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揄ネ教育における時間・空間概念の
発達について
理学科研究室 高 瀬 一 男
(1970年10月31日受理)
1 緒 言
白然を認識していく上において時間・空間概念が,きわめて重要な基本的概念であるこ (1)
とは,論ずるまでもない。NSTA(全米理科教師協会)によって示された自然科学の基礎 概念のなかで,特に時間,空間,物質,運動力,エネルギーは,主要な基本的概念であ るとされている。自然科学における研究は,ある系に関する空間での変化(時間的経過)
を追求する場合が多く,運動,カ,エネルギー,物質などの概念は,それはいつれもが時 間と空間のかかわりあいのもとに,さまざまな事象の本質的な構造や機能に関与する概念 なのである。したがって,時間・空間が自然認識に作用するもっとも中心的概念であると (Cz)
lえる。このことはさらに,前報で因子分析の結果得られた地学学習における能力の基本 的因子,すなわち ①時間的把握力,②空間的把握力,③関係的把握力の3因子で代表さ れることからも理解される。
本報では,小学校の児童を対象として,自然認識の尺度ともいうべき時間的・空間的な もののとらえ方の発達の傾向について,調査した結果を報告する。
皿 調査対象および調査方法
(1)調 査 方 法
茨城県筑波郡のH小学校の1年生49名,2年生60名,3年生79名・4年生70名,5年生 78名,6年生70名の合計406名を対象にした。
(2)調査問題の作成
子どもの時間的空間的な物のみ方,考え方の傾向をとらえるために,(1)比較的子ども の日常的生活に関係があると思われる内容の問題,(2)生活にあまり関係のないやや抽象 化された内容の問題の2種を作成した。具体的にはつぎに示すように(1)は14問,(2)
は9問であるが,両者の問題は内容的にほぼ対応するように作成してある。さらに時間的 空間的ないつれの問題についても,生活的,微視的,巨視的な内容のものを作成した。
(3)調査の方法および内容
この研究のための調査は,つぎに示す質問紙法の形式によった。訓査の方法は,最初に 問題1を15〜30分行ない,つぎに問題皿を15〜20分行なった。
調査内容は次の問題のとおりである。
問題 1
1. つぎのもののうち,大きいものからじゅんに,( )のなかに,ばんごうをいれなさい。
( )野球のたま ( )ピンポンのたま ( )ドッジボールのたまやきゆっ
32 茨城大学教育学部紀要 第20号
2. つぎのもののうち,ながいものからじゅんに, ( )のなかに,ばんごうをかきいれなさい。
()えんぴつのながさ ()針(はり)のながさ ()野球のバットのながさ
3・ ピンポンのたまの大きさを①の大きさとすると・ドッチボールの大きさはどれくらいだとおも いますか。つぎのえをみて,ばんごうでこたえなさい(図省略,図には①〜⑤の大きさの異なる
円が書いてあり,ドッチボールの実物大のも書いてある。)。
つちうらえさ がつこう つき
4−1. ここから土浦駅までと,学校から月まででは,どちらがとおいとおもいますか。
@ ( ) S−2・ それはどうしてわかりますか。
( ) たま たま おな
5.大きい玉と小さい玉があります。いまあるところから,その玉をみたら,どちらも同じ大きさ にみえました。それはどうしてでしょうか。
@ ( )
U・ 日本の1日とメキシコの1日は,どちらがながいとおもいますか。 ○でかこみなさい。
(おなじ,メキシコ,日本)
7・ つぎのことのうちで,はやくおこったじゅんに,()のなかに,ばんこうを書きいれなさい。 う ひ
@ ()あなたのおじいさんが生まれた日
()あなたが生まれた日
()あなたのおかあさんが生まれた日
がつこう にゆつがく
()あなたがこの学校に入学した日 は8. つぎの図のように1本の木があります。下にはこの木からおちた葉がつもっています。この葉
を風も人もうごかさないで,つもったままにしておくと,上にある葉と下にある葉は,どちらがかぜ
さきにつもったことになりますか。()のなかの正しいものに○をつけなさい(図省略)。 ひ9. おなじふとさのローソクがならんでいました。火をつけるまえは,ぜんぶおなじながさでした。 ひ
