看護系大学生のキャリア支援に関する研究 ― 自分 の確立と就業動機の関連から―
著者 笠松 由利, 土谷 僚太郎, 今村 恭子, 山本 純子, 川上 友美
雑誌名 大手前大学論集
巻 19
ページ 095‑107
発行年 2019‑08‑31
URL http://id.nii.ac.jp/1160/00001975/
看護系大学生のキャリア支援に関する研究
― 自分の確立と就業動機の関連から ―
笠松 由利 1) ,土谷僚太郎 1) ,
今村 恭子 2) ,山本 純子 3) ,川上 友美 4)
要 旨 目的
A看護系大学の女子学生⚑~⚓年生を対象に自分の確立と就業動機の関連を明らか にし、キャリア教育支援の示唆を得ることを目的とした。
研究方法
対象はA大学の女子看護学生⚑~⚓年生である。調査は下山(1988)の自分の確立 の尺度と安達(1989)の就業動機の尺度を使用した。調査票は無記名自記式調査を 行った。各項目の内的整合性、信頼性を検討後、学年別比較は一元配置分散分析、関 連には多重比較を行った。なお、本研究はA大学の倫理審査委員会の承認を得て実施 した。
結果
対象者は198名、回収率73.9%であった。自分の確立と就業動機の関連では、自分 の確立の確実性と就業動機の各志向に、関連があった。特に探索志向とは強い関連が みられた。また統制性と看護職への探索志向に関連があった。自分の確立の受容性と 挑戦志向では、弱い負の関連がみられた。
学年別では、自分の確立について、⚑年生は⚓年生より確実性が高く、⚑、⚒年生 は⚓年生より親密性が高かった。就業動機においては、⚑年生が⚓年生より探索志向 が高かった。
1) 大手前大学総合文化学部 2) 山陽学園大学看護学部
3) 人間環境大学看護学部看護学研究科 4) 藤田医科大学
大手前大学論集 第19号(2018)pp. 95-107
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⚒ 校
結論
看護系大学生の自分の確立と就業動機には、関連があった。特に自分の確立の「確 実性」は就業動機の「探索志向」と強い関連があり、基礎看護教育での自分の確立が 職業決定に影響を与えていることが推察された。キャリア教育支援として、自己のあり 方や経験の意味づけ、課題達成などの支援とともに心理的アプローチが求められる。
キーワード:看護大学生、キャリア支援、就業動機、自分の確立
Ⅰ.緒言
近年、医療の高度化・複雑化・専門分化に伴い、高度医療技術を支える専門的人材 育成や超高齢社会における在宅終末期・緩和ケアなどを支える多様な人材育成が求め られている。このような社会動向において看護の教育現場では基礎看護教育のカリ キュラム改正が進められているところである。
わが国の看護系大学における基礎看護教育は、1992年に「看護師等の人材確保の促 進に関する法律」により、看護系大学が平成⚓年の11校から平成30年では277校となっ ている1)(日本看護系協議会、2018)。このような状況下において看護大学生の生活 体験を通して獲得する生活技術及び対人関係能力などの基礎学習能力の低下2)が指摘 されている。また、看護大学生たちは、大学への進路について、自己選択ではなく親 や身近にいる家族の勧めによる進学選択の増加傾向3)が指摘され、むしろ職業決定に 関する問題について、石田(2010)は、自己のあり方や親からの独立といった思春期 的問題及び学生が抱える心理的問題4)と関係していると述べている。
一方、安達(2001)は、仕事への興味や関心は、内発される自己向上的な動機志向 が進路発達の過程において重要な役割を果たし、その仕事内容に関連した動機に焦点 をあてた教育指導による働きかけが進路発達に有効な方策と述べている5)。看護大学 生の入学後の関心事については、⚑年生では学業以外にアルバイトやサークル活動、
⚒年生になると専門基礎教育プログラムに非常に批判的になり、学修への自己責任が 低くなる傾向にあると指摘されている6,7)。また、⚓年生は専門基礎科目の演習授業 に余裕を持って学修することが困難になり、⚔年生は実習体験によって自己統制力、
必要な学修力の達成のプロセスを踏む8)と言われている。このように学生たちは⚔年 間で日常生活や実習体験のプロセスと専門職としてのカリキュラムを通して、就業に 対する認識を深めていく。
さらに青年期は、自己同一性獲得の最も重要な時期9)であり、自分の確立が就業動 機に影響を与えている可能性が考えられる。これまでの先行研究では、看護系の専門
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学校生及び短期大学生を中心とした職業意識、アイデンティティの課題2,10,11)、アイ デンティティの推移と自己効力感及び職業モデル12)などが数多く報告されている。そ の他、専門職化に関する自己同一性獲得と就業選択に関連した研究報告13)などもあ る。しかし、これらの報告は看護大学生を対象としておらず、学年別に検討されてい ない。また看護学生の自分の確立と就業動機の関連についての研究は見当たらない。
