はじめに
行動の効率や成果をパフォマンスというが、 パフォマンスと安全性は実際の行動場面や作業場面で重 要な問題を提起している。 たとえば、 今注目のベンチャービジネスを取り上げてみよう。 新しい専門知 識や技術を生かした新規事業開発の目的が間違いなく達成されるためには、 実際的な場面での注意、 認 知、 技能、 安全などの人間の諸特性 (ヒューマン・ファクターズ) が必要となってくる。 そこで、 パフォ マンスの成否 (成功・失敗) をヒューマン・エラーとして捉えた場合、 私達人間の中には、 エラーを犯 しやすい特性や種々の内的・外的要因の影響を受けやすい人がおり、 その度合いによって、 エラーの程 度も異なってくると考えられる。
一般にヒューマン・エラーに関る要因としては、 以下のようなものがあげられている。
① 知覚系:見間違い、 見落としをしょっちゅうしている
② 記憶系:物忘れ、 記憶違いばかりをしている
③ 思考系:論理展開の仕方を知っていても、 論理的に考えない
④ 判断系:独善的な意志決定をしてしまい、 有力な選択肢を無視してしまう
⑤ 行動系:意図とは違った振る舞いをしたり、 予測できない振る舞いをする
⑥ 注意系:すぐに飽きてしまったり、 よそに注意を向けてしまう
⑦ 動機系:やる気がもともと希薄だったり、 すぐに怠ける
⑧ 感情系:感情のコントロールができなくて、 気まぐれである
これらの要因を参考にして、 先ず、 中小企業経営のパフォマンスの成否に焦点を当て、 成功・失敗に 関与する要因をアプリオリに次のように分類した。
① 危険志向性:ベンチャービジネス志向性との関連性
② 達成動機:成功回避・失敗回避、 親和動機との関連性
③ 状況判断:認知的不安解消、 メンタルモデル
④ 原因帰属:運か努力か、 能力か課題困難度か
⑤ 不安対処:感情的葛藤、 ストレスとの関連性
⑥ プランニング:計画の慎重さ、 熟慮
*1 立正大学心理学部教授
成功・失敗とヒューマン・ファクターズ
−日米の比較調査からの検討−
山 下 富美代
*1⑦ モニタリング:成功・失敗への見とおしとの関連性
上記の分類に基づいて、 本論では、 ヒューマン・ファクターズ・チェックリストを作成し、 中小企業 経営者を対象として、 その成功・失敗に関るヒューマン・ファクターズは何かを見出すことを試みる。
1. 目的および仮説
1) 目 的
中小企業経営者のパフォマンスの成否に関わる経営者側の諸要因の中でどのようなヒューマン・ファ クターズが経営の成功・失敗に関連しているかを日米比較調査を通して見出す。
2) 仮 説
①危険志向性あるいは成功恐怖は社会的要因や文化的要因の影響を受けることは良く知られている (堀野、 1995)。 したがって、 日本と米国の中小企業経営者間にも何らかの差があると考えられる。
国民性の違いから、 一般的には日本の場合は堅実志向、 ハイリスク回避傾向が、 また米国の場合 は革新志向、 リスクテイキング傾向がみられる。
②仮説①に関連して、 プランニングにおける日米間の差が考えられる。
日本の場合、 「慎重さ」、 「熟慮性」、 「計画性」 が一般的な傾向としてあげられるが、 米国の場合 は、 プランニングでは日本のような傾向は弱い。
③日米の経済情勢の違いや公的支援政策等の違いから、 成功・失敗の原因帰属には差が見られる。
公的援助が日本より充実しており、 かつ日本のような不況状況下ではないにもかかわらず、 経営 が成功しない米国の場合、 その原因を自分の能力や努力に帰属する。
これに対し、 日本では、 成功は自分の努力や能力に帰属するが、 失敗は外的なものに帰属する傾 向がある。
④日本の諸状況では、 米国に比較し、 自助努力や計画性はよりいっそう求められる。 したがって、 達 成動機、 状況判断、 プランニング、 モニタリング等、 いわゆるヒューマン・ファクターズの影響は 米国に比し大きく、 各得点は失敗者においては、 成功者よりも高くなる。
2. 方 法
1) 対象者:両国の対象者の男女比は Tab. 1−1, 1−2 に、 年齢構成については Tab. 2−1, 2−2 に示 した (内訳は有効回答数にもとづく)。 ただし、 本論では年齢・性別による比較検討は行わない。
尚、 調査期間は予備調査を1998年11月から1999年1月、 本調査を1999年11月から2000年1月にかけ て行った。
2) 調査法:自己記述式質問紙を、 ランダムサンプリングによって抽出した日米の中小企業経営者に対 して日本の場合は郵送し、 回答を郵送またはファックスで得た。 米国の場合は電子メールによって調 査・回答を得た。
3) 質問紙の構成
①会社概要に関する調査:業種、 創業形態、 資本金、 従業員数等のほか、 本調査では、 成功・失敗の
客観的判断目安として、 「売上高経常利益率の直近決算期の水準」 を指標とした。
②創業動機の満足度と事業状態に対する自己評価:創業動機の満足度については、 自己実現、 年収、
自分の時間、 起業した事への総合評価の4項目について, 「非常に満足している」 から 「非常に不 満である」 までの4件法で回答を求めた。 また, 事業状態に対する自己評価については 「成功して いる」 から 「失敗している」 までの4件法で回答を求め, これについての結果を主観的成功・失敗 の指標とした。
③ヒューマンファクターズチェック項目
先に上げた, 分類項目を上位項目として, 30項目の下位項目からなる質問紙を作成し, 「非常に そう思う」 から 「まったくそう思わない」 までの4件法による測定尺度で予備調査を行った結果、
G−P 分析で妥当性が認められなかった項目および, 因子分析の結果, 因子負荷量の低かった項目 を削除し, 有効と考えられる次の項目を上位項目とした30項目の下位尺度を改めて作成した。
[危険志向性・達成動機・原因帰属・状況判断・プランニング・モニタリング]
回答は先述した通りの4件法で得た。
尚, 米国調査については, 日本で用いた調査表を翻訳したものを用い, 実施・回収については日・
米共に調査会社に委託した。
性 別 人 数 相対度数 累積相対度数
男 性 550 0.96 0.96
女 性 20 0.03 0.99
不 明 5 0.01 1.00
計 575 1.00
Tab. 1−1 対象者の男女別比率 (日本)
性 別 人 数 相対度数 累積相対度数
男 性 394 0.70 0.70
女 性 168 0.30 1.00
不 明 0 0.00 1.00
計 562 1.00
Tab. 1−2 対象者の男女別比率 (米国)
年齢 (レンジ) 人 数 相対度数 累積相対度数
10代 0 0.00 0.00
20代 2 0.00 0.00
30代 21 0.04 0.04
40代 117 0.20 0.24
50代 220 0.38 0.63
60代 166 0.29 0.91
70代 39 0.07 0.98
80代 3 0.01 0.99
不明 7 0.01 1.00
計 575 1.00
小数点第三位を四捨五入した。
Tab. 2−1 対象者の年代別比率 (日本)
年齢 (レンジ) 人数 相対度数 累積相対度数
10代 4 0.01 0.01
20代 75 0.13 0.14
30代 151 0.27 0.41
40代 191 0.34 0.75
50代 111 0.20 0.95
60代 26 0.05 0.99
70代 4 0.01 1.00
80代 0 0.00 1.00
不明 0 0.00 1.00
計 562 1.00
小数点第三位を四捨五入した。
Tab. 2−2 対象者の年代別比率 (米国)
3. 結果ならびに考察
A. 予備調査について
