2008 年度 修士論文
任意標数における Veronese variety の higher secant variety の定義方程式について
基幹理工学研究科 数学応用数理専攻 修士課程
2年
5107A007-1 伊藤 達哉
指導教員名 楫 元
提出日2009年2月4日
Contents
1 Introduction 2
2 Definition and notation 3
2.1 Definition . . . . 3 2.2 Notation . . . . 3
3 Preliminaries 4
3.1 Veronese variety . . . . 4 3.2 Remarks on characteristic two . . . . 5 3.3 Key lemma . . . . 8
4 Main theorem 12
4.1 Secant variety . . . . 13 4.2 Higher secant variety . . . . 16
5 Application 19
5.1 Singularの計算プログラム . . . . 21 5.2 Singularによる計算結果 . . . . 22
6 Conjectures 23
Abstract
本論文は,任意標数の代数閉体上でVeronese varietyのn-secant varietyが,ある対称行列の(n+2)×(n+2) 小行列式全体の零点集合になることを示したものである. これはchar(k)̸= 2の場合では知られている結果で あり,新しい結果はchar(k) = 2に対してである. 但し,証明は任意標数で与えている.
1 Introduction
本論文の扱うVeronese varietyV2mとは, Pmの2-uple embeddingの像のことである. smooth projective varietyXに対してn-secant variety Secn(X)とは,Xのn+ 1点で張られる線形部分空間のすべての和集合 のZariski閉包をとったvarietyのことである. 特にn= 1の時は, secant varietyといいSec(X)と書く. Secant varietyの一つの応用として, smooth projective varietyX ⊂PN における一般の点P ∈PN\X からの射影πP を考える. このときXとπP(X)が同型となるのは,点PがSec(X)に含まれていないことが 必要十分であるということが良く知られている. したがって, Sec(X)の定義イデアルが分かれば, 同型を与え る射影の点を具体的に与えることができる.
一般のsmooth projective variety に対して, secant varietyの定義イデアルの具体的な記述は知られて いないが, いくつかのvarietyに関してはその定義イデアルが知られている. char(k) = 0 をみたす基礎 体k上のVeronese variety V2m もそのひとつであり, I(Sec(V2m))は斉次座標に対応するある対称行列Ω のすべての3×3 小行列式で生成されるイデアルとなることが知られている. これを零点集合で書けば, Sec(V2m) =V(I3(Ω))である. char(k)>0のV2mに対してもSec(V2m) =V(I3(Ω))が得られることが期待 される. 実際 R. Gattazzo [2]には, char(k)̸= 2に対してもSec(V2m) =V(I3(Ω))が成り立つことが示され ている. さらに[2]は, char(k) = 2の時Sec(V2m) =V(I3(Ω))が成り立たないとして反例も挙げてある. しか し,実際この例はsecant lineにのらないが, tangent lineにのることが分かり,反例にはなっていないことが 分かる(この考察に関しては, 4.2参照). そこでtangent lineまで含めて議論すれば, char(k) = 2の時に関し てもSec(V2m) =V(I3(Ω))が成りたつのではないかと考えた. 本論文の主結果は以下の通り:
Main Theorem. char(k)≥0,V2m⊂PN:=(m+22 )−1
をVeronese varietyとする. この時,n≥0に対して, Secn(V2m) =V(In+2(Ω))
が成り立つ. 但し,ΩはPN の斉次座標に対応する対称行列で,PN の斉次座標を, Z = (Z00:Z01:Z02:· · ·:Zij :· · ·:Zm−1m:Zmm)∈PN (0≤i≤j≤m), と書いたとき,
Ω(Z) :=
Z00 Z01 Z02 · · · Z0m
Z10 Z11 Z12 · · · Z1m
Z20 Z21 Z22 · · · Z2m
... ... ... . .. ... Zm0 Zm1 Zm2 · · · Zmm
(但し, Zji=Zij)
と表す. またIt(Ω)はΩのすべてのt×t小行列式で生成されるイデアル.
主定理のsecant varietyに関する新しい結果は, char(k) = 2の時のみであるが,証明は任意標数で与えてい るところがポイントである. また主定理はsecant varietyだけでなく higher secant varietyに関しても小行 列式で定義イデアルを記述できることを言及している.
実はchar(k)̸= 2の時, Sec(V2m)と閉包を取る前の集合Sec◦(V2m)が一致していることが, [2]の証明を見 ればわかる(Remark 3.4). しかし, char(k) = 2の時ではこれらは一致していない. このchar(k) = 2特有の 現象がこの定理を示す上での問題となっている. 定理の証明では, Ωの対角成分に注目し, secant varietyと
tangent varietyの双方を見ることで任意標数における証明を与えることができた. また主定理の応用として,
char(k) = 2において1次元の場合に成り立つrankと次数付きBetti数の関係が,高次元で成り立たない例を
与えた. 最後に主定理の次数に関する予想を書いた.
2 Definition and notation
2.1 Definition
基礎体kは代数閉体とし,特に断らない限りchar(k)≥0とする. Definition 2.1 (Veronese variety). ν2:Pm−→PN:=(m+22 )−1
; (x0:x1:· · ·:xm)7−→(x20:x0x1:x0x2:
· · ·:x2m)と書くとき,その像V2m:=ν2(Pm)と書き,Veronese varietyという.
