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サイン言語による精神遅滞児への介入

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Academic year: 2021

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(1)

熊 大 教 育 実 践 研 究 第 0 1 号 , - 3 1 8 3 ,  3 9 9 1

サイン言語による精神遅滞児への介入

ダウン症児と自閉症児に対する l a t n e d i c n i g n i h c a e t をとおして 一 門 恵 子 * ・ 高 橋 優 子

Sign Language o n i n t v e e r n t I r o f Mentally Retarded e n i l d r C h I

n c i d e n t a

l Teaching r o f a Down Syndrome Boy and an A c i t s i t u l r i G

K eikoICHIKADO and Yuko TAKAHASHI (

R e c e i v e

d October 1 ,  ) 2 9 9 1 S

e v e

n r e a y d l o Down syndrome boy (DA 2 : ) 6 a n d e n i n r a e y d l o c i t s i t u a l r i g (DA 3 : 2

) were d e n e i v r e t n i r o f r i e h t g n i r i u q c a n g i s e a g u g a n l ,  g n i s u a n l a t n e d i c n i g n i h c a e t m

e t h o d

. Soon r e t f a e h t t r a t s o f o r u n o i t n e v r e t n i ,  e h t boy n b e g a g n i s e s r p x e s i h s t s e u q e r o

n

e r e t f a r e t h o a n g , n k i s a e h t r e n e i v r e t n i p o t y a l r d b o a k e y n d a draw s t c e j b o body r o . s t r a p A

f t e

r t h g i e month n o i t n e v r e t n i ,  l h e d e n r a e s 4 6 s n g i a n d s i h e c n a r e t t u d e s s e r g o p r f r o m e o n s

y l 1 e l b a words t o t e e r h e l b a l l y s s e o n . x E ( a ( ) e t e k a → a t e → . ) e t e t a Though e h t c i t s i t u a g

i r

l d e i r u q c a 2 3 s n g i s ,  r e h s n o i t a z i l a c o v were y e r v . d e t i m i l Thus s t c e f f e o f o r u - n e v r e t n i t

i o

n were d e r e f f i d t w e e n b e two n e r d l i h c ,  e u s a e c b f o r i e h t e r i o t r e p e r f o o r i v h a e b a n d i

n t i m a c

y i f o l a n o s r e p r e t n . p i h s n o i t a l e r I t  was d e t s e g g u s t a h t h c s u n t m e r o v i e n s g n i t t e s s a t

o make n e r d l i h c o t t s e u q e r s t c e j b o a n d s n o i t c a o t r e n e i v r e t n i w e r e e v i t c e f f e

r o f r i e h t s

p o n t a n e u o u

s e s u s f o s n g i a n d r e h t o modes l f o . e g a u g n a

問 題

精神遅滞児の多くの者が始語期の遅れを伴うが,

重度の遅滞児や自閉性障害児の中には音声言語の獲 得や拡大の困難な者が少くない.そのために深刻な コミュニケーション障害を呈し,彼らの生活ならび に学習にさまざまな支障がもたらされる.音声や文 字などの恋意記号の柔軟な操作によるコミュニケー ションに困難を伴うこのような子どもたちにとって は,発信・受信両面で,より具象的・有縁的なコミ ュニケーションのモードが必須のものとなる.その ような音声言語の代替手段のーっとしてサイン言語 の活用が試みられてきた.身振りサインによる精神 遅滞児への介入が彼らのコミュニケーション行動を 円滑にするのみならず,音声の獲得にも促進的効果 を及ぽすことがこれまでに報告されている.その一 部は一門 ) 3 8 9 1 ( で紹介した.

コミュニケーション行動はきわめて日常的なもの であり,また,コミュニケーション相手の他者側の 条件によって大きく左右されるものである.たとえ

‑特殊教育科

"熊本市立月出小学校

その子どもの発信を助けるモードの学習が課題訓練 的になされたとしても,般化を十分に保障すること の難しさが残りがちである.この面の問題の解決策 のーっとして , t t H a と y e l s i R ) 4 7 9 1 ( の提唱した,

子どもの自発行動に合わせて,より自然な生活の展 開に沿って介入していく l a t n e d i c n i g n i h c a e t (機会 利用型指導,あるいは偶発性指導)は注目に値する

ものである.

