静岡大学教育学部研究報告 (人文・ 社会科学篇)第57号 (2007.3)17〜
32
中山間地域 における福祉活動組織の性格 と参加住民の意識
一広島県二次市を事例 として一
The Welfare Activity Groups for Elderly People and Participant's Consciousness in Hilly and Mountainous Area: The Case Study of Miyoshi City, Hiroshima Prefecture
中 條 暁 仁
Akihito NAKAJO
(平成18年
10月
2日受理)1.問題 の所在 と本稿 の 目的
近年の中山間地域では
,人
口の高齢化 と自然減によるコ ミュニティの機能低下,そ
れに伴 う生活維持 の難 しさが問題 となっている。高齢者が住み続けることのできる地域社会を創出するために,行
政や高 齢者福祉施設,NPO,.ボ
ランティア団体 など多様なアク ターによる日常的な取 り組みが求め られてい る。加齢に直面す る高齢者の生活を地域社会においてどのように,ど
こまで支えることができるのかを 議論す る必要があるだろう。地域社会に存在する様々な社会関係や組織をどのように組み合わせ,ど
のように活用 してい くのかが課題 となっている。
高齢者をとりま くアクターのうち
,家
族 は日常生活におけるサポー トや介護の提供者であるばか りで な く,相
談相手など情緒的にも重要なサポー トの源泉(以
下,サ
ポー ト源)となっている。サポー トの 授受 に関する「階層的補完 モデル」(Cantor,1979;古谷野 はか,1998)に
よれば,高
齢者 はサポー ト 源 として配偶者や子どもなど家族を最 も頼 りに し,次
に近隣や友人,最
後に福祉サー ビスを頼 ると説明されている。高齢者 との社会的親密 さ1)に従 って優先順位の高い他者が利用可能でない場合
,下
位の他 者が代替 して補完的役割を果たす ことになる。中山間地域の高齢者をみると
,子
どもや配偶者など同居家族を持たない人が増えており(山
本,1997), 別居子や近隣が同居家族を補完するサポー ト源 として期待 されている。 しか し,そ
の別居子 も老親子の 空間的距離が影響 して充分 に機能 しないことが指摘 され(中
條,2003),地
域社会の過疎化や高齢化に よって近隣関係 に基づ くサポー トの減少 も問題 になっている。すなわち,中
山間地域 においてはサポー ト源 と高齢者 との空間関係が,サ
ポー ト源相互の補完関係のあり方に影響をもたらしていると考え られ る。このよ うな状況下 にある高齢者 は
,つ
まるところ福祉 サー ビスを最後 に頼 るべ きサポー ト源 とせ ざる を得 ない。 しか し,その福祉 サー ビスの供給 も,中
山間地域 で は需要密度の低 さか ら限定的であ り(杉
浦,2003;宮
澤,2003),高
齢者 にとって必ず しも利用 しやす い環境 にあるとはいえない。 また,市
町 村合併 によるサー ビス供給 の効率化 も懸念 され るなど,福
祉 サー ビスを補完す るよ うな新 しいサポー ト 源 を見 出す ことが緊要 の課題 とな ってい る。近年 の中山間地域 で は,新
しいサポー ト源 と して地域住民 による福祉活動組織 の役割 に注 目 しよ うとす る主張がなされて い る(例
えば,中
川,2002)。 これ は有 志 の地域住民 によ って構成 され るサポー ト源 として位置づ け られ,市
場性や採算性,介
護保険制度 の枠組みに依拠す ることな く高齢者のニーズを満たす ことが期待 されている。
そこで本稿 は
,地
域住民 による福祉活動組織が提供す るサポー トの性格,お
よび担い手の属性や意識 をとらえ,中
山間地域の高齢者をめ ぐるサポー ト源において福祉活動組織が果たす役割を考察す る。対象地域 として取 り上げるのは
,広
島県の北部に位置す る三次市である。同市は,2004年4月 に旧三 次市を中核 として周辺 7町 村が合併 して成立 した都市である。 しか し,同
市 は旧二次市の中心部を除け ば中山間地域 としての性格を有 してお り,また高齢化率 も29。
2%(2006年 8月)と広域合併の進む広島 県の自治体にあってきわめて高い水準 にある。分析に用いる資料 は
,筆
者が実施 した福祉活動組織 に対す るアンケー ト調査 (2005年 6月)と
2004年6月以降
,三
次市社会福祉協議会に対 して継続的に行 っている聞き取 り調査か ら得 られたものである。2.高齢者 を め ぐるサポ ー ト源 の地理 的特性