前項の中小企業経営者2000名を対象として、 成功・失敗に関する経営者側の諸要因に焦点を当て、 ど のようなヒューマン・ファクターズが関与しているかを質問紙法によって調査した。 有効回答数は男性 401、 女性13の計414であった。
先ず、 ヒューマン・ファクターズ測定項目 (仮称) の妥当性の検討を以下の処理を通して行った。
先に上げた関連項目ごとに設定した質問項目計30項目について、 G−P 分析を行った結果、 有意差が 見られなかった3つの項目と、 有意差が認められたものの、 P 群の平均が G 群の平均を超えていた1 つの項目を削除した。 以上4つの項目を削除した後に、 尺度のα係数を求めた結果、 .75の数値を得た。
次いで、 測定尺度30項目から上記4項目を削除した26項目について因子分析を行った (Varimax 直 交回転)。 その結果、 7つの因子が抽出された。 因子負荷量の高い項目を中心に因子の解釈を行った結 果、 次のように命名された。
① プランニング ② 危険志向性 ③ 判断・対処行動 ④ モニタリング
⑤ 持続性 ⑥ 柔軟性 ⑦ 原因帰属
これらの因子はアプリオリに設定した7つの要因と完全には合致しないものの、 基本的にはほぼ同様 な要因が得られたと考えられる。
異なる点としては、 「達成動機」 が因子分析の結果は 「持続性」 と 「柔軟性」 の因子に分かれたこと と、 「状況判断」 と 「不安対処」 が 「判断・対処行動」 因子に統合された、 2点があげられる。
Weiner の理論によれば、 成功・失敗後のやる気や達成行動は、 成功・失敗の原因帰属によって生起 した感情経験に依存するという。 すなわち、 達成動機の度合いは、 原因帰属の影響に誘発されて決まる ために、 今回の場合は、 「原因帰属」 因子の中に 「達成動機」 因子が含まれなかったとも考えられる。
これらの結果を踏まえ、 本調査では、 先に分類した成功・失敗の要因を 「危険志向性」 「達成動機」
「原因帰属」 「状況判断」 「プランニング」 「モニタリング」 の6つに再整理し、 質問文の表現の修正や質 問の削除・追加等を行い、 尺度の再構成を行った。 結果的に、 先の方法の項で記述したような30項目か ら成る測定尺度を作成し、 本調査で用いることにした。
B. 本調査について
1) ヒューマン・ファクターズ測定尺度の妥当性の検討
先ず、 各質問項目の平均、 標準偏差を算出し、 再度尺度の妥当性を検討するために、 日本で得たデー タを対象に G−P 分析を行った。 結果は Tab. 3 に示した通りである。
分析結果から、 質問項目11と30については妥当性が低いと判断し、 この2項目を除外して、 他の分析 を行った。 なお、 米国の質問項目についても同様の措置を取り、 2項目を除く28項目についての平均、
平均標準偏差を Tab. 4 に示した。
2) ヒューマン・ファクターズ主要カテゴリーによる日米の比較
ついで、 ヒューマン・ファクターズの主要構成要因と考えられる6カテゴリーごとに平均得点と標準 偏差を算出し、 日米間の得点の比較を行った (Tab. 5)。 この尺度では、 平均得点が高いほど、 そのカ
テゴリーにおける傾性が高いことを示すが、 危険志向性については、 逆に平均得点が低いほど危険志向 性が高いことを示す。 また、 原因帰属については、 平均得点が高いほど内的な要因への帰属傾向を示し、
逆に低いほど、 外的要因への帰属傾向を示す。
t 検による有意差の検定結果からは、 「プランニング」、 「モニタリング」 のカテゴリーを除き、 各カ テゴリーに両国間で有意な差が認められた。 すなわち、 危険志向性は米国の方が高いが、 達成動機、 状 況判断は日本の方が高い。 また、 原因帰属に関しては、 やや米国の方が内的要因への帰属傾向を示して いるように思える。
これら有意差の認められたカテゴリーごとに得点結果を Fig. 1−a から Fig. 1−d に示した。
危険志向性についてみてみよう。 米国の中小企業経営者の方が日本の経営者よりも危険志向性が高い ことが見て取れる。 これは日本について言えば、 危険回避傾向が見られるといえる。 その背景には、 公
No 質 問 項 目 平均 SD G−P 逆転項目 カテゴリー
1. 努力すれば成功できる 3.18 0.68
***原因帰属
2. ひとつのことにとらわれて他に目が行き届かなくなる 2.66 0.73
***※ 状況判断
3. 成功に危険はつきものだ 2.08 0.79
***※ 危険志向性
4. 仕事は優れた水準で成し遂げたい 3.50 0.62
***達成動機
5. ひとりで物事を判断して決めてしまう 2.33 0.79
***※ 状況判断
6. 難しい仕事ほどやる気が出る 3.01 0.72
***達成動機
7. 一度決めたことはなかなか変えられない 2.57 0.76
***※ 状況判断
8. 事前準備に時間とお金は惜しまない 2.56 0.73
***プランニング
9. やりなれた行動の手順にいつも従う 2.49 0.70
***※ モニタリング
10. うまくいくか、 いかないかはその時の運・不運による 2.72 0.77
***※ 原因帰属
11. 厳しい状況のもとでは、 大胆なことはしたくない 2.80 0.77 危険志向性
12. どの程度の確率で成功するか否かの見通しをたてる 2.97 0.71
***モニタリング
13. イチかバチかに賭けてみる 3.40 0.71
***※ 危険志向性
14. 誰にもできないことにチャレンジしたい 2.61 0.83
***達成動機
15. 成功するには綿密な計画が必要だ 3.22 0.72
***プランニング
16. 非常に難しい状況のもとでは誰も目標を達成できない 2.82 0.76
***※ 原因帰属
17. いろいろな状況を設定し、 どのような対処が可能かシュミレーションをする 2.90 0.73
***モニタリング
18. 失敗しそうな仕事には手を出さない 3.06 0.87
***達成動機
19. 成功したときのやり方にこだわってしまう 2.63 0.71
***※ モニタリング
20. 十分な情報を集めてから事を始める 2.95 0.70
***プランニング
21. 失敗は自分の能力不足が原因だ 3.07 0.71
***原因帰属
22. チャンスがあればリスクは気にしない 2.42 0.75
***※ 危険志向性
23. どのようなときでも客観的な判断ができる 2.76 0.65
***状況判断
24. いったん行動を起こしたら先のことは考えない 2.85 0.72
***※ モニタリング
25. 事業の失敗は公的援助政策がないため、 自己責任ではない 3.49 0.71
***※ 原因帰属
26. 手がけたことはどんなことがあっても最後までやり通す 3.00 0.78
***達成動機
27. 大当たりをする仕事に賭けたい 3.04 0.80
***※ 危険志向性
28. 積極的に人脈づくりをする 3.05 0.69
***プランニング
29. どんなときでも冷静さを失わない 2.89 0.69
***※ 状況判断
30. あれこれ戦略を立てるよりも、 実行することが重要だ 1.95 0.67 ※ プランニング
G-P *** : p<.0001 ** : p<.001 * : p<.05
注 ※印は逆転項目
Table−3 基本統計量ならびに尺度の信頼性の検討
的援助政策の不備や融資が受けにくいなどの社会的要因がもちろん介在していよう。 したがって、 危険 を冒してまでやっても成功しなかった場合のリスクは非常に大きい。 危険というよりむしろ失敗に対す る不安が作用していると考えられる。 そこで、 これら、 日米に有意な差が見られたカテゴリー別に対象 者を成功・失敗群に分類し、 比較検討することを試みた。
