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資本理論とウイクセル効果

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(1)

資本理論とウイクセル効果 41

資本理論とウイクセル効果

児玉元平

1

ウイクセル効果の意味とその重要性は,現代資本理論展開のなかで再認識 せられつつあるようであるが,その反面,この効果に関連する問題を迂廻す る傾向も生れつつあるようである。たとえば,I.フィッシャー的な分析技 術を使用するデューィ,J.六一シュライファーではウイクセル効果に就て は全く言及されていない。ソローも可及的に資本評価の難点を回避する方法

(1)

を採用している。たしかに,ルッツも指摘するどとく,資本評価や測定の問

(2)

題について正確な解を求めることは絶望的であり,この絶望性自体は経済変 化の存在そのものより生ずるペナルティーであるにしても,ウイクセル効果

(3)

をめぐる諸問題は軽視さるべきものではない。分配理論と資本理論との間に 通ずるルールを明確にする上においても,ウイクセル効果の再吟味は絶対的 に必要である。グッドウインはその近著においてつぎのように述べている。

「ゥイクセル」効果は一見するよりももっと大なる理論的重要性をもってい る。資本設備の不変的な物的ストックは,たとえコンスタントな物価水準に おいてさえ,利潤率が変化するごとに異なった価値をもつかもしれない。も し,労働が資本設備の生産でより早く投入されると,その設備の実質価値 は,利子率がより高いほど,より大となる。反対に利子率が低くなるほど,

設備の実質価値は低くなる。等時間構造という考えられない場合においての み,投資された実質資本と設備の量とゐ間に直接的な関係が存在する。」

(4)

現代の経済学者のなかでウイクセル効果という名称を最初に使用したのは C.G.ウールであったが,この効果の重要性を最も強く認識した最初の人は

(5)

J.ロビンソンであった。ロビンソンにあっては,ウイクセル効果は一種の

(6)

パズル的な問題であったが,また,資本の蓄積と賃金利潤の決定に関する全

(2)

42  経 営 と 経 済

理論の鍵でもあったO これにたいして,スワンは,ウイクセノレ効果の問題は インベントリーの再評価の問題にすぎないとして,むしろパズルなのは乙の ようなウイクセノレ効果をロビンソンが何故に資本蓄積や賃金利潤理論の鍵と して重視したかということであったO ロビンソンは,ウイクセノレ効果を資本

(7) 

の歴史的費用と再生産賃との聞のギャップとしてとらまえるが, リットノレも 同じように生産賀の側面からウイクセノレ効果を吟味しているD リットルにと ってもウイクセノレ効果の問題は unreliableなものであったD ウイクセノレ効

(8) 

果を賃金効果と利子効果とに分離して考察したのはオスボンであった口その 場合,オスボンはブライス・が使用した生産過程の flowinput ‑f10w output  的分析を使用した。乙の方法は,ウイクセノレのブドー酒の例のごとき Point input‑Point output的過程と異なって,投入と産出が時間的に分布する生 産過程を想定する。

(9) 

ウイクセル効果という名称、を使用しなかったが,ウイクセノレの限界生産力 理論批判という見地から,ウイクセノレ自身による資本価値測定の問題を取上 げたのはガレニヤーニであった。ウイクセノレは社会的資本の存在量を生産物 で浪.Uった。乙の数量はまた分配の決定要因のーでもあった。そこに,限界生 産力理論共通の悪循環的トラップにはまり込む難点を含んでいた。乙のトラ ップより脱出する方法はガレニヤーニにとっては,社会的資本の存在量を労 働単位で測定する乙とであった。そのことは同時にウイクセノレを悩ましたウ イクセノレ効果の問題を解消せしめることでもあった。

)

現代資本理論において,ウイクセノレ効果を吟味する場合に最もよく伎用さ れる分析ツールは,要素価格曲線,またはサムエノレソン的用語でいえば要素 価格フロンティアーの概念であるO サムエノレソンによれば, リカードにした がって経済学が分配の法則を解明する研究であるとするならば,要素価格フ ロンティアーの概念は最も重要な経済分析の概念である。乙のフロンティア ーによって賃金率と利潤率との関係が陽表的に示される口サムエノレソンは,

この要素価格フロンティアーの分析概念を使用する乙とによって,伝統的な 分配理論乃至資本理論を擁護する口具質的な資本,固定的な要素比のモデノレ でも,新古典派的理論の命題に意味をあたえることができるとした。サムエ

(3)

資本理論とウイクセル効果 43  ノレソンの分析では,異質的な資本財は同質的な存在に還元せられ,その限界 生産物は利潤率(利子率)にひとしくなるoかくて,サムエルソンの surro gate factor price  frontierの弾力性は所得の相対的分け前を示し,新古典 派な結果を提示する。再生された伝統的理論の説明は,利潤理論,分配理論 の基礎的問題を明らかにする有用な寓話となるo賃金率と利潤率との関係を