そこで、本研究では、就職先がほぼ決定し、卒業を控える⚔年生を除く、青年期の 発達過程にある看護大学生の⚑~⚓年生に焦点をあて、自分の確立と就業動機の関連 を明らかにする。この関連が明らかになることで、自分の確立という青年期の発達過 程を見据えた進路選択への教員の具体的な介入の示唆を得ることができると考える。
Ⅱ.用語の定義
自分の確立とは、下山(1986)は「日本語の自我をあらわす一人称代名詞の中でも ただ一つ普通名詞のように一般的に使われているのは自分という言葉である」ことを 受け、自分という語を構成概念として尺度で構成し、あえてアイデンティティや自我 同一性でなく、自我の状態を「自分」と定義している15)。本研究においても自我同一 性ではなく、自分の確立として下山と同様に定義する。
就業動機について安達(1998)は、課題そのものへの内発的興味による動機、周囲 からの承認を得るために他者を凌ごうとする動機、課題の遂行を通じた対人的接触を 志向する動機、そして将来的な利益を念頭において努力する動機の⚔つの側面から捉 えている14)。本研究においても就業動機を安達と同様に定義する。
Ⅲ.研究方法
⚑.対象の選定
対象は、A大学の看護大学生(女子学生)⚑~⚓年生の269名である。
⚒.研究デザイン
無記名自記式質問紙による横断的研究
⚓.調査項目の選定
調査票の基本属性は、学年、年齢について回答を求めた。また祖父母の同居が就業 動機に影響する報告があることから家族形態の項目を加えた14)。
調査項目の選定は、下山(1986)15) の自分の確立の尺度と安達(1998)16) の就業動
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機尺度とした。本研究では、キャリア形成に必要な構成要素を抽出すること、思考的側 面、自己同一性の確立を考慮した看護大学生の職業観の要因からキャリア教育プログ ラムの構成を考えている。そのため思考的側面を測る尺度として上記の尺度が適切と判 断した。各尺度は信頼性・妥当性が確立されており、尺度使用の了解を得て実施した。
下山(1986)は、自分の確立の尺度をエリクソンの発達段階に関連させ、内容的観 点から自己存在、自己受容、行動の流動性、主体的な生き方、自己の統制力、対人的 親密性としてこれらの⚖つをカテゴリーとして作成している。そのカテゴリーの「確 実性」11項目は自分と自分を取り巻く世界に関する現実感・信頼感を扱い、「能動性」
⚗項目は、自分を自立的にコントロールしながら、世界に積極的に関わっていく能力 を扱っている。また、「受容性」⚘項目は自分の適格性・有能感を扱い、「統制性」⚕
項目は、同一性の達成に必要な自我の統合力に関連している。「主体性」⚔項目では、
同一性の心理的社会的側面である社会への主体的関わりと「親密性」⚕項目は対人的 親しさの能力を扱い、親密性及び孤立性に対応し、40項目で構成している。評価尺度 は、「あてはまる」(⚑点)、「どちらかといえばあてはまる」(⚒点)、「どちらかとい えばあてはまらない」(⚓点)、「あてはまらない」(⚔点)の⚔段階評価法とし、各カ テゴリーの合計点数が高いほど、自分の確立が高いことを示す。
安達(1998)の就業動機の尺度は、未就職者が未来の仕事状況に関連して持ってい る動機、または、将来携わる職業的場面を想定した動機と定義し、未就職者の就業に 関連した動機に焦点をあてて就業動機尺度を作成している。この定義により、業務に 就く動機を働く意義や働く動機といったことと特別に設定し、大学生を対象に調査を 行っている。カテゴリーの「探索志向」11項目は将来携わる仕事に関する情報を収集 するなど職業に対する積極的姿勢、「挑戦志向」⚕項目は、困難な作業に挑戦して仕 事によって自己成長しようとする傾向、「対人志向」⚘項目は、仕事を通じた人との 接触を志向する傾向、「上位志向」⚙項目は、社会的地位や名声を得ようとする傾向 で下位尺度を見出し、38項目で構成している。そのため、これから看護職に就職する であろうと思う看護大学生に使用できると考えた。評価尺度は「非常に当てはまる」
(⚕点)「少し当てはまる」(⚔点)「どちらでもない」(⚓点)「あまりあてはまらない」
(⚒点)「まったくあてはまらない」(⚑点)の⚕段階評価法とした。各カテゴリーの 合計点数が高いほど、就業動機の認識が高いと判断する。
⚔.分析方法
就業動機と自分の確立の尺度で得られたデータについて、基本属性は平均値、標準 偏差値を集計した。また既存の尺度は一般の大学生を対象とされているため、本研究 においても尺度間の内的整合性の検討を因子分析にて行い、信頼性はクロンバックの
