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無店舗販売の基礎的研究

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無店舗販売の基礎的研究

藤岡 明房

【要旨】

従来の小売業は,店舗での販売が大部分であった.しかし,近年,店舗での販 売ではなく,インターネットやテレビショッピングでの販売が増加している.こ の新しい販売は訪問販売や自動販売機による販売とともに無店舗販売と呼ばれて いる.本報告では,これまであまり研究されていなかった無店舗販売を取り上げ,

無店舗販売の地域特性という観点から分析してみた.

訪問販売,通信販売・カタログ販売,自動販売機の販売の販売額を比較すると,

訪問販売が一番多く,通信販売・カタログ販売は2番目であり,自動販売機の販 売は一番少なくなっていた.しかし,平成9年,平成14年,平成19年の3時点 を比較すると,訪問販売は減少しており,自動販売機の販売は停滞しているのに 対し,通信・カタログ販売は着実に増加していた.全国を6つの地域に分類し,

それぞれの地域の販売額のデータに一元配置分散分析One-way analysis of vari- anceの手法を適用すると,地域間の販売額に有意な差は見出せなかった.一部 の手法についてのみ,関東地方の無店舗販売が他の地域と比べて販売額が多いこ とがいえた.

訪問販売,通信・カタログ販売,自動販売機の販売について47都道府県をそ れぞれ6つのグループに分類し,一元配置分散分析を適用することによって,最 上位のグループが他のグループよりも販売額が統計的に有意に多いことが明らか になった.また,1事業所当たりの販売額を調べると,通信・カタログ販売につ いては,長崎県,香川県,京都府の販売額が最上位に来ていた.その理由は,こ れらの府県に「ジャパネット高田」,「セシール」,「ニッセン」といった大手通販

(2)

会社が立地していることが上げられる.

今回の無店舗販売の研究は,あくまでも無店舗販売に関する基礎的研究である ため,単純な分析にとどまっている.

JEL Classifi cation C12L81O18 1. はじめに

近年,インターネットを利用したオンラインショッピングのような店舗を構え ない新しい小売りの形態が拡大している.このような小売りの形態は無店舗販売

Non-store Retailing1と呼ばれている.商業統計の分類基準では,無店舗販 売は,訪問販売額,通信・カタログ販売,自動販売機による販売,その他の4つ から成り立っている2.従来の店頭での販売が中心の店舗販売の場合には小売店 が集まり,商店街が作られた.それにより都市構造が形成され,さらに地域構造 も形成された.今後無店舗販売が増加するならば,店舗販売を行う小売店による 商店街が変化する可能性がある.インターネットのAmazonの普及による町の書 店の売り上げ減少などがその例である.

本報告の目的は,今後拡大が予想されている通信・カタログ販売を含む無店舗 販売を取り上げ,その販売形態を分析し,地域的な特性を明らかにすることであ る.そのために,2. では小売業態,商品販売形態を検討する.3. では日本の無店 舗販売の特性を調べ,さらに4. では,無店舗販売の地域特性を分析する.5. で は無店舗販売の都道府県別の特性をさらに詳しく分析する.6. ではまとめを行う.

2. 小売業態,商品販売形態

2‒1. 商業と商品販売形態

商業とは,広義には,生産者から消費者への商品の社会的流通全般のことをい う.狭義には,商品流通のなかの商品売買だけを取り上げ,それを商業と呼んで いる.経済学では,商業を広義にとらえ,経済循環の一過程とみなしている.

(3)

経済が未発達の時代には生産が少ないため露天など店舗を持たない取引が行わ れていたが,経済が発展すると生産量が増加し,継続的に販売するため店舗を構 えた取引が行われるようになった.経済がさらに発展すると商業活動も活発化し,

専門分化が生じた.専門分化の初めは,卸売りと小売りの分化である.卸売りは,

製造業者と小売業者の間に位置し,製造業者から商品を仕入れ,小売業者に商品 を販売するという活動である.小売りは,卸売業者あるいは製造業者から商品を 仕入れ,それを消費者に販売する活動である.小売業者が消費者に商品を販売す る場合,小売業者は店舗を開設し店頭において商品を陳列するのが一般的である.

しかし,近年小売店に出向くことなく,カタログショッピングやテレビショッ ピングなどメディアを利用した形態の販売も増加している.商品の状態を直接確 認することが出来ないという問題点があるが,その便利さから普及するようになっ た.近年,インターネットが普及したことによってオンラインショッピングとい う形態が増加している.

