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統計学の授業展開へのニーズと授業評価 ―

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Academic year: 2021

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全文

(1)

要 旨

 本研究は,文科系学生における統計教育のあり方を模索する継続的研究の一環として,先の研究での仮説 である「授業展開へのニーズの充足」と授業全体のわかりやすさの認知との関連性について計量データに基 づいた検討を行うとともに,本来のターゲットである統計学の修学困難感の緩和について再度の検討を行っ た.その結果,当該ニーズの充足はわかりやすさの認知との間に有意な相関関係があることが示されたが,

修学困難感の緩和にはわかりやすさの認知ともどもその影響力を確認するには至らなかった.これらの結果 から,「授業展開へのニーズの充足」は統計学の授業全体のわかりやすさの認知には影響力を持つものの,そ うした心理的効果が見込めることと修学困難感の緩和との間には直接的な関連性はないとの認識に至った.

はじめに

 先に報告した研究(河内(2010))において,統計学 の「授業展開へのニーズの充足(satisfaction of needs to class development)」は,「わかりやすい説明」とカ テゴライズできる自由回答の内容において半数以上1)

の学生に支持されており,本来のターゲットである修 学困難感の緩和への効用は確認されないまでも,授業 全体の評価には確たる影響力を有していることが示さ れた.このことは,当初の仮説とは異なるものの,「授 業展開へのニーズ」へ応じることが統計学の授業への 心理的負担感の緩和を図る上で機能していることの表 れであり,当該変数が授業設計上において有用なファ クターであることの証左であると考えることができる が,先の研究での検証方法は自由回答法によるカテゴ リカル・データの内容分析によるものであるため,そ のエビデンスは若干の主観性を帯びたものであること が否めない.しかしながら,得られた知見が「授業展 開へのニーズの充足」と授業全体のわかりやすさの認 知との確たる関連性を示すものであるならば,それは

自由回答法によるカテゴリカル・データのみならず,

評定尺度法による計量データにおいても同様の結果が 再現されるはずである.

 そこで本研究では,「授業展開へのニーズの充足」が 計量データにおいても授業全体のわかりやすさの認知 と相関関係を持つかどうかを探るべく,評定尺度法に よる検討を行うこととした.加えて,本来のターゲッ トである修学困難感の緩和についても,当該変数を含 めた関連性を探るべく,再度の検討を試みることとし た.

方 法

対象者

 筆者が担当する統計学系の科目を受講している文科 系の大学生55名(男性13名,女性42名),平均年齢19.9 歳(s = 0.49)を対象とした.大学生の専攻は主に社会 福祉や心理学である.

質問紙の構成

 質問紙は,性別や年齢などの人口統計的属性を尋ね

群馬医療福祉大学 非常勤講師

キーワード:統計教育,ニーズの充足,授業評価,計量データ

統計学の授業展開へのニーズと授業評価

―計量データに基づいた再検証―

河 内 和 直

(2)

るフェイスシート項目のほか,三つの主要な測度で構 成した.このうちの二つは,これまでの研究において 使用した「授業展開へのニーズの充足」12項目(河内

(2009a,2009c,2010))ならびに修学困難感9項目(河 内(2009c),cf.巻末資料)と同一の測度である.こ れに加えて,

全体的にわかりやすい授業であると感じ た

の1項目を授業全体のわかりやすさの認知の測度 として設定した.計22項目の尺度別の構成は,「授業展 開へのニーズの充足」12項目,わかりやすさの認知1 項目,修学困難感9項目の順に評定を求める形式となっ ている.

アンケートを実施した授業科目

 大学二年次生を対象に開講されている統計学系の通 年科目.科目内容は統計学の入門講義として記述統計 学・推測統計学の基本的な内容を学ぶものであり,カ リキュラム上の位置づけは心理学を主専攻とするコー スの必修科目である.当科目は河内(2010)で対象と した授業科目と同一のものであり,本研究においては 後期終了時点の学習内容2)での授業ならびにその受講 生を評価・検討の対象としている.

手続き

 講義時間中の一部を用いて集団法で実施した.対象 者には「当科目における授業内容(ニーズの充足・わ かりやすさの認知項目)ならびに授業への感想(修学 困難感項目)について,自身の考えがどのくらいあて

はまるかを回答せよ」との教示の下,7件法のリッカー ト・スケール(7.非常にあてはまる~1.全くあて はまらない)で評定を求めた.数値が高いほど,項目 が内包するニーズの充足度・わかりやすさの認知・修 学困難感が高いことを示すようになっている.