@おなじはやさでもえていったとすると,いちばんはやく火をつけたのはどれでしょうか。はやい ものからじゅんにばんこうをいれなさい(5本のローソクについて,図省略)。
10. つぎの図のように,でんとうがついているとき,ボールのどちらがわがあかるくてらされるで しょうか。正しいとおもうものに○をつけなさい(図省略,電燈を右,ボールを左がわにおく)。
みぎ ひだり
1.ボールの右がわ 2,ボールの左がわ 3. ボールの右がわと左がわ
11, つぎのもののなかで,大きいものからじゅんに,( )のなかにばんごうをいれなさい。
こめ しお たいず こむぎ こな
()米 ()塩のつぶ ()大豆 ()小麦の粉 ( )ごま
はれ ひ あさ ひる
12.晴た日に,朝と昼のあたたかさはどうちがいますか。つぎのなかで正しいとおもうものに○を つけなさい。
1. あさの方があたたかい 2. あさの方がさむい 3. おなじ
ぼう ぼう ぽう にち
13.つぎの図のようにみじかい棒と,ながい棒があります。みじかい棒を1日のながさとすると,
1週間のながさは,ながいぼうの左がわからどのへんになりますか(図省略,長い棒は短かい棒 の9倍とし,その間を9等分したもの)。
いちばんじかん
14. つぎのもののなかで,一番時間のかかるものからじゅんに,()のなかにばんこうをいれな
さい。
しんこう あか あお じかん
()信号の赤から,青にかわるまでの時間
り か じかん じかん
()理科の時間がはじまってから,終るまでの時間
かい じかん
()1回まばたきするのにかかる時間
・
高瀬:理科教育における時間・空間概念の発達について 33
いき かいいき じかん
( )ふつうに息をすっているとき1回息をすうのにかかる時同 問題 皿
L つぎのもののうち,大きいものからじゅんに,()のなかにばんごうをいれなさい。
ちきゆつ つさ たいよう
()地球 ()月 ()太陽(おひさま)
とお
2.つぎのもののうち,遠いものからじゅんに,()のなかにばんごうをいれなさい。
ちきゆう たいよう
()地球から太陽(おひさま)まで
ちさゆう くも
()地球から雲まで
ちさゆう つき
()地球から月まで
ち巷ゆう たいとう
3.地球の大きさを①ぐらいの大きさとしたとき,太陽(おひさま)の大きさは,どれぐらいの大 さきだとおもいますか。つぎの図をみてばんごうでこたえなさい。(図省略,①直径4惚,②直 径120加,③直径240循④直径430%⑤直径500ηの5種)。
くも つき とお
4−1.芸と月では,どちらが遠くにあるでしょうか。
@ ( ) S−2. それはどうしてわかりますか。
( )たいよう つき たいよう つき
5.太陽(おひさま)は月よりもずっと大きい。でもわたくしたちが太陽(おひさま)と月をみる と,だいたいおなじ大きさにみえるのは,どうしてでしょうか。
( ) かいじてん かい しかん にち
6.地球が一回自転する(一回まわる)のにかかる時間と,一日のながさはどちらがながいでしょ うか。 ( )のなかのあてはまるものに○をつけなさい。
にち
(おなじ,自転(まわる),一一口)
7. つぎのことのうち,はやくおこったじゅんに( )のなかにばんこうをいれなさい。
じんるい
()人類(ひと)があらわれた
どうぶつ
()動物がはじめてあらわれた
しよくぶつ
()植物がはじゅてあらわれた
()地球ができたちさゆう
ちそう にいせき たいせき
8.地層がつづいて,堆積したとき(つもったとき)①と②では,どちらがさきに堆積(つもった)
したとおもいますか。()のなかのあてはまるものに○をつけなさい。(図省略)。
(おなじ,①,②)
きろく
9. つぎのえは,ヘチマのたねをまいて,そだっていくようすを記録したものです。はやいものか らじゅんに( )のなかにばんごうをいれなさい。
ノ
坙c黛 、 『矛つ ●
N,ン!『 冤
まきひげがでてきた ほんばがでてきた ヘチマのたねをまいた ふたばがひらいた め が で た
( ) ( ) ( ) ( ) ( )
・
34 茨城大学教育学部紀要 第20号
皿 調 査 結 果
1.問題1について
調査問題1の結果の正答率を求め,それを第1表に示した。
第1表 問題1の調査結果
〜融f燃学年一12154561
