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共犯者が逃亡しているときの清代刑事訴訟手続き

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共犯者が逃亡しているときの清代刑事訴訟手続き

著者 森田 成満

雑誌名 星薬科大学一般教育論集

号 14

ページ 61‑85

発行年 1996

URL http://id.nii.ac.jp/1240/00000200/

(2)

共犯者が逃亡しているときの清代刑事訴訟手続き

森 田 成満

  目 次

序 言 ⁝⁝:⁝⁝・⁝⁝⁝⁝⁝⁝−・⁝⁝⁝⁝⁝⁝−・⁝⁝⁝⁝−⁝⁝・・⁝⁝⁝⁝⁝⁝・・⁝⁝⁝:⁝⁝⁝・⁝:⊥二

第一節 罪を自認しないときの訴訟手続き⁝⁝⁝⁝・⁝⁝・⁝⁝:⁝⁝⁝⁝・⁝⁝⁝⁝⁝:⁝・⁝⁝・⁝⁝六二

第二節 罪を自認しているときの訴訟手続き⁝⁝⁝⁝⁝⁝・・⁝:⁝⁝⁝⁝⁝・⁝⁝⁝⁝⁝⁝:・⁝・⁝⁝六八

結 語 ⁝⁝⁝⁝−⁝⁝・−⁝⁝⁝⁝⁝⁝・⁝⁝⁝−⁝⁝⁝・⁝⁝⁝−⁝⁝⁝・⁝⁝⁝⁝⁝⁝:・⁝⁝⁝⁝⁝⁝:・八三

序言

61  本稿は︑共犯者が捕えられることなく逃亡しているときに︑既に捕えた犯人をどのような手続きで処罰したかを明らか

に することを通して︑清代刑事訴訟手続きの構造的な特徴の一端を窺うことを目的とする︒

 その手続きは犯人から罪状自認の書面を取った︵﹁成招﹂︶か否かということや︑自認する事実の範囲︑および諸々の証

(3)

62 拠 か ら認定した事実をどのように位置づけるかという事実認定の仕組みに深く関係している︒そして︑その仕組みは皇帝

が 裁 判するときと官僚が裁判するときとで異なるし︑時代による変遷もある︒そこでは罪を自認しているか否かが手続き

を特徴づける軸になっているので︑自認の有無を基準に分けて見ていく︒

  本稿が対象としている事柄に関する本格的な先学の業績を検索できない︒それ故︑その殆どを第一次史料に依拠して論

述 する︒

  使用する史料は︑主に律例と刑案である︒律例に沿って︑どのような制度が作られていたかの大枠をとらえ︑刑案によっ

て その運用の実態を見る︒

第一節罪を自認しないときの訴訟手続き

  統 治 権は皇帝に帰属しているので︑皇帝はすべての訴訟事案に対して決定する権限を持つ︒各級官衙の官僚には皇帝が

裁判権を留保している死刑判決を除いて︑事案の軽重に応じて判決する権限が与えられている︒

  判 決 手 続 きは事実の認定と法適用の過程に分かれる︒裁判が官と犯人との二極の職権的構造の下でなされたことと関連

して︑事実認定は捜査手続きから判決手続きまで連続していたし︑現代法のように訴因という限定された犯罪事実の存否

を巡って手続きが進む形をとらない︒

  職 権を使うことを含めて収集した諸々の人証︑物証によって認定された事実を背景に︑時には拷問もしながら犯人を追

い 込んで罪状に対する自認を得ることもあるし︑それでもなお︑自認しないこともある︒また︑時には自ら出て来て自分

の 罪 を認めるものもいる︒ただ︑この諸々の証拠と自認とは次元の異なるものであり︑諸々の証拠によって明らかにされ

(4)

    た 事 実と自認をどのように関係づけて見るかということが事実認定を巡る大きな問題となる︒即ち︑第一に︑自認がなけ

    れ ば事実を確定できなかったのか︑あるいは︑自認がなくてよかったかということであり︑第二に︑自認する事実と諸々

    の 証 拠により明らかにされた事実の有無や範囲が異なったときにどのように処理するかということである︒自認する事実

    よりも諸々の証拠により明らかにした犯罪事実の範囲の方が広いことも狭いこともある︒これと関連して︑自認している

   けれどもそれが事実と異なっている疑いがあるとき︑さらに証拠調べをしているか否かも問題となる︒

     皇 帝が裁判するときと官僚が裁判するときで︑手続きは異なる︒皇帝は自ら判断する極刑である死刑について︑特に慎

き 重を期していた︒

続 語 清代前半期の共同犯罪に於いては︑犯人の認容がなくても死刑判決を出し︑その後で秋審に入れて減刑している︒共犯

斬 者が判決を受けて執行された後に首犯とされていた人物が捕ま・た︒その男は罪状に対して認容しないけれども︑斬決の

噺   罪を犯している疑いがある︒死刑を慎重に取り扱うとともにかたくなな犯人を取り逃がさないためにあくまで斬監候とし 清      ω

の   て 死 刑の宣告はするけれども︑秋審に入れるとする条例がある︒ き と る   およそ︑問刑衙門が強盗を審理するときは︑賊物︑証人がはっきりしていれば例に照らして直ちに執行し︑もし︑賊物がはっきりせ

η     ず︑後から捕まえて疑わしくなったときは再審してよい︒また︑後に捕まえた強盗が罪状認容の供述をせず︑賑物もはっきりせず︑共

し  犯はすでに執行してしまっていて証人もいないときは︑みな監候処決とする︒

亡 逃 が     この条例は︑命盗重案に関する明代万歴十六年に裁可された定例を基礎に︑雍正三年︑乾隆五年の改正を経ており︑蒔

者 期 允 升氏によれば︑清初は.︑れに沿.て処理されたとい駕さらに︑氏はそれを罪状の認容がなくても︑秋審人犯の実磐

    疑の中の疑に入れるという趣旨であって︑事実に不明確さがあるときに刑を軽くするものであると解説している︒︵﹁罪疑

ヨ        6惟軽垂風﹂︶

(5)

64  土ハ犯者が今も︑なお︑逃亡しているとき︑既に捕えた犯人の死刑執行について配慮をしている清初に存し乾隆十七年に

削除された有司決囚等第条に付されている条例がある︒これも罪状に対する犯人の自認がないときのものと思われる︒共

犯 者を捕えて審問し︑はっきりした事実を十分に明らかにするのを待つために︑殺人や強盗を犯して既に死刑判決を受け

た 犯 人 を判決したところで手続きを停止し︑獄に拘禁して待機させて︵﹁監候待質﹂︶︑叛逆のような凶悪な犯罪に関係する

犯人を除いて︑待質後三年経過して逃亡犯人が捕まらないときには秋審に組み入れるとする︒一層はっきりした事実を明

らかにするために一定期間待つけれども︑それまでに逃亡犯人が捕まらないときは秋審に入れた︒不当に執行が遅れるこ

とがない範囲で︑できる限り真実を発見することを目指している︒ただ︑この制度は官僚がかえって怠慢になり責任逃れ       ω をするし︑無実の人が獄に長く拘禁され重大犯人が処刑を免れることになることを理由に廃止される︒

  ところが︑やがて自認していることが判決するための要件となっていく︒証拠を添えて死刑判決を求めてきた上申を犯

人 の 認 容 が ないことを理由にしりぞけた同治初年の事案があり︑それが従来の死刑に対する例であったと記している︒皇        ロ 帝は絶対的な統治権を持ってはいたけれども︑死刑判決については裁判権力の行使の仕方に自ら制約を課している︒