本章では
,高
齢者をめ ぐるサポー ト源を概念的に整理 した上で,その地理的特性を検討 したい。藤村 (1999,pp.12‑20)や 加藤・ 丸尾編 (2002,p.37)の 議論を参考 に作成 した表1に
よれば,高
齢者をめ ぐ るサポー ト源 はその性格 に基づいて「 インフォーマル部門」 と「 フォーマル部門」 とに区分できる。 イ ンフォーマル部門に分類 されるサポー ト源には,家族 (親族),近
隣,福
祉活動を担 う地域住民組織が 該当 し,フ ォーマル部門には公的部門 としての市町村 自治体 と社会福祉法人が,民
間部門 として企業や 営利法人がそれぞれ該当す る。 さらに, これ らのサポー ト源は自助,互
助 (互酬),公助 (再分配),市
場交換 という4つの配分様式 に区分で きる。結合原理をみると
,家
族 (親族)は
血縁,近
隣や福祉活動 組織 は地縁,自
治体や社会福祉法人 は公的扶助,企
業や営利法人には市場原理がそれぞれ該当す る。イ ンフォーマルなサポー ト源は,高齢者 と社会関係を構築す ることによって,「手段的サポー ト」や
「情緒的サポー ト」 という機能を高齢者 に提供 している。 これ らは介護保険制度の枠組みに含 まれない ものであり
,専
門性や継続性 に脆弱な側面があると指摘 されている。 しか し,一
方で人間の温かみの存 在や福祉活動を通 して地域住民の連帯が図 られるというメ リットも指摘されている。 また,高
齢者の日 常生活に最 も密着 しているという点で も重要である。 これに対 して,フォーマルなサポー ト源 は,介
護 保険制度の枠組みの中でなされてお り,高
齢者の生活能力が低下 した際に取 り込まれるサポー ト源であ る。公的部門によるサポー トは,公
平かつ普遍的であ り,個
人の費用負担が小 さく低所得者が排除され ないという利点がある。 しか し,そ
こには非効率的 という批判が常に存在す る。民間部門は効率的 と評 価されるが,需
要が低 く採算がとれな くなれば撤退 し継続性を欠 くというデメ リットが存在す る。次に,フ ォーマルなサポー ト源 とイ ンフォーマルなサポー ト源の性格をふまえ
,両
者の地理的特性を みておきたい。 まず,フ ォーマルなサポー ト源は,サ
ポー トを供給する事業所の立地 と関わ り地域的な 差異が認め られ る。宮澤 (2003)が 指摘するように,都市部 に多 くの営利法人が需要密度の高 さのゆえ に参入 しやすいのに対 し,山
間部では利用者のニーズが低いことによる採算性の低 さか ら営利法人の参 入が阻害され,社
会福祉協議会によるサー.ビス供給が中心 となっている。 フォーマルなサポー ト源 は利 用者側のニーズの多寡により供給が規定 されて しまう側面があり,それが事業所の立地に反映されている。
一方,イ ンフォーマルなサポー ト源には家族・ 親族
,近
隣が挙│デられる。 日常生活のちょっとした手 伝 いやお使いなど高齢者を物理的に支援する「手段的サポー ト」 ヒ,相
談や話 し相手になるなど精神的 に支援する「情緒的サポー ト」 とに区分される。前者 は,高
齢者 との対面接触を必要 とするため,高
齢 者 と支援者 との空間的距離がサポー トの授受に影響を及ぼす。 これに対 して,後
者 は電話や手紙などの中山間地域における福祉活動組織の性格 と参加住民の意識
通信手段などによって対応が可能であり
,対
面接触を必要 としないという特性がある。両者を比較す る と, 日常生活の遂行 に直接関わると考え られるのは「手段的サポー ト」であり,サ
ポー トの授受 におけ る地理的条件を考察することが重要 となる。1で 指摘するように
,中
山間地域では家族規模の縮小や近隣関係の空洞化が進んでいるという実態が あり,イ ンフォーマルなサポー トにも限界が現れている。また,事
業所の少なさからフォーマルなサポー ト源によるサービス供給 も脆弱な状態にある。そこで注目されるのが,中
間的位置づけにある住民参加 の福祉活動組織である。福祉活動組織 は市場性や採算性,介
護保険制度に依 らないインフォーマルなサ ポー ト源であり,家
族や近隣の状態に関わ らず機能す ると考え られる。 3以 降では,中
山間地域で展開 す る福祉活動組織の担い手に着 日し,そ
れが もつ性格 について分析を進める。表1 高齢者をめ ぐるサポー ト源の分類とその特性
サポー ト源 配分様式 結合原理 制度とサポー
トの内容 運営上のメリット 運営上のデメリット
イ ン フ ーオ マル 部 門
家族
(親
族)自助 血 縁
介 護 保 険 制 度 対 象 外手 段 的
