有理点の整数論
田口 雄一郎
序. 整数や有理数を係数とする代数方 程式の整数解や有理数解を求める問題は ディオファントス問題
1と呼ばれ、遥か昔か ら整数論の中心的な問題の一つであった。代 数方程式は “図形” を定義する (例えば方程 式 x2 + y
2 − 1 = 0 は円を表す) が、その 解 (x, y) は、幾何的に解釈すれば、この図 形の上の点の座標である。平面や空間の点 P であってその座標が全て整数である点を 整数点 と言い、また、座標が全て有理数で ある点を 有理点 と言う。この言葉を使うと、
ディオファントス問題とは図形の上の整数 点や有理点を求める問題である、と言える。
整数点と有理点とは相互に密接に関係し ている。例えば、方程式
X
2+ Y
2= Z
2(1) の整数解を考えよう。この両辺を Z
2で割 って
x = X
Z , y = Y Z とおくと、
x
2+ y
2= 1 (2) となる。整数 X, Y, Z (但し Z 6= 0) が方程 式 (1) を満たせば有理数 x, y は方程式 (2) を満たす。逆に有理数 x, y が (2) を満たす とき、x = X/Z , y = Y /Z (X, Y, Z は整数) の形に書けば、 X, Y, Z は (1) を満たす。こ の意味で、方程式 (1) の整数解を求める事
1
3 世紀頃アレキサンドリアで活躍した数学者 Dio- phantus に因んでこう呼ばれる。
と方程式 (2) の有理数解を求める事とは同 値である。言い換えれば、空間内の (1) で 表される曲面上の整数点を求める事は平面 内の (2) で表される円上の有理点を求める 事と同値である。
有名な
フェルマーの最終定理.
2n が 3 以上の整数 の時、方程式
X
n+ Y
n= Z
nを満たす整数 X, Y, Z (但し XY Z 6= 0) は 存在しない。
なども次の様に言い換えられる:
定理. n が 3 以上の整数の時、曲線 Fn: x
n+ y
n = 1
上の有理点は自明なもの (即ち x, y のどち らかが 0 であるもの) 以外存在しない。
さて、方程式 (2) の表す円を描く事は容 易であるが、その上の有理点を求める事は それほど自明ではない。まして Fermat の 最終定理となると、フェルマー以来 350 年 を経て、つい 10 年ほど前に (現代数学の粋 を尽くして) やっと証明されたばかりであ る。代数方程式の表す図形の概形を描くに は、或る時には幾何的な考察 ( 「原点からの 距離が 1 である点全体の集合」など) で済 んだり、また或る時には微分法など解析的 な道具が使えたりするが、整数解や有理数 解を求めるにはこれらは使えなかったりあ まり役に立たなかったりする。
3今日は有
2
Pierre de Fermat (1601–1665) が、彼の所持し ていたディオファントスの本 “Arithmetika” の欄外 にこの言明を書き記し、 「その事の驚くべき証明を私 は発見したが、これを記すにはこの余白は狭過ぎる」
と書き遺した。
3
もっともこれは初等的なレヴェルでの話で、整
数論の最前線では幾何的ないし解析的なアイディア
も大活躍するのであるが。
理点を求める上でどのあたりが悩ましいの か、またそれ故に面白いのか、を見てみよ う。さらに、有理点に関する未解決問題に も少し触れたい。
1. 直線. まずは直線
L : ax + by + c = 0
の場合から始める。が、話を簡単にするた め、
L : y = ax + b
と仮定しよう。ここで a, b は有理数とする。
このとき、x が有理数なら y も有理数であ り、逆に (a 6= 0 の時は) y が有理数なら x も有理数である。従って直線 L 上の有理 点は
点 (t, at + b), t は有理数, となる (この結論は a = 0 でも正しい)。
2. 2 次曲線. 次に 2 次曲線の代表として、円 C : x
2+ y
2= 1 (3) 上の有理点を求めよう。 sin θ, cos θ を使って パラメータ表示しよう · · · としても、 「sin θ が有理数となるような θ は?」などと考え 出すと返って問題を難しくする。4 つの有 理点 (±1, 0), (0, ±1) は容易に見つかるの で、これを元手に新しい有理点を作ってい く作戦に出よう。これら 4 点のうちの一つ P(−1, 0) を通り傾きが a の直線
L : y = a(x + 1) (4) を考え、これと円 C との交点を求める。(4) を (3) に代入して
x
2+ a
2(x + 1)
2= 1.