調査時期

 2010年1月21日に行い,アンケートは即日に回収し た.回収率・有効回答率ともに100%である.なお,当 該日時は2009年度4月9日より始業した対象科目の最 終授業日である.

結果と考察

記述統計量と 1 標本の t 検定

 最初に,ニーズの充足項目がこれまでの研究(河内

(2009a,2009c,2010))と同様に高得点方向に分布し ているかどうかを確認するべく,記述統計量の算出と 使用したリッカート・スケール上の中央値4.00を閾値

(cut off point)とした1標本の t 検定(two-tailed)に よる定数との差の検定を行った.結果を Table 1に提 示する.

 結果を概観すると,各項目の評定平均はいずれも5.00 以上の値を取っており,閾値4.00との差も危険率0.1%

(α= 0.001)で有意との結果が得られている.この結果 は,これまでの研究と同様の傾向を呈しており,「授業 展開へのニーズ」が充足されていることを示すもので あると考えられる.

Table 1 「授業展開へのニーズの充足」項目の記述統計量及び 1 標本の t 検定の結果

Item Mean s t P

時間をかけてゆっくり進めてくれた 6.02 0.85 17.616 0.000

日常的な具体例を用いて説明してくれた 5.80 0.87 15.358 0.000 単位認定の目安をあらかじめ明示してくれた 5.71 1.13 11.185 0.000

演習の時間は十分であった 5.69 1.14 11.034 0.000

単元ごとに要点をまとめた資料を用意してくれた 5.56 1.26 9.214 0.000 数学や計算が苦手であることへの配慮があった 5.47 1.18 9.224 0.000

復習の時間をとってくれた 5.45 1.07 10.097 0.000

数式や記号は必要最低限の使用であった 5.42 1.12 9.415 0.000

理論よりも方法や結果の読み取りに力点を置いてくれた 5.29 0.98 9.818 0.000 専門用語は必要最低限におさえられていた 5.25 1.08 8.653 0.000

具体例は興味・関心をひく内容であった 5.25 1.17 7.925 0.000

統計自体にもともと興味がないことへの理解があった 5.24 1.12 8.175 0.000

(3)

 以上のことから,ニーズの充足を意図した授業設計 には,これまでの研究と同様に学生からの一定の評価 が得られているものとして,本節以後の分析ならびに 考察を進めるものとしたい.

「授業展開へのニーズの充足」と授業全体のわかりや すさの認知との関連性

 続いて,計量データに基づいた「授業展開へのニー ズの充足」と授業全体のわかりやすさの認知との関連 性を検討するべく,Pearson の積率相関係数による相 関分析を行った(Table 3).なお,両変数の記述統計 量及び

α

係数については Table 2に提示する3).  結果を概観すると,「授業展開へのニーズの充足」

(尺度得点)は,授業全体のわかりやすさの認知と有意 な相関関係を有していることがわかる(r = 0.683,P

<0.001).これは,先の研究で行った自由回答法によ るカテゴリカル・データのみならず,評定尺度法によ る計量データにおいても当該ニーズの充足と授業全体 のわかりやすさの認知の関連性が確認されたことを示 しており,その効用を推定する上での確たるエビデン スが得られたと考えられる.また,「授業展開へのニー

ズの充足」の各項目とわかりやすさの認知との関連性4)

に着目すると,

具体例は興味・関心のひく内容であっ た(r = 0.774,P <0.001)

単元ごとに要点をまと めた資料を用意してくれた(r = 0.675,P <0.001)

理論よりも方法や結果の読み取りに力点を置いてくれ た(r = 0.601,P <0.001)

などの項目において0.60を 超える大きな係数が得られており,授業全体のわかり やすさを講じる上でどのような授業展開を心がければ よいかの示唆を得ることができる.すなわち,学生の 興味・関心を喚起する具体例を用い,要点を絞って,

その使用法や結果の読み取りを指導すれば,難解とさ れがちな統計学の方法も学生の理解を促すことが可能 となるのである.これとは逆に,本研究においては,

専門用語は必要最低限におさえられていた(r = 0.200,

P = 0.144)

