第
1部
まちづくりの視点と課題
ー論点整理一
井 原 健 雄
I
「まちづくり」とは何か?
I
I
「都市化」の進展
II
I
「まちづくり」のルール
w
「都市経済学」への勧誘
I
「まちづくり」とは何か?
1
概念規定について
まず最初に、 「まちづくり」とは一体何かについて考えてみたい。なぜなら、 「まちづくり」の言葉が 非常に分かり難いからである。近頃、分からない言葉があたかも分かったように理解され、各人各様に使 用されている。その最たるものが「まちづくり」と「地域活性化」であろう。その言葉の意味が明確に理 解されておらず、学問的にも確立されていない。それにも拘わらず、 「まちづくり」や「地域活性化」の 議論が色々となされている。旧約聖書の冒頭には“はじめに言葉ありき”と書かれているが、可能な限り 用いられる概念を明確にしておく必要がある。グローバルスタンダードなどと言われているが、なにより もその言葉の意味を正しく理解しておくことが肝要であり、同じ言葉でも理解が異なると大きな誤解を招 くことになる。その点を強調しておきたい。大切なことは、概念や言葉の定義を明確にすることなのであ る 。
そこで、ある事柄を正しく理解するためには、三つの方法がある、と私は思っている。その一つは、
ヴァーバルプレゼンテーションであり、これは「言葉で」という意味である。少なくとも「まちづくり」
は、言葉としては納得できる。ところが「まち」をつくるなど、一体誰が考え出したことなのであろうか。
「まちづくり」の)レーツは、 「村おこし」や「町おこし」にあり、 「町おこし」から「まちづくり」に
なったようである。また、 「村おこし」や「町おこし」の発端は「島おこし」であり、沖縄からはじまっ
たと伝えられている。その沖縄は、本土から見ると離島であり、経済的なハンディキャップがあった。そ
のような沖縄の振興のためには、国の中央政府に頼らず、自らの知恵と努力を結集する必要があった。他
人に頼らず島をあげての振興策に取り組み、これが「島おこし」のルーツとなった。その発想が全国に普
及したわけである。このようなことは、わが国ではすぐに普及する。たとえば、大分の一村一品運動や
ウォーターフロントの事業などを想起されたい。ところが、本来の「島おこし」の意味、すなわち、他人
に頼らず自分たちでやろうとする自立自助の精神が次第に看過され、その地域を良くするためには、陳情
や請願をすればいいという状況になっている。その意味でも、もっとその)レーツや語源にこだわって欲し
いと思う。
「まちづくり」の言葉には多様な意味があり、人によってその解釈が大いに異なる。とくに、ヨーロッ パの「まちづくり」とわが国の「まちづくり」の理解は全く違う。そこで、言葉の意味を可能な限り厳密
に理解して欲しい。このようなコンセプトの定義が、まず最初に試みるべき課題である。
ところが言葉による説明は、分かったようで意外と分からないものである。たとえば、本四架橋の瀬戸 大橋を例にあげると、せっかくの橋にも拘わらず、料金が高い、割高感があると言われている。しかし、
割高とは一体何なのかよく分からない。高ければ利用しなければいいわけである。利用している人にとっ ては、現行の通行料金を上回る便益を得ているわけである。その便益を全て計測し、その費用と対比させ て考えるのが費用便益分析であり、すでに経済理論に基づく計測がなされている。それを無視して割高だ という議論は一体何なのか、よく分からない。最近では、外国旅行が割高であるとはあまり聞かない。ゎ が大学の学生たちも、よく外国旅行に行っているが、私から見ると割高に思えても、学生はそうではない らしい。もしもそうだとすれば、割高とは一体何なのか。高ければ、止めればいいわけである。言葉によ る説明では、日本語はもとより、英語やドイツ語、フランス語など、全ての言葉で翻訳されねばならない。
よく間違うのは、中国語と日本語である。同じ漠字を用いることからよく似ており、またよく似ているほ ど誤解が生じやすい。たとえば、自動車を中国語では汽車と書き、中国語の汽車は自動車である。汽車は 火車になる。そこで、同じように漢字を使っているから同じだと受け止めれば、大きな間違いを犯しかね ない。その点にも十分に気をつける必要がある。とくに中国では、文化革命以降、日本人が中国に対して 抱いている印象は日本人固有のものであり、儒教や孟母三遷などの話は文化革命以前のいわゆる四書五経 は、現在の中国では殆どといってよいほど評価されていない。とりわけ儒教は、宗教であるという理由で、
公的には論じられない。日本人が古い中国に対して抱く考え方と現在の中国の社会主義市場経済の動向と は、全くといってよいほど異なっている。その点を正しく理解する必要がある。
とはいえ、まず最初、ヴァーバルに_言葉で一説明することが大切であり、次いでグラフイカルプレゼ ンテーションが望まれる。それは、グラフや絵で示すことである。言葉では誤解しがちなので、誰にでも 分かるように視覚に訴えるように心掛けるわけである。デジタルではなくアナログ的に表示するのである。
