていなかった。JICAFFSFAO

(国連食糧農業機関)主導のプログラムだと思っていると思うが、本当は草の根の活動から生まれた もの。青空学校で、農薬の危険性や利用方法などについて農民たちが学習した。

Diop:ティエスでも日本の無償援助で農薬のスミチオンを少量もらったが、効果や危険性を局レベ ルで試したがシロアリ駆除には効果があった。

  そもそも公衆衛生の専門で、研究室で残留農薬の検査をしていた。日本でも農薬が母乳にかなり残 っている。日本にとっても途上国にとっても同じ問題。90年代にこの問題にWTO(世界貿易機関、

1995年設立)が介入してくる。当時WHO(世界保健機関)で働いていたが、FAOWHOのジョイ ントコミッティーで残留農薬の世界基準を決めていた。WTOが設立された1995年に「ハーモナイゼ ーション」という言葉とともに残留農薬の基準が下がっていく。食生活が地域によって違うので、例 えば日本でのコメの消費量は他地域より多いが、基準が下がると日本人の食生活では多くの残留農薬 が体内に入ってしまう。細川政権時代に米が自由化し、残留農薬の基準が緩まる。厚生省の年次報告 書(厚生白書)では、1995WTOの設立とともに残留農薬に関する報告が削除された。

勝俣:アメリカの圧力で、貿易自由化を促進するために農薬の基準がハーモナイゼーションの名の元 に緩和されてしまった。

  今回のケニアのFFSは、80年代終わりのインドネシアやフィリピンで見たFFSとずいぶん形が変 っていたが、いい部分もたくさんあった。参加者は圧倒的に女性。

FFSの三つの柱

1) AESA Agro Ecosystem Analysis:農民自身が農業エコシステムを分析

2) Group Dynamics:グループの力を使う。エンパワーメント。

3) Special Topics:その土地固有の問題を取り扱う。ニーズアセスメントをしっかりやる。

たとえば、アンズの接木のスクールがある。

手塚:住民によるエコシステムの分析とは?

平山:住民がいくつか比較実験してその土地にあった方法を探し出す。(水のやり方、接木の有無、

など)一年間の流れの中で小さい失敗も経験しながら、よりよい方法を自分たちで探る。計測 方法のトレーニングなどもやっている。

(5)

グループダイナミックスを指導する役目が村のファシリテーター。村で複数のファシリテータ ーを育てる予定。現地語(ここではスワヒリ、カンバ語)で読み書きができることが条件。地 域は、ナイロビ近郊地域3箇所。さらにJICAは全国展開を考えている。

ファシリテーターになると、少しの報酬がもらえるが、主なインセンティブは研修に参加でき ること。県の研修センターに数泊でき日当および文具などの支給を受け取れる。女性にとって はまたとない旅行の機会、年に11週間。そのほかはバックストッピングといって、林務官

(県の公務員)がファシリテーターとして村に出張して研修を行なう場合もある。

今回のミッションは、林務官ファシリテーターの質を上げることが目的。話を聞くと、彼らが 研修を受けるまでの葛藤がよくわかる。最初は「自分たちは技術屋だ。なぜファシリテーショ ン技術などやらなければいけないのか。」と拒絶していた。が、FAO の萩原さんという社会林 業の専門家が強行に押し切って研修に成功。その結果、林務官のファシリテーターは住民とぴ ったり近づいている。ダンスや歌を使って技術を伝達。スペシャルトピックとしてカシュナッ ツの販売が取り上げられている。

林務官は一人を除き全員男性。たった一人の女性は残念ながらほとんど機能していない。反対 に農民のファシリテーターはほとんど女性。そのあたりが難しい。

勝俣:セネガルでは女性の林務官は?

Diop:少しずつは現れているがまだ少数。

勝俣:対象になっている森は誰が所有しているのか?

平山:住民が勝手に使っている。実験に使っている場所は共有地(Communal land)。実際にそこで学 んだ技術は自分の畑などで使うなど自由。

勝俣:個人が自由に使える土地があるということが前提ですね。

平山:ああ、もしかすると土地のない農民もいる可能性がある。

勝俣:例えばセネガルでは、木を一本切るにもお上の許可が必要。だから盗伐がある。

平山:そこは訊きます。セネガルでは土地所有の境界ははっきりありますか?例えば、奈良の実家で 10年前まで隣との境界線がよくわからなかった。くいを打ったのが10年前。

勝俣:私も日本の山林でくい打ちに立ち会った。いずれにせよ今回の調査で土地に対する人口圧力で、

土地が希少化し土地争いが顕在化してきていることがわかった。

平山:シリアでは誰もボーダーがわからなかった。かなり適当なのではないか。

内野:セネガルのように広いところはいいが、マダガスカルのように平地が少ないところは境界線が はっきりしないと困る。

平山:そうしたプロジェクトの中から、どういう要素が、自然資源を守るよう人びとを動かしている のか。彼ら自身がアクションを取るのはどんなときか。林務官によるファシリテーションと農 民のファシリテーションはどう違うのか。FAO FFS をサポートするようになってどうなっ ているのか。JICA が全国展開する際に、国レベルのマスタートレーナー(林務官のファシリ テーターを教育する立場)が必要になる。ファシリテーターはみなマスタートレーナーの3

(6)

月のフィリピン大学の研修を受けたがっている。FFS はもともと農業分野から発生した。ケニ アにはすでに農業分野のマスタートレーナーが育っているが、農業省のマスタートレーナーは それを特権としていて、林業省とシェアしたくない。

勝俣:例えばセネガルには、村落の総合的な開発を担うセクション(CERP: Centre d’Expansion rurale

polyvalent)があり、JOCVもそこと協力していたが、ケニアはどうか?