したがって,商品販売形態の多様化が進んでいることになる.このような新し い商品販売形態が登場することは小売業の技術革新によってもたらされた小売業 態の進化とみなすこともできる.そこで,小売業態に関する理論的研究について 簡単に見てみることにする.

2‒2. 小売業態論,小売流通革新論

従来の小売業の研究は,小売業態の研究が中心であった.これは,アメリカで 19世紀終わりごろから百貨店,チェーン・ストア,スーパーマーケット,ディス カウント・ハウスなどの新しい小売業態が数多く登場してき,その都度大きな論 争を引き起こしたことによる.さらに,小売業態の研究は,都市構造と関連させ た議論もなされている(津川2001),長島1988)).このような議論が可能なの は,小売業者が店舗を持ち,店頭で販売を行っているからである.

このように小売業の販売形態が多様化したことにより,なぜ多様化が進んだの かを明らかにすることを目指して,小売業の多様化を理論的にとらえる研究がな されるようになった(佐藤2009)).その1つが「小売業態論」である.これは,

小売業が技術革新によってダイナミックに変化していくことを踏まえたものであ

(4)

り,「小売の輪」の考え方が代表的なものである.小売業態論にはいくつかの種類 が存在する.それを紹介したものが,高島2003),(2007),趙2009),保田

2009などである.

もう1つが,事例分析に基づいて小売業における技術革新の特徴を捉える研究 であり,「小売流通革新論」と呼ばれている.この種の研究としては,小川2000),

高島2007),矢作1996),などがある.

しかし,小売業の販売形態に関する研究では総称としての無店舗販売について はほとんど言及されていない.そのため,無店舗販売に関しては,流通業や小売 業の理論的研究が少ないと見なさざるを得ないであろう.むしろ,通信販売のよ うな無店舗販売の中の個別の販売形態についての研究のほうが多くなされている.

そこで,まず,無店舗販売の販売形態についての先行研究を調べてみることにす る.

2‒3. 無店舗販売の販売形態に関する先行研究

無店舗販売とは,世界大百科事典第2版3によれば,『商品を常設の店舗で販 売せず,それ以外の方法で商品を販売する小売業の総称.カタログ,ダイレクト・

メール,テレビや新聞の広告などを利用して,電話や郵便で顧客からの注文を受 ける通信販売,セールスマンが商品あるいはサンプル,パンフレットを携帯して 戸別に家庭を訪問し,商品を販売する訪問販売,小型トラックやワゴンタイプの 車に商品を積み,広場や街角で販売する移動販売,ホテルや公の施設を利用し,

不定期に商品を陳列して販売する展示会販売,在庫一掃や行事などとからめ,広 い場所を借りてバーゲンセールを行う催事販売,一般家庭に知人や友人を集めて 行われる実演販売や紹介販売,人の集まる所に置かれて定期的に商品の供給と代 金の回収が行われる自動販売機による販売など,すべて無店舗販売である.生活 協同組合や農業協同組合の組合員がグループでまとめて商品を購入する購買事業 活動も,実質的に無店舗販売のうちに入れられよう.』とされている.

無店舗販売に関しては,政府関係の統計資料などで公表されている.経済産業 省の『我が国の商業』などの報告書で実態が紹介されている.例えば,『平成19 年商業統計 概況』には,トピックの3番目に,「小売業の無店舗販売の状況」

(5)

p92–97が取り上げられている.これを見れば,無店舗販売の状況が大まかに 分かることになる.

無店舗販売についての理論研究は,欧米でもあまり行われていない4むしろ,

通信・カタログ販売の販売形態について多くの論文が存在している5

店舗を持たない無店舗販売が注目されるようになったのは,19世紀終わりに誕 生したシアーズ・ローバック6が,1893年にカタログを郵送して,一括仕入れ で安価に商品を提供するダイレクト・マーケティングを大規模に実施したことに よる.シアーズ・ローバックは,自動車を利用して購入する消費者が増加するこ とを見越して郊外に百貨店を開業するなどの新しい試みも行っていた.1970年代 にカタログ販売による通信販売が増加し,小売販売額としては全米1位になった.

したがって,将来は通信販売がさらに拡大するものと予測された.しかし,1990 年代になるとアメリカの小売業ではウォルマートが急速に規模を拡大させ,1992 年シアーズ・ローバックを抜き小売業の全米1位になった.このように,1980年 代には通信販売がさらに拡大すると予測されていたにもかかわらず,実際にはウォ ルマートのような大型小売店の販売が増加した.大型小売店が成功した背景には,

情報通信システムが発達し,電子データ交換によって無駄を徹底的に排除するこ とに成功したことが上げられる.このような歴史的経緯を踏まえて竹村2003 は,「小売業の将来予測は,なぜあたらなかったのか」という問題を提示してい る.

