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(1)

修 士 学 位 論 文

B i S 2

系 超 伝 導 体

R E ( O , F ) B i S 2

に お け る 超 伝 導 層 元 素 置 換 効 果

指 導 教 員 三 浦 大 介 準 教 授 水 口 佳 一 助 教

平 成 2 8 2 1 8日 提 出

首都大学東京大学院

理 工 学 研 究 科 電 気 電 子 工 学 専 攻 学修番号 14882328

氏 名 廣 井 貴 史

(2)

学位論文要旨(修士(工学))

論文著者名 廣井 貴史 論文題名:BiS2系超伝導体RE(O,F)BiS2における超伝導層元素置換効果

本文

1911年にカマリン・オンネスは、水銀の電気抵抗が液体ヘリウム温度(4.2K)

で突然消失することを観測し、超伝導現象を発見した。それ以降、数多くの超 伝導体が発見され、超伝導体の応用を目指した研究が世界中で行われてきた。

現在では超伝導技術を用いた製品が実用化され始めている。たとえば、医療分 野で使われる MRI や磁気特性測定装置 SQUID などである。最近では、超伝導 リニアや、超伝導量子コンピューターなど新技術の実用化を目指した研究も活 性化している。よって、超伝導体が将来的に様々な分野で技術革新を巻き起こ すだろうことは一目瞭然である。

一方で、超伝導体の応用にあたって、低温でなければ超伝導状態が発現しな いこと(冷却コスト)が大きな障害となる。そのため、より良い超伝導特性を 持ち、超伝導転移温度(Tc)が高い新物質を見つけることが重要であり、多くの 研究者の目標である。

超伝導探索におけるブレイクスルーは、1986 年の銅酸化物系超伝導体の発見 である。この物質はCuOから成る超伝導層と、電気的に絶縁体のブロック層 とが積層した層状構造をしており、液体窒素の沸点を超える高い Tcを記録し高 温超伝導体と呼ばれている。また、ブロック層を換えることで超伝導特性が変 化することや、従来型(電子―格子相互作用による超伝導電子対形成機構)と は異なる超伝導機構を持ち、その新奇性から超伝導フィーバーが巻き起こった。

さらに、2006 年には鉄系超伝導体が発見された。当初の Tc 5.6K であった が、元素置換やブロック層を換えることなどで 55K まで上昇し、銅酸化物と並 び高温超伝導体と呼ばれている。

2012年には、我々の研究室においてBiS2系超伝導体が発見された。この物質 は上記の高温超伝導と同様に、BiS2 超伝導層とブロック層とが積層した層状構 造を有している。これまでにブロック層の異なるREO1-xFxBiS2 (RE: La, Ce, Pr, Nd, Sm)やBi4O4S3EuFBiS2などが見つかり、さらに非従来型の超伝導機構を示す実 験結果も報告されている。よって、BiS2 系超伝導体の物性を詳細に研究するこ とは、新しい高温超伝導体の創出と非従来型超伝導機構解明において重要であ る。

(3)

本研究では、BiS2 系超伝導体の中でも類似の結晶構造の超伝導体が多数存在 する REO1-xFxBiS2 に着目し、各サイトの元素置換によって新物質の発見および 物性解明を目指した。特に、結晶構造と超伝導特性の相関を系統的に調べるこ とで、超伝導発現のメカニズムの解明とTcの向上を目指した。

第一章では、超伝導体の歴史およびその基本的な性質について概要を記述し、

高温超伝導体についてまとめた。そして、本研究の対象物質系である BiS2系超 伝導体の多様な結晶構造について説明した。また、本研究の主軸と成る元素置 換効果の説明として、各元素置換によって期待される物性・結晶構造の変化を 記述した。

第二章では実験方法を述べている。物質の合成方法および物性評価方法と、

用いた測定機器・測定原理を記述した。REO1-xFxBiS2(RE = La, Ce, Nd)および元素 置換試料は、各原料を組成比に基づき秤量し、混合、ペレット化した試料を石 英管中に真空封入し焼成した多結晶体である。得られた試料に対し磁化率測定 や電気抵抗率測定、X 線回折などを行い、元素置換による結晶構造および物性 の変化を評価した。

第三章では合成したREO1-xFxBiS2(RE: La, Ce, Nd)および元素置換試料の実験 結果および考察について述べている。まず、それぞれの試料の測定結果を示し、

考察したうえで、超伝導特性と結晶構造の相関を調べた。初めに、最適な合成 条件を求めるため NdO1-xFxBiS2 F 濃度および焼成温度を変化させて合成した ところ、F濃度50%、焼成温度800°Cの時にTc5.4Kと最も高くなることが分 かった。また、F濃度を増やすにつれてc軸に一軸的な格子圧縮が生じ、c軸と a軸の比(c/a)がTcに関与していることが分かった。次に、F濃度を50%に固定し REO0.5F0.5BiS2(RE: La, Ce, Nd)において、超伝導層を価数が同じでイオン半径 の異なる元素で置換することで化学圧力を印加し、結晶構造と超伝導特性の相 関を調べた。その結果S を同族のSeで置換することによって、Nd 試料ではTc の減少とともに不純物が現れることが分かった。一方、Ce試料ではSe濃度30%