一一一一一一1}@ 野球のボー『ル 1一も駒繍勤 P 大きさ ピンポンの玉 69.4 88.4 96.3 97.11。。旨。。
生活的空間
ドッチボール 1
…・長さ鱒ト鉢野球の 71.4 88.4 98.1 94.3 97.4 100 〃
1 .一一一_ト
[_一_
一一一一 一一 一一一一ァ一一一一 一一一 鼈鼈鼈 幽 一一一皿
ピンポンの玉3 大きさ ドッチボール
34.7150.O l 53.7 65.8 65.4 69.0 〃
i比喩的)
_一一 一 1
学校→土浦4−1距 離 〃→刀
88.8 85.0 94.4 94.3 ga 71g&6 巨視的空間 1
一7}一
14−2その理由 0
一旧
Q5.0 32.9 37.2 一
T7.8 46.6 1 V
一
一一 一一一鼈鼈
12.3 20.0 39.3 45.8 51.3 63.5 〃 i
一一一一 161口の長さ日本とメキシ コ
10.2 13.3 24.1 47.2 66.7 64.8 生活的時間
一一 一 一一_一一 一一一鼈 山一目一一一
69.4 70.0 81.4 87.0 88.4 94.4 〃
1 一
一一一一一
18蒜の変化解のつもり 85.7 76.7 一一77.8 75.7 87.2 84.5 〃 i
i9事象の変化巖≦の燃 76.9 80.0 85.0 88.5 一ga8−P 100
P
〃
i 一 一一一一一一一一
…1°物体への光りM麗燈 20.4 58.4 70.3 72.8 78.2 91.5 生活的空間 l@ l
一一一一
11・大きさ叙騨』静 14.1 50.0 51.5 70.0 65.4 88.7 微視的空間
一一 __
75.5 75.0 79.6 81.4 88.4 lg3° 生活的時間
一一 一 一
1 13 時間の長さ 1日と1週間
G
75.5 58.4 70.3 72.8 81.0 1 V
一一一一 一㎝一一 一一
1 信号の赤から青
・4微塒間鑑雛離き 10.4 31.7 43.0 67.2 50.0 75.5 微視的時間
1回の呼吸 i
47.6 5&oi66.5 1
一 V3.1
_一一
V7.9 84.4 /i@/ [/
m 平均得点の差 11α4& a648 a5
, 1
@ /5 / // !
1 _/
一般に生活的な時間・空間に関係のある問題,すなわち物体の大小関係(問1),物体の 長短の比較(問2),事象彦)前後関係(問7),事象の変化の順序関係(問亀9)・1日におけ
高 瀬:理科教育における時間。空間概念の発達について 35
るIi寺間と気温の相互変化の関係(問12),1ロと1週間の時間的1掲係の比較(問13)等の 問題については,1年生でも約70%以上が正解であり,これらの関係把握は1年生からほ
ぼ可能であることがわかる。この間1,2程度の大小関係の把握はピアジェ氏の調査によれ (3)
ば4,5才頃より可能とされている。また佐川・井藤氏は「微小概念の発達と指導の可能 性について」の研究(小学校については2,155名の3〜6年生を対象としての調査研究)
を報告し,そのなかに問1と同一問題があるが,その結果は非常によく一致していること は興味ぶかく,また被検者数の多少には関係されないこともわかつた。このことは同一年 令のどこの子どもでも,この問題に対してほぼ同程度に把握されていると解釈できる。し たがって,経験し得るような内容,つまり視覚的,感覚的にとらえやすい事物,現象につ いては一層得点が高く,より把握されていることは当然であろう。
問3は,問1に類似する内容であるが,ただ大きさの関係を比喩的に認識させる点が異 なる。この得点は問1に比してかなり低くい。このことは,抽象的思考が困難であること を意味している。
問4−1は,距離の遠近を把握する問題で,具体的には学校から土浦と学校から月では どちらが遠いかである。得点は1年生でも約90%が正答であり,このような巨視的空間も 多少生活的内容であれば,把握することが容易である。
しかし,問4−2は,それはどうしてわかるかという理由になると,1年生0%,5年 生57.8%,6年生46.6%である。これは,知識の巾にも関係があろうが,いうまでもなく 現象論的または論理的思考の困難さを現わしている・