通信販売に関する理論的な検討を行った研究はいくつかあるが,なかでも近藤

1990は詳しい既存研究の紹介を行っている.それによると,欧米において通信 販売に関する既存研究が多数行われており,それらの既存研究の成果は,第1 通信販売利用者の態度attitudeあるいは認知perceptionの側面に関するも のであり,第2はその社会経済的socioeconomicおよび人口統計学的demo-

graphic側面に関するものである.そして,近藤は結論として,「通信販売利用

者の購買行動をみると,マクロ的には通信販売市場が近年急速に拡大している一 方,ミクロ的にはその利用頻度およびそれへの支出額はきわめて低く,通信販売 固有の知覚リスクの高さが大きな障害となっている.このことは,通信販売利用 者と未利用者との問で今後の通信販売利用の意向に有意な差が生じていることに

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も反映されている.また通信販売利用者は,主として通信販売企業の著名性と既 知の商品の購入に依拠することによって知覚リスクを削減するという行動をとっ ていることが指摘された.」としている.

無店舗販売としては,通信販売より古くからおこなわれていたのは訪問販売で ある.日本では江戸時代の元禄期から越中富山の薬売りとして知られている訪問 販売が行われていたこともあり,訪問販売は薬品や化粧品,食料品などの商品分 野で行われていた.そのため,訪問販売に関する研究は商品分野別に多く行われ ている.例えば,薬品業界については石居1996),化粧品業界については井田

2006),厳2007の論文がある.そして,食品業界については茂木2003が ある.訪問販売については,沢津1991が系統的に分析している.

自動販売機による販売については,ほとんど理論研究が行われていない.自動 販売機の省エネ問題とか環境問題が話題になることがあったが,販売に関しては 実態調査についての報告書が見いだされるだけであった.

3. 日本の無店舗販売

3‒1. 無店舗販売の分類

まず,無店舗販売とは,一般には店舗を用いない小売販売の形態のことをいう.

通信販売,訪問販売,自動販売機による販売,その他などが無店舗販売になる.

平成21年版の『我が国の商業』では,小売業の商品販売形態区分をおこなっ ており,店頭販売を含めて5つの販売形態を定義している.

1 店頭販売

店頭で商品を販売した場合をいう.なお,ご用聞き及び移動販売も含む.

2 訪問販売

訪問販売員等が家庭などを訪問して商品を販売した場合をいう.

3 通信・カタログ販売

カタログ,テレビ,ラジオ,インターネット等の媒体を用いてPRを行い,消 費者から郵便,電話,FAX,インターネット,銀行振込などの通信手段による購 入の申込みを受けて商品を販売した場合をいう.

(7)

4 自動販売機による販売

商業事業所が管理している自動販売機で商品を販売した場合をいう.

5 その他

料理品の宅配,仕出し屋,生活協同組合の「共同購入方式」,新聞や牛乳などの 月極販売及び上記以外の販売形態で商品を販売した場合をいう.

3‒2. 無店舗販売の販売額

平成19年の小売業の年間商品販売額は,134兆7054億円であった.その中で,

店頭販売額が110兆167億円(構成比82.8%)であり,最も多かった.無店舗販 売については,訪問販売額が82832億円(同6.2%),通信・カタログ販売額 が4兆168億円(同3.0%),自動販売機による販売額が1兆7915億円(同1.3%)

となっている.これ以外に,その他の販売額が8兆7359億円(同6.6%)ある.

したがって,無店舗販売の中で最も大きな割合を占めているのは訪問販売であり,

続いて通信・カタログ販売額になり,自動販売機による販売が一番小さくなって いる.無店舗販売の3つを合計すると14兆915億円になり,小売業の販売額の 10.5になる.無店舗販売は,小売販売額の1割を占めていることから,無視で きない存在といえよう.

無店舗販売の販売額を事業所数で割ると,1事業所当たりの販売額を求めるこ とができる.1事業所当たりの訪問販売の販売額は5,914万円,通信・カタログ 販売の販売額は6,551万円,自動販売機による販売額は1,418万円である.した がって,1事業所当たりでは通信・カタログ販売が一番多く,それに近いのが訪 問販売である.自動販売機による販売は,これらの約4分の1弱であった.

