奈良教育大学学術リポジトリNEAR
土井遺跡出土火山灰の蛍光?線分析
著者 三辻 利一, 中橋 賢人, 佐々木 哲也, 桜田 隆
雑誌名 古文化財教育研究報告
巻 13
ページ 23‑28
発行年 1984‑03‑20
その他のタイトル X−ray Fluorescence Analysis of The Volcanic Ashes Excavated from The Doi Site,Yatsumori Cho,Akita Prefecture
URL http://hdl.handle.net/10105/446
土井遺跡 出土火 山灰 の蛍光X線分析
三
辻
利
一*
佐 々木
哲
也*
中 橋 賢 人* 桜
田
隆**
(*奈良教育大学 化学教室)
(**秋 田県埋蔵文化財セ ンター)
(1984年 1月30日受理)
東北地方 の遺跡 か らは しば しば火山灰 が検 出 され る。 これ らの火山灰 を同定す ることがで きれ ば遺跡の年代を推定す る上 に役立つ。 これ らの火山灰 の うち、十和 田
a、
十和 田b、
ニ ノ倉、 白 頭 山火山灰の相互識別 は蛍光X線分析法 で も容易 にで きることが これ までの研 究の結果 、判 明 し た。 これ らのデータを使 って、土井遺跡 、および秋 田県下の2〜 3の遺跡 出土火山灰 を同定 した 結果 について報告す る。現地で採集 された火山灰 は実験室 に持 ち帰 って空気乾燥器の中で 110℃ 前 後で数 時間 乾 燥 した の ち、 タ ングステ ンカーバ イ ド製乳鉢で200メ ッシュ程度 に粉砕 された。粉 末 試 料 は15ト ンの圧 力をか けて直径2 cmのコイ ン状のペ レッ トに成形 し、X線を照射 した。蛍光X線分析 にはエネル ギー分散型蛍光X線分析 装置が使 用 され た。 エネル ギ ー分 散 型 蛍 光X線分 析 で は 火山灰 中 の
K
(カ リウム)、 Ca(カ ル シウム)、
Fe(鉄
)、Rb(ル
ビ ジウム)、Sr(ス
トロ ンチ ウ ム)が容 易 に分析 され る。K、
Caの分析 には真空下で、2次ターゲ ッ トと してTiを使用 した。 また、Fe、 Rb、
Srの
分析 には空気下 で2次ターゲ ッ トと してMoを使 用 した 。定量 分析 には標 準 試料 と して岩石標準試料JG‑1を 使 用 した。分析 データはJG‑1に よ る規格化値 で表示 され た。は じめ に、既 に他の方法で同定 されて いる火山灰、または層序学的 に同定が明確 にで きる火山 灰を分析 し、これ らの化学特性 を把握 しておか な けれ ばな らな い。十 和 田
a、
十和 田b、
ニ ノ倉 、 自頭 山火山灰 のRb―Sr分布図を図1に示す。 白頭 山火山灰 はRb量が多 く、Sr量が 少 な い とい う特徴を もつのに対 し、十和 田a、
十和 田b、
ニ ノ倉 な どの十和 田火山活動 による火山灰 はRb量が少 な く、
Sr量
が多 いとい う対照的な特徴があ ることが分か る。 さらに、十和 田系火山 灰で も、十和 田a、
十和 田b、
ニ ノ倉 と降下年代が古 くな る程、Rb量が少な くな る傾 向があ ることが分か る。
図2には、 これ ら火山灰のK―Ca分布図を示す。K―Ca分布図で も、 自頭山火山灰 はK量
一‑ 23 ‑―
が多 く、Ca量が少 ないの に対 し、十和 田系火山灰 にはK量が少 な く、Ca量が多い とい う対照 的特徴 が あ ることが分か る。 さらに、十和 田系火山灰で も、十和 田a火山灰 はK量が もっとも多 く、Ca量が もっと も少 ない。逆 に、ニノ倉火山灰 はK量が もっと も少な く、Ca量が もっと も
o
白 頭 はPへ山 灰o
十 111Llla ttUI R●
十 和 絆
lb火
│1灰.
三 ノ 倉 火 山 灰Q5
Q5 1.0 1.5
Sr
図1 青森県 に堆積 す る火 山灰 のRb―Sr分布 図
0
自頭山火
│[恢。
十 和 田 a′ k[」 ル尺
●
十 和 国b ttLU灰
.