これを解くと
x = −1, 1 − a
21 + a
2となるから、求める交点は
(−1, 0),
µ 1 − a
21 + a
2, 2a
1 + a
2¶
の 2 点。このうち点 P(−1, 0) は初めから分 かっていたわけだが、もう一つの交点が
Q
µ 1 − a
21 + a
2, 2a
1 + a
2¶
(5) である。ここで、もし a が有理数ならば点 Q は明らかに円 C 上の有理点である。しか も有理数 a が動く時、点 Q も円 C 上をぐ るぐる動くから、C 上の有理点は無限にあ る事が分かる。
ここで使った技法は、言わば、円を直線 で切ってその切口を考察する、というもの であるが、一般に或る図形 (やその上の有理 点) を調べるのに直線や平面などで切ってそ の切口を考察する、というのはしばしば有 効な方法である。
ところで C 上の有理点は (5) の形のもの で尽きるだろうか?上の議論を逆に辿って みよう。P は以前の通り点 (−1, 0) として、
Q(s, t) が C 上の P 以外の有理点だとする (従って s 6= −1)。s, t はもちろん方程式
s
2+ t
2= 1 (6) を満たす。P と Q とを通る直線 L を考え ると、その方程式は
y = t
1 + s (x + 1) である。その傾きを a = t
1 + s とおくと、
これは有理数で、t = a(1 + s). これと (6)
とを連立して解くと再び (s, t) =
µ 1 − a
21 + a
2, 2a
1 + a
2¶
となるから、円 C 上の有理点は全てこの形 である事が分かった。
以上をまとめると、対応 a 7→
µ 1 − a
21 + a
2, 2a
1 + a
2¶
により、有理数と C 上の P 以外の有理点 とは一対一に対応する。
では話を少し変えて、円
C
3: x
2+ y
2= 3 (7) 上の有理点はどうだろうか?やはり無限個 あるだろうか?もし一つ有理点が見つかれ ば、上の様に (その点を通り傾きが有理数で ある直線を引いて) 無限個の有理点が見つか るであろう (これは円ばかりでなく一般の 2 次曲線についても言える )。少し考えてみる とどうも様子が先程とは違うので、次の様 に考えてみる。今、円 C
3上の有理点 P(x, y) があったとして、その座標を分数で
P µ X
Z , Y Z
¶
と書く。但し X, Y, Z の最大公約数は 1 で あるとする。すると、 (X/Z )2+ (Y /Z)
2 = 3 より
X
2+ Y
2= 3Z
2. (8) これを満たす整数 X, Y, Z が存在する事に なる。それが存在したとして、等式 (8) の両 辺を 3 で割った余りを考えてみよう。少し 考察すると矛盾が生じている事 (よって (8) の整数解は存在せず、従って円 C
3上の有 理点も存在しない事) が判明するであろう。
この考察を見通しよくするためには「合同 式」を用いるのがよい。これを説明するた めに、少し記号を準備する。
a, b, M を整数 (但し M 6= 0) とす る。a を M で割った余り4と b を M で 割った余りとが等しい時、a と b とは M を法として互いに合同 であると言い、
a ≡ b (mod M )
と書く。これは「a − b が M で割切れる」
と言っても同じ事である。次の公式は容易 に確かめられる:
(i) a
1≡ b
1かつ a2 ≡ b
2 (mod M) ならば a
1± a
2 ≡ b
1± b
2 (mod M ),
a
1a
2≡ b
1b
2(mod M ).
(ii) c が 0 でない整数である時、
ca ≡ cb (mod cM ) ならば a ≡ b (mod M ).
合同式それ自体についても面白い話が沢山 あるのだが (そしてそれは現代の整数論に 於ける重要な道具の一つでもあるのだが)、
今日は深入り出来ない。興味を持たれた方 は是非文献 [8] や [6], [9] などの本を読まれ たい。
さて、(8) に戻る。任意の整数 X は 3 を 法として 0, 1, 2 のいづれか一つと合同で ある。従って、任意の整数 X に対し X2 は 0, 1, 4 のいづれかと合同であるが、1 ≡ 4 (mod 3) だから、結局 0 又は 1 のどちらか と合同である。(8) の右辺は Z が何であれ
3Z
2≡ 0 (mod 3).