平山:ケニアに総合的な村落開発のセクションがあるかどうかわからない。農業と林業は縦割りで、

経験を移転してもらえない。農業は収入に直結するが、林業は直接的な収入に結びつかない。

JICA はよく林業でチャレンジしたと思う。林業省のトップに政治的なコミットメントがある ことですくわれた。

勝俣:林業省と環境省は別になっているのか?副大臣になったマータイさんは環境省?林業省?

平山:環境省。日本のようにその中の一つということもありうる。チェックしてみます。

勝俣:省どうしの現場での主導権争いは、日本では例えば通産省と建設省。地下水開発は通産省だが、

地表水は建設省の管轄。地元のニーズはそっちのけ。

平山:マスターファシリテーター研修には中央のオフィサー2名は不適任だと意見を出してきた。む しろ地域のファシリテーターの中で、住民に密着してニーズをよく理解し、土着の知恵を持っ ている適任者が何人かいたのでFAOに推薦した。JICA も「高卒でもいいから優秀な人に行っ てほしい」と推薦。だが FAO は学歴の低さを理由に反対。エチオピアでの研修には中央のオ フィサー2名が送られたが、それはおかしいのではないか。彼らは中央でペーパーワークに忙 しく、フィールドに出る時間がない。現場の経験がないのでわからない。いくら修士を取って

Director

Officers

カンバ・女性  キクユ・男性 

ADFO出身。

修士だったので すぐオフィサーに。

個人的に情熱を 持ってコミット。

(成功要因)

フィリピンでのマスター ファシリテーター研修を 希望するが、中央の事務職 のため現場がわかってい ない。だが高学歴(修士)

なのでFAOは推薦してい る。

F F F F F F F F F Directors & Assistant Directors of Forest officers (ADFO)

Foresters Facilitators Facilitators

林業省 

(ナイロビ) 

地方行政  レベル 

(7)

いようが地域特有の問題に対処できない。農業省も高学歴の役人をマスターファシリテーター にしていて、同じ問題を抱えている。

今回は、研修トレーニングと同時にマスターファシリテーター選出のクライテリアを彼ら自身 に作ってもらった。

  それではどういうファシリテーションをしたら、地域のためになるのか。そうした問いに対して、

彼らは「アウェアネス(気づき)「意識化」などの用語で曖昧に答えようとするので、それをつぶす ために、全部絵を描いて具体的に説明してもらう。こうした参加型開発の流行語ばかりが出てくるよ うなお決まりの調査はしたくない。具体的に「意識化」とは何を意味するのか絵に描け、というとみ んな困る。この方法はかなりうまくいった。今回の対象は一番下の林務官ファシリテーター対象。デ ィレクターレベルにも試したが、彼らは「絵が描けない」といった。

5ステップ:すべて絵で表現する。

1. 望ましい状況(Desired situation)

2. 現状

3. 未来予測(Future prediction)

ギャップ分析=pre-regret:このまま行ったらどうなるか?→気づき

4. 具体的対応策(Counter measure):プラス方向へ行く方法とマイナス方向を避ける方法を 考える。

5. Time Line – Plan of operation:時間的ゴール、必要資財などを決め、それまでに何を行な うか計画立て。

このステップを通して、彼らが何をやろうとしてきたのがかみえてきた。

内野:マダガスカルの経験などを振り返ると、基本的な流れは変らないように思う。対象者が普段文 字で報告書を書く立場だったりすると、こうした方法がやりにくい。人によっては新しい気づ きがあるのでは。

平山:Future predictionが他のところでは抜けているのではないか。

内野:その部分は住民たちのディスカッションにでてくるが描くまでいかない。

平山:何回も絵に描いて、具体的にイメージすることを徹底的にやることでずいぶん違う。文字の世 界に浸っている日本の場合も同じように効果がある。

勝俣:Conscientizationなんて、みんな何でそんなことを知っているわけ?

平山:援助機関が広めたからです。Awareness Conscientization、アフリカで大流行。(cf. Robert Chambers)

勝俣:援助機関がそこから言いたいことは?

平山:自分の現状に気づいて、理屈ではそこから自ら動くだろうということ。R. Chambers が開発し た調査手法(PRA、PLA)1を、20〜30 代の若い人たちが学んでいるが、手法使いになって しまい現場で役に立たない。日本の農村開発を実際に経験したことがない。例えば JICA

(8)

PRA・PLA を開発調査に導入するようメニューに書いてある。協力隊の中でも村落開発普及 員などは、その分野の修士・博士を修了している人を募集。今とても高学歴。アフリカのコン

サルもPRA・PLAを標榜して仕事を取る傾向。JICAはまた地元に任すといってお金を出す。

タンザニア、ガーナ、セネガルにもある。セネガルである JOCV隊員がひどいPRA をやった が、理屈ばかりで見ていられなかった。JICA JOCV 向けに研修に使ったが、全く住民のニ ーズに合っていない。ただゲームに参加させているだけ。また世銀が作った PRA キットを使 う人もたくさんいる。

坂井:フランスで、こうした手法の批判をしている人類学者などのグループが本を出している2 平山:JICAの未定稿の社会林業マニュアルにPRAに関する記述があるが、きちんと説明できない時

