長崎大学工学部研究報告 第29巻 第52号 平成11午
電子機器用電源の人力電流高調波対策技術
51
松 尾 博 文 *・絵 筆 山 川
SuppressionTechnologyofInputCurrentHam onics inPowerSuppliesofElectronicSystems
by
HirofumiMATSUO*andLishanTU**
Recently,thesocialattentionhasbeenwidelypaidtotheinputcurrentharmonicsofpowersuppliesin electronicandelectricalsystemsasanelectro一magneticcompatibility(i.e.EMC)problem.lnthispaper,after reviewingtheguidelinesoftheInternationalElectrotechnicalCommission(i.e.IEC),troublesandaccidents, generationmechanism,whichareconcernedwiththeinputcu汀entharmonics,weproceedtodiscussthepower electroniccircuitstosuppresstheinputcurrentharmoniesandtheirfundamentalcharacteristics̲
1. はじめに
近年 ,電子機器や電気機器の普及 はめ ざま しく,こ れ らの機器の電源 と して高周波 スイッチ ング方式の イ ンバ ータや コンバ ータが数 多 く用い られるよ うになっ て きた. これ らの機器 を商用交流電源で使用す る場合 には ,従来 ,キ ャパ シタ (コンデ ンサ)インプ ッ ト形 の整流平滑回路 により直流電源 を得 て ,これ に負荷の 電圧や電 力の安定化のためにインバ ータ,コンバ ー タ 等のスイ ッチ ング電 力変換回路 が接続 されている. こ の ため ,平滑 用 キ ャパ シタにパル ス状の電流 が流れ , これ が高 調波 人力電流 を発生 させ る原 因 にな ってい る.機器単体 と しては高調波電流 は小 さい として も, 多数の機器の高調波電流の総量 は非常 に大 きなもの と なる. この ため ,商用交流の電源系統 に接続 された電 力用のキ ャパ シタ,インダクタ, トランス等の加熱焼 棉 ,異常音の発生 ,各種制御機 器や ブ レーカの誤動作 などの事故 が発生す る(1).
この よ うに ,電子機器や電気機器 に用い られ るスイ ッチ ング電源の人力電流の高調波抑制対策 は ,電気エ ネル ギ ー利 用 の 立場 か ら低 周 波 の EMC (Electro‑
MagneticCompatibility,電磁気両立性)の間寓 と して 早急 に解決すべ き課題 となっている. この間題 に対処 す るために,日本国内では通産 省 よ り「家電 ・汎用品高 調波抑制 ガイ ドライン」 が1994年9月に発行 され た(2).
また ,国際的 には ,国際電気標準会議 (International Electrotechnical Commission,略称IEC)よ り1995年3
月にIEC1(料)13‑2(旧IEC555‑2)が提示 されてい る.
これ らの ガイ ドラインにおいては ,電子機器や電気 機器 について,Aか らDまでの クラス分 けが行 われ , 各々の 目標値 に対応す るために ,高調波低減の回路方 式 につ いて ,これ まで数 多 くの研究 ,開発が行 われて い る. ここでは ,まず電子機器 ,電気機器等 における 入力電流高調歪の発生 および これによる障害の例 .総 合高調波歪 ,高調波歪 を持つ電流 お よび電圧の等価 回 路 による表示 ,高調波抑制の ガイ ドラインにつ いて簡 単 に振 り返 る.つ ぎに ,照明用電子安定器 と しての イ
ンバ ‑タにつ いて適用 される最 も厳 しい目標値 で ある ク ラスCに対応す るための回路方 式 を中心 に重要 と 思 われ るい くつ かの回路方式 とそれ らの性能 につ いて 紹介す る.
