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東京都の中小企業ネットワーク: 墨田区の製造業に注目して

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(1)

1.はじめに 1−1.本稿の目的

本稿の目的は、東京都の中小企業ネットワークの中でも、特に墨田区の 製造業に注目して、どのようなネットワークを持つ中小企業の経営状況が 優れているか明らかにすることである。

墨田区の製造業に注目した理由は、墨田区は小規模製造業の事業所数に ついては、大田区に次いで東京都の中で2位であるにもかかわらず、先行 研究が限られるからである。墨田区は小規模製造業の事業所が多い一方で、

中規模以上の製造業の事業所が少ないことが、その理由だと考えられる。

表1は、経済産業省の『工業統計調査』を、東京都総務局統計部産業統計 課工業統計係が東京都分について独自に編集、集計したデータに基づく。

表1によれば、従業員数4-29人の事業所については、1位の大田区の1,605 事業所に次いで、墨田区が983事業所で2位になっている。しかし、従業 員数30人以上の事業所については、1位は同じく大田区で143事業所、2位 は板橋区の116事業所、3位は江東区の77事業所、4位は足立区の71事業所、

5位は葛飾区の53事業所、6位は江戸川区の52事業所、7位は北区の50事 業所となり、墨田区は49事業所で8位となっている。

東京都全体の事業所の総数に対する割合を見ても、大田区の場合は従業 員数4-29人の事業所が総数の11.8%、従業員数30人以上の事業所が総数の 9.6%と、10%前後で大きな相違は存在しない。しかし、墨田区の場合は従 業員数4-29人の事業所は総数の7.2%であるものの、従業員数30人以上の 事業所は総数の3.3%と、従業員数4-29人の事業所に比べて従業員数30人 以上の事業所の割合は半分以下になる。

東京都の中小企業ネットワーク:

墨田区の製造業に注目して

山 藤 竜太郎

(2)

1−2.先行研究

大田区の中小企業の産業集積および企業間ネットワークについては、渡 辺[1997]をはじめとして、数多くの研究蓄積が存在する。特に猪口[2000]、

前田[1998; 2009]のように、東京都および東日本の代表としての大田区 表1 東京都の工業統計(2010年調査)

千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区 江戸川区

130 195 167 359 348 559 983 697 493 136 1,605 188 64 94 107 203 335 625 741 217 977 897 889

1.0%

1.4%

1.2%

2.6%

2.6%

4.1%

7.2%

5.1%

3.6%

1.0%

11.8%

1.4%

0.5%

0.7%

0.8%

1.5%

2.5%

4.6%

5.5%

1.6%

7.2%

6.6%

6.5%

16.9%

1.8%

0.3%

従業員数4-29人 従業員数30人以上

人数(人)

13,593   11,009   総数

区部

市部 西多摩郡 島部

2,291 246 47

527 50 0 構成比(%)

100.0%  

81.0%  

人数(人)

1,489   912  

構成比(%)

100.0%  

61.2%  

千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区 江戸川区

14 20 16 46 40 11 49 77 35 19 143 14 7 11 4 16 50 23 116 25 71 53 52

0.9%

1.3%

1.1%

3.1%

2.7%

0.7%

3.3%

5.2%

2.4%

1.3%

9.6%

0.9%

0.5%

0.7%

0.3%

1.1%

3.4%

1.5%

7.8%

1.7%

4.8%

3.6%

3.5%

35.4%

3.4%

0.0%

資料:東京都総務局統計部産業統計課工業統計係[2012]

(3)

と大阪府および西日本の代表としての東大阪市という比較から、大田区は 注目を多くの研究で注目を集めてきた。

大田区の中小企業の産業集積および企業間ネットワークの特徴は、「屋 上から設計図を紙飛行機にして飛ばせば、3日後には製品になって戻って くる」と言われていた。つまり、大田区内で産業集積がほぼ完結しており、

企業間の近接性が短納期を実現していると説明されてきた。

大田区に比べると墨田区の中小企業の産業集積および企業間ネットワー クについての研究は限られるものの、藤井[1990]や多田、有吉[2005]

などが挙げられる。しかし、山崎、舘山[2006]では「中小製造業の町か ら世界の観光都市へ」とあるように、2012年のスカイツリーの開業と前後 して、製造業よりも観光業が注目を集めている。