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α
係数、因子間の相関は Pearson 相関係数にて検討した。また自分の確立尺度と就業 動機尺度の関連については、Pearson の相関係数を用いて確認した。さらに、属性の 学年と自分の確立尺度、就業動機尺度との関連について、分散分析と Tukey の多重 比較を行った。同居の有無と⚒つの尺度との関連は、χ
2検定を行った。なお、統計解析には SPSS 23 for Windows を用いた。
⚕.倫理的配慮
本研究はA大学の倫理審査委員会の承認を得て調査を実施した(承認番号:21002)。
調査は大学の責任者へ調査協力を口頭と文書にて説明を行い、承諾を得た。また、
対象者には、授業終了後に研究者から研究の趣旨、目的、匿名性の確保、プライバシー の保護、研究への自由な参加と途中辞退及び中断の保証とそのことによる不利益が生 じないことを書面と口頭で説明し、同意を得るとともに研究の公表について承諾を得 た。回収したデータ管理は、研究者以外は調査票を持ち出さないようにし、鍵のかか る保管庫に保管し、データ入力はインターネット通信を接続していないパソコンを使 用する旨を伝えた。なお、記載した調査票は、個々に封筒をわたし、記載後、封筒に 入れ封をし、回収箱への投入によって最終同意とした。
Ⅲ.結果
⚑.対象者の属性
本研究の対象者は、269名であった。そのうち、同意を得た学生は、⚑年生92名中 77名(83.69%)、⚒年生104名中59名(56.73%)、⚓年生72名中62名(86.11%)、回 答数198名(回答率73.9%)であった。⚑~⚓年生の平均年齢は、19.84 SD ±2.4、
⚑年生の平均年齢は19.36±3.7、⚒年生の平均年齢は19.78±0.9、⚓年生では20.54
±0.5であった。⚒世帯同居の有無では、全体で57.6%、⚑年生は62.3%で祖父母の 同居率が⚒、⚓年生より高かった(表⚑)。
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表⚑ 看護大学生の基本属性
学年 回収(回収率)
平均年齢 SD ⚒世帯同居
n(%)
⚑世帯 n(%) n(%)
全体 198(73.61) 19.81 2.43 114(57.56) 84(42.42)
⚑年生 77(83.69) 19.36 3.71 48(62.34) 29(37.66)
⚒年生 59(56.73) 19.78 0.98 34(57.63) 25(42.37)
⚓年生 62(86.11) 20.54 0.50 32(57.61) 30(48.39)
学生全体数:N = 269(女子学生)⚑年生92人⚒年生104人⚓年生72人 SD 標準偏差値
⚒.自分の確立の下位尺度項目の内的整合性と信頼性の検討
自分の確立の下位尺度40項目の整合性を検討するため、主因子法のバリマックス法 にて因子分析を行った。固有値の落差と因子解釈可能性を考慮して第⚖因子まで既存 尺度と同様に採択した。また、因子負荷量は、0.35を基準値とするが、本研究におい ては、因子負荷量0.32の項目についても、本調査項目として必要と判断したため削除 せず、⚖項目のみ削除し、34項目で構成した。削除した項目は、「31私は自分の身体 や行動をコントロールできる」「21何でも物事を始めるのが億劫だ」「12私は生まれて きて本当に良かったと思う」「22私は人が見ているとうまくやれない」「39私は自分の ことを理解してくれるという安心感がある」「10私は人と仕事をするのが苦手である」
である。信頼性についてはクロンバックの
α
係数で求めた。その結果、「確実性」10 項目でα
=.85、「受容性」⚘項目でα
=.79、「能動性」⚗項目ではα
=.68、「親密性」大手前大学論集 第19号(2018)
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表⚒ 自分の確立の下位尺度項目の因子分析結果
項 目 因 子
1 確実性 2 受容性 3 能動性 4 親密性 5 統制性 6 主体性 共通性
⚗自分が何者かわからない
⚙私は恥ずかしいことばかりしてきた人間だ
⚔私はどうしたらいいか分からなくなると自分の殻の中で閉じこもってしまう
⚖自分はこれからどのような人間になっていくわからない
⚑今の自分は本当の自分でないような気がする
⚕したいことをあまりやれないでいる
⚓何かしているより空想に浸っていることが多い
11男性のみ:男に生まれてこなければよかったと思うことがある女性のみ:女に生まれてこなければよかったと思うことがある 13自分は役に立たない人間だと思う
