高齢者施設入所者のインフルエンザワクチン接種に関する調査
1)名古屋市厚生院,2)名古屋市港保健所,3)名古屋市東市民病院
林 嘉光
1)鈴木 幹三
2)利根川 賢
3)(平成 18 年 7 月 27 日受付)
(平成 19 年 4 月 18 日受理)
Key words : influenza vaccination, elderly people, nursing home resident, questionnaire, dementia
要 旨
特別養護老人ホーム(以下特養)における高齢者施設入所者のインフルエンザワクチン接種の実態と考え 方について調査した.
2002 年 12 月,名古屋市厚生院特養の入所者は 272 人中 195 人(71.7%)は障害老人の日常生活自立度判 定基準の寝たきり,132 人(48.5%)は日常生活に支障をきたすような意思疎通の困難な認知症であった.こ のような入所者において 2002!2003 年シーズンのインフルエンザワクチン接種者は 163 人,59.9% であった.
接種者 163 人と非接種者 109 人を比較すると,非接種者に寝たきりあるいは認知症の多いことが判明した.
特養入所者 272 人中 139 人(51.1%)よりインフルエンザワクチン接種に関するアンケートの回答を得た.
接種を受けた理由としては予防 70.2% が圧倒的に多く,毎年受けている 17.0%,医師の勧め 5.3%,家族の 勧め 3.2% の順であった.予防接種を受けなかった理由としては,理解不能 22.2%,副反応やアレルギー,
注射が痛いが各 17.8% であった.インフルエンザに対する個人的予防や施設内流行防止の立場から接種率 を高めるために入所者に対しては現行制度を最大限に運用し,施設の積極的なワクチン接種の取り組み,入 所者へのワクチン接種の安全性の啓蒙と意思表示能力の低下した入所者への対策が必要と思われた.
〔感染症誌 81:408〜413,2007〕
序 文
厚生労働省および日本医師会による「インフルエン ザ施設内感染予防の手引き」によれば,施設内感染対 策として施設入所者および従業者のインフルエンザワ クチン接種が勧告されている1).当施設では 1996!1997 年シーズンより感染症対策委員会を通じてインフルエ ンザ予防の重要性およびワクチン接種の必要性につい て,入所者・入院患者と職員に対して啓発活動を行っ ている.しかし,施設入所者の中で脳血管障害や認知 症により接種の意思確認ができない場合にはワクチン 接種は見送られていた.
インフルエンザに対する個人的予防,施設内流行防 止の立場と予防接種法の法的規制2)の狭間で,いかに 接種率を高めるかに苦慮している.このような状況を 鑑み,高齢者施設入所者のインフルエンザワクチン接 種の実態と入所者のワクチン接種に関する考え方につ いて調査し,高齢者施設入所者のワクチン接種につい
て検討した.
対象と方法 1.入所者背景
名古屋市厚生院は特別養護老人ホーム(以下特養,
定員 300 人),救護施設(定員 80 人),附属病院(204 床)からなる福祉医療センターである.特養入所者で 2002!2003 年シーズンインフルエンザワクチン接種者 と非接種者について障害老人の日常生活自立度(寝た きり度)(以下 ADL,老健第 102―2 号厚生省大臣官房 老人保健福祉部長通知),認知症高齢者(痴呆性老人)
の日常生活自立度(老健第 135 号 厚生省老人保健福 祉局長通知),老年者の総合機能評価点,改訂長谷川 式簡易知能評価スケール(以下 HDSR),基礎疾患を 診療録より調査した.