3‒3. 3 時点比較

無店舗販売の変化を調べるため,平成9年,平成14年,平成19年の3時点の 比較を行ってみる.図1は,無店舗販売の販売額の3時点比較である.

図1から明らかなように,無店舗販売の販売額は減少している.その原因は,

訪問販売の販売額が大幅に減少しているからである.それに対し,通信・カタロ グ販売額は着実の増加している.自動販売機による販売は,停滞している.

(8)

『我が国の商業』(平成21年)によれば,小売業の販売額のピークは平成9年で あり,それ以降減少が続いている.これは販売数量の減少とともに,販売単価の 下降によってもたらされたものである.したがって,訪問販売の減少も小売業の 販売の減少と同じようにデフレの影響を受けているものと考えられる.

0 5 10 15 20 25

訪問販売 通信販売 自動販売機 その他 無店舗販売 平成 9 年 平成 14 年 平成 19 年

兆円

図 1 無店舗販売の 3 時点比較

0 10 20 30 40 50 60 70 80

訪問販売 通信販売 自動販売機 無店舗販売

平成 9 年 平成 14 年 平成 19 年 100 万円

図 2 1 事業所当たり販売額の 3 時点比較

(9)

販売額を事業所数で割った1事業所当たりの販売額は図2のようになる.1事 業所当たりの販売額でみると,無店舗販売の販売額は減少から増加に転じている.

これは,訪問販売の販売額は減少しており,通信・カタログ販売は増加から減少 に転じているものの,自動販売機による販売額の増加が大きかったことによるも のである.

3‒4. 無店舗販売の内訳

小売業の産業別分類に基づいて無店舗販売の内訳を見てみる.産業分類として は,各種商品小売業,織物・衣服・身の回り品小売業,飲食料品小売業,自動車・

自転車小売業,家具・じゅう器・機械器具小売業,その他の小売業の6つを取り

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5

訪問販売 通信・カタログ販売

自動販売機による販売 その他 兆円

各 種 商 品

織 物

・ 衣 服

・ 他

飲 食 料 品

自 動 車

・ 他

家 具

・ じ ゅ う 器

・ 他

そ の 他 図 3 商品販売形態別の商品販売額

(10)

上げる.無店舗販売における販売額をこれら6つの産業について見てみると,平 成19年は図3のようになる.

図3から分かることは, 訪問販売は自動車・自転車小売業の販売額が多く,そ の他の小売業,家具・じゅう器・機械器具小売業,各種商品小売業での販売額が 多いことである.通信・カタログ販売は飲食料品小売業,その他の小売業,織物・

衣服・身の回り品小売業の販売額が多くなっている.自動販売機による販売は飲 食料品小売業の販売に特化している.

3つの無店舗販売を比較すると,通信・カタログ販売は織物・衣服・身の回り 品小売業で1番になり,飲食料品小売業では僅差の2番であった.自動販売機販 売は飲食料品小売業で1番になっているが,それ以外の産業では最下位である.

これら2つの産業以外の産業については訪問販売が1番である.このことから無 店舗販売といっても,それぞれの得意分野があることが分かる.

4. 無店舗販売の地域特性

4‒1. 地域区分

無店舗販売に関する地域的な特色を調べるため,全国を地域的なグループに区 分して調べることにする.サンプル数は都道府県数であるから47になる.統計 学的には,グループ数を二乗するとサンプル数に近くなるようにグループ分けを することが望ましいとされているので,47都道府県については6か7グループに 分けるのが妥当であろう.各グループのサンプル数がある程度近い数値になるよ うに調整すると,グループ分けは6グループになる.そこで,全国の47都道府 県を,北海道・東北地域(北海道,青森,岩手,宮城,秋田,山形,福島),関東 地域(茨城,栃木,群馬,埼玉,千葉,東京,神奈川),中部地域(新潟,富山,

石川,福井,山梨7,長野,岐阜,静岡,愛知),関西地域(三重,滋賀,京都,

大阪,兵庫,奈良,和歌山),中国・四国地域(鳥取,島根,岡山,広島,山口,

徳島,香川,愛媛,高知),九州・沖縄地域(福岡,佐賀,長崎,熊本,大分,宮 崎,鹿児島,沖縄)の6つの地域に区分する.