言語の獲得やそれを駆使したコミュニケーション 行動は,本来,子どもの先天的な能力や障害特性に かなりの部分依存するものであり,コミュニケーシ ョン・モードの選択や学習形態の在り方ですべてが 解決される訳ではない.障害種別や障害の程度が類 似した子どもたちでさえ,その個人差は大きい.本 研究においては,ダウン症と自閉症の 2 事例をとお して,子どもの要求行動に焦点をあてて,サインを 用いた l a t n e d i c n i な介入を試みた.併せて,子ども の反応誘発の目的で, e l l a H ら ) 9 7 9 1 ( の m e i t y a l e d t

e c h n i q u

e (時間遅延法)と, r s R o g e -Warren ら ( 1 ) 0 8 9 の mand-model e u q i n h c e t (マンド・モデル 法)を導入した.前者は,子どもが刺激物に注目し ても一定時間プロンプトなどの提示をしない方法で あり,後者は,子どもが要求対象物に接近した時に

- 31-

(2)

「何が欲しいの」などの言語的手がかりを与える方法 である. 2 事例に対するこのような介入の効果を追 及すると共に,障害種別の違いによるコミュニケー ション行動の変容過程の差異について検討を加えた

~~

事例 l の概要

ダウン症男児 ( 2 1トリソミー型),指導開始時年齢 7 歳 7 ヶ月.胎生期・周産期に特に異常はなく,生 下時体重は . g 0 8 8 2 定頚 7 ヶ月,始歩 3 歳 , 4 歳で幼 稚園の特殊学級に入園,平成 2年養護学校に入学し ている.

指導開始時の言語面の発達水準は,ママ,イヤ,

ジュ(ジュース),ハン(ゴハン),ダイダイ(チョ ウダイ),アンパンパン(アンパンマン)などの発語 がみられ r~持ってきて」などの簡単な指示の遂行 が可能であった.しかし,要求表現が未熟なために 意思の伝達が思うようにいかず,しばしば泣き叫ん でしまう状態であった.対人関係はきわめて良好で,

動作模倣も頻繁に観察された.興味の対象はテレビ やビデオなどの機械類で,好きなビデオをくりかえ し再生して楽しんだり,床に寝転んでカセットの音 楽を聴いている乙とが多かった.

心理検査の結果:乳幼児簡易発達検査(平成 2 年 5 月実施) D A 2 歳 6 ヶ月, DQ36 ,遠城寺式乳幼 児分析的発達検査(平成 2 年 9 月実施)移動運動 2 歳 0 ヶ月 ~2 歳 3 ヶ月,手の運動 2 歳 6 ヶ月 "-'2 歳

9ヶ月,基本的習慣 1歳 6ヶ月 ' " ' " ' 1歳 9ヶ月,対人 関係 l 歳 9 ヶ月 ~2 歳 0 ヶ月,発語 0 歳 11 ヶ月 "-'1 歳 0 ヶ月,言語理解 l 歳 0 ヶ月 1 ' " ' " ' 歳 2 ヶ月.その 他,聴力右耳60dB ,左耳正常,視力は測定困難である が,テレピなど極端に近づいて観ており近視が疑わ れる.

介入の方法

熊本大学教育学部のプレイルームにおいて,平成 3 年 1 月 同年 1 1 月末まで,週 1 回 1 時間半程度 の介入を行った.指導に用いたサインは,主に藤田 継道(1 ) 8 7 9 のサイン語葉集を参考にしたが,本児 の自成サインはそのまま用いた. Ta bl e 1 に使用さ れたサインの語棄リストとその動作について記述し た.介入の手続きは, Hart &  y e l s i R の l a t n e d i c n i t

e a c h i n

g と e l l H a の y l a e - d m e t i の手続きを参考に して以下のように行った.

1 )対象児が日常生活場面で好む事物や行動を想 定して,要求表現を誘発しやすいように状況設

定をした.具体的には,本児の好きなジュース や菓子類あるいはカセットテープなどを高い棚 の上に置いたり,カセットデッキやキーボード を本児の手の届がない場所に配置したりした.

2  )対象児が身振りあるいは音声を用いて事物あ るいは行為を求めてくる機会を待った.