代に書かれたものなのでこのまま使うと大変なことになる。執筆者の意図と違うことを、アメ リカやイギリスで開発学を学んだ人たちがやっている。

勝俣:この問題も批判的に分析する必要がある。どのように執筆者の意図と違うのか。

平山:40代はじめから30代の海外で学んだ人たちは、日本でやったことがない。それまで頭で理解 してきたことを海外の現場で試すチャンス。JOCV が一番ひどい。実験場にしているんじゃな いか。(Chambers のいる)サセックス大学に日本人留学生が殺到して、大学側が日本人を制限 したこともある。知識があれば何でもできるという思い込み。海外の現場では、10 年後どん な状態になっているかの責任を問われない。日本の農村開発に関われば責任を問われる。責任 感が違う。JOCV も専門家も同じ。日本でもっとトレーニングしてから行くべき。アフリカの 農民も忙しいのに、ゲームにつき合わされるのは迷惑。アクションに対して長期的な検証が必 要。Picturizationはデータとして残し、事後評価に具体的に使える。

勝俣:Paulo Freireの識字教育から、「意識化」についてポジティブなイメージを持っていた。

平山:識字教育を勉強する人は Freire を学ぶが、「意識化」とはなんなのか具体的にわかっていない。

なぜ中東に関わり、学生といっしょにアラビア語をやっているか?文字が書けない困難を体験 する。そこから「意識化」を深めていく。本を読んで、自分が体験しないことでも知識を咀嚼 することでわかった気になってしまうことを乗り越えたかった。

ファシリテーション研修の内容

A) Communication skill:スペシャルトピックを伝える技術 B) Moderation skill of FFS:FFSの進行役の技術

C) Planning and Organization skill:先の5ステップを遂行する技術 キーワード

・Keep it Simple with Smileとにかく簡単に言う。

・Picturization:頭の中に状況を映像として思い浮かべる技術。マテリアルに頼るVidualizationでは ない。

町づくりアドバイザーとして、日本の過疎の村(新潟、秋田、福島など)の村おこしでやって きた手法と同じ。時間的な制約がある場合に、どうやって本音を語ってもらうかを試行錯誤し た。

(9)

ポイント

・“I” time ←“We” time

  秋田の村調査、男性は出稼ぎなどでうちにいない。10 カ年計画のための全戸調査では、女性の 意見は反映されていなかった。女性たちの本音を聞きだすために、いま一番気になっていること 20 項目を左に書き出してもらう。右には絵を描いてもらう。上位 8 項目目ぐらいまでは、一般に 言われていること(減反、嫁不足、雪かきなど “We” の問題)だが、下位に下がるにつれて個人 の状況(“I”)が登場してくる。

勝俣:学生のレポートも、しばしば一般的な解説になってしまい、自分はどうなのかが出てこない。

・Focus group discussion:高校生、中学生、保護者など、ある特定のカテゴリーのグループで話し 合いをする。“I” time – “We” timeで、それぞれが自分と向き合った後だからこそ、グループダイ ナミクスが働く。

cf. 中学生のグループで、「高校を卒業したら村を出て行け。ここに居てもうだつは上がらない。 と親から言われる。だが、地元に残って農業を継ぎたい高校生もいる。→大人の思い込みを

“I” timeに戻して問い直す。

cf. 政府のお金でアメリカの大規模集約農業を見学してきた人たちが、それを真似して失敗。自分 たちが「本当はどんな農業をやりたかったのか」に立ち戻るきっかけになった。

・5 step analysis(C):マクロの視点でとらえられるか。

・Episode talking(ABC)– Episode taking(C)

  数量的なデータだけでは現状は把握できない。Picturization をするために、個人レベルのエピソ ードを丁寧に集めることが大切(聞き書き)。質問の仕方にもトレーニングが必要。どうやったら エピソードを話してもらえるか?それが Episode Taking。聞き取る側が自分の体験をまず話す、他 地域でのエピソードをきっかけにするなど。ケニアのフォレスター対象の研修でもこのトレーニン グを行なった。

内野:質問の仕方は統一するのか?違う質問をばらばらにすると公平でなくなるのではないか?目的 が具体的にあるときはいいが、一般的な問題を探る場合はいいこと・悪いことという評価を質 問に入れないほうがいいのではないか。

平山:それぞれの人の心に占めている問題を聞くので、定量化するわけではない。尋ね方はケースバ イケース(ex. 最近いいことがありましたか?なにか問題があったんですか?など。)公平さ はいらない。時にはトリガー(引き金)になる質問できっかけを作ることも。フォレスターの 耳には地域の様々なうわさが入ってくるので、それを話のきっかけにすることができる。質問 を固定すると、固定された答えしか出てこなくなる。

(10)

・Micro Teaching(A)「人間は人の話を聞かないものである」

  長々と演説するよりコンパクトに伝えたほうが効果的。5〜20 分で新しい知識を伝えるメソッド。

  FFSで学んだことを、井戸端会議などでさらに参加しなかった人に伝える方法としても有効。

1) イントロ:Trigger(引き金)になる言葉を導入してポイントをクリアにする。

2) 目的

3) メインメッセージ

4) アセスメント:どれだけ理解したか、実際にやってもらう、話してもらうなどして確認。

5) Summary(絵や歌などを使ったまとめ):メッセージを記憶に定着させる。

  大体社会林業ではメッセージの流れ(procedure)を図で見せる場合が多い。

・Picturization(ABC)

・Talk Ball(B)

・Trigger引き金(AB)