 ⁝査するに︑既に免職になった都司の劉青雲は勝手に鄭作箸のおいの鄭克等をつかまえてお金を脅かしだましとったので︑鄭作璽は

切 羽詰まって自殺した︒多くの証言は皆同じである︒しかし︑その犯人はずっとずるくこだわって認めない︒その巡撫はそこで徒罪以

上 に つ い て 多くの証人の情状を添える例によって上奏して裁断するように求あてきた︒検査して見るに︑歴年︑斬絞の重犯について多

くの証人の情状を取り揃えて上奏して求めて落着させた成案はない︒これを一度やり始めればそれにならうようになってしまう︒⁝

  悪 事を働いて捕えられたのにも拘らず︑罪を認あないとき︑ややもすると裁判が滞ることがあった︒罪を認あない馬賊

の 郭義林について︑就地正法の章程に沿って死刑にしたいとする上申に対して︑やはり︑犯人が罪を認めない限り死刑に       ⑥ は で きないとする事案がある︒

(6)

  ⁝臣等査するに︑命盗の案件を処理するには︑すべて尋問してはっきりさせ︑確かな供述を取り揃えて調べて間違いがなくて︑初め

罪 名を定める︒⁝厳しく責あても認めず︑口からは反抗の言葉を出すのは︑もとより憎むべきである︒ただ︑まだ︑認あるという供

述 が ないのに︑あわてて死刑にするのは︑本来︑定例に合わない︒⁝査するに︑近年︑馬賊や土匪が起こした事を処理するのに︑諭を

受 けて就地正法の案をなすのは↓時の修正章程であり︑決して成例にしようとしてはいない︒すべて確かな供述を取って︑初めて死刑

に なる︒もし︑供述しない犯人を︑急いで修正章程に照らして便宜的に処理するのは︑今までそのようなやり方はなかったし︑刑法も︑

また︑ついにないかのようになってしまう︒⁝

      皇 帝が裁判権を留保している死刑判決を除く官僚が裁判するものについては︑供述調書とは別に犯人を追及して︑罪状

       ア         

  を認める書面を取って事実を確定したという︒明律を継承し順治三年に小註を加えた刑律吏典代写招草条や︑それに付さ

き      0 繊 れ た雍正七年に纂入された条例があ畑︑犯人自り圭目いた招草によ.て罪を定めるのであ.て︑吏典等が童ロいた皇日きかえ

翻 た りする・とを禁じている︒官僚は真相を唄・かにする力量を+分には持・ていなか・たし︑皇帝は官僚が独自になす事 事

  実認定を信用できなかった︒

代        ⑪ 清  しかし︑清代中期以降︑統治権を持つ皇帝の個別的な許可を得れば自認しなくても判決できるようになる︒誤りのない

の 民   事実の発見と犯人を取り逃がさぬことの二つを求めて制度は揺れている︒犯人がかたくなに自認しないときは︑嘉慶十五

喝   年以降︑証拠がはっきりしていて事実に疑いがないと思われるときは︑皇帝の裁可を得て判決できるようになる︒さらに︑ 引 し 道光十年には杖答以下の刑罰を科する尋常の小さな事件については︑犯人の認容がなくても刑部の許可があれば判決して

亡 逃   よいことになった︒その契機となる通行がある︒共犯者が逃亡しているときの史料ではないけれども︑この通行は共犯者

カ       カ 賭   が 逃 亡 しているときにも適用することを予想していたと思われ面︒

期         ⁝裁判する官僚は個別に詳しく尋問して認容する供述を取るようにつとめ︑手間を省いて多くの証人がはっきりしていれば直ちに結

65     審 してよいとする律をひいて急いで上申して罪を定めてはならない︒もし実際にかたくなに堅く認容しなければ︑多くの証人の情状に

(7)

      よって︑上奏して裁断を請求するのであって︑勝手に部が判断してはならない︒それぞれ云々︒遡って査するに︑この例文は嘉慶十五

  6  年十二月に本部が決めて返答したものである︒山東巡撫が審理して上奏してきた挑文珂が捏造して訴えた挑鳴庭等が勝手に入官した建

   

  物を代物として取り敷地を侵占した事案については︑既に官によって取り調べてはっきりさせたのだが︑桃文珂ははっきりと罪は謹告

      に 当たると知りながら︑ずるく引き伸ばして服従せず︑事案を延ばして累を引っ張っている︒挑文珂を評告として徒に定あて上奏して

   

  裁断をお願いすると共に︑内外衙門に通達して例冊に纂入して整理してある︒⁝今後︑審理して本当にかたくなに堅く認容しない事案

      について︑もし︑徒罪以上に当たるを犯したものは︑なお︑例に照らして上奏して裁断を請求し︑その罪が杖答以下であるべきものは︑

   

  本来上奏するべき事案は例に照らして上奏して請求するほか︑その他の尋常の部に報告する事件でもし︑尋問して間違いがなく︑その

   

  督撫自ら調べて本当にかたくなにずるくこだわり︑累を引っ張ろうと目論んでいるならば︑直ちに多くの証人の情状によって部に報告

   

  して結論を出してよい︒

  罪 状 に 対 する自認を巡って留意しなければならない第一は︑自認を必要とするのは死刑判決に於いては︑皇帝が自らの

権 力行使に課した制約であり︑また︑死刑判決以外の官員が独自に判決するときは皇帝に対する義務であった︒いずれも

自認しない限り判決しないことを官が人民に約束したという意味の人民の権利ではない︒そもそも︑主権が人民に存し︑

権 力分立の下に司法権を有する独立した裁判官による法に沿う裁判を受ける権利を人民が持つ現代法とは違う︒さらに︑

それは出された判決への服従を人民が拒否するというものではなく︑皇帝や官員が事実を認定する過程で犯入の自認を必

要としたということである︒それ故︑刑事判決は人民にとって本質的に受動的なものであり︑刑事判決の性格を清代法全        09 体の中で位置づけるとき︑それは官による上からの判定であった︒認容しないとき︑人民は結審しない反射的効果を︑事

実上︑享受していたに過ぎない︒

  第二に︑自認を必要とする事案は︑自認しない限り罪に問われることはない︒ただ︑そこには無罪の推定の法理はない︒

単に︑結審しないだけで︑格別︑無罪であると判断している訳ではない︒現代法のように︑無罪の推定と既判力の法理に

よって無罪が決まってしまうのとは異なる︒

(8)

      註

      ω  大清律例︷﹃大清律例彙輯便覧﹄︵光緒二九年︑成文出版社影印︶を使用︸巻;二︑刑律賊盗強盗条︑条例一二︒

      ②  

読 例存疑巻二六︵成文出版社五九六頁︶この条例が適用されている例として︑成案質疑巻一八︑三一四頁﹁続獲彩盗監候待質題本

        字

錯 罰俸一日﹂がある︒

     