.619.554 .552 .534.534 .507.449
.427 .378
-.232
-.139
-.065
-.220
-.245
-.142
-.037
-.311
-.299 .101.124 .191 .321.141 .145.133
.005 .286
.251.196 .126 .219.172 .028.190
.128 .367
.274.294 .041
-.016.300 .107.179
.093 .263
-.068
-.033
-.250
-.013
-.040
-.081
-.097
-.066
-.160 .396.388 .298 .425.317 .574.589
.489 .467 15自分の生き方は自分の納得のいくものである
28社会の中での自分の生きがいがわかってきた 17自分らしさというものがわかってきた 16私は十分に自分のことを信頼している 14男性のみ:男性として自分に自信があると思う女性のみ:女性として自分に自信がある 19私は魅力的な人間に成長しつつある 27自分の行動力には自信がある
-.166
-.069
-.269
-.410
-.095
-.152
-.032 .654.607 .595.565 .556 .484 .417
-.174
-.146
-.163
-.146
-.066
-.151
-.342
-.047.035
-.069
-.044
-.167
-.172
-.130
-.097
-.403
-.170
-.029 .048
-.059
-.019 .029.165 .129.256
-.039 .309 .398
.157.544 .354.497 .577 .503 .250 25自分ひとりでなかなか決心がつかない
24自分ひとりで始めての事をするのは不安だ 26危険や困難に直面するとしり込みしてしまう
⚒私の心はとても傷つきやすくもろい
⚘周りの動きについていけず自分だけ取り残されたと感じるときがある 20私はやりそこないをしないかと心配ばかりしている
18自分はたいていのことで能力が劣っていると思う
-.042.030 .128.242 .392.339 .086
-.184
-.173
-.184
-.018
-.027.006
-.151 .647.614 .599.568 .520.373 .329
.124.075 .007.063 .127.038 .215
-.031 .167.067
-.046
-.010.145 .252
-.139
-.008
-.229 .002
-.166
-.034
-.039 .257.301 .346.285 .442.489 .466 38私にとって性(セックス)はまだよくわからないものだ
36異性との付き合い方がわからない 37自分が結婚することを考えてもピンとこない
35自分にとっての男らしさ、女らしさがはっきりしていない
.039.222 .213.361
-.091
-.060
-.097
-.259 .196.119 .066.058
.748.649 .559.459
.094.247 .061.173
-.030
-.144
-.073 .018
.468.585 .268.544 33私は飽きっぽく何かをやり遂げたという経験がない
34私は困難な人生を生き抜くための土台がない感じがする 32私は気が変わりやすく、自分を一定に保つことができない
.243.200 .397
-.014
-.197
-.104 .083.129 .003
.225.183
-.020 .614.496 .421
-.010
-.150
-.018 .307.347 .494 30私は積極的な生き方を知っている
23自分は何かを作り上げることができる人間だと思う 40自分には信頼できる異性の友人がいる
29私は働く喜びを知っている
-.049
-.124
-.135 .079
.431
-.059.131 .271
-.268
-.068
-.140
-.072
-.095
-.283.057
-.043
-.155
-.024.002
-.231 .500 .495.408 .359
.442 .570.618 .246 因子寄与率因子寄与
α係数 4.107 10.268 .85
3.356 18.658 .79
2.919 25.956 .68
2.384 31.917 .74
1.942 36.772 .62
1.901 41.525 .66 主因子法 Kaiser の正規化を伴うバリマックス法
⚔項目は
α
=.74、「統制性」の⚔項目でα
=.62、「主体性」⚔項目ではα
=.66であ り、各項目の信頼性が確認された(表⚒)。⚓.就業動機の下位尺度項目の内的整合性と信頼性の検討