たとえば、縦軸に価格を、横軸に数量を描く。一般的に物の価格が高いと需要は少ないが、下がると需要 は増える。これが、需要の右下がりの法則といわれる。たとえば、ビールの価格が高いときには需要はあ まりないが、価格が下がると需要が増える。自動車も同様である。言葉で説明しなくても、図を見れば一 目瞭然である。ただし、ここにもまた限界がある。それは、せいぜい二次元の世界であり、黒板に書ける から分かるのである。たとえ価格が高くてもお金を沢山持っていれば、需要は増えるのである。そうなる と、所得を図る軸が必要となり、その所得と価格によって数最が決まることになる。したがって、三次元 の世界となり、それを黒板に簡単に書くことができなくなる。地図がそうである。地圏では、三次元の高 さを等高線で表しているが、そういう工夫が必要となる。三次元でもそれを二次元に集約して考える工夫 がなされている。そういう点での限界がある。もう一つの限界は、果して需要曲線の形がどの程度正確な のか分からないことである。これを具体的に述べると、瀬戸大橋の通行料金が片道
6千円であり、そのと きの車の利用台数が一日
1千
5百台であったとしよう。ところが料金を半額にすると、需要はどうなるで あろうか。
2倍以上に増えるであろうか。それとも
2倍以下の水準に止まるであろうか。もしも前者であ れば、料金を下げた方が通行料の総収入は増えるであろうし、後者の場合には、逆に減ることになろう。
このような問題を解明するために導入されるのが、需要の価格弾力性である。すなわち、通行料金という
限界的な価格の変化により、車の利用台数がどのように変化するかを正確に捉える指標に他ならない。こ
こに、第 3 の方法として、数学的なプレゼンテーションが必要になるのである。すなわち、言葉による説
まちづくりの視点と課題ー論点整理一
明とグラフによる説明に加えて、数学的なモデルの構築と計最的な分析が望まれるのである。
そこで、 「まちづくり」の議論をするとき、言葉の説明だけでなく、グラフによっても説明できないも のであろうか。たとえば、まちの境界領域が広がっているのか、それともそのまちが衰退しているのか、
土地利用はどうなっているのかといった事象を、視覚に訴えて説明できないものであろうか。もとより、
そのような場合には、まちの動学的、動態的な分析の仕方が問われることになろう。すなわち、経年的な 変化の動向に注目する必要があり、それゆえにまた、数学的な表示の方法も不可避となるであろう。要は、
上記 3 つの方法を相互補完的に用いることが望まれるのである。
2
「まち」の定義と「つくり」の定義
それでは、 「まちづくり」の「まち」を広辞苑ではどのように定義しているか、紹介しておこう。記述 されている内容を網羅すると、つぎのとおりである。
•
田の広さや区画の単位。
•
宮殿または邸宅の内の区画。
・人家の密集している所を、道路で分けた一区画の称。市坊。
・商店の建ち並んだ繁華な土地。市街。街。
・階層。級。程度。
・地方公共団体の一つ。市町村の町。市につぎ、村より大きいもの。
・市・区を構成する市街の小区分。
・物を売る店。
以上のことから、きわめて多くの内容を有していることが分かる。それだけに、分かったような気がし て実はよく分からないのが、実態ではないであろうか。ある場合には商店街のことでもあり、他の場合に はそうでもないから、誤解や混乱が生ずるのである。
つぎに、 「まちづくり」の「つくり」について広辞苑の説明を紹介しておこう。
•
こしらえること。また、そのもの。また、その人。
・つくったさま。こしらえた体裁。つくった具合。
・装飾すること。よそおい。
・書いたさま。書き方。
•
さしみ。つくりみ。
・農作物。作柄。
・わざと或るさまをよそおう意。
・漢字構成上の名称。
以上の説明から分かることは、 「つくり」というときには、そこに何か意固的な関わりー作為ーがある ということである。したがって、 「まちづくり」とは「まち」を「つくる」ことであるという、極めて自 明の内容しか導出されないことになる。それだけに、 「まち」とは何かということが重要であり、その
「まち」を意図的に変えるという作為が「まちづくり」にほかならない。そこで、考えられる結論として、
「まちづくり」とは都市政策ということになるのではないか。 「まち」を一つの「都市」として見た方が
いいのではないか。もとより、 「都市」にもさまざまな意味が付与されているが、 「都市」という言葉に
よって、ある程度は共通の理解と認識が深まるのではないかと考えるものである。 「まち」といえば、商
店街のように街と書いて「まち」と読んだり、市町村や自治体の行政単位の区画を「まち」と読んだり、
平仮名の「まち」など、実に多様な意味があるので、注意する必要がある。その点を、まずしつかりと押 さえておかないと、 「まちづくり」の「まち」が、一体何を意味するものか分からなくなる危険性がある。
それが最初の問題提起に他ならない。
3
都市政策の意義
そこで、都市政策について語るとき、必ず政策についての理解が求められる。その政策とは、英語でボ リシーといい、そのポリシーには自ずと論理(ロジック)が備わっている。そこで、政策志向の考え方に ついて言及しておこう。その第
1点は、過去の経緯に基づく現状認識を正しく行うことである。たとえば、