(11)

4‒2. 地域ごとの販売額

無店舗販売を地域に分けて,地域ごとの販売額に基づいて一元配置分散分析8 を行ってみると,平成19年については図4のような結果が得られた.なお,SD は標準偏差,SEは標準誤差を表す9

図4から明らかなように,一元配置分散分析を適用しても無店舗販売について は地域的な販売額の差は見出しにくいことが分かる.一元配置の手法の中でダネッ トDunnettの手法あるいはウィリアムズWilliamsの手法を適用した場合に ついてのみ関東地域が関西地域を除いて他の地域よりも販売額が大きいというこ とが5の有意水準でいえることになる.

無店舗販売の訪問販売,通信・カタログ販売,自動販売機による販売の3種類 について個別に一元配置分散分析を適用すると,訪問販売と通信・カタログ販売 については有意な差は検出されなかった.しかし,自動販売機による販売に関し てはテューキーTukeyの手法について関東と,中国・四国,九州・沖縄の2地 域に関し5で有意な差が存在していることが示された.

−0.4

−0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6

平均+SD 平均+SE 平 均 平均−SE 平均−SD 兆円

北海道・東北 関東 中部 関西 中国・四国 九州・沖縄

図 4 一元配置分散分析 各地域の平均値

(12)

4‒3. 販売額による順位づけ

47都道府県の無店舗販売の販売額を用いて,販売額に基づいて順序付けを行 い,それを少数のグループに分類し,それらのグループ間で有意な差が見いだせ るか否かを検討してみる.

47都道府県の無店舗販売の販売額が高い順から並べ,6つのグループを作って みる.第1グループから第5グループまでは都道府県の数は8つであり,第6 ループは7つである.その6つのグループに一元配置の手法を適用すると,平成 19年は図5のような関係が得られた.

第1グループに入ったのは,東京都,大阪府,愛知県,福岡県,神奈川県,千 葉県,京都府,北海道である.これらの都道府県は無店舗販売による販売額は著 しく多くなっている.

テューキーの手法をはじめいくつかの手法において第1グループが第2グルー プ以下よりも1有意で販売額が多いことが示された.しかし,2位以下のグルー プの間では有意な差は見いだせなかった.したがって,第1グループの販売額が 著しく多いことになる.

0 50 100 150 200

1 2 3 4 5 6

平均+SD 平均+SE 平 均 平均−SE 平均−SD 100 億円

図 5 無店舗販売,販売額グループ別

4‒4. 地域ごとの 1 事業所当たりの販売額

無店舗販売の販売額を事業所の数で割ることによって1事業所当たりの販売額 を求める.その1事業所当たりの販売額を6つの地域に区分し一元配置分散分析 を適用すると,平成19年は地域間に有意な差は検出できなかった.したがって,

無店舗販売については地域的な格差は必ずしも明らかではないことになる.

(13)

図 6 1 事業所当たり無店舗販売額のグループ分け

0 50 100 150 200 250 300

1 2 3 4 5 6

平均+SD 平均+SE 平 均 平均−SE 平均−SD 100 万

また,47都道府県の無店舗販売の1事業所当たりの販売額を高い順から並べ,

6つのグループを作り,その6つのグループに一元配置の手法を適用してみる.

すると,平成19年については図6が得られる.

図6から明らかなようにテューキーの手法をはじめいくつかの手法において第 1グループが第2グループ以下よりも1有意で販売額が多いことが示された.

4‒5. 地域別の住民一人あたりの販売額

都道府県別の無店舗販売額を都道府県別の住民数によって割ると,住民一人あ たりの無店舗販売額が得られる.それを地域別にグループ化し,一元配置分散分

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18

平均+SD 平均+SE 平 均 平均−SE 平均−SD 万円

北海道・東北 関東 中部 関西 中国・四国 九州・沖縄

図 7 地域別住民一人あたりの無店舗販売額

(14)

析を適用すると平成19年は図7のようになる.

住民一人あたりの値を地域別にみると中国・四国地域が最も無店舗販売額が高 くなっている.しかし,その中国・四国地域も他の地域との間で有意な差は存在 していなかった.したがって,住民一人あたりの販売額で見た場合,地域的な差 はあまり存在しないことになる.

4‒6. 販売額順に見た場合の住民一人あたりの販売額

同じく,無店舗販売について住民一人あたりの販売額を求め,販売額が多い順 番に並べ,6つのグループに分けることにする.すると,図8のようになる.

図8からわかるように,住民一人あたりにすると無店舗販売の販売額の違いは 大きく,グループ1がグループ2以下と有意に差があるだけでなく,他のグルー プ間でも有意に差があった.たとえば,グループ2はグループ3以下よりも有意 に差があった.グループ3, 4, 5の間ではあまり差がなかったが,グループ6は 有意に他のグループより小さくなっている.