(11) 

あたえるこの要素価格フロンティアーの分析ツーJレを使用してガレニヤーニ は資本財の価値変化の問題を吟味した。その後の資本理論はウイクセノレ効果

(12) 

を論ずるに主として,この要素価格曲線を使用するoT. K. リーメス, G. 

c.ハーコート等の分析も,この傾向を示しているO

(13) 

ロビンソンは,ウイクセノレ効果を financialpseudo‑Wicksell effectreal Wicksell  effectとに区別する。前者はロビンソンによれば,最初の原因が 価格変化にあり,論ぜられるべき現象は簿記学的なものであり,後者は,最 初の原因は生産能力の増大であり,論ぜらるべき現象は,産出量,消費及び 所得の分配に関係しているO この区別については今日要素価格線を使用して

(14) 

技術が変化しない場合の資本価値変化を価格ウイクセル効果として考え,賃 金率と利潤率とが異なった値をとるにつれて生ずる技術変化と結ひ、ついた資 本価値の変化を実質ウイクセル効果としてとらまえる。一つの技術は一つの 要素価格線であたえられるO この曲線上の移動によって生じた資本価値の変 化は価格ウイクセノレ効果で、あり,二つの曲線の交点は技術のスウィッチ点を 示す。このスウィッチ点は二つの技術が企業にとって等しい有利性を持つこ とを示す。このスウィッチ点で資本価値の変化をとらまえたのが実質ウイク セル効果である。両効果は共に賃金率と利潤率とを通じて生産投入の時間的 パターンにあたえる効果を反映しているが,実質効果は更に生産方法に生じ た変化を反映しているものと考えられるo スワンがインベントリーの再評価

(1

とみなしたウイクセノレ効果は前者の価格ウイクセノレ効果であった。われわれ はここで今日ウイクセノレ効果とよばれるものの源流をウイクセルの分析にそ

(4)

44  経 営 と 経 済 くして考察してみよう。ウイクセノレの資本理論は従来,ベエーム・パウ、、エノレ ク資本理論の数学的展開にすぎないという評価があたえられてきた。ウイク セノレの資本理論は単利計算のモデノレ,後利計算のモデル,及び,通常オーカ ーマン=ウイクセノレモデノレと称せられる耐久的資本財モデソレと三つの発展段 階を経過して屋関されているが,その最初の単利計算による流動資本モデル では「私は本章(第2章)を通じてベエーム・パヴェノレクのすぐれた労作,

とくに彼の PositiveTheorie des Kapitalsを基本的なものとして使用する であろうoJと述べているごとく,モデノレの基本的性格はあくまでベエーム

( 1

的ではあったが,この段階においてすら,ウイクセルはウイクセル効果の指 摘を通じてベエーム・パヴェノレクを遥にこえているD ロビンソンはウイクセ ノレの資本分析を高く評価してつぎのごとく述べているo 1"オーカンマン博士 の問題に関する論文は決して読み易いものではないが,込価値,資本,地代、

の英訳版の出現は,よりやさしい説明に注目させるようになり, 乙 の 説 明 は,ウイクセノレの資本理論への貢一献が如何に透徹した性質のものであり,ま た,その限界がいづれに存在するかを明確にするに役立つているoJそし

(17)  てさらに1"ウイクセノレは,生産期間の長さそれ自体は,労働にたいする資 本の比率を決定するものではないことを指摘する。なんとなれば,一定の生 産方法に必要な資本の価値は,実質賃金率に依存するからである。このこと は,生産期間の長さは,実質資本比率を表現する過度に単純化された一つの 方法であるという反論以上に,ベエーム・パヴェノレクの理論にたいするより 根本的な批判なのである。」ウイクセノレ効果の指摘に関連してロビンソンは

(18) 

またつぎのように述べている。1"ウイクセJレの展開した説明によると,商品 で測られた資本ストックの価値は,単純に所与であるO 一定の資本価値によ って提供せられる雇用量は実質賃金率に依存する。賃金率がより低くなる と,所与のタイプの機械の価値はより小となる口 (ウイクセノレだけがこの点 を明らかにしており,新古典派学説の教義の中に適切に取り入れられたよう には思われない。)そして,同時に,機械は,機械化の程度のより低い技術 にむくように考案され,所与の賃金率において,労働ー単位あたりより少な い資本をそのなかに具体化している。均衡においては,賃金水準は,一人あ

(5)