⑧  疑案の秋審に於ける処理を示すものとして乾隆七年の議准がある︒後に捕まえた首犯とされるものが罪状を認容せず︑証人もな

        い︒罪が斬決に関するときは待質し続けるけれども︑後に捕まえた盗犯の供述が前の供述と一致し首犯でもなく傷害を人に与えても

        い なければ︑ただ︑長い間に臓物が消費されていても︑秋審にいれて遣罪とする︒臓物も証人もなく︑罪状について堅く認容しない

        犯 行の有無もはっきりしないものについては︑秋審で保釈と決めるとしている︒︷読例存疑巻四七︵前掲書=八九頁︑=九〇

        頁︶︸︒

き  ω 同右書同巻︵前掲書=九〇頁︶︒ 繊 ㌶難雛認騨籠晶綱哩.竃竃鱗鞭騨馴竃魏⊥パ同治七年墾

斬 m 滋 賀秀三薄朝時代の刑事裁判L︷﹁清代中国の法と裁判﹄︵一九八四年︑創文社︶所収︸六九頁︒

刑  ⑧ 読例存疑巻四九︵前掲書一二八六頁︶︒ 齢 ⑨ 大清律例巻三七︑刑律吏典代写招草条︑条例一︒

の    

00  読例存疑巻四九︵前掲書一二八六頁︶︒

は    

OD  皇帝の許可を得て比付したり妥協した裁判をなしたことと軌を一にする︒

る  02 刑案匪覧巻五名例﹁蘇撫 杏顧呉氏遺抱顧懐理赴京翻控顧鳴揚包娼糾槍串唆呑欠並石港場将伊子顧懐珪濫責等情一案⁝道光十年﹂︒

引       刑

案 歴覧続編巻五名例律︑犯罪事発在逃条﹁奉天司 査審理案件総須詳細研究務得実情⁝威豊元年説帖﹂︑同右書同巻同条﹁山東司

し   査評告人死罪之案情罪棊重一経審係虚諏⁝同治七年説帖﹂はその適用の事案である︒ 虻 ⑬ 罪状自誓臼を取る・は︑証拠を突きつけて自認這・込んだとき・始めて有罪が認定されると・う事実認定・仕組みの問題であ

が       る︒自認の事実が有罪を認定するときのいわば法定証拠であったということであって︑法の適用に犯人が関与できたということでは 賭       な い︒ところが︑刑律断獄下獄囚取服辮条︵大清律例巻三七︶は徒流死罪に処するような重大な刑事的事案については︑犯人と家族 き 共       か ら判決に服するという書面を取り︑服さないときは釈明の書面を出させてさらに審理を続けるとすることを官僚の義務としてい

        る︒︷唐律の規定では︑家族には罪名を告げるに止まっている︒︵唐律疏議巻三〇︑断獄獄結寛取服辮条︶︸もっとも︑これが問題と

67       なった史料を検索できない︒﹃大清会典事例﹄にも全く補足的な関係の記述はない︒この通り︑当然処理されていた見るよりも︑殆ど

(9)

        書

面 を取っていなかったか︑あるいは判決を拒絶することは事実上できなかったものと思われる︒いつからこの律文が死文化したか

  6   が解明するべき問題となる︒順治三年に小註が加えられていことから︑清代の極く初期にはそれなりに意味ある規定であったのであ

       ろう︒︷読例存疑巻四九︵前掲書一二七七頁︶︸︒

第二節罪を自認しているときの訴訟手続き

  罪 を自認しているときにも︑犯行の存否とその役割が分かるだけの諸々の証拠があるときと事実がはっきりできないと

きがある︒

  従 犯 で あると自認するけれども︑首犯であると分かる証拠があるときには︑認容のないところまで分かる訳であり︑前

節で検討した自認がなくても事実を確定してよいか否かという問題の一変形となる︒首犯であると自認するけれども︑犯

罪 をなしていなかったり︑従犯であるときは︑いわば自己謹告である︒

  自認通り首犯︑あるいは︑従犯であると分かるときは︑次に記す名例律犯罪事発在逃条︵以下︑律条という︒︶の後半の

規 定

に よる︒

  罪 を自認していれば︑それが虚偽である格別の疑いがない限り︑進んで犯行の存否や役割がはっきりできなくても︑官

僚 は そ こまでの処罰をする判決をしてよかった︒首犯であったことを認めているので︑自認する事実に沿って処断してい

る例として︑道光十二年の説帖がある︒既に王人和が正犯であることを自認しているので︑共犯者や目撃者は捕まってい       み ないけれども監候待質せずに処断するべきであるとしている︒自ら進んで首犯であることを認めるとき︑従犯であること       ③ を自認するときのように︑共犯者が捕まるのを待って監候待質しないのは︑通例︑偽って首犯であることを自認すること

が 本人に落ち度があるときを除いて︑ないので自認に疑問が起らないからであろう︒

(10)

 江西司 査するに︑監候待質の例はもっぱら今捕らえた犯人が逃げているものが首犯だといって︑恐らく軽きに就こうとする情況が

あっていうものである︒従来︑正犯が既に承認しているのに︑余犯や証人が捕らえられないので彼を拘禁して待質させるという理屈は

なかった︒今︑王人和は郭善幅が王勉仔を追いかけて殴ったので急いで行って止あようとして︑郭善幅を傷つけ死亡させた︒王勉仔と

目撃者の衰松太がまだ出頭しなくても︑ただ︑既に王人和の供述︑認容ははっきりしているのであるから︑律によって死罪となすべき

で ある︒⁝

   

  自ら認める罪の存否や範囲に疑問があるときは︑職権で証拠を集める︒罪を自認することが結審するたあの必要な要件

   となることもあったけれども︑必ずしも自認は結審のための十分な要件ではなかった︒

き  自ら認める罪が虚偽である疑いがあるときには︑事実よりも広く罪を自認している疑いのあるときと︑事実より狭い罪

続 手   を自認している疑いのあるときがある︒本稿の対象とする共同犯罪に限って見たとき︑前者には共同して犯罪をなしたこ 訟 斬 とすbはっきりしないときと︑共同で犯罪をなした・﹂とはは・きりしていて︑首犯であるとする自認とは異なって︑従犯

櫛   で ある疑いがあるときがある︒後者は共同で犯罪をなしたことは明白であるけれども︑従犯であるとする自認とは異なっ

喘 て・首犯である疑いがあるときである・ き と  事実を調べた結果︑罪を犯していないのにしたといったり︑犯した罪の範囲より広く自認していたと判明したときはい

喝 ひ   わば自己誕告として処罰される︒これは追及されて罪状を認容するのではなく︑自ら進んで罪を認めるときに問題となる

巳 ・とが多い︒犯人の親族や犯人に金銭を渡されて身代わりを頼まれる・とが少なくない︒

髄 乾 隆二+七年の福建按察使曹縄柱と二+九年に刑部が議覆した広東按察使の赫昇額の上奏に基づく定例と嘉慶五年湖北

者 犯   巡 撫高杞の上奏に基づく定例で六年に修正したものを十九年に一つに合わせて︑刑律有事以財請求条に付された条例は︑

共       ー       ほ  

  自己評告に関係する︒

69

(11)