そこで本稿では、小規模な中小製造業の事業所数については、大田区 に次いで東京都の中で2位である墨田区の製造業に注目して、どのような ネットワークを持つ中小企業の経営状況が優れているか明らかにする。

2.墨田区と大田区の比較

東京都総務局統計部産業統計課工業統計係[2012]に基づき、墨田区と 大田区の小規模製造業(4-29人の事業所)を示したものが表2と表3である。

工業統計調査では産業中分類ごとに企業数が少ない場合、現金給与総額な どは特定の企業のデータが明らかにならないようにデータを公表しないた め、表に掲げたデータが揃う業種のみを示した。そのため、表2と表3は 各区で一定数の事業所が存在する業種のみが示されている。

2−1.墨田区

表2の墨田区の場合、区内の事業所全体に占める構成比が5%を超える 業種は、1位は金属製品製造業(183、18.6%)、2位は印刷・同関連業(161、

16.4%)、3位は繊維工業(85、8.6%)、4位はなめし革・同製品・毛皮製造

(80、8.1%)、5位はプラスチック製品製造業(別掲を除く)が54、5.5%と

(4)

なっている。

1位の金属製品製造業が墨田 区の小規模製造業の代表的な 業種である。2位の印刷・同関 連業は都市型産業の典型であ り、大田区でも7位(5.0%)に 入っている。3位の繊維工業は 江戸小紋など江戸時代からの 蓄積があり、鐘淵紡績(カネ ボウ)の発祥地でもあること から、墨田区では繊維工業の 集積が形成されていた。4位の なめし革・同製品・毛皮製造は、

同製品の集散地が隣接する浅 草地区にあり、集散地の後背 地として製造拠点となってい た。5位はプラスチック製品製 造業(別掲を除く)は1位の金 属製品製造業とともに、近代 工業を支える部品供給の役割 を担っている。

次項の大田区と比較した場 合、金属製品製造業、印刷・

同関連業、プラスチック製品 製造業(別掲を除く)は共通 しているものの、繊維工業と なめし革・同製品・毛皮製造 が墨田区の特徴となっている。

表2 墨田区の工業統計(従業者数4-29人、2010年度調査) 事業所数 産業中分類 従業者総数 構成比(%)

繊維工業 木材・木製品製造業(家具を除く) 家具・装備品製造業 印刷・同関連業 化学工業 プラスチック製品製造業(別掲を除く) なめし革・同製品・毛皮製造 窯業・土石製品製造業 金属製品製造業 電子部品・デバイス・電子回路製造業 電気機械器具製造業 輸送用機械器具製造業

983 85 9 17 161 11 54 80 9 183 5 14 11

100.0% 8.6% 0.9% 1.7% 16.4% 1.1% 5.5% 8.1% 0.9% 18.6% 0.5% 1.4% 1.1%

(人) 8,681 697 56 124 1,434 120 430 735 86 1,453 72 147 112

付加価値額 万円) 5,766,013 491,985 25,140 89,123 1,001,781 97,419 269,110 533,807 31,455 897,989 49,590 78,578 61,918

製造品出荷額等 万円)

11,943,952 1,278,121 50,271 160,708

1,817,203 215,231 499,620 1,274,805 62,157 1,765,472 87,240 190,505 142,442

原材料用額等 万円) 5,895,746 761,584 23,873 67,130 765,339 112,962 217,069 717,115 29,129 823,018 35,171 107,998 77,426

現金給与総額 万円) 3,132,165 218,594 15,338 45,767 585,505 49,793 147,549 244,972 27,724 534,008 24,776 52,374 34,983

11 12 13 15 16 18 20 21 24 28 29 31 資料:東京都総務局統計部産業統計課工業統計係[2012]

(5)

両産業は上述の通り、歴史 的要因や地理的要因によっ て集積が形成されただけで なく、積極的な支援も行わ れている。たとえば、「墨田 区、東京都、国(中小企業 基盤整備機構)、及び地元企 業などが出資する第三セク ター」として「ファッショ ン関連製造業が時代の変化 に対応した商品の企画、生 産体制の構築、販路開拓を 行えるように支援する目的」

で1991年に国際ファッショ ンセンター株式会社が設立 された(同社資料より)。さ らに、2000年には国際ファッ ションセンタービルが墨田 区横綱に開設され、販路開 拓事業や展示会支援事業な どの拠点となっている。