資本理論とウイクセJレ効果 45  たりの資本の価値が,利用能な全労働力が所与の資本価値によって雇用され

るようなものとなるような水準である。」ウイクセノレの資本分析にたいする (19) 

ロビンソンの評価は再び後述するとして,われわれはこ乙でウイクセノレに帰 ろう。

資本ば実質貯蓄,即ち労働と土地用役を購入する生存手段の投資によって 創造されるO 資本の創造はその長短はあっても時間消費的な過程であるo 全雇用の水準では,実質賃金率と地代とがあたえられており,土地自然資源 の量を所与とすると,実質貯蓄率が,労働力増加率を越える場合にのみ,新 しい資本の創造は可能であるD 乙の状態では,新しい資本の形成には,従来 消費財生産に従事していた土地と労働の若干を資本財生産に転用する乙とを 必要ならしめる。そこで,資本財生産と消費財生産との聞に労働と土地に対 する競争が生じ,その結果,賃金率と地代とが上昇するであろうo 乙の賃金 率と地代の上昇は,その上昇がなかったならば実質資本の形成に投入された であろう実質貯蓄の一部分をくいつぶす乙とになるoその結果は,実質資本 の形成量は,賃金率と地代がコンスタントである場合に創造されたものより も小となるo このような現象,即ち,実質貯蓄の部分的賃金吸収効果をウイク セノレ効果というのである。この現象は明らかに動態的な状態においてのみ生

じるO ウイクセノレ自身は,ウイクセル効果を,賃金率上昇による生産期間延長 阻害効果,資本の社会的限界生産物と利子率との問の離反という側面から吟 味しているo この問題提起の仕方は,根本的には,ミクロ的経済分析とマク ロ的経済分析との聞に存在するギ、ヤツフ。を指摘する乙とであり,チューネン やベエーム・パヴェノレクの提示した命題にたいする批判を示すものであっ 7O

ベエーム・パヴェノレクの利子率決定体系における均衡条件はつぎのごとく である。

1.  完全雇用が成立し,総資本生存基本は前払として全労働者に支払われ O

2.  生産迂回の限界生産物は一期間当りの利子にひとしい。

3.  労働者一人あたりの生産物は,賃金と生産期間中に生じた利子との和に

(6)

46  経 営 と 経 済

ひとしい。

ここで注意すべき乙とは第2の条件であるD ウイクセルによれば,乙の条件 を,利子率は,平均生産期間の限界生産物を,期間の延長を可能ならしめる 資本で割ったものに等しくなければならぬという定式におきかえではならな いのであるD 乙の定式は個別的な企業者にについてのみ妥当するD そ 乙 で は,賃金率は所与であるD しかし,マクロ的経済を考察する場合には,資本 ストックの増加は,部分的に賃金の上昇によって吸収され,資本の増加全体 が生産期間の延長によって吸収されるものではないという事実が考慮されね ばならない。乙れは生産期間延長の阻害効用としてのウイクセノレ効果であ o ウイクセノレはベエーム・パヴェノレクの利子率に関する説明についてつぎ のように述べている口 「ベヱーム・パヴェノレクは,利子水準の法則を,この 水準は最終的に可能となる生産延長の余剰収穫によって決定されるという仕 方で定式化するととができると信じるO そして,ヂ、ェポンスとの論争におい て,彼は,利子率の水率は生産の最終的拡張を許す生存基本の額と最終的余 剰収益との関係、より導出されるべきであるという意見を述べている。」ウイ

(~1)

クセノレは, これにつづいて,このベエーム・パヴ、エノレクの;意見は不変の賃金 率においてという限定文句を付加しないと人を誤りに導くものであるとして つぎのように説明する r文章の表現から,ひとびとは,もし,国民資本の 増加が労働者の数を一定として生産期間の延長を生ぜしめるならば,その延 長によって獲得された余剰収穫を,問題の資本増加によって割ったものは,

近以的に利子の水準をあたえると信ずるにいたるO このことは明らかに誤り である口との割った商の結果は,常に利子より小であるO そしてさらにいえ ば,たとえそれが最小変化の問題である場合でさえ有限量だけ小である。こ のことは,国民資本の乙の増加は,部分的にそれを吸収する賃金の上昇をと もない,その結果,現実に達成される生産の延長は,賃金率が不変である場 合に可能である生産の延長よりも常に小であるという事実と関連しているの であるoJ乙のウイクセノレの言葉は,賃金率上昇による生産期間延長の阻害 効果と同時に,資本の社会的限界生産物と利子率との不一致としてのウイクω 

jレ効果を示しているo彼は「経済学講義」においてもこのことをはっきり

(7)