・Fragging(B)

*カッコ内の(A、B、C)はファシリテーション研修の内容区分。

2日目(214日) 参加者:勝俣、古市、Diop、手塚、内野、坂井

勝俣

昨日の発表 1(平山)へのコメント:秋田での村おこし(住民への聞き取り調査)の経験を、アフリ カで試した場合の共通点と相違点を明らかにしたら面白い。外部からの介入に際して、様々な調査が 行なわれている。形式的な手法に陥らず、地域の本音を聞くために行なった様々な試行錯誤や工夫を ふまえて、ケニアの女性たちが森を利用し木を植えていく活動をとらえ直すと、地域研究らしさが増 すとおもう。JICA作成の参加型マニュアル(未定稿)を批判できれば。

セネガルの事例に関する説明(勝俣)

  セネガルはサヘル地域、東アフリカと違って雨が少ない(年間降水量約 500mm)。(ウガンダは

1400mm、屋久島は4000mm。)こうした地域において森林減少は深刻。歴史的には、森林行政はフラ

ンス植民地が、軍事的必要からフランスの法律をそのまま持ち込んだ(1930年代〜)。いまでもセネ ガルでは水森林課(Eaux et Forêt)というように、フランスでは水と森林はセットになっている。国 土はすべて国が所有、地域コミュニティーは利用権を持つ。全森林のうち 14%ほどは Forêt classée

(保全林)で住民の侵入と利用が法によって制限されている。Diop さん自身は林務官として、警官 のように銃を持ち不法侵入を取り締まる立場である。60−70 年代の大規模造林の時代を経て、80 代から住民参加のコミュニティーフォレスト作りに大きく政策が転換している。彼は実際に自分たち で植林をした村々と長年仕事を続け、こうした変遷を肌で経験しているので、今回のテーマに貢献し

(11)

てもらえると思う。

  1960 年代は、「農村を総合的に開発する」(Multi disciplinaire)との目標を掲げて、農村開発がスタ ートした時期。アフリカ社会主義の流れの中で、農民をいかに動員するかということがポイントだっ た。農民を「無知」と位置づけ、あらゆる問題に対処する知恵を役人が教えなければいけないという 発想。そのためのツールとして農民組合が結成された(農薬、近代的農具…)。管轄は以前は内務省、

いまは自治省。その後 60 年代末、大干ばつがあり、国主導の大型造林計画を行なう。住民の積極的 な植林参加はなかった。80 年代より、予算のかかる大型造林から経済的な参加型に移行。資材の供 与を一般住民、グループに行いながら植林の参加を促した。90 年代以降は、PRODEFI(内野氏の発

4)のようなミニプロジェクトに移行。JICA では植林などアフリカのプロジェクトを地球温暖化

対策に結びつけたい意向あるようだが。

内野:現在、JICAの中で二つの流れがある。一つは 20085月の第4回アフリカ開発会議TICAD を前に日本の援助をどう示すか(対アフリカ)、もう一つは地球温暖化対策。この二つを結び つける傾向はある。気候変動対策室などの設置もあるが、実際に結びつけられる人材がいない。

過去のプロジェクトを、「気候変動対策」になっていたと振り分け、無理に意味づけする傾向 に終始している(対応策or緩和策)。実際には対応策・緩和策を主軸においた案件は作られて いない。TICAD もあるし、緒方さんも注目しているので、じゃあ地域はアフリカで。という 安易な発想。

勝俣:国際レベルの開発テーマに、これまで地道に地域でやってきた努力が振り回されてしまう懸念 がある。住民にとっての自然環境の意味を見直しつつ、どういう介入が可能なのかという問い を持ち続けるべき。

発表2(Mansour Diop) セネガルにおける砂漠化に対する行政の取り組みの現場報告

  砂漠化がどのように進行しているか、それにどのように対処しているかを、自分の林務官としての 経験を元に話したいと思う。

  セネガルは大きく分けて、5 つの気候区分に分かれる。北よりサヘル気候帯(サバンナ)(年間降

水量300〜400mm)、北スーダン気候帯(500〜600mm)、南スーダン気候帯(800〜1200mm)、熱帯雨

林のあるギニア気候帯、海岸沿いのカナリー気候帯(温暖少雨)。1970 年代の旱魃前はギニア気候帯 のジガンショールでは年間降水量が1200〜1500mmだったが、その後900〜1000mmに減少している。

  1974年から、環境省森林局の林務官として34年間働いてきた。ジガンショール3年、カオラック 9 ヶ月、その後カザマンス、そしてティエスに赴任して現在に至る。環境資源の保全と利用を管理す るのが主な仕事。1970 年代の旱魃以降、セネガルでは降水量の減少、地下水の低下、土地の疲弊に 伴う植生の減少、風・水による土壌流出などの問題が深刻化してきた。汽水域付近では塩害が出るよ うになった(塩類集積窪地)。農産物や海産物の収量が減少し、従来の伝統的生産システムが大きく

(12)

崩れる。経済的困難が住民の出稼ぎによる離村傾向に拍車をかける。砂漠化の問題は、社会の開発に 関するあらゆる問題と繋がっている。

  こうした事態に対し、国は森林保全の戦略を見直した。70 年代までの大規模造林では、FAO など の国際機関が複数介入し住民に賃金を払って植林に動員していたが、大規模な予算を必要とするのに 成果が上がらない。国家の経済負担を減らしつつ、成果を挙げるために人びとが自発的に森の必要性 に気づき積極的に植林に参加する(Conscientisation:意識化、自覚)方向性が打ち出された。

質問(勝俣):なぜ援助機関は旱魃後に援助額を減らしたのか?