なお,老年者の総合機能評価点は,歩行,食事,更 衣,排泄,入浴,階段昇降,電話,薬の服用の 8 項目 について「自立し,自力で可能あるいは自己管理でき る」を最高の 3 点,「全介助あるいは自力では不能」を 最低の 0 点とした.各行為の能力状況を評価して 3 点 から順次 2,1,0 点と採点し,8 項目の点数の和を集 原 著
別刷請求先:(〒465―8610)名古 屋 市 名 東 区 勢 子 坊 2 丁 目 1501 番地
名古屋市厚生院 林 嘉光
Table 1 ADL ofthe nursing home residents Total Unvaccinated
Vaccinated ADL
(n=272) (n=109)
(n=163)
1 0
1 normal
14 4
10 J
62 17
45 A
77 21 (27.3%)
56 (72.7%) Subtotal
89 30
59 B
105 58
48 C
195 88 (45.1%)
107 (54.9%) Subtotal
Table 2 ADL ofthe demented nursing home residents Total Unvaccinated
Vaccinated ADL
(n=272) (n=109)
(n=163)
38 13
25 normal
37 11
26 I
65 18
47 II
140 42 (30.0%)
98 (70.0%) Subtotal
41 11
30 III
85 53
32 IV
6 3
3 M
132 67 (50.8%)
65 (49.2%) Subtotal
計した(満点は 24 点).
2.2002!2003 年シーズンインフルエンザワクチン 接種
特養入所者 272 人に対して 2002!2003 年シーズンイ ンフルエンザワクチン接種は,①本人の同意,②今回 の接種時には本人の意思は確認できないが,本人の入 所時以降のワクチン接種希望と家族の接種同意を確認 して行った.
接種は 2002 年 11 月 22 日から 12 月 5 日の間に医師 が問診と診察を行い,接種可能と判断された入所者に 対して 1 回接種法で行った.
3.インフルエンザワクチン接種に関するアンケー ト
アンケートは 2003 年 1 月 24 日から 1 月 30 日の間 で,特養入所者 272 人の中で面接が可能で同意の得ら れた 139 人(51.1%)に対して行った.面接は看護師 が担当し,無記名の聞き取り法で実施した.調査項目 は,年齢,性別,今シーズンのワクチン接種の有無,
接種・非接種の理由,接種後の副反応の有無,前シー ズンの接種歴の有無,前シーズンのインフルエンザ罹 患の有無,次シーズン接種の意向である.
4.統計学的処理
Mann-Whitney U test を用いた.
5.倫理的配慮
本研究はインフルエンザ予防接種ガイドライン1)に 沿って行い,施設長の了承を得て実施した.施設入所 者に対するアンケート調査は個人が特定できない無記 名の面接聞き取り法で実施した.
成 績
1.施設入所者背景とインフルエンザワクチン接種 入所者 272 人は男性 82 人,女性 190 人,平均年齢 84.7 歳であった.195 人(71.7%)は障害老人の日常 生活自立度判定基準の寝たきり(ランク B,C),132 人(48.5%)は日常生活に支障をきたすような意思疎 通が困難な認知症(ランク III,IV,M)であった(Ta- ble 1,2).
2002!2003 年シーズンのインフルエンザワクチン接 種は 163 人(男性 45 人,女性 118 人,平均年齢 84.9
歳)で接種率 59.9% であった.
接種者 163 人と非接種者 109 人(男性 37 人,女性 72 人,平均年齢 84.4 歳)について,ADL,認知症高 齢者の日常生活自立度,老年者の総合機能評価点,
HDSR,基礎疾患について比較した.
障害老人の日常生活自立度に関しては正常から A ランクの自立している 77 人の入所者の接種者は 56 人
(72.7%),非接種者 21 人(27.3%)と差があり,B,C ランクの 195 人では接種者は 107 人(54.9%),非接 種者 88 人(45.1%)と差が少なかった(Table 1).
接種は①本人の同意,②本人の意思は確認できない が,本人の入所時以降の希望と家族の接種同意で行っ た.接種者 163 人のうち意思確認の可能な正常から II ランクの 98 人は①で,残りの 65 人は概ね②により接 種を行った.非接種者 109 人中意思の確認ができる正 常から II のランクの 42 人は接種を希望せず,III,
IV,M ランクの 67 人は本人や家族からの接種の理解 が得られなかった(Table 2).
意思疎通の困難さがみられるランク III,IV,M の 認知症 132 人では接種者 65 人と非接種者 67 人でほぼ 半々でその差はなかった(Table 2).
HDSR の平均は接種者群 13.1 9.9,非接種者群 7.4 9.9 と両群ともに 20 点以下であった.
意思確認のとれない非接種者と接種者と比べて,総 合機能評価点では有意に低く,基礎疾患を比較すると 心疾患,脳血管疾患,脳梗塞,精神・神経疾患の割合 が多かった(Table 3).