三 ノ 菖 火 山 灰2 3
Ca
青森県 に堆積す る火 山灰のK―Ca分布 図 l.0
Rb一
0
一K
. ︒ 一
.O b
図 2
多 い。 そ して、十和 田b火山灰 はその中間 に分布す ることが分か る。
図3には、 これ ら火山灰 の
Fe量
を比較 してある。ニ ノ倉火 山灰 にはFe量
が もっと も多 い。そのため、ニ ノ倉火山灰 は外見上 も色黒 く、他の火山灰層 よ り区別 され ること もある。逆 に、十 和 田a火山灰 には
Fe量
は もっとも少 ない。十和 田b火山灰 にはFe量はやや多 く、十和 田a火山灰 とニ ノ倉火山灰の中間程度の
Fe量
を含 む。十和 田b火山灰が青バ ンと俗稽 され る もの も、その上位 に分布す る十和 田a火山灰 に比べて
Fe量
が多 いことに起因す るのだ ろ う。 白頭山火 山 灰 は十和 田b火山灰 と同程度 のFe量
を含 む。白 頭 山
十 和 田a
図3 青森県に堆積する火山灰のFe量
以上の結果、Rb―Sr分布図、K一Ca分布図、
Fe量
よ り、十和 田a火山灰 、十 和 田b火山灰 、ニ ノ倉 火山灰 、 自頭 山火 山灰 の相 互識別 は十分可能で あ ることが わか る。
これ らの結 果を使 って、秋田県下の遺跡 出土火山灰の同定 を試みた。分析対象 とな った火山灰 は、(1ンヽ森 町、土井遺跡 出土火山灰 12)小 坂町大湯浮石層 (上 位層2‑1、 下 位 層2‑2)旧 )
平鹿 町、平鹿遺跡 火山灰
141/1ヽ
坂 町、大袋火山灰 幅)払
田柵 出土火山灰である。図4には、 これ ら火山灰のRb―Sr分
布 図を示す。土井遺跡 出土火山灰 は自頭山火山灰領 域 に、 ま た、大湯 浮 石層 と平鹿遺跡 出土火山灰 は十和 田a火山灰領域 に分布 した。 しか し、大袋火山灰 と払 田柵の火 山灰 は どの火 山灰領域 に も対応 しない。図5には、K―Ca分布図を示す。 この分布図で も図 4 と同 じ結論が得 られ ることが分か る。図6にはFe量
を示 して あ る。Rb一Sr、 K―Ca分布 図で 自頭 山火山灰 と一致 した土井遺跡 出土 火山灰 はFe量
で も白頭山火山灰 に対応す る。 また、Rb一Sr、 K―Ca分布図で十和 田a火山灰 に対応 した大 湯浮石層 、平鹿 遺跡 火 山灰 はFe量
で も十和 田a火山灰 に対応 した。一方、Rb―
Sr、
K―Ca分布 図 で どの火 山灰 にも対 応 しな Fe一2
一‑ 25 ‑―
Q5 1。 O L5
Sr
図4 秋 田県内遺跡 出土 火 山灰 のRb―Sr分布 図
Ca
図5 秋田県内遺跡出土火山灰のK―
Ca分
布図か った大袋火山灰 と払 田柵の火山灰 はFe量ではニ ノ倉火山灰 に もっとも近 いことが分か った。
以上の結果、蛍光X線分析で得 られ るすべての因子か ら、土井遺跡 出土火 山灰 は白頭 山火山灰 、 また、大湯浮 白石層、平鹿遺跡 出土火山灰 は十和 田の火山灰 と判定 された。 しか し、大袋火山灰 と払田柵の火山灰は どの火山灰 に相 当す るのか判定で きなか った。 これ らが 自頭山火山灰 や十和
R一 2
図6 秋田県内遺跡出土火山灰のFe量
田系火山灰以外の火山灰 であ るのか、 それ とも、2次堆積 した火山灰 であ るため コンタ ミが著 し く、そのため化学特性が著 しくくずれて しま った火山灰であ るのか、 よ くわか らない。 この問題 は今後の宿題である。 こうして、土井遺跡 出土の火山灰は白頭山火山灰で あることが分か った 。
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