3) 成功群・失敗群の日米比較
成功・失敗群の分類に際しては、 次の客観的指標と主観的指標にもとづく2つの分類からの比較を行っ た。
A. 客観的分類基準;会社概要に関する質問項目中 「売上高経常利益率」 でプラスあるいは現状維持 であれば成功群、 マイナスであれば失敗群として扱う (日本および米国の売上高経常利益率の各出
No 質問項目 M SD 逆転項目 カテゴリー
1 If make efforts, I can succeed. 3.64 0.57 原因帰属
2 When I'm busy with one thing I can't focus on anything else. 2.99 0.73 ※ 状況判断 3 Success is impossible without taking risks. 1.87 0.70 ※ 危険志向性 4 I like to carry out my work with high standards. 3.758 0.46 達成動機 5 I make decisions based on my own judgement. 1.84 0.62 ※ 状況判断 6 The harder the work, the more motivated I become. 3.17 0.66 達成動機 7 Once I decide something it is hard to change my mind. 2.45 0.75 ※ 状況判断 8 I don't spare either time or money when it comes to preparation. 2.66 0.73 プランニング 9 I always follow the order and procedures to which I am accustomed 2.48 0.72 モニタリング 10 Whether I succeed or not depends on my luck at that moment in time. 3.20 0.76 ※ 原因帰属 12 I always try to estimate the probability of success before carrying
out project. 3.06 0.56 モニタリング
13 I'm always willing to take my chances, no matter what the risk. 2.67 0.70 ※ 危険志向性 14 I like to take on challenges that nobody else can accomplish. 3.81 0.63 達成動機 15 Detailed planning is essential to achieve success. 3.25 0.67 プランニング 16 Under unusually difficult circumstances, nobody can achieve their goals. 3.24 0.72 ※ 原因帰属 17 In order to decide which response is best, I simulate the outcome tak-
ing various scenarios into consideration. 3.02 0.56 モニタリング 18 I never involve myself in projects that are likely to result in failure. 2.20 0.67 達成動機 19 I tend to stick to the methods which I achieved past success. 2.24 0.61 ※ モニタリング 20 I never begin work before collecting sufficient information. 2.78 0.74 プランニング 21 My failures are the result of lack of competence on my part. 2.15 0.71 原因帰属 22 I don't care about risks as long as there is a chance. 2.56 0.64 ※ 危険志向性 23 No matter what the situation, I can always make objective judgement. 2.83 0.63 状況判断 24 Once a project is started, I don't worry about the future outcome. 2.98 0.60 ※ モニタリング 25 Business failures result from lack of government support, not from
my own actions. 3.48 0.61 ※ 原因帰属
26 Once I get involved in a project, I never give up, no matter what the
situation. 2.61 0.72 達成動機
27 I prefer to take my chances with the project with the highest stakes. 2.64 0.65 ※ 危険志向性 28 Networking with other people is very important for me. 3.01 0.71 プランニング 29 No matter what the situation, I never lose my cool. 2.61 0.74 状況判断
G-P *** : p<.0001 ** : p<.001 * : p<.05
注 ※印は逆転項目
Table−4 米国におけるヒューマンファクター測定項目の基本統計量
現頻度表−Tab. 6−1, 6−2 参照)。
B. 主観的分類基準;会社の概要に関する質問項目中 「事業に対する主観的評価」 で 「成功している」
「やや成功している」 を成功群とし、 「失敗している」 「やや失敗している」 を失敗群として扱う (日米の主観−満足度の出現頻度表−Tab. 7−1, 7−2 参照)。
15.30
15.00 15.20 15.10
14.90 14.80 14.70 14.60
日本 米国
Fig. 1−b 達成動機 (日−米)
11.50
10.50
9.50 11.00
10.00
9.00
日本 米国
Fig. 1−a 危険志向性 (日−米)
15.80 15.70 15.60 15.50 15.40 15.30 15.20 15.10 15.00
日本 米国
13.30 13.20 13.10 13.00 12.90 12.80 12.70 12.60 12.50 12.40
日本 米国
Fig. 1−c 原因帰属 (日−米) Fig. 1−d 状況判断 (日−米)
カテゴリー 日−米 N M SD df 差 t 判定
危険志向性 日本 521 10.94 1.97
1081 1.22 10.68
***米国 562 9.72 1.77
達成動機 日本 521 15.18 2.13
1081 0.35 3.00
**米国 562 14.83 1.65
原因帰属 日本 521 15.28 2.04
1081 0.43 3.63
***米国 562 15.71 1.86
状況判断 日本 521 13.20 2.01
1081 0.49 4.28
***米国 562 12.71 1.69
プランニング 日本 521 11.78 1.90
1081 0.07 0.61 n. s.