比較的自立し意思表示能力のある入所者であって も,予診表姓名欄の記載において自署と代筆のそれぞ れ 27 人と 136 人で,予診表に自署できない入所者が 83.4% に認められた.
自署できない理由は身体的障害,高次脳機能障害が 多く,施設責任者(主に看護師長)が代筆で対処した.
接種予定日に入所者の状態変化があった場合,後日接 種し,施設責任者が代筆した.
2.アンケートをおこなった施設入所者の実態 アンケートは入所者 272 人中 139 人(51.1%)に行っ
Fig. 1 Reasonsofvaccination (n= 93) Fig. 2 Reasonsofunvaccination (n= 46) Table 3 Evaluation on functionalcapacity and underlying disease
Unvaccinated (n=109) Vaccinated (n=163)
Characteristic
wish notto vaccinate (n=42) unable to agree to vaccinate (n=67)
9.6±6.6 (n=39) 1.6±2.7* (n=66)
8.1±6.6 (n=157) Evaluation on functionalcapacity
n=42 (%) n=67 (%)
n=163 (%) Underlying disease
22 (52.4) 40 (59.7)
109 (66.9) Bone and jointdisease
18 (42.9) 47 (70.2)
96 (58.9) Cardiacdisease
21 (50.0) 29 (43.2)
82 (50.3) Hypertension
22 (52.4) 33 (49.3)
74 (45.4) Cerebralhemorragicdisease**
21 (50.0) 35 (52.2)
69 (42.3) Cerebralinfarction
17 (40.5) 24 (35.8)
48 (29.4) Psycho-neurologicaldisease
5 (11.9) 24 (22.0)
40 (24.5) Chestdisease
*p< 0.001 compared to vaccinated residentsand unvaccinated residentsunable to agree to vaccinate
**cerebralhemorrhage,subarachnoid hemorrhage,etc
た.性別は男性 40 人,女性 97 人,性別無記名 2 人で,
平均年齢は 82.5 歳であった.アンケート回答者 139 人中ワクチン接種者 93 人,非接種者 46 人であった.
1)2002!2003 年シーズンのインフルエンザワクチ ン接種の実態
ワクチン接種を受けた者 93 人の接種の理由として は,予 防 70.2% が 圧 倒 的 に 多 く,毎 年 受 け て い る 17.0%,医師の勧め 5.3%,家族の勧め 3.2% などであっ た(Fig. 1).ワクチン接種後の副反応は 93 人中女性 1 人(1.1%)の接種局所の痒みのみで重篤な全身反応 はなかった.
予防接種を受けなかった理由としては副反応やアレ ルギー,注射が痛いが各 17.8%,罹患しない 13.3%,
有効性に疑問 6.7% であった(Fig. 2).
その他の非接種の理由に理解不能が 46 人中 10 人 22.2%,発熱 2 人,入院中,希望しない,覚えていな い,神経痛のためが各 1 人であった.
アンケートに回答した非接種者 46 人の中で発熱 2 人,神経痛 1 人による体調不良の理由で 3 人が接種で きなかった.
2)2001!2002 年シーズンのインフルエンザ予防接 種の実態およびインフルエンザ罹患状況 前シーズン(2001!2002 年)にインフルエンザワク チンの接種を受けた入所者は 296 人中 127 人(42.9%)
であった(Table 4).
アンケート回答者における接種者は 139 人中 59 人
(42.4%),非接種者は 29 人(20.9%),覚えていない 9.4%,無回答 27.3% であった.
2001!2002 年シーズンにインフルエンザに罹患した アンケート回答者はなかった.
3)2003!2004 年シーズンのインフルエンザ予防接 種の意向
次シーズン(2003!2004 年)のインフルエンザワク チン接種の意向は,接種する 60 人(43.2%),接種し ない 10.8%,わからない 18.7%,無回答 27.3% であっ た.なお,2003!2004 年シーズンの接種率は入所者 284 人中 166 人の 58.5% であった(Table 4).