Diop:援助側の評価の結果、長年のプロジェクト終了後、フォローアップ不足で植林地の管理が十 分行なわれていないことが指摘され、予算が削減された。そのため住民自ら砂漠化が実生活の 問題であることを啓蒙しなければいけない。

勝俣:実は、意識化とか啓蒙普及(Conscientisation, Sensibilisation…)などの用語は独立直後から農 村部の活性化(Animation rurale)の一環で用いられている。いったいどこが違うのか。平山さ んは「意識化」などの言葉の独り歩きにうんざりしていたので、ここに居たら面白かった。

古市:Sensibilisationという言葉は上からというイメージがものすごく強い。

勝俣:無知な農民を教育するという・・・。

Diop:以前はお上がすべてを決め、住民の通達し参加させていたが、現在は住民が自ら決定するよ うになっている。なぜなら住民のほうが地域の問題に精通しているから。

坂井:国際援助機関の方針の変更は具体的にどの時期か?

Diop:ドナーの態度の変化は旱魃と関係はない。20 年をこえる支援にもかかわらず、大規模造林が

芳しい成果を残せなかったというマイナスの評価。援助側が予算を減らしたのは 1990 年初め。

これは国際的な傾向で、セネガルだけではなくアフリカ全体が予算削減にあった。

坂井:国際的には、80 年代末の社会主義諸国の崩壊によって、国際援助が東ヨーロッパなどに流れ た。またアメリカや日本などの経済危機もあり、アフリカへの予算が減少したという裏事情も 考えられるのでは。

勝俣:新しい方向性というが、1960 年代からセネガル社会主義はすでに草の根レベルに決定権を与 えると約束していた。そのころの「住民動員(Mobilisation populaire)」と現在の「住民参加」

とはどこが違うのか?

Diop:セネガル政府は地域住民に多くの希望を与えていた。60−70 年代のシステムとしては CERP

(Centre d’Expansion Rurale Polyvalent)という村落総合開発公社の下に畜産、農業、林業、保 健衛生、識字などの職員がセンターに集まり、各村を訪問し住民の生活状況の調査や話し合い からニーズを聞き出す。当時はドナーの援助で車やバイクの支給などがふんだんにあったので、

村回りを十分にできた。その調査を元に、職員が地域のプロジェクト案をレポートにまとめ総 務庁(Secrétaire général des ministères)にあげるシステム。関係省庁は、それを元に予算立て を含むアクションを決定する。

ところが現在はCERPの予算が減少。各省庁が別々に地域に職員を配置している。自分の職場 のケースでは、五段階に関係省庁が別れている。下から、ブリガード(実働部隊)、その上が

(13)

検査本部(Inspection du département)、Inspection régionale(地域本部)、森林局(Direction des

Eaux et Forêt)、一番上が環境保全省。現場からニーズが上がってくると、郡責任者から中央政

府レベルまでボトムアップで具体的な必要資財の見積もり書を上の機関まで回す(cf.植林本 数から必要な水、種、ポット、人員などにかかる費用を算出)。3、4 月雨季前の話し合いで最 も忙しいとき。同僚やJOCVのボランティアとともにバイクで村訪問、ニーズを確定する。森 林局のもつ予算に合わせて費用が支払われ、実際の作業が始まる。住民が話し合いで植林地を 選定、雨季の5〜8月までに育苗、8月までに植林を行なう。

Mbolo の国営の森林局育苗所で苗木を生産していたが、村までの輸送の問題があるので、最近

は住民にセミナーで技術を伝え、村内に住民自ら育苗するよう指導している。森林局は住民苗 畑に育苗ポット、熊手、じょうろなどを支給する。

勝俣:このシステムが60年代のAnimation ruraleと違うところは?

Diop:以前は、森林局の育苗所で生産したものを無料で配っていたが、今は住民が村で生産してい る。必要経費の50%は住民側が負担し、経済的にも参加することで責任感を喚起している。

坂井:100%住民側が必要資財を負担し、森林局に技術セミナーだけを希望するケースはあるか?

Diop:あるがごくまれ。これまで多くのNGO やプロジェクトが来て資財の供給、資金、技術研修な

どを行なった地域もあれば、まったく援助の恩恵を受けていないところもある。そういったと ころには、技術研修をまず行い費用の50%を自己負担でやる。

内野:JOCV は基本的に技術移転だけで資材供与はない。だが現場に何もない。着任後、資材申請を しても3ヵ月待たなければいけない。住民と一緒にどうやって種を手に入れるかなど知恵を絞 った。ボランティアは自腹を切って、必要資財を購入するケースもあった。

  セネガルの北部では、3、4、5 月の強風に対して、海岸砂丘にネットを張り暴風防砂林を植えるプ ロジェクトを大規模に行なった。樹種はモクマオウ、ユーカリなど。

  第1期は国主導による大規模造林に対し、第2期は社会林業。住民自身が植え、森林局の職員はア ドバイザーの立場に退く。3、4年ほどで住民は恩恵を受けられる。

内野:これまで日本はアジア諸国で大規模造林を行なってきたが、プロジェクト側の調査不足などか ら、地域住民の中には反感を持つ人もあり、放火などの妨害があった。そうした事態の中から、