の時Tc = 2.7K、La試料では50%の時Tc = 3.8Kと異なるSe濃度においてTcが最 も高くなった。これらの実験結果から、SSeの置換効果は、イオン半径の差 とブロック層のサイズと相関し、超伝導特性も影響を受けることが分かった。

また、合成した超伝導体の結晶構造をより詳細に調べるため、リートベルト解 析を行ったところ、Seは特定のSサイト(超伝導面内のCh1サイト)に選択的 に置換されていることがわかった。これらの実験結果より、BiS2 系超伝導体の 転移温度の向上には最適な F 濃度と、局所的な結晶構造の最適化が重要である ことがわかった。

第四章では、本研究で得られた BiS2系超伝導体の超伝導特性と結晶構造の相 関についてまとめ、キャリア移動度やキャリア密度が転移温度の変化に関わっ ていることなど、現時点で考えられるシナリオをいくつか提案した。また今後 の研究課題を提示した

(4)

1

目次

1 序論 ... 3

1.1. 超伝導の歴史... 4

1.2. 超伝導の特性... 6

1.2.1. マイスナー効果 ... 8

1.3. 第一種超伝導体と第二種超伝導体 ... 9

1.3.1. 第一種超伝導体 ... 9

1.3.2. 第二種超伝導体 ... 9

1.4. BCS理論 ... 10

1.5. 層状超伝導体... 11

1.6. BiS2系超伝導体... 12

1.6.1. REO1-xFxBiS2 ... 13

1.7. 元素置換効果... 14

1.7.1. 化学圧力 (CP) ... 15

1.8. 本研究の目的... 16

2 実験方法及び原理 ... 17

2.1. 固相反応法 ... 18

2.2. Bi2S3およびBi2Se3の合成方法 ... 19

2.3. NdO1-xFxBiS2の原料及び焼成温度シーケンス ... 20

2.4. NdO0.5F0.5Bi1-xSbxS2の原料及び焼成温度シーケンス ... 20

2.5. NdO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の原料及び焼成温度シーケンス ... 21

2.6. CeO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の原料及び焼成温度シーケンス ... 22

2.7. LaO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の原料及び焼成温度シーケンス ... 22

2.8. 電気炉 ... 23

2.9. X線回折装置(XRD装置) ... 23

2.9.1. Spring-8での粉末結晶構造解析 ... 24

2.9.2. Rietveld解析 ... 25

2.10. 四端子法 ... 25

2.11. SQUID(Superconducting quantum interference device) ... 26

3 実験結果及び考察 ... 28

3.1. NdO1-xFxBiS2の合成条件最適化 ... 29

3.1.1. 磁化率測定結果 ... 29

3.1.2. XRD測定結果 ... 32

3.2. NdO0.5F0.5(Bi1-x Sbx)S2 ... 37

3.2.1. XRD測定結果 ... 37

3.2.2. 磁化率・電気抵抗測定結果 ... 39

(5)

2

3.3. NdO0.5F0.5Bi(S1-x Sex)2 ... 41

3.3.1. XRD測定結果 ... 41

3.3.2. 磁化率測定結果 ... 43

3.4. CeO0.5F0.5Bi(S1-x Sex)2 ... 46

3.4.1. CeO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の結晶構造解析 ... 46

3.4.2. CeO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の磁化率測定結果 ... 50

3.5. LaO0.5F0.5Bi(S1-x Sex)2 ... 52

3.5.1. LaO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の結晶構造解析... 52

3.6. 超伝導発現メカニズムの解明 ... 57

4 結論と今後の展望 ... 58

4.1. 本研究のまとめ... 59

4.1.1. NdO1-xFxBiS2の合成条件最適化 ... 59

4.1.2. NdO0.5F0.5BiS2の元素置換効果 ... 59

4.1.3. CeO0.5F0.5BiS2Se置換効果 ... 59

4.1.4. LaO0.5F0.5BiS2Se置換効果 ... 59

4.1.5. BiS2面内化学圧力と超伝導の相関 ... 59

4.2. 今後の展望 ... 61

参考文献 ... 62

謝辞 ... 63

(6)

1章 序論

3

第 1 章 序論

(7)

1章 序論

4

1.1. 超伝導の歴史

超伝導体は、ゼロ抵抗や完全反磁性など他の物質にはない固有の性質を持つ物質であ る。そのため、世界中で超伝導に関する研究が行われている。しかし、超伝導の歴史 はそれほど古いわけではない。その歴史は、今から約100年前、1908年にオランダの 物理学者カマリン・オンネス(Kamerlingh-onnes)がヘリウムの液化に成功したことに始 まる。この液体ヘリウムの登場で、ヘリウムの沸点である約4.2Kという極低温化での 物理現象を研究することが可能になった。そこで、オンネスは純度の高い金属(水銀、

