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Academic year: 2021

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(1)OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ. 研究ノート 扶養請求権に関する一考察 一 最 高 裁 昭 和5 4 年 7月 1 9日 係 〉 を 中 心 と し て ー. 松. 本. タ. 1 はじめに. 高齢化社会を向える今日,老人扶養の問題は家族問題の中でその比重をしだいに増し t いる。また,子の出生数の減少という人口動態の変動から生ずる家族形態の変化も老人扶 養問題lt:多大な影響を及ぼすものと考えられる。 「家」制度がなくなっ℃から,家族・親族聞の扶養をめぐる論議は活発になされている ぷ?との問題を解決するための決定的な理論はみられず,また,公的扶助との関係で論じ られるととも多いぷ〉両者を護理統合し総括するととも困難を極め℃いる。とりわけ,扶 養が人聞の生存に直接結びつくだけに,公的扶助・扶養と私的扶養との位置づけ・関連性 は重要で,公的扶助制度の充実が呼ばれる今日の社会のもとでは,私的扶養の構成し、かん が結果的に公的扶助制度の根本的な方向性を決めてしまうことにもなる。 今後の扶養,とくに若人扶養問題を考えるとき,私的扶養請求権を具体的に検討し,現 行法の中でどれだけ有効性をもつか,また今後扶養法を考える方向性の指針をこの判例を 契機に探ってみる。 2 判例紹介. 申立人である母 X女は,昭和 42年ごろ相手方(抗告人・特別抗告人)である息子 Y男に 引取られて生活を一度は共にするが,わずか数日間 Y男の所で生活しただけで,. x女は,. 娘 Z子と同属すれば生活lt:困窮するであろうことも,また Z子と Y男との兄妹間が仲違い. (1)判時 9 4 3 号 5 7 頁,原審家月 30 巻 5号 1 0 8 頁 。 (2) 迫りくる高齢化社会 94 頁 。 (3) 西原道雄「現代の若人扶養」日本の家族 3 3 0 頁以下。 (4) 例えば,深谷松男「私的扶養と公的扶助」現代家族法大系 33 8 3頁以下参照。.

(2) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 1 5 7. 扶養請求権に関する一考案. ‑157‑. をして不利である事情も承知のうえで,申立人の承継人となる Z手と同居するよラになっ た。なお,. x女はもともと病身で日常生活をする上で介護を必要としていた。. Z子と同居していた X女は生活に困窮し‑C,昭和48 年 4月20日 , Y男に対して本件扶養. の申立をするに蛮った。 X女が要扶養状態が発生していること,金銭給付が与えられるべ. き Pことを主張したのに対し, Y男は,引取扶養を拒むのであるから扶養についての責任が ない乙と,あるいは引取扶養が相当で品うるなどを抗弁した。しかし, 4 9 年 7月 1 9日家庭裁 判所は審判で月額 5万円の扶養料を扶養申立の日に遡のぼって支払うことを命じた。し かいこの審判に不服である Y男は即時抗告をなし,扶養料支払につい t争うところとな った。ところが,本件扶養の申立人である X女が 50 年 8月 5日に死亡し℃しまった。その ため Z子が X女の誇求を受継いだとし℃審判の承継を申立℃ることになった。事後 Z子が X女の Y男に対してもっすベ亡の権利を承継したとして原審判の当事者となる旨を主張し た 。. Z子は,本人の死亡によって相続が生じた場合,本件の扶養請求権はすでに審判がなさ れている以上,金銭債権化し,一身専属性を失っているのであるから相続の対象となるも のであること,それゆえ,申立人の誇求の日から死亡に至るまでの扶養料につい℃相続で きるのであるから,相続人とし℃本件抗告審手続上の地位もまた承継するものであること などを主張した。 これに対し Y男は,扶養請求権の相続はできない,あるいは自己の責任により資力を失 い扶養義務を免れた者が扶養誇求権を相続により取得するのは不条理であること,審判手 続で相続人の承継を認めることは違法であるなど抗弁した。 抗告容における判断は,全面的に Z予の主張を認容し,. z子が相続により取得する相続. 分の二分のー,すなわち家庭裁判所の審判で認められた扶養料のうちその支払の始期から X女の死亡の日に至るまでの合計額の二分のーに当る 68 万 7, 365円の支払請求権を取得し. たとして,右金員の支払を Y男に対し℃命じた。 抗告審の理由としては,① X女の扶養諮求につい'‑C,扶養はそもそも物質的給付に限ら れるものではなく精神的扶養の問題も考慮されるべきと考える X女の生活方針が要扶養状 態をより深めたとはいえ,病身で日常生活上の介護の必要性などを考えれば,抗告人 Y男 の主張する引取扶養がふさわしいとはいえないこと,また X女 Z子が生活保護を受けてき たこと, y男が資産を多数有し℃いることから金銭扶養が相当であるとと,② Z子が X女 を示継することについて,一般に親族聞の扶養諮求権そのものは)身専属性の抽象的な権.