また問5は,位置関係の把握に関する問題(大きい玉と小さい玉がある・いまある所か らみたらどちらも同じ大きさにみえた。それはどうしてか。)であるが,問4−2と同じ ような結果であり,これも論理的説明の困難さが指摘される・
問6は,日本と外国(メキシコ)の1日の長さを比較するもので・…応生活的時間に類 するが,1日という時間概念の把握は,5年生で50%以上の者が可能となる・1日という 時間単位は5年生以上でないと困難であり,この問題は地球の自転と関連させての指導が 必要となる。
問10は,物体と発光体の位置関係における光のあたり方の問題で,生活的空間に属する・
この関係把握は2年生以上で50%以上の正答を得ることが可能である・
問11は,可視的物体の微視的大小関係を把握する問題であり,米,塩,大豆,小麦粉・
ごま等の大小関係の順位は,2年生以上で50%以上が弁別することが可能である・
問14は,微視的時間概念の把握に関するもので,内容的に経験しているもの(信号の赤 から青,理科の1時限,1回のまばたき,1回の呼吸に要する時間の比較)であるが,50
%以上把握できるのは4年生からである。この問題も観察,比較,分析,判断等による抽 象的思考が困難である結果と考えられる。
2.問題亜について
問題皿の正答率を求め,それを第2表に示した。前述のように一般にやや抽象化された 内容のものであり,全体的にみて問題1より認識されていない。つぎにやや具体的に考察
してみる。
問1は,非常に大きい物体(地球,月,太陽)の比較であり,4年生以上で50%以上の 得点が得られる。誤答の傾向をみると,地球のみかけ上の大きさを考えて・地球を敢も大
36 茨城大学教育学部紀要、第20号
第2表 問題皿の調査結果
「寵而丙容一嘗くL112345161堕問題磁格銘
1 大きさ 地球,月,太陽
,&、/333 1
[
R7.6 50.0 66.7 78.6
一一』一『『 −1
崇I空間 t
一一一一一 一
@ 地球→太陽2距 離 地球→雲 一一一一一Qα61
53.4 85.3 一回 W5.8
一 一一
X2.4 一一一 X2.9
旨
V 1
地球→刀
Tr}一 一一一一
3大きさ擬齢美難
一 一
P4.3
一:16.7
│
21.3
│一旧一−
24.3 19.3 27.1 1@〃i比喩的) 1
幽 一
一
4−1距離 雲と刀 71.5168.4 81.5 88.6 97.7 92.9 巨視的空間 1
一 一_ 1 一一一一一}1} 一冒 一 一一 一一一一『一 一一一一隠皿一一『一一一鼈鼈黶@一
4−2その理由 0 3.3 1 20.3 30.G 34.7 31.5 〃 i論理性)
一一一 P−}}}一一 一一一一 }一一 一 一一一一 一一一一一一
15大きさ轡き癩欝的 0 12.0
鼈鼈
32.6 48.5
@ 一
75.6 82.9 巨視的空問
一一一一一 一一一一
6.1 20.0 31.4 60.0 70.5 1W4.3i生活的時間 i 2 1一 一
17事象の前後糊:鞍 2.4 21.7 40.2 45.6 51.0 78.6 } 錘挙I時間
一 一一 一一一 一一一一 一一一
i8事象の変化轡堆積順 42.9 85.0 67.8 78.5 87.4 92.9
巨視的時間
1
[…9事象の変化卿の張川頁一一 i79.5
87.5 95.0 91.4 78.6 94.8 生活的時間
一一一一一一一一
一一一一一一 一一一一一一匿闇
I 一一一
剣ス均得点國鄭 一一一一一一一一一
51.8 6α3 m6乳4 一 75.1
1 −一一 一一v二二=コ 一一 ニー一 P/ /一
1 平 均得点の差 13・9 11・7 8・5 7・1 7・7 r一戸!/ /
きいと解答しているものがある。
一一一
問2は,地球から月,雲,太陽までの距離関係をみる問題で,これは3年生以上で85%
以上の正答率が得られる。問1より高率であるのは,これらの関係をある程度事象の観察 によっても判断できるからであろう。それは問4−1からもうなづける。
問3は,地球と太陽の大きさを比喩的にどれだけ認識できるかの問題である。この問題 (3)
ヘ,問題1,豆の全問を通じて最も低率であり,6年生でも27.1%である。佐川・井藤氏 の調査によれば,具体的に大きさが示される物体の比喩は,小学校6年生で50%の者が可 能である。しかし,やや小さい具体性に乏しい物体の比喩は,中学校1年生以上で50%の 者が可能であると報告している。この問題は非常に抽象的な巨大な物体の比喩であるから 一層比較が困難なのである。この指導には,モデルの導入が必要となろう。
