熊 大 教 育 実 践 研 究 第 0 1 号 , - 3 1 8 3 , 3 9 9 1
サイン言語による精神遅滞児への介入
ダウン症児と自閉症児に対する l a t n e d i c n i g n i h c a e t をとおして 一 門 恵 子 * ・ 高 橋 優 子
Sign Language o n i n t v e e r n t I r o f Mentally Retarded e n i l d r C h I
n c i d e n t a
l Teaching r o f a Down Syndrome Boy and an A c i t s i t u l r i G
K eikoICHIKADO and Yuko TAKAHASHI (
R e c e i v e
d October 1 , ) 2 9 9 1 S
e v e
n r e a y d l o Down syndrome boy (DA 2 : ) 6 a n d e n i n r a e y d l o c i t s i t u a l r i g (DA 3 : 2
) were d e n e i v r e t n i r o f r i e h t g n i r i u q c a n g i s e a g u g a n l , g n i s u a n l a t n e d i c n i g n i h c a e t m
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. Soon r e t f a e h t t r a t s o f o r u n o i t n e v r e t n i , e h t boy n b e g a g n i s e s r p x e s i h s t s e u q e r o
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e r e t f a r e t h o a n g , n k i s a e h t r e n e i v r e t n i p o t y a l r d b o a k e y n d a draw s t c e j b o body r o . s t r a p A
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目r o f r i e h t s
p o n t a n e u o u
s e s u s f o s n g i a n d r e h t o modes l f o . e g a u g n a
問 題
精神遅滞児の多くの者が始語期の遅れを伴うが,
重度の遅滞児や自閉性障害児の中には音声言語の獲 得や拡大の困難な者が少くない.そのために深刻な コミュニケーション障害を呈し,彼らの生活ならび に学習にさまざまな支障がもたらされる.音声や文 字などの恋意記号の柔軟な操作によるコミュニケー ションに困難を伴うこのような子どもたちにとって は,発信・受信両面で,より具象的・有縁的なコミ ュニケーションのモードが必須のものとなる.その ような音声言語の代替手段のーっとしてサイン言語 の活用が試みられてきた.身振りサインによる精神 遅滞児への介入が彼らのコミュニケーション行動を 円滑にするのみならず,音声の獲得にも促進的効果 を及ぽすことがこれまでに報告されている.その一 部は一門 ) 3 8 9 1 ( で紹介した.
コミュニケーション行動はきわめて日常的なもの であり,また,コミュニケーション相手の他者側の 条件によって大きく左右されるものである.たとえ
‑特殊教育科
"熊本市立月出小学校
その子どもの発信を助けるモードの学習が課題訓練 的になされたとしても,般化を十分に保障すること の難しさが残りがちである.この面の問題の解決策 のーっとして , t t H a と y e l s i R ) 4 7 9 1 ( の提唱した,
子どもの自発行動に合わせて,より自然な生活の展 開に沿って介入していく l a t n e d i c n i g n i h c a e t (機会 利用型指導,あるいは偶発性指導)は注目に値する
ものである.
言語の獲得やそれを駆使したコミュニケーション 行動は,本来,子どもの先天的な能力や障害特性に かなりの部分依存するものであり,コミュニケーシ ョン・モードの選択や学習形態の在り方ですべてが 解決される訳ではない.障害種別や障害の程度が類 似した子どもたちでさえ,その個人差は大きい.本 研究においては,ダウン症と自閉症の 2 事例をとお して,子どもの要求行動に焦点をあてて,サインを 用いた l a t n e d i c n i な介入を試みた.併せて,子ども の反応誘発の目的で, e l l a H ら ) 9 7 9 1 ( の m e i t y a l e d t
e c h n i q u
e (時間遅延法)と, r s R o g e -Warren ら ( 1 ) 0 8 9 の mand-model e u q i n h c e t (マンド・モデル 法)を導入した.前者は,子どもが刺激物に注目し ても一定時間プロンプトなどの提示をしない方法で あり,後者は,子どもが要求対象物に接近した時に
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「何が欲しいの」などの言語的手がかりを与える方法 である. 2 事例に対するこのような介入の効果を追 及すると共に,障害種別の違いによるコミュニケー ション行動の変容過程の差異について検討を加えた
~~
事例 l の概要
ダウン症男児 ( 2 1トリソミー型),指導開始時年齢 7 歳 7 ヶ月.胎生期・周産期に特に異常はなく,生 下時体重は . g 0 8 8 2 定頚 7 ヶ月,始歩 3 歳 , 4 歳で幼 稚園の特殊学級に入園,平成 2年養護学校に入学し ている.
