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出版物 : 現代オセアニアの<紛争> : 脱植民地期 以降のフィールドから

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出版物 : 現代オセアニアの<紛争> : 脱植民地期 以降のフィールドから

著者 丹羽 典生

雑誌名 民博通信

巻 141

ページ 25‑25

発行年 2013‑06‑28

URL http://hdl.handle.net/10502/5798

(2)

No. 141 民博通信 25

<オセアニアの紛争に関する研究>

本書は、筆者の科研に基づく研究「オセアニアの紛争に関 する文化人類学的研究

:

フィジー諸島共和国の事例から」と、

国立民族学博物館(みんぱく)で主催した共同研究「オセア ニアにおける独立期以降の<紛争>に関する比較民族誌的研 究」の研究成果の一部として出版したものである。

上記の

2

つの研究は、近年増大している第三世界の紛争の 特質の一端を解明することを目的としていた。前者がこれま で筆者の主たる調査地であったフィジーにおける民族誌的調 査から得られた知見に基づき、そこで起きた紛争を捉えるこ とに力点があるのに対して、後者は、オセアニアという地域 的枠組みのなかにおいたときにみえてくる、紛争の特徴に関 する比較研究に焦点があった。

こうした研究を立案した経緯には、冷戦以降の第三世界に おける民族紛争の増加や、低強度紛争という新たな紛争の出 現など、大きな意味での戦争形態の変化がしばしば指摘され てきたという時代認識がある。オセアニアにおいても、植民 地時代の政治闘争以降の政治的に安定した時期を経て独立を はさみ、1990 年代後半以降、暴動から民族紛争、クーデタま でさまざまな政治的問題が起きている。ところが、その一方 で、オセアニアの紛争に関する研究は、ことに日本語という 文脈においては、十分なされていないことに、筆者はつねづ ね問題を感じていたのである。

<本書の焦点>

オセアニアの紛争について先行研究がすくなかったこと には、理由がある。まず、温暖で美しい海に囲まれた、世俗 的な争いとは無縁な風光明媚な環境を備えた、オセアニアと いう楽園のイメージがあろう。また実際に、飢餓の問題が起 きているような国とはことなり、生計維持経済の水準では相 対的に豊かな国々である。それ以外としても、国家の総人口

100

万人以下の国が多くある地域であり、そうした規模の点 も、紛争などの問題が看過されやすい理由のひとつとして数 えられる。そのため、オセアニアの水準では比較的大きな紛 争であっても、国際政治学などで下される紛争の定義にはあ てはまらないということが起きることになる。いわば、オセ アニアの紛争は、みえない政治的問題として存在していたと もいえる。

本書では、そこで、オセアニアの政治的問題を、脱植民地 期以降という時代的限定を設けた上で、オセアニア各地の現

在の政治的状況を明らかにすることに焦点を絞った。執筆者 は、そうした意図にあわせて、2000 年以降にフィールド調査 を行っている方々を中心に、現地での調査や滞在に際して、

近年の政治的変化の影響を受けることが多々あったであろう 研究者を選んだ。

<今後の展望>

本書を通じて、オセアニアの紛争に関する大まかな見通し を提示することができたと考えている。そこで、今後の展望 としては、本書での成果を踏まえた上で、みんぱくの共同研 究会参加者各自の調査地における政治的問題に関する分析を 提示していただき、それをとりまとめることで、オセアニア の政治的問題についてより深みをもった分析にしたい。

それ以外には、オセアニアという枠を超えた地域間比較と 歴史的研究との接合した分析の方向に研究を開いていくこと を予定している。

地域間比較については、地域研究コンソーシアムによる ワークショップ「現代の紛争をめぐる地域間比較研究に向け て―アフリカとオセアニアの事例から考える」(2012 年

12

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日、藤井真一代表、国立民族学博物館)において部分的 に行った。オセアニアのデータを、紛争の事例や研究の豊富 なアフリカと比較することで、人類にとって紛争とは何かと いう、紛争を考える際のより包括的な枠組みについて検討し ていきたい。

歴史的研究との接合については、国際シンポジウム「グ ローバル化における紛争と宗教的社会運動―オセアニアにお ける共生の技法」(2013 年

1

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日、国立民族学博物館)の かたちで一部行った。世界各地では、植民地化をはじめとす る社会変動期に起きた宗教的社会運動と、1980 年代以降のグ ローバル化の影響を受けて生起している広い意味での宗教的、

政治的諸運動との比較研究である。両者を同じ土台の上で比 較検討することで、紛争に関する通時的な研究についても引 き続き行っていきたいと考えている。

現代オセアニアの<紛争>

―脱植民地期以降のフィールドから

丹羽典生・石森大知編 昭和堂/2013 年/本体

3,000

円+税

 丹羽典生

研究戦略センター准教授。専門は社会人類学、オセアニア地域研究。

著書に『脱伝統としての開発:フィジー・ラミ運動の歴史人類学』(明 石書店 2009年)、論文に「紛争と政治的混乱:アフリカ化論の批判的 検討を通じて」遠藤央ほか編『オセアニア学』(京都大学学術出版会 2009年)など。

参照

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