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SB1-3 選挙予測の失敗と調査法の課題 —アメリカ大統領選挙や日本の国政選挙などの比較—

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選挙予測の失敗と調査法の課題

-アメリカ大統領選挙や日本の国政選挙などの比較-

松田 映二 埼玉大学・社会調査研究センター 1 はじめに 1936 年と 48 年アメリカ大統領選挙の結果から,調査は「有効数の多さ」「代表性を工夫した割 当法」ではなく「無作為抽出による代表性の担保」が重視されるようになった.しかし,2000 年 アメリカ大統領選挙の予測では,カバレッジの悪いWeb 調査が電話(RDD)調査よりも正確だった. 2016 年アメリカ大統領選挙では多数のメディアやアグリゲーターの予想に反してトランプが勝 った.これらの調査法と予測精度を確認したうえで,日本における選挙予測の課題を提示する. 具 体事例として,2017 年総選挙での予測精度を,報道内容と選挙結果の比較分析を基に論じる. 2 アメリカ大統領選挙における予測 ■1936 年アメリカ大統領選挙の予測 リテラリー・ダイジェスト誌がランドン(共和党)の圧 勝を予想して大外れしたが,ギャラップはフランクリン・ルーズベルト(民主党)の勝利を当て

た.ギャラップは1940 年に著した『民主主義の鼓動』(The Pulse of Democracy)の「第 4 章 1936

年の教訓」で,ダイジェストの失敗要因は①対象者リスト(枠母集団)の偏り〔電話や自動車の 所有者リストを利用すれば上流・中流層が対象となる〕,②郵送調査の利用〔郵送調査を使うこと でさらに上流層つまり共和党支持者の回答が増える〕,③大恐慌対策(ニュー・ディール)への批 判〔失業者対策を重視した政策が継続されることに怒る上流層(共和党支持者)の回答が増える〕, ④回答者の年代構成の偏り〔結果として高齢層の意見が多くなり共和党を支持しない若年層の意 向が反映されにくい〕と論じているが…. ■2000 年アメリカ大統領選挙の予測 2000 年アメリカ大統領選挙では,ジョージ・ブッシュ(共 和党)がゴア(民主党)と得票率48%同士の大接戦を制した.Web 調査を用いたハリスインタラ クティブはゴアとブッシュの得票差が0%(ともに 47%)と予測して,RDD 調査を用いた他社よ りも正確に情勢を当てた.ギャラップはRDD 調査でゴア 46%対ブッシュ 48%と予測して外して いる.この成功が,近年の欧米におけるYouGov(Web 調査会社)などの隆盛に…. ■2016 年アメリカ大統領選挙の予測 クリントン優勢という報道が開票後も続いたが,その後, トランプ勝利へと逆転した.なぜ外れたのか.各州での情勢調査から調査機関が撤退したことで, 議席予想の精度が悪化した.携帯電話の普及による調査精度の低下(回収率5%以下)に加えて, 調査費用の高騰(携帯電話料金は相手持ちのため謝礼必要)により調査実施の意欲が薄れている