2−2.大田区

表3の 大 田 区 の 場 合、 区 内の事業所全体に占める構 成比が5%を超える業種は、

1位は生産用機械器具製造業

(318、19.8%)、2位は金属製 表3 大田区の工業統計(従業者数4-29人、2010年度調査) 事業所数 産業中分類

従業者総数 構成比(%)

食料品製造業 印刷・同関連業 化学工業 プラスチック製品製造業(別掲を除く) ゴム製品製造業 鉄鋼業 金属製品製造業 はん用機械器具製造業 生産用機械器具製造業 業務用機械器具製造業 電気機械器具製造業 情報通信機械器具製造業 その他の製造業

1,605 49 81 15 120 13 35 313 113 318 99 129 20 38

100.0% 3.1% 5.0% 0.9% 7.5% 0.8% 2.2% 19.5% 7.0% 19.8% 6.2% 8.0% 1.2% 2.4%

(人) 15,457 580 749 174 1,273 119 384 2,823 1,085 2,827 1,015 1,304 236 423

付加価値額 万円) 11,827,157 332,919 530,677 159,889 813,462 63,853 353,354 2,041,960 846,691 2,173,626 831,185 1,079,487 162,911 316,872

製造品出荷額等 万円) 26,497,209 699,401 1,036,059 354,191 1,565,718 139,482 2,010,661 3,680,298 1,576,182 3,987,711 1,403,842 2,261,211 275,684 565,206

原材料用額等 万円) 14,085,219 349,835 478,842 186,311 711,632 72,619 1,639,639 1,536,855 687,266 1,708,318 531,756 1,127,782 104,626 232,621

現金給与総額 万円) 6,216,750 173,997 281,712 77,104 463,703 43,361 171,332 1,073,888 464,026 1,237,623 430,332 563,727 84,257 162,069

09 15 16 18 19 22 24 25 26 27 29 30 32 資料:東京都総務局統計部産業統計課工業統計係[2012]

(6)

品製造業(313、19.5%)、3位は電気機械器具製造業(129、8.0%)、4位は プラスチック製品製造業(別掲を除く)が120、7.5%、5位ははん用機械器 具製造業(113、7.0%)、6位は業務用機械器具製造業(99、6.2%)、7位は印刷・

同関連業(81、5.0%)となっている。

墨田区と比較した場合、金属製品製造業、プラスチック製品製造業(別 掲を除く)、印刷・同関連業は共通しているものの、生産用機械器具製造業、

電気機械器具製造業、はん用機械器具製造業、業務用機械器具製造業が大 田区の特徴となっている。繊維工業など軽工業分野でも一定の集積が形成 されている墨田区と比較し、大田区は機械器具製造業など重工業により特 化した集積が形成されていることが明らかになった。

3.墨田区の小規模製造業

前節で確認した通り、墨田区の小規模製造業は繊維工業やなめし革・同 製品・毛皮製造など軽工業も含む幅広い業種の産業集積が形成されていた。

そこで、墨田区産業観光部産業経済課[2009b]に基づいて、墨田区中小 企業の経営実態から、中小企業ネットワークの一端の分析を行う。

墨田区産業観光部産業経済課[2009b]の正式名称は『墨田区中小企業 の経営実態と今後の施策ニーズに関するアンケート調査報告書』であり、

以下では「アンケート調査」と呼称する。同調査は、「すみだ企業ガイド」

掲載企業(約2,500社)から、無作為に2,090社を抽出し、2008年11月25 日から同年12月10日まで調査を実施し、有効回答数は331件(有効回答率 15.8%)である。

3−1.回答企業の概要

アンケート調査の回答企業の概要を示したものが図1である。1位は金 属・機械部品加工(27.8%)、2位は生活関連雑貨製品(17.8%)、3位は衣料 製品(11.5%)、4位は金属・各種機械製品(10.0%)となっている。工業統 計調査の金属製品製造業と対応する金属・機械部品加工が1位であり、生

(7)

活関連雑貨製品や衣料製品など軽工業分野も含む幅広い業種が対象となっ ていることが明らかになる。

さらに、売上および営業利益の傾向を示したものが図2である。「概ね減 少傾向」が売上で61.9%、営業利益で64.4%と中小製造業の経営状況の厳 しさを示している。次いで「概ね横ばい傾向」は売上で28.7%、営業利益 で26.9%、「概ね増加傾向」は売上で8.8%、営業利益で7.9%と、経営状態 が優れている企業は1割未満に過ぎない。