米国 562 11.71 1.82
モニタリング 日本 521 13.84 1.94
1081 0.05 0.49 n. s.
米国 562 13.79 1.55
*:p<0.05
**:p<0.01
***:p<0.001
Tab. 5 カテゴリーごとの日米比較表①危険志向性についての成功群と失敗群の比較 a. 客観的分類による両群の比較
Tab. 8−1a, b および Fig. 2−1 に示したように、 売上高経常利益率から分類した4群 (日本の 成功・失敗群と米国の成功・失敗群) について危険志向性の得点に差があるか否かを分散分析およ び多重比較を通して比較した。
その結果、 4群間に得点差が認められた (F=40.89, P<.01)。 具体的には、 多重比較の結果、 以 下のような点が見出された。
日本成功群は失敗群より得点は有意に高く (P<.01)、 かつ米国成功群および失敗群よりも有意 に高い (P<.01)。 また、 日本失敗群は米国失敗群および成功群よりも有意に得点が高い (P<.01>。
つまり、 日本の中小企業経営者の方が米国の中小企業経営者よりも危険志向性が低いことが一貫し て示されている。 これは、 日本における中小企業経営者の方が危険回避傾向が強く、 慎重に行動す ることを示唆しているといえる。 また、 その傾向は、 日本の成功群でより強いことが示されている。
一方、 米国では、 成功群と失敗群との間に有意差がみられないことと照合すると、 極めて興味深い。
b. 主観的分類による両群の比較
同様に、 今度は主観的評価にもとづいて、 4群間の比較を行った。 結果は Tab. 8−2 a, b, Fig. 2 − 2 に 示 し た 通 り で あ る 。 こ の 結 果 か ら も 4 群 間 に は 有 意 差 が 認 め ら れ た (F=39.27, P<.01)。 多重比較の結果、 やはり、 日本成功群および失敗群が米国成功群および失敗群よりも得 点は有意に高い (P<.01)。 ただし、 両国内における成功群と失敗群の間にはいずれも有意な差が 認められないことから、 日米間の経営者の危険に対する意識が異なることは明らかであるが、 危険
選 択 肢 度数 相対度数 累積相対度数
1. 成功している 59 0.11 0.11
2. やや成功している 257 0.48 0.59 3. やや失敗している 187 0.35 0.94
4. 失敗している 31 0.06 1.00
計 534 1.00
※小数点以下第3位を四捨五入した
Tab. 7−1 日本の主観 (満足度) の出現頻度選 択 肢 度数 相対度数 累積相対度数
1. 成功している 177 0.31 0.31
2. やや成功している 309 0.55 0.86 3. やや失敗している 69 0.12 0.99
4. 失敗している 7 0.01 1.00
計 562 1.00
※小数点以下第3位を四捨五入した
Tab. 7−2 米国の主観 (満足度) の出現頻度問9 直近経常利益 度数 相対度数 累積相対度数
1 (20%以上) 30 0.06 0.06
2 (10〜20%未満) 56 0.11 0.17 3 (0〜10%未満) 238 0.47 0.64 4 (−10〜0%未満) 116 0.23 0.87 5 (−20〜−10%未満) 38 0.08 0.94
6 (−20%以下) 28 0.06 1.00
計 506 1.00
※小数点以下第3位を四捨五入した
Tab. 6−1 日本の売上高経常利益率出現頻度問9 直近経常利益率 度数 相対度数 累積相対度数
1 (20%以上) 166 0.30 0.30
2 (10〜20%未満) 164 0.29 0.59 3 (0〜10%未満) 156 0.28 0.86 4 (−10〜0%未満) 22 0.04 0.90 5 (−20〜−10%未満) 12 0.02 0.93
6 (−20%以下) 42 0.07 1.00
計 562 1.00
※小数点以下第3位を四捨五入した
Tab. 6−2 米国の売上高経常利益率出現頻度Tab. 8−1a 売上高経常利益率からみた危険志向性
変動因 SS df MS F 判定
群間 424.04 3 141.35 40.89
**群内 (誤差) 3678.08 1064 3.46
全体 4102.12 1067
* : p<.05 ** : p<.01
群 N M 差 判定
日本成功群 324 11.12
0.50
**日本失敗群 182 10.62 日本成功群 324 11.12
1.42
**米国成功群 486 9.70 日本成功群 324 11.12
1.22
**米国失敗群 76 9.89 日本失敗群 182 10.62
0.92
**米国成功群 486 9.70 日本失敗群 182 10.62
0.73
**米国失敗群 76 9.89 米国成功群 486 9.70
−0.20 米国失敗群 76 9.89
* : p<.05 ** : p<.01
Tab. 8−1b 危険志向性 (多重比較表)11.50 11.00 10.50 10.00 9.50 9.00 8.50
日本成功群 日本失敗群 米国成功群 米国失敗群
Fig. 2−1 危険志向性の平均得点
Tab. 8−2a 主観的評価からみた危険志向性
編動因 SS df MS F 判定
群間 413.17 3 137.72 39.27
**群内 (誤差) 3829.23 1092 3.51
全体 4242.40 1095
* : p<.05 ** : p<.01
群 N M 差 判定
日本成功群 315 11.04 日本失敗群 218 10.78 0.26 日本成功群 315 11.04
1.34
**米国成功群 486 9.70 日本成功群 315 11.04
1.18
**米国失敗群 76 9.87 日本失敗群 218 10.78
1.08
**米国成功群 486 9.70 日本失敗群 218 10.78
0.91
**米国失敗群 76 9.87 米国成功群 315 9.70 米国失敗群 76 9.87 0.17
* : p<.05 ** : p<.01
Tab. 8−2b 危険志向性 (多重比較表)11.50
11.00 10.50
10.00 9.50 9.00
日本成功群 日本失敗群 米国成功群 米国失敗群
Fig. 2−2 危険志向性の平均得点
志向性が経営者としての成功・失敗を決定づけるとは必ずしも言えない。 むしろ、 両国の国民性の 違いを反映していると考えられる。
②達成動機についての成功群と失敗群の比較 a. 客観的分類による両群の比較