の項目については十分な説明力のある相 関関係が確認されなかった.素朴な視点で考えれば,

専門用語が少ない方がわかりやすさの認知には強い影 響がありそうなところであるが,係数の絶対値を見る 限りでは弱い関連性を示すにとどまっている.また,

係数上は当該項目よりも大きく,推計学的にも有意性 を示してはいるが,

数式や記号は必要最低限の使用で

Table 3  「授業展開へのニーズの充足」とわかりやすさの認知の積率相関係数

Variable r P

わかりやすさの認知

具体例は興味・関心をひく内容であった 0.774 0.000

単元ごとに要点をまとめた資料を用意してくれた 0.675 0.000

理論よりも方法や結果の読み取りに力点を置いてくれた 0.601 0.000

日常的な具体例を用いて説明してくれた 0.553 0.000

復習の時間をとってくれた 0.510 0.000

演習の時間は十分であった 0.473 0.000

時間をかけてゆっくり進めてくれた 0.432 0.001

数学や計算が苦手であることへの配慮があった 0.428 0.001

単位認定の目安をあらかじめ明示してくれた 0.364 0.006

数式や記号は必要最低限の使用であった 0.362 0.007

統計自体にもともと興味がないことへの理解があった 0.290 0.032

専門用語は必要最低限におさえられていた 0.200 0.144

尺度得点 0.683 0.000

Table 2 尺度得点とわかりやすさの認知の記述統計量及び

α

係数

Variable Mean s

α

授業展開へのニーズの充足 66.16 8.99 0.900

わかりやすさの認知 5.65 1.28 ―

(4)

あった(r = 0.362,P = 0.007)

の項目にも同様の問い を投げかけることができる.統計学の本来的な難解さ には,少なくとも文科系の学生にとっては数式や記号,

数学的な専門用語などが挙げられるはずであるが(河 内(2008a)),そうした事情にも関らず,これらの項目 がわかりやすさの認知と強い関連性を持たなかったこ とは興味深いところである.「授業展開へのニーズ」,

あるいは「授業展開へのニーズの充足」として概念的 にも統計的にも一つの枠組みを保持してはいるものの

(cf.河内(2008b,2009b)),それに内包される個々の 項目(すなわち,個々の指導方略)の効用は異なるよ うである.当該ニーズの充足は,授業全体のわかりや すさの認知に対して概括的な影響力を持つことにその 効用を見出す一方で,それを構成する個々の指導方略 との共変関係にも注意を傾ける必要があることは付記 しておく.

修学困難感との関連性

 最後に,「授業展開へのニーズの充足」の本来のター ゲットである修学困難感の緩和について,本研究で取 り上げた授業全体のわかりやすさの認知を含めた関連 性を検討するべく,再度 Pearson の積率相関係数によ る相関分析を行った(Table 5).なお,修学困難感の 記述統計量及び

α

係数については Table 4に提示する5).  結果を概観すると,「授業展開へのニーズの充足」

は,先の研究(河内(2009c))と同様に本来のターゲッ トである修学困難感の緩和には有意な相関関係を有し ておらず(r =-0.069,P = 0.615),限りなく無相関に 近い係数を示すにとどまっている.また,授業全体の

わかりやすさの認知も同様に有意な相関関係は確認さ れず(r =-0.155,P = 0.259),修学困難感の緩和には 影響力(抑制力)を有していないことがわかる.

 以上の結果を踏まえると,「授業展開へのニーズの充 足」のみならず,授業全体のわかりやすさの認知も統 計学の授業の修学困難感の緩和には影響力を有してい ないことが伺える.この結果は,いずれかの変数を統 制した分析など6)を適用しても同様である.ここから 考えられることは,「授業展開へのニーズの充足」は,

授業全体のわかりやすさの認知には概括的な効用を有 しているものの,修学困難感の緩和とはやはり独立で あるということである.すなわち,当該ニーズの概念 そのものは,修学困難感の緩和をターゲットとして生 成されたものであるが(河内(2008b)),その仮説と は裏腹に意図した効用は期待することが困難な指導方 略なのであろう.少なくとも当該ニーズの充足には,

これまでの検証方法とその結果を鑑みるにおいては,

修学困難感の緩和を直接的に規定するような影響力は ないようである.

まとめ

 本研究では,「授業展開へのニーズの充足」と授業全 体のわかりやすさの認知との関連性について計量デー タの基づいた検討を行うとともに,本来のターゲット である修学困難感の緩和についてわかりやすさの認知 を含めた関連性を探るべく,再度の検討を行った.そ の結果,「授業展開へのニーズの充足」は計量データに おいても授業全体のわかりやすさの認知と有意な相関 関係を有しており,当該ニーズの充足は文科系学生を

Table 4 修学困難感の記述統計量及び

α

係数

Variable Mean s

α

修学困難感 42.60 8.66 0.864

Table 5 修学困難感との積率相関係数

Variable 授業展開 わかりやすさ 修学困難感

授業展開 ―

わかりやすさ 0.683

(0.000) ― 修学困難感 -0.069

(0.615)

-0.155

(0.259) ― note. 太字は本分析において注目すべき値.( )内の数値は有意確率.

