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「失敗学」に学ぶ

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Academic year: 2021

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「失敗学」に学ぶ

著者

高津 孝

雑誌名

奄美ニューズレター

13

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「失敗学」に学ぶ

法文学部人文学科高津孝

「失敗学」という学問がある。畑村洋太郎という機械工学の専門家によって提唱され,「失敗学

のすすめ』(講談社,2000年)に詳述されている。「失敗は成功の母」というレベルなら,良くあ

る話,当たり前に属するものであるが,これがなかなか奥が深い。畑村先生が,現実に教育の場

において,場合によっては人の生死にも関わる危険な実験に曰々携わってきたことが関係してい

るのであろう。真剣さが違うのである。鋳造実験の失敗で,700度の熔けたアルミを頭からか ぶってしまった学生の話,フシ酸を不注意から素手で触れてしまい,指を切り落とすか,爪の問 からカルシウム注射を継続して打つか,二者択一を迫られた学生の話など,そこで語られる体験 はすさまじいものがある。こうした経験から畑村研究室では,失敗を当事者の実名を挙げて伝え ることにしているという。そのメリットとして,(1)聞く者にリアルで強烈なインパクトを与える,

(2)失敗者本人に確認が可能,(3)失敗は隠すものではないという文化を作り上げる,の3点をあげ

る。しかし,ここまでは導入部であって,ここから畑村先生は失敗そのものの持つ性格について, 様々な興味深い分析を展開している。たとえば,2000年6月に衛生管理の杜撰さから雪印集団 食中毒事件が起こったが,こうした大きな事故の背景には,個人の責任を越えた階層'性が存在し ているという。実際の失敗は一つの要因だけで起こることはほとんどなく,しばしば多くの要因 が複雑に関わり,個人のミスの背後にはもっと重大な問題が潜んでいる。それはピラミッド構造 をなしており,下から,個人の失敗,組織運営の不良,企業経営の不良,さらに行政・政治の怠 』慢,社会システムの不適合と社会性を帯びた原因へと遡っていくのである。そして,階層の上に いる者は,自分へ責任が及ぶことを恐れ,失敗の責任を下へと押しつける傾向があると指摘する。 また,樹木構造という問題点の指摘もある。一般に社会を構成する様々な組織は,命令が上から 下へ効率よく到達するように,樹木が栄養や水分を幹から枝へ,枝から葉へと送るような構造を している。ところが,こうした効率を優先した樹木構造こそが,大失敗を生みやすい組織上の問 題となる。軍隊やお役所に典型的なこうした構造は,しばしば横の連携を欠き,失敗情報が異な る部署に伝わらない。要するにタコツボである。1999年11月にH2ロケットの打ち上げ失敗事 故(100億円規模の損失と言われる)があったが,その原因は燃焼室のすぐ側に熱に弱い制御系 を置いたことであるとされる。こうした例は実は自動車産業では常識に属する事柄であった。ロ ケットの開発者は明らかに他分野の失敗から学ぶという姿勢に欠けていたといえよう。 失敗は決して忌み嫌うべきもの,隠すべきものではない。むしろ失敗は,有用な」情報の宝庫で あり,今後の創造へとつながるものである。失敗を肯定し,そこから学ぶ文化を育てる。これが, 畑村先生が最も伝えたかったことである。

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