危険志向性についての比較と同様、 売上高経常利益率から成功・失敗の2群にそれぞれ分類した 4群の比較を行った。 分散分析の結果、 4群間に得点差が認められた (。 F=3.43, p<.05)。 多重比 較の結果、 日本の成功群は米国の成功群および失敗群よりも得点が有意に高い (Tab. 9−1 a, b, Fig. 3−1)。 つまり、 日本の中小企業経営者の成功群は米国中小企業経営者よりも仕事の達成動機 が強いことが示された。 しかし、 日本の失敗群との差はなく、 かつ、 日本の失敗群と米国の成功・
失敗群との間にも有意差は認められない。 したがって、 成功への鍵の一つには達成動機の強さが関 与しているとは考えられるが、 日米間の差は特にないといえよう。
b. 主観的分類による両群の比較
主観的評価から、 日米の成功・失敗の4群間の比較を前項と同様に行った。 分散分析の結果、 群 間に有意差が認められた (F=7.29, P<.01)。 多重比較の結果、 日本の失敗群と米国の成功群の間を 除き、 すべての間で有意な差が認められた (Tab. 9−2 a, b, Fig. 3−2 参照)。 すなわち、 日本の 成功群がもっとも達成動機が高く、 日本の失敗群ならびに米国の成功群および失敗群のいずれとの 比較でも有意に得点は高い。 日本の失敗群は米国の失敗群よりも得点は高いものの、 米国の成功群 との差は有意ではない。 また、 米国においても成功群のほうが失敗群よりも得点が高いことからも、
達成動機は日米を問わず、 成功・失敗に影響を与える重要な要因の一つと考えられる。
③原因帰属についての成功群と失敗群の比較 a. 客観的分類による両群の比較
売上高経常利益率によって分類した4群間の得点について分散分析をした結果、 群間に有意差 (F=9.04, P<.01) が認められたので、 多重比較を行った。 結果は Tab. 10−1a, b, Fig. 4−1 に示 した通りである。 国内比較では日本の成功群の得点は失敗群に比べ、 優位に高い。 すなわち、 成功 群は成功の原因を内的な要因に帰属しているのに対して、 失敗群では、 外的要因に帰属している。
しかし、 米国内では成功群と失敗群の間には有意な差は認められず、 共に内的要因に帰属している。
このように、 原因帰属の方向性が異なることの背景には、 両国の経済状況や公的支援政策の違いも 考慮しなければならない。 米国では、 売上高経常利益率の出現頻度でも見られるように、 利益率が プラスを示す経営者が非常に多い。 成功者の多い中で、 失敗の原因を経済状況の悪化や経営の困難 度という外的要因に帰属することには抵抗もあるだろう。 一方、 日本の場合は不況下で利益率を上 げた成功者は自分の努力や能力の故だと考えるだろうし、 利益率をプラスに転じ得なかった失敗者 は自分の努力を越えた不況や支援のないことに原因を帰属させ勝ちであろう。
b. 主観的分類による両群の比較
上述した事柄を、 さらに主観的評価によって分類した4群について比較してみると、 興味深い結 果が得られた。 分散分析の結果、 群間に有意差が認められたので、 多重比較を行った (Tab. 10−
3 a, b, Fig. 4−2a)。 この結果、 原因帰属は成功群・失敗群の日米比較では余り大きな差はなく、
両国とも成功群と失敗群の間に有意差が示された。 つまり、 日米両国とも、 自己評価による成功群
Tab. 9−1a 売上高経常利益率からみた達成動機
変動因 SS df MS F 判定
群間 37.13 3 12.38 3.43
*群内 (誤差) 3833.83 1064 3.60
全体 3870.95 1067
* : p<.05 ** : p<.01
群 N M 差 判定
日本成功群 324 15.25 日本失敗群 182 15.04 0.20 日本成功群 324 15.25
0.40
**米国成功群 486 14.85 日本成功群 324 15.25
0.52
*米国失敗群 76 14.72
日本失敗群 182 15.04 米国成功群 486 14.85 0.20 日本失敗群 182 15.04 米国失敗群 76 14.72 0.32 米国成功群 486 14.85 米国失敗群 76 14.72 0.12
* : p<.05 ** : p<.01
Tab. 9−1b 達成動機 (多重比較表)15.30 15.20 15.10 15.00 14.90 14.80 14.70 14.60 14.50 14.40
日本成功群 日本失敗群 米国成功群 米国失敗群
Fig. 3−1 達成動機の平均得点
Tab. 9−2a 主観的評価からみた達成動機
編動因 SS df MS F 判定
群間 77.97 3 25.99 7.29
**群内 (誤差) 3893.97 1092 3.57
全体 3971.94 1095
* : p<.05 ** : p<.01
群 N M 差 判定
日本成功群 315 15.37
0.43
**日本失敗群 218 14.94 日本成功群 315 15.37
0.47
**米国成功群 486 14.90 日本成功群 315 15.37
0.99
**米国失敗群 76 14.38 日本失敗群 218 14.94 米国成功群 486 14.90 0.03 日本失敗群 218 14.94
0.55
*米国失敗群 76 14.38
米国成功群 315 14.90
0.52
*米国失敗群 76 14.38
* : p<.05 ** : p<.01
Tab. 9−2b 達成動機 (多重比較表)15.60 15.40 15.20 15.00
14.60 14.80
14.40 14.20 14.00 13.80
日本成功群 日本失敗群 米国成功群 米国失敗群
Fig. 3−2 達成動機の平均得点
Tab. 10−1a 売上高経常利益率からみた原因帰属
変動因 SS df MS F 判定
群間 101.70 3 33.90 9.40
**群内 (誤差) 3991.29 1064 3.75
全体 4092.99 1067
* : p<.05 ** : p<.01
群 N M 差 判定
日本成功群 324 15.48
0.62
**日本失敗群 182 14.86 日本成功群 324 15.48
−0.25 p<.10 米国成功群 486 15.74
日本成功群 324 15.48
−0.03 米国失敗群 76 15.51
日本失敗群 182 14.86
-0.88
**米国成功群 486 15.74 日本失敗群 182 14.86
−0.65
*米国失敗群 76 15.51
米国成功群 486 15.74 米国失敗群 76 15.51 0.23
