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論文の内容の要旨

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨

1 申 請 者

防衛医科大学校 伊藤 誓悟

2 論文題目

マウス腎臓における 2 つのマクロファージ集団の同定とその機能および糖尿病 性腎症の新規治療法に関する研究

3 論文の内容の要旨

(1)目的

腎における2つのマクロファージ(Mφs)集団、すなわちCD11bhighF4/80lowで ある骨髄由来(bone marrow-derived:BM-)Mφsと、CD11blowF4/80highである臓 器固有(tissue resident:Res-)Mφsを同定し、それらの機能解析を通じ、糖尿病 性腎症の新規治療法を探索する。

(2)対象並びに方法

2型糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)と、その正常コントロールとして非 糖尿病のmistyマウスを用い、それらの腎Mφsを効率的に採取する方法を確立 し、Mφsの機能解析を行った。さらに、db/dbマウスが発症する糖尿病性腎症の 新規治療法として、腎に限局した間歇的低線量放射線照射、C-Cケモカイン受容 体タイプ2(CCR2)アンタゴニストINCB3344またはL-カルニチンの投与を行 い、治療効果ならびに腎Mφsに与える影響を解析した。

(3)成績

CD11bhighF4/80low Mφs(以下 CD11bhigh Mφs)は高いTNF-α 産生能と炎症 促進性の性質をもっていたが、CD11blowF4/80high Mφs(以下 CD11blow Mφs)

は高い活性酸素種(ROS)産生と貪食能ならびに炎症収束性の性質をもっ ていた。さらに、腎症進行とともに CD11bhigh Mφs においてTLR9発現亢進 が認められ、TLR9刺激による TNF-α 産生能が亢進していた。

腎への低線量放射線照射は、肝臓 Mφsで報告されている 2つの Mφs の放 射線感受性の違いに着目して行った。その結果、db/dbマウスにおいて、

CD11bhigh Mφs の腎への浸潤のみならず、両 Mφsの TLR9発現を抑制し、

CD11bhigh Mφs の TNF-α 産生および CD11blow Mφsの ROS 産生の両方を抑制 していた。また、特筆すべきことに、低線量放射線照射により CD11blow Mφs の貪食能が亢進していた。さらに、尿アルブミン排泄および腎組織所 見の改善が認められた。

INCB3344投与は、CD11bhigh Mφsの腎への浸潤を抑制する目的で行っ た。CCR2アンタゴニストとしては、これまでに様々な薬剤が検討されてい るが、本研究においては、薬理学的にヒト単球 CCR2 への選択性が高く臨 床応用が期待され、糖尿病性腎症については検討されたことがないアンタ

(2)

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ゴニストである INCB3344を選択した。INCB3344 投与により、db/dbマウス における、CD11bhigh Mφs の腎への浸潤抑制、CD11bhigh/CD11blow Mφsの両 方における TLR9発現抑制、TNF-α 産生能の低下が確認された。尿アルブ ミン排泄や糸球体所見の改善も観察された。

L-カルニチンについては、糖尿病性腎症で報告されているミトコンドリ ア機能異常を是正し、その結果、腎 Mφsの分布や機能の改善を介した腎症 改善効果をもたらす可能性を考え、検討に加えた。まず、db/dbマウスにお いては、ミトコンドリア機能異常に伴うミトコンドリア ROS の産生増加 が、尿細管細胞のみならず CD11blow Mφs においても観察された。L-カルニ チン投与により、尿細管細胞のミトコンドリア形態および機能異常の改善 のみならず、腎 CD11blow Mφs のミトコンドリア ROS 産生の抑制、また CD11bhigh/CD11blow Mφsの両方における TLR9発現低下とともに、腎 TNF-α 低下および CD11blow Mφs の ROS産生抑制が観察され、尿アルブミン排泄 の改善とともに腎組織所見の改善も認められた。

(4)考察

糖尿病性腎症の病態においては、CD11bhigh Mφs と CD11blow Mφsが、そ れぞれ異なる機能をもち、異なる役割を果たしていた。すなわち、

CD11bhigh Mφs は TNF-α 産生を介し、CD11blow Mφsは ROS 産生や貪食を介 することで、病態形成に寄与していると考えられた。また、それらに Mφs における TLR9活性化の関与が想定された。TNF-α および ROS産生は自然 免疫を司る Mφsの根源的な役割である。一方で、腎症進行とともに

CD11blow Mφs の貪食能が亢進していたことは、傷害組織の処理および修復

に関与している可能性が考えられた。

腎に限局した低線量放射線照射は、選択的にCD11bhigh Mφs の除去や機能 抑制に働くのみならず、CD11blow Mφs に対しては好ましい作用も有する可 能性があることが、腎症改善につながったと考えた。

INCB3344は、CD11bhigh Mφs浸潤抑制と、CD11bhigh/CD11blow Mφs両方に

おける TNF-α 産生能の低下を介して、腎症改善をもたらしたと考えられ

た。TNF-α は、糖尿病性腎症の病態形成において重要な糸球体肥大と過剰

濾過の発症に関与していることから、本薬剤は、腎症の発症および進行抑 制における新規治療法として期待できると考えられた。

L-カルニチンは、腎実質細胞のみならず、CD11blow Mφs のミトコンドリ ア機能改善をもたらし、TLR9発現抑制を介した腎 TNF-α の低下、CD11blow Mφs の ROS産生低下が腎症改善に寄与したと考えた。

(5)結論

腎におけるCD11bhigh Mφs と CD11blow Mφsなる 2つの Mφsは、BM- Mφs

および Res-Mφsの性質をもち、異なる機能を有する。それらの異なる特性に

着目し、機能を調節することは、糖尿病性腎症の新規治療法を検討する上で 有用である。

参照

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