資本理論とウイクセJレ効果 47  と指摘しているo rもし,われわれが,社会の総資本の増加(減少)を考察 するならば,その結果として生ずる社会の総生産物の増加(減少)が利子率 を規定するというととは決して真実ではない。」

()

利子率に関連したウイクセル効果はまたチューネン命題の批判にあてられ ている r周知のごとく,チューネンは,平均賃金は最後の労働者の収穫に 依存すると述べると乙ろの彼の有名な命題に類似した利子水準の法則を呈示 した。乙の法則によれば,利子率の水準は最後に投資された資本部分の生産 性に依存する。乙の定理とベエーム・パヴェノレクのの定理との一致は明らか であるO かつまた,パヱーム・パヴェノレクの正しく強調するところであるo

ただ,乙こで留意すべき乙とは,それは常に個別的な企業家の資本投資の問 題であるという乙とであり,その場合,賃金は所与であり,また,そう仮定 されねばならない。乙の定理は,国民資本の増加自体とそれによって生ずる 余剰収穫には決して適用できない。」ウイクセノレは分配理論においては限界

凶)

生産力理論の先駆者的地占を占めているが,乙の理論の限界を彼はつぎのよ 間)

うに述べている。 r労働と土地とについては,既に指摘したごとく若干の保 留をもってではあるが,限界生産力の法則は,全体としての経済にも,すべ ての個別的企業にも同様に適用する乙とができるO ……,しかし,この理論 は,通常考えられるごとく,賃金と地代が市場で決定されるところの個別的 企業の立場から見た場合にのみ資本に適用される。」ここで,明らかにウイ

(26) 

クセル効果はミクロ的経済分析とマクロ的経済分析との間にギ、ヤツプが存在 するととを合意しているD ウイクセJレは「価値,資本及び地代」においては 正のウイクセlレ効果,即ち,資本の社会的限界生産物が利子率より小である 場合のみを考えていたが,負のウイクセノレ(逆のウイクセノレ効果) ,即ち,

資本の社会的限界生産物が利子率より大となるケースを,彼の資本分析の第 三の段階,耐久資本財を取扱ったオーカーマンモデノレにおいて認識するにい たるO 乙の乙とはまたウイクセノレ効果のパズノレ的性格,彼の資本分析のもつ 静学的分析の限界そのものの認識を意味する。 r私は,もはや乙のきわめて パズル的な定式の説明に入ることはできないo おそらく,それは,勤学理論 の分配にぞくする。そこでは,二つの異なった均衡の比較に分析を限定する

(8)

48  経 営 と 経 済 ことはできない。一つの均衡から他の均衡への移行過程を研究しなけ,ればな らないのである。」しかし,ウイクセノレは,ついに資本の勤学理論を展開し

(27) 

なかった。彼の「経済学話義」の第3部で資本の蓄積を論じているが,その

(28) 

部分はきわめて断片的なものにすぎない。全分析の某調は静学的であった。

ウイクセノレ効果の問題を資本蓄積の動態的な過程でとらまえようとこころみ たのはロビンソンであったD

ところで,ウイクセノレではウイクセル効果は完全競争的なマクロ的経済に おいて生起する現象であり,その効果は,他の生産要素については発生せず,

資本についてのみ発生するものであったD その原因をウイクセルは,資本測 定の単位に関連せして説明する。即ち,社会的資本を測定する不変の単位が ないという事実によるものであった。彼はこれを次のように説明しているo

「乙の奇妙な離反(資本の社会的限界生産物と利子率との不一致)の説明は 全く単純であるO 労働と土地とは,それぞれ,それ自身の技術的単位(労働 日,労働年月,年当りエーカー)で測定されるが,資本は交換価値として測 定されるD 換言すれば,各特定資本財は,それ自身にとって外生的な単位で 測定される。もし,資本もまた技術単位で測定せられるべきものであるなら ば,乙の欠陥は是正せられ,各生産要素の社会的限界生産力と個別的生産力 との一致は完全となる。しかし,その場合,生産資本は,道具,機械,原料 等というような多数のカテゴリーとして分類されねばならぬO そこで,生産 における資本の役割について統一的な取扱いは不可能となる。」既述のごと

凶)

く,労働と土地についてはウイクセノレ効果は発生しない口労働と土地につい ては限界生産力の法則は,全体としての経済についても,また,全ての個別 的企業についても適用されるO 繰返していうならば,ウイクセル効果が資本 のみについて発生する一般的な理由は,労働と土地用役はそれ自体としては 直接に貯えることはできない。それらは,実物資本の形態においてのみ貯え ることができるからである。そして,その場合,資本の価値は,それ自体の 技術的単位でなく,交換価値として測定されるからであるo ウイクセノレ効果 はまさしく資本価値測定の問題と関連しているのであるo 現 代 の 資 本 理 論 が,ウイクセノレ効果の問題として取り上げた測面もまさしく資本価値の測面