* : p<.05 ** : p<.01
Tab. 10−1b 原因帰属 (多重比較表)16.00
15.00 15.60
14.60 15.40
14.40 15.20 15.80
14.80
日本成功群 日本失敗群 米国成功群 米国失敗群 Fig4ー1a 原因帰属の平均得点 Fig. 4−1 原因帰属の平均得点
Tab. 10−2a 主観的評価からみた原因帰属
編動因 SS df MS F 判定
群間 121.66 3 40.55 10.79
**群内 (誤差) 4104.34 1092 3.76
全体 4226.00 1095
* : p<.05 ** : p<.01
群 N M 差 判定
日本成功群 315 15.52
0.59
**日本失敗群 218 14.93 日本成功群 315 15.52
0.27 p<.10 米国成功群 486 15.79
日本成功群 315 15.52 米国失敗群 76 15.16 0.36 日本失敗群 218 14.93
0.86
**米国成功群 486 15.79 日本失敗群 218 14.93 米国失敗群 76 15.16 0.23 米国成功群 315 15.79
0.64
**米国失敗群 76 15.16
* : p<.05 ** : p<.01
Tab. 10−2b 原因帰属 (多重比較表)16.00
15.00 15.60
14.60 15.40
14.40 15.20 15.80
14.80
日本成功群 日本失敗群 米国成功群 米国失敗群
Fig. 4−2 原因帰属の平均得点
は、 自己評価による失敗群よりもパフォマンスの成果を自分の能力や努力に帰属させている。 この 傾向は米国における成功群においてとりわけ強い。 逆に、 失敗群は日米ともに、 パフォマンスの成 果を仕事の困難度や援助政策の欠如などの外的要因に求める傾向が強い。
④状況判断についての成功・失敗群の比較 a. 客観的分類による両群の比較
日本成功群・失敗群、 米国成功群・失敗群の4群間についての分散分析および多重比較の結果は、
Tab. 11−1 a, b および Fig. 5−1 に示した通りである。
まず、 日本の成功群は日本の失敗群との有意差はないが、 米国の成功・失敗両群よりも有意に高 い得点を示している。 また、 日本の失敗群と米国の失敗群の比較でも日本の方が、 得点は有意に高 い。 米国内での成功・失敗両群の有意差がないことからも、 この結果は、 成功と失敗という観点か らみるよりも、 日米間の相違とみなす方が妥当であろう。
日本における中小企業経営者のほうが、 状況判断を重視しているということは、 国民性というよ りも、 日本の現在の社会的・経済的情勢の影響と考えられる。 米国よりも、 成功が困難な状況では、
より冷静かつ客観的な状況の判断が求められるのは当然のことであり、 必要条件といえよう。
b. 主観的分類による両群の比較
主観的な評価から分類した4群についての分散分析でも有意な差が認められたので、 多重比較を 行った (Tab. 11−2 a, b, Fig. 5−2)。
ここでも、 日本成功群が他の3群よりも有意に高い得点を示している。 また、 日本の失敗群は、
米国の成功群・失敗群よりも有意に高い得点を示している。 米国内の比較では、 成功群の方が失敗 群よりも得点は高い。
この結果から、 日本国内での成功−失敗群間と、 米国内の成功−失敗群間の関係を考えてみよう。
両国共通して、 成功していると自己評価を下している経営者は、 失敗していると自己評価を下して いる経営者よりも、 自分の状況判断は適切だという自己認識をもっているようである。 しかし、 4 群の中でも日本の成功群がもっとも得点が高いこと、 また、 日本の失敗群が米国の成功群よりも得 点が高いことを考慮すると、 現在の日本で中小企業経営者が成功をするためには、 米国に比べて、
より高い状況判断を必要とするという上記結果を証明し得たものと解釈される。
⑤プランニングおよびモニタリングについての成功群・失敗群の比較
プランニングとモニタリングについては、 日米両国間では、 有意差が認められなっかた要因である が、 成功・失敗の分類別にはどのような傾向が見られるであろうか。 有意な差が示された部分もある ので、 それらの結果に基づいて考察を進めたい。
a. プランニングについて
客観的分類に基づく4群間の比較では日米の成功群と米国の失敗群間に有意差が認められた以外 は、 Fig. 6−1 に見られるように、 日本の失敗群と日本の成功群、 米国の成功群の得点差は僅差で あり、 必ずしも成功群に比べてプランニングを軽視しているわけではないことが伺える (tab. 12−
1 a, b)。
このことは、 主観的分類に基づく4群間の比較をとおしてもいえる。
分散分析の結果、 群間に有意差が認められたので、 多重比較を行った。 結果は表示した通りであ
Tab. 11−1a 売上高経常利益率からみた状況判断
変動因 SS df MS F 判定
群間 65.58 3 21.86 6.38
**群内 (誤差) 3645.29 1064 3.43
全体 3710.87 1067
* : p<.05 ** : p<.01
群 N M 差 判定
日本成功群 324 13.26 日本失敗群 182 13.03 0.23 日本成功群 324 13.26
0.52
**米国成功群 486 12.74 日本成功群 324 13.26
0.72
**米国失敗群 76 12.54 日本失敗群 182 13.03
0.29 p<.10 米国成功群 486 12.74
日本失敗群 182 13.03
0.49 p<.10 米国失敗群 76 12.54
米国成功群 486 12.74 米国失敗群 76 12.54 0.20
* : p<.05 ** : p<.01
Tab. 11−1b 状況判断 (多重比較表)13.40 13.20 13.00 12.80 12.60 12.40 12.20 12.00
日本成功群 日本失敗群 米国成功群 米国失敗群
Fig. 5−1 状況判断の平均得点
Tab. 11−2a 主観的評価からみた状況判断
編動因 SS df MS F 判定
群間 110.48 3 36.83 10.74
**群内 (誤差) 3744.86 1092 3.43
全体 3855.34 1095
* : p<.05 ** : p<.01
群 N M 差 判定
日本成功群 315 13.40
0.47
**日本失敗群 218 12.92 日本成功群 315 13.40
0.62
**米国成功群 486 12.78 日本成功群 315 13.40
1.11