スズ、鉛等)において絶対零度近くでの電気抵抗測定実験を行った。その結果、1911年、

水銀にて4.2Kで電気抵抗が突然ゼロになる超伝導現象を発見した[1]。この常伝導状態 から超伝導状態に移り変わる臨界温度を超伝導転移温度(Tc)と言い、超伝導研究におい ては主に転移温度向上を目標として数多くの実験的、理論的研究がなされた。

1933年、超伝導体の磁気的性質を研究していたマイスナー(Meissner)とオクセンフェ ルト(Ochsenfeld)によって超伝導体が完全反磁性であることが発見された[2]。この現象 はマイスナー効果と呼ばれ、超伝導体が完全導体ではない事を明確にした。さらに、

1957年にはバーディーン(Bardeen)、クーパー(Cooper)、シュリーファー(Schrieffer)らに より、それぞれの頭文字を取ったBCS理論が提唱された[3]。この理論は、電子が格子 を媒介にしてペア(クーパー対)を作り、それらがボース・アインシュタイン凝縮するこ とで超伝導状態になることを説明しており、超伝導がマクロな量子現象であるという 驚くべき本質を示している。その一方で、超伝導転移温度は40K を超えないという予 測(BCSの壁)もなされており、30年近くにわたってこの壁を超えることはできなか った。ところが、1986 年、ベドノルツ(Bednorz)とミュラー(Muller)によって銅酸化物

(LaBaCuO)において35Kで超伝導転移が観測されると[4]、翌年にはチュー(Chu)らによ

ってYBa2Cu3O7-δ(YBCO)で導転移温度が90Kを超えることが確認された[5]。このYBCO が初めて液体窒素の沸点(77K)を超える転移温度を持つ超伝導体となった。これら銅 酸化物系超伝導体は高温超伝導体と呼ばれ、世界中で高温超伝導探索フィーバーが巻 き起こった。現在では水銀を含む銅酸化物超伝導体において高圧下で150Kを超す転移 温度を記録しているほか[6]、2015年には硫化水素において1500Paの圧力下という 特殊な状況下ではあるが、203Kで超伝導状態になることが確認された[7]。また、日本 でも2008 年に東工大の細野グループによって高温超伝導体である鉄系超伝導体が[8]、

2012年には我々の研究室でBiS2系超伝導体が発見された[9][10]。

一方で、超伝導体の応用としては医療分野で使われるMRIや超伝導量子干渉磁束計

SQUID などにおいて、すでに実用化されている。また、最近では、超伝導リニアや、

超伝導量子コンピューターなど新技術の実用化を目指した研究も活性化している。こ のように、超伝導体が将来的に様々な分野で技術革新を巻き起こすだろうことは一目 瞭然である。

(8)

1章 序論

5

図 1.1 磁気浮上実験(上がネオジム磁石、下が超伝導体)

図 1.2 超伝導転移温度(Tc)の推移

(9)

1章 序論

6

1.2. 超伝導の特性

物質が超伝導状態になるための条件を臨界条件といい、臨界磁場(Hc)・臨界電流密度

(Jc)・超伝導転移温度(Tc)の三つの条件がある。これら三つの条件を満たした時、つまり

下図 1.3の曲面内の時のみ超伝導が発現する。

図 1.3 超伝導の臨界条件

・超伝導転移温度(Tc)

超伝導転移温度とは、下図 1.4(a)のように物質を冷却していった時に電気抵抗が突然ゼ ロになり常伝導状態から超伝導状態に転移する温度のことでありTc(critical temperature) と表記される。また、超伝導体は完全反磁性を示すことから、下図 1.4(b)のように物質 を冷却していった時に磁化が反磁性転移を起こす温度を超伝導転移温度とみなす場合 もある。前者は物質内部で超伝導のパスが形成されることでゼロ抵抗を示し、後者は 物質の一部が超伝導状態になると反磁性転移が観測される。そのため、厳密には両者 は一致しないが、試料が単相かつ均一であればほぼ同じ転移温度が見積もれる。

(10)

1章 序論

7

図 1.4 超伝導体の(a)電気抵抗率の温度依存性 (b)磁化率の温度依存性

・臨界磁場(Hc)

超伝導体には、1.2.1 節に挙げるように外部からの磁束を排除するマイスナー効果とい うものがある。超伝導体内部に侵入しようとする磁束を打ち消すように超伝導体表面に 遮蔽電流が流れるからである。そしてその遮蔽電流は、超伝導体の抵抗がゼロという特 徴から減衰せずに永久に流れ、磁束を打ち消し続ける。しかし、外部磁場を強くしてい くと、それ以上磁束を打ち消せなくなり超伝導状態が壊れてしまう。その時の外部磁場 の強さを臨界磁場という。

・臨界電流密度(Jc)

臨界電流密度とは、単位断面積当たりの超伝導体にゼロ抵抗で流せる最大の電流値のこ とであり、それ以上電流を流すと電流の作る磁場が臨界磁場を超えてしまい超伝導状態 が壊れてしまう。

(11)

1章 序論

8

1.2.1. マイスナー効果

図 1.5 超伝導体の外部磁場に対する振る舞い(マイスナー効果)