就業動機の下位尺度38項目の整合性を検討するために主因子法のバリマックス法に て因子分析を行った。固有値の落差と因子解釈可能性を考慮して第⚔因子まで既存尺 度と同様に採択した。因子負荷量は、0.35を基準とし、38項目を抽出した。信頼性に ついてはクロンバックの
α
係数で求めた。その結果、「探索志向」15項目のα
=.90、「上位志向」10項目で
α
=.89、「対人志向」⚗項目でα
=.82、「挑戦志向」⚖項目でα
=.81であり、各項目の信頼を得た(表⚓)。⚓ 校
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⚓ 校
表⚓ 就業動機の下位尺度項目の因子分析結果
項 目 因 子
1 探索志向 2 上位志向 3 対人志向 4 挑戦志向 共通性
⚓将来仕事で活用できる知識や技術を身につけたい
⚒将来就きたい職業のために努力しようと思う
⚑将来就こうと考えている職業に関する情報には興味がある
⚔日常生活の中で、仕事に役立つことは何でも吸収したい 12周囲の人々とコミュニケーションしながら仕事を進めたい 10いつも目標を持って仕事をしたい
13仕事を通じて色々な人と出会いたい 38仕事を通じて自分を向上させたい
⚗将来したい仕事に役立つ資格や免許を取得するつもりだ 11将来就こうと思う職業に就いて考えるのが楽しい
⚕将来就こうと考えている職業について自分で調べようと思う
⚘将来就きたい職業がはっきり決まっている 16職場では周りの人たちの調和なによりが大切だ
⚙仕事に活かせることなら何でも学ぶつもりだ
⚖将来就こうと考えている職業に関連した講習会やセミナーに進んで参加使用と思う
.824 .773.772 .721 .606.583 .582 .561.529 .505.504 .500 .481.417 .374
.125 .136.054 .101 .087.054 .078 .129.155 .065.077
-.021 .169.113 .027
.023
-.053.103 .098 .366.275 .552 .202.077 .095.095 .054 .476.109 .158
-.064
-.067.118 .056
-.027 .404
-.057 .300.009 .227.376 .114
-.121 .252 .304
.606 .640.700 .542 .410.258 .310 .266.262 .582.320 .510 .653.542 .435 23職場では高い役職に就きたい
22地位や名誉をもたらす職業に就きたい 24昇格や昇進の機会がある仕事を得ることは重要だ 29何か価値のある業績を上げようと考えている 27周りから賞賛されるような仕事をしたい 25世間で名前の通った企業や団体に就職したい 28人よりすぐれた仕事をすることが重要だ
31世間で非常に難しいとされている仕事をやり遂げたい 26給料にいい職場に就くことは充実した生活に欠かせない 30社会的に有意義な仕事に就きたい
.107
-.029 .190
-.001 .047 .188
-.018 .154 .138 .209
.794 .779.748 .723.716 .700 .685.517 .488 .480
.021 .197.057 .161.133 .031 .124.186
-.065 .097
.091 .111.040 .216.130 .061 .165.424
-.286 .113
.502 .497.318 .559.450 .358 .658.651 .600 .530 17仕事を通じて得たい最大の満足は、人との交流から得られる満足だ
19仕事に就くのは人との接触を持っていたいからだ 15仕事そのものでなく職場の人間関係に興味がある
20個人の仕事が仕事が重視される仕事ではなく集団の仕事が重視される仕事がしたい 14常に多くの人と出会いのある仕事がしたい
18職場では一生付き合える友人を作りたい 21職場ではムードメーカになりたい
-.018.176
-.041.152 .366 .210.067
-.004 .098 .095.034 .218 .186.324
.672.660 .634.631 .596 .465.462
.117.336 .038.220
-.071 .150.186
.343.549 .512.596 .297 .505.514 36人と張り合えるような仕事がしたい
32努力や能力を必要とする仕事がしたい
34仕事で成功するためには、決して努力を惜しまない
33誰かの案に従うのではなく、自分で計画を立てるような仕事がしたい 37自分の構成が行かせるし仕事がしたい
35困難な仕事でも人に助けを借りずに自分の力でやり遂げたい
.014 .338 .412.030 .225.182
.491 .368 .067.345 .322.371
.130 .176 .154.146 .297.081