(5)

対象とした授業設計の上で一定の効用があることが改 めて示された.しかしながら,修学困難感の緩和には わかりやすさの認知ともどもその影響力を確認するに は至らなかった.これらの結果を鑑みると,「授業展開 へのニーズの充足」は授業全体のわかりやすさの認知 には概括的な効用を持つものの,そうした心理的効果 が見込めることと修学困難感の緩和との間には直接的 な関連性はないことを伺うことができる.つまり,授 業展開への要望が満たされ,結果的に授業全体がわか りやすかったと感じることと,統計学の授業が持つ修 学困難感は心理的には独立していることを推定するこ とができるのである.少なくとも,これまで採用して きた検証方法とその結果を鑑みるにおいては,当知見 は頑健であると言えるだろう.しかしながら,この「授 業展開へのニーズの充足」をめぐっては,まだ検証を 試みるべき仮説がこれまでの研究上の知見の中に残存 している.一つはその「充足」に関する心的処理水準 についての仮説であり,もう一つは本研究で検討した 授業全体のわかりやすさの認知との整合性についての 仮説である.心的処理水準についての仮説とは,「授業 展開へのニーズの充足」ともう一つのニーズの充足で ある「教授内容へのニーズの充足」がそれぞれ異なる 心的水準で処理されているため,計量データ上におけ る心理的負担感の緩和への影響力が異なるのではない かとするものであり,これに関しては,河内(2010)

で言及したように,より意識の表層で処理されると考 えられる「教授内容へのニーズの充足」とより意識の 深層で処理されると考えられる「授業展開へのニーズ の充足」の効果性の相違である.ただ,この仮説につ いても,当初の予想とは異なる考え方を要することが 本研究を通じて浮き彫りになってきている.それは,

ニーズの充足状況と授業評価の関係のような単純な状 況変数と反応の分析ではその検証が困難だと考えられ るためである.このことは,本研究の方法論において 鍵となる心的処理水準の相違が,おそらく学習者全般 に共通する状況処理の深浅ではなく,個人の処理能力 ないしは処理への動機づけのようなファクター7)であ る可能性の推定に基づいている.実際,

テストや単位 認定への不安が大きかった

という修学困難感項目に 相反する

単位認定の目安をあらかじめ明示してくれ た

というニーズの充足項目が,その高い評定平均に 反 し て 当 該 項 目 と 限 り な く 無 相 関(r = 0.001,

P = 0.996)であるとの結果が得られており8),これが

両変数の相関を媒介する個人差変数の存在を示唆して いると判断されるためである.本研究を含む一連の研 究は,文科系学生を対象とした授業方法論の構築を目 的としているため,これまで学習者の個人差変数は扱っ てこなかったが,学習者個々人も一人格であることを 鑑みれば,むしろ大きな盲点であったとも考えられる.

今後の研究における課題として検証を重ねたいと考え る次第である.また,もう一つの仮説である授業全体 のわかりやすさの認知との整合性も,基本的には上述 の心的処理水準の個人差と同様の視点から問いを投げ かけられるものである.本研究においては,「授業展開 へのニーズの充足」のみならず,授業全体のわかりや すさの認知も修学困難感の緩和に影響力を有していな かった.当該変数は,

全体的にわかりやすい授業であ ると感じた

という先の研究での仮説を概括する授業 評価項目として設定したものであるため,修学困難感 の緩和との間には明確な仮説を持っておらず,結果と して関連性の有無の確認という工程のみに焦点を当て たが,本来的に『全体としてわかりやすい授業であっ た』と感じる一方で,『その修学への困難感はつきな かった』というのは論理的のみならず,心情的にも矛 盾するものではないだろうか.この論点が第三の変数 によって媒介されるものなのか,あるいは両立する相 反感情なのかは現段階では判断しかねるが,今後の研 究を考える上では検証を試みるべき課題であろう.

 以上を踏まえ,今後の継続的研究においては,ニー ズの充足と心理的負担感の緩和の関連性を検討する上 で,それらに影響を及ぼしうる個人差変数を導入し,

より精緻な分析・検討を行っていきたいと考える次第 である.

1) 対象者(受講生)数56名中の30名(53.6%)に支持されて いる.