図 1.6 完全導体の外部磁場に対する振る舞い

マイスナー効果とは、超伝導体に特有の現象で外部からの磁場を完全に排除する現象 のことを言い、完全反磁性とも呼ばれる。図 1.5左図のように常伝導状態(T>Tc )の 物質に外部磁場を印加する。この外部磁場が印加された状態で温度を下げていき超伝 導状態にすると、超伝導体内部から磁場を完全に排除する。この時、超伝導体が完全 導体だとすると図 1.6 のように磁場は物体内部に侵入し、外部磁場を止めても物体内 部には磁場の変化を妨げるように円電流が流れるため磁場は残るはずである。このこ とから、超伝導体は完全導体ではないということが示される。また、マイスナー効果 が引き起こされた時、超伝導体表面にはわずかに磁束が侵入しており(磁場侵入長) その周りには遮蔽電流が流れている。このマイスナー効果を現象論的に説明したもの にロンドン方程式というものがある。超伝導体の電流密度jが磁場のベクトルポテンシ ャルAに比例すると仮定すると、比例定数を𝜇1

0𝜆2として、

𝑗 = − 1 𝜇0𝜆2𝐴

となる。これをロンドン方程式という。ここで、𝐵 = ∇ × 𝐴とし、マクスウェル方程式 を用いると、

𝐵(𝑥) = 𝐵(0)𝑒𝑥𝜆 (𝐵(0) = 𝜇0𝐻𝑒)

(12)

1章 序論

9

が得られる。x は超伝導体表面からの距離であり、この式は超伝導体表面から深さ 地点において磁束密度が1/𝑒倍に減衰することを示している。

このような、超伝導体特有の完全反磁性という特徴は磁化率測定で顕著に表れる。す なわち磁化率を、Mを超伝導体の磁化、Hを外部磁場とすると、物質中の磁束密度B

𝐵 = 𝜇0(𝐻 + 𝑀) = 𝜇0(1 + 𝜒)𝐻

となり、完全反磁性である超伝導状態ではB = 0であるので= -1となる。

1.3. 第一種超伝導体と第二種超伝導体

超伝導体は大きく分けて第一種超伝導体と第二種超伝導体の二つに分けられる。以下 にそれぞれの特徴を示す。

1.3.1. 第一種超伝導体

第一種超伝導体とは、図 1.7(a)のように磁場を印加していった時、臨界磁場(Hc)までは マイスナー効果を示し、Hcを超えると磁場が超伝導体内部に入りこみ常伝導状態に戻 ってしまう超伝導体のことをいう。NbV以外の超伝導になる金属元素単体が第一種 超伝導体である。

1.3.2. 第二種超伝導体

第二種超伝導体とは、図 1.7(b)のように磁場を印加していった時、下部臨界磁場(Hc1) まではマイスナー効果を示し、Hc1 を超えると磁場の侵入を許しながら上部臨界磁場

(Hc2)まで徐々に常伝導状態に移行していく超伝導体のことをいう。このHc1Hc2の間

の領域では、量子化磁束が入り込んだ常伝導領域と超伝導領域が混在しており、完全 反磁性は示さないがゼロ抵抗は示す。このように第二種超伝導体は高磁場でも超伝導 状態を維持することが可能であり、非常に実用的である。合金・化合物超伝導体、銅 酸化物系超伝導体は第二種超伝導体に含まれる。また本研究で扱う BiS2系超伝導体も 第二種超伝導体である。

図 1.7 (a)第一種超伝導体の磁化の振る舞い (b)第二種超伝導体の磁化の振る舞い

(13)

1章 序論

10

1.4. BCS理論

BCS理論とは1957年、バーディーン、クーパー、シュリーファーの3人によって提唱 された理論である。この理論は、ゼロ抵抗やマイスナー効果、磁束の量子化、エネル ギーギャップの存在といった超伝導現象をほぼ完全に解明しており、多くの実験によ っても確認されている。

一方で、銅酸化物系超伝導体や鉄系超伝導体などのようにBCS理論では説明できな い超伝導体も存在する。これらは、BCS 理論に説明される電子―格子相互作用による クーパー対形成機構とは異なるクーパー対形成機構を持つ可能性が高く、非従来型超 伝導と呼ばれる。しかし、BCS 理論の本質である「クーパー対の対凝縮」という考え 方は、現在知られている全ての超伝導体に対して正しいと考えられている。

BCS 理論によると、フェルミオンである電子が、スピンがちょうど逆向きの別の電 子とペア(クーパー対)を組むことでボソンとなり、最低エネルギー状態に凝縮する ことで超伝導状態になると言われている。この時、電子は格子振動を媒介にしてクー パー対を形成している。概略を説明すると、下図 1.8 左図のように格子の中を負に帯 電した電子が通ると正に帯電した格子は引力を受け引き寄せられる(電子は格子にエ ネルギーを奪われる)。すると格子が引き寄せられた部分ではプラスの濃度が高くなる。

そして、下図 1.8 右図のようにプラスの濃度が高くなった場所に別の電子が引き寄せ られる(電子は格子からエネルギーを与えられる)。つまり、これら二つの電子をペア で考えることによってエネルギーの損失がゼロになり、ゼロ抵抗で電流が流れるとい うわけである。