平成10年10月27日受理
'電気電子工学科 (DepartmentofElectriCalandElectrorLicEngineering) H 海洋生産科学研究科 (MarineProductionScienceandEngineering)
2.電子機器 .電気機器 にお ける入力電流高調波歪の 発生
2.1 入力電流高調波歪の発生
電 子機 器 や電 気機 器 を商 用交流電 源 で使 用す る場 令 ,図1に示 す よ うなキ ャパ シ タイ ンプ ッ ト形 の整 流 ・平滑 回路 が広 く用 い られている. ここで,Cは商 用交流電 源,Dl,D2,D3お よびD4は全波整流用 ダイ
オー ド,Cは平滑用 キ ャパ シタあるいはそのキ ャパ シ タである.整流 ・平滑回路 により,まず一度 ,交流電 圧 eが直流電圧V。に変換 され ,次 にスイ ッチ ング電 源 に よ り所 用の直流又 は交流 の電 圧 や電 力 に変換 さ れ ,安定化 されて ,電子機器 あるいは電気機器 に電気 エネルギーが供給 され る.
図1の回路 で ,キ ャパ シタインプ ッ ト形の整流およ び平滑回路 か ら,スイ ッチ ング電源 ,電子機器 あるい は電 気機 器 の方 を見 た時 の 人力抵抗 をR とすれ ば , 図1の等価 回路 と して図2が得 られ る.図3(a)に示 す商用交流電圧eの実効値 をEe,角周波数 を O とお けばeは次 のよ うに表わ され る.e=
J T 2 E
.sino't,eの正の半 サ イクルでは ダイオ ー ドDlとD2がオ ンとな り,負の半 サ イクルで はダイオ ー ドD3とD。がオ ン
となって ,キ ャパ シタCは図3(b)に示すeの絶対値 Ielの電圧 で充電 され る. この場合 ,通常 ,図3(C)に 示 す よ うに,V。は十分 に平滑 され るよ うに ,キ ャパ シ タの キ ャパ シ タンス Cは決 め られ る. この ため , vcがIeは り小 さい図3(d).に示すolか ら 02,あるい
は03か ら04の位相区間では ダイオー ドD.とD2ある いはD3とD4はそれ ぞれ順方向バ イアス され てオ ン とな り,Cには充電電流i。。が流れて,Vc=ldとなる.
逆 にV。がIdよ り大 きい位相 区間ではすべての ダイオ ー ドは逆方 向バ イアス され てオ フとなる. この時,C はRを遺 して放電す る. したがって ,商用交流電源e か らは図3(e)に示 す電 源電流 iが流 れ る.図の よ う に, iはolか ら02まで ,お よび 03か ら04までの比 較 的狭 い位相 区間でパル ス状 に流れ る. この結果 ,辛 ャパ シタインプ ッ ト形の整流 回路では ,人力電流高調 波歪 が発生 す ることにな る.図2の 回路 で は,oc,
.. . ‑
商用交流電源 亜流回路 平滑回路
図1 キ ャパ シタイ ンプ ッ ト形の電子機 器 あるい は電気機器用 スイ ッチ ング電源の構成例
図2 キャパ シタインプ ッ ト形の回路 (図1の等価 回路)
0 7 亡
lel
0 Vc Tヽ
l
′′ \27/TiDC(= liり
01 0 2∫II 80.3 q43 8 4
図3 図2の回路各部の電圧 ・電流波形
Rの値 によ り,01と02あるいは0。と04が変 わ るので , 当然各高調波電流の大 きさも伽C,Rの関数 となる.
入力電流高調波歪は ,キ ャパ シタインプ.ッ ト形の整 流回路の他 に ,磁気飽和特性 を持つ変圧器 ,リアクタ, 回転機等や非線形特性 を持つ アーク炉 ,高調波電気炉 等 において も発生す ることが知 られてい る.
2.2 入力電流高調波歪 による陣害
電子機 器 あるいは電気歳 暮単体 としては高弟波電流 は小 さい として も,多数の機器の高評波電流の総量 は 非常 に大 きな もの となる. このため ,商用交流の電源 系統 に接続 された電 力用キ ャパ シタ,インダク タ, ト
ランスの加熱焼損 ,異常音の発生 ,電力用制御機器や ブ レーカの誤動作の原因 となる. また,電子歳暮や電 気横器の間の相互干渉による高訴波障害 も重大 な問題 であ り,い くつ かの例 を表1に示す(1).