現在の「まち」がどうなっているのか。その「まち」が何年かかって現在のような「まち」になったので あろうか。過去の経緯に基づく現状把握をしつかりと行う必要があるということである。その第
2点は、
さらに将来を展望し、予想と目標を明確に峻別することである。予想とは、将来の動向に対する見通しで あり、予測でもある。しかし、そのような予想や予測をするだけでは十分ではなく、もっと望ましい目標 や目的をもつことが必要なのである。しかも、単純な予想と望ましい目標とが明確に峻別されていなけれ ば、政策の意義が存在しなくなる。 「まちづくり」といっても、望ましい方向に向かっていれば、意図的 な作為が不要となり、余計な干渉を含めて何もしない方がむしろ好ましいという帰結を得るからである。
そして、第
3点は、目的と手段との基本的な対応関係について理解を深めることである。また、その結果 として、もしも予想と目標とが異なった場合には、その目標に少しでも現実を近づけるための方策が求め られることになるわけである。すなわち、誰(どのような政策主体)が、どのような政策手段を、どのよ うなタイミングで行使するかが問われることになる。これを「まちづくり」のコンテキストに沿って述べ ると、現在の「まち」をどのような「まち」に変えようとしているのか、その目標がどこにあるのかを明 確に規定して掛からなければ、ただ単に運動論としての「まちづくり」に終始しかねない。たとえば、規 模の拡大もその一つの政策目標になり得るが、たとえ規模が小さくても、光り輝くような質を重視した
「まち」にするとか、あるいはまた、当該地域住民の要望に適切に応えうるきめ細かなサービスの提供が 可能となる「まち」にすることを政策目標に掲げてもよいのではないか。要は、上記の 3 点に配慮した政 策のロジックに基づく「まちづくり」を実践して欲しいということである。なお、複数の政策目的を同時 に達成しようとすれば、少なくとも複数の政策手段を混ぜて使用することーボリシーミックスーが求めら れることになる点に留意する必要がある。また、われわれが「まちづくり」の「まち」という場合には、
日常の会話で使われるような「まち」ではなく、厳密に科学的な言葉としての「都市」概念に着目し、そ の都市を対象とした「都市政策」について理解と認識を深めて欲しいということである。
つぎに、都市施策における政策手段について言及しておこう。その最も重要な政策手段と考えられてい るのが、 「都市計画」と「都市財政」である。もとより、そのいずれも、現実の市場機構に対する政府介 入に他ならない。このうち、前者の場合には、土地利用を決定する土地市場への直接的な介入を意味する のに対して、後者の場合には、公共サービスの提供や、課税、補助金などにより、土地市場を含むさまざ まな市場への介入を意味するものとなっている。
このうち、 「都市計画」の内容は、つぎの
4つに大別される。
・市街地整備
まちづくりの視点と課題ー論点整理一
また、 「都市財政」によって提供されるべき公共サービスは、つぎのように分類される。
•
都市活動の維持のために必要不可欠な基礎的公共サービス
・低所得層、生活困窮世帯、老人などに対する社会福祉的公共サービス
これらの公共サービスのいずれに重点を置くべきかについては、費用便益分析などによるべきであるが、
最終的には、都市自治体の構成員である地域住民の選択に委ねられている。したがって、都市政策の手段 としては、上記の「都市計画」と「都市財政」の有効範囲と限界をわきまえ、その明確な規定とその政策 手段の遂行に伴う効果の評価を正しく行うことが、とくに強く望まれる。
I
I
「都市化」の進展
1国土空間構造の変容
わが国における経済成長の推移は、大規模な人口移動の変化を誘発し、国土空間構造の著しい変容を随 伴した。つぎの 2 つのファクトファインデイングズは、その要約である。
・全国土面積のわずか
3 %にも満たない面積のなかで全国人口の約
6割が集中している。
・全国土面積の約
5割を占める過疎地域の人口比率は、総人口のわずか6.5% を占めるに過ぎない。
このように日本列島をみると、国土の利用は非常に歪められている。北海道、本州、四国、九州で人口 が集中している所は何処かといえば、もっぱら太平洋ベルト地帯であり、第一国土軸に沿った地域なので ある。香川県の人口は約
010万人である。これを他の地域と比較すれば、神戸市が1
50万人、したがって、
香川県の総人口より神戸市の方が多い。また、神奈川県の人口は約8
00万人強となっている。四国四県合 わせても
400万人しかいない。兵庫県の総人口でも
605万人。四国の総人口より兵庫県の方が多いのである。
もとより、この
605万人の人口の大半は、神戸市を含む瀬戸内沿岸に集中している。
つぎに、このような人口の経年的な変化に着目してみよう。東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の
1都 3 県からなる「東京圏」についての人口の純増ベースでみた社会増加は、他の地域ブロックと比べて突出 した水準を示していた。たとえば、
5981年から
0991年までの