住民の参加をベースにしたコミュニティーフォレストリーというアプローチが生まれた。

Diop:植林の成果を 3〜5 年も待つのは難しいので、その間果樹や野菜栽培などのアグロフォレスト

リー、堆肥を作り化学肥料を減らすなど、短期間で住民たちが豊かさを享受できるよう様々な 活動を取り入れている。

  樹木の乱伐を防ぐために、199818日に国は森林法(Code forestier)を制定。違法伐採した場 合の罰則が非常に厳しく定められている。例えば、認可を経ず伐採を行なった場合、現行犯は即逮捕、

100,000CFA(=約1.8万円)の罰金。

  日本に来る直前に、植林地を保護していた金網150mと鉄筋300本が盗まれる事件があった。夜中 2 時に警察とともに村のチェックポイントを張っていたところ、ほろをつけた小トラックが来た。中

(14)

身を検めると、金網と鉄柱300本を発見!その一味はすぐさま逮捕。ティエス州の裁判所に送られた。

法律に従い4ヶ月の禁固刑と1,500,000CFA(=約20万円)の罰金。泥棒は建設ラッシュのトゥーバ

(Touba:イスラーム教団ムーリッド派の聖地)で高く売るつもりだった。日ごろ、植林地の監視を 頼んでいた近隣の住民が電話で通報(司会の註:Diop さんはその人に毎月携帯のプリペイドカード 代を支払っている)。犯人は他の村から来た。

  違法伐採の場合の罰則は、伐採した地区、伐採した量により違う。Forêt Classée(保全林)が一番 厳しい。例え自宅に生えている木でも、伐採する場合には許可を取らなければいけない。

  2001 年に、騒音、廃棄物、大気汚染などを規制し生活環境を守る目的で環境法が制定された。セ ネガルでは、子供の命名式、結婚式などの祝い事は非常ににぎやかに行なわれるが、あらゆる集まり は法律で夜中 12 時までと定められた。この分野も森林局職員と警察機構(gendarmerie)が巡回して 取り締まる。大気汚染に関しては、排気ガスを出す工場は煙突を高くするなど対策を行なわないと罰 金をかせられる。新しい法律を住民が理解するようあらゆる現地語でラジオやテレビ、ポスターで啓 蒙普及(sensibilisation)している。

内野:憲兵隊(Gendarmerie:軍直属の警察機構)の存在は重要だと思う。警察に近いが、マダガス カルでは機動力があるので植林の啓蒙啓発をするという。もともとフランスの制度から?

勝俣:都市では警察、農村部では憲兵隊。憲兵隊は軍直属だが、軍隊とはユニフォームの色が違う。

警察のように治安のみ役割のため自ら攻撃できない(cf. コソボにフランスは憲兵隊を治安維 持に派遣)

Diop:写真説明。種子の採取は、若すぎず古すぎない中年どころの樹からきれいで健康そうな種を 選ばなければならない。

学名:Parkia bigrobosa(地域呼称:ネレ)、Tamaridus indica(地域呼称:タマリンド) 次に採取した種を乾燥させる。

村の女性に賃金を支払って鞘取り作業を頼む。写真はマンディング系の村。

学名:Azadirachta indica(地域呼称:ニーム=インドセンダン) マンゴー、レモンなど、森林局の育苗所。

国の環境プログラムの一環で、4 つの小学校で児童対象に育苗指導を行なっている(Mbolo ら近隣5km以内の村)

手塚:育てた苗木はどこに植えるのか?

Diop:校内に共同で植えるのと同時に、各児童が2〜3本もってかえり地域に植える場合もある。

種類は、学校の生垣や風除けに、プロソフィスやユーカリなどを作っている。

  女性対象の環境教育。女性は日常の労働を通して、環境に関する様々なことを理解しているので、

彼女たちに力をつけてもらうことは重要。例えば貸付などは男性に比べて、女性のほうが返済は確実 で信頼できる。植林グループを作ってもらい、共同の金庫に植えた木の間伐で得た収入を貯金。それ を森林局は支援し小規模貸付のシステムを設置。金庫の資金のうち半分は、共有資財(薬や村の集ま りに使う大なべ、椅子)を購入し、メンバー以外の人には有料で貸し付ける。残り半分は、メンバー に利子つきで貸し付ける。金庫は共同のセミナールームの壁に埋め込む場合もあるが、90%が銀行に

(15)

預けている。

古市:共同金庫の収入から、各メンバーが現金支給を受けるなどの恩恵は受けられないのか?

Diop:メンバーの子供が病気でお金が必要など緊急の場合に限り、必要額を供与することはある。

そのためには、病気の重さなどにより金額を審議する委員会がる。100,000CFA(=2万円)が 上限。参加メンバーの人数に制限はないが、必ず村内の女性であることが条件。

勝俣:植林とマイクロクレジットを合わせるというのは新しい形。

Diop:村内で日陰を作るよう街路樹を植えているが、苗木が育つまで囲いを作り家畜の害から守る 必要がある。

PREVINOVAはオランダとFAOの共同プロジェクトで、ユーカリの植林を推進している。

学名:Eucalyptus  camaldulensis

勝俣:ケニアの山間部では上流でユーカリを植えると、下流域で水量が減り農業に影響が出ると村民 に教えられたことがある。

内野:ユーカリジレンマという番組があったが、降水量が十分ある地域では有益。悪者にしてはいけ ない。

Diop:ユーカリを民家や野菜畑のそばに植えると、畑の水が取られてしまうので住民は嫌がる。ユ ーカリは居住地域から離れたところに植林する。

最後です。ラッパのついた森林局のマーク:現在と将来の世代のために森の持続的な管理を!