(3) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑158ー. 第5 3 巻 第 1号. 1 5 8. 利であるが,扶養料の請求によってその範囲が具体化し,更に審判等に主って金銭債権化 し身専属性を失うものと解ずるのが相当であるから扶養申立の日から死亡の日に至る まで毎月 5万円宛支払うべき旨を定めた一審の審判は相当と判断されるので,右扶養料を 相続人である Z子と Y男が相続したものといえる。そうすると Z子は相続人として X女の 抗告手続の相手方としての地位を承継することができる。 抗告審の決定に不服である Y男は,原決定は憲法3 1条の適正手続の保降, 3 2 条の裁判を 受ける権利に途反するものであるとして,特別抗告した。 最高裁は右抗告には理由がないとし ' ( 5 4 年 7月 1 9日 抗 告 楽 却 し ど. 3 問題点 1) 本件において, y男は X女に対する扶養料の支払を X女が死亡するまで遅滞する. ことによって,扶養料支払義務の二分のーを結果的に免がれたことになる。原審決定で認 j と Z子が共同相続するという構成のうえ めたように X女の扶養料詰ー求権=金銭債権を y9 では当然の帰結となる。いいかえれば,扶養義務者が扶養権利者の相続人である場合,扶 養の実施を遅らしたり,しらないことによってその責任を回避することが理論上可能とな る。本件において. z 子が相続人の地位になし事実上扶助したり扶養している場合(近. 隣者が好意的に養っているなど), y男に対し℃扶養料の求償を行つ℃ゆくための理論を どのように構成することができるであろうか,原審の理論の問題点を挙げながら,扶養法 の方向,問題点を指摘する。 2) 扶養請求権をめぐる問題. a 扶養の権利義務は(1)夫婦問 9 9 7 5 2,7 6 0,(2)親子(未成熟) 9820, (3)親族. 8 7 7,さらには他の法理との関係、で親族・身分関係が拡張され認められる場合とがあ 問S (6). る 。 (7). 扶養義務は生活保持義務と生活扶助義務とに分けられているが,ここでは生活扶助義務 について検討する。 ところで,生活困窮者となった扶養権利者は義務者に対して扶養を請求するが,その請. (5) 最高裁は窓法判断のみを行っているので原審判断を是認した結果であるといいされ ない点に若干の問題は残る。 (6) 内縁配偶者間,未認知親子関の扶養。 (7) この点については,佐藤隆夫「生活保持と生活扶助」現代家族法大系 3 4 0 6 頁以下 参照。.