考 察
高齢者に対するインフルエンザワクチンの有効性は ほぼ確立され,2001 年 11 月に予防接種法の改正によ り,65 歳以上で予防接種を受ける意思が確認された 高齢者に対して,インフルエンザワクチンの法律に 則った接種が行えるようになった.高齢者に対する接 種 率3)は わ が 国 で は 2001 年 度 27.5%,2002 年 度 35.3%,そして 2004 年度には 47.2% と向上し,最終 的に米国並みの 60% を見込んでいる2).
高齢者施設においてはインフルエンザ施設内感染対 策として入所者および職員のワクチン接種が勧告さ れ1),高齢者や虚弱者施設での流行の危険性を減少さ せるには施設入所者のワクチン接種率を高めるこ と4)5),特に Patriarca6)は施設内で 70〜80% の接種率
Table 4 Vaccination rate
personnel inpatient
nursing home resident
51.2%
24.5%
42.9%
2001/2002
52.1%
25.5%
59.9%
2002/2003
61.1%
15.2%
58.5%
2003/2004
76.9%
35.8%
62.1%
2004/2005
80.9%
55.7%
77.1%
2005/2006
を要すると報告している.80% 以上の接種率の高齢 者施設での施設内流行は少なく5),また,本邦では森 ら7)はワクチン接種率が高い施設においてインフルエ ンザ様疾患の流行が抑制されることを報告している.
高齢者においてはワクチンによる免疫応答は劣るが,
集団免疫的役割に加え,特に個々の重症化予防を目的 として接種率を高めることが推奨されている.
当特養では 1994!1995 年シーズン8),1996!1997 年 シーズン9)にインフルエンザの施設内流行を経験して いることから,1996!1997 年シーズンより感染症対策 委員会を通じて文書および口頭により,インフルエン ザ予防の重要性およびインフルエンザワクチン接種の 必要性について,入所者・入院患者と職員に啓発活動 を行っている.
インフルエンザワクチン予防接種ガイドライン1)は
「意思確認が困難な場合は家族又はかかりつけ医の協 力により対象者本人の意思確認をすることとし,接種 希望が確認できた場合に接種を行うことができる.意 思確認ができない場合は,予防法に基づいた接種を行 うことはできない.」とされている.
当施設では 2004!2005 年シーズンまではガイドライ ンに準拠したワクチン接種を実施し,本人の同意ある いは本人の意思は確認できないが,入所時以降の本人 の希望と家族の接種同意を得ている場合に接種を行っ ていた.
その結果,接種率は 2001!2002 年 42.9%,2002!2003 年 59.9% と一時上昇したが,2003!2004 年シーズン 58.5%,2004!2005 年シーズン 62.1% と横ばいであっ た.2002!2003 年シーズンの検討では認知症のない入 所者 140 人においては接種者 98 人(70%),非接種者 42 人(30%)と差がみられ,意思を確認できる入所 者ではワクチン接種の啓発運動の効果が現れているも のと思われた.
意思疎通の困難なランク III,IV,M の入所者 132 人では接種者 65 人(49.2%),非接種者 67 人(50.8%)
とほぼ同数であった.認知症の入所者であっても接種 の同意が得られた理由としては入所者の平均入所期間 が約 5 年であり,職員と入所者あるいはその家族,親 族との相互理解が良好な場合は接種の同意が得られて いる.
基礎疾患を比較すると意思確認のとれない非接種者 は接種者よりも心疾患,脳血管疾患,脳梗塞,精神・
神経疾患の割合が多く,一方,接種者では骨・関節疾 患が多く,ADL が悪い入所者であっても,意思疎通 が取れる割合が非接種者よりも多い結果であった.
アンケートは無記名面接聞き取り法で意思疎通が取 れ,アンケートの同意の得られた入所者に対して看護 師が行った.特養入所中に,入所者と職員の人間関係 もでき,入所者のワクチンに対する忌憚のない意見が 聞けた.
個人の特定はできないが,回答ができた入所者は認 知症高齢者の日常生活自立度は正常かランク I,II が 大部分と思われる.
アンケート回答者 139 人における接種率は 2002!