3 )自発的な要求表現が生起しない場合は, 5 1 秒 間は何の介入もせずに待ち, 5 1 秒を過ぎたら,

「何が欲しいの」などど発信を促し,それでも反 応がみられなければ,介入者がモデルを提示し てプロンプトを行い,徐々にそれをフェードア ウトしていった.

4 )要求行動が適切に自発された場合は,音声+

サインでフィードパックし,言語賞賛を加えな がら,対象児の要求物を与えたり,要求行為に 応じたりした.

T a b l

e 1 事例 lで使用されたサインの語棄と動作 サイン語集 サインの動作

*名詞(身体部位)

頭 頭を 2回叩く 手 手の甲を指し示す 足 足部を指し示し 2 回叩く お腹 腹部を 2 回叩く

へそ へそを指し示す

目 目を指し示す

耳 耳たぶを片手で援ゥて示す

鼻 鼻を指し示す

ほっぺ ほほをつつく

舌 舌を指し示す

歯 歯を指し示す

喉 喉を 2 回叩く

*名詞(事物)

ジュース コップを持って飲む動作

マンマ 左手で茶碗を持ち,右手で口にか き込むしぐさをする

コップ 片手でコップを形作る

はさみ 片手でチョキを作り,切るしぐさ 注射 腕に注射を打っしぐさをする のこぎり 両手で鋸を引くしぐさ

自動車 両手でハンドルを作り,回転させ る

汽車 両手を車輪に見立て,体の横でグ

(3)

サイン言語による精神遅滞児への介入

サイン語葉 サインの動作 サイン語提 サインの動作

ルグル回す ノマイパイ 肩の上で片手を振る

飛行機 両腕を水平に伸ばし,飛ぶしぐさ いただきます胸の前で合掌し,頭を下げる 牛 両手の人差指を立て,額につける *形容詞

鳥 両腕で羽をパタパタ動かすしぐさ 臭い 鼻をつまむ

どじょう 胸の前に合せた掌を左右に振りな 暑い 上着の前をつまんで,振るしぐさ がら上方に動かす 無い 体の両側で掌を上にし,肘を曲げ かたつむり 人差指を立て,指先を前に向けた る

両手を胸の前でつける 上手 拍手する

蟹 両手でチョキの形を作る *その他

シャボン玉 ストローをつまんで吹くしぐさ もう一回 胸の前で人差指を立てる チューリップ指先を柔らかく開いた掌を手首で ヨーイドン スタートのポーズをとる

合わせる エーンエーン 両手を目に当て,泣くしぐさ

エレベータ一 両掌を胸の前で上下させる ノ f ッカパッカ 手綱を両手で号│っ張るしぐさ

*動詞 チチンプイプ片手で「プイ」を作る

開けて 胸の前で両手で箱を作り,開く動 イ

作 ク J レ ク l レ 人差指を立て,上に向けて回す お願い 胸の前で掌を合わせる 糸まきまき 胸の前に置いた両握り拳を,外方 ちょうだい 掌を上にして,叩きながら重ねる 向に交互に回す

やめて 掌を出して,相手の方向に向ける げんこつ山 胸の前で両握り拳を縦に重ねて叩 だめ:違う 片手を前に出し, 3 ' - " 2 回横に振

る グーチョキパ両手でグーを作り,前に出す

おしまい 胸の前で,手をパンパンと払う

ねんね 掌を合わせて頬につける 一本橋 人差指を顔面で立てる 抱っこ 胸の前で 2 回手を叩き,両手を丸

く横に広げる 事例 1 の介入の結果

くすぐって 両手でくすぐるしぐさ

おしつこ ズボンの前を 2 回叩く 事例 1 のダウン症児に対する介入の結果を l . g i F

おいで 手招ぎをする に示した.縦軸は累積表出語業数,横軸は介入日を 表わす.各サインは,表出モード別にサイン,サイ 手を洗う 掌をこすり合わせる ン+音声,音声に分けて表示した. l . g i F 中の数字は 弾いて 両手でピアノの鍵盤を叩くしぐさ サインあるいは音声が自発された回数である.

描いて 筆記具を持っしぐさで空中に描く 1 月から 3 月までの聞は 1 回の介入セッションに 下げて 胸の前で,下に向けた両掌を下方 おける自発サインの種類は,平均 3 . 7 語であった.