(4) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑159ー. 扶養請求権に関する一考案. 1 5 9. 求が権利行使として怠味をもつのは,また,扶養義務者が具体的債務として責任追求され るのは権利者の具体的生活状態とどのように関係するか,考察し℃みよう。 扶養義務の発生は,前述のように親族関係を構造上の要件とし,具体的状態からの要件 として, (1)要扶養状態の発生(扶養の必要性), (2)扶養義務者の要扶養能力(扶養の 可能性)とがあり,この要件は扶養権利者の請求と密接にかかわっている。つまり,扶養 の実施にあたっては,順序方法程度など具体的内容の決定が不可欠で,そのために扶養義 務者は権利者の状態を正確に了知することが前提になる。それゆえ,扶養義務者の義務は 抽象的な義務のときと具体的義務のときとに峻別され論議されることになる。この峻別は 義務者に苛酷な負担を強いることのないように,権利者・義務者間の衡平の配慮の一つに (8). 他ならない。しかし,権利者が扶養請求をしていないが,権利者自身生活は危く,第三者 から扶助を受けて生活している場,あるいは自分自身で何とか食い継いでいる場合,扶養 義務者の義務は抽象的な義務のままであり,たとえ扶養可能状態であったとしても具体的 義務有りとはいえない。乙の義務を峻別する理論は,じゅらうい過去の扶養料との関係で 論じられてきたことを鑑みれば, r 過去の扶養料」に関する扶養義務者の責任範囲の確立に (9). 際し,. r 請求」の位置づけを詳細に検討することが必要になるう。. 扶養権利者の生活は扶養義務者の扶主主料支払の有無にかかわりなくあるのだから,確実 な扶養料の支払が要求される。その意味で扶養料支払依務は定期的債権と云えるが,代替 的措置が可能であり,かっそれが要求される点において絶対的定期債務としての色彩は緩 ( 1 0 ). 和される。 扶養誇求との関係では,権利者に 意思能力がない場合,相手方が知れない場合,扶養義 l. 務者に具体的義務を発生させる方法の検討が要求される(子の養育費請求理論の参照〉。 扶養料は将来の生活に向けて給付されるものであるにしろ,過去の事情,未払分(過去 の扶養料といラことで)を除外してゆくことは難しい。扶養料は協議・審判で方法程度内 容等が決まるとき,協議等に応じない者は常にその{ti務を免れることになるし,扶養権利 者は生存の危機にさらされたまま放置されることになる。. b 扶養誇求権は扶主主権利者のために認められる一身専属権である(~ 881)。この一身 (8) 我 妻 栄 親 族 法 4 1 3 真 。 (9) 扶養義務者の支任は「扶養請求」を一つの基準とする。すでに支払われた過去の扶 主主料についての求償義務の存否等のためにも具体的義務の検討が要求され,協議等が 行なわれる。結果的には,過去の扶養料という概念について再検討すべきである九 ( 1 0 ) 中川善之助親族法 6 1 8頁 。.

(5) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 160‑. 第5 3 巻 第 1号. 1 6 0. 専属性は扶養義務者?に対する「請求」を一つの基準としてその一身専属性の寅失が i 云われ る。それゆえ,扶養義務者の義務が抽象的義務と具体的義務とに峻別されたように,扶養 諮求権も金銭債権化された扶養請求権とそのままの扶養請求権とに分かれ,具体的な, 金銭債権化したものが相続対象となってくる。しかし,そもそも,扶養請求権は権利者が 生存してゆくためにはじめてその行使が扶養権利者に認められるものであるから,権利者 死亡後に相続を事由に扶養諮求権(もちろん金銭債権イじしたものであるが)を相続人が行 使することは論理的矛盾を生じさせる。 扶養請求権行使に関連して相続法理の適用を認めるととは,扶養権利者,義務者および 関係者聞の扶養料支払債務における経済関係処理に他かならない。相続法君主を適用して扶 養料支払債務に伴う経済関係処理をするのが合理的か,他の財産法理を適用して問題を処 必ずるのが合理的なのかは別の次元からの判断が必要となる。本件判例のように,扶養義 務者が扶養権利者の相続人である場合,前述のような不合理な結果となる。相続人でない 扶助者の場合,どのように求償問題を処理したかは疑問であるう。 この点から扶養請求権の金銭僚権化構成を再検討してみる必要があり,また相続の対象 に含ましめることの是非についても一考を要するであるラプ. 3) 審判をめくる問題 ( 1 3 ). a 扶養誇求事併における当事者適格をどのように考えるかがj 重大な問題となる。扶養 請求をしている権利者および請求を受けた義務者は当然に}当事者であるが,まず, (1)諮 求を受けていない他の扶養義務者がその審判の当事者に当然なりうるか, (2) 現実に扶 養権利者を扶助している者があるとき,当事者として審判に加わることが可能か,現実の 扶助者があって,その者が扶養義務者でない場合にはどのような方法が考えられるか,. (3)扶養申立をする能力がない場合,相手方行方不明の場合どのように当事者を定める ( 1 4 ). 。. i J '. 扶養の本来的意味,家事審判の機能を考察するとさ,当事者適格を厳格に 解する意義が l. ( 1 1 ) 羽山和夫注釈民法 ( 2 3 )422‑424 頁。 ( 1 2 ) 扶養請求権は権利者個有のもので,未払分,未定分につい℃質的転化があったとし ても,扶養誇求権そのものにいっては変化していない。扶養請求権と求償問題とは切 り離して個別的に理論を考えるべきではなかるうか。 ( 13 ) 考え方の方向として,安倍正三「扶養審判の本質と機能J現代家族法大系 3 5 0 3 頁 以下,同「過去の扶養料の求償」ジ::J. 940 1 7 9 頁 。 ( 1 4 ) 鈴木忠一「扶養の審判に関する問題」非訟・家事事件の研究 1 7 6 頁 。.