2003 シーズン 66.9% であったが,回答者の前年度接 種率は 42.4%,次年度接種希望は 43.2% であり,意 思確認が可能な入所者であってもさらに接種率を上げ ることは期待できない.アンケートに回答した 3 人が 体調不良で非接種であった.全非接種者における体調 不良による非接種を調査していないため詳細は不明で あるが,入所中であれば体調回復後に接種するため上 記の 3 人以外は体調不良の理由による非接種はわずか な人数と推測される.
ワクチン効果については 2002!2003 シーズンでは施 設内でのインフルエンザ流行や発症者もなかったた め,ワクチンによる抗体価獲得状況,感染予防効果に ついては検討できなかった.2004!2005 シーズンは入 所者 272 人中ワクチン接種者 169 人(接種率 62.1%)
であったが,2005 年 2 月から 3 月にかけて B 型イン フルエンザ施設内流行があった.23 人のインフルエ ンザ発症があり,そのうちワクチン接種者は 11 人で ワクチン有効率 44%,相対危険 0.56% の結果であっ た.B 型インフルエンザに対して概ね妥当な予防効果 が得られた.
ワクチン副反応の頻度については 2002!2003 シーズ ンは接種者全員の調査がなされていないためアンケー トに回答した接種者 93 人中女性 1 人(1.1%)の局所 の痒みのみであった.当施設での 1997 年から 1999 年 の 3 シーズンに行った調査では全接種者 976 人中副反 応発生者は 173 人(17.7%)であった10).
法定接種としてのワクチン接種は本人の同意が原則 であり,認知症高齢者に対して接種率を上げる事は困 難と思われる.ガイドライン1)にある「意思確認が全 くできないケースにおいて,家族から強く接種を求め られた場合には,予防接種法によらない任意の予防接 種を受けることができる」と記載されていることから,
稲松11)も述べているように家族の了解があれば任意接 種として接種することは倫理上問題ないものと思われ
る.
当施設入所者は超高齢者が多く,医療に受身で概し て予防に消極的な印象を感じており,接種率が上昇し ない要因と思われる.医師は入所者に予防効果や安全 性の啓蒙に努め,施設の介護・医療従事者が特に意思 疎通困難な入所者の家族に,折をみて口頭で接種を勧 める努力をしなければならない.しかし,2005!2006 年シーズンは接種率の頭打ちに危機感を抱き,家族の 理解と協力を得ることが接種率を向上させるための
「インフルエンザは生命にかかわる危険な感染症であ り,予防対策としてワクチン接種を推奨し,接種の希 望を連絡可能なすべての入所者の家族,親族あるいは 身元引受人の方々にお尋ねする旨」の通知文書を郵送 した.その結果,接種率 77.1% と過去最高の接種率 となった.当院では今後も,入所者,入院患者で連絡 の取れる家族がある場合にはワクチン接種希望の有無 を尋ねる通知文書を送ることを決定した.米国におい てはすでに予防接種諮問委員会(The advisory Com- mittee on Immunaization Practices:ACIP)は施設 入所時に入所者本人あるいはその家族に接種の同意を 求めておくことを勧めている12).
当施設には家族との連絡が取れない入所者も少なか らず認められ,今後少子高齢化が進めばワクチン接種 率はさらに低下することが危惧される.
将来必然的に訪れる意思疎通の取れない高齢者の増 加の結果,高齢者施設では予防接種不適格と判定され る入所者が多数生じると思われる.インフルエンザに 対する個人的予防や施設内流行防止の立場から接種率 を高めるために現行制度を最大限に運用し,施設の積 極的なワクチン接種の取り組み,今後は成年後見制度 一般についての知識の普及と法整備がされた上での法 定後見制度の活用を考慮する必要13)がある.
なお,本研究の一部は厚生労働科学研究費補助金(新興・
再感染症研究事業)「インフルエンザ予防接種の EBM に 基づく政策評価に関する研究(主任研究者廣田良夫)」の 研究経費により実施された.
文 献
1)厚生労働省健康局結核感染症課,日本医師会感 染症危機管理対策室:インフルエンザ施設内感 染予防の手引き.平成 18 年 2 月改定.2006;p.
1―9.
2)国立感染症研究所感染症情報センター,厚生労
働省健康局結核感染課,日本医師会感染症危機 管理対策室:インフルエンザ Q&A.平成 13 年 度版 2001.