      « Pour une gestion durable des forêts au profit de la génération actuelle et future »

質疑応答

手塚:天然林と保全林などの割合は?

Diop:指定保全林(Forêt classée)は全体の 14%。絶対手をつけてはいけない。リザーブはすこし規

制がゆるく枯れ枝はとっていい。

古市:指定保全林のなかで植林は行なわれているのか?

Diop:希少な種であれば植林することがある。天然林は南のほうに7〜8%残っている。

手塚:森林局のほかに森林管理に関わる省庁はあるか?

Diop:環境省だけ。その下の水・森林局が直に管理している。

内野:水を扱う省庁は水利省などあるが、地下水や河川の管理であり、森と関係のあるところとは環 境省。

古市:地域にもよると思うが、農村部では大体エネルギーの何パーセントを薪に頼っているか?

Diop:農村部ではほとんど 100%が薪による燃料。農村部では、ガスボンベは高すぎ、大家族では消

費が早く経費がかかりすぎる。現金収入があまりなくガスボンベを買うことができない。

勝俣:農村ではボンベ自体が希少。

坂井:村の中でも裕福層から貧困層までさまざまな社会階層があると思うが、プロジェクトに最も参 加するのはどのあたりの人びとか。

Diop:村の中には二つの階層がある。一つは世帯主が公務員など安定した現金収入のある家庭や、

(16)

イタリアなどの出稼ぎ先から息子が送金してくる家庭、もう一つはそうした外部とのつながり のない家庭。私たちがやっているプロジェクトにはどちらかというと、後者の貧しい家庭の女 性たちのほうが多く参加している。

古市:どこが主体になって植林活動を推進しているのか?

Diop:国が定めた砂漠化防止計画に従って、分野別に各省庁がイニシアチブを取っている。例えば 栄養障害の問題は保健省、植林は環境省が行なっている。

発表3(古市) ギニアコナクリのボッソウ・ニンバ山地域における緑の回廊プロジェクト ヘキサチューブを使った植林の事例報告

  京大霊長類研究所チーム(松沢哲郎教授)が考案した植林した苗木を保護する方法が成果を挙げて いる。ヘキサチューブというプラスチックの六角柱の筒を苗木にかぶせ、成長まで風害や家畜の食害 からまもる。朝露が着くので乾燥を防ぐ効果もある。苗木が成長し枝葉が伸びると、プラスチックの 筒は破られ自然と土に帰る。チューブのコストは1本当たり100円ぐらいか。平たくなるので運搬に 便利。日本からの取り寄せに頼っており、現地調達ができないことが問題。

  詳しくは京大霊長類研究所のHP(http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/index-j.html)を参照されたい。

発表4(内野) ティエス州クール・ンボロ(Keur Mbolo)村における水プロジェクトの事例報告

セネガル総合村落林業開発計画(PRODEFI : Projet de Développement Forestier Intégré)の転換期

  セネガル総合村落林業開発計画(PRODEFI)に専門家として参加した。DVD を使ってその内容を 説明する。PRODEFI は第 1期(2000-2005)と第2 期(2006-2008)に分かれる。プロジェクトサイ トは大きく分けて3つ、まず首都近郊のダカール州、もう一つはティムラといって塩類集積窪地(あ る川と海が重なる地域)塩害の出る地域、ガンビアに行く手前のニョーロ。林業を主体としたプロジ ェクトで環境省森林局の管轄。総合村落開発ということで、林業だけではなく地域住民の生活のニー ズを取り入れている。2002 年におこなった中間評価を境に、プロジェクトの性格が大きく変る。

PDM(Project design matrix)という計画立案のツールを作り変えた。

  何が変ったのかがDVDの「Low risk community based project」(2005)に説明されている。フラン ス語タイトルには Low risk が入っていない。

勝俣:それが隠し味。フランス語で言ってしまうと何か問題が生じるのかも?

(プロジェクターの音声を拡大するため、会場受付に問い合わせ。その間もう一つの事例を内野が紹介)

・ティエス州クール・ミンダオ(Keur Mindao)村における水プロジェクトの事例

この村は井戸が涸れやすく、水不足で 40 年間悩み続け、前大統領時代に村長と青年グループが手 紙で直訴。イスラム系ドナーから小額の援助をもらったことがあるが、根本的な解決に結びつかな

(17)

い。彼らは考えて、7km遠くから水道管を引いてきた。現在では村内4箇所に蛇口がある。ここで は女性が交代で係になり水の販売を行なっている。1 25〜50CFA ぐらいの料金設定。村の中に 水管理委員会を設置し、水道公社への支払いを記録。管理係の賃金や補修資金をまかなえるよう、

高めに使用料金を設定。村内の診療所(日本の援助による)に水道を引いて、衛生的な環境を作っ ている。あるお母さんは水道場のわきで、洗濯洗剤を子袋に分けミニ商売を始めていた。JICA 地域に入るときに「問題はなんですか?」と問いかけているが、ここではすでに住民たちは日常の 問題に直面していて、外部の介入がなくても「問題意識」ははっきりしていた。40 年の年月がか かったが、自分たちの力で解決している。その後ろではEaux VivesというNGOが水道管の設置や 水管理の指導をしている。NGOが見積もり2500CFAのうち25%(6,250,000CFA)の支払いを 要請したら、村側はもうお金はあるのですぐはじめてほしいと返答。