     姦 徒が正兇の賄賂を受け取って身を挺して官に出頭し︑身代わりとなり︑審理すると事案の外の人であって︑外省では既に招解し︑

70     按察司にあり︑都に於いては既に法司が会審して︑既に罪状自認の書面を出させて罪を定め︑殆ど正兇が法網を逃れていたら︑みな本

    犯の徒流斬絞の罪に照らして︑同じように全科する︒もし︑正兇を放免し再び捕らえたり︑逃囚が自殺したら身代わりの犯人はその罪

     か ら一等を減じる︒⁝もし︑まだ罪状自認書を作らず罪を議定していなかったのに︑ついで解決したら︑賄賂をなした兇犯はもとの犯

      した罪名で問責し︑賄賂を受け取って身代わりになっものは正犯の罪を二等減じる︒

        同じ事案の犯人が代って重傷と認め︑その犯した罪名を逃れ既に招解したものは正犯の罪を一等減じ︑⁝まだ招解していなければそ

   の罪をもって科断する︒⁝

  罪を自認していたので定罪して︑手続きが進んで既に按察司まで送付されてしまっていると︑身代わりになったものに

対する刑罰は重くなる︒それだけ官の司法作用を誤る危険性が高かったことを考慮している︒

  共 同で犯罪をなしたことははっきりしており︑従犯の罪を自認しているけれども︑首従の役割がはっきりせず自認して

い る事実以上の犯罪をなしている疑いがあるときも︑犯人に無用の不利益を与えることなく︑できる限り真実を明かにし︑

犯 した罪について過不足なく処罰することを目指す︒結果として︑首犯であることがはっきりし︑それを犯人も自認すれ

ば 首 犯 として処罰するし︑従犯であることがはっきりしたら従犯として処罰する︒ただ︑このときの手続きは︑必ずしも

一 様ではなかった︒なお︑首犯の疑いが濃くても︑自認しないときは前節の問題となる︒

  刑 律 犯 罪 事 発 在 逃 条 は︑共同で犯罪を犯したものの一人がまだ捕えられていないときの規定である︒捕えられた人物は

逃 げているほうが首犯であり︑自分は従犯という︒しかし︑他に証人がいなくて首従の認定ができないとき︑認容があり

少なくとも従犯ではあるということは明らかであるとして従犯として執行しておいて︑後でそれが間違いであったことが

分かったらそのときに刑罰を調整する︒証人がいて首従が既にはっきりしているときは︑逃げているものを含めて︑それ        ⑤

に 沿って判断をしてしまうとする︒

(12)

 およそ︑二人で共に罪を犯して︑一人は逃げている︒既に捕まっているものが逃げているものが首犯だと供述し︑その他に証人がい

なければ︑ただ︑その供述に沿ってその従犯の刑を執行する︒後になって捕えた逃亡犯が先に捕まえた人物が首犯だと供述し︑問い質 してみてそれが事実であれば︑やはり先の人物を首犯として処理し先に執行した刑を通して計算して後で追及することになった数に充

当する︒

  もし︑罪を犯して発覚したのに逃げているものについて︑多くの証人から首犯であり︑従犯であるとはっきりしていれば︑そのまま

判 断 は完結したとし︑将来︑捕えて官に連れてきたときも︑ただ︑もとの自白によって︑決めるのであって︑対決させて尋問する必要

は ない︒ただ︑逃亡の罪二等は加える︒逃亡が官に発覚する前のものについては︑追及しない︒

き  罪状認容の有無との関連でいえば︑この条項は罪状の認容がないときの問題ではなくて︑認容した事実以上の犯罪をな

続 手   しながら自らは従犯であるとして重い罪を逃れようとしている︵﹁捏詞避就﹂︑﹁侍無質謹︒狡供避就﹂︑﹁飾詞狡卸⁝以為避 訟 噺 重 就 軽

地 歩﹂︶嫌疑があるときの問題である︒

酬     ところが︑この律条とは異なり︑判決手続きを一時停止することがある︒事実を追及しながら秩序の維持を計るという

清 の   目的は同じであるけれども︑律条のように︑とりあえず従犯として執行しておいてあとで調整する行き方とは異なり︑刑 き と の宣告︑執行を急がず︑被告の認容を得ながらも事案の軽重に応じてできるだけ時間をかけて︑事実を明らかにしようと

ほ 引   する︒その第一は︑罪を定めたところ︵﹁擬定﹂︑﹁定擬﹂︶で手続きを一時停止し︑捕えた犯人を獄に拘禁して待機させる

巳 ものである︒そこでは︑手続きは罪状をどの範囲まで認容するかを巡・て進み︑現代の刑事訴訟法の訴因のような当初よ

撲 り手続きを厳格に控つけるものは存在しない・具体的で特定した事実の解明を求めつつ・もし・それができないときは特 者       θ 期 定 していないけれども︑論理的にみて少なくとも存在する認容の得りれている事実の範囲内で処罰葛︒

    即ち︑まず︑犯人による罪状に対する認容はあるけれども擬定するだけに止めて︑一定期間︑拘禁する︒嘉慶元年には︑

71     従

犯 と決あて執行してしまうとすると︑逃亡している人を首犯だといって︑自分は軽い罪ですませようとするし︑また︑

(13)

    逃 亡 していた共犯者を捕えてもすでに裁判を終わっている犯人は流徒に処せられていて連れ戻して尋問することもできな

72     い︒それ故︑これからは捕えた犯人を取り調べるときに首犯が逃げているなら︑従犯として罪を定めた上で監候待質させ        m    よという上諭が出ている︒

嘉慶元年の上諭に基づく定例も含めて一九年に整備され︑さらに︑道光十五年の改正を経た首従がはっきりしないとき        ロ

の 取 扱いを定める条例がある︒従犯として執行するのは供述や証言がはっきりしているときであって︑従犯であると供述

はするけれども︑確証のないときは︑ひとまず従犯とした上で︑一定期間︑監候待質するとする︒認容の範囲と証明の程

度を考えて︑対応が具体的に細分化している︒監候待質は真実の発見ということと不合理に長い拘禁を避けるということ

に 配 慮 している︒

  人 命槍窃および拒捕共殴等の事案で正犯が逃げていて捕まらず︑事件に関係するとされたその他の犯人が調べて関係がなければ︑直

ちに釈放し︑みだりに監候待質してはならない︒

  もし︑現在捕まっている犯人が逃げているものが首犯であるといい︑もし︑現在捕まっているものが逃げている犯人よりも多く︑供

述︑証人がはっきりしているし︑さらに逃亡犯が多いといっても︑現在捕まっている犯人が前後して捕らえられ︑あるいは同時に捕

まったといっても別々に離して追及尋問し︑確かに逃亡者が首犯であったり︑あるいは被害者や遺族や目撃者の証言の信頼できるもの

が あるときは︑直ちに律によって先に従罪を執行して監候待質してはいけない︒

  もし︑案内の人の数が多く︑僅かに一︑二名を捕えて被害者や遺族︑証人で証言するものがないときは︑現在捕えた犯人を例に沿っ

て 罪 を決めた上で監禁する︒逃亡犯が捕まるのを待って尋問してはっきりさせ︑地域を定めて送致する︒

  もし︑正犯が永く捕まらないとき︑従犯の監候待質の犯人は︑強盗事件は寛容に釈放するべきではないけれども︑その他の人命等の 事 案について︑もと遣軍流罪と決めて既に十年を過ぎ︑徒罪で既に五年を過ぎ︑杖罪で既に三年を過ぎ︑そして︑まだ罪名を決めてい

ない人で既に二年を過ぎると︑その督撫は次々と調べてはっきりさせて︑部に申し立て︑部はそれに回答する︒軍流徒とするべきもの は︑もと決めた罪名に照らして直ちに発配し︑杖罪とするべきもの︑および︑まだ罪名を決めていない人は保証人をとって釈放して外

に 出すほか︑正犯が捕えられる日を待って︑再び審理しなおし︑もし︑釈放後ひそかに逃げたり匿ったりしたら︑保証人はそれぞれ不

応 軽律に照らして答四十とする︒その犯人が捕まった日に杖罪の犯人は︑もと決めた杖罪に照らして枷号一ヵ月を加え︑まだ罪名を決

(14)

め て い ない人は︑不応重律に照らして杖八十とする︒もし︑監候待質年限内に恩赦にあったら︑逃げている首犯が捕まったとき︑例に

よって︑減免され得るものは︑待質の犯人は直ちに調べて処理して釈放してよい︒

    どのようなときに供述や証言がはっきりしていると評価するかは一般的にはいえない︒しかし︑この条例にも記されて        ⑨    い るように︑ある程度の判断の枠組みはある︒第一は︑捕えた犯人の数が逃亡している犯人よりも多いときである︒第二       〇〇    に︑被害者や遺族の証言があって︑事実がはっきりしているときである︒刑事事案は物証を排除している訳ではないが︑