5年間における全国の人口増加に対する東京 圏のシェアは、その59% を占めており、また、その結果として、
0919年における東京圏の人口は約3
180,万人で、その対全国比は2
.5 7%となっている。ところが、最近の東京圏への転入超過数は、
7819年の
61万 人をピークに毎年減少を続け、
9319年にはついに
,0001人となった。そして、現在では純流入がゼロと なっている。一方、地方圏ではこれまでの転出超過から全体として転入超過に転じている。したがって、
東京圏への一極集中は、現在、新たな局面を迎えているといえよう。
少なくともこれまでの全国総合開発計画では、そのいずれを問わず、つねに「国土の均衡ある発展」を 唱え、また、その成果を評価するための指標として、終始、 「地域間格差の是正」が取り上げられてきた。
しかし、わが国における交通基盤の経年的な整備にも拘わらず、所得の地域間格差は縮小化することなく、
一方、東京圏への集中化傾向は根強いものがあった。このような厳しい状況を前提として考える限り、こ
れまでの延長的思考を断ち切り、 「均衡」から「最適」志向への脱皮を図り、異質性や多様性を許容する
新たな開発理念が問われているのである。
2 「地域の空洞化」等に関する報道
つぎに、国土空間構造の変容に関する最近の新聞報道に着目し、その概要について紹介することにしよ う 。
その
1つは、
9991年
8月2
7日付けの日本経済新聞に掲載された「東京圏への集中鮮明:地方中核都市は ー服」という記事である。
「人口の東京一極集中が再び鮮明になってきた。自治省の住民基本台帳人口調査
9991(年
3月末時点)で は、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川の
4都県)の人口増加率は
3年連続で上昇。他の大都市圏や地方 圏が伸び悩むなか、 「東京圏復活」を印象づけた。地価下落に伴い利便性の高い都心回帰の動きが強まっ ており、地方圏との人口格差が一段と開く可能性も出ている。」と報道されている。東京圏への一極集中 が、再び顕在化し始めたという指摘である。今後の動向に注目する必要がある。
他の
1つは、同じく
9991年
8月2
7日付けの日本経済新聞に掲載された「町村の
7割で減少:福祉など担 い手不足も」という記事である。
「東京圏への人口集中傾向が再び強まる一方、町村の過疎化が深刻になってきた。全国3
55,2市(区)町 村のうち、
3/2の2
414,団体で人口が減少。とくに、町村部では人口流出がとまらず、福祉など行政サービ スヘの影響を懸念する声も出てきそうだ。」と警鐘している。そこで、この点について、さらに立ち入っ たつぎのような指摘を行っている。
「人口が減少した町村は、全体の
7割に当たる
39,81団体にのぼり、比較可能な
8791年以降最も多くなっ た。町村は
56歳以上の老年人口比率が2
.0 78%。政令指定都市に比べて
. 36 5ポイントも高く、介護サービ スなどの需要が高まる反面、サービスの担い手になる若年層が不足する時代に直面している。」と。さら に加えて、
「日帰り介護を行うデイサービス施設を運営する場合、
1カ所当たり人口7
00,3人が必要とされるが、
32,11市町村がこの人口基準を下回る。自治省は今月(この
8月)、行政サービスを効率的に提供するための最 少人口規模を
1-2万人として、市町村合併を進める指針を打ち出した。
1万人未満の市町村は、全体の4
41.7%。単独で十分なサービスを提供できないため、自治体連合を組むケースも登場している。」と。
上記の
2つの報道は、極めて重要な意味をもっており、今後の市町村合併の動きを含む広域行政のあり 方について、さらに注目する必要がある。
さらに、付加すべき報道として、
9991年
9月1
6日付け日本経済新聞に掲載された「東京:一段と膨張」
という記事がある。
「周辺部から多くの人が集まる「都市圏」 (通勤・通学圏)のうち、最も勢いのあるのはどこかー。
5991年国勢調査を基にした日経産業消費研究所の人口動態分析によると、東京2
3区を中心とする「東京都市 圏」が一段と膨張、地方では5
0万人以上の都市圏が続々と誕生していることが分かった。反而、大阪圏は 周辺部の地盤沈下が著しい。交通網の整備や産業構造の変革に伴って地方都市圏の勢力図も大きく塗り替 わりつつある。」と指摘している。
東京圏への一極集中がようやく落ち着きを見せ始めたと言いながら、また再び、地方圏と大都市圏との 格差が拡大する傾向が出始めているのである。都市は生き物であるだけに、このような事態に遭遇して、
どのような「まちづくり」を心掛けるべきであるのか、改めて深く省察することが望まれる。
まちづくりの視点と課題一論点整理一
皿 「まちづくり」のルール
1都市計画法の概要
「まちづくり」を行う場合、少なくとも守らなければならない「ルール」がある。その「ルール」とは、
「都市計画法」という法律であり、この法律の縛りは非常に大きい。したがって、その法律を知らずして
「まちづくり」は語れない、ということになる。
そこで、この「都市計画法」について言及することにしよう。この「都市計画法」とは、昭和
44年
6月 14