図 1.8 電子―格子相互作用の図

上で示す電子と格子の相互作用の大きさを V とすると BCS 理論では、転移温度 Tc

は以下の式で表されることが分かっている。

𝑇𝐶 ≅ 𝜃𝐷exp (− 1 𝑁(0) ∙ 𝑉)

ここで、𝜃𝐷はデバイ温度、N(0)は常伝導状態でのフェルミ面の状態密度である。この 中で制御しやすいパラメーターは𝜃𝐷および N(0)である。そして、Tcの上昇のためには、

高いフォノン振動数(𝜃𝐷)とフェルミ面の状態密度(N(0))が重要である。

(14)

1章 序論

11

1.5. 層状超伝導体

銅酸化物系超伝導体と鉄系超伝導体のように高温超伝導体と呼ばれる物質はいずれも 層状の結晶構造を有している。このような層状超伝導体では超伝導を担う超伝導層と 電気的に絶縁なブロック層が交互に積層した構造をしている。

図 1.9に代表的な銅酸化物層状超伝導体RE-Ba-Cu-O系の結晶構造を示す。CuO が二次元的な正方格子の CuO2面を作っており、これが超伝導層の役割を担っている。

この超伝導層にキャリアをドープすることで反強磁性相(モット絶縁層)が抑制され 90K近傍の超伝導転移が観測される。またCuO2面の枚数を増やすことで転移温度が上 昇することも知られており、CuO2面を3枚持つBi2Sr2Ca2Cu3O10+ではで超伝導転 移を起こす。

次に代表的な鉄系超伝導体 LaFeAsO1-xFxの結晶構造を図 1.10 に示す。LaFeAsO1-xFx

ではFeAs層が超伝導層であり、LaO1-xFx層がブロック層である。この物質は2008年に 東京工業大学の細野グループによって最適なF濃度(x = 0.11)において26Kで超伝導転 移が起きることが報告された。さらに、この物質は母物質のLaFeAsOでは超伝導を示 さず、Fドープにより反強磁性秩序を抑制し超伝導が発現することが分かっている。ま た、La をよりイオン半径の小さいSmで置換したSmFeAsO1-xFxではTc55Kまで、

LaFeAsO1-xFxを高圧条件下で測定すると、Tc43Kまで上昇することが分かっている。

これらの高温超伝導体と従来の金属合金の超伝導体との大きな相違点は、高温超伝 導体の超伝導転移温度がこれまで万能であったBCS理論で説明しきれないことである。

従来型の超伝導体では、電子格子相互作用を媒介にして、クーパー対が形成される。

一方、これらの高温超伝導体では、磁気ゆらぎ(または軌道や電荷のゆらぎ)を媒介 にしたクーパー対形成メカニズムが有力視されており、従来型のBCS理論から予想さ れる Tcの上限(約 40K)を大きく超えている。これらの例に見られるように、層状物 質は高温超伝導体になる可能性が大いにあり、新物質探索の指針として新たな層状超 伝導体が望まれている。

図 1.9 RE-Ba-Cu-O系の結晶構造

(15)

1章 序論

12

図 1.10 LaFeAsO1-xFxの結晶構造と各種温度のF濃度依存性

J. Am. Chem. Soc., 2008, 130 (11), pp 3296–3297

1.6. BiS2系超伝導体

BiS2系超伝導体は2012年、我々の研究室で Bi4O4S3という物質において発見された。

これまでに Bi4O4S3 の他に REO1-xFxBiS2 (RE: La, Ce, Pr, Nd, Yb)や[12][13][14][15]、

Sr1-xLaxFBiS2[16][17]、AFBiS2 (A: Sr, Eu)[18][19][20]、Eu3F4Bi2S4[21]などが発見されてい る。これらの結晶構造を図 1.11に示す。図 1.11に示すようにBiS2系超伝導体はBiS2

超伝導層と電気的に絶縁なブロック層が交互に積層した層状超伝導体である。また、

BiS2 系超伝導体の母物質はバンド計算によると絶縁体でありフェルミ準位(EF)直上の バンドは主にBi-6p軌道により形成されている。元素ドーピングによりBi-6p軌道に電 子キャリアを供給することで超伝導を発現する。このように、層状構造を有している ことや、キャリアドープにより超伝導を発現すること、ブロック層を換えることで新 しい超伝導体が見つかることなど高温超伝導体と多くの類似点があることから、高温 超伝導化や非従来型の超伝導発現機構解明に期待がもたれている。

(16)