(9)

資本理論とウイクセJレ効果 49  であるo ロビンソンがウイクセノレ資本理論を高く評価した理由もこのウイク セノレ効果の指摘にあった。

われわれはここで「価値,資本及び地代」で展開されたウイクセjレの資本 モデソレを吟味し,ウイクセノレ効果の意味を更に明確ならしめよう。土地を自 由財とする完全雇用の定常的経済を想定するo各個の企業における消費財の 生産関数は同一であると仮定するD 労働の年平均生産物をP,生産期間(年 であらわす) (絶対的生産期間)をt,年あたり実質賃金率をW,利子率を

iで示そうo生産関数は,

=f(  (1) 

とおく。乙の関数はつぎの性質をもっ。

f'(t)>O, f " ( t ) < O ( 2 )   資本(生存基本)は労働にたいする前払いとして必要に応じて均一的に支払 われると仮定する。そ乙で,平均生産期は t/2である。ウイクセノレは乙れを 投資期間と定義するD 単利計算では利子総額はwilー で あ るo賃金支払額

wt, 労働者一人あたりの生産物の価値は,

=w 1ζ

そこで年あたりの平均生産物は,

P=?=w+wi‑

=w (1 

+与)

この式より,

i=2Lffz)‑wJ

wt 

iの極大条件は, (6)tについて微分して零とおくO

f(t)‑tf'(t)=w  f( +tf' ( 

(3) 

(4)  (5) 

(6) 

(7)  (8)  f' ( 

=亨

(9)

乙の式の左辺は生産期間の変化にもとづく労働者一人あたりの年生産物の変 化を示し,乙れは期間あたりの利子にひとしい。 (9)より,

f' ( 

(10) 

(10)

50  経 営 と 経 済 乙れは迂回生産の限界生産物を付加資本で割ったもので,資本の限界生産物 は利子率にひとしいことを示しているo しかし,乙の表現は, ミクロ的経済 の水準で,個々の企業には妥当するにしても,直にマクロ的経済の水準に移 行して資本の社会的限界生産物は利子率にひとしいとおく乙とはできないD

個々の企業にとっては賃金率は所与ではあるが,マロク的経済の水準では賃 金率は資本の付加ととも変動し,そのととは資本の価値に影響をあたえるか

らであるo

乙乙でマクロ的経済の水準に移ろうo経済の存在労働量をA,生産物で測 った資本の存在量をKで示そう。ウイクセノレの分析では, A, Kは共に所与 と仮定されているが,乙の生産物で測った社会的資本の存在量を均衡成立の ための与件として取扱うウイクセノレの仕方に対してはjレッツ,ガレニヤーニ の批判がある口乙れらの批判については既に別の機会において論及したか

ら,乙乙では取り上げないであろうD 労 働 者 一 人 の 雇 用 に 必 要 な 資 本 は

(31) 

wt/2である。そこで完全雇用に必要な資本Awt/2である。完全雇用の均衡 条件は,

K=Awtj 

いま,国民生産物をYで示すと,

=Af( t 

4EEA 

4・ ・

A

( 12)  乙れを労働量Aについて微分すると,

θY =f(t)+Af'(t),./."..,.. / "dt 一 一 (13)  θA  ..  / ~... , dA 

と乙ろで,

dt 

( 1 dA 

である。乙れは労働の増加にもとづく一人あたり労働で測られた資本の減 少,したがって,生産期間の縮少にもとづく生産物の減少分を示している。

そこで労働者一人の追加によって生じた国民生産物の純噌分は,

y‑= 

tf' (  (15)  θA 

で示されるO これは(7)により賃金率にひとしし"0労働の社会的限界生産物は 賃金率にひとしい。生産関数l乙示された生産期間は労働で誤uられた一人あた

りの資本に対応する。

(11)

資本理論とウイクセル効果 (12)Kについて微分しようo

θY  df  θKιdK 

Kwtとのこつの側面において変化するo

θ K θ K  

dK=τ一一 dw+ つ~dt

U dt

1/  合す~

(

tdw +何吋吋w吋耐dt

p~に乙ついては,

dp=f' (t)dt 

df  f' (t)dt  A一一一=AI ~ ,~/~~

dK  .....1  /.  ..... 