一方左辺は
X
2≡ 0 又は 1 (mod 3), Y
2≡ 0 又は 1 (mod 3),
4
但し余りは 0 から |M | − 1 までの間に取る事に
する。
だから、
X
2+ Y
2≡ 0 (mod 3)
となるのは X2 ≡ Y
2 ≡ 0 (mod 3) の時 (即 ち X
2 も Y2 も 3 で割れる時) しかない。
も 3 で割れる時) しかない。
ところがこの時 X も Y も 3 で割切れ (こ こで 3 が素数である事を使った!)、従って (8) より Z2 も 3 で割切れ、さらに Z も 3 で割切れる。これは X, Y, Z の最大公約数 が 1 という仮定に矛盾する。従って方程式 (8) は整数解を持たない事が分かり、結局 円 C3 : x
2+ y
2 = 3 は有理点を一つも持たない 事が分かった。
: x
2+ y
2= 3 は有理点を一つも持たない 事が分かった。
この様に、同じ原点を中心とする円でも、
半径がちょっと違うとその上の有理点の様 子はガラッと変ってしまう。これは整数全 体の集合が “離散的” だからなのであって、
有理点を求める事の難しさの一端はその辺 にもある。
では一般に、円
C
c: x
2+ y
2= c (c は正の有理数)
が有理点を持つかどうかについて、規則性 はあるだろうか?或いは、 c を見ただけで有 理点があるかどうか分かる様な簡単な判定 条件は無いだろうか?もちろん c が或る有 理数の平方、即ち c = r2 (r は有理数) の形 ならば 有理点 (±r, 0), (0, ±r) があるから、
c = 1 の場合と結論は同じである。一般に r を正の有理数とするとき、
円 x2+ y
2 = c が有理点を持つ
⇐⇒ 円 x
2+ y
2= r
2c が有理点を持つ である事が容易に分かるから、c は平方因 子を持たない整数5 としてよい。
5
「平方因子を持たない整数」とは、c = r
2c
0の
例えば c が素数 p である時は答は簡単に 書け、
円 x2+ y
2 = p が有理点を持つ
⇐⇒ p = 2 又は p ≡ 1 (mod 4) である事が知られている。
一般の c = p1· · · p
r (各 p
i は素数) の場 合、
円 x2+ y
2 = c が有理点を持つ
⇐⇒
(
全ての i = 1, ..., r に対し pi = 2 又は p
i ≡ 1 (mod 4) である。(実はこの条件はさらに「方程式 X
2 + Y
2 = p が 整数解 を持つ事」とも同 値である。 ) これについて、詳しい事は文献 の [2] や [4] などを参照されたい。
この節に述べたのと類似の現象は、実は もっと一般の 2 次曲線についても知られて いる。これについても上記の文献を参照さ れたい。
3. 3 次曲線. 次に平面内の 3 次曲線を考え てみよう。3 次曲線とは、一般には
E : ax
3+ bx
2y + cxy
2+ dy
3+ ex
2+ f xy + gy
2+ hx + iy + j = 0
(但し a, b, c, d のうち少なくとも一つは 0 で ない) の形の方程式で定義される曲線6 であ る。が、ここでは例として曲線
E : y
2= x
3− 1 (9)
形にならない整数 (ここで r, c
0は整数で、r = 2,
c
06= 0) の事である。今 c は正だから、これは「相
異なる素数の積」と言うのと同じ事である。
6
これらの中には (例えば xy(1 − x − y) = 0 の様
な) “退化した” 3 次曲線も含まれている。
を考えてみよう。これは有理点 P(1, 0) を持 つ。他に有理点はあるだろうか?円の時に やった様に、点 P を通る直線 L と C との 交点を求める事により他の有理点を得られ るだろうか?L の方程式は
L : y = a(x − 1) (10) と書ける。これと (9) とを連立して
a
2(x − 1)
2= x
3− 1.
x = 1 は勿論この方程式の解だが、今、そ れ以外の解 (P 以外の交点の x 座標) が欲 しいので x 6= 1 として、両辺を x − 1 で割っ て整理すると
x
2+ (1 − a
2)x + 1 + a
2= 0,
∴ x = a2− 1 ± p
(a
2− 3)
2− 12
2 .