日に施行され、その後、毎年少しずつ改正が行われてきた。最新の改正は、平成
21年
5月
91日に一部改 正が行われた。その構成は、つぎのようになっている。
第
1章 総 則 ( 第
1条~第
6条 ) 第
2章 都 市 計 画 ( 第
7条~第
2 8条 )
第
3章 都 市 計 画 制 限 等 ( 第
2 9条~第
5 8条 ) 第
4章 都 市 計 画 事 業 ( 第
5 9条~第
7 5条 )
第
5章都市計画中央審議会等(第
7 6条~第
7 8条 ) 第 6 章 雑 則 ( 第 7 9 条~第 8 8 条 )
第 7 章 罰 則 ( 第 8 9 条~第 9 7 条 )
このうち、第
1章「総則」の第
1条では、 「この法律は、都市計画の内容及びその決定手続き、都市計 画制限、都市計画事業、その他、都市計画に関し、必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と 秩序ある整備を図り、もって国土の均衡ある発展、公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。」と その目的を規定している。その詳細については、新たに改正された「都市計画法」の条文を、直接、参照 されたい。
2
制度改正の趣旨と基本的方向
都市計画法に関する今回の改正は、これまでの基本的理念や考え方について、かなり大幅な改正が試み られているので、その点について言及しておこう。
まず、制度改正の趣旨と効果については、概ねつぎのとおりである。
「活力ある中心市街地の再生と豊かな田固環境のもとでのゆとりある居住を実現することこそ、今後のま ちづくりの目標であり、理念である。このため、まちづくりの手段である都市計画制度についても、地域 の自主性を尊重し、地域特性を活かせる使い勝手のよい仕組みとなるように、抜本的な見直しを図る。具 体的には、貴重な土地を有効利用するために、緩和すべきは緩和する一方、良好な生活環境を保全するた め、規制すべきは規制し、地域の実情に応じたメリハリのきいた運用が可能となる制度構成に改める方向 で見直しを図るもの。」となっている。
また、制度改正の基本的方向としては、つぎの 2 点が指摘される。
1) 郊外部を対象とする制度改正の方向として、良好な田園環境でのゆとりある居住の実現を図ること。
・線引き、開発許可制度の見直し
・非線引き白地地域を対象とした制度の見直し
2)
中心市街地を対象とする制度改正の方向として、土地の有効利用と活力ある都市の核づくり。
・商業地域内の一定の地区において、関係権利者の合意に基づき、他の敷地の未利用容積を活用する。
・密集市街地等で老朽建築物の建て替えを促進するため建ぺい率規制を緩和する。
・土地利用と施設整備を一体的に計画し、良好な環境を形成、保持するため、地区計画の適用を一般化 する。
なお、今回の都市計画法の大幅な改正について、9991 年01 月92 日付けの日本経済新聞では、 「分かりや すい都市計画に」と題する社説を掲載しているので、その内容を再述しておこう。
「まちづくりのルールを決めた都市計画法を、建設省は約03 年ぶりに抜本改正する。改正案は来年の通常 国会に提出する予定である。その案を審議している都市計画中央審議会での検討の概要をインターネット などで公開し、国民の意見を求めている。
改正案では、規制にメリハリをつけることで全体として調和のとれたまちづくりをめざしている。この ため、従来より、規制を強化する分野と、緩和する分野をはっきりさせている。都市計画法は、原則とし て都市計画区域を対象としている。ところが、改正案には、都市計画区域外でも、市町村が用途地域や地 区計画などによって土地の利用を抑制できる仕組みを盛り込んでいる。これは、無秩序な大型店の立地や 開発に対する規制を強めるのがねらいである。反面、市街化区域と市街化調整区域を
2
分する線引き制度 については、3
大都市圏の既成市街地などを除いて都道府県が線引きそのものの要否を決定できるように する。地域によっては、市街化調整区域の開発抑制が発展を妨げるといった弊害が出ているためである。これは、規制を緩める措置である。これからのまちづくりで、市民の果たす役割は、ますます大きくなる だろう。都市計画やそれに関連する法は複雑で、分かりにくくなっている。身近な法である以上、専門家 しか理解できないのでは意味がない。法の体系を見直し、細かいことまで盛り込まずに、地域の実情に応 じて柔軟に対応できるものにする必要がある。それには、第一線の市町村の判断を難璽するような仕組み にすることが肝要である。都市計画のあり方は、大都市と地方都市など地域の状況によって大きく変わる からである。都市計画法は、 「まちづくりの憲法」ともいえる。その改正にあたっては、市民参加を実践 することが望ましい、大がかりな改正を控えた今は、その好機である。電子メールや郵便、ファックスな どで大いに意見を出そう。それを通じて、簡素で誰にも分かりやすい都市計画制度を実現したい。」と指 摘している。
もとより、 「都市計画法」は、法律なので拘束力がある。このような法律に基づく経済政策については、