に動かす しかし 5 月にはいると,自発サインの種類は平均 7 2

入れて プラグをコンセントに入れるしぐ 語まで急速に増加した. l . g i F 中の「チガウ」のサイ

さ ンは,介入者が描いた絵が本児の要求と異なったた

抜いて プラグをコンセントから抜くしぐ めに自発されたものであった.この時期の特徴とし て,身近な絵を指さして「ハサミ J ,rノコギリ J ,rジ

さ ドウシヤ」などのサインをしてみせるといった叙述

置いて 腰を落とし,床を 2 回叩く 的なサインが増加したことが挙げられる.また,こ

*挨拶語 の頃から指さし行動が頻繁に見られ始めた.指さし

こんにちわ おじぎをする の対象は,本児自身の身体部位や室内の事物で,そ

- 3 3 ー

(4)

発話数

明 l

5 0 1  

却 l

お l

却 l

1 5 1  

1 0 1  

入 日

日麹璽 3 サインのみ 7ft [ EJ| 材│雪│

.L̲ r寸酒田「、

ロ~幻サイン+音声

E 翠翠日音声のみ

. .  

.~lA|

お 々 イ 111  1 . 11211l  11111113121 

u駒t・際ゲヲ機 4貌ョ陽キ桁川F線~I聾鋸~書I 包[]

ロ 工 I T I 121 1 

イ ト 司 マ ヰ カ イ ヲ 14l │11  直司

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ぷ 国 よ 」 n

同 T I 葱 i │聾│誕 l l i l i i g i l i l L

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イド何グ柄ヨ引ウ~

れ の ヤ マ ヒ ヒ イ イ 予 手 イト曹司

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グド悦々

角 材 舛イ イ イ 妙  シ . ・ イ ・ " . J 1

γ ス 』 マ x ィ

汚汚コウ f 4 : 予 ニ T E J T ‑ . I   2  オ 仔 ・ 2  約 カ 2 

7

・ ヘ 2  3 タ 3 ‑ ‑ l i  

鷹 1 葱 T 葱 l l Z 1 1 務│務 i i諺 TZITZ~I

淋明万;;樗嘩埼 1

F i g .   1 事例 1 (ダウン症児)のサイン・音声獲得の経過

注)旬、ースチ剖ゲイ』については、 9 月 11 日以降『シ'..l-~J は音声のみ、『手掛ゲイJ'土サイン+音声

(5)

サイン言語による精神遅滞児への介入

れらを描いて欲しいといった介入者に対する行為要 求の指さしであった.・さらに,その頃から「テンテ イ(センセイ)

j

,  r パン

j

, r ゴハン

j

, r キシヤ」など の音声が出現し始めた. 5 月中旬から「ヒイテ(弾 いて)

j

,  r カイテ(描いて

)j

を t o v i p word (軸語) とするこ語文サインが急速に増加し始めた.入室す ると直ぐにキーポードに向かい,学校で習った「糸 マキマキ

j

,rゲンコツ山」などの歌を遊戯の動作で 表現し,介入者に演奏をくりかえし求めることが観 察された. 9 月に入ると,歌調の「デーキタ,デキ タ」の部分を「エーキタ,エキタ」と大声で歌うよ うにもなった.また,この頃から家庭においても,

姉にピアノの演奏を求めたり,母親に描画を要求す ることが頻繁になり,母親の音声を r クマアン(ク マサン)

j

, rウアイアン(ウサギサン

)j

などと類似 音で模倣するようにもなった.プレイルームにおい ても,音声表出が次第に増加し,マンガの主人公の 絵を次々に指さしてはしきりにその名前を聞きたが る行動が観察された.

事例 2 の概要

自閉症女児,指導開始時年齢 9 歳 1 1 ヶ月.

出産時に勝帯巻絡があったため出生に約 3 3 時間を要 した.生下時体重 . g 0 7 4 3 定頚 3 ヶ月,始歩 1 歳 3 ヶ 月 1 歳前後で晴語様発声が認められたという. 4 歳で幼稚園に入園,その後養護学校に就学する.