この村では出稼ぎに行く人が多いので現金収入があるので、比較的支払いやすかった。

Diop:個人がばらばらに動いていては、力は出ない。「戦いに勝つために集まろう」という言葉が地

元にある。

内野:これは上手く行っている例。外部からの介入が「意識化」するか、内部から自然に「意識化」

が起こるかによって、その後の持続性が全然違う。この村は、水道公社への支払いが一度も滞 ったことがない。

勝俣:リーダーシップの有無が左右する。

内野:青年リーダーの父親は教育者で、村に初めて学校を作った人。そうした親の影響は大きいので は。彼自身も学校の先生で他の村に赴任している。週末に自分の村に帰って活動。村の成り立 ちは古く1800年代。創立者はンダオさんだったが、現在の村長はチャームさん。

勝俣:チャームという名前は、鍛冶屋(Forgeron)を意味するカーストではないか。

Diop:そうです。プルもあるが、ここはウォロフ。

勝俣:お金があるかといわれて、「ある!」と応えるなんて珍しい。最初に日本の支援があったので しょうか?

内野:ありませんでした。協力隊でティエスに住んでいたとき、写真の青年リーダーと知り合い、村 との付き合いが始まった。

勝俣(Diop さんに質問):農民たちが自腹を切って、自発的に作業し水道管を引くというケースは 珍しいのではないか?

Diop:例外的なケース。25%の中には人件費は含まれていない。彼らの村は地下水の水位が低く、

井戸を掘っただけでは必要な水の確保ができない。長年深刻な問題を抱えて、自分たちで投資 し体を動かしてでも、水を確保する必要に迫られていた。

内野:女性たちの参加について尋ねたところ、地面を掘るのは男性たちの仕事なので、自分たちは働 く人たちに自発的に食事を用意したという。

(その他の写真説明)

・Mont Roland というティエス州にある丘。雨季の雨を溜めるために、政府が貯水池を掘った。家畜 の飲み水や野菜作りに利用。このような政府のイニシアチブを、新聞やラジオで宣伝している。

(18)

・Kayar(カイヤール)では、干物の装置を日本が援助している。

・ティエス近郊の内野家の畑。水道管が引いてある。先ほどの村はこの 200mほど先。畑内のマンゴ ーの苗木はDiopさんのいるMbolo森林局の育苗所で購入した。地元の住民も購入している。

勝俣:森林局の育苗所以外に、民間の苗木業者も市場などにいるのか?

Diop:森林局の元職員などが技術を生かして、個人で苗木を生産し販売するケースもあり、森林局 もそれを後押ししている。以前は森林局で苗木の無料配布も行なっていたが、3、4 年前から やめている。

内野:森林局で買った苗木は接木済みですでに2年たっていたので、自宅に植えて3年(トータル5 年)ぐらいで実をつけた。専門は野菜栽培だが、植林技術は現地で身につけた。乾燥地林業を 勉強した。現地の人のアドバイスに従うと必ず成果が出る。

先ほど保全林(La Forêt classée)で、希少樹種は植林することもあるという話が出たが、我が 家にも希少樹種が生えていた。村の人が守るように教えてくれた。

PRODEFI

ダカールの風景からプロジェクトサイトまでの風景を説明。ニャーロにて苗木作りの風景。

PRODEFIでは植林だけではなく、住民が「やりたい」と思う様々な技術の研修もしていた。

(映像)苗木作り、植林、低い石垣で雨による土壌流出を止め、植生の回復を行なう。石鹸作り、染 色、家畜飼育など。

研修の講師も地域の人から選ぶ。これまでセミナーを受講した人が、自発的にそこで得た知識を周り の伝達することを期待していたが、思ったように広がっていかなかった。そこで、PRODEFI は参加 者に制限を設けず、誰でも受けられるようにした。もう一つは、セミナーを大きな町のセンターでは なく、誰もが来られるように村の中で行なった。

坂井:講師のトレーニングはどこで?

内野:村の中ですでに知識をもっている人にやってもらうので(研修は特に必要ない?)

(写真)土壌浸食を防ぐディゲットDiguette(堤防・土手)。セレールの村。

勝俣:このDVDは普及員対象のもので、住民対象ではない。

内野:育てる以前に、Animateurs communautaires(村の普及員)の素質のある人をまず探すのが大切。

アニメーターから知識が住民に広がっていくことを目指していた。

勝俣:その当たりうまくいきましたか?

内野:あまりよくわからない。

(写真)よく働いてくれるイニシアチブのあるリーダー 勝俣:今もAnimation Ruraleと言うの?

Diop:いまは Animation Communautaire。以前の概念は公務員主導だったが、今は住民のイニシアチ ブを大切にする意味で違う。

内野:この形態にする前は、CERP(Centre d’Expansion Rurale Polyvalent)の人たちに研修を頼んでい て、彼らの技術研修に時間とお金を費やしていたが、成果がなかった。結局、研修に参加した

参照

関連したドキュメント

Linux Foundation とハーバード大学による CensusⅡプロジェクトの予備的レポート ~アプリケーシ ョンに最も利用されている

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

2)海を取り巻く国際社会の動向

環境への影響を最小にし、持続可能な発展に貢

遮音壁の色については工夫する余地 があると思うが、一般的な工業製品

 今日のセミナーは、人生の最終ステージまで芸術の力 でイキイキと生き抜くことができる社会をどのようにつ

自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から

【フリーア】 CIPFA の役割の一つは、地方自治体が従うべきガイダンスをつくるというもの になっております。それもあって、我々、