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東北医科薬科大学 審査学位論文(博士)要旨

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Academic year: 2021

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東北医科薬科大学

審査学位論文(博士)要旨

氏名(本籍)

ウノ タカシ

宇野 尭(北海道)

学位の種類 博士(薬学)

学位記番号 博薬学第 18 号

学位授与の日付 令和 3 年 3 月 10 日

学位授与の要件 学位規則第4条1項該当

学位論文題名

Biofilm形成Staphylococcus aureusに対するin vitro rifampicin併用 療法の殺菌および耐性に関する研究

論文審査委員

主査 教 授 村 井 ユリ子

副査 教 授 柴 田 信 之

副査 教 授 藤 村 茂

(2)

Biofilm 形成 Staphylococcus aureus に対する

in vitro rifampicin 併用療法の殺菌および耐性に関する研究

東北医科薬科大学大学院薬学研究科 臨床感染症学教室 宇野 尭

化膿性脊椎炎や骨髄炎など整形外科領域の感染症の治療に抗菌化学療法が行 われる場合、その治療期間が 3 ヶ月以上と長期化する。これは、骨および近傍組 織における血流が少ないため、抗菌薬の移行濃度が低いことがあげられるが、人 工股関節置換術や人工膝関節置換術などの術後にみられる人工関節周囲感染症 (periprosthetic joint infection: PJI) では、デバイス表面上の細菌が biofilm を形成す るため治療が遷延する。この biofilm は、一般に抗菌薬や消毒薬が菌体内に入る 前の段階で取り込みを阻止し、菌体の生存を維持させる役割がある。したがって、

biofilm 形成菌によるデバイス関連感染の治療では biofilm への対応も考慮しなけ

ればならない。日本環境感染学会が 2012 年から 2019 年の期間に実施した手術 部位感染サーベイランスでは、PJI 患者の起因菌として staphylococci が 73 – 78%

と最も多く分離された。PJI において biofilm 形成を伴う staphylococci が分離さ

れた場合、 biofilm への浸透性が高いと考えられている rifampicin (RFP) の併用療

法が行われている。わが国では RFP の適応菌種に staphylococci は含まれていな

いが、biofilm 形成 staphylococci による PJI に対し RFP と他の抗菌薬との併用療

法が実施されている。しかしながら、こうした RFP の併用療法における治療成

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績の有効率は 76% であったとする一方で、 RFP 併用の有無で治療効果に差が無 かったとする報告など、一定のエビデンスが得られていない。そこで、本研究で は staphylococci のうち分離頻度が最も高い Staphylococcus aureus を用いた biofilm 形成菌に対する RFP 併用療法と RFP 耐性に焦点をあて、以下の検討を行った。

第一章では、S. aureus の臨床分離株 9 株と標準株 ATCC 29213 株 1 株の合計 10 株を用いた。 S. aureus による PJI を想定し、ステンレスワッシャーの表面上 に biofilm を作成させる「in vitro biofilm 形成モデル」を用い、常用量投与におけ る骨組織濃度 (C

max

) の抗菌薬 (cefazolin: CEZ、 vancomycin: VCM、 clarithromycin:

CAM および RFP) を単剤で曝露させ、各々の殺菌効果を評価した。その結果、

CEZ は 10 株中 4 株が殺菌されず、常用量投与で骨組織に移行する CEZ 濃度で は十分な殺菌効果が得られない可能性が考えられた。また、biofilm の透過性が 低いことが知られている VCM では 10 株中 7 株が殺菌されなかった。抗 biofilm 効果が報告されている CAM においても 10 株中 8 株が殺菌されなかったが、こ れは CAM の骨組織移行濃度が CEZ と同様に低いことが原因と考えられた。最 も殺菌効果が期待された RFP では、 10 株中 7 株が殺菌されなかったことに加え、

その生残株は全て最小発育阻止濃度 (minimum inhibitory concentration: MIC) が

> 128 µg/mL の高度耐性を示した。Biofilm 形成 S. aureus に対し、抗菌薬の単剤 曝露による殺菌効果は得られにくく、特に RFP では耐性を獲得しやすいことが 明らかになった。