・情 緒 的 サ ポ ー ト
。柔軟な運営が可能
・採算を考慮することなく行 動可能
。人間的温かみがあり
,コ
ミュニティの連帯が生まれ やすい・継続性を欠くことがある
。専門性を欠くことがある
。経済的基盤が脆弱
近 隣 限定互酬
(互
助)地 縁 福祉活動組織 一般互酬
(互
助)フ ーオ マ ル部 門
市町村 自治体・
社会福祉法人
(公
的部 門)公助
(再
分 配)公的扶助 介
護 保 険 制 度 対 象
居 宅 サ ー ビ ス
・施 設 サ ー ビ ス
・公平かつ普遍的
・個人の費用負担が小さし ので低所得者は排除され ない
・非効率的
・硬直的で人件費が高い
企業・営利法人
(民
間部門) 市場交換 市場原理・効率的で経費を節減可 能
。消費者志向で,需要があ ればサポートが供給される
・採算がとれなくなれば撤 退し,継続性を欠く可能性 がある
。排除する可能性が高い
資料 :藤 村 (1999),加 藤・ 丸尾 (2002)を 改変
3.対象地域 の概 観 と地域福祉 (1)二次市の概観
本稿で対象 とす る二次市
(図
1)は,広
島市の北東約70kmの距離にある。1で
述べたように,同
市 は「平成の大合併」の流れを受 け,2004年 4月 に旧二次市を中心 とする旧双三郡や旧甲奴郡の周辺7町村が 合併 し成立 した。広域合併の結果
,人
口は61,823人,市
域 は778.65面と広大な面積を有する自治体 となっ た (2004年 4月)。
市域の 8割 は山地であるが,地
形 は南北で異なる様相をみせている。中心部 の二次 地区は日本海に流れる江の川 によって形成 された三次盆地 にあり,南
西部の三和地区と南東部の三良坂 地区 。甲奴地区は二次盆地につながるなだ らかな丘陵地帯 となっている。 これに対 し,北
部の作木・ 布 野・ 君田地区は中国山地の険 しい山地が広が り,冬
季には積雪がlmに
及ぶ。三次市 は
,旧
来か ら中国山地における主要交通路の結節点 となってきた。道路交通では市域の東西を 中国 自動車道が貫 き,南
北 に陰陽連絡の国道54号線 と国道375号線が伸び,そ
れぞれ広島市や松江市, 東広島市 などとを結んでいる。一方,鉄
道交通では 」R芸備線が広島市 と庄原市などを,JR三江線が 作木地区など江の川流域各町村を,」R福
塩線が三良坂地区などを結んでいる。近年の鉄道交通 は利用者の減少か ら運転本数が減 らされ低迷 しているが
,道
路交通 は高速道路を介 した高速バスが広島市など に多数運転 されている。 しか し,中
山間地域 に共通 してみ られるように,モ
ータリゼーションの進展に より路線バスの撤退が相次 ぎ,域
内で公共交通を確保するのは困難な状況にある。 こうした事態に最 もしわ寄せを受 けるのは
,言
うまで もな く高齢者や子 どもである。国勢調査 によれば同市の過去50年の人 口動態 は,1950年の93,734人か ら2000年の61,635人まで大 きく 減少 した。 また
,高
齢化率 (2000年)は
28.3%に まで上昇 してお り,高
齢者のいる世帯 は一般世帯 (21,847世帯
)の
50.3%,高齢者のみの世帯(高
齢単身世帯)も
同 じく10.3%を 占めている。図 1か ら人口 動態を旧市町村単位でみてお くと,作
木地区や三和地区そ して君 田地区で人口減少 と高齢化が進んでい る。 これ らの地区では過去50年間に人口が60%以上減少 し,高
齢化率 も40%前後 ときわめて高 くなって いる。就業人口も減少が続いてお り,1980年か ら2000年までの最近20年間の変化をみると
,第
1次産業従事 者の構成比 は26.6%か ら38.8%に 増加 し,第
2次産業のそれは29。
1%から28.3%と 頭打 ちの状態 となっ ている。一方,第
3次産業の うちサー ビス業の就業者比率 は,1980年の16.9%か ら,2000年は25。
8%に 大 きく上昇 している。第1次産業従事者の伸びは,高
齢化の進行 によって農業 に従事す る高齢者が増加していることが背景にあると考え られる。 また
,サ
ービス業の増加 は,福
祉関連を中心 に従事者が増え ていることが推測 される。 このように,対
象地域では2次産業か ら3次産業 にシフ トしていることがわ かる。(2)住民参加による地域福祉の実態
次に
,二
次市 における住民参加の地域福祉活動を,二
次市社会福祉協議会による福祉活動に言及 しな が らみておきたい。社会福祉協議会(以
下,社
協)に
注 目するのは,中
山間地域において地域福祉の中 心的担 い手 となってきたためである(杉