よって、これらの x の値を α± とすると、
直線 L と曲線 E とは、a
2= 2 √
3 + 3 の時、
点 P 以外に x 座標が α± である二点で交わ る。ところがこの x 座標の値は必ずしも有 理数ではないし、仮りに有理数だったとし ても、もし a が有理数でなければ今度は y 座標の方が有理数でなくなる。従って円の 時に使ったのと同じ手はここでは使えない。
しかし、もし有理点を予め二つ見つけられ れば、その二点を結ぶ直線 L と E との第 三の交点は有理点になる事が分かる (実はこ の事は、以下に見る様に、一般の 3 次曲線 について言える)。ところが残念ながら曲線 E : y2 = x
3− 1 については P 以外に有理点 を持たない事が知られている。
ここで上に述べた「第三の交点の有理性」
を証明しておこう。3 次曲線 E が方程式 f (x, y) = 0 により定義されているとする。
P
1(x
1, y
1), P
2(x
2, y
2) が E 上の非特異な有
理点ならば、これらを通る直線
7L の方程 式は有理数係数の一次方程式で、今 (簡単の ため) L は y 軸に平行でないと仮定すると y = ax + b (a, b は有理数) の形である。L と E とは一般には P
1, P
2以外の第三の点 P3(x
3, y
3) で交わる。
8 実際、y = ax + b を f (x, y) = 0 に代入すると有理数を係数とす る x の 3 次方程式
9を得る。この方程式は L と E の交点の x 座標 x1, x
2, x
3 を解に持 つから、
c(x − x
1)(x − x
2)(x − x
3) = 0 (c は有理数)
の形に因数分解出来る。仮定より x1, x
2 は 有理数であり、展開した時の係数も有理数 であるから、解と係数の関係より x3 も有理 数、従って E と L との第三の交点 P3 も有 理点である。
も有理 数、従って E と L との第三の交点 P3 も有 理点である。
曲線 E が上下 (又は左右) に対称性を持っ ていると、一つの有理点から簡単にもう一 つ有理点を作れるので、以下では専ら
E : y
2= ax
3+ bx
2+ cx + d (11) の形の 3 次曲線を考えよう。但し a, b, c, d は有理数で、a 6= 0, さらに右辺の 3 次式は 重根を持たない10 と仮定する。この形の E は x 軸に関して対称であり、もし P(x
0, y
0) が E 上の有理点ならば、P0(x
0, −y
0) も E 上の有理点である。この操作も組合せると、
次の様にして次々と有理点を見つけて行け る — E 上に二つの有理点 P1, P
2 があれば、
7
もし P
1= P
2ならば L は P
1に於ける接線と する。
8
P
3が「無限遠点」に行ってしまったり、P
1, P
2のどちらかと一致してしまったりする事もあり得る。
9
正確には「3 次以下の方程式」。3 次の項がどれ も 0 になってしまう事もある。この時 P
3は「無限 遠点」になると解釈される。
10
重根を持つと「特異点」が現れる。
それらを通る直線 L と E との第三の交点 として有理点 P3 が作図出来、さらに x 軸 に関して P3 と対称な点 P03 も E 上の有理 点である。次に P1, P
2, P
3, P
03 のうちの任意 の二点、例えば P2 と P03 とを結ぶ直線を引 いて有理点 P4 及びその対称点 P04 を作図出 来る。今度は P1, P
2, P
3, P
03, P
4, P
04 の中から 任意の二点を結ぶ直線を引いて · · ·
と対称な点 P03 も E 上の有理 点である。次に P1, P
2, P
3, P
03 のうちの任意 の二点、例えば P2 と P03 とを結ぶ直線を引 いて有理点 P4 及びその対称点 P04 を作図出 来る。今度は P1, P
2, P
3, P
03, P
4, P
04 の中から 任意の二点を結ぶ直線を引いて · · ·
, P
2, P
3, P
03のうちの任意 の二点、例えば P2 と P03 とを結ぶ直線を引 いて有理点 P4 及びその対称点 P04 を作図出 来る。今度は P1, P
2, P
3, P
03, P
4, P
04 の中から 任意の二点を結ぶ直線を引いて · · ·
とを結ぶ直線を引 いて有理点 P4 及びその対称点 P04 を作図出 来る。今度は P1, P
2, P
3, P
03, P
4, P
04 の中から 任意の二点を結ぶ直線を引いて · · ·
を作図出 来る。今度は P1, P
2, P