図 8 住民一人あたりの販売額の順番によるグループ別の格差

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

1 2 3 4 5 6

平均+SD 平均+SE 平 均 平均−SE 平均−SD 万円

4‒7. 無店舗販売の地域的特徴

無店舗販売額の地域的特徴を捉えるため,総販売額,1事業所当たりの販売額,

住民一人当たりの販売額について比較した結果,1事業所当たりの販売額を順番 に並べる場合と住民一人当たりの販売額を順番にならべる場合,6つのグループ

(15)

にわけるならば,住民一人当たりの販売額について1の有意で差があることが 確認できた.特に,住民一人当たりの販売額については顕著な差があることが分 かった.したがって,無店舗販売に関しては1事業所当たりの販売額あるいは住 民一人当たりの販売額に基づいて分析するほうが望ましいことになる.

5. 3 種類の無店舗販売の都道府県別分析

5‒1. 3 種類の無店舗販売の販売額

無店舗販売を訪問販売,通信・カタログ販売,自動販売機による販売の3種類 に分類し,都道府県別の販売額を6つのグループに分けてそれぞれについて一元 配置分散分析を適用してみる.すると,平成19年については訪問販売,通信・

カタログ販売,自動販売機による販売は,無店舗販売のときの有意差の違いとほ ぼ同じであった.ただし,訪問販売に関しては第2グループと第6グループの間 で5の有意差が見いだされている.

訪問販売に関する図9において第1グループは,第2グループ以下よりも有意 に大きくなっている.第2グループは第6グループより有意に大きくなっている.

同様に,通信・カタログ販売に関してもグループ化すると,図10のようになる.

この図10から第1グループが第2位以下よりも有意に大きくなっていることが 明らかになった.さらに,自動販売機による販売に関してもグループ化すると,

図11のようになる.

図 9 訪問販売の順位によるグループ化

0 10 20 30 40 50 60 70 80

1 2 3 4 5 6

平均+SD 平均+SE 平 均 平均−SE 平均−SD 100 億円

(16)

これら3つの図の中で,第1グループが他のグループよりも有意に販売額が多 いことが言える.したがって,3種類のそれぞれの第1グループについてはさら に検討する必要がある.

5‒2. 3 種類の無店舗販売の第 1 グループ

平成19年の小売業の総販売額の最上位8都道府県を選ぶと,東京都,大阪府,

神奈川県,愛知県,埼玉県,北海道,千葉県,兵庫県となっている.9位から16 位までは,福岡県,静岡県,広島県,京都府,茨城県,新潟県,宮城県,長野県 であった.それに対し,訪問販売,通信・カタログ販売,自動販売機による販売,

無店舗販売の上位8都道府県を選び,小売業の上位8位までと比べてみると,い くつかの新しい県が上位8位以内に入ってくる.すなわち,訪問販売は福岡県と 広島県である.通信・カタログ販売は福岡県である.自動販売機による販売は福 岡県である.これら3種類を合計した無店舗販売は福岡県と京都府である.

これらの結果からわかることは,新しく上位に入ってきた県は最上位の第1グ 図 10 通信・カタログ販売の順位によるグループ化

−20 0 20 40 60 80

1 2 3 4 5 6

平均+SD 平均+SE 平 均 平均−SE 平均−SD 万円

図 11 自動販売機による販売の順位によるグループ化

0 5 10 15 20

1 2 3 4 5 6

平均+SD 平均+SE 平 均 平均−SE 平均−SD 万円

(17)

ループではなくても第2グループの上位に入っているものであったことである.

したがって,各都道府県の年間の総販売額を比較しても,無店舗販売の都道府県 別の特徴を把握できたとはいえないことになる.

そこで,1事業所当たりの販売額についても同様の比較を行ってみる.小売業 の1事業所当たりの総販売額の上位8位までの都道府県は,東京都,神奈川県,

千葉県,愛知県,埼玉県,北海道,大阪府,宮城県である.訪問販売,通信・カ タログ販売,自動販売機による販売,無店舗販売の上位8位の都道府県を選び,

小売業の上位8までと比べてみる.すると,訪問販売では山梨県,通信・カタロ グ販売は長崎県,香川県,京都府,奈良県が入り,自動販売機による販売は沖縄 県が入った.そのため,1事業所当たりの無店舗販売も長崎県,香川県,京都府,

福岡県が入ってくる.