問4−1は,月と雲の遠近を問うもので,1年生でも71.5%の高正答率を示す。しか し,問4−2のそれはどうしてわかるかについては,1年生0%,6年生で31.5%である。
問題1の問4−2,問5と同様に,これらの現象については現実に観察の経験があるにも かかわらず把握されていないのは,論理的思考が困難であることに原因があろう。
問5は,太陽と月の視覚的大きさの関係(太陽は月より大きいことを前提条件として)
高 瀬:理科教育における時間・空間概念の発達について 37
を問うもので,問題1の5と対応するものである。50%以上把握できるのは5年生からで あり,得点は問題1の5の場合と同様であるが,ただし,問題1の5では5L3%・皿の5 では7乱6%と上昇している。これは5年生の教材との関係による教育効果とみることがで
きる。このような空間関係については,訓練によって向上させることが可能である。
問6は,1自転と1日の長さの関係についての問題である。1自転と1日の長さは厳密 には異なるが,ここでは等しいと答えたものを正解とした。このものは4年生で急激に上 昇し,60%以上の正解となる。
問7は,事象の前後関係すなわち人類,動物,植物,地球のうち,先にできた(生まれ た)順に答えるもので,多少知識に左右される内容である。50%以上の正答は5年生以上 でないと得られない。
問8は,地層の堆積順序を示す巨視的時間をみようとする間題。1年生でも約43%が正 解であり,堆積の順序関係については現象的には低学年からかなり把握されることがわか
った。もちろん本質的な意味での時問の長さは把握されていない・
問9は,植物の生長順序をどの程度把握しているかをみる問題で,一応生活的時間とし て取扱った。植物の生長順序は予想外に得点が高い(1年生で約30%正解)。これは非常 に生活的であり,就学前における経験などによる効果と考える。
1V 結果の考察
っぎに各学年間における認識の度合,すなわち,年令とともに時間的空間的概念がどの ように発達するかを調らぺるため,学年間の得点伸び率を算出し,第3表(問題1),第 4表(問題皿)にその学年比を示した。
第3表得点の学年比
一陣ゼ町 lq1 … 恥 1 Iq3 「「 [恥 1 −一一
R6
│一一一}一}
平 均
@ 一
鼈鼈
1 一
P 1.27 ユ.09 1.0111.031LOO I 1.44 1.08
[ 2 1 1.24 1.11 0.96 1.03 1.03 1.40 レ 1.07
■
1 3 口.、4 1.07 1.23 0.99 1.06 1.98 1.16 4−1 0.96 1.11 1.00 1.05 1.00 1.11 1.02 4−2 ○○ 1.32 1.13 1.55 0.81 Oo 1.16
5 1.63 1.97 1.17 1.12 1.24 5.16 1.26
6 1.30 1.81 1.41 1.41 0.97 6.35 1.38
7 }1・1° 1.16 [ 1・07 1.02 1.07 1.36 1.08
8 1 0.89 1・01 P0・97 1.15 0.97 0.99 1.39
9 ]040 1.06 1 LO4 1.05 1.08 1.30 ユ.05
10 2.86 1.04 1.04 1.07 1.17 4.49 1.24
11 3.35 1.03 1.361 0.93 1.36 6.29 1.61 12 0.99 1.02 IkO21LO9 1.05 1.23 1.03
13 0.77 1.04 1・04i 1・11 1.16 1.2↓ 1.02
14 3.05 1.56 1.56 ; 0.74 1.55 7.45 1.49
平 均 1.57 1.23 1.13 tLm 1.10 2.98P
『}一一一 一一一 n−一一一
表および図中のRはR1=2学年の得点/1学年の得点, R2=3学年の得点/2学年の得点… …であ る。ただし,R6=6学年の得{Wl学年の得点を表わす。
3S 茨城大学教育学部紀要 第20号
第4表得点の学年比 学年比
竭闔M \ rqエ R2 R3
恥 恥[瑞
平 均