浦,2003,p.499)。 三次市社協では,介
護保険制度の枠組みにN
十
E
S
h
(単位 千 人) た乱 。二次地区 は単位議ム
図1 対象地域 の概観 と人 口動態
中山間地域における福祉活動組織の性格 と参加住民の意識
依るサポー トとそれに依 らないサポー ト
,在
宅で生活す る高齢者全体を対象 とした施策を展開 している。二次市での主な活動を挙げると
,住
民参加の福祉活動組織のほか,社
協支所管内における小地域福祉 活動(サ
ロン活動 0配食サー ビス・ 要介護認定高齢者宅訪間 。敬老会の開催など)が
ある。 このうち,二次市では「 サロン活動
(ふ
れあいサロン)」 と呼ばれ る地域活動が活発に行われていることが特筆 さ れる。 これは,集
落 ごとに選出された福祉委員や民生委員を中核 とする有志住民が世話役 となって,地
区
(旧
小学校区)単位やそれよりも小さい集落単位で実施 されている`。月に 1回
,地
域の高齢者が集会 所に集 まり,一
緒 に食事を したり,ゲ
ームを したりして活動 している。集落単位でな くとも5人以上の 高齢者が定期的に集まれば「 サロン」 として認定され,社
協か ら活動助成金が支給 されている。ただ し,ここで構築された関係は「 サロン」の場だけで終始 して しまうわけではない。サロンヘの参加を通 じて 参加者相互の社会関係が新たに構築 され, 日常的なサポー トの授受
(助
け合いや見守 り)が
期待 されて いる。 こうした住民相互の福祉活動 を契機 として,サ
ポー トのや り取 りが行われる空間的範囲が拡大 さ れ,サ
ポー トの授受 という機能を持 った近隣関係が再編成 される可能性がある。(3)広島県における訪問介護事業所の分布
広島県 における訪問介護サービス事業所の実態を
,中
山間地域 に注 目して とらえる。 ここで訪問介護 サービスにふれるのは,そ
れが在宅での生活維持の基盤 となるフォーマルなサポー ト源 といえるか らで あり, これ らの供給状況をとらえることによって,イ ンフォーマルなサポー トの重要性が推測されるた めである。広島県 には,2004年 2月 時点で553の訪問介護事業所が立地 している
2)。
これ ら訪問介護サービス事 業所の市町村別分布状況をみると,83市町村すべてに立地 している(図
2)。 事業者の種別 (社会福祉 法人,社会福祉協議会,医
療法人,営
利法人,NPO法人,農
業協同組合,農
協,生協)で
みると,最
も数が多いのは営利法人であ り
,全
体の46.7%を 占める。全国の訪問介護事業所 における営利法人の占 める害J合 (48.2%)と ほぼ同 じ比率にある。法人 の種別 ごとに事業所 の立地傾 向3)をみると
,営
利法人 は広島市や福 山市 な ど都市地域 に集 中 し,事業所(249ヵ
所)の 90。
7%が立地 している。残 りの10%弱は他の営利法人 と同様に 南部の都市地域に多 く立地 し
,北
部 は 旧二次市や旧庄原市 にわずかにみ られ る程度である。営利法人に次いで多い のは,社
会福祉協議会4)も しくは市町 村直営のタイプである。 このうち,社
会福祉協議会の運営す る60事業所は全 域に広 く分布 し
,特
に町村部 における 主要な事業主体 となっている。そのう ち23町村では,社
会福祉協議会が町村 内唯一の事業者 として活動 している。さらに
,社
会福祉法人が運営する事業 所 は106あるが,そ
の うち12ヵ
所が単 図2
広島県における訪問介護サー ビス事業所の分布資料 :広島県介護保険指導室資料
…
▲圏龍去
O生
協・
NPO
榊 翻 陰 轟 渕kO脇欝 諄 潮 酸 獅
C2ヵ
所LD独または複数の市町村で設立 した事業所である。 この他
,一
般の社会福祉法人や医療法人は都市地域 に 集中 して立地 してお り,中
山間地域 にはほとんど見当た らない。広島県内の離島を除 く中山間地域 (53市町村
)で
は,35町村内で公的性格の強い社会福祉協議会や行 政出資の社会福祉法人が唯一の事業者 となってお り, これ らによって独占的な訪間介護サービスの供給 がなされている。 このような独占的なサー ビスの供給 は,従
来か ら地域の実情 に沿 った活動実績を蓄積 してきた結果 として理解することもできる。 しか し,実
際には人口の少なさに起因す る需要の低 さのた めに,都市部の民間事業者が参入できないことが もう一方の背景 にあると考え られる。それゆえに,中
山間地域の高齢者をめ ぐるフォーマルなサポー トの提供 は,きわめて限定 された状況にあるといえる。
4。 福 祉活 動組織 の存在形態 と活 動実 態