1章 序論

13

図 1.11 (a)Bi4O4S3の結晶構造 (b)REO1-xFxBiS2の結晶構造

1.6.1. REO1-xFxBiS2

REO1-xFxBiS2は図 1.11(b)のように BiS2超伝導層と RE(O,F)ブロック層が交互に積層し た構造をしている。この物質の母物質REOBiS2は絶縁体であり、OFに一部置換す ることでキャリアがドープされ超伝導が発現する。RELaCe, Pr, Nd, Ybなどで 超伝導が観測されており、それぞれの物質で様々な物性を示すことから今後の研究に 期待が持たれている。また、この物質群の一部(例えば、LaCe)は高圧合成または 高圧下測定をすることで、構造が正方晶から単斜晶に変化し、それに伴い Tcが大きく 上昇することが報告されている。下図 1.12 REO1-xFxBiS2の常圧合成試料(as-grown) 及び高圧アニール試料(HP-annealed)の転移温度を示す。

(17)

1章 序論

14

図 1.12 REO1-xFxBiS2の常圧合成試料(as-grown)及び 高圧アニール試料(HP-annealed)の転移温度

1.7. 元素置換効果

元素置換とは高温超伝導体などで新しい超伝導体の探索や転移温度の向上などを目指 すときによく行われる方法で、ブロック層もしくは超伝導層の一部の元素を、イオン 半径が同程度の別の元素で置換することで、新しい超伝導体を見つける方法である。

本研究では、図 1.13に示すようにREO1-xFxBiS2BiS2超伝導層のSSeに部分置 換した試料、NdO1-xFxBiS2BiSbに部分置換した試料をそれぞれ作製した。図 1.14 に示すようにSSeおよびBiSbは同族元素であり、基本的に同価数であるため、

キャリア濃度を大きく変化させずに格子の大きさのみを変化させ超伝導特性と結晶構 造の相関を調べる事が出来る。そして、SSeに部分置換するとイオン半径が大きく なるため軸長が拡大することが予測され、BiSbに部分置換するとイオン半径が小さ くなるため軸長が収縮することが予測される。

(18)

1章 序論

15

図 1.13 REO1-xFxBiS2の結晶構造と元素置換効果の模式図

図 1.14 周期表(一部抜粋)

1.7.1. 化学圧力 (CP)

本研究では、元素置換を施したときのBiのイオン半径と Chサイトの平均イオン半径 の軌道の重なりを調べるため以下の式のように化学圧力(CP : Chemical Pressure)を定義 した。RChChサイトの平均イオン半径であり、リートベルト解析によって得たSe Sの占有率から求めた。RBiBiのイオン半径である。Observed Bi-Ch distanceはリー トベルト解析によって得られたBiCh間の距離である。

CP = 𝑅𝐶ℎ+ 𝑅𝐵𝑖

𝑜𝑏𝑠𝑒𝑟𝑣𝑒𝑑 𝐵𝑖 − 𝐶ℎ 𝑑𝑖𝑠𝑡𝑎𝑛𝑐𝑒

図 1.15Bi-Chサイトの軌道混成による化学圧力のイメージ図を示す。図1.14の上 段のようにChサイトの平均イオン半径とBiのイオン半径の和がBi-Ch距離よりも離

(19)

1章 序論

16

れていればCP < 1、中段のようにちょうど接していればCP = 1、下段のように重なっ ていればCP > 1であると定義した。

図 1.15 超伝導面内のBi-Chサイトの軌道混成による化学圧力(CP)のイメージ図

1.8. 本研究の目的

2012年に発見されたBiS2系超伝導体は、高温超伝導体と同様に、超伝導層とブロック 層が積層した層状構造をしている。そして、非従来型の超伝導機構を示す可能性や、

超伝導特性と結晶構造に強い相関があるということが報告されている。また、母物質 が絶縁体でキャリアドープにより超伝導が発現することなど、高温超伝導体に非常に 似ている。そのため、BiS2 系超伝導体の物性を詳細に研究することは、新しい高温超 伝導体の創出と超伝導機構の解明において重要である。

そこで本研究では、BiS2 系超伝導体の中でも類似の結晶構造の超伝導体が多数存在 するREO1-xFxBiS2に着目し、各サイトの元素置換によって新物質の発見および物性解明 を目指した。特に、結晶構造と超伝導特性の相関を系統的に調べることで、超伝導発 現のメカニズムの解明とTcの向上を目指した。

(20)

2章 実験方法及び原理

17

第 2 章 実験方法及び原理

(21)

2章 実験方法及び原理

18

2.1. 固相反応法

本研究で作製した試料はすべて固相反応法を用い、真空石英管中で二段階に分けて焼 成した。固相反応法とは、固体原料の混合物を溶融させずに高温下で反応させる方法 であり、一般的に無機化合物のような融点が高い物質を合成する際に用いられる。以 下に、実際に行った合成過程を箇条書きで列挙した。

原料となる粉末を目的組成になるように秤量し、乳鉢に入れて均一になるように 混合する

混合したものを20MPa程度でペレット状に成型し、石英管に真空封入する。

石英管ごと電気炉に入れ、物質ごとの温度シーケンスで焼成する。

得られた物質を再び乳鉢に入れ、均一になるように混合する。

混合したものを再度20MPa程度でペレット状に成形し、石英管に真空封入する。

再び、石英管ごと電気炉に入れ物質ごとの温度シーケンスで焼成する。

以下に上記①~⑥の合成過程を図で示した。

図 2.1 固相反応法

なお、石英管は融点が非常に高く、電気炉で焼成した時に溶融しないこと、化学反 応を起こしにくいことなどが固相反応法に適しているため採用した。また、一度の混 合では原料が完全に均一にならずにムラが出来てしまう可能性があるため、一度焼成 したものを再度混合することで、より均一に反応を進ませるようにした。