**米国失敗群 76 12.29 日本失敗群 218 12.92 米国成功群 486 12.78 0.14 日本失敗群 218 12.92
0.63
*米国失敗群 76 12.29
米国成功群 315 12.78
0.49
*米国失敗群 76 12.29
* : p<.05 ** : p<.01
Tab. 11−2b 状況判断 (多重比較表)13.60 13.40 13.00 13.20
12.80 12.60 12.40 12.20 12.00 11.80 11.60
日本成功群 日本失敗群 米国成功群 米国失敗群
Fig. 5−2 状況判断の平均得点
Tab. 12−1a 売上高経常利益率からみたプランニング
変動因 SS df MS F 判定
群間 16.23 3 5.41 1.58
群内 (誤差) 3634.25 1064 3.42
全体 3650.48 1067
* : p<.05 ** : p<.01
群 N M 差 判定
日本成功群 324 11.76 日本失敗群 182 11.76 0.00 日本成功群 324 11.76
−0.01 米国成功群 486 11.78
日本成功群 324 11.76
0.47
*米国失敗群 76 11.29
日本失敗群 182 11.76
−0.02 米国成功群 486 11.78
日本失敗群 182 11.76
0.47 p<.10 米国失敗群 76 11.29
米国成功群 486 11.78
0.49
*米国失敗群 76 11.29
* : p<.05 ** : p<.01
Tab. 12−1b プランニング (多重比較表)13.40 13.20 13.00 12.80 12.60 12.40 12.20 12.00
日本成功群 日本失敗群 米国成功群 米国失敗群
Fig. 6−1 プランニングの平均得点
Tab. 12−2a 主観的評価からみたプランニング
編動因 SS df MS F 判定
群間 64.83 3 21.61 6.37
**群内 (誤差) 3704.16 1092 3.39
全体 3768.99 1095
* : p<.05 ** : p<.01
群 N M 差 判定
日本成功群 315 11.96
0.41
*日本失敗群 218 11.54
日本成功群 315 11.96 米国成功群 486 11.82 0.14 日本成功群 315 11.96
0.93
**米国失敗群 76 11.03 日本失敗群 218 11.54
0.28 p<.10 米国成功群 486 11.82
日本失敗群 218 11.54
0.51
*米国失敗群 76 11.03
米国成功群 315 11.82
0.79
**米国失敗群 76 11.03
* : p<.05 ** : p<.01
Tab. 12−2b プランニング (多重比較表)12.20 12.00 11.80 11.60 11.40 11.20
10.80 10.60 10.40 11.00
日本成功群 日本失敗群 米国成功群 米国失敗群
Fig. 6−2 プランニングの平均得点
る (Tab. 12−2 a, b, Fig. 6−2)。 日米共に、 成功群の得点が失敗群よりも有意に高い。 しかし、
米国の成功群と日本の失敗群の差は傾向差にとどまっている。 両国共、 成功群は事前の綿密な計画 を時間もお金も掛けて行っていることが意識レベルでも示されている。 このように、 プランニング が成功−失敗のヒューマン・ファクターズの一つと考えられるわけだが、 日本の失敗群は米国の失 敗群に比べ、 プランニングの取り組み方は決して消極的なわけではなく、 方向性としては成功に向 けて積極的に取り組もうとしていると考えられる。
b. モニタリングについて
客観的分類による日米両国の成功−失敗による4群間の比較よりも、 主観的分類に基づく4群間 の比較の方が差は明確に示された。 (Tab. 13−1a, b, Fig. 7−1 ) (Tab. 13−2a, b, Fig. 7−2 )。
明らかに、 日米とも成功群が失敗群よりも自己のパフォマンスについてのモニタリングを重要視し ていることが示されている。 つまり、 成功・失敗を冷静に分析し、 自分の行動を把握しようとする モニタリングは、 日米を問わず、 中小企業経営のパフォマンスの成否に重要な影響を与えるヒュー マン・ファクターズの一つとして捉えられる。
このようなモニタリングに関しては、 むしろ主観的分類による成功し−失敗群の比較でより明確 になると当初は考えた。 しかし、 結果は日本においては、 成功群と失敗群の得点には有意差が示さ れ、 成功群のほうがモニタリングを重要視していることが認められたが、 米国においては成功群と 失敗群の間には有意差は認められなかった。
4. 要約ならびに考察
1) 仮説の検証と考察
仮説①; 「危険志向性」 について
日米の比較では、 日本の方が米国より危険志向性が有意に低いことが示された。 危険回避傾向が高 いことが即慎重さに結びつくかについては、 この結果からは断言できないし、 逆に米国の危険志向性 が高いことが革新志向を意味するとはかぎらない。
しかし、 この要因に関する日米の成功・失敗別の4群比較からは、 日本の成功群において、 最も危 険志向が低く、 かつ、 失敗者と自己評価している主観的失敗群でも米国の成功・失敗群よりこの得点 は有意に低い。 このことから、 中小企業経営者における日本的ヒューマン・ファクターの代表的要因 として 「危険回避」 をあげることができよう。
したがって、 仮説①については支持されたと考えられる。
仮説②; 「プランニング」 について
日本と米国におけるこの要因の得点差は見られなかった。 成功失敗別の群間比較でも客観的指標に 基づく分類では、 有意な差は見られない。 ただし、 主観的指標に基づく成功・失敗の群間比較では、
日米両国の成功群の得点が両国の失敗群より有意に高い。 このことから、 成功者の意識レベルには、
慎重な熟慮に基づく綿密な計画性が重要視されていることが伺える。 また、 失敗群の日米比較では、
日本の方が米国よりも有意に高いことから、 仮説①と関連する 「慎重さ」 の要因が日本の特徴ともい えよう。 この意味では仮説②については部分的に支持されたと考えられる。
Tab. 13−1a 売上高経常利益率からみたモニタリング
変動因 SS df MS F 判定
群間 21.50 3 7.17 2.35
群内 (誤差) 3242.29 1064 3.05
全体 3263.79 1067
* : p<.05 ** : p<.01
群 N M 差 判定
日本成功群 324 13.98
0.39
*日本失敗群 182 13.58