(1)広島県における福祉活動組織の分布 と存在形態
中山間地域では地域社会の高齢化や人口減少 により
,高
齢者 にとって最 も身近なサポー ト源であった 近隣関係が空洞化する傾向にあり,それを補完するために新 しいサポー ト源を創出することが課題 となっ ている。本稿で対象 としている住民参加の福祉活動組織 は,この課題に対応す るためのサポー ト源 とし て役割を担 うことが期待されている。住民参加 による活動組織 は,1980年代か ら都市を中心に非営利でかつ有償の在宅介護や家事支援など を行 う住民組織 として形成 された。図 3か ら組織数の全国的推移をみると,1990年度 において合計332 であったものが,1998年度に1,409,2000年 度には
1,912と
大幅な増加がみ られる5、 内訳をみると,「住(団
体数 )
民互助型」の増加幅が最 も大 きく,次
いで「社協運営型」となっている6ゝ
宮垣 (2001)に よれば
,福
祉活動組織における利用会員 登録者数 と活動会員(担
い手)登録者数のそれぞれの平均 は「 住民互助型」 で151.0人 と90.7人,社協が運営す る「 社協運営型」 で248.6人 と246.5人,生協や農協 などが運 営す る「協同組合型」で135.0人と111.2人などとなってい る。また,サービスの対象は多 くのグループで高齢者 となっ ているが
,障
害者や乳幼児のいる世帯を対象 としているグ ループもある。活動内容は介護サービスを除 く外出の介助 や買い物の代行,食
事の支度,掃除 といった家事援助,相
談相手
,配
食サービスなど多岐にわたる。広島県で も1990年代後半以降
,福
祉活動組織が活動を始 めている。中山間地域では,上
述の「社協運営型」に分類 される福祉活動組織が幅広 く分布 している。表 2の ように, 県内には各市町村の社会福祉協議会が運営する福祉活動組 織が16団体ある。1998年に「 やまびこネ ット」(表中の番 号3)が発足 して以降,介
護保険制度の運用開始 とも重な り相次いで組織が結成 された。 また,表
中の網かけに示す ように,市
町村合併 に伴 う社協の統合によつて福祉活動組 織 も再編 され,活
動地域が拡大 したり新たに組織が生 まれ1,000
900
一 回
― 性協選誉型
一 卿
一 醐
― ワ‐カースしトタテ硼
‑0‑行政関与型
‑0‑施設麟 型
― その他
脚 7 0
図
3
福祉活動組織数の全国的推移 資料 :全 国社会福祉協議会 (2003):『 住民参加型在宅福祉サー ビス団体活動 実態報告書』
0 0 〇 一
0 い ︻
卜 0 一 ︻
0 0 〇 一
い 0 ● ︻
で 0 い ︼
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︼ 0 一 ︼
0 い 0 一
中山間地域における福祉活動組織の性格と参加住民の意識
表2 広島県 における福祉活動組織の概要
番
号 組織名 活動地域
設 立時期 20004「
以前 以後
利 用件数 (のべ数
)
2001年 2003年 2004年
活 動 参 加 者 数 (登録 人 数) 2003を
F 20044F
利用者負担 (円/1回)
2004年
1
二次市ホームフレンドリーサービフ やまびこネット
ボランティアあゆみ あつたかサービス はるかぜネット
旧二次市 旧 口和町・旧高 野町・旧比和 町・旧君 田村0 旧布野村 旧三和町 旧甲奴町 二次市
0
●
●
●
1,219 1,286 1,653 1,716
5 5
‑‑ 67
そよかぜネット賀茂 おでかけクラブ 東広 島そよかぜネット
旧福冨町・旧豊 栄町 。旧大和 町・旧河 内町 旧安芸津町 東広 島市
●
●
224 979 353 763
̲ 720 63 12
ささえあいサービス やまびこネジト やまびこネット
365旧庄原市 旧口和町・旧高 野町・旧比和 町・旧君 田村・
旧布野村 庄原 市
●
●
︲9 65
50 1,716
ほほえみネット安芸高 田 F芸高 田 939 209
神石さわやかネット 神石さわやかネット
旧細本町・旧神 石町・旧豊松 村・旧三和町 神石 高原 町
● ―
‑ 1,647
2,125
さんさんネット さんさんネット
1日刀‖「詐早
J・
1日伺 賀村・旧戸河 内 町安芸太 田町
● ―
‑ 156
いきいきみはらファミリーサポート本郷 ほつとは―と
旧三原 市 旧本郷町 三原市
●
● 一
‑ 149
137 ‑―田
5 2
なんでも相談0福祉サービス 近隣互助型生活応援活動 なんでも相談0福/1■サービス
旧福 山市 旧沼隈町 福 山市
●
● 897 1,501 6 0 0
5 0 0
.