第二章では、第一章と同様の biofilm 形成モデルを用い、RFP をベースとした

各抗菌薬 (CEZ、VCM および CAM) との併用による殺菌効果および RFP 耐性

(4)

について検討した。その併用効果は、 RFP と CEZ の併用で被検菌株 10 株中 6 株、 RFP と VCM では 10 株中 8 株、 RFP と CAM の曝露では 10 株中 7 株が殺菌 された。しかしながら、上記 3 つの併用パターンで曝露させた計 30 株のうち、

殺菌されなかった 9 株は CEZ、VCM および CAM の感受性を保持したものの、

RFP に高度耐性 (MIC: > 128 µg/mL) を示した。これら RFP 耐性株の biofilm 形 成量をクリスタルバイオレット染色法にて測定し、その親株と比較した。被検菌 株 10 株のうちいずれかの併用曝露で RFP 耐性を獲得した 5 株中 2 株の biofilm 形成量は親株に比し 1.5 倍上昇した (P < 0.05) が、残り 3 株では有意な差が認め られなかった。本検討において、RFP 耐性の獲得によって biofilm 形成量が上昇 する株と不変の株が、臨床株の中に存在することを示した。

第三章では、前述の biofilm 形成量上昇株と不変株に対し、臨床における長期 投与を想定した RFP 曝露の継続による biofilm 形成量の変化とその関連因子に ついて検討した。グラム陰性菌の Pseudomonas aeruginosa は薬剤排出ポンプの mRNA 発現量が上昇することにより biofilm の形成が上昇すると報告されてい る。薬剤排出ポンプは、菌体内に入った抗菌薬を菌体外へ排出する役割があるほ か、 biofilm の構成成分である多糖体や extracellular DNA を排出することで biofilm 形成を増加させることが示唆されている。今回、S. aureus においても同様の機 能をもつと考えられる薬剤排出ポンプ (NorA 、 NorB および NorC) をコードして いる遺伝子の mRNA 発現量を real-time reverse transcription PCR 法にて確認した。

その結果、biofilm 形成量上昇株の norA norC の mRNA 発現量がそれぞれ 3.2

倍、 4.2 倍に上昇した。一方、biofilm 形成量不変株では norA および norB の発現

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量が上昇した。 NorA および NorB は主にキノロン系薬や第四級アンモニウム塩 が排出されることが知られており、これらのポンプの高発現により抗菌薬や消 毒薬に対して耐性化を示す。一方、NorC は、キノロン系の排出に関与している が、その他の役割に関しては明らかになっていない。今後、S. aureus における NorC の役割について検討を深める必要があるが、 今回 RFP の曝露により biofilm 形成量が上昇した要因の一つに NorC が関与しているかもしれない。

本研究は、 biofilm 形成 S. aureus による汚染モデルに対し、RFP の併用曝露で は完全な殺菌が困難であることを示した。すなわち、被検菌株 10 株中 5 株が in

vitro 併用療法により RFP 耐性を獲得し、さらに biofilm 形成量も増加することを

確認した。新しい抗菌薬が開発されない現状において、既存抗菌薬を組み合わせ た難治性感染症の治療法は必要である。Biofilm 形成 S. aureus による PJI の抗菌 化学療法では、起因菌が RFP 耐性を獲得しやすい株か否か確認することが必要 であり、細菌検査において併用薬負荷試験などの新たな検査法を開発し、抗菌薬 適正使用に取り組むことが重要である。

<参考論文> 主論文(原著論文)

1. Takashi Uno, Takumi Sato, Mariko Yagi, Ryota Ito, Masato Kawamura, Shigeru Fujimura. In vitro Rifampicin Combination Chemotherapy Confers Rapidly Rifampicin Resistance for Biofilm-Formed Staphylococcus aureus.

Clinical Microbiology. 9: 343. (2020)

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2. Hajime Nakai, Takumi Sato, Takashi Uno, Emiko Furukawa, Masato Kawamura, Hiroshi Takahashi, Akira Watanabe, Shigeru Fujimura. Mutant selection window of four quinolone antibiotics against clinical isolates of Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae and Moraxella catarrhalis.

Journal of Infection and Chemotherapy. 24: 83-87. (2018)

参照

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