2) 授業で扱う学習内容は,前期が代表値や散布度といった1 変量の記述統計量と Pearson の積率相関係数を中心とした 2変量の記述統計量であり,後期がいわゆる

χ

2検定(Pearson の適合度の検定と独立性の検定)と t 検定を中心とした統 計的検定である.

3) 「授業展開へのニーズの充足」の Cronbach の

α

係数は0.900 の高い値が得られており,十分な内的整合性を有している ことがわかる.なお,わかりやすさの認知は1項目のみで あるため,α係数の算出は行っていない.

4) 「授業内容へのニーズの充足」に内包される個々の項目(す なわち,個々の指導方略)と授業全体のわかりやすさの認 知の関連性を俯瞰的に確認するため,Pearson の積率相関

(6)

係数を算出しているが,項目単位ではその特性上,分布の 正規性が保証されないものもあるため(1標本の Kol- mogorov-Smirnov 検定),あくまで便宜的な分析である.

ここでは内包される個々の指導方略の影響力が完全に等価 ではないことの示唆を意図している.

5) 修学困難感の Cronbach の

α

係数は0.864の高い値が得られ ており,こちらについても十分な内的整合性を有している ことがわかる.

6) 偏相関係数の算出など.

7) 例えば,授業理解への心的努力量の個人差や認知欲求など.

8) 河内(2009c)のデータでは,修学困難感項目

テストや単 位認定への不安が大きかった

と「授業展開へのニーズの 充足」項目

単位認定の目安をあらかじめ明示してくれた

との積率相関係数(r)は0.063(P = 0.618)である.係数 は本研究よりもわずかに大きいが,十分な説明力を持つに はほど遠い値である.加えて,

“単位認定の目安をあらかじ

め明示してくれた

の項目が高い評定平均を示しているこ と(score = 5.66,P <0.001,n = 65)を考えると,両変数 がほぼ無相関であるということにはやはり論理的な矛盾が ある.こちらについても注3)と同様に分布の正規性に関 する問題があるが,分布の仮定を必要としない Spearman や Kendall の順位相関係数においても相関関係は確認でき ないため,単純なデータの特性のみに依存しているわけで はないようである.

引用文献

河内和直(2008a).文科系学生における統計教育法の探索Ⅰ―

「統計学の授業」への心理的負担感因子の検討から―,立正社 会福祉研究,9(2),15-21.

河内和直(2008b).文科系学生における統計教育法の探索Ⅱ―

「学生ニーズ」のクラスタリングの検討から―,立正社会福祉 研究,10(1),1-7.

河内和直(2009a).文科系学生における統計教育法の探索Ⅲ―

ニーズの充足と授業満足度の関連の検討から―,立正社会福 祉研究,10(2),19-25.

河内和直(2009b).文科系学生における統計教育法の探索Ⅳ―

「学生ニーズ」の妥当性の検討から―,立正社会福祉研究,

11

(1),21-27.

河内和直(2009c).学生ニーズに基づいた統計教育の実践―

「ニーズの充足」の直接効果の検討―,文京学院大学人間学部 研究紀要,11(1),233-243.

河内和直(2010).統計学の授業展開へのニーズとその効用―学 生の自由回答の検討から―,立正社会福祉研究,

11(2),33-

38.

謝 辞

 本論文は,筆者が担当する統計学系の授業において行った「授 業内容向上のためのアンケート」に基づいております.アンケー トの実施に際し,真摯にご回答下さいました学生の皆様に記し て御礼申し上げます.

(2010年6月30日受理)

資料 修学困難感 9 項目 Item

自分の理解が本当に正しいかどうか迷うことが多かった 次の授業まで覚えていられるかどうかが気がかりだった 分析をするにあたってのルールや作業量に困惑すること が多かった

授業についていけるかどうかの心配が絶えなかった 一人で勉強できる自信が持てなかった

テストや単位認定への不安が大きかった

一度つまずくと,全く手に負えなくなりそうだと感じた 統計学特有の考え方や概念になじめなかった

例外的な事実や少数派の意見を軽視するイメージがぬぐ えなかった

【補足 : 修学困難感項目】

 修学困難感項目は,河内(2008a)で抽出された因子内容を研 究目的に即した表現に改める形式で用いている.なお,先の研 究では,修学困難感因子に内包される項目は10項目であったが,

本研究(ならびに河内(2009c))においては,比較的類似した 意味内容を指す

分析をするにあたってのルールが多いこと

と“データ入力,あるいは複数の統計量の計算など,一つの分 析をするための作業が多いこと”の2項目を,

“分析をするにあ

たってのルールや作業量に困惑することが多かった”の1項目 に合成して使用している.

参照

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