3, P
03, P
4, P
04 の中から 任意の二点を結ぶ直線を引いて · · ·
· · · とやって行けばいくらでも多くの有理 点を見出せそうな気がする。実際そうなる 事もあるが、場合によっては何回かの操作 の後、どの二つの有理点を結んで作図して も得られるのは既出の有理点ばかりで、新 しい有理点は得られない、という事態に陥 る事もある。そうなるともう手詰まりで、新 しい有理点を別途見つけて来なければなら ない。このへんが 3 次曲線の有理点探しを するに当たって悩ましい事の一つである。試 しに次の問題に取り組んでみられたい。
練習問題 1. 3 次曲線
E : y
2= x
3+ 1
は有理点 (−1, 0), (0, ±1) を持つ。これらの 点から出発して、上の作図法により他の有 理点を見出せ。(実はこの曲線上の有理点は 5 個である事が知られている)。
練習問題 2. 3 次曲線
E : y
2= x
3− 2
は有理点 P1(3, 5) を持つ。この点から出発 して、他の有理点 P
n, Q
n を次の手順で作っ てみよ。— x 軸に関して P1 と対称な点を Q1(3, −5) とする。 Q
1 に於ける E の接線と E との交点を P2 とし、x 軸に関して P2 と 対称な点を Q2 とする。 Q1 と Q2 を通る直 線と E との交点を P3 とし、x 軸に関して P3 と対称な点を Q3 とする。 一般に、Q
1
と Qn を通る直線と E との交点を Pn+1 と
と対称な点を Q1(3, −5) とする。 Q
1 に於ける E の接線と E との交点を P2 とし、x 軸に関して P2 と 対称な点を Q2 とする。 Q1 と Q2 を通る直 線と E との交点を P3 とし、x 軸に関して P3 と対称な点を Q3 とする。 一般に、Q
1
と Qn を通る直線と E との交点を Pn+1 と
とし、x 軸に関して P2 と 対称な点を Q2 とする。 Q1 と Q2 を通る直 線と E との交点を P3 とし、x 軸に関して P3 と対称な点を Q3 とする。 一般に、Q
1
と Qn を通る直線と E との交点を Pn+1 と
とする。 Q1 と Q2 を通る直 線と E との交点を P3 とし、x 軸に関して P3 と対称な点を Q3 とする。 一般に、Q
1
と Qn を通る直線と E との交点を Pn+1 と
を通る直 線と E との交点を P3 とし、x 軸に関して P3 と対称な点を Q3 とする。 一般に、Q
1
と Qn を通る直線と E との交点を Pn+1 と
と対称な点を Q3 とする。 一般に、Q
1
と Qn を通る直線と E との交点を Pn+1 と
を通る直線と E との交点を Pn+1 と
し、x 軸に関して Pn+1 と対称な点を Qn+1
とする。 (実はこの曲線上の有理点は 無限
個あり、それらは P1, Q
1, P
2, Q
2, · · · , P
n, Q
n, · · · , で尽きる事が知られている)。
ところで、円の場合は有理点は全く無い か無限個あるかのどちらかで、どちらにな るかは容易に判定出来るのだった。 3 次曲線 の場合はどうだろうか?答を先に言ってし まうと、(ここでは (11) の形の曲線に話を 限るが) 全く無い場合もあり、有限個のみあ る場合もあり、無限個ある場合もある。し かし、このどれになるかが容易に判定出来 る方法は今のところ知られていない。この 一事を取ってみても 3 次曲線が 2 次曲線よ り格段に難しいという事が分かってもらえ ると思う。また、円の場合は全ての有理点 を一つのパラメータを使って表す事が出来 たが、 3 次曲線の場合はそれも出来ない。た だ、次の定理が知られている:
モーデルの定理. (11) の形の 3 次曲線 E が 有理点を持つとする。この時、E 上の有限 個の有理点 P1, · · · , P
n をうまく選ぶと、E 上の他の全ての有理点はこれらを基にして、
先の作図法を繰り返す事により得られる。
(E 上 の 有 理 点 が も と も と 有 限 個 な ら そ れ ら を P
1, · · · , P
nとすればよいのだから、この定理は有 理点が無限個ある時のみ有難味がある。)
この定理は 1922 年頃 L. モーデル
11によ り証明された。この定理は、うまい有理点 P1, · · · , P
n をどうやって見つけたらいいか については何も教えてくれないので不満が 残る
12 が、ともかく有限個のものから出発 して、どの有理点も、有限の手続きに依っ
11
Louis Joel Mordell (1888–1972).