その)レール違反には、当然、罰則規定があるが、経済学にはない。その違いに留意する必要がある。法律 と経済学は、似ているようで全く違っているのである。法律には、通常、遵守すべき最低の倫理が規定さ れているが、 (都市)経済学の対象としての都市では、法律がどうであれ、望ましい「都市」のあり方が 許容されるのである。
ここで、とくに注意を喚起しておきたいことは、都市では、居住地域や工場地域、市街化区域、市街化 調整区域など、法律に基づいて線引きが行われており、その功罪が次第に顕在化してきているという事実 である。そこで、そのような実態に注目して欲しいということである。たとえば、香川県では、都市計画 法に基づく線引きがどうなっているのかを正しく知る必要がある。坂出市の人口が減少しているのは、住 民の意向を踏まえて線引きをした結果、住宅建設が難しくなり、たとえ家を建てたくても規制により家が 建てられないから、といわれている。その結果として、周辺の丸亀市や飯山町で家を建てることになる。
したがって、自ら選択した線引きの実態がどうなっているのか、それがまた、将来のまちづくりにとって 望ましいものかどうか、真剣な議論が望まれる。さらに踏み込んで、線引きの功罪についても考えて欲し
まちづくりの視点と課題一論点整理一
い。時と場合により、規制の弊害が大きくなるからである。人々には、居住地選択の自由が認められてお り、しかも土地の大半は私有地である。したがって、望ましい土地利用のあり方とは、競争原理に基づく 土地市場の正常な働きによって顕在化するものと考えるべきである。もとより、その行き過ぎや市場の失 敗が生ずるような場合には、土地利用に関する規制の強化が必要であることはいうまでもない。要は、そ の有効範囲と限界をいかにわきまえるかというバランスの配慮に帰着する。
事実、都市政策の基本報告である都市再構築のシナリオによれば、規制を強化するところと緩和すると ころのメリハリをつけた対応とその見直しを訴えている。また、建設省の事業総括調整官室の地域づくり 研究会による新地域づくり戦略では、これを攻めの議論と守りの議論という
2つに大別して細部の検討を 行っている。攻める事業と守る事業とにそれぞれ分けて、きめ細かな対応を図らなければならない状況に 立ち至っているのである。
N
「都市経済学」への勧誘
1「都市経済学」の概要
都市を対象として、しかも経済理論に基づいて新たに構築されたのが、 「都市経済学」である。そこで、
最後に、その概要と特徴について言及しておこう。
近年、 「都市経済学」のすぐれたテキストが相次いで発刊された。その
1つは、金本良嗣著『都市経済 学』である。このテキストによれば、戦後の経済成長に伴って日本の都市がどうなったのか、都市化の進 展に加えて、都市政策、土地利用、資産としての土地、建物の耐久性と土地利用、住宅市場、都市規模、
土地利用規制、開発規制、形態規制など、実に広範囲な領域にわたって巧みに取り纏めており、さらに、
都市交通や都市環境の問題についても言及している。非常に分かりやすく、高度な数学は一切使わず、可 能な限りグラフを用いて視覚に訴える説明を行っている。
もう
1つは、宮尾幕弘著『現代都市経済学』があり、さらには、わが国における都市経済学の嘴矢と なった山田浩之著「都市の経済分析」などがある。前者の構成は、都市経済学と都市問題、都市集中のメ カニズム、大都市圏の成長と衰退、都市の土地問題、産業と住宅の立地、都市の住宅問題、住宅政策の分 析、都市交通、都市公害と対策、都市の財政問題などとなっている。そのなかでも、とくに興味を惹く都 市規模に関する記述を紹介しておこう。
「古代ギリシャの哲学者プラトンによれば、理想的な都市の人口は、
40,05人ということである。その主 な理由は、
405,0が
7の階乗に等しいため、
1から
01まで含めて全部で
95もの数で割り切れ、取引や租税 および土地の分割等に便利であるからという極めて割り切った議論である。ひるがえって現代の都市を見 るならば、その巨大さと複雑さには、ただただ割り切れない気持ちを抱くのみであろう。」と。
また、後者一山田浩之著『都市の経済分析』一の構成は、第
1部「都市経済分析のフレームワーク」と 第 2 部「都市的土地利用経済分析一住宅立地を中心として一」からなり、現代社会を特徴づける都市化現 象の理論的考察を行ったものである。山田によれば、都市経済学誕生の経緯について、つぎのように言及
している。
「経済学は、従来、景気変動や経済成長の問題を論ずるのに熱心であり、経済の不安定や停滞については
敏感に反応を示したのに対して、経済成長が人間の生活環境や生活意識に及ぽす影聾については無視して
きたからである。とくに都市問題については、早くから人びとの注目をあつめ、他の分野の社会科学者に
よって研究が進められていたにもかかわらず、経済学者はごく最近までは本格的な研究に取り組もうとは
しなかった。その理由はいくつか考えられるが、まず第
1に、通常の経済理論が空間的広がりを捨象した
ポイント・エコノミーに関する分析に終始してきたことであろう。これに対して、都市は空間概念を無視 しては論ずることはできない対象であり、都市問題もまた、スラムにせよスプロールにせよ、空間的広が りを明示的に考慮しつつ分析されなければならない問題である。第