指導開始時の言語面の発達水準は,かろうじて「ト マト」の気息性の模倣が認められた以外に音声は獲 得されておらず,要求表現は主にクレーン現象に近 い形でなされていた.拒否的感情の表現は,鼻を鳴 らしたり対象物を押し退けたりする身振りで示され ていた.簡単な動作模倣が可能であり,担任教師の 指導により r チョウダイ

j

, r オネガイ

j

, r カタグル マ」などのサインの使用を学習しており,また r オ シマイ

j

,rガマン」のサインの理解が学習されつつ あった.ひらがな文字をなぞることを好むほかに,

ハサミで紙を切ったり,戸外で木の葉を細かくちぎ る遊びなどが観察された.

心理検査の結果:乳幼児簡易発達検査(平成 3 年

1

2 月実施) DA 3 歳 2 ヶ月, DQ34 ,  S‑M 社会生 活能力検査(平成 3年 2 1 月実施) S A   4 歳 0ヶ月,

S . Q 4 0 ライター式国際動作性知能検査(平成 3 年 2 1

月実施) LMA 4 歳 0 ヶ月, L 1 9 . 3 Q 介入の方法

本児宅において,平成 3 年 9 2 1 月 - - - - 月まで,週 l

回約 1時間程度の介入を行った.

介入の手続きは,事例 1と同様であるが,場面設定 に関しては,対象児がハサミで紙を切ったり,文字 をなぞることが大好きであったため,ハサミ,色紙,

画用紙などを本児が自由に取れないように介入者の 管理下に置いた. Table 2 に使用されたサインの語 棄とその動作について記述した.

T a b l

e 2 事例 2 で使用されたサインの語棄と動作 サイン語葉 サインの動作

*名詞

はさみ 片手でチョキを作り,切るしぐさ 肩車 人差指で,相手の肩を 2 回つつく 紙 両手の人差指で四角形を描く パツ 両手の人差指を胸の前で交差させ

*挨拶語

こんにちわ おじぎをする さようなら 肩の上で片手を振る

*動調

お願い 胸の前で掌を合わせる

ください 掌を上にして,叩きながら重ねる おしまい 胸の前で,手をパンパンと払う 我慢 両腕を交差させて胸に当てる ねんね 掌を合わせて頬につける

書いて 人差指を鉛筆に見立て,書くしぐ さ

食べる 人差指を口に当てる 要らない 右手を 2 ・ 3 回振る

*形容詞

上手 拍手する

*その他

グルグル 人差指を下に向けて回す だるまさん 両握り拳を胸の前で交互に回す げんこつ山 胸の前で両握り拳を縦に重ねて叩

一本橋 人差指を顔面で立てる

事例 2 の介入の結果 F

i g .

2 に介入の結果,すなわち本児の自発反応を 示した.指導開始後第 2 セッションまでは,色紙を

- 3 5

(6)

発話数

1 5

1 0

5

入 日

直蓮華日サインのみ 包~サイン+音声 図 濁 音 声

Fig.2 事例 2 (自閉症児)のサイン・音声獲得の経過

ハサミで細かく切る遊びに固執し,介入者が示す身 振りサインを一応模倣はしたが,クレーン行動で色 紙やハサミを要求することが多かった.第 2セッシ ョンで,介入者が色紙にら線形の線を書いて示すと,

喜びの奇声を上げながらハサミで線に沿って切り始 め r グ J レグル

j

(ら線形を書いて)とサインでくり かえし求めてきた.第 3 セッションからは,母親と 相談して手遊び(わらべ歌)や文字や絵をなぞる遊 びを取り入れてみた.手遊びに関しては,紙を切る 遊びに飽きてきたころを見計らい r , . . . . . . , し ょ う か 」 の 声掛けと同時にサインを示し,本児の手を取ってそ の遊びをするという手続きをとることによって「イ

ッポンパシ」や「ゲンコツヤマ」などの要求表現が 自発されるようになった.しかし,このような要求 表現の頻度は本児の気分にかなり左右され,続付て 何度も要求するセッションもあれば,介入者が r , . . . . . . , し ょうか」と促進しても,そっぽを向いてしまうこと も少なくなかった.また,本児は,「イッポンパシ オ ネガイ」の介入者のサインの示範を本児に対する介 入者からの要求と受げ取っていた.文字や絵をなぞ る遊びでは,介入開始当初はひたすら文字のなぞり に熱中していたが,次第に絵をなぞっては,その名 称を書く形に移行し,この遊びは手遊びに比べて充 実しており,介入者の方から「おしまい」の指示を するまで r カイテ」のサインでくりかえし要求され た. 2 1 月に入ると,このようななぞり遊びの中で,

本児が書いた事物の名称を介入者が音声で提示する

と,それを口形模倣しようとする行動が観察された.