1 i 1.81 1.13 1.33 1P.33 1.18 4.27 1,36
2 [ aol l
1.60 1.01 1・08i 1・011 3・4911・34
溢一: 一: 一:ll…1:ll圏1: [1: 4−2 0Q 6.15 1 1.48 1 1.16 1 (L 91 co 「 2.42
56 ・・…272 L4gi1・56…1・1・3・28 1・57…1・9111・18 1・20
CG I
P3.9
1.72 P.83 9.04 1.85 1.13 1
@ i 1.1 ; 1.54 328 2.94
1 8 :1.98 α8・ 1.16 1.11 1.06 : a2 1.22 l g I 1.10 1.09 0.96 i 0.86 1.21 ・ 1.2 1.04
平 均 3.75 2 1.94 1・27、1・13「1・16i7・63 i
第3,4表にみられる特徴は,多少の例外を除き各問ともほぼR、(学年比)に発達の 切れ目があると考える。またR3, R4, R5などにおいて,高い値を示しているものは,一 般に論理的思考によって理解されるものである。したがって,これらの比の分布状態は自 然認識の発達の一つの傾向を示すものであろう。ここで,時間・空間概念の発達の段階に ついて諸氏の見解を要約してみる。J・ピアジェ氏によれば,その発達の年令を4段階に 分けている。すなわち,第1段階(2〜4才):自己中心的で自分の位置から見える範 囲,現在のみにかぎって考えることができる。第2段階(4〜7才):空間的な意識が広 がり,視界外のものでも経験したことは関連づけること。また時間の前後関係については かなり明確にむすびつけて考えることができるが時間の単位はまだ一日単位である。第3 段階(8〜ll才)では少しずつ時間を客観的にとらえ,過去,未来について考えることが できるようになる。簡単な自然の因果関係がわかりはじめる。第4段階(12〜14才):空 間概念が確立しはじめ,地球や天球を理解したり,モデルで考えることができるようにな る。地学であつかうような何万km,何億年というような巨大な時間,空間については漠 然とわかりはじめる。一方,微小な時間,空間,未来の事象の理解についてはややおくれ
(4)
る。というように一応分類されている。また片山氏は,小学校について,1年,2・3年,
4・5年,6年の4段階に分類し,特に時間的,空間的な思考の発達については,5年か ら急に上昇し,6年になるとかなり理解できるとしている。
本調査結果から時間的空間的な認識の発達段階は小学校低学年(1〜3年生)と高学年
(4〜6年生)の2段階に分けることができる。低学年においては,アニミズム的思考も 残存していると思うが,主として現象論的思考によって,時間,空間を認識するわけであ
り,現象的ではあるが,得点の伸び率からみて,認識の優位な時期といえよう。一方,高 学年では現象把握のし方の質的変化つまり論理的思考によつて把握されていく傾向がみら れる。ここで,同一問題について,学年比の差が小なるものは,低学年から認識されてい
ることを意味し,学校教育の恩恵ではない。逆に,学年比の差の大なるものに類するもの は,教育効果が期待され,教科課程の構成の上に考慮されることが望ましい。
高 瀬:理科教育における時間・空間概念の発達について 39 ●
@ (5) (2)
條ヤ・空間概念の認識の成立過程や前報の結果からみれば,空間の方が時間より先に認 識されたことがわかるが,今回の調査では一般に時閲に関する認識の方が優位である。こ れは問題の難易度に関係があり,問題の妥当性の検討が必要であろう.。
つぎに,時間・空間の認識の傾向を具体的に比較考察
するため,問題1,∬をそれぞれ時間および空間関係に 6° 1脚の曜一2F
まとめ,時間的問題を生活的(①生活に密接なもの,② 竄竰鰹ロ的なもの),巨視的,徴視的時間に分類した。
〜〜
また空間的問題についても同じように,生活的,巨視的 5°
、
(①いわゆる巨視的なもの,②やや抽象的なもの)・微 〜 視的空間に分類した。
ワずはじめに全体の得点の傾向について縣すれば, 14D 謔P図の問題1・皿の平均または全体の平均が示すよう 叢
ノR1, R2の比が大きくR3, R4, R5の比は小さいがその 30
lはほぼ同程度である。特に問題Eの平均伸び率は顕著