3)平成 14 年度予防接種法に基づく高齢者のインフ ルエンザワクチン予防接種状況調査報告.厚生 労働省医薬局血液対策課,平成 15 年 4 月 15 日.
4)Gross PA, Rodstein M, LaMontagne JR, Kaslow RA, Saah AJ, Wallenstein S,et al.:Epidemiol- ogy of acute respiratory illness during an influ- enza outbreak in a nursing home. Arch Intern Med 1988;148:559―61.
5)Arden N, Monto AS, Ohmit SE:Vaccine use and the risk of outbreaks in a sample of nursing homes during an influenza epidemic. Am J Pub- lic Health 1995;85:399―401.
6)Patriarca PA, Webewr JA, Parker RA, Orenstin WA, Hall WN, Kendal AP,et al.:Risk factor for outbreaks of influenza in nursing homes―A case control study―. Am J Epidemiol 1986;
124:114―9.
7)森 満,鷲尾昌一,小笹晃太郎,田中 隆,大 浦麻絵:厚生労働科学研究費補助金(新興・再 興感染症研究事業)インフルエンザ予防接種の EBM に基づく政策評価に関する研究,平成 15 年度総括・分担研究報告書 主任研究者,廣田 良夫 2004;11―5.
8)鈴木幹三,鳥居正芳:インフルエンザの院内感 染対策.インフルエンザ 2002;3:119―24.
9)鈴木幹三,鳥居正芳,山本俊信,水野弥一:高 齢者のインフルエンザ対策の実際.カレントテ ラピー 2002;20:1062―7.
10)鈴木幹三,鳥居正芳,山本俊信,水野弥一:高 齢者へのインフルエンザワクチン接種とその効 果―B.高齢者施設における臨床的経験.日胸 2000;59:670―7.
11)有田健一,菅谷憲夫,稲松孝思,水口 雅:イ ンフルエンザウイルス感染症と関連するワクチ ンの臨床.日医雑誌 2006;134:1889―901.
12)CDC. Prevention and Control of Influenza : Rec- ommendations of The Advisory Committee on Immunaization Practices(ACIP). MMWR2004;
53(No. RR-6):20.
13)高橋幸司,渡辺修一郎,新開省二,稲松孝思:
施設入所者の意思表示能力とインフルエンザ予 防接種のあり方について,短期プロジェクト研 究報告書(1999―2001 年度),高齢者におけるイ ンフルエンザおよびその合併症の予防,2002 年 3 月財団法人 東京都老人総合研究所.
Studies of Influenza Vaccination Among Elderly Nursing Home Residents Yoshimitsu HAYASHI1), Kanzo SUZUKI2)& Ken TONEGAWA3)
1)Nagoya-shi, Kouseiin Medical Welfare Center,2)Nagoya City Minato Health Center,
3)Department of Internal Medicine, Nagoya Higashi Municipal Hospital
We conducted a questionnaire survey of influenza vaccination among elderly nursing home residents, and investigated the actual condition and the view of vaccination of elderly people.
There was 272 elderly residents in Nagoya-shi, Kouseiin Medical Welfare Center, they were classified into the bed ridden group ; 195cases(71.7%)according to the independence in activities of daily living,and 132cases(48.5%)were evaluated as the disturbance of community ability group. The number of vaccination in 2002!2003 was 163 residents(59.9%).When the vaccination group(163cases) was compared with the non-vaccination group(109cases),it becomes clear that the later has much bedridden or dementia.
The reply of questionnaire was obtained from 139 cases(51.1%)among 272 residents. As a reason of the residents who received vaccine, a prevention was 70.2%, mostly over whelmingly. The following were 17.0% of a custom of annual vaccination, and the recommendation by doctor and family were 5.3% and 3.2%, respectively. The main reasons for having not received a vaccine was inability of recoganization 22.2%. The afraid of adverse reaction or allergy, the ache of a injection was following 17.8%, respectively. In order to raise the rate of the vaccination in elderly nursing home residents, we should make into considera- tion that the educational campaign of the safety of vaccine and how to develop motivation for vaccination to the elderly with cognitive decline.