2(w+wdt)I 

I/ =~f'( )dt  tdw+wdt  さらに,

dw=(tft))dt

であるから,資本の社会的限界生産物は,

θY  2f' (t)  aK  wt2f"(t) 利子率は

i=2f'(t) 

であるから, (2)の仮定により,

Y / "

θK¥1 

資本の社会的限界生産物は利子率より小となる。

( 1) 6

(1 ( 18) 

(21) 

(22) 

問)

(25)  51 

これがウイクセノレ自身によ るウイクセノレ効果の怠味であるO もし,賃金率が不変であると仮定すれば (dw= 0),資本の社会的限界生産物は利子率と一致するO ところで,この ような資本の社会的限界生産物と利子率との離反は何故に生じるのか,それ は,利子率を生産JUJ間或いは投下労働量に関係せしめ,資本の社会的限界生 産物は,生産物で担u.られた資本価値に関係せしめている結果生ずるのであ o ガレニヤーニによればこの問題は資本存在量を投下労働量で測定するこ とによって解消することができるo

ウイクセルにとってウイクセル効果のパズノレ的性格は彼の資本分析が静学 的分析であった点に由来した。ロビンソンにあっては,ウイクセル効果は最 初から発展的経済に関述する勤学的現象であった。資本の深化,資本産出比

(12)

52  経 営 と 経 済 率の上昇,技術の機械化程度の上昇,或いは生産期間の延長を伴うプロセス

とともに,労働の実質賃金は上昇し,資本利潤率は低落する。乙れらの変化 が資本設備の項目の価値に及ぼす影響がウイクセノレ効果として取扱われる問 題であった。ウイクセル効果は資本蓄積の理論にたいする鍵であつった。経

(32) 

済学発展において伝統的なパズル的問題をウイクセノレのみが陽表的にしかも 静学的分析の中で指摘した。そこにロビンソンのウイクセノレ批判が成立する

「ウイクセノレの分析によって示された主たる難点は,彼が資本の異なった量 をもった諸々の静態と時閣の経過を通じて進行する蓄積過程との閣の比較を 同時に論じているように見えるということであるO 彼の根本命題は議論の二 つの部門で等しく重要であるが,その二つの部門が分離されていないかぎ

り,それは十分に理解されえないものである。」

(

現代の資本理論では要素価格曲線,要素価格フロンティア一一一ヒックス はこれを賃金方程式,賃金フロンティアーとよんでいるーーの概念をもって

(34) 

ウイクセノレ効果が吟味されるD この概念は技術の選択問題にも使用されてお り,資本分析の中心概念となりつつあるO 既述のごとく,ウイクセノレ効果は ロビンソンによれば,発展的経済における動態的現象であり,彼女は乙れを 生産費の側面から取り上げたが,スワンは,ウイクセノレ効果を単にインベン トリーの再評価にすぎないと考えるo この場合スワンの考えていたウイクセ

(35) 

jレ効果は価格ウイクセJレ効果で、あった。ロビンソンでは実質ウイクセノレ効果 が重要な問題であった。また,ガレニヤーニやハーコートは発展的経済でな く,定常的経済をもってウイクセノレ効果を考察しているQ このようにウイク

()

セノレ効果の吟味においても,そのとらまえ方の側面,仮定の設定において統 一的な見解があるわけではないD 乙の乙とは資本理論の内蔵する問題の多国 性を反映するものと考えてよい。

ガレニヤーニは,純投資零という定常的経済を想定し,そのために彼は綜 合的消費財産業という概念を導入する。資本財の生産はその消耗部分にちょ

(13)

資本理論とウイクセル効果 53  うどひとしい。ハーコートでは同じく定常経済が想定されるがそ乙では資本 財の耐用性は永久的と仮定されるD 定常的経済で,減価償却費を無視してウ イ ク セJレ効果を考えて見ょうO 一人当りの純消費財生産をqであらわし,手JI

(37) 

潤率をr,実質賃金率をW,一人当りの資本を kで示すと,

=rk+w  (1) 

の式をうるD 乙の式より,

k =一 一 一q‑w  (2) 

(q ‑w)は一人当りの利潤を示している。これらの量はすべて消費財で測 られているo = 0であるとq=w,これは極大賃金率(Wmax)を示す。 q は常に極大賃金率にひとしい。いま賃金率と利潤率との関係をつぎのごとく 示そうO

w=wma‑f(r  (3)  乙乙では r=Oであればf(0) = 0 ,そしてf'(r)>O,とするo右下り の曲線をうるoそこで,

k=q~w=~ρ ー [wmax-f( r)L̲f( r) 

一 一 一

そとでkをrについて微分すると,

dk  r 白子=子~f' (r)rf(r) 

WI 

r

l

(4) 

(5) 

(14)

54  経 営 と 経 済

をうる。 (5)の正負符号はカッコの中の符号によってきまるo

1図を見るO 要素価格曲線が原点にたいして凹の形をとるO 乙の曲線の勾 配,形状は生産部門の生産係数によってきまる。乙れらについては次節でも う一度吟味するとして,乙の第1図では WmaxはOSで示されるD いま r1 W1の水準を考えると q‑ W1 = W1Sである。そ乙で労働者一人当りの資 本の価値は,