    このように︑証拠方法について人に着眼して述べていることからも分かるように︑人証が物証よりも︑事実上︑重要視さ

き れている印象を受ける︒物証の評価から出発してそれと供述や証言との矛盾の有無を検討するという方法ではなくて︑供

続 手   述 や 証 言から出発し︑それを軸として物証はその信用性を確認するための材料として使う証拠の評価方法をとっているよ 訟 瀦 うに思われる︒

噺    もっとも︑乱殴事件は殴ったことが確かであれば︑誰が重い傷を負わせたかが︑はっきりしなくても︑首従の決め方が

喘 法定されていてそれにより監候待質せずに首犯が決ま如・山東司が取り扱・た劉黒が撲殺された事件をめぐる同治年間の き       a        ロ と 説帖に次のように記している箇所がある︒監候待質しなくても首犯は決まるとする︒

喝 し て       査 するに︑乱殴して先後軽重がはっきりしない事案を審理するには︑例により︑最初の計画を立てたもの︑および始めに殴りかかっ 巳 た 人の有無を調べては・きりさせて︑分けて首犯として追及する︒狡猜に供述するまま・︑でたらめに判断して草卒にな.てはいけな

逃   い︒

マヨ

勧       監 候待質の例は︑現在捕えた犯人が逃げているものが首犯であるといって︑逃れるかも知れないときについていっているのである︒

犯     もし︑その現に犯した罪名を調べて︑例によって既に死刑に該当するべきときは︑監候待質の例には入らない︒例の意味ははっきりし

共  ていて明らかであり・適用を間違・てはならない・

3       3        ロ    

  また︑共同してなす窃盗は現場に於いて主動的な立場で行為したものを首犯としたという︒

(15)

74   ところで︑従犯であることが進んで証明できないときに監候待質するということの前提として︑将来︑それが証明され

る可能性がなければならない︒引き合わせて証言することが期待されている人がすべて死亡してしまっているようなとき        04 は︑待質する意味がない︒そういうときは︑従犯として判決し執行したのであろう︒

  また︑首犯と従犯の処罰に違いがないときには監候待質しない︒首犯と従犯の処罰に大差がないときは︑律によって従        09

犯 として判決し執行してしまい︑処罰に違いがあるときに条例に従って監候待質すると記している説帖がある︒

  湖

広 司 査するに︑従来︑槍窃拒捕の従犯が捕まり逃げているものが首犯であるという事案について︑もし︑従犯の罪が二年半で首 犯 もまた満徒に止まり︑従犯の罪が杖九十で首犯もまた罪満杖の類いは︑みな首従の罪名はそれ程にはかけはなれていないので︑律に

照 らして先に従罪を執行する︒罪に軍徒の違いがあるときは︑軽重がかけはなれているので︑例を照らして監候待質とするべきである︒

罪名が生死に関係しないからといってすべて監禁を免じ狡猜な供述をして罪を逃れるきっかけを作らせてはならない︒⁝

  それ故︑罪を定めるだけに止めて監候待質するのは︑従犯で刑罰が遣軍流以下のときに限られる︒従犯の刑罰が死刑に

該 当するときは︑判決が出された後に秋審に於いて待質されることがあったことはともかくとして︑判決への手続きは停    oo 止 しない︒例えば︑何人かで兄を殴って死なせてしまったようなときには監候待質しない︒従犯であっても死刑が適用さ       oη れ るために待質の問題とならないのである︒馬能深と馬明学たちが貸金をめぐって争いを起こして殴りあい馬能漠が死亡

するに至った事案がある︒仲裁に入った馬能濠の胞弟の馬能挙は︑自分は殴ってはいないというけれども︑もし︑殴って        08

い るとしたら︑本来︑待質はないとしている︒

  ただ︑次に引く事案のように︑死罪ではあるけれども︑秋審で減刑されることを予想して判決の段階で監候待質とする

     鳴 こともあった︒判決手続きの中に取り込まれる形で︑ときに秋審制度の厳格な運用が崩れている︒三年間待質したのち︑        四 秋 審に於いて減刑するとした条例が廃止されたのちも︑秋審に入れて減刑することが少なくなかったことを窺わせる︒

(16)

    因みに︑罪を定あるだけに止めて監候待質することをそれなりに制度化することがあったのは首従がはっきりしないと

    きに限られたけれども︑時に犯人がどこまでの行為をなしたかがはっきりしないときにも監候待質することがあった︒犯

    罪 行 為の一部についての認容があるとき︑認容した犯罪の待質期限まで監禁する︒首従が不明なときに︑従犯としての待

    質 期限まで監候するとする条例の適用されるときとは異なるけれども︑不合理に長い拘禁を避けつつできる限り真実を明

  らかにしようとする趣旨は全く等しい︒乱殴事件に於いて王澤瑛が殺したのは一人か二人かが争点となっている道光初年

      閻     の 一 案 が ある︒そもそも︑二人目の人物を殴ったか否かがはっきりしない︒一人を殺害したときの流罪の待質期限を準用

き するとしている︒

続 手

訟      ⁝査するに︑王澤瑛は族姪の王日雲を切って傷つけて死亡させた︒科されるべき絞罪は︑既に免除されている︒ただ︑王美中の一命 斬 は︑その犯人は逃亡している王護窃り殺したと供述する︒もし︑それが事実であれば︑その犯人は無罪の人である︒もし︑王美中

刑  の一命も︑また︑その犯人が切り殺したのであれば︑王日雲と王美中は網麻の叔姪であり︑その犯人とはみな無服である︒その犯人が 齢 豪の二命を殴り殺せば罪綾決・なり︑恩赦の前であっても︑免罪を主張できない︒もとより︑王澤禮§り−捕まらな・からと

の     い っ て︑その犯人を監獄に監禁しておくべきではないし︑また︑その犯人を直ちに保釈するのもよくない︒査するに︑その犯人が王日 は     雲の一命を切り殺し︑もし︑恩赦がなければ秋審で緩決となり減刑され︑時に流罪に減刑される︒例によって減刑された罪名に沿って

る  調べて処理する︒その犯人を流犯待質の例に比付して勘酌して十年を期限とし︑逃亡犯が捕まらなかったら︑再び例によって処理する︒

い ば 亡     た だ︑犯した罪について過不足のない処罰を加えるのが理想ではあるけれども︑事実の解明のためとはいっても待質し 逃

が   たために犯人にいわれのない不利益を与えるべきではないとされていた︒待質に期限を切ったり︑恩赦をきめ細かく適用

者 期 するのはその・﹂とを示している︒その範囲は狭いけれども清代法も手続き上︑犯人の利益をそれなりに保護しよ・つとして

    い ることに留意しなければならない︒ただ︑犯人の利益の保護は憐欄の情に基づくものであって︑それに沿って官吏が行

75     動 する反射的利益を人民は享受したに過ぎない︒自然的な人権から出発して︑訴訟上の権利を認ある現代法とは位置づけ

(17)

76 が 大 きく違孕官が考える犯人の利益を損なうことなく︑時間をかけてでもできる限り真実を発見することにつとめ︑犯

人 を取り逃がさないことによって秩序を維持しようとしていた︒

罪 を定めたところで手続きを停止したのち︑逃亡犯が捕まり待質の必要がなくなったとき手続きは再開される︒また︑

待質後︑一定の日時が経過したときに再開する︒嘉慶年間の条例は︑強盗の待質犯は監禁を解かずに首犯が捕まるまで待       ⑳ つ けれども︑その他の人命等の事案については︑刑罰の大小によって待質に期限を設けている︒重大犯はともかくとして︑