指導開始時の言語面の発達水準は,ママ,イヤ,
ジュ(ジュース),ハン(ゴハン),ダイダイ(チョ ウダイ),アンパンパン(アンパンマン)などの発語 がみられ r~持ってきて」などの簡単な指示の遂行 が可能であった.しかし,要求表現が未熟なために 意思の伝達が思うようにいかず,しばしば泣き叫ん でしまう状態であった.対人関係はきわめて良好で,
動作模倣も頻繁に観察された.興味の対象はテレビ やビデオなどの機械類で,好きなビデオをくりかえ し再生して楽しんだり,床に寝転んでカセットの音 楽を聴いている乙とが多かった.
心理検査の結果:乳幼児簡易発達検査(平成 2 年 5 月実施) D A 2 歳 6 ヶ月, DQ36 ,遠城寺式乳幼 児分析的発達検査(平成 2 年 9 月実施)移動運動 2 歳 0 ヶ月 ~2 歳 3 ヶ月,手の運動 2 歳 6 ヶ月 "-'2 歳
9ヶ月,基本的習慣 1歳 6ヶ月 ' " ' " ' 1歳 9ヶ月,対人 関係 l 歳 9 ヶ月 ~2 歳 0 ヶ月,発語 0 歳 11 ヶ月 "-'1 歳 0 ヶ月,言語理解 l 歳 0 ヶ月 1 ' " ' " ' 歳 2 ヶ月.その 他,聴力右耳60dB ,左耳正常,視力は測定困難である が,テレピなど極端に近づいて観ており近視が疑わ れる.
介入の方法
熊本大学教育学部のプレイルームにおいて,平成 3 年 1 月 同年 1 1 月末まで,週 1 回 1 時間半程度 の介入を行った.指導に用いたサインは,主に藤田 継道(1 ) 8 7 9 のサイン語葉集を参考にしたが,本児 の自成サインはそのまま用いた. Ta bl e 1 に使用さ れたサインの語棄リストとその動作について記述し た.介入の手続きは, Hart & y e l s i R の l a t n e d i c n i t
e a c h i n
g と e l l H a の y l a e - d m e t i の手続きを参考に して以下のように行った.
1 )対象児が日常生活場面で好む事物や行動を想 定して,要求表現を誘発しやすいように状況設
定をした.具体的には,本児の好きなジュース や菓子類あるいはカセットテープなどを高い棚 の上に置いたり,カセットデッキやキーボード を本児の手の届がない場所に配置したりした.
2 )対象児が身振りあるいは音声を用いて事物あ るいは行為を求めてくる機会を待った.
3 )自発的な要求表現が生起しない場合は, 5 1 秒 間は何の介入もせずに待ち, 5 1 秒を過ぎたら,
「何が欲しいの」などど発信を促し,それでも反 応がみられなければ,介入者がモデルを提示し てプロンプトを行い,徐々にそれをフェードア ウトしていった.
4 )要求行動が適切に自発された場合は,音声+
サインでフィードパックし,言語賞賛を加えな がら,対象児の要求物を与えたり,要求行為に 応じたりした.