おのみちふれあいサービス ユー愛サービスむかいしま おのみちふれあいサービス
旧尾道市 旧向島町 尾道市
●
● ―
‑ 47
21700
35〇 一
スマイル21
キューピット・スマイル21
旧大 崎HI「・旧本 江町・旧東 野 町 大崎 上 島 町
●
600 450
200あい 勇 十 日市 市 ● 82 ‑―
元気 たけはら ケ原市 ● 1,135 2,288 ‑― 37 ‑―
有料在宅福祉サービス 大竹市 ● 294 900 ‑― 14 ‑―
ゆうあい在宅支援サービス 因島市 ● 76 238 ‑― 16 ‑―
ほつとサービス・おおの 大野町 ● 34 226 ‑― 35 ‑―
有料在宅福祉サービス電 ヨ戸 田町 ● 260 203 ‑― 17 ‑―
ちょつとてご事業 ふれあいサポートくらはし
豊浜町 倉橋町
●
●
×
× 一
50
×
×
注
)あ
みかけは再編されたグループのうち,2004年の統合以前に活動 していた福祉活動組織を指す。 一 は,該
当年次におけるデータが存在 しないことを示す。Xは社協組織の再編によ り廃止された組織 を指す。資料 :広 島県社会福祉協議会編『市区町村社協の現況』 (200102003年版),2004年 数値は聞き取 り調査 た りしている。三次市 も,2004年に合併前の旧市町村 にそれぞれ存在 した福祉活動組織が統合され「 は るかぜネット」が設立された。
この社協運営型の福祉活動組織 は
,市
町村の社協による需給調整 によって活動が進め られている。利 用登録を した住民が,社
協の事務所にサポー トの内容や利用時間を提示 して申 し込みを行 う。そ して, その内容をふまえなが ら社協が活動登録を した住民 との間で日程調整を行い,サ
ポー トの授受がなされている。活動会員は
,サ
ポー トに対す る対価(活
動費)と して, 1時間あたり500〜700円を受 け取 る7ゝ ただ し, この活動費には県社協か らの補助金が含まれているため,利
用会員 は活動費の40%を負担する 程度でサポー トが受 けられる。表 2に 示 されるように,近
年の利用会員 と活動会員の人数 は全体的に増 加する傾向にある。ω 200
m lOo
闘 脚
20041「 20054「 80061F
図
4
活動会員数の推移 資料 :二 次市社会福祉協議会資料(2)二次市の福祉活動組織における活動実態
まず
,図
4か ら活動会員数の推移 を確認 してお く。全体的な 傾向 としては,発
足当初の2004年か ら翌年 の2005年にかけて2
倍の大 きな伸びを示す一方で,2005年か ら2006年にかけては横 ばいの状態 となっている。2006年度 における会員の分布をみる と
,人
口の多い二次地区で全体の約40%を 占めてお り,そ
のほか三和地区や吉舎地区で も20人を超え
,住
民の積極的な参加がみ られる。 これに対 して
,利
用会員数 は着実な伸びをみせてい る(図
5)。 活動会員 と同様に,発足翌年 までの伸 びは約2倍 であり,そ
の後 も約20%の増加 となっている。2006年度における分布 は三次地区が最 も多いが
,三
和町で も40人以上の会員が いる。ただ し,活
動会員 と利用会員 ともに地域的な差異がみ ら れ,住
民の参加や利用が二次市全域で均等に進んでいるわけで はない。続いて,2004年4月 〜2006年 7月 における月別活動実績
(図
6)を
みてお く。2004年 4月に発足 した当初 は利用があまり進 まず,2004年4月〜8月 は200時間を下回 る状態が続 いていた。しか し
,同
じ年の9月以降は社協や行政の広報 による利用促進 の活動,また利用者による口こみが浸透 しはじめ,250〜300時 間で推移 している。2005〜 2006年度 にかけては季節的な変動 は あるものの急速に利用が進んでおり,900時間に迫 るまでになっ ている。聞き取 りによれば,利
用者の90%以上が60歳以上の高 齢者であることもあり,後
述するが利用内容 も多岐にわたる。旧市町村 ごとに利用状況をみると
,人
口の多い三次地区が最 も 多 く,旧
郡部では三和地区と甲奴地区での利用の多 さが目立 っ ている8)。
利用の温度差 も顕著であ り,特
に君田・ 布野・ 作木 地区では活動会員や利用会員 として住民の登録がなされている にもかかわ らず,利
用が進んでいない。地域社会内部でサポー トの授受が行われ,他
所者によるサポー トは受 け入れに くいと いう背景 も存在す ると考え られる。(世帯)
200
180 160 140