電子機器用電源の入力電流高調波対策技術
表l 電子 ,電気機器 に対す る高調波障害の例 機 器 名 高 調 波 障 害 音響機器 ・ダイオー ド,コンデ ンサ等 (テ レビ .ステ 部品の故障 ,寿命低下 ,性能低下 レオ等) ・映像のちらつ き,雑音の発生 蛍光灯 ・過大電流 による過熱 ,焼損 コンピュータ ・電源回路部品の過熱
情報関連機器 ・雑音によるシステムの停止 ,誤劫作 誘導機 ・回転数の周期的変動
同期機 ・振動 ,廉音の発生 .効率の低下
ヒエ一一ズ.プ レ
‑A ・過大電流 による熔断 .誤劫作
産業用各種制御
機器 ・制御信号のずれによる誤制御等 コンデ ンサ .リ ・過大電流 に よ る過熱 ,振動 ,餐 昔の
ア ク トル 発生
変圧器 ・蛍音発生
3.歪波電流の フー リエ級数展開 と高調波 3.1 高調波電流 と総合高調波歪率
先 に,キャパ シタインプ ッ ト形の整流 ・平滑回路 に おいてパル ス状の電流 が生 じるメカニズムについて説 明 した.図4は交流人力電圧e(I)と人力電流 i(t)の観 測波形である.図中の電流 i(t)はフー リエ級数展開に
よ り,電厘 E(I),すなわち
e(t)={2Eesina't (1)
の角周波数 O と同 じ基本角周波数の整数倍の角周波 数 を持つ正弦波 の集 ま りと して次 の よ うに表 わ され
る.単位 はアンペア [A]で ある.
i(I)=0.35sin(ot1200) +0.33sin(30)ト570) +0.30sin(50)t‑950) +0.25sin(70)I‑1330)
+‥..‥.. (2) ただ し,式(1)において Eeはe(I)の実効値 で ,図4で
Horizontal:5msec./diy.
Vertical:e;200V/diy.
i;2Aノdiv.
図4 図2の回路の電圧eと電流iの親潮波形
53
はEeは100Vである.
次 に ,キャパ シタインプ ッ ト形の整流平滑回路 ,飽 和特性 を持 った変圧器等のような非線形特性 を持 った 回路 に式(I)の交流電圧 e(t)を加 えた場 合の電流i(I) は ,式(2)を参考に して一般的に表わせ ば
i(I)={2IleSin(ox‑¢1) +J12J2eSin(2ot‑¢2) +J‑2I,esin(3oyt‑中,)
+‥‥‥‥
'{2Inesin(n(ot‑¢∩)
+‥‥‥‥ (3)
の よ うになる. ここでJleおよびJ。eはそれぞれ基本波 および第 m次高調波の実効値 である.
図2の回路で交流電源eか ら整流回路の方向を見た 場合の高調波電流 を含む等価回路 は図5の ように表わ
され る.但 し,Z.は
Z.=Eee'+I/Ie. (4)
で あ り,基本波電流 il(I)に対す るイ ンピーダンスで ある.
高調波成分 を含む歪波電流i(I)が正弦波 か らどの程 度変形 しているかを知 る一つの 目安 として ,総合高調 波歪率THD
すべての高調波の実効値 基本波の実効値 I£+I,2e+・‑←IL+‑
Ile および高調波比IJIle
I.K 第n次高調波の実効値 Il。 基本波の実効値 が用い られ る.
(5)
(6)
3.2 高調波電流による電圧歪
図5では電源eの内部 インピーダンス Z.を無視 し, 高調波電流 in(n=2,3...)は交流電源eに環流す るだ
けで ,負荷 Z。にはi。は流れない と仮定 していた. し か し,実際の系では図6に示す ように内部 インピーダ ンスZIが存在す る. したがって ,インピーダンスZ。
の両端には電圧eによる基本波電圧vleに加 えて高調 波電圧vneが生 じる. ここで,Vleお よび vneは
vle‑lz do,/(zIto,十ZoJ ]El, (7) V.e‑lzL(.晶 hJtzI.no,・Z4.0,日Iq no, (8) とな る. これ らよ り,zoの両端の電圧の総合高調波 歪率THD,は
THDv=小 笠・V3,・・‑
Vl, (9)
となる.