Definition 2.2 (Higher secant variety). X ⊆PN をsmooth projective varietyとする. X のn-secant varietySecn(X)とは,Xのn+ 1点で張られ線形部分空間の和集合Secn(X)◦のPN におけるZariski閉包 である.すなわち,
Secn(X) := Secn(X)◦⊆PN, Secn(X)◦:= ∪
x0, ... ,xn∈X
⟨x0, . . . , xn⟩.
但し,⟨x0, . . . , xn⟩はx0, . . . , xnで張られる線形部分空間. 特にn= 1の時は Sec(X) := Sec1(X)と書き, Xのsecant varietyという.
X, Y ⊆PN をsmooth projective varietyとする. この時,
Sec(X, Y)◦:={z∈PN | z∈ ⟨x, y⟩, x∈X, y∈Y, x̸=y} と定義する. 特にX =Y の時Sec(X) = Sec(X, X)◦⊆PN である.
Definition 2.3(Tangent variety). X ⊆PNをsmooth projective varietyとする. Xのtangent variety とは,
Tan(X) := ∪
P∈X
TPX.
但し,TPX はP ∈XにおけるX のprojective tangent space.
2.2 Notation
Notation 2.4. V2m⊂PN=(m+22 )−1を考える上で,斉次座標
Z = (Z00:Z01:Z02:· · ·:Zij :· · ·:Zm−1m:Zmm) (0≤i≤j≤m)
とおいて,
Ω(Z) :=
Z00 Z01 Z02 · · · Z0m
Z10 Z11 Z12 · · · Z1m
Z20 Z21 Z22 · · · Z2m
... ... ... . .. ... Zm0 Zm1 Zm2 · · · Zmm
(但し, Zji=Zij)
と表すことで,PN の斉次座標を(m+ 1)×(m+ 1)対称行列で書くことができる. 以下,Ωはこの斉次座標に 対応する行列を表し,PN の任意の点もこれに基づいて行列表示を適宜考えることにする.
Notation 2.5. Rを単位的可換環,Rを成分として持つ行列Aに対して,
It(A) :=⟨Aのt×t小行列全体⟩ (R上で生成されるイデアル)
と書くことにする. また V(It(Ω)) :={Z = (Z00:· · ·:Zmm)∈PN | Ω(Z)のすべてのt×t小行列式が0} である.
3 Preliminaries
3.1 Veronese variety
Proposition 3.1. char(k)≥0に対して,
V2m=V(I2(Ω)).
これは良く知られているが,適当な参考文献が無いので証明を与える.
Proof. (⊆)R∈V2mとすると, ある(x0:x1 :· · ·:xm)∈Pmが存在して, ν2(x0:x1:· · ·:xm) =R∈PN とかける. なので, Rに対応する行列は,
R=
x20 x0x1 x0x2 · · · x0xm x1x0 x21 x1x2 · · · x1xm x2x0 x2x1 x22 · · · x2xm
... ... ... . .. ... xmx0 xmx1 xmx2 · · · x2m
となる. この行列の任意の2×2小行列式は,
¯¯¯¯ xi1xj1 xi1xj2
xi2xj1 xi2xj2
¯¯¯¯=xi1xj1xi2xj2−xi1xj2xi2xj1 = 0 (0≤i1, i2, j1, j2≤m) よって,
R∈V(I2(Ω)).
(⊇) 任意のR = (rij)∈V(I2(Ω))に対して, もし 任意のiに対してrii = 0とすると,対称性よりrij =rji
にであることに注意すれば, 0 =¯¯
¯¯ rii rij
rji rjj
¯¯¯¯=rij2 (0≤i < j≤m)
なので,rij = 0となりR∈PN に反する. よってあるiが存在してrii ̸= 0. 対称性より,r00̸= 0と仮定して も一般性を失わない.
0 =¯¯
¯¯ r00 r0j
ri0 rij
¯¯¯¯=r00rij−r0ir0j (0≤i < j≤m)
である. そこで(r00:r01:· · ·:r0m)∈Pmとおくと,
ν2((r00:r01:· · ·:r0m)) = (r0ir0j){0≤i≤j≤m}= (r00rij){0≤i≤j≤m}=R∈PN. よって,
R∈V2m.
Proposition 3.2. Sec(V2m) = Tan(V2m).
proof. F. L. Zak [11]など.
3.2 Remarks on characteristic two
Proposition 3.3 (R. Gattazzo(1984) [2]).
(i) char(k)≥0に対して,
Sec(V2m)⊆V(I3(Ω)).
(ii) char(k)̸= 2に対して,
Sec(V2m) =V(I3(Ω)).
Proof. (i)Claim[Sec(V2m)◦⊆V(I3(Ω)).]