120 100 80 00 40
20 0
図
5
利用会員数の推移 資料 :二 次市社会福祉協議会資料坂
鞭﹁⁚ 珈⁚ 載⁚ 静
中山間地域 にお ける福祉活動組織 の性格 と参加住民 の意識
車による送 迎 鶴
話し相手0留守番J
%
外 出の付き添 い
15%
´図
7
サポー トの内容 (2004年)資料 :二次市社会福祉協議会資料
:「
賢
言 憲 F5曾 琴晋
図
6
福祉活動組織の活動実績 (2004年 4月 〜2006年7月)資料 :二 次市社会福祉協議会資料
衣類の洗濯 農作業脅手伝域
薬ク受け取りヽ
ペットの世話 謁 3% ・・`・
買 いもの 働 微髪
鶴
図 7か ら具体的なサポー トの内容についてみると,
最 も多いのは屋内外の掃除で
46%,そ
の他に高齢者 の手に負えないような布団干 しや草取 り,家
屋の簡 単 な補修などが挙げられる。 また,外
出時における サポー トの利用 も多い。外出時の付 き添 い15%,車
による送迎7%,買い物の代行4%,薬の受 け取 り の代行
3%な
どであり, これ らを合わせると30%近くに上 る。活動内容の季節変動について社協か ら聞 き取 ったところ
,夏
季は屋外や墓地の掃除 と草取 り に対するニーズが高まり,年
末には屋内外の掃除,冬期の降雪 日には買い物代行のニーズが高まるとい うことであった。
ここで利用会員の行動 に則 して活動会員によるサ ポー トの様子をみておきたい。事例 として取 り上げ るのは,三和地区で外出支援 を受 けるTさん
(79
歳)と,彼
女の外出をサポー トす るOさ
ん (68歳)である。図 8は, これ ら2人の女性の間で授受 され るサポー トを
,時
間地理学の手法を用いて表現 した ものである。Tさんは
,支
所(旧
役場)か
ら約500m離れた集 落 に 1人 で暮 らしている。加齢に伴 って視覚障害が 進み, 1人で も杖を使いなが ら外出できるが,他
者 の付 き添 いがあれば距離があって も歩 ける状態にあ る。そのため,毎
週火曜 日と金曜 日の通院時に活動 会員のOさ んが外出支援を行 っている。 そのOさ
ん宅は三和町南端の集落にあり,Tさん宅か らバイ クで約20分
,約 8kmの
距離 にある。利用会員であるTさんは毎回8時に自宅 を出発 す るため,0さ ん は7時30分には自宅 を出発す る よ うに している。毎週火曜 日は8時にTさん宅を 徒歩で出発 し,30分かけて図中 (c)の開業医 (外 科
)に
向か う。8時30分か ら10時頃まで待ち時間 と 診察にかかるが,TさんはOさんや来院者 とお しゃ べ りを して時間を過 ごす。診察を終え,郵
便局 (f)で年金 を受 け取 り
(10:15〜
30), ス‐パ ー (e)で 買 い物を済ませ る(10:50〜
11:10)。 Tさ ん宅に戻 るのはいつ も11時 30分前後であ り,Oさん はそ こで
一緒にお茶を飲んだあと自宅に帰 る。
金曜 日も同様の行程であるが
,通
院先 は図中(g)
の開業医
(内
科)で片道約40分か けて徒歩で通 う図中の時刻は大曜日Ol出行程を議 (調査日12XX年明
29日 )
0さ
んのパスのう0.Tさんとの同伴行動は書88してい&口‐‐口 火曜日のバス ‐
│‐ 0‐
0 金曜日の′`スa:Tさ
ん宅
b:0さん宅 ●
:開業医
(外科
)d:支所
(旧役場
)●
:スーパー
f:郵便局
g:開業医 σ爵鴫
図
8
活動会員による外出サポー トの事例 資料 :聞 き取 り調査(およそ
8:40〜
lQ00)。 その帰途 に二次市役所三和支所 (d)あ る いはスーパ ー (e)に立 ち寄 った りして(お
よそ10:30〜
50), 自宅 には11時頃戻 る。この事例 にあ つたTさ ん は,
社協か らの依頼 によって
Oさ
ん が担当となっている。Tさんの近 隣者 には日頃か らつきあいを持つ 人 も多いが,外
出の付 き添いまで は頼みに くし韻J面
があり難 しtヽ
と いう。そもそ も三和地区では個々 の集落における近隣関係が空洞化 しつつあり,そ
れをサポー ト源 に することができない状況にある。その意味で
,福
祉活動組織 によっ て提供 されるサポー トは, これま で近隣間で授受 されてきたサポー トを補完する役割を担 うと位置づ けることができる。近年 における広島県の中山間地 域では
,高
齢者を主な対象者 とし た住民参加の福祉活動組織が増加している。その背景には
,当
該地 域における高齢化の著 しい進行が あることは言 うまで もない。訪問 介護サービスにおける民間事業者 の参入が難 しい地域であるがゆえ に,社