4.高調波規制の動向
電子機器や電気機 器 か ら商用の交流電源系統 に流れ 出 た高 調波電 流 は送配電線 の イ ンピー ダ ンス を介 し て ,高調波電圧 に変換 され ,交流電源系統 の電圧波形 を歪 ませ る.図7は1988年4月に測定 され たテ レビの 視聴率 と高調波発生 による総合電圧歪率 との間の関係 を示 して い る(1). この図 よ り,両者の間 には強 い相 関 があることが分 かる. この よ うな高調波の発生 は表1 に示 したよ うに電子機 器や電気横器の間で相互 に誤動 作や障害 を与 える.
これ らの高評波の影響 を抑制す るため に ,高調波電 流の規格 と して IEC(国際電気棟準会議 )では1982年
IEC555‑2規格 を発行 した(4)が ,その後 ,全面 的 な見 直 しが行 われ,1995年3月にIEC1000‑3‑2規格 を発 行 した(3).
EU(ヨーロ ッパ連合)では,1995年7月にIECと 同一 内容の EN1000‑3‑2規格 が発行 され た.一方 ,日 本国内 においては,1994年9月に通産 省 よ り 「家電 ・ 汎用品高調波抑制対策 ガイ ドライン」発行 され たが(2),
これ はEUのEN1000‑3‑2と同様 にIEC1000‑3‑2とは とん と同一 の内容 で あ る. そ こで ,以下 ,IECIOO0‑
3‑2の規格 につ いて簡単 に振 り返 る.
電子機 器や電気機器 の 中で一般の低電圧 配電系 に接 続 され, 1相 当 り入力電流 が 16A以下の積 器 に対 し て,IEC1000‑3‑2では高詞波の限度値 に関 して ,機器 が次の よ うにクラスA,B,C,Dに分類 され る(3).
(1) クラスA :平衡3相機器 および他 の ク ラスに属 さ ないすべての機器
Z.=Eeeill/Iel
i。=(2I.,sin(nd+¢n) ただ し,n=1,2,‑,m 図5 高南淡電流 を含む等価 回路
Zl
in={2IdeSin(not+¢n)
ただ し,n=1,2,‑,m
図 6 人力高調波電流 によ り高調波電圧 の発生
(2) クラスB:ポータブル工具 (3) クラスC:照明機器
(4) クラスD :図8に示す よ うに ,入力電流iの各々 の半周期の波形 につ いて ,電流波形 の ピーク値 i。を図の 中央線 M とレベル 1に合 わせ る・ この 時 ,各 々の半周期の少 な くとも95%の期 間で波 形 が図 に示 す包絡線 の範 囲内 にあれ ば ,その機 器 はクラスDになる.
クラスA ,Cお よびDに分類 され た機器の入力高 調波電流の限度値 をそれ ぞれ表2,表3お よび表4に 示す .又 ,ク ラスBの機 器の限度値 はク ラスAの機 器の限度値の1.5倍の値 で ある.