一一一一一W1S‑WIS  W1POr1

で示されるo(5)式のカッコの中にそくしていえば,

f'(r1)r1 = W1Q, f(r1 )=W1 そこでこの場合, w1Q> W1S, f'(r1)r1>f(C)

あるから, dk/dr> 0 あるD 利潤率の低下,賃 金率の上昇はkを低下せ しめるo即ち,負の価格 ウイクセJレ効果であるo

同じような推理で,第2 図のごとく要素価格曲線 W 2  

が原点にたいして凸の形

(6) 

(7) 

をとる場合正の価格ウイ

クセノレ効果,即ち,利潤率の低 下,賃金率の上昇は資本価値の上 昇を生ぜしめる乙とが理解せられ oまた,要素価格曲線が第3 のごとく直線となる場合は.r, 

の変化も資本価値kl乙変化をあた えない,即ち,中立的価格ウイクセ

jレ効果を生ずる。ここで,注意す べきことは,以上の分析はスワン

¥ ¥ ¥ ¥ ¥ 

¥ ︑

P

︑ ︑

A

¥¥

︑ ︑ ︑

h︑ ︑ 白 ︑ ︑ ︑ ︑

r2  2

V

3

(15)

資本理論とウイクセノレ効果 55  的な資本財の再評価的測面よりなされているということであるo

さて,二つの生産技術が併存するとするO そして,二つの要素価格曲線が 二つの点で交文すると仮定するo二つの技術転換点をうるo

Wbmax 

W amax  Wab 

Wba 

一ーーー̲̲L̲一一一一一一一一ーー一

rab  rba 

4

生産技術bP点で(利潤率は r..b)生産技術aと同一の有利性をもっ。し かし, r..b以下の利潤率ではb技術はa技術よりも有利であり,これが選択 されるor"b の水準でで b技術と結びついた資本の価値は,

kh=-_~bmー -W..b‑ 一 一 一ーー b

.L  .. 

a技術と結びついた資本の価値は,

k. =_~_ 一 一 一 ‑ ..~o.x-~!,b

.L..b 

(8) 

(9) 

Wbm..">W..m..,,であるから kb>k..である。既述のごとく a技術にとって は価格ウイクセル効果は負であり, b技術にとっては価格ウイクセノレ効果は

(16)

56  経 営 と 経 済

中立的であるo そ乙で, rab以下の利潤率ではb技術にたいする資本価値は a技術にたいする資本価値よりも賃金率の上昇に対応して益々より大となる であろうO 乙こでわれわれはP点で実質ウイクセノレ効果は正であるというこ とができる。同じ推理で ,rb aの水準 (p'点)で実質ウイクセJレ効果は負で あるということができるD ところでスウィッチ点のすぐ左側を見た場合,二 つの技術に関連するkの差異は二つの生産方法における生産力の差異と価格 効果の差異を含んでいる。しかし,スウィッチ点の上では,賃金率と利潤率 とは,同一であるo したがって,資本価値の差異は全く各生産技術のもつ生 産力の差異に帰因するoその差異は全く実質的であるということができるo

5図のごとく二つの要素価格曲線が直線で交叉する場合はどうか。 a技術 b技術線上での価格ウイクセjレ効果は共に中立的であった。それ故にP

V

Wbmax 

Wamax 

5

点をはなれでも二つのkの差異は生産力の差異に帰因する。全く実質的であ oそこで,第4図のごとく,また二つの技術線が第6図のごとく曲線とな って交叉する場合でも,スウイツチ点をはなれた二つのkの差異における変 化は全く価格ウイクセル効果であるという乙とができるo

(8)式と(9)より,

bmaw.. W ama‑ WaL ̲  .... 

kb  ka  ιab 

W bma‑W..mx=rab(kb‑k..)

UO)  (11) 

(17)

資本理論とウイクセル効果 57  b m a x ‑ Wamaヌ 一

C k b ‑ k

a ‑ L a b   U2) 

Wbmax 

W amax 

6

各技術での極大賃金率はそれぞれ一人あたりの生産物qb' qa にひしいから,

rab=一日主三弘一 (13) 

k b ‑ ka 

と乙ろで ,(13)か ら 右 辺 を ムq/kとおいて資本の限界生産物と定義し,そ れは利潤率にひとしいと考えることができるであろうか。パシネティーはそ のように考えることは誤りであるというO パシネティーによれば伝統的な概

(38) 