罪状に対する認容をなして︑犯人としてなすべきことをすべて行ったのにも拘らず︑監禁していつまでも執行しないのは

よくないという憐欄の情に基づく処理である︒︷彼を長く獄に監禁しておくことは︑人情として憐欄に耐えられようか︒

︵﹁ 因其久輯囹圏︒情堪欄側﹂︶︸

  もっとも︑重大犯といっても死罪に該当するものは︑そもそも︑判決手続きを停止しない︒それ故︑ここでいう最も重

      脚       四 大 な犯人は強盗犯である︒槍奪は強盗ではない︒乾隆五年に︑重大な強盗犯を除いて情状に考慮するべきものがあるとき        ㈱

に は︑死罪を減じて発遣の罪に処することを声請することを認める条例が定められている︒そして︑嘉慶の条例にいう監

禁を解かない強盗の待質犯は︑強盗事件に関係する犯人すべてではなくて︑死罪を免れ発遣の罪に該当するものに限ると          勃四 理 解して運用されている︒それ故︑強盗事件に関係していても︑死罪や︑あるいは︑死罪を免れ発遣の罪となるものを除       ㈱       磯 く軍流徒罪以下のものは︑条例に記されている期間が過ぎると︑執行されるし︑軽い罪であれば保釈される︒

  また︑恩赦が適用され釈放するべきであるとされたときにも待質は終る︒監候待質されることによって︑与えられるべ

き恩赦の適用が不利にならないように配慮している︒待質の期限内に恩赦があったとき︑首犯であってもそれが適用され        留D 得るとき︑従犯として待質している犯人に直ちに恩赦が適用される︒逆に︑当然のことであるけれども︑首犯であっても

従 犯 で あっても恩赦の適用が認められないときは︑原則のままであって︑待質の期限が満了したときに発配される︒首犯

(18)

   で あるとすると恩赦が認められないけれども︑従犯ならば恩赦が適用されるときは︑従犯としての待質の期限が満了した

    ときに恩赦に沿った処理がなされる︒首犯か従犯かを決められないとき︑待質制度に沿って一定期間共犯者が捕まるのを       8④⑭  

  待ってから従犯として恩赦を適用する︒

    また︑監候待質は父母の生活の世話をする留養のために釈放されるときにも終る︒留養は恩赦があったときになぞらえ

   て 認 め るときもあったけれども︑犯行の役割とは関わりなく一律に︑従犯としての待質期限が到来したときに認めること

    の 方が一般的である︒これは留養のために釈放するという制度が︑本来︑犯人のたあのものではなくて︑犯人の父母のた

き あの制度であったこととも関係している︒留養を認めたために不当に刑が軽くならないように考慮しつつ︑一層︑事実を

続        ㈱ 手 慎重に解明しようとしている︒そして︑待質期限を便宜的にそのための期限として利用している︒ 綱 判決手続きを蒔停止す・第二として刑部に申請して讃限を延孕・・とがある︵客部脇﹂︶引き合わせて審

酬   問するのを待つためにする苔部展限は罪を定めることなく︑獄に拘禁し続けるものである︒できる限り事実を明らかにす

清 の  るために︑あらかじめ上級機関の承認の下に手続きの進行を停止している点では罪を定めて監候待質するときに等しい︒ き と そして︑杏部展限が野放図に長引かないように︑判決を迅速になし︑判決できないのであれば速やかに釈放するために︑ ⁝ 監 候 讐の条㎞が準用・れていゑ馨があるときは犯罪の軽重に対応して︐歪の習内に禁・なければな・なか・

し        ㈹

亡   た ことになる︒

泌 勧       ⁝査するに︑その犯人の劉玉珍は捕えられて監禁され︑既にその巡撫は僅かに徐守教が捕えられる日を待って再び期限を決あて審理

犯    すると上申しただけであって︑まだ︑その犯人について罪名を決あて監候待質を上請して来ない︒徐守教は今まで捕まらず︑その犯人

共  は監禁して二+年になる・本当に徐守教がいつまでも捕まらず・その犯人が結局年老いて監獄で死ぬことを恐れる・上申のように比照

7  して処理するべきである︒劉玉珍は杖罪の犯人が三人以上集まって脱獄したときの従犯である例によって改めて極辺四千里を越すとこ 7       うに発して軍にあてる︒その犯人は監禁十年を越えているので軍流の犯人が監禁待質十年の期限が満了したとき︑直ちに発配する例に

(19)

比 照 して擬定して決着する︒ 78 そして︑恩赦の適用も審理期限を延期したために不利にならないように配慮している︒同治初年あるいは光緒末年には︑

未 決の囚人をも含あて刑を減免する恩赦が出されているけれども︑清代を通して恩赦は処罰が決まったものを対象とする        ω ことが一般的であったらしい︒ただ︑杏部展限している未決のものについても︑すでに罪状に対して自認していて︑証拠

が 明らかであれば嘉慶年間の条例に沿った擬定があったとして恩赦を適用するべきであるとされたことがある︒共犯者が

逃 亡 しているときの史料ではないけれども︑その趣旨は類推できよう︒

  ⁝査するに︑その犯人の李得が強盗一名︑窃盗の犯人四名をかくまったのは︑みな罪は満徒に止まる︒その巡撫が上申していうには︑

以 前 既 にその犯人を尋問し︑実際︑かくまい賊物を分けたのにすぎない︒決して計画し実行した事実はない︒これは︑以前に既に尋問 しててがかりのある犯人であって︑本来︑罪名を定擬して期限を決めて待質するべきである︒調べてみるに︑威豊元年山東省の安三の 通 行した事案の罪名を決められないのとは等しくない︒査するに︑その犯人は道光十五年に捕らえられ監禁されて既に十八年の久しき

を越える︒既に尋問して供述があるのに︑直ちに罪名を定擬しないのは︑本来︑処理が遅れているのである︒謹んで道光三十年一月二

十六日に皇帝のお言葉があったのに︑以前に遅れていたので︑またまた︑調べて処理せず︑そのまま︑監獄に監禁しておいたのはあわ

れ み を明らかにすることにならない︒盗犯の呂九等は︑そのまま別にして処理するが李得一人は巡撫に命じてその犯人を保証人をとっ

て 釈放させると共に︑すみやかに被害者を呼び出して法廷にごさせ︑呂九たちと一緒に尋問して処理して事案をはっきりさせ事実を明

らかにさせる︒

ω  本稿七一頁︒

②   刑

案 匪覧巻五名例律︑犯罪事発在逃条﹁江西司 査監候待質之例係専指現獲之犯⁝道光十二年説帖﹂︒

⑧  本稿七二頁︒

ω  大清律例巻三一︑刑律有事以財請求条︑条例二︒読例存疑巻四一︵前掲書一〇四一頁︶︒

⑤  大清律例︑名例律犯罪事発在逃条︒唐律には︑ひとまず従犯として執行するとするこの条項の前半部分のみが存し︑︵唐律疏議名例

  五︑共犯罪有逃亡条︶明律は清律と異ならない︒︵明律︑名例律犯罪事発在逃条︶︒

(20)

          この条項で問題となっているのは︑証明の程度ではなく︑証明の対象となる構成要件の範囲である︒犯罪をなしたといういわば概

     括的な構成要件は証明できるけれども︑そのとき果たした役割が首犯であったか従犯かという現代刑法理論にいういわゆる法条競合

     の 特

別 関係に類似する具体的な構成要件についてははっきり証明できないときにどのように処理するかという問題である︒事実が

      はっきりしないときに行う現代法の仮処分や唐律の疑罪︵唐律疏議巻三〇︑疑罪条︶のようなものとは異なる︒

       