ナレどの*■■
=Ⅲ
日 日 日W= 日
日
N 日 日 = M日 日t̲2‑11
書■キJ・さ出■St
12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 8 12
* 合 t圧 ひ ず み+ (6kYホ)
暮 大I小■
12 18 0 6 12 L8 0 6 12 18 0 6 12 158 ‑→1‑ 16日 一一】・‑ 17日 一一l‑ L8El
図7 高調波 の調査結果(1)
O n/3 n/2 27C/3 7⊂
u)1
図8 クラスDと して判断す る特殊図形
表2 クラスAの機器の限度値 高調波次数 最大許容高言精液電流
n A
奇 数 高 調 波
3 2.30 5 1.14 7 0.77 9 0.40
ll 0.33
15≦n≦39 0.15×(15/n) 偶 数 高 調 波
2 1.08 4 0.43
6 0.30
電子機器用電源の入力電流高調波対策技術
‑ 表3 クラスCの機器の限度値 高瀬波次数 ・照明装置の基本波入力電流の
n 百分率 として表 され る最大値(%)
2 2
3、 30×A
5 10
7 7
9 5
(Aは回路の力率) 表4 クラスDの機器の限度値
高調波次数 電力比例限度値 最大許容高調波電流
∩ mA/W A
3 3.4 2.30 5 1.9 1.14 7 1.0 0.77 9 0.5 0.40 ll 0.35 0.33
5.入力電流高調波抑制のための回路方式
図1に商用交流電源 を入力電力源 とし,整流平滑回 路 と してキ ャパ シタインプ ッ ト形 を用いた場合の電子 機器 あるいは電気機器用スイッチ ング電源の構成例 を 示 した.通常 ,スイ ッチ ング電源 あるいは整流平滑回 路 における電流の高周波 スイ ッチ ングに基づ く高周波 成分 を除去す るための ローパ スフィル タが商用交流電 源 と整流平滑回路の間に接続 され る. このため ,電子 機器 あるいは電気機器用スイ ッチ ング電源の基本回路 構成 は図9のよ うに表わ され る. ここでは,まず ,整 流平滑の回路方式 と入力電流の高調波抑制の性能 につ いて述べ る.つ ぎに ,整流平滑回路の 中で入力電流の 高調波抑制の性能 が最 も健れているアクテ ィブフ ィル タと出力安定化のためのスイッチ ング電力変換回路 と を結合す ることにより回路の簡単化 を図った複合回路 方式 のい くつ かの例 とそれ らの性能 につ いて紹介す る.
5.1 整流平滑の回路方式
図9の スイ ッチ ング電源の基本回路構成 において , 整流平滑の回路方式 は直流出力電圧の平滑の度合 によ って ,図10(a)の整流回路のみの無平滑方式 ,図10(b) の部分平滑方式および完全平滑方式の3つ に大別 され
る. さらに ,完全平滑方式 は図10(C)のキ ャパ シ タイ ンプ ッ ト方式や図10(d)の チ ョークインプ ッ ト方式の よ うなパ ッシブフ ィル タ方式 と図10(e)の アクテ ィブ
55
竃 ‑‑;I.:'二"
図9 電子機器 ,電気機器用スイッチ ング電源 の基本回路構成
三 ::.,: (a)無平滑方式
≡ ±
(b)部分平滑方式の例
i
(C)キャパ シタインプ ッ ト式 (パ ッシブフ ィル タ方式)
(d)チ ョークインプ ッ ト式 (パ ッシブフ ィル タ方式)
L D
(e)アクテ ィブフィル タ方式 図10 整流平滑の回路方式 フ ィル タ方式に分 けられ る.
無平滑方式では入力電流の高調波抑制 は良好である が ,負荷電流に休止期間が生 じ,出力制御が困難で あ り,実用的でない.部分平滑方式では人力電流高調波 が比較的良好に抑制で き,高力率および高効率 を実現 で きる. しか し,出力制御については若干の問題 があ る.完全平滑方式の中で ,キャパシタインプ ッ ト方式 は低 コス トであるが ,先 に述べたよ うに人力電流の高 調波歪 が大 きい.図10(d)に示 したチ ョークインプ ッ ト方式ではチ ョークによ り高調波の抑制 は比較的良好 で ,又 ,人力側の キ ャパ シタCFにより,位相 を進 め
て高力率 が実現 で きる. しか し,L,C,CFは基本的 に商用周波数 50Hz又は60Hz成分の フィル タである ため ,形状が大 きくな り,電子横幕や電気機器のスイ ッチング電源では小形軽量化の点か ら間虜がある..
一方 ,アクテ ィブフ ィル タ方式 では ,力率 は高 く, 高瀬波歪 を小 さくす ることが可能である. しか し,こ の方式では ,図9に示す ように,アクテ ィブフィル タ 方式の整流平滑回路 とスイッチング電力変換回路の縦 続接続 により,電力効率 が低下 し,回路構成 が複雑 と な り,またコス トの上昇が問題 となる. この ことか ら, 現在,DC‑DC コンバ ータあるいはDC‑ACインバ ータ 等のスイ ッチング電力変換回路の本体部分が同時にア クテ ィブフィル タの働 きを兼ねる複合回路方式による 高調波低減 に関す る研究が注 目されている.