念としての資本の限界生産物は,二つの技術が相ひとしい有利用性をもっ場 合,即ち,利潤率が不変で技術使用の割合が変化する場合における資本の増 分と産出物の増分との比を示すものではなく,それは,むしろ,それぞれ異 なった利潤率において最も有利となる二つの技術を比較する場合における資 本の増分と産出物との比なのであるoハーコートによれば,利子率の変化の 意味は,資本の量の変化と産出量の変化との比率で考えるoと乙ろが上のケ ースではその増分の比は,利潤率を不変として,二つの相ひとしい有利性を もっ技術の結合割合の変化の意味で考えeているoそこで,もし,資本の限界 生産物によって利潤率それ自体を説明しようとするならば,一つの技術から 他の技術へ移行するにつれて生ずる量の変化は,利潤率の変化から独立的な

(18)

58  経 営 と 経 済 ものでなければならない。即ち,資本は労働と同様に分配と価格から独立的 な単位で測定されるべきである。資本の量は分配の変化から独立した単位で

( 3

測定せるべきであるということは,またガレニヤーニがウイクセJレ的限界生 産力理批判において指摘した点であった。

(40) 

要素価格曲線の形状は消費財部門と資本財部門における生産係数に依存す o 乙の節では乙れらの生産係数を陽表的に導入して要素価格曲線の性質を 再吟味しようD 前節では純投資零の古典派的な定常経済が仮定された。ここ

1)

では,ヒックス的な固定資本財モデルを使用するo この経済では資本財部門 の産出量は純投資にひとしく,資本財の耐久性は永久的である。したがって 資本財の減価償却率の問題は無視されるo技術進歩率は零で,また,資本財 は資本財自身の生産にも消賀財の生産l乙使用される単一資本財の仮定をお

D さらに,各部門では単一の技術のみが使用されると仮定するo

均衡においては賃金率,利潤率は両部門で同一であるから,価格方程式は つぎのごとくあたえられるo

cC=wLc +rPkKC  PkK=wLk+rPkKk

(1)  (2)  Cは消費財の産出量,ムKは資本財の産出量, Pcは消費財の価格, Pkは資 本財の価格 wは貨幣賃金率 rは資本利潤率, Lcは消費財部門における 雇用労働量, Kcはその部門における資本, LkKkは資本財部門における雇 用労働量と資本を示す。上の二式では賃金は生産完成時点で支払はれるとい

う暗黙の仮定が含まれているo(1)式より,

(43) 

=war

b1 (3) 

元は消費財で測られた実質賃金率,a1Lc/C,消費財部門における労働投入 係数, b1Ke/C,この部門における資本投入係数を示しているo(2)式より,

長 = 石

a2r

b2 (4) 

(19)

資本理論とウイクセル効果 59  a2Lk/K,資本財部門における労働投入係数, b2Kk/K,この部分

における資本投入係数を示しているo(3)(4)をさらに百で割ると,

土 = ぃ 」 ト wrc b1 (5) 

25=az+rL‑b2

wrc  wrc  (6) 

われわれはここでロビンソンにおける資¥本表示の方法について一考したい。

ロビンソンは,商品で測った資本ストックの価値を単純に資本とよぷ。乙れ a は消費財で測った資本の価値であるoPkK/Pcであるo これを更に消費財で 0.ら れ た 実 質 賃 金 率 で 割 っ た も の を 実 質 資 本 (realCapital)とよぷ。

PkK/Pcである。そして,この実質資本と正常生産力での操作が行われる 時に経常的に雇用される労働量との比率を実質資本比率 (realcapial ratio) 

とよぷ。ロビンソンがその「資本蓄積論」の図表で示したものは彼女が合成

商品 (compositecommodity)とよんだと乙ろの消費財に関するものであっ D

(45) 

Zzb1=C1  wr

ヱ し

wrb2=c

(7)  (8)  とおけば, C1は消費財部門における産出物ー単位あたりの実質資本を示し,

c2は資本財部門における産出物ー単位あたりの実質資本を示すであろうo ビンソン的な黄金時代の条件はつぎのように示される。正常生産能力は雇用 増加率と一人あたり産出高の増加率との和にひとしい率で上昇し,産出物一 単位あたりの商品表示の資本の価値はコンスタントであるoまた労働者一人 あたりの商品表示の資本の価値は実質賃金率の上昇率とひとしい率で上昇す るが,実質資本比率はコンスタントであるD

いま図表の意味を明らかにするために単一部門,単一技術の経済を仮定し て見ょうo産出量をYで示すと(1)(2)の代わりにつぎの式をうるであろうo

Y=wL+rK  (9) 

1 a+rb (10) 

̲1  十三~ (11) 

この式ではa=L/Y, =K/YであるO ここで abは均衡係数のみなら

参照

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