図1 アンケート調査の回答事業所の概要(n=331)

資料:墨田区産業観光部産業経済課[2009b]

金属・機械部品加工 金属・各種機械製品 生活関連雑貨製品 衣料製品

食料品 その他 不明 27.8%

10.0%

17.8%

11.5%

2.4%

2.1%

28.4%

図2 売上および営業利益の傾向(n=331)

資料:墨田区産業観光部産業経済課[2009b]

過去5年間の売上傾向

過去5年間の営業利益傾向

概ね増大傾向

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

概ね横ばい傾向 概ね減少傾向 不明

8.8% 28.7% 61.9% 0.6%

7.9% 26.9% 64.4% 0.8%

(8)

3−2.売上動向別の分析

前項で確認した通り、売上および営業利益の傾向は「概ね減少傾向」は 6割強、「概ね横ばい傾向」は3割弱、「概ね増加傾向」は1割弱である。確 かに売上および営業利益が「概ね増加傾向」の事業所はごく一部に過ぎな いけれども、それらの事業所がどのような特徴を持つのか明らかにする。

そこで以下では、売上動向別に分析を行う。

3−2−1.会社の強み

図3は自社の対応力を示している。特徴的なことはまず、従来は産業集 積の強みと考えられていた「短納期への対応力がある」については、「概 ね減少傾向」の事業所では49.3%と約半数が強みとして捉えていたものの、

「概ね増加傾向」の事業所では34.5%と「概ね減少傾向」の事業所に比べて 自社の強みだとは捉えていないことである。

むしろ、「自社ブランド(信用力)を持っている」は「概ね増加傾向」

で48.3%(「概ね減少傾向」では13.2%)、「対応力のある外注企業を確保し ている」は「概ね増加傾向」で37.9%(「概ね減少傾向」では14.6%)、「高 度な品質維持力がある」は「概ね増加傾向」で37.9%(「概ね減少傾向」で は20.0%)と、この3要素が売上の増加傾向と減少傾向を分ける要因になっ ている。

「自社ブランド(信用力)を持っている」と「対応力のある外注企業を 確保している」はある程度対応している。自社ブランドを持たずに受注を 待つだけの存在になれば売上も営業利益も減少傾向になり、自社ブランド を持ち、外注企業を組織するような存在になれば売上も営業利益も増加傾 向になるということである。

図4は取引先との関係を示している。特徴的なことはまず、従来は産業 集積の強みと考えられていた「取引先と距離的に近い」については、「概 ね減少傾向」の事業所では46.3%と約半数が強みとして捉えていたものの、

「概ね増加傾向」の事業所では6.9%と、多くの企業は自社の強みだとは捉

(9)

えていないことである。また、「取引先の発注変動に柔軟に対応できる」

も「概ね減少傾向」の事業所では30.2%と一定数の事業所が強みとして捉 えていたものの、「概ね増加傾向」の事業所では13.8%と、多くの企業は自 社の強みだとは捉えていない。

むしろ、「取引先へ優れた提案ができる」は「概ね増加傾向」で37.9%(「概 ね減少傾向」では6.3%)、「取引先の業績が好調である」は「概ね増加傾向」

で27.6%(「概ね減少傾向」では3.4%)と、この2要素が売上の増加傾向と 減少傾向を分ける要因になっている。

「取引先と距離的に近い」こと、「短納期への対応力がある」こと、「取 引先の発注変動に柔軟に対応できる」ことといった要素は、先行研究では 産業集積の強みと捉えられていた。しかし、墨田区のアンケート調査の売 上増加傾向の事業所では自社の強みと捉えられておらず、むしろ売上減少 傾向の事業所で自社の強みと捉えていた。

一方で売上増加傾向の事業所では、自社ブランドを持ち、外注企業を組 織しつつ、産業集積外の企業であっても業績が好調な企業に対し、優れた 提案を行うことが、自社の強みだと捉えられていた。

図3 自社の対応力(n=331)

資料:墨田区産業観光部産業経済課[2009b]

コスト競争力がある 短納期への対応力がある 高度な品質維持力がある 自社ブランド(信用力)を持っている 対応力のある外注企業を確保している 共同開発などで企業、大学等との連携関係を持っている 安定した財務基盤を形成している その他 不明 概ね増大傾向