.503 .484 .446.444 .443.407
.338 .397 .343.511 .439.462 因子寄与
因子寄与率 α係数
6.116 16.094 .90
5.632 30.914 .89
3.680 40.598 .82
2.535 47.269 .81 主因子法 Kaiser の正規化を伴うバリマックス法
⚔.自分の確立尺度と就業動機の尺度間の相関
自分の確立の尺度と就業動機の尺度の下位尺度間の相関では、自分の確立の「確実 性」において、就業動機の下位尺度すべてと、正の相関があった。「探索志向」は、r
=.926と強い相関が、「上位志向」とは r =.285と弱い相関が、「対人思考」は r = .442とやや強い相関が、「挑戦志向」とは r =.437とやや強い相関がみられた。また 自分の確立の「受容性」は、就業動機の「挑戦志向」と r =-.214、「探索志向」と r =-.154の弱い負の相関があり、自分の確立の「統制性」は、就業動機の「探索志向」
と r =.285の正の弱い相関があった。自分の確立の「親密性」は、就業動機の「挑戦 志向」と r =-.198の弱い負の相関があった(表⚔)。
⚕.学年および同居の有無と自分の確立と就業動機の比較
学年別の自分の確立と就業動機の平均値の比較は一元配置分散分析を行った。その 結果、自分の確立尺度の「確実性」(p =.010)と「親密性」(p =.015)、就業動機 の「探索志向」(p =.004)において、有意性が認められた。これらについて Tukey の多重比較を行ったところ、「確実性」において⚑年生は⚓年生と比較して有意に高 かった(p =.007)。また「親密性」において⚑年生、⚒年生はともに、⚓年生より 有意に高かった(p =.027、p =.036)。就業動機では、「探索志向」で⚑年生の方が
⚓年生より有意に高かった(p =.003)(表⚕)。
一方、同居の有無と自分の確立尺度、就業動機尺度の下位尺度項目との間に有意差 はなく、同居との関連はなかった。
大手前大学論集 第19号(2018)
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表⚔ 自分の確立尺度と就業動機尺度の下位尺度間の相関係数
自分の確立 就業動機
確実性 受容性 能動性 主体性 統制性 親密性 探索志向 上位志向 対人志向 挑戦志向
自分の確立
確実性 1
受容性 -.129 1
能動性 .055 -.472** 1 主体性 .058 -.375** .360** 1 統制性 .230**-.333** .320** .362** 1 親密性 .013 .109 -.126 -.101 .054 1
就業動機
探索志向 .926**-.154* .121 .146* .285** .020 1 上位志向 .285**-.090 -.007 .130 .100 -.029 .271** 1 対人志向 .442**-.129 .051 .114 .204**-.052 .487** .395** 1 挑戦志向 .437**-.214** .166* .179* .154*-.198** .501** .593** .584** 1
** 相関係数は⚑%水準で有意(両側)
* 相関係数は⚕%水準で有意(両側)
Ⅳ.考察
⚑.自分の確立と就業動機の関連
自分の確立と就業動機では、特に自分の確立の「確実性」と就業動機の「探索志向」
との間には、強い関連が認められ、自分が確立できていると認識できている看護学生 は、積極的に将来の職業に関する情報を得ていることが推察された。さらに「上位志 向」「対人志向」「挑戦志向」とも関連があり、自分と自分を取り巻く周囲の環境への 信頼感が、就業動機と強い関連があると考えられた。学生の間に自分を確立すること が就業動機に強い影響を与えていることから、自分の確立への周囲の支援の重要性が 示唆された。自分の確立は、就業に向けたスタートである情報を探索する行動に関連 しており、その後の就業活動に影響を及ぼすことから、キャリア支援として、学生の 思考の整理や行動の振り返りと経験の意味づけ、学生生活での困難に立ち向かうサ ポートなどを通して、価値観の育成、精神面の成長という自分の確立を促すことが重 要と考えられる。
さらに自分の確立の「統制性」は、自分のことを飽きっぽく、何かをやり遂げたこ とがない、気が変わりやすく、自分を一定に保つことができないなどを示しているが、
これは就業動機の「探索志向」「対人志向」と関連があった。つまり、統制がとれな い学生は、就業動機の将来就きたい仕事のために努力をしていこうと思うなど、就き
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看護系大学生のキャリア支援に関する研究