  因みに︑証拠からはっきり認定できた事実は確定したものとして扱うとするけれども︑この規定に時効や既判力の考えは窺えな

    い︒

    ⑥  被告の人権保障を重視する現代法はこのような漠然とした構成要件を認あないし︑それ故︑そのような予備的訴因を認めない︒ま

     た︑特に慎重を期するべき死刑判決や執行を猶予された事案を除いて︵死刑の執行については︑再審請求︑恩赦の出願等の手続きが

        終 了 す るまでの期間および共同被告人であったものに対する判決が確定するまでの期間については法務大臣の執行命令を出すべき

き   判決確定後六か月の期間に算入しないとする刑事訴訟法四七条がある︒︶確定した判決は執行されるべきであるのだから犯罪事実の 輪  存否が・・きりしな・として判決の執行を停止する制度はな・k共犯が捕まらないと・う考な期限を全く確定できな・事由によ

訟     る公判の停止も認めていない︒ 噺 麗齪糠︑縫禦転熟嘉三の規定は首従が認定できない⁝のものであ:従がはっきりしたとき匡文

献  通り確定的判断をしたも・と思われ・︒期限・始期は刑を決めて刑部・上申して刑部の返答を受理した日である︒︵刑案確覧巻五名

の       例律︑犯罪事発在逃条﹁北撫 杏監候待質之銭在相等擬定罪名請監禁待質一案⁝道光四年説帖﹂︶︒この条例は執行したり保釈するに は       は︑手続きとして刑部の許可を得ることを必要としている︒始期と終期のいずれにも刑部が関与する制度を簡素にして︑通常の軍流

る   等の犯罪については︑期限がきたらまず発配し︑他方で部に報告すればよいという通行が出されている︒︵刑案確覧続編巻五名例律︑

引       犯 罪 事

発 在逃条﹁豫撫 杏監候待質之犯其情罪早経奉部顧定無可再議・.・道光二十五年通行﹂︶︒

し  ⑨ 刑案匪覧続編巻五名例律︑犯罪事発在逃条﹁川督 杏王老五陳家丙陳茂順並在逃之諏長受⁝威豊八年説帖﹂︑同右書同巻同条﹁山東 虻  司査審豊ハ殴命案・盛見葦説帖﹂を藁

が     0θ  新増刑案歴覧巻一四捕亡律︑稽流囚徒条﹁刑部 杏監候待質人犯請筋議章程一⁝光緒四年通行﹂を参照︒ 賭     ⑪  事実の証明が難しいとき︑推定という法技術が使われることがある︒現代法の同時犯はその例である︒殴傷に於ける共犯について う 共       は︑首犯を決めるとき等︑すでに唐律に推定の例がある︒︷滋賀秀三﹁唐律における共犯﹂︵ジュリスト別冊法学教室﹇第一冊﹈8︑

        有 斐 閣︑一九六三年︑後に同氏﹃清代中国の法と裁判﹄に収められる︒︶参照︒︸︒また︑実体法を変えて難しい証明を不必要とするこ

79       とがある︒共同正犯はその例である︒さらに︑はっきり証明はできないけれども︑論理的にあり得る軽い犯罪の限度でとりあえず問

(21)

      責することもある︒これは訴因とか既判力の概念が柔軟で︑なおかつ︑手続きが職権的であるところになじむ︒本稿はこのときを対 む 8   象にしている︒

      ⑫  刑案匿覧続編巻五名例律︑犯罪事発逃条﹁山東司 査審理乱殴不知先後軽重之案⁝同治九年説帖﹂︒

      ⑬  同右書巻一二刑律︑盗賊窩主条﹁漸江司審辮羅二等行窃計鍼遍貫一案⁝﹂︒

     

04  同右書同巻同条﹁漸江 杏施猫頭等同彩八人行劫⁝道光二十八年説帖﹂は︑施猫頭たちを監候待質しているうちに︑首犯とされる

     厳

安 帯が死亡してしまった事案である︒ただ︑まだ︑尋問できる人がいるので︑断結するべきではないとしている︒

     

09  刑案匪覧巻五名例律︑犯罪事発在逃条﹁湖広司 査向来辮理槍窃拒捕⁝道光六年説帖﹂︒

      00  乾隆十七年以降︑この制度は廃止される︒しかし︑死刑判決を受けた後︑秋審で緩決となり︑さらに減刑されて死刑を免れたとき

        に監候待質することはその後にも見られる︒嘉慶十九年の条例は︑秋審で緩決に入り︑さらに減刑されたときには監候待質するとす

        る︒︵大清律例巻五名例律︑犯罪事発在逃条︑条例三︶︒

         

  およそ︑人命︑槍窃等の事案で︑正犯が逃げていてまだ捕まらず︑従犯で斬絞監候にするべきは︑律によって罪を決めて秋審に

          入 れ て

情 実︑緩決に分けて処理する︒監候待質してはならない︒緩決とするべきものは︑調べて減刑するときを待って︑もし︑減

       

  刑をなすべき犯人であれば減刑した遣軍流の罪に照らして︑所定の期限を考えて監候待質する︒十年期限が満了して正犯が捕まら

          ないと︑例に照らしてそれぞれ発配する︒もし︑期限内に恩赦によってさらに減刑されたら︑再び減じられた刑罰に照らして期限

       

  を考えて調べて処理する︒情実でまだ勾決となっていなければ︑また︑改めて緩決に入り︑減刑を認められるのを待って︑同じよ

          うに処理する︒

       

  また︑刑案匪覧続編巻五︑名例律︑犯罪事発在逃条﹁台湾鎮道 奏黄激即楊蝦起意糾同王英等槍奪事主黄譲⁝道光二十七年説帖﹂

        は︑絞監候に決まった犯人の監候待質を認めていない例である︒

     

⑰  大清律例巻二八刑律︑殴期親尊長条︒

     

08  刑案睡覧続編巻五名例律︑犯罪事発在逃条﹁四川司 此案馬能撃因分居胞兄馬能短借馬明学銭文未償⁝同治七年説帖﹂︒

         

  ⁝この事案のその場所で争い殴った人は︑すべてすでに法廷にきており︑僅かに↓人が逃げているに過ぎず︑また︑証人や遺族

          で 尋 問できるものもいる︒審理にたずさわる官員は虚心に確かな事実をはっきりさせて︑それぞれ法を適用する︒それなのに︑馬

       

  能舜一人がまだ捕まらないので証拠が不十分だといい︑馬能撃たち三人をすべて監禁して待質させているのは︑特に刑法を慎重に

          扱 う道ではない︒待質の例は普通の人を指していっている︒さて︑馬能撃はすでに死亡した馬能濠の期親の服弟であり︑ただ︑殴

          れ ば 直ちに罪は死刑である︒例に服制関係の人命事案に待質するという明文はない︒普通の人と並べて論ずることはできない︒事

       

  案の情況は矛盾しており︑処罰の軽重に関係するので︑その督撫にもう一度犯人を連れ出して厳しく尋問し︑逃亡犯の馬能莞を必

(22)

          ず 捕らえて尋問してはっきりさせて︑正しく処理して部に報告させ︑それが届いた日に再び議論したい︒

      09  本稿七五頁︒

      ⑳   本稿六四頁︒

      ¢D  刑案匪覧巻五名例律︑犯罪事発在逃条﹁東撫 杏援免絞王澤瑛監候待質請定年限一案⁝道光七年説帖﹂︒

      ⑳  逮捕状のない理由のない身柄の拘束︑法の規定に沿わない拷問︑不当に長い拘留等は許されていない︒しかし︑被告の利益を保護

     