考 察

ダウン症児と自閉症児の 2 事例に対して,遊び場 面を中心とした日常生活場面の中で, l a t n e d i c n i t

e a c h i n

g に a y d e l m e - t i の技法を加えた介入を行い,

サイン言語を主とした自発的で機能的な言語行動を 獲得させることを試みたj事例 1のダウン症児に関 しては, l a t n d e i c n i なアプローチは,本児の自発的な サインの使用を増加させ定着させたといえるであろ う.指導開始時の本児は r ハン(ゴハン)

j

,  r ジュ (ジュース)

j

, rダイダイ(テョウダイ J ) などの音声 と,時折見られる排尿の際にズボンの前を指さすサ インしか表現手段を持ち合わせておらず,大部分の 要求は泣き叫ぶことで通すといった状態であった.

しかし,サインを使用すれば介入者が要求を受け入 れてくれるという基本的なコミュニケーションのル ールが理解できると,たちまち要求行動が自発され 始めた.それらのサインをプラグマティックな側面 から分析すると,全体の 72.2% が r 行為の要求」の カテゴリーに入るものであった.その他 r 事物の要 求」が 1 1 . 1% ,r 挨拶」と「叙述」が共に 7.4% ,r 感 覚表現」が1. 9% に分析された.また,場面と要求表 現との関係についてみると,キーボードと描画場面 における語集数の拡がりが顕著で,他の場面と比較 して要求行動の生起頻度もかなり高いものであった.

本児は指導前から,カセットで.気に入った曲を繰り

(7)

サイン言語による精神遅滞児への介入

返し再生して聞くなど,音楽に対しては強い興味が あり,毎セッション,プレイルームに入室するやい なや真っ先にキーボードに向がい次から次に演奏を 求めた.また,描画の要求に関しても同様に,自分 の身体部位や身近な遊具を指さしては,それらを描 いてくれと懸命に介入者に対してサインで伝えよう

とした.つまり,これらの遊びは本児にとって非常 に楽しいもの,すなわち,正の強化刺激であり,要 求を介入者が受け入れ満たすことにより,本児は強 化され,再び要求行動が生起することにつながって いったのである. s s e u G ら ) 8 7 9 1 ( は,機能的な反応 の要件として, 1) その反応は子どもに即時に結果 をもたらすこと, 2) その結果自体が強化を与える こと, 3) その結果はその反応と固有に結びついて いること, 4) その反応は子どもが環境と関わるの に自然であること,などの 4 点を挙げている.この 点からも,このような経過で獲得された事例 1の要 求表現行動は,十分に機能的であり,確実に定着し ていったと思われる.以上の観点から,その子ども にとって魅力的な遊びを子ども自身が獲得しており,

それらの遊びを介入者側が用意できるかどうかとい うことが,子どもの自発的な要求表現の獲得に大き く作用するものと思われる.

次に,事例 2においても,担任教師の指導に続く 短期間の介入ではあったが, l a t n e d i c n i な介入は,

本児の自発的なサインの使用能力を向上させたとい えるであろう.しかし,事例 1と比較すると r 挨拶」

以外はすべて「行為の要求」に分類されるものであ り,語乗数の拡がりの点で,それほど顕著な伸びは 見られなかった.これは,自問的な本児にとって魅 力的な遊びがきわめて限局的であったことにも起因 していると思われる.介入セッション中の本児の遊 びは,紙切り,手遊び,なぞり遊ぴの 3 種類に限ら れており,一つの遊びだけに没頭してしまい,要求 行動が途絶えがちになったりした.これらは,自閉 性障害の特性ともいえる側面であるため改善の困難 さが予想されるが,このような事例についてもその 子なりの遊び活動を大切にしながら密接な介入を続 ける必要があろう止考える.