〜脚… 1
̲ 1
@、 t 、 ! 、 、 ㌔ 1
であることがわかる。一方参考までに,問題皿,4−2
i雲より月の方が遠くにあることの理由を求める)では, 2
糊献 1̲い
R1は○○, R2は6.6で,その伸び率は極めて顕著である。 \、、1 しかし,R3では1.5と急減する傾向を示し,全体の平均
lとほぼ一致する。前述のように総括的には3年生を中 、。
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心として自然認識の一つの境があると考察される。つぎ
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ノ空間概念の形成の様相について考察する。第2図に示 RL R、 R・ R. R愚
@ 学 年 比
すように生活的空間の把握は,R、(1年と2年)では1・7 第1図学年間の得点伸長度 倍に伸びるがR2(3年)以上ではほぼ一定となる・したがって生活的空間把握はR、(1・
2年生)の時期に認識されることがわかる・巨視的空間(①,②)については,R1, R2(1
〜3年)と上昇し,R3(4年)以上では徐々に伸びる傾向を示す。ただし,論理的思考を 要するものはそれよりおくれることがわかる・微視的空間については,2年生で急激に上 昇し,R2(3年)ではほとんど伸びず, R3(4年),R5(6年)と上昇する傾向がある。
時間概念の形成の状態は,第3図に示すように極めて生活的な時間については就学前か ら相当理解されていると考えられる。一方,抽象的な内容(例えば問14)については,R、
〜R3(2〜4年)とかなり伸び,その後も上昇する。微視的,巨視的時間はいつれもR、
(2年)生で急激に伸び,さらにR2〜R3(3,4年)と伸び,またR5(6年)でかなり上 昇する傾向がある。
時間・空間の認識の傾向をまとめてみると,微視的時間と巨視的時間の認識傾向は数量 的(第3図)には異なるが子どもの認識のしかたには類似性のあることがわかる。すなわ
ち,巨大な時間,微小な時間は異質であっても,とらえ方の難易性については共通性があ るように思われる。また極めて生活的時間については,感覚的または現象的にとらえてい る。徴視的空間と巨視的空間の把握の傾向には差異がある。これは巨大な空間と徴小な空 間は質的に異なることに関係があろう。また生活的空間については,生活的時間の認識と 同じ傾向がある。第2図と第3図を比較すると,微視的時間と微視的空間の認識傾向を示
40 茨城大学教育学部紀要第20号
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一卿一一生盾的空間
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学 年 比 学年比
第2図空間的概念の発達傾向 第3図 時間的概念の発達傾向 す曲線はほぼ,同形であり,微小概念の認識のパターンがある共通性をもっているように 思われる。
つぎに,時間・空間概念の発達の傾向と科学的思考の発達との関係について考察してみ
(6),(7)
る。科学的思考の発達については多くの研究があるが,楠見氏はその発達の段階をつぎの ように分類した。
(1) アニミズム的思考期 3〜4才 %
アニミズム的思考期 ・現象論的思考 9°
期(移行期) 5才 ,。
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(2)現象論的思考期 6〜8才 7σ
@ 現象論的思考期一一・論理的思考期(移
@ 行期) 9〜II才 正・。
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(3)論理的鵬期12〜14才 1,。 論理的思考期一一・創造的思考期(移行 V 11 惣嘉
40
冝j 15〜17才 箕器! 婁翠
(4) 創造的思考期 18才〜 ・・ 〆 再葱 Y 窪ε 氏の論理的思考の発達と比較すれば第4図 〆 潔塁
20 ! 講
のようになり,氏の発達曲線とほぼ一致する ノ 線
ことがわかった。したがって,時間的,空間 1°
的概念の発達は科学的思考の発達と符合する ・ ,ノトo卿C9,d瞠 ものであり,科学的思考によってより正確に