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表⚕ 学年別による自分の確立と就業動機の平均値比較
項目 ⚑年生 ⚒年生 ⚓年生
F 値 p 値
n 平均値 SD n 平均値 SD n 平均値 SD
自分の確立
確実性 72 36.76 2.77 56 35.82 3.57 61 34.71 4.95 4.72 .010
**
受容性 76 21.16 5.09 57 22.31 4.52 59 21.66 4.01 1.00 .368 能動性 75 16.12 4.52 58 15.81 3.97 60 15.48 3.73 .39 .676 主体性 76 10.70 3.53 59 10.71 3.16 60 12.02 2.97 3.40 .035 統制性 76 8.82 1.97 59 8.45 2.05 61 8.80 1.90 .69 .501 親密性 75 8.87 1.51 59 8.88
*
*
1.61 61 8.17 1.56 4.26 .015
就業動機
探索志向 73 59.89 4.41 57 57.89 4.93 61 56.50 7.89 5.61 .004
**
上位志向 76 27.69 5.72 56 26.18 6.68 59 27.31 7.06 .92 .400 対人志向 75 30.66 4.81 57 29.89 5.48 59 31.32 5.03 1.15 .319 挑戦志向 76 18.43 2.93 59 17.24 3.85 61 18.47 3.61 2.53 .820 一元配置 分散分析 得点平均値(標準偏差値).欠損値あり。
Tukey の多重比較:*p <0.05.**p <0.01.***p <0.001.
たい仕事への努力や、看護に必要な知識、技術を身につけたいと思わない、さらに仕 事を通じて人とかかわっていこうと思うという対人志向が低下する可能性が示唆され る。看護大学生の場合、入学時にすでに自分の職業を「看護職」としている7)ことや 青年期では今まで経験しなかった新しい経験に出会いやすく、自己の未熟さを知って 自尊感情が揺れることが多いと言われている17)。一方、特に看護大学生は、ある出来 事に直面することで短期的に自尊感情が大きく揺れることや自己像のもろさや自己の 基盤の弱さを示し、精神的健康に否定的な影響を与える可能性が高い18)と言われてい る。このことから、「統制性」への支援として、専門職としての技術演習や臨地実習 やなどをやり遂げられるように、知識や技術面だけのアプローチのみではなく、心理 的アプローチも重要であると考えられる。教員は看護大学生に対し、入学後の基礎看 護教育を受ける時点から、学生が一喜一憂しながら、自分の確立をしていく過程にあ ることを認識し、日常的な声かけや学修態度の変化に着目しながら、課題達成への対 応を支援することが求められる。
一方、自分の確立の「受容性」が就業動機の「挑戦志向」と負の相関にあった。「受 容性」は、自分の適格性・有能観を示しており、自分らしさや自分の生き方に納得を 得ている学生は、新しいことや難しいとされている仕事に挑戦することは少ない傾向 にあることが推察された。
自分の確立の「親密性」についても、就業動機の「挑戦志向」と負の相関があった。
異性との付き合い方が分らない、結婚することを考えてもピンとこないなどと認識し ている看護大学生は、高い役職につきたい意欲や人と張り合える仕事につきたいなど と関連があり、異性に対する関心が少ない看護大学生ほど、何事にも挑戦していこう とする認識が高いと推測された。そのため、異性の健全な交流も重要としつつ、学修 に集中できる環境づくりやキャリア支援の役割が教員に必要と考える。
⚒.学年別による自分の確立と就業動機の比較
学年別の自分の確立の比較では、「確実性」で、⚑年生は⚓年生より有意に高かっ た。⚑年生は、看護師になるという強いあこがれをもって入学してきているが、堀井 ら(2008)は⚒年生になると、専門基礎教育プログラムに非常に批判的になり、学修 への自己責任が低くなる6)と述べている。そして⚒年生の場合、机上の学修が進むこ とに加え、これまでイメージしてきた理想の看護と現実の違いを感じ、また⚒年生の 実習では看護師をケアの実践者として捉えるが、自分が理想とする看護師とのギャッ プを感じている12)と言われている。そのギャップは職業的アイディンティに影響を受 けやすいと考えられ、看護師へのあこがれから自分の想像していた現実逃避に繋がる 傾向が考えられる。また⚓年生では、臨地での実習が本格的になり、このギャップに