12
例えば円の場合の t 7→ (
1−t1+t22,
1+t2t2) という「手
続き」に比べれば具体性と簡明さに欠ける。
て得られる、という訳なので、一種安心感 を与えてくれる。
3 次曲線上の有理点について、より詳しく は文献 [5] などを参照されたい。
なお、3 次曲線より “本質的に複雑な” 曲 線の場合は、その上の有理点は有限個しか 存在しない事が知られている。これは 1920 年代にモーデルにより予想され、1983 年頃 G. ファルティングス
13により証明された。
4. 有理点の「多さ」. さて、(11) の形の 3 次曲線に戻って、有理点が無限個ある場 合であるが、同じ無限個でも「多さ」に程 度の差があるだろう。この「多さ」をどう やって識別出来るか?と考えた人たちがい た。B. バーチ14 と H.P.F. スウィナートン ダイヤー
15 である。 「多さ」の詳しい説明は 略すが、大雑把に言えば、モーデルの定理 の P
1, · · · , P
nとして、“本質的に” 何個の 有理点が必要か? というその個数の事で、
これを 3 次曲線 E の 階数 (rank) と呼んで いる。因みに
階数 = 0 ⇐⇒ 有理点は有限個 である。階数は、理念的には有理点の多さを 表すよい指標であるが、しかし P1, · · · , P
n
という有理点を求めるのが易しくない上に、
それらが必要最小限に取れたかどうかを判 定するのはさらに難しい。そこで彼らは色々 な素数 p について、方程式 (11) の 「mod p での整数解」の個数 (これなら単に数えれ ば求められる!) に注目した。ここで、整数 係数の方程式 y2 = ax
3 + bx
2 + cx + d が
「mod p で整数解 (X, Y ) を持つ」とは、整 数 X, Y が
Y
2≡ aX
3+ bX
2+cX +d (mod p) (12)
13
Gerd Faltings (1954–).
14
Bryan John Birch (1931–).
15
Sir Henry Peter Francis Swinneton-Dyer (1927–).
を満たす事である。但し mod p の世界では
· · · ≡ −p ≡ 0 ≡ p ≡ · · · ,
· · · ≡ 1 − p ≡ 1 ≡ 1 + p ≡ · · · , などとなっているので、 X, Y は 0 から p− 1 までの範囲の整数に限って考える事にする。
(11) に整数解があればそれは特に有理数解 でもあるから有理点を与える。一方それは mod p での解も与える。有理点は必ずしも 整数点ではないし、mod p での解が本当の 整数解を与えるとも限らないが、それでも
「多くの素数 p について mod p で 解を沢山持てば有理数解も多い」
という傾向があるのではないか? と彼らは 考えた。具体的には、各素数 p に対し方程 式 (11) の mod p での解の個数を Np と書 き、積
Y
p:素数
N
pp (13)
を考える。Mod p での解の個数 Np が p に 比べて相対的にどれだけ多いか (Np/p) を、
/p) を、
p に渡ってかけ合せるのである。16 「p に 渡ってかけ合せる」と言っても、一気に全 部かけ合せる事は出来ない。そこで途中ま での積
f(x) = Y
p5x
N
pp (14)
を考え、函数 f (x) の x → ∞ の時の振舞 いを考察する。N
p/p が小さい様な p が 多ければ f (x) は 0 に収束するだろうし、
16
差 N
p− p を考えたり和 P
p
を取ったりしても
よさそうだが、それ以前の研究の蓄積からして、上
の積を考えるのがスジがいい事が分かっていたので
ある。
N
p/p が大きい様な p が多ければ f (x) は
∞ に発散するだろう。バーチとスウィナー トンダイヤーは、E の有理点が多ければ 多いほどその増大度は大きいだろうと考 え、計算機を使って多くの計算を行ってみ た。そして、或る予想を立てた (文献 [1])。
実際にはこの予想は別の函数 (ゼータ函数 又は L 函数と呼ばれる) を使って定式化 されるのであるが、階数 1 の場合以外に は、殆ど証明されていない。この予想は バーチ & スウィナートンダイヤー予想 と 呼ばれ、クレイ数学研究所
17が選んだ有 名な (懸賞付きの) “Millennium Problems”
の一つである。
5. Mod p での解の個数の規則性. 視点
を変えて、N
2, N
3, N
5, ... という数列自体に ついて、何か規則性は無いか探してみよう (N
pは方程式 (11) の mod p での解の個数 であった)。最初の例
E : y2 = x
3− 1 (15) の場合にこの数列 {N
p} を計算してみよう。
実は色々な理由から Np よりも
ap = p − N
p (16) なる数列に注目する方がスジがいい事が分 かっているので、こちらを計算する。例え ば p = 5 の時、両辺の値 (mod 5) を調べて みると、x = 0, 1, 2, 3, 4 に対し
x
3− 1 = −1, 0, 7, 26, 63
≡ 4, 0, 2, 1, 3 (mod 5).