F識されるものである。したがって,時問的
茅誓毒3贈葦93舞児 生し薦」一嘱へ」)斎)
空間的概念の形域には,事物・現象に対する 第4図 科学的思考の発達過程⑥との比較
高 瀬:理科教育における時間・空間概念の発達について 41
比較・分析・判断・抽象などの論理的操作の育成が重要である・
V 要 約
以上は,小学校の児童の時問・空間概念の発達の傾向について述べた・それらの結果を 要約すればつぎのようになる。
(1) 時間・空間概念の発達の傾向は,1〜3年生(6〜8才期)と4〜6年生(9〜
ll才期)に2分される。得点の伸び率は低学年(1〜3年)が顕著であり,高学年(4〜
6年)ではそれほどでない。
(2) したがって,低学年理科においては時間・空間に関する基本的内容を用意し・概 念形成への指導が期待される。
(3)生活的時間・空間については,低学年でもかなり把握されている・
旧增D空鵬念の鍵の傾向は1南賦の科学的鵬の鍵購(謂白勺発達)と
符合する。
(5) 巨視的・微視的時間・空間概念の把握の傾向にはほぼ類似の関係がある(例えば 把握の難易さなど)。
本報では特に時間・空間概念の育成についてはふれなかったが・今後これら概念の育成 について研究する予定である。
終りにのぞみ,本調査に便宜をはかられた学校当局に対して・心から感謝の意を表す る。また調査,整理にご協力下さった岡野律子氏(新治郡山荘小学校教諭)に感謝の意を 表します。
なお,本研究の一部は,昭和45年8月6日,日本理科教育学会,第20回全国大会(於福 島大学教育学部,福島市)において,講演発表してある。
文 献 . ,
(・)ESCP・1・vestig・・i・g・h・E・・th, Tea・h・ガ・G・id・, V・L・・J・n・・n p・bli・hi・g Cα(1965)・
(2)高瀬一男:茨城大学教育学部紀要・第18号・ (1968)
(3)佐川紀子・井藤芳喜:島根大学教育学部紀要,第2巻(教育科学),(1968)・
(4) 片山貞昭:地学教育,第41号,(1961)・
(5) 永井 博:科学概論,創文社・ (1966)・
(6) 楠見 久:広島大学教育学部紀要,第3部,第18号(1969)・
(7)楠見久:理科の教育,VoL 19, No・6(1970)・
Ab8tract
0。th, D。v。1・pm・nt・f TimoSp・ce C・ncept・in th・S・i・nce Educati・n
Kazuo Takase
(Faculty of Education, Ibaraki University)
Th,。ugh・h。 v・・i・u・・・・…n・h・f・・m・・i・n・f・im砂・pace c・ncep・・f・・p・im・・y・ch・°1 children, the author got the fbUow五ng results:
(1)T・・d・n・y・fd・v・1・pm・nt・f timα・pace c・ncep・i・n・h・w・apParently tw・di鉦e「e隠t
1
42 茨城大学教育学部紀要 第20号
gradients,6〜8 age(lower)and 9−ll age(upper)grades.
(2) The concept concerning daily lifb of children is already got at ages of the lower grade.
(3) The development:s of the concepts concerning both the macroscopic and microscoplc phenomena have a similar tendency.
(4) The gradient of the time・space concepts in primary school children shows the similarity to the gradie月t of Iogical thinking development in・ scientific thinkings,
reported by Kusumi (1969).
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