  する制度はそれ程多くはない︒特にそれらは官吏の行動を規制するものであって︑進んで被告を保護する制度は見当たらない︒刑事

        訴 訟 は 犯

罪 者を捕らえて処罰することを通して社会秩序を維持することを目的としており︑その目的の達成が強く求められるため

        に︑手続き面に於ける被告の保護はそれだけ退く︒︷拙稿﹁清代法に於ける官の活動をあぐる不法からの救済﹂︵星薬科大学一般教育

        論

集 第一一輯︑一九九四年︶︑同﹁清代に於ける民事法秩序の構造﹂を参照︸︒

き  閻 本稿七二頁︒刑が執行され刑期が満了したとき︑完全に解放して自由にしている訳ではないことに留意しなければならない︒原籍 搬  に於いて保証人を決めて︑栞共犯が捕ま.たときの質審のたあに待機・せている︒刑期を終わ︒ても︑なお︑再審理・れ得たの

訟       で ある︒また︑これは監候待質している間になされた恩赦によって保釈されたときも同じである︒︵本稿七八頁︶︷﹁即逓回原籍交該 瓢  地方官厳加管束褒橿逸犯再行質明鐘﹂︵刑黍覧続編巻五名例律︑犯罪事発在逃条﹁蘇撫藷起オ於道光三年聴従逸盗 刑   湯四行劫⁝道光二十八年説帖﹂︑﹁乃行逓籍取保備質﹂︵同右書同巻同条﹁院撫 杏崔緒華前聴従逸犯崔茂田糾殴喬習富身死⁝道光二 齢  ±年説帖﹂︸︒

の     ⑳

  刑案匪覧巻五名例律︑犯罪事発在逃条﹁安撫 杏奉准通行監候待質人犯⁝嘉慶二十三年説帖已通行﹂︒

時    

脚  刑案匪覧続編巻五名例律︑犯罪事発逃条﹁奉天府サ 杏李付太前彩回局四等持械槍奪案内⁝道光二十四年説帖﹂︒

る  ¢⑤ 大清律例会通新纂巻二二︑刑律強盗条︑条例二〇︒欽定大清会典事例巻七八三︑一四頁b︒なお︑この条例は︑同治一二年に削除

ひ   されている︒ し  閻 待質期限内に刑罰を整理せよというお言葉を受けても︑死罪を免れた盗犯であると︑調べて処理することはしない︒︵﹁期内恭逢清 避  刑恩旨係免死盗犯震轟﹂︶︵刑案讐続編巻五名例律︑犯罪事発在逃条﹁河南司此案趙清太原犯聴従謝第三臨時強劫・−道光

が       二 十 五 年説帖﹂︶︒ 賭     ㈱ 強盗事案で寛容に釈放することをしない例は⁝すべて死罪を免れた盗犯で罪として発遣するべきものを指していっている︒︵﹁強盗

イつ      

共     案件 不応寛釈之例⁝皆係指免死盗犯.罪応発遣者而言﹂︶︵同右書同巻同条﹁直督 杏顧三前因聴従逸犯王二等行窃事主都起安家⁝

        道 光二十一年通行﹂︶︒

81     ⑳  続増刑案罐覧巻二名例律︑犯罪事発逃条﹁安徽司 査例載正犯在逃日久無獲⁝道光十七年説帖﹂︒

(23)

     

働 さらに︑光緒初年には立決の犯罪や秋審で情実に入ることが確実のものや死罪に該当しない十悪に関係するものを除いて︑通常の待

  8   質の案件について︑条例の定めている年限を半分にし︑また︑災害に遭遇した直隷︑河南︑山西の三省については︑それをさらに臨

     

  時に短縮する章程の制定が議論されている︒︵新増刑案匪覧巻十四捕亡律︑稽流囚徒条﹁刑部杏監候待質人犯請筋議章程一 ⁝光緒

        四 年 通 行﹂︶︒

      00   刑 案睡覧巻五名例律︑犯罪事発在逃条﹁東撫 杏擬杖待質之侯和尚遇 赦例得減免応否即行保釈一案⁝嘉慶二十一年説帖﹂︒

     

働  刑案匪覧続編巻五名例律︑犯罪事発在逃条﹁山東司 査例載監候待質人犯強盗案件不応寛釈⁝成豊九年説帖﹂︒

      ⑬

  同右書同巻同条﹁北撫 杏流犯沈正順等待質期満一案⁝道光七年説帖﹂︒刑案睡覧巻五名例律︑犯罪事発在逃条﹁広西司 査此案黄

        亜 安係依共謀為盗⁝道光十三年説帖﹂も同じ︒

      働  留意しなければならないのは︑恩赦があったときの強盗事案に対する取り扱いであり︑そこには時代的な変容がある︒期限をつけ

        ず に 監 禁 して待機し続けるのは死罪を発遣に減じられた強盗犯に限ったけれども︑︵本稿七六頁︶恩赦との関係に於いて︑死罪を免じ

     

  られた盗犯についても期限がつけられるようになる︒期限がないと待質犯について恩赦を適用する術がないことがあるからである︒

     監 候待質していた死罪を免じられた盗犯の曹七について︑嘉慶二十五年の恩赦をうけて待質後二十年を経て保釈したという直隷省の

       

事 案がある︒そして︑これを契機にして恩赦があったとき︑待質後二十年を経たら︑調べて処理せよという通行が各省に出された︒

       ︵続増刑案睡覧巻二名例律︑犯罪事発在逃条﹁陳西司 査道光元年六月本部議覆⁝道光十四年説帖﹂︶︒これに沿って︑従犯に恩赦の適

        用がある死罪を免じ発遣とされる事案は︑待質後二十年で刑が減免され︑︵刑案歴覧続編巻五名例律︑犯罪事発在逃条﹁奉天府サ 杏

        李二先因聴従逸盗孫三行劫⁝道光二十五年説帖﹂︶︒さらには︑首犯︑従犯を問わず恩赦の適用のないときでも︑待質中に恩赦のない

        ときとは異なり︑恩赦があれば︑刑部の許可を待って待質二十年の後に発配されることになった︒︵同書同巻同条﹁山東司 査例載監

        候

待 質人犯強盗案件不応寛釈⁝威豊九年説帖﹂︶︒

          強盗事件に関係していても︑死罪を免じられた盗犯ではないときには︑待質の期限は刑罰の大小に照らして条例に示す期限によ

        る︒︵本稿七六頁︶首犯であるとすると恩赦の適用がないのであれば︑待質期限が到来したときに恩赦に沿って処理される︒︵刑案匪

        覧巻五名例律︑犯罪事発在逃条﹁山東司 査道光三年該省以徒犯張景監禁期満⁝道光七年説帖﹂︒同右書同巻同条﹁熱河都統 杏監候

        待 質 遣 犯 賓 拉 十 年 期満一案⁝道光四年直隷司説帖﹂︶︒

          槍 劫

拒 捕は強盗ではないけれども︑強盗に比照して︑拘禁後二十年を経過したときに恩赦の適用が問題になる︒︵同右書同巻同条

     ﹁四川司査例載人命槍盗等案有正犯在逃未獲⁝道光十二年説帖﹂︶︒

          既 に

記 したように︑絞罪のような死罪は︑待質されない︒しかし︑恩赦があった際︑もし︑従犯であるならばそれが適用されると

        きは︑秋審に於いて緩決となり減刑されるときの刑を基準として期限を考える︒そして︑その期限が到来したときに恩赦に沿って処

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