(22)

2章 実験方法及び原理

19

2.2. Bi2S3およびBi2Se3の合成方法

各物質の出発原料として使用した Bi2S3及び Bi2Se3は自作したため、合成方法を記す。

下図2.2のように①原料(Bi、SまたはSe)を化学量論比に基づいて秤量し、そのまま 石英管に入れる。②石英管に真空封入する。③電気炉で焼成する。という手順で合成 した。焼成温度シーケンスは図2.3、原料は表2.1に示す。

図 2.2 Bi2S3及びBi2Se3の合成方法

図 2.3 Bi2S3及びBi2Se3の焼成温度シーケンス

表 2.1 Bi2S3及びBi2Se3の合成に使用した原料

原料名 形状 会社名 純度(%)

Bi Grains or Needles 株式会社高純度化学研究所 99.999

S Grains 同上 99.99

Se Grains 同上 99.999

(23)

2章 実験方法及び原理

20

2.3. NdO1-xFxBiS2の原料及び焼成温度シーケンス

図 2.4 NdO1-xFxBiS2の焼成温度シーケンス 表 2.2 NdO1-xFxBiS2原料

原料名 形状 会社名 純度(%)

Nd2O3 Powder 株式会社高純度化学研究所 99.9

Nd2S3 Powder 同上 99

BiF3 Powder 同上 99.9

Bi2S3 Powder 自作 ---

Bi Grains 株式会社高純度化学研究所 99.999

2.4. NdO0.5F0.5Bi1-xSbxS2の原料及び焼成温度シーケンス

図 2.5 NdO0.5F0.5Bi1-xSbxS2の焼成温度シーケンス 表 2.3 NdO0.5F0.5Bi1-xSbxS2の原料

原料名 形状 会社名 純度(%)

Nd2O3 Powder 株式会社高純度化学研究所 99.9

Nd2S3 Powder 同上 99

NdF3 Powder 同上 99.9

Sb Grains 同上 99.9up

Bi Grains 同上 99.999

S Grains 同上 99.99

(24)

2章 実験方法及び原理

21

2.5. NdO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の原料及び焼成温度シーケンス

図 2.6 NdO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の焼成温度シーケンス 表 2.4 NdO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の原料

原料名 形状 会社名 純度(%)

Nd2O3 Powder 株式会社高純度化学研究所 99.9

Nd2S3 Powder 同上 99

NdF3 Powder 同上 99.9

Bi2Se3 Powder 自作 ---

Bi Grains 株式会社高純度化学研究所 99.999

S Grains 同上 99.99

(25)

2章 実験方法及び原理

22

2.6. CeO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の原料及び焼成温度シーケンス

図 2.7 CeO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の焼成温度シーケンス 表 2.5 CeO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の原料

原料名 形状 会社名 純度(%)

CeO2 Powder 株式会社高純度化学研究所 99.99

Ce2S3 Powder 同上 99.9

CeF3 Powder 同上 99.9

Bi2Se3 Powder 自作 ---

Bi Grains 株式会社高純度化学研究所 99.999

S Grains 同上 99.99

2.7. LaO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の原料及び焼成温度シーケンス

図 2.8 LaO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の焼成温度シーケンス 表 2.6 LaO0.5F0.5Bi(S1-xSex)2の原料

原料名 形状 会社名 純度(%)

La2O3 Powder 株式会社高純度化学研究所 99.9

La2S3 Powder 同上 99.9

LaF3 Powder 同上 99.9

Bi2Se3 Powder 自作 ---

Bi Grains 株式会社高純度化学研究所 99.999

S Grains 同上 99.99

(26)

2章 実験方法及び原理

23

2.8. 電気炉

本実験で使用した電気炉を図 2.9 に示す。この電気炉は日陶科学株式会社製の卓上電 気炉で最高で 1250℃まで加熱することが出来る。また、炉内の温度のムラを考慮し、

試料は同時に3個までの焼成とし、なるべく中心に配置するようにした。

図 2.9 実際に使用した電気炉

2.9. X線回折装置(XRD装置)

XRD(X-Ray Diffraction)は、原子が規則的に並んでいる結晶中に特定の角度からX線(本

研究では Cu

κα

線)を入射した際に起きる回折現象を利用している。図 2.11 のように、

結晶中に波長X線を入射した場合、ある角度θにおいて光路差が波長の整数倍とな り干渉して強め合う。この角度θから、ブラッグの回折条件

n= 2d sin (n:整数)

を適用することにより格子面間隔 d を求めることが出来る。ただし、検出器において は入射方向から2の位置で検出される。この角度2と、その角度で検出される強度の 組み合わせは物質により異なるため、この組み合わせをデータベースと照らし合わせ ることにより物質の同定が可能である。

図 2.10 XRD装置

(27)