協が唯一のサービス供給者 となってお り,自
立認定の高齢者 に対す るサービスの供給が及ばな い現状があると思われる。その意 0 1000m‑
0 飾
目
味でボランタリー組織の形成 は
,社
協が行 うサービス事業の補完 という側面を有 している9ヽ11黎
)l:
中山間地域における福祉活動組織の性格 と参加住民の意識
5。 福祉活動組織 に参加 す る住民 の意識 (1)属 性からみた参加住民の特性
福祉活動組織の特性を検討するために
,そ
れを構成す る担い手(活
動会員)の
属性をとらえる。また, 担い手が活動 に参加するまでのプロセスもあわせて把握 したい。 ここでは,活
動会員 (102人)に
対 し て行 ったアンケー ト調査の結果を基 に分析を進める。 なお,ア
ンケー ト調査は2005年 6月 に二次市社会 福祉協議会の協力を得て郵送 により実施 した。回答者 は62人で,回
収率 は60。
8%であった。活動会員の基本属性を示 した表 3に よれば
,回
答者の うち71.0%(44人)が
女性で,60歳代が最 も多 く43.5%,70歳代33.9%と なっている。活動会員の中心 は女性が高齢者 になっていることがわかる。 ま表
3
活動会員の基本属性男性 女 性
鋪ω 構成比
(%)
性別
居住地区
二次 三和 三良坂
吉舎 甲奴 君田 布野 作木
12
10 41
7
2
1
5
15 13 31
12 6 4 8
24.2 21.0 4.8
1.6
19.4 9.7 6.5 12.9年齢層
40歳 代 50歳代 60歳 代 70歳代
2 2
8 62
8 19 154 10 27
21
6.5
16.1
43.5 33.9世帯形態
単身 夫婦 子 ども2詞居
老親 桐 居
2 11 5
07 17 16 4
9 28
21
414.5 45.2 33.9 6.5
移動手段の活
自動車 バイク あ ら破 用不可
18 0 0
35 3 6
53 3 6
85.5 4.8 9.7
現在の仕事
農業中心 非農業中心
無職 9
5
419 13 12
28 18 16
45.2 29.0 25.8
職 歴
農業中心 非農業中心
無職 無回答
1
︲2
0
5
2
30 0 12
3 42
0 17
4.8 67.7 0.0 27.4
最終学歴
初等 中等 高等 その他の学校
無 回答 8
7 2
01
526
9
2
2
13 33
11
2 321.0 53.2 17.7 3.2 4.8
居住歴
生まれたと勤ヽら 結婚 してから
転入 9 3 6
9 26
9
18 29 15
29.0 46.8 24.2
た
,子
どもと同居 しない高齢者が多 く,高
齢夫婦世帯 で45。
2%,高齢単身世帯 も14.5%を 占める。2005年度 における居住地域の分布について,二
次市社協の資料'に基づ くと
,三
次地区が85人で最 も多 く,次
いで三和地区が29人
,吉
舎地区が21人となっている。人口規模 の最 も大 きい三次地区で活動会員数が多 くなっている が,そ
れ以外の地区ではかなりの差異がみ られる。回 答者の居住歴をみると,現
住地に生 まれたときか ら住 んでいる人が29.0%で あるのに対 し,結
婚 してか らの 人 は46.8%と 会員の多数が女性であることを反映 して いる。活動会員の職業 は
,農
業中心が42.5%,非農業中心 が29.0%,無職 も25.8%と なってお り,比較的活動時 間を確保 しやすい人々といえる。一方,職
歴をみると,農業が中心であ ったと回答 した人が4.8%で あったの に対 し
,農
業以外の仕事が中心であった人 は67.7%と 大多数を占める。世帯の外で働いたことのある人が高 齢期にあって も,積
極的に世帯外で活動を しようとす る意思がみ られる。 これに関連 して地域活動への参加 状況を尋ねたところ, 2人を除き全員が 1件以上の地 域活動 に参加 してお り,そ
の活動頻度 も週に1日以上 活動 している人が61.3%に 達す る。活動会員にとって 福祉活動 は,日常 における地域活動の延長上に位置づ けられていると考え られる。仕事や地域活動への参加 と関連する指標である学歴をみると,中
等教育以上の 学歴を有す る人 は74.1%に 及んでお り,活
動会員の高 学歴化が読み取れる。活動会員による移動手段の活用状況を確認 しておき たい。 まず 自動車を運転可の人が85.5%で もっとも多
く
,大
部分の会員 は移動に関 して問題を抱えていない。ただ