一方、y = 0, 1, 2, 3, 4 に対し y2 = 0, 1, 4, 9, 16
≡ 0, 1, 4, 4, 1 (mod 5).
17
Clay Mathematics Institute http://www.claymath.org/
これを表にしてみると、
x 0 1 2 3 4
右辺 (mod 5) 4 0 2 1 3
y 0 1 2 3 4
左辺 (mod 5) 0 1 4 4 1 これより方程式 (15) の mod 5 での解は
(0, 2), (0, 3), (1, 0), (3, 1), (3, 4) の 5 つ。従って a
5= 5 − N
5= 0 である。
他の素数 p についても ap を計算して、こ れを表にしてみると、
p 2 3 5 7 11 13 17 19 a
p0 0 0 4 0 2 0 −8 23 29 31 37 41 43 47 53
0 0 4 0 0 −8 0 0
59 61 67 71 73 79 83 89
0 14 16 0 −10 4 0 0
何らかの規則性
18が見えるだろうか?いつ ap = 0 になるか、予言出来るだろうか?
では今度は曲線
E : y2 = x
3+ x + 2
について同じ事をやってみたらどうだろう か?計算結果だけ示すと、
p 2 3 5 7 11 13 17 19 a
p0 0 2 −1 −4 2 −6 8 23 29 31 37 41 43 47 53
0 6 8 −2 2 −4 −8 6
18
全部偶数、とか、定性的な事ではなく、ピタッ
と値を予言出来る様な規則性。
59 61 67 71 73 79 83 89 0 −6 −4 −8 10 16 8 −6 となる。今度は、これだけ見て何らかの規 則性が見えると言う人はよっぽど奇特な人 だと思う。しかし、この曲線の場合でも、そ して (11) の形の 3 次曲線ならどんなもので も、数列 a
2, a
3, a
5, ... には或る意味で規則性 がある筈だ、と予想した人たちがいた。 「規 則性」にも色々な定式化がある。その最初の 形は恐らく H. ハッセ19 による予想だろう。
さらに「その規則性はもっと美しい筈だ」と いう予想を提出したのが谷山豊 (1927–1958) だった (文献 [7], p. 174 の問題 12)。1955 年 頃の事である。この予想は志村五郎 (1930–) により精密化され、 「谷山志村予想」と呼ば れていた。この予想に依ると、数列 {ap} の
「規則性」は、「或る素性の良い函数
20f (x) が存在して
a
p= f
(p)(0) p!
が成り立つ」
21と表現される (ここで f(p)(x) は f(x) を p 回微分したもの)。1995 年、A.
ワイルス
22はこの予想を部分的に証明し、そ の結果としてフェルマーの最終定理を証明 したのだった。その後、ワイルスの方法を発 展させた C. Breuil, B. Conrad, F. Diamond, R. Taylor の四人の共著論文により、谷山志 村予想は今や完全に証明されている。谷山
19
Helmut Hasse (1898–1979).
20
y
2= ax
3+ bx
2+ cx + d などという代数方程式 とは全く異なる起源を持つ函数。
21
これを以って「数列 a
pの規則性」と呼ぶのは どうかと思われる向きもあるかもしれないが、例え ば a, a
2, a
3, ... という等比数列 {a
n} (これは規則的 でしょう!) は、函数 f (x) = 1/(1 − ax) から a
n= f
(n)(0)/n! として得られる事を思えば、それほど理 不尽ではあるまい。
22