2章 実験方法及び原理

24

図 2.11 ブラッグの回折原理

2.9.1. Spring-8での粉末結晶構造解析

一部試料において、より精密な結晶構造解析を行うため、兵庫県にある Spring-8 で放 射光実験を行った。放射光とは非常に高いエネルギー(5~60KeV)を持った指向性の強 い光で、高エネルギーの荷電粒子が磁場中でローレンツ力によって曲がるときに放射 する電磁波のことである。原理としては上記のX 線回折と同じであるが、高強度、高 エネルギーの放射光を用いることで非常に精密で強い強度を持つX 線回折結果を短時 間で得ることが出来るというメリットがある。以下の図 2.12(右)に実際の装置の一 部を示した。図 2.12(右)の a の部分にはキャピラリーに詰められた測定試料が設置 される。b の部分にはイメージングプレート(IP)と呼ばれる二次元検出器が装着されて いる。そして、cの部分を通って放射光が射出されaに設置された試料で回折する。回 折した散乱波がイメージングプレートで検出され、それを解析することで放射光 X 回折結果が得られる。

図 2.12 (左)Spring-8全体図 [http://www.spring8.or.jp/ja/]より引用

(右)試料台およびイメージングプレート図

(28)

2章 実験方法及び原理

25 2.9.2. Rietveld解析

Rietveld 解析とは、粉末試料においての結晶構造解析の手法である。XRD 測定などで

得られる回折パターンを、結晶構造や回折ピークの形状などに関するパラメーターな どから計算される回折パターンで最小二乗法を用いてフィッティングすることにより、

結晶構造やピーク形状などに関するパラメーターを精密化する。この時、個々のピー クのフィッティングには、ピーク強度、ピーク位置、ピーク幅、ピーク形状の非対称 性、ピーク形状のとがり具合の順に強い影響が現れる。また、Rietveld解析では広い角 度領域においてバックグラウンドを含んだ精密な解析パターンが必要であること、全 成分が同定され、結晶構造が既知であることなどが解析の前提となる。Rietveld解析の 利点としては、試料に多少の既知の不純物があったとしても解析できる、内部標準試 料が必要なく試料合成時の誤差が少ないこと、などが挙げられる。

2.10. 四端子法

図 2.13に本実験で行った電気抵抗測定における四端子法の取り付け例および四端子法 の等価回路図を示す。四つの端子のうち両端の端子を直流電流源に、内側の二つの端 子を電圧計に接続する。等価回路において、R1~R4 はサンプルとリード線との間の接 触抵抗、RSがサンプル抵抗、RVおよびRAは電圧計と電流系の内部抵抗である。超伝 導体のようにサンプル抵抗RSRVに比べて十分小さいとき、RVに流れる電流は無 視できるほど小さい。そのため、電流源からの電流は全てサンプルを流れ、電圧計は RSの両端の電圧を測定しているとみなすことが出来る。よって、サンプルに流した電 流の大きさをI、計測された電圧をVとするとオームの法則

V = IR

よりRSが求められる。また、サンプルの厚さをT、幅をW、そして電圧測定端子間の 長さをLとすると、RSはサンプルの長さに比例し、断面積に反比例するので、比例定 数(抵抗率)をrとして、

RS = ρ L

WT [Ω] と表される。この式から、抵抗率は、

ρ =1 σWT

L ×V

I· cm]

となる。σは電導率である。

(29)

2章 実験方法及び原理

26

図 2.13 (左)四端子法サンプル取り付け例 (右)等価回路

2.11. SQUID(Superconducting quantum interference device)

図 2.14 SQUID装置

SQUID とは、超伝導量子干渉素子(SQUID)と呼ばれる素子を使用した quantum design

社の磁気特性測定装置(MPMS)である。通常のMPMSと比べて非常に高感度であり、物 質の微小な磁化を測定することが出来る。SQUID内部には図 2.15のようなリング状の 超伝導体があり、一部ごく薄い領域(図中の青い部分)を常伝導状態にしてある。こ の状態で、リング内に磁束が侵入するとリングには磁束を排除するように遮蔽電流が 流れる。この時、遮蔽電流により常伝導部分には電圧が生じる。この電圧の変化から 物質の磁化を測定する仕組みである。この磁化測定の結果から磁気転移点や Tcを読み 取ることが出来る。

(30)

2章 実験方法及び原理

27

図 2.15 SQUIDの原理

(31)

3章 実験結果及び考察

28

第 3 章 実験結果及び考察

図  1.10 LaFeAsO 1- x F x の結晶構造と各種温度の F 濃度依存性
図  1.11 (a)Bi 4 O 4 S 3 の結晶構造  (b)REO 1-x F x BiS 2 の結晶構造
図  1.12 REO 1-x F x BiS 2 の常圧合成試料(as-grown)及び        高圧アニール試料(HP-annealed)の転移温度
図  1.15 に Bi-Ch サイトの軌道混成による化学圧力のイメージ図を示す。図 1.14 の上 段のように Ch サイトの平均イオン半径と Bi のイオン半径の和が Bi-Ch 距離よりも離
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参照

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