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3 日本の国政選挙における予測 選挙予測の理論の一つとして,林・高倉(1964)が提示したものがある. 1979 年総選挙で, 林の予測モデルを利用した朝日新聞は,自民候補の 8 割が有力であり「安定多数」になると予測 したが,自民は惨敗し「単独過半数割る」真逆の結果となった.林自身がまとめた事後報告書に は,①数量化Ⅱ類による確率計算をやめて正規分布により求める②トレンドにより政党や候補の イキオイを読み取ることで静態的方法に動態的方法を加味する③面接調査の問題点を改善する質 の確保などが検討されている.この失敗の影響を受けて電話調査の活用が…. 4 2017 年衆院選の予測報道の比較 2017 年 10 月 22 日(日)に投開票された第 48 回衆議院議員選挙の選挙結果と報道各社の序盤 (中盤)情勢は表1 のようにまとめられる.小礒・北田・松田(2018)の分析に加えて,この選 挙情勢と各社の予想の精度を図1 など多面的に比較検討する. 参考文献 小礒寿生・北田俊一・松田映二 (2018). 2017 年衆院選における選挙予測の比較分析―報道各社の 予測の正確さを検証する―.政策と調査, 14, 53-78. 林知己夫・高倉節子 (1964). 予測に関する」実證的研究―選挙予測の方法論―. 統計数理研究所 彙報, 12, 1, 9-86. (連絡先:eddymatsuda@mail.saitama-u.ac.jp) 自民 希望 公明 共産 立憲 維新 社民 こころ 諸派 無所属 281 50 29 12 54 11 2 0 0 26 読売 自民 単独過半数の勢い 希望 伸び悩み 立憲民主は躍進公算 民進出身無所属11人優位な戦い 10/12(木)10/10(火)  ~11(水) 世帯判明数は13 万229、有効回答 数は7万8285(回 答率60%) 日経 与党、300議席に迫る勢い 自民、単独安定多数も 希望、選挙区で苦戦 199~  260  ~308 46~ 69 ~110 28~ 34 ~36 15~ 18 ~20 35~ 45 ~60 5~ 10 ~16 1~ 1 ~2 0~ 0 ~ 0 0~ 0 ~ 0 15~ 28 ~35 10/12(木)10/10(火)  ~11(水) 読売・参照 (読売・日経は一 緒に調査した) 自民堅調 希望伸びず 立憲に勢い (144選挙区による概況報道) 10/12(木) 自公、300議席うかがう 希望、東京で軒並み苦戦 (全289選挙区による報道) 267~  286  ~303 45~ 56 ~66 24~ 29 ~35 11~ 15 ~20 34~ 41 ~49 6~ 12 ~18 1~ 1 ~2 0~ 0 ~ 0 0~ 1 ~ 1 19~ 24 ~29 10/14(土) 共同通信のデータによる初報 10/12(木)共同・参照 共同・参照 自民 最大300超も 立憲は勢い増す 希望さらに失速 281   ~   303 42   ~   54 30   ~   33 11   ~   18 45   ~   49 10   ~   13 1 0 0 18   ~   23 10/16(月)10/13(金)  ~15(日) 世帯判明数は未 記載、有効回答 数は7万3087 共同 通信 毎日 産経 東京 自公300超うかがう(毎日) 自公300議席うかがう(産経) 希望 伸び悩み(毎日・産経) 立憲に勢い(毎日) 立憲民主 倍増も(産経) 自公堅調、希望伸び悩み(東京) 投票先未定5割超(東京) 273~  289  ~305 47~ 60 ~72 26~ 30 ~35 10~ 14 ~19 25~ 33 ~42 10~ 17 ~23 1~ 2 0 0 ~ 1 14~ 20 ~25 10/12(木)10/10(火) ~11(水) 世帯判明数は11 万8901、有効回 答数は9万261 (回答率76%) 有効数・回答率 社名 自民「『絶対安定多数』(261)にも届く勢いを見せている」「小選挙区では140人超が優位に立 ち」「比例区では60議席前後を固めつつある」/立憲「擁立した63選挙区中、5選挙区で有意 に立っている」「公示前の15議席を大きく上回り、計40議席を超える公算が大きい」 選挙 結果 政党別獲得議席数/予想議席数(数値未公表社は新たな第1、2党の記事抜粋) 序盤(中盤)報道の見出し 掲載日 調査日 朝日 10/10(火)  ~13(金) 10-11で 144、12-13で145選 挙区実施 世帯判明数は15 万3239件、有効 回答数は8万 8152(回答率 58%)序盤では7万 5190,4万2746(57%) 毎日 自民「小選挙区では200議席を超え」「比例区も…68議席の確保をうかがい」「単独過半数を大 きく上回りそうだ」/立憲「勢いでは希望をしのぐ」「希望に迫る議席を確保する可能性もある」 自民「小選挙区…220程度で優勢だ」「比例代表…68議席…」/立憲「第3党となりうる」 表 1. 2017 年衆院選の選挙結果と報道各社の予想議席の比較 図 1. 当選を外した選挙区(●は 2 位,△は 3 位予想.横軸は得票率 1 位-2 位、縦軸は 1 位-3 位)

参照

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