日本成功群 324 13.98 米国成功群 486 13.82 0.16 日本成功群 324 13.98
0.37 p<.10 米国失敗群 76 13.61
日本失敗群 182 13.58
−0.24 米国成功群 486 13.82
日本失敗群 182 13.58
−0.02 米国失敗群 76 13.61
米国成功群 486 13.82 米国失敗群 76 13.61 0.21
* : p<.05 ** : p<.01
Tab. 13−1b モニタリング (多重比較表)14.10 14.00 13.90 13.80 13.70 13.60 13.50 13.40 13.30
日本成功群 日本失敗群 米国成功群 米国失敗群
Fig. 7−1 モニタリングの平均得点
Tab. 13−2a 主観的評価からみたモニタリング
編動因 SS df MS F 判定
群間 32.27 3 10.76 3.52
*群内 (誤差) 3340.60 1092 3.06
全体 3372.87 1095
* : p<.05 ** : p<.01
群 N M 差 判定
日本成功群 315 14.03
0.46
**日本失敗群 218 13.58 日本成功群 315 14.03
0.21 p<.10 米国成功群 486 13.83
日本成功群 315 14.03
0.47
*米国失敗群 76 13.57
日本失敗群 218 13.58
0.25 p<.10 米国成功群 486 13.83
日本失敗群 218 13.58 米国失敗群 76 13.57 0.01 米国成功群 315 13.83 米国失敗群 76 13.57 0.26
* : p<.05 ** : p<.01
Tab. 13−2b モニタリング (多重比較表)14.10 14.00 13.90 13.80 13.70 13.60 13.50 13.40 13.30
日本成功群 日本失敗群 米国成功群 米国失敗群
Fig. 7−2 モニタリングの平均得点
仮説③; 「原因帰属」 について
日米の国勢状況の相違から、 成功・失敗の原因帰属を、 前者は外的、 後者は内的要因に帰属させる と仮定したが、 両国間の差よりも、 成功・失敗別の差が強かった。 すなわち、 日米共通して、 成功群 ではその原因を内的な自己の能力・努力に帰属させ、 失敗群では、 運・不運、 情勢の困難さという外 的要因に帰属させる傾向を示した。 したがって、 仮説③は支持されなかった。
この結果は、 きわめて、 わかりやすい図式ともいえる。 日本における失敗群がより外的な要因への 帰属傾向を米国の失敗群よりも示していることから、 日本における経済的情勢や公的支援の不備が成 功を阻んでいるとする外的帰属のさせ方は納得がいく。
仮説④; 「達成動機・状況判断・プランニング・モニタリング」 について
日本は米国に比し、 目標達成への自助努力や綿密なシミュレーションが求められる。 したがって、
米国よりも、 達成動機・状況判断・プランニング・モニタリング等の得点は高いと仮定した。 しかし、
日米間の単純比較で有意な差が見られたのは、 「状況判断」 の要因だけであった。 成功・失敗両群と も、 米国よりも得点が高いということは、 日本における成功への要因に如何に的確な状況の判断が求 められているかを示しているといえよう。 また、 この要因に関連する 「プランニング」 については、
日米とも成功群の得点が高いが、 日本の失敗群の得点がこの両群に次いで高い。
また、 「達成動機」 「モニタリング」 については、 日米両国間の相違というよりも、 成功・失敗に関 わる要因として位置づけられると考えられる。 両要因とも、 日米共通して成功群では失敗群よりも高 い得点を示している。 特に日本の成功群でこの傾向は顕著である。
このことは、 日本での成功者にはきわめて高い達成への意欲と計画実現に向けてのモニタリングが 米国よりも必要なことを示唆するものである。
以上の点から、 仮説④は部分的には支持されたと考えられる。
2) 成功・失敗に関わるヒューマン・ファクターズの測定と今後の問題
日米両国の中小企業経営者計1,137名 (日本575、 米国562) を対象として、 彼らを客観的指標として は売上高利益率、 主観的指標としては事業への満足度と成功の自己評価を軸として、 成功と失敗の各2 群に分けた。
成功・失敗に関与するヒューマン・ファクターズ測定尺度 (仮称) を作成し、 その結果を上記4群間 で比較検討した結果、 日本に特有のファクターで、 米国には認められないというものはなかった。 むし ろ、 成功・失敗に関わる要因の多くは日米共通していると考えられた。
具体的には、 危険志向、 達成動機、 原因帰属、 状況判断、 プランニング、 モニタリング等のである。
ただし、 日本的な特性としては、 危険志向性よりも危険回避性がパフォマンスの成否に関わっている点 が米国とは明らかに異なる。
今後の課題の一つとして、 リスク認知やリスクテイキングと成功・失敗の関連性を取り上げ、 さらに 検討していく必要がある。
また、 今回の測定尺度は、 まだ、 その因子構造に不安定な面がある。 今後さらに尺度の妥当性・信頼 性を検討し、 より正確な測定尺度の作成を試みていきたい。
なお、 本調査は、 電脳の協力のもとに実施した一環であり、 データの統計処理に関しては、 同社の 藤平潤也氏の尽力を得た。 ここに記して感謝の意を表明したい。
文 献
1. 堀野 緑 1995 成功恐怖研究の再検討 心理学評論 Vol. 38, No. 2, 301-319
2. 唐沢かおり 1995 達成動機付けにおける感情の役割 心理学評論 Vol. 38, No. 2, 281-300 3. 北山忍 高木浩人 松本寿弥 1995 成功と失敗の起因:日本的自己の文化心理学 心理学評論
Vol. 38, No. 2, 247-280
4. 宮本美沙子 奈須正裕 1995 達成動機の理論と展開 続・達成動機の心理学 金子書房 5. 中島義明 1996 メディアに学ぶ心理学 有斐閣
6. Proctor, R. W & T. Van Zandt 1994 Human Factors : In Simple and Complex Systems. Allyn and Bacon.
7. 浦光 博 1985 個体的ならびに状況的諸変数が集団の成功の原因帰属に及ぼす効果 The Japanease Journal of Experimental Social Psychology. Vol. 25, No. 1, 27−35
8. Weiner, B. 林 保 宮本美沙子 監訳 1989 ヒューマン・モチベーション 金子書房
以上