5.2 枚合回路方式 による高調波の低減
人力電流の高前波 を抑制す るためのアクテ ィブフィ ル タと出力の安定化 を図 るための DC‑DCコンバ ー タ,DC‑ACインバ ータ等のスイ ッチ ング電 力変換回 路の縦続接続 を避 けるために,両者のスイッチを共用 す ることによりスイ ッチ ング電力変換回路の本休部分 が同時にアクテ ィブフィル タの働 きを兼ねる複合回路 方式に関す る研究が活発に行われている.複合回路方 式 による人力電流の高調波低減回路 はスイッチ ング電 力変換回路の部分の構成 により1石式 と2石式 に大別
される.
図11は 1石式の基本的なデ ィザ亜流形 AC‑DCコン バ ータで ある̀5).ス イ ッチTrは前段の アクテ ィブフ ィル タの機能 を持つ昇庄形 DC‑DC コンバータと後段 の出力安定化の ための フォワー ド形DC‑DC コンバ ー タの両方の主スイッチ として共用 されている.この回 路 は人力電流高評波の点か らはクラスCを満足 で き るが ,主スイッチ素子の電圧および電流 ス トレス等の ため大電力用には向かず ,およそ1(氾W 以下程度の電 源 に適用 される.
このデ ィザー整流形 AC‑DCコンバ ータの基本形 を 図12(a)あるいは(b)の よ うに変形 ,改良 した回路 が授 業 されている(6)・(7).図12で(a)は図11の回路の ダイオー ドD 2がキャパ シタC2で置 き換 えられている(6). この 回路では ,入力電庄 を制御信号 として周波政変詞 を行 った場合 ,入力力率が0.996,THDが5.3%とい う報 告 がある.また ,図12(b)では,ダイオー ドD2に直列 に L2とC2の並列共振回路が接続 されている(7). この 回路では ,入力電圧 を制御信号 として用いることな く】
人力力率 が0.984,THD が16.6%となり,また ,負荷 の比較 的広 い範囲で 80% 以上の高 い電 力効率が得 ら
図11 1石式の基本的なデ ィザー整流形 AC̲DCコンバ ータ
(a)D 2とC2で置換
(b)L2とC2の並列共振回路 を付加 図12 変形デ ィザー整流形AC‑DCコンバ ータ
図13 磁気結合 を利 用 した昇降庄形 AC‑DC コンノヤータ
れている.
図13は磁気結合 を利用 した高 力率の昇降庄形 AC‑
DC コンバ ータである(8)・(9).人力チ ョークLlに直列 に 磁気巻線N3を設け,N3と昇降圧形 DCIDC コンバ ー タのエネルギ一昔稚用 リアク トルの一次巻線Nlとの 間に磁気結合 を持たせ ることによ り,高力率 を実現 し ている. このAC‑DC コンバータでは,NlとN3の比
を1に近づけることにより十分 に高 い人力力率 と十分 に低 い入力電流のTHD を得 ることがで きるが ,どち らかとい えばTHD より電力効率 を重視 してN3仰2=0.3 に設定す ることによ り95%の高い電力効率 を得てい る. この場合 ,人力力率は0.82,THD は69%であり, IEC規格の クラスDを満足 させ るとい う考 え方で用 い られている(9).
図14はデ ィザ ー整流形の蛍光灯用 イ ンバ ータで あ る(10).入力電流 に関 して力率 は約 99%,THD は約
9%で良好 な薦兼が得 られている.
この回路 はスイッチの電圧 ス トレス ,出力側のクレ ス トファクタ等に少 し開度 がある.図15は蛍光灯用複
電子積器用電源の入力電溌高瀬波対策技術
合回路方式電圧共振形 インバ ータである(ll). この回路 では ,キャパシタCl両端の電圧 は人力電圧の振幅の 1.1倍以下であ り,スイッチT,の電圧 ス トレスは人力 電圧の振幅の3.7倍程度 に抑制 され る.又 ,入力電流 の高調波含有率および出力の クレス トファクタはそれ ぞれ IECの1㈱ ‑3‑2規格の クラスCおよびIEC規格 の限度値 を満足 している(12).