同時にサインと音声を提示するといったトーダル な介入が子どものサインならびに音声の獲得に及ぽ す効果について考察を加えてみたい.事例 1 の介入 期 間 に お け る 自 発 的 表 現 の 8 7 語のうち, 7 5 語

( 7 3 . 1

%

) がサインを介して獲得されたものであり,

そのうち 1 2 語が音声表出に至っている.音声表出に 発達的な変化がみられた例では rジュース J の発音

が「ジュ→ジュジュ→ジュースウ」と改善され r チ ョウダイ」は r ダイ→ダーダイ J ,rアケテ J が「ア

→アーテ→アテテ」などと音節数の等しい類似音に よる表出が可能になっている.サインに関しても,

自成サインが多く観察され,それらが要求表現に用 いられたととは,本児にとっては,サインは重要な 表現・伝達手段であったと思われる.また,受容の 面からもトータル・コミュニケーションによる介入 は,軽度ではあるが視覚,聴覚の障害を合併してい る本児にとっては,二つの情報源を持つことになる という点から,介入者の意図が理解しやすかったも のと思われる..複数のモードによるトータルな介入 の効果を事例 2 についてみると, 2 3 語の自発表現の うち 6 2 語 ) % 3 . 1 8 ( がサインを介して獲得されたも のであり,サインの獲得と平行してクレーン現象が 次第に減少し,第 6 セッション以降はほぽ消失した.

これは,裏を返せばサインが本児にとって有効な表 現・伝達手段になっていったためといえよう.一方,

音声の獲得に関しては,指導開始時の発声は, .かな り緊張を伴う口形模倣と気息性のー音節づっ区切ら れた不自然なものであった.介入の過程で獲得され た「カミ J ,r ハサミ」の発声も同様のレベルのもの であった.サイン+音声によるモデルの提示では,

介入者の口元だけに注目し,本児も口を動かしたが,

提示された音声とは全く違う語音が産出された.こ れは,自閉症児に特有の刺激の過剰選択性によるも のと思われ,サインそのものから受ける視覚刺激と 聴覚的な音声刺激の 2つのモードによる介入は本児 にとっては,必ずしも受容しやすいものではなかっ たと思われた.これらのことから,自閉症児におい ては,その子どもの受容しやすいモードを慎重に選 択し,提示刺激を単一モードに絞ったほうが有効な ケースが少なくないと考えられる.

l n c i d e n t a

l n g i h a c e t は,子ども自身の日常的環境 の中で生起する介入の機会を利用して機能的な言語 の獲得を目指す方法である.したがって,子どもが 要求せざるを得ないような状況をいかに作り出して いくかということが重要な意味をもっ.そのような 工夫を,その子どもの言語圏にいる親,教師,療育 担当者などの介入者たちが努力し,共通のコミュニ ケーション・モードを用いて密接に介入し続げるこ とが子どもの生活力としてのコミュニケーション能 力を向上させることにつながるものと考える.

文 献

藤田継道(1 ) 8 7 9 :ことばのない糟神遅滞児・自閉症児に対す

- 37-

(8)

るサイン・ランゲージの指導 精神薄弱児研究, 4 0 2 号. 0 5

. 5 6

Guess ,  . D ,  r o l i a S ,  W. &  Baer ,  M. . D ( 1 ) 8 7 9 : n r e d i l h C t h w i I

i d m i t e e n g u a g l a h c ,  s b u l e e f i h S c ,  R .   ( . L ) . d E ,  Language I

n t e r v e n t i o

n . s e i g e t a r t S y t i r s e i v n U

Par~

Pr

白色

1 0 1 - 1

4 3 .

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一門恵子 3 ) 8 9 ( 1 :重度精神遅滞児の言語指導,特殊教育学研 究 , 0 2 ,  4,  9 . - 3 3 3

高橋優子(1 9 9 1 ):糟神遅滞児における機会利用型アプローチ によるサイン言語の指導,熊本大学教育学研究科修士論文 Rogers-Warren ,  E . S . : ) 0 9 8 1 ( Mand r o f : n o i t a z i l a b r v e

F a c i l i t a t i n

g e h t a y l p s i d newly f o d e n a i r t a g e n g u l a n i c

h i l d r e n

. h a v i o r B e n i o a t i c i f o d M ,  4 ,  2 . 3 8 - 6 1 3

付記:本論文は,高橋彊子の平成 3 年度の修士論文に加筆修 正したものであり,内容の一部は第5 2 回九州心理学会におい

て報告された.

参照

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