さらに,住民一人当たりの販売額を都道府県別に求め順番に並べると,訪問販 売の上位8位までは島根県,福井県,岡山県,宮崎県,広島県,鳥取県,石川県,

三重県となる.通信・カタログ販売は香川県,京都府,東京都,長崎県,大阪府,

福岡県,広島県,千葉県となる.自動販売機による販売に関しては東京都,大阪 府,愛知県,静岡県,秋田県,新潟県,山梨県,三重県となる.この結果から,

住民一人当たりの販売額に関しては訪問販売と通信・カタログ販売の最上位の8 位までの都道府県の顔ぶれは,小売業の総販売額の最上位8都道府県の顔ぶれと 比べると大きく異なっていることが分かる.

これらの1事業所当たりの販売額や住民一人当たりの販売額の結果は,総販売 額に比べると大きく異なっていることが分かる.その理由としては,1事業所当 たりの販売額の違いは大きな販売額を伴う事業所が存在していることが予想され る.また,住民一人当たりの販売額が大きくなるのは,それぞれの無店舗販売を 利用する住民の数が多いことが考えられる.たとえば,訪問販売に関しては島根 県,福井県,宮崎県,鳥取県など大消費地から離れた県での消費が大きくなって いる.

そこで,無店舗販売の販売額についてさらに詳しく調べてみることにする.1 事業所当たりの訪問販売で山梨県が上位に来る理由を調べるために山梨県の業態 別の販売額を見てみたが秘匿項目が多く分析不能であった.同様に,通信・カタ

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ログ販売,自動販売機による販売についても秘匿項目が多いため分析が困難であっ た.そこで,この分析は今後の課題とする.

なお,各都道府県について個別にそれらの無店舗販売について調べてみた.そ の結果,通信・カタログ販売については,長崎県,香川県,京都に「ジャパネッ ト高田」,「セシール」,「ニッセン」といった有名は通販会社が存在していること が分かった.このように,全国展開をしているような通販会社が立地している場 合,その府県が上位に来るようなことが生じることになる.沖縄県における1事 業所当たりの自動販売機の販売額が大きいが,住民一人当たりの販売額では極め て小さくなってしまう.これは,沖縄県に自動販売機を利用する大手の企業が多 く存在することが考えられる.

6. まとめ

無店舗販売というこれまであまり研究されてこなかったテーマを取り上げ,無 店舗販売の特徴を明らかにした.さらに,無店舗販売の地域特性を調べるために,

一元配置分散分析という統計手法を適用することによって分析した.その結果,

無店舗販売に関する地域的な差は,関東地域は相対的に販売額が多いことが言え るが,それ以外の地域に関してはあまり明確ではないことが分かった.また,1 事業所当たりの販売額や住民一人当たりの販売額に関しては都道府県別の特徴が あることが言えることになった.例えば,事業所当たりの販売額をグループ別で みてみると,第1グループは1有意で他のグループより平均値が大きかった,

住民1人当たりの販売額に関しては中国・四国地域が最大になった.それに対し,

関東地域は下から2番目であった.このように一定の知見が得られた.今後はさ らに詳しい研究が望まれる.

【注】

注1 Tony Hernandez,他2001では,無店舗販売として,直接販売,オンライ ン販売,自動販売機,テレマーケティング,直接マーケティングの5種類を取り上

(19)

げている.

注2 商業統計における商品販売形態(小売業のみ)区分は,次のとおり.①店頭販 売(店頭で商品を販売した場合をいう.なお,ご用聞き及び移動販売も含む.),②訪 問販売(訪問販売員等が家庭などを訪問して商品を販売した場合をいう.) ③通信・

カタログ販売(カタログ,テレビ,ラジオ,インターネット等の媒体を用いてPR を行い,消費者から郵便,電話,FAX,インターネット,銀行振込などの通信手段 による購入の申込みを受けて商品を販売した場合をいう.) ④自動販売機による販 売(商業事業所が管理している自動販売機で商品を販売した場合をいう.) ⑤その他

(料理品の宅配,仕出し屋,生活協同組合の「共同購入方式」,新聞や牛乳などの月 極販売及び上記以外の販売形態で商品を販売した場合をいう.)

注3 世界大百科事典(電子版),第2版,平凡社,日立システムアンドサービス 注4 Man fred Kraff t, Murali K. Mantrala2006は欧米の小売業に関する概説

的な著書であるが,無店舗販売に関する記述は極めて少ない.p. 72において短く述 べられているが,“There are around 5 various types of non-store retailing: direct selling, online retailing, vending machines, telemarketing and direct marketing.

However, sales through vending machines, direct selling, and television home shopping compared to the Internet are relatively small and not growing.”と述 べ,インターネット販売だけに注目するとしている.