(6) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑‑161ー. 扶養請求権に関する一考案. 1 6 1. とれほどあるのか,家族・親族問題の適切かつ迅速な合理的処理を目的とする場合,さら に具体的な検討が必要となる。 訴訟では共同訴訟,訴訟参加などの制度がある ζ とを勘案すれば,審判における当事者 の範囲拡張はモれたりに可能であろうし,意味をもちラる。 b 審判係属中本件ーのよラに当事者が死亡した場合,当事者の変更,承継などの手続問. 題をどのよラに考えるかである。本件では請求権モのものの承継があったとして手続上の ( 1 5 ). 地位も当然に受継ぐと解した。係属中の死亡の場合,受継を認める説と扶養審判申立の主 旨からすれば,扶養請求者の死亡は請求そのものの王子在意義を失うものであるから,手続 は終了すると解する説とに分れる。 審判の受継を認める理由が扶養諮求権の金銭債権化という理論との関係とすれば,審判 制度本来の意味からの検討が再度なされるべきであろう。すでに述べたように,当事者適 格拡張が可能であれば,本件 Z子は当事者とし t審判参加が可能となるわけだから,審判 の承継という理由付は不要となる。〕 4 将米の課題. 扶養をめくる問題で重要なことは,. 1)現実の扶養をどのように 確保するか, l. 2)扶助. した者が扶養義務者に求償する手段が保証されるか, 3) 扶養請求手続に おける迅速性, l. 合理性をどうするか,であろう。 具体的にはすでに問題点とし℃指摘したように,扶養義務者が扶養権利者の相続人であ れば,扶養料支払を遅滞すればするだけその責任を免れるという構造をどのように回避す る必)また現実の扶助者に対する求償をどのよろに構成するかで. 4 1 2 0. さらに,扶養料支払債務については審判とは別に訴訟手続で争えることから審判の既判 ( 2 0 ). 力の問題が残こる。 最後に立法論として,現行法の不備の補充をどうするか。すなわち,実現方法,その拘. ( 1 5 ) 村崎満「過去の扶養料」家族法大系 V156頁,原審の判断と悶じ。 ( 1 6 ) 多数説,鈴木前掲 1 6 6 頁 。 ( 1 7 ) 現実の扶助者が審判上に偲有の地位を確立すれば,申立人の死亡は将来の扶養につ いての面で申立の意味を失うが,事後処理との関係で審判は維持でまよう。 ) 具本的内容決定のために今後「一切の華清を考慮して」の内容の展開が問題となる ( 18 う 。 ( 1 9 ) 鈴木前掲 1 8 6 頁(弁済者代位論),事務管理論の準用が検討されよう。 ( 2 0 ) 扶養事件では訴訟事項と審判事項の機能分担を有機的に構成することができない か 。.

(7) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑162‑. 第5 3 巻 第 1号. 1 6 2. 束性,求償権について何らかの規定を検討すべきであろう。 公的扶助制度が充実したとしても全面的にそれが私的扶養にとっ℃代ることは今日の社 会構造上難しいことであろう。この問題は扶養の程度問題に帰着するかも知れないが,私 的扶養lt:関する詳細な規定が望まれる。. 1 9 8 0 年 4月2 0日稿.

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参照

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