2
に、都市問題はすぐれて貧困(すな わち所得分配)の問題と結びついて発生してくるのに対して、従来の経済学は効率性の問題に関心を集中 し、所得分配の問題を回避する傾向があったからである。……第3の理由として、詩人だけでなく、社会 科学者を含む多くの人々が、都市は無秩序なケイオス )soahc( であり、政府の計画的管理によってのみ 秩序づけられるという見解を抱いている事実をあげることができる。」と。2 都市はなぜ存在するのか
そこで、都市の経済分析を行う場合には、 「都市はなぜ存在するのか」という基本問題に答えなければ ならない。この点について、上記の「都市経済学」によれば、つぎの4つの要因を考えている。
1
)
移動の不可能な生産要素の集中・移動に不可能な生産要素の集中による都市の例として、炭坑などの鉱山による町が指摘される。
・ただし、生産要素の集中によって形成される都市は、新古典派の伝統的なモデルの枠内で説明可能で ある。
2) 生産における空間的な規模の経済(あるいは、不可分性)
・規模の経済性は、およそ全ての生産活動に存在し、機械設備や建物などの不可分性や分業の利益から 生ずる。
• その例として、 トヨタ自動車の立地する豊田市や日本鋼管の立地する福山市などの企業城下町が指摘 される。
3)
集積の経済・多数の企業が一つの都市に集まることによって得られる便益を総称して「集積の経済」と呼ばれる。
・考えられるその要因として、①規模の拡大による大数の法則の働き、②労働供給と生産における補完 性、③個人的な交流による新しいアイデアの発生などが指摘される。
4)
公共財の存在・公共財の存在だけで都市が形成されるとは考えにくいが、公共財も都市の集積を大きくする要因の一 っとなっている。
・下水道、美術館、交通施設、通信施設などといった公共サービスの提供に加えて、中央政府や地方政 府の存在も公共財の一例と考えられる。
3 「都市」の概念規定
最後に、 「都市経済学」における「都市」の概念規定を行っておこう。もとより、 「都市」とはさまざ まな人間活動を含む複雑なシステムであるから、 「都市」とは何かについて異なる角度から多様な定義を 与えることが可能である。したがって、経済学的なアプローチをする場合にあっても、 「都市」を経済現 象だけでなく、政治、行政、社会、地理などの諸現象を含む存在として、その全体系を捉えることが必要 不可欠である。
そこで、 「都市経済学」の誕生の経緯と関連づけて、これまでに試みられた「都市」概念の変遷をフォ ローアップすることにしよう。
まちづくりの視点と課題ー論点整理一
1) マックス・ウェーバーの見方
・ 「都市の類型学」を展開したマックス・ウェーバー
xaM( )rebeWによれば、都市の一般的性質を
「住居の巨大な密集性」として捉えている。
2) ルイス・ワースの見方
•
都市社会学の父といわれる)レイス・ワース
siuoL( )htriWによれば、都市を「社会的に異質な諸個 人の、相対的に大きい密度のある永続的な集落である」と定義している。
3)
ジェーン・ジェイコブズの見方
.都市問題の批評家であるジェーン・ジェイコプズ
enaJ( )sbocaJによれば、都市を「持続的に経済 成長を生み出す集落である」と考え、その結果として、都市をダイナミックに捉えようとしている。
以上のことから容易に判明できるように、都市の概念規定についても、その当初のスタティック(静学 的)な見方から、ダイナミック(動学的)な見方へと、経年的な変貌を遂げているのである。このような 経年的な変遷過程を踏まえて、わが国で最初に都市の経済分析を行った山田浩之
adamaY( )ikuyoriHは 、
「都市」が備えている重要な性質として、つぎの
3点を指摘している。
「密集性」
・ 「非農業的土地利用」
・「異質性(流動性)」
かかる
3つの性質を兼ね備えた地域を「都市」ーあるいは「都市地域」
nabrU( )aerAーと呼び、しか も「標準大都市雁用圏」 ) A E M S ( の設定を行い、わが国の都市の成長と衰退の計量分析を試みている。
また、現在、 「地方行財政基盤の強化」に関するケース・スタディとして、地方分権化一括法の公布を 受けて、国と地方の関係の見直しが行われている。このような状況のなかで、自治省による「市町村合併 の類型」も提示されている。また、香川経済同友会では、広域行政に関わる各種の提言活動を行っており、
鉦者の所属する研究グループでも「香川インテリジェントパークを活かした都市づくり」の調査研究を行 い、都市交通のあり方について提言を行っている。願わくば、このような資料を手掛かりとして、自らの 地域の現況把握と将来展望について、真の理解と認識を深めることが望まれる。
以上、 「まちづくりの視点と課題ー論点整理一」を行ってきたが、さらに、その細部の個別具体的な事 例の紹介等については、野崎敬三、時岡晴美、広田泰孝、八十川睦夫の諸先生による講話に委ねたいと思
ぅ。最後まで、継続してご静聴されることを祈念して、結語としたい。
第1
部に関する質疑応答 く質問>
基本的な事業として高速道路の別納カードが発行されており、全国でも使えるカードですが、産業界の 後押しによって