注5 Korgaonkar他2006),Hernandez他2001),Teller他2006などでイン ターネットを利用したオンライン販売について論じている.

注6 シアーズ・ローバック社の前身であるW.シアーズ時計会社は1886年ミネア ポリスで設立された.それより先に,1872年シカゴでモンゴメリー・ワード会社が 開業し,通信による商品販売を行っている.

注7 山梨は関東地域に分類されることもあるが,今回は中部地域に分類した.

注8 一元配置分散分析には,いくつかの手法がある.すべてのつい比較を行う手法 としては,Fisherの最小有意差法Fisher's LSD),Bonferroni(ボンフェローニ),

Sidak(シダック),Holm(ホルム),Scheff e(シェッフェ),Tukey(テューキー),

Tukey-Kramer(テューキー・クレーマー)がある.対照群との対比較を行う手法と

しては,Dunnett(ダネット),Williams(ウィリアムズ)がある.これらの手法の 中で,Tukey(テューキー)の手法が最も一般的である.Scheff e(シェッフェ)の手

法はTukey(テューキー)の手法より検出力が優れているが,一対比較だけが可能

である.Bonferroni(ボンフェローニ)の手法はTukeyの方法に比べて検出力が劣っ

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ている.以上の理由で,Tukey(テューキー)とScheff e(シェッフェ)の手法を中心 に適用することにする.

注9 標準偏差Standard Deviationは,平均値に対する観測データの散らばりを あらわす記述統計量であり,標準誤差Standard Errorは,標本の散らばりを表 す記述統計量である.両者には,SESD/n という関係がある.

【参考文献】

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13 高島克義「小売業態革新に関する再検討」,流通研究9巻32号,p. 33–512007 年3月

14 竹村正明「小売業の将来予測は,なぜあたらなかったのか」,彦根論叢第344 345号,p. 125–1442003年11月

15 田島義博「小売業者の経営意識に関する実証的研究その1医薬品小売業」,学 習院大学経済論集,p. 57–681966年2月

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17 趙 曄「小売業態に関する諸理論の検討」,現代社会文化研究No. 44p. 171–

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18 長島広太「立地環境特性からみた日本の商業構造」,早稲田商学第327328合 併号,p. 353–3941988年3月

19 新田都志子「SPA のビジネスシステム革新1)」,経営論集第17巻第1号,

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20 野村美明「消費者向け電子商取引と紛争解決」,国際公共政策研究第5巻第1 号,p. 1–222001年

21 保田宗良「OTC流通の変革動向についての論点整理」,弘前大学人文社会論叢,

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22 茂木信太郎「食品の流通」,信州大学経済学論集49p. 35–442003年

23 矢作敏行『現代流通』,有斐閣,1996年

24 P. Korgaonkar, R. Silverblatt, and T. Girard, “Online retailing, product classifi cations, and consumer preferences”, Internet Research Vol. 16 No. 3, pp. 267–288, 2006

25 Man fred Kraff t, Murali K. Mantrala“Retailing in the 21st Century̶ Current and Future Trends̶”, Springer, Berlin Heidelberg. 2006

26 Hernandez, T., R. Gomez-Insausti and M. Biasiotto. “Non-Store Retailing and Shopping Centre Vitality”. Journal of Shopping Center Research, 8 p. 57–82. 2001.

27 Christoph Teller, H. Kotzab, and D. Grant, “The Consumer Direct Services Revolution in Grocery Retailing: An Exploratory Investigation” Managing Service Quality Journal, 16 1, pp. 78–96. 2006.

28 店舗システム協会編『「通販」業界ハンドブックVer. 2』,東洋経済新報社,

(22)

p. 1732007年 平成19年商業統計 平成16年商業統計 平成14年商業統計

平成19年商業統計 概況 トピックiii「小売業の無店舗販売の状況」,2008年11月 経済産業省編『我が国の商業2009』(平成21年版)

図 6 1 事業所当たり無店舗販売額のグループ分け 050100150200250300 1 2 3 4 5 6 平均+SD平均+SE平 均平均−SE平均−SD100 万 また, 47 都道府県の無店舗販売の 1 事業所当たりの販売額を高い順から並べ, 6 つのグループを作り,その 6 つのグループに一元配置の手法を適用してみる. すると,平成 19 年については図 6 が得られる. 図 6 から明らかなようにテューキーの手法をはじめいくつかの手法において第 1 グループが第 2 グループ以下よりも 1 %

参照

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