2石式の複合回路方式 スイッチ ング電力変換回路に よる人力電流の高瀬波低減 に関 して も研究 が活発に行 われている.図16は蛍光灯用複合回路方式変形ハーフ ブ リッジ形 インバ ータである(13). この回路では通常の ハ ーフブ リッジ形 インバ ー タと異 な り,キ ャパ シタ C2の キ ャパ シタンスが極 端 に小 さく選 ばれてい る.
スイッチT.1,T.2のオン,オフ動作によ り, トランス Tの励磁 インダクタンス .漏れ インダクタンスとC2
の間で共振 させ ,この共振回路 ,大 きなキャパシタン スを持つ キャパ シタCl,スイ ッチT,2がアクテ ィブフ ィル タとして働 いている. また,clは完全平滑形の 直流電源 となっている. この回路では入力力率が0.97, THD が11.3%,クレス トファクタが1.56,電力効率が 92%など高性能の点灯回路 が実現 されている(14).図17 は交流人力電圧eと入力電流iの波形で ある.蛍光灯 用複合回路方式ハーフブ リッジインバータとしては図 16の他 に も図18(a)および(也)などの ような回路方式 も 提案 されている(15u16).特 に ,図18(a)はチ ャージポ ン プ方式 と呼ばれ ,入力力率0.995,THD4.5%,クレス トファクタ1.58が達成 されてい る.また ,このチ ャー ジポ ンプ方 式 に は種 々の 変形 回路 が提 案 され て い
る り7)・(18)
6.おわりに
商用交流こ電源系統における入力電流の高調波対策は 低周波のEMC間魔 として早急に解決すべ き社会的課 題 となっている. このよ うな状況の中で ,電子機器や 電気機器に対 して,IECあるいは通産省の ガイ ドライ ンに適合 させ る手段 として ,スイッチング電力変換回 路本体がアクテ ィブフィル タの動作 を兼ね備 えた複合 回路方式の研究 ,開発が活発 に行われてお り,良好な 成果が得 られつつ ある.
電子機器 あるいは電気横器 においては,心臓部 とし ての電源がシステム全休の性能 を左右す るといって も 過言ではなく,電源の研究 は非常 に重要である.昨今 のエネルギ一間篤 とEMC同額 という二つの社会的課 題の面か ら捉 えた場合 ,今後 ,入力電流の高調波対策 と消費電力の低減 を両立 させ ることのできる電源の研 究 ,開発にさらなる努力が払われることを期待 したい.
57
図14 デ ィザー整波形の蛍光灯用 インバ ータ
LI Dl
図16 蛍光灯用複合回路方式変形ハ ーフブ リッジ 形 インバ ータ
e;200V/div.
i:0.5A/diy.
図17 図16と回路の交沫入力電圧e と人力電流iの親潮波形
( b )
2石式の複合回路方式の例 図18 蛍光灯用複合回路方式ハーフブ リッジインバ ータ
参 考 文 献
(1)電気協同研尭高訴波対策専門委貞全編 :電 力系 統 にお ける高 講波 とその対策 ,串46巷 第2号 ,
(杜)電気共同研究会 (1990‑06).
(2)家電 ・汎用品高弟波抑制対策 ガイ ドライン,逮 産 省公報 (1994‑09).
(3)IEC 1000‑3‑2,INTERNATIONALSTANDARD (1995‑03).
(4)坂下 :"IEC55512規格 と高訴波規制開度 ",電 子技術,vol.35,No.3,pp.19‑23 (1993‑03).
(5)高橋 ,五十嵐 : "デ ィサー亜流回路 を用いた高 力率 ス イ ッチ ング レギ ュ レー タ"電 学 研 賢 ,
spc91‑19,PP.33‑38 (1991‑01).
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