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

概ね横ばい傾向 概ね減少傾向

(10)

3−2−2.連携実態

どうすれば売上増加傾向のように、自社ブランドを持ち、外注企業を組 織しつつ、産業集積外の企業であっても業績が好調な企業に対し、優れた 提案を行うことが可能になるのか。詳細な分析は個別企業の分析も含めて 行う必要があるものの、一定の洞察を得るために連携実態について分析を 行う。

図5は連携実態を示している。「同業種・同技術の製造中小企業」との連 携はいずれも5割前後、「同業種・異技術の製造中小企業」との連携もいず れも4割前後と、多くの企業で同業種の製造中小企業との連携は行われて いる。

売上が「概ね増加傾向」の事業所と「概ね減少傾向」の事業所で大きな 相違があるのが以下の要素である。「卸売業」は「概ね増加傾向」で31.0%

(「概ね減少傾向」では15.6%)、「各種コンサルタント」は「概ね増加傾向」

で20.7%(「概ね減少傾向」では2.4%)、「行政機関」は「概ね増加傾向」で 20.7%(「概ね減少傾向」では11.7%)、「大学・研究機関」は「概ね増加傾 向」で17.2%(「概ね減少傾向」では3.9%)、「小売業」は「概ね増加傾向」

で13.8%(「概ね減少傾向」では7.3%)となっている。

図4 取引先との関係(n=331)

資料:墨田区産業観光部産業経済課[2009b]

取引先と距離的に近い 多くの取引先を持っている 取引先の業績が好調である 取引先へ優れた提案ができる 取引先の多様なニーズに対応できる 取引先の発注変動に対応できる 取引先の開拓が進んでいる

概ね増大傾向

0% 10% 20% 30% 40% 50%

概ね横ばい傾向 概ね減少傾向

(11)

連携の実態を想定すれば、「各種コンサルタント」と直接接点を持つか、

「行政機関」を通じて「各種コンサルタント」と接点を持つことで、「卸売業」

や「小売業」など川下方向の販路開拓の手段を確保するか、「大学・研究機関」

など川上方向の共同開発などへ展開することが、売上増加の一つの要因と して考えられる。

4.おわりに

本稿では東京都の中小企業ネットワークの中でも、特に墨田区の製造業 に注目して、どのようなネットワークを持つ中小企業の経営状況が優れて いるか明らかにした。

先行研究では「取引先と距離的に近い」こと、「短納期への対応力がある」

こと、「取引先の発注変動に柔軟に対応できる」ことといった要素が、産 業集積の強みと捉えられていた。しかし、墨田区のアンケート調査の売上 増加傾向の事業所では自社の強みと捉えられておらず、むしろ売上減少傾 図5 連携実態(n=331)

資料:墨田区産業観光部産業経済課[2009b]

同業者・同技術の製造中小企業 同業者・異技術の製造中小企業 異業種の製造中小企業 小売業 卸売業 行政機関 大学・研究機関 専門学校 各種コンサルタント 一般生活者 その他 不明 概ね増大傾向

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

概ね横ばい傾向 概ね減少傾向

(12)

向の事業所で自社の強みと捉えていた。

一方で墨田区のアンケート調査では、自社ブランドを持ち、外注企業を 組織しつつ、産業集積外の企業であっても業績が好調な企業に対し、優れ た提案を行うことができる企業の売上が増加傾向にあった。つまり、先行 研究で想定されていたよりも中小企業ネットワークの範囲は広く、必ずし も産業集積内に限定されないということが明らかになった。

こうした広域の中小企業ネットワークの形成には、「各種コンサルタン ト」と直接接点を持つか、「行政機関」を通じて「各種コンサルタント」

と接点を持つことが一つの要因として考えられる。その結果、「卸売業」

や「小売業」など川下方向の販路開拓の手段を確保するか、「大学・研究 機関」など川上方向の共同開発などへ展開することが、売上増加傾向につ うながるのである。

本稿は墨田区の小規模製造業を中心に、東京都の中小企業ネットワーク の分析を行った。もちろん、墨田区の分析においても、アンケート調査の 結果だけでなく、個別企業の詳細な分析が必要である。さらに、大田区な ど他地域の分析結果との比較研究を行う必要もある。本稿は限られたデー タに基づく限界があり、墨田区の個別企業の詳細分析や他地域との比較研 究については、今後の課題としたい。

参考文献

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(13)

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参照

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