T a b l
e 1 事例 lで使用されたサインの語棄と動作 サイン語集 サインの動作
*名詞(身体部位)
頭 頭を 2回叩く 手 手の甲を指し示す 足 足部を指し示し 2 回叩く お腹 腹部を 2 回叩く
へそ へそを指し示す
目 目を指し示す
耳 耳たぶを片手で援ゥて示す
鼻 鼻を指し示す
ほっぺ ほほをつつく
舌 舌を指し示す
歯 歯を指し示す
喉 喉を 2 回叩く
*名詞(事物)
ジュース コップを持って飲む動作
マンマ 左手で茶碗を持ち,右手で口にか き込むしぐさをする
コップ 片手でコップを形作る
はさみ 片手でチョキを作り,切るしぐさ 注射 腕に注射を打っしぐさをする のこぎり 両手で鋸を引くしぐさ
自動車 両手でハンドルを作り,回転させ る
汽車 両手を車輪に見立て,体の横でグ
サイン言語による精神遅滞児への介入
サイン語葉 サインの動作 サイン語提 サインの動作
ルグル回す ノマイパイ 肩の上で片手を振る
飛行機 両腕を水平に伸ばし,飛ぶしぐさ いただきます胸の前で合掌し,頭を下げる 牛 両手の人差指を立て,額につける *形容詞
鳥 両腕で羽をパタパタ動かすしぐさ 臭い 鼻をつまむ
どじょう 胸の前に合せた掌を左右に振りな 暑い 上着の前をつまんで,振るしぐさ がら上方に動かす 無い 体の両側で掌を上にし,肘を曲げ かたつむり 人差指を立て,指先を前に向けた る
両手を胸の前でつける 上手 拍手する
蟹 両手でチョキの形を作る *その他
シャボン玉 ストローをつまんで吹くしぐさ もう一回 胸の前で人差指を立てる チューリップ指先を柔らかく開いた掌を手首で ヨーイドン スタートのポーズをとる
合わせる エーンエーン 両手を目に当て,泣くしぐさ
エレベータ一 両掌を胸の前で上下させる ノ f ッカパッカ 手綱を両手で号│っ張るしぐさ
*動詞 チチンプイプ片手で「プイ」を作る
開けて 胸の前で両手で箱を作り,開く動 イ
作 ク J レ ク l レ 人差指を立て,上に向けて回す お願い 胸の前で掌を合わせる 糸まきまき 胸の前に置いた両握り拳を,外方 ちょうだい 掌を上にして,叩きながら重ねる 向に交互に回す
やめて 掌を出して,相手の方向に向ける げんこつ山 胸の前で両握り拳を縦に重ねて叩 だめ:違う 片手を前に出し, 3 ' - " 2 回横に振
る グーチョキパ両手でグーを作り,前に出す
おしまい 胸の前で,手をパンパンと払う
ねんね 掌を合わせて頬につける 一本橋 人差指を顔面で立てる 抱っこ 胸の前で 2 回手を叩き,両手を丸
く横に広げる 事例 1 の介入の結果
くすぐって 両手でくすぐるしぐさ
おしつこ ズボンの前を 2 回叩く 事例 1 のダウン症児に対する介入の結果を l . g i F
おいで 手招ぎをする に示した.縦軸は累積表出語業数,横軸は介入日を 表わす.各サインは,表出モード別にサイン,サイ 手を洗う 掌をこすり合わせる ン+音声,音声に分けて表示した. l . g i F 中の数字は 弾いて 両手でピアノの鍵盤を叩くしぐさ サインあるいは音声が自発された回数である.
描いて 筆記具を持っしぐさで空中に描く 1 月から 3 月までの聞は 1 回の介入セッションに 下げて 胸の前で,下に向けた両掌を下方 おける自発サインの種類は,平均 3 . 7 語であった.
に動かす しかし 5 月にはいると,自発サインの種類は平均 7 2
入れて プラグをコンセントに入れるしぐ 語まで急速に増加した. l . g i F 中の「チガウ」のサイ
さ ンは,介入者が描いた絵が本児の要求と異なったた
抜いて プラグをコンセントから抜くしぐ めに自発されたものであった.この時期の特徴とし て,身近な絵を指さして「ハサミ J ,rノコギリ J ,rジ
さ ドウシヤ」などのサインをしてみせるといった叙述
置いて 腰を落とし,床を 2 回叩く 的なサインが増加したことが挙げられる.また,こ
*挨拶語 の頃から指さし行動が頻繁に見られ始めた.指さし
こんにちわ おじぎをする の対象は,本児自身の身体部位や室内の事物で,そ
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発話数
明 l
5 0 1
却 l
お l
却 l
1 5 1
1 0 1
5
入 日
日麹璽 3 サインのみ 7ft [ EJ| 材│雪│
.L̲ r寸酒田「、