ETCということで、強者が弱者を駆逐しているようですが…。個性ある都市づくりとは 言っても、大手資本にからめとられてしまい、結局、難しいのかなという気がしますが、先生はどのよう
にお考えですか。
く回答>
情報化の議論に今日は触れませんでしたが、それが浸透すればするほど勝ち組みと負け組みがはっきり
としてきます。勝ち組みとしていかに残っていくかを真剣に考えることが大事です。情報化という甘い言 葉で踊らされてはいけません。おっしゃるとおりの危機意識は持っております。ベンチャーなどでも頑 張っているところがあります。それを見極めることが大事です。 「まちづくり」をやるときに成功の事例 と同時に、失敗の事例もじっくり見るべきです。それを選別をすることが大切です。全国共通でやること と自前でやることをきちんと分けることです。とくに「まちづくり」というときに、特定の地域のことを 考えているのか、住民のことを考えているのかで、その対応が違ってきます。事業を展開する側の論理と 生活者の論理は違うと思います。どちらを考えるかをまず決めるべきです。現在は、事業者側の理論に振
り回されているような気が致します。事業者側の論理だけだと、どうしても小企業は大企業に負ける、だ から弁護してくれと弱音を吐く、それなら止めた方がいいのではないかと、考えます。大企業ができない ようなことをやるのが、中小企業が中堅企業になる秘訣ではないでしょうか。
く質問>
草の根運動的なもので、たとえば花いっぱい運動のようなものは先生の経済学の立場からすると「まち づくり」の議論のなかには入ってこないという印象を受けますが、いかがなものでしょうか。
く回答>
それはよく言われます。花いっぱいで綺麗なまちにしたいとよく言われますが、それに伴うコストを計 算されると、難しいことが次第に分かってきます。結構、コストがかかるものです。しかも、それによっ て景観や綺麗な故郷に対する愛着が出てくるのは意味があると思いますが、プロジェクトとしての評価も 明確に行うべきではないでしょうか。費用対効果をみたときに、花いっばい運動は一プロジェクトとして は一まだ弱いと思われます。町を花いっぱいで飾りましょうというのは、運動論としては非常に高く評価 します。自分の地域に対する愛着の念だとか、自分の居住環境を整備する点でも、その運動は大きな意味 をもつものです。大分県の一村一品運動も、まさに運動なのです。ところが、それで大分県の県民所得が 上がったかどうかということが、プロジェクトとして問われることになるわけです。
もしもそれをプロジェクトとして実行性を与えるためにはどうすればいいのかと考えると、もう少し花 を育てるとか、花井栽培業者にどんなプラスの効果があるのか、相乗効果が広がってゆくのか、優先順位 はどうか、本当に「まちづくり」にとって、花づくりが最優先事項なのかどうか、数あるなかの一つに過 ぎないのではないか、もう少し便益の得られるようなプロジェクトもあるのではないか。もう一つは相乗 効果、お互いの波及効果が出てくるような運動になっているのかどうか、花いっぱい運動で花を植えるこ とで花丼栽培業者の所得が増える、観光客が来る、お土産物屋がはやる、そういう相乗効果が期待される かどうかを考えねばなりません。最後は、調整のメリットについてです。花いっぱいのことだけを専業的 にやるだけで価値があるかどうか。もしもそうだとすれば、既往の職業を転向してこちらに持ってゆくべ きでしょうね。
でもやってみようというのはいいことだと思います。しかし、政策論としては、その政策目標を明確に 見定めることが肝要だと思います。
く質問>
先ほど紹介された本の書名を教えてください。
まちづくりの視点と課題ー論点整理一
く回答>
平成11 年3月に、香川インテリジェントパークを活かした都市づくり研究会から出版された『香川イン テリジェントパークを活かした都市づくり」です。本資料は、 (財)四国産業・技術振興センター
( S T E P
) と香川大学経済学部地域社会システム学科の教官有志との共同作業によるもので、 2年余の歳月 を費やして取り纏めたものです。ご参考に供して頂ければ幸甚です。
く質問>
都市政策のお話をお聞きしましたが、主体の違いによって、 1つのプロジェクトに関する理論や目的は 進ってくるとのお話でした。例えば、どのような公共交通をめざしていくかという課題について、市民が 考えるものと行政の考えるものとでは、異なっているようです。こうした違いがある場合、どのように考
えていけばよいのでしょうか。
く回答>
基本的には、供給者側の見方か、それとも利用者側の見方かで、その内容が異なると言うことです。経 済学に即していえば、売り手の議論か買い手の議論かという違いです。通常、その両者はつねに利害が対 立し、その利害の対立を調整するのが、市場の働きなのです。しかし、基本的には、需要者(ないし生活 者)の立場に立ちなさいというのが、消費者主権の実現を志向する経済学の教えなのです。その際、需要 者とは、当該地域で生活する消費者ですから、そこで生活する消費者にとっていいか悪いかの議論をして 下さいということなのです。よろしいでしょうか。