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ついてさらに深く考える時期となる。本研究で、⚑年生が⚓年生よりも「確実性」に おいて有意であった理由は、⚓年生になると職業選択をより身近に感じ、現実と理想 のギャップから、看護師になることへの迷いが生じるからではないかと考えられる。
教員は、「確実性」が就業動機と最も関連する項目であることからも、このプロセス を理解し、教員は特に⚒年生から看護師という職業を肯定的に捉えることができるよ うサポートし、⚓年生の実習体験における自己成長を促進し、自分の確立を促す支援 に努めることが重要であると考える。
また「親密性」において⚑年生と⚒年生は、⚓年生より有意に高いことから、⚓年 生より異性に対する付き合い方や性に対する未熟さが示唆された。本研究では女子の 看護大学生であったため、身近に異性の交流が少ないことが考えられる。また、その ほかに⚑年生は偏差値で差別されて入学してくる学生もいる中、幼少の頃から看護師 に憧れている学生も多く、専門的な看護を学ぶ機会が少ないことや⚑年次においては ロマンチックな職業への憧れが続いている12)可能性も挙げられる。一方、⚓年生は基 礎実習及び、臨地実習体験を乗り越え、これらを通して将来の自分を見つめる時期と 考えられ、成人として社会的な自覚や異性への関心、交流経験などの価値観が備わっ てきたと推測される。
就業動機の学年別比較では「探索志向」で、⚑年生の方が⚓年生より積極的に看護 職について興味を持ち探索しようと考え、行動している可能性が示唆された。看護大 学生の入学時の特徴の一つとして、志望動機は「人のために役に立つ仕事がしたい」
「身近な人を助けたい」と考えている学生が多い6)と言われている。したがって、⚓
年生よりも⚑年生の方がより強く看護師になるための技術や知識を学びたいと思うこ とと重なった結果と考える。しかし、一方で、⚑年生は将来の看護師になることにつ いて積極的に自画像がもてない時期12)であることも考えられ、教員は早期から職業イ メージを肯定的に感じられるように職業決定に焦点を絞り、職業的に自分の確立を明 確にするためのプロ意識に繋がる支援が必要と考える。石田(2010)はプロ意識につ いて、仕事を面白いと感じられること、またプロ意識の本質を学生時代に学び、マイ ンドを鍛えることが重要と述べている4)。本研究ではそこまでの調査に言及していな いが看護大学生の気持ちを認識しながら、常に意識して看護の仕事のおもしろさを語 り、働く喜びや達成感が感じ取れるように、⚑年生の早期から教員がこれらを伝えて いく意義は大きいと考える。
⚓.本研究の限界と課題
本研究は、A大学女子の看護大学生を対象にしたため、看護大学生の自分の確立と 就業動機の関連による調査に留まっていることからデータの偏りが考えられ、一般化
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看護系大学生のキャリア支援に関する研究
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するには限界がある。しかし本研究において、女性が多く働く看護師の職場に将来就 くであろうとしている看護大学生の自分の確立と就業動機に関する認識を明らかにし たことは、今後、看護大学生へのキャリア教育支援の資料として価値がある。今後は、
看護大学生の男女差及び他学部の比較など、幅広く調査を行い、キャリア教育支援に 繋がるように研究を進める。
Ⅴ.結論
本研究では、自分の確立と就業動機の関連を明らかにした。そして自分の確立の
「確実性」と就業動機の「探索志向」に強い関連がみられ、「対人志向」と「挑戦志向」
でやや強い関連が明らかなった。このことから、看護大学生は自分の確立が高く、看 護師を目指して探索し、人と関わり挑戦していこうとする傾向が挙げられた。また学 年別の自分の確立の比較では⚑年生および⚒年生は、⚓年生より「親密性」が高く、
⚑年生は⚓年生より異性に対する付き合い方や性に対する未熟さが示唆された。ま た、就業動機の学年別比較では、「探索志向」で⚑年生の方が⚓年生より積極的に看 護職について技術や知識を学ぼうと認識し、「挑戦志向」の比較では、⚑年生は⚒年 生より何事にも挑戦しようとする認識が明らかにされた。
したがって、教員は入学後の基礎看護教育でのキャリア支援として、日々の看護専 門職としての知識・技術習得の場面においても、自分の確立を意識した関りを行うこ とが重要である。早期から看護職を肯定的に捉えられるように支援し、一人でも脱落 しないように日常的に声かけや学修態度に着目したキャリア支援が必要である。
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看護系大学生のキャリア支援に関する研究
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