これが示されれば, 両辺の閉包をとることで (i)が従う. よって Claim を示す. 任意の R = (rij) ∈ Sec(V2m)◦ ⊂ PN に対して, 2点を結ぶline上の点なので, あるA = (aij), B = (bij) ∈V2mが存在して, R=αA+βB (α, β∈k×)とかける. 各成分をみると,
rij =αaij+βbij となっている. Rの3×3の小行列式を見ると,
¯¯¯¯
¯¯
ri1j1 ri1j2 ri1j3
ri2j1 ri2j2 ri2j3
ri3j1 ri3j2 ri3j3
¯¯¯¯
¯¯=
¯¯¯¯
¯¯
αai1j1+βbi1j1 αai1j2+βbi1j2 αai1j3+βbi1j3
αai2j1+βbi2j1 αai2j2+βbi2j2 αai2j3+βbi2j3
αai3j1+βbi3j1 αai3j2+βbi3j2 αai3j3+βbi3j3
¯¯¯¯
¯¯
=α3
¯¯¯¯
¯¯
ai1j1 ai1j2 ai1j3
ai2j1 ai2j2 ai2j3
ai3j1 ai3j2 ai3j3
¯¯¯¯
¯¯+β3
¯¯¯¯
¯¯
bi1j1 bi1j2 bi1j3
bi2j1 bi2j2 bi2j3
bi3j1 bi3j2 bi3j3
¯¯¯¯
¯¯
+α2β
¯¯
¯¯¯¯
ai1j1 ai1j2 bi1j3 ai2j1 ai2j2 bi2j3 ai3j1 ai3j2 bi3j3
¯¯¯¯
¯¯+
¯¯¯¯
¯¯
ai1j1 bi1j2 ai1j3 ai2j1 bi2j2 ai2j3 ai3j1 bi3j2 ai3j3
¯¯¯¯
¯¯+
¯¯¯¯
¯¯
bi1j1 ai1j2 ai1j3 bi2j1 ai2j2 ai2j3 bi3j1 ai3j2 ai3j3
¯¯¯¯
¯¯
+αβ2
¯¯
¯¯¯¯
bi1j1 bi1j2 ai1j3 bi2j1 bi2j2 ai2j3 bi3j1 bi3j2 ai3j3
¯¯¯¯
¯¯+
¯¯¯¯
¯¯
bi1j1 ai1j2 bi1j3 bi2j1 ai2j2 bi2j3 bi3j1 ai3j2 bi3j3
¯¯¯¯
¯¯+
¯¯¯¯
¯¯
ai1j1 bi1j2 bi1j3 ai2j1 bi2j2 bi2j3 ai3j1 bi3j2 bi3j3
¯¯¯¯
¯¯
.
分解したすべての行列式には少なくとも2 つのA, B の列ベクトルを含むことに注意する. 一方 A, B ∈ V2m=V(I2(Ω))であったので,A, Bの2×2小行列式は0である. よってRの3×3の小行列式は0. すな わち,R∈V(I3(Ω)).
(ii)Claim[char(k)̸= 0の時, Sec(V2m)◦⊇V(I3(Ω)).]
proof. 任意のR= (rij)∈V(I3(Ω))に対して,Rのrankは1または2であり, Rは対称行列なので直行行 列を用いた対角化を考える.
(a) rank(R)=1の時,明らかに,R∈V(I2(Ω)) =V2m⊂Sec(V2m)◦. (b) rank(R)=2の時, ある可逆な直行行列P∈GLk(m+ 1)が存在して,
P RtP =
a 0 0
0 b 0
0 0 0
(a, b∈k×)
とかける. よって,
A+B:=P−1
a 0 0
0 0 0
0 0 0
tP−1+P−1
0 0 0 0 b 0 0 0 0
tP−1=R
とおけば,A, Bはrank 1の対称行列なのでA, B ∈V(I2(Ω)) =V2mとなり,R∈Sec(V2m)◦. Remark 3.4. 上の証明より,char(k)̸= 2であれば特に
Sec(V2m)◦=V(I3(Ω)).
またより一般に,char(k)̸= 2に対して,
Secn(V2m)◦=V(In+2(Ω)) (n≥1)
が成り立つ. (⊆)については,Lemma 4.2,逆もProposition 3.3の証明を拡張するだけである. Remark 3.5.
R. Gattazzo(1984) [2, p. 225]には,以下のような注意が書いてある.
NOTE 2もし標数が2の時,(ii)は成り立たない. m= 2でその反例があり, R:= (0 : 1 : 0 : 0 : 0 : 0) =
0 1 0
1 0 0
0 0 0
∈V(I3(Ω))\Sec(V22)
となっている.
しかし,実際にはこれは誤りであり,Rはtangent lineに載り,R∈Sec(V22)である. Proposition 3.6. R= (0 : 1 : 0 : 0 : 0 : 0)∈P5に対して,
(i) char(k) = 2の時,R∈/ Sec(V22, V22)◦. (ii) char(k)̸= 2の時,R∈Sec(V22, V22)◦.
(iii) char(k) = 2の時,R∈T(1:0:0:0:0:0)V22 (V22の(1 : 0 : 0 : 0 : 0 : 0)におけるtangent space).
Proof. (i) 背理法で示す. もし, あるP := (x0 : x1 : x2), Q := (y0 : y1 : y1) ∈ P2が存在して R ∈