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雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

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(1)

大都市圏における地価形成の傾向分析 −大阪大都 市圏奈良県北西部の事例−

著者 淡野 明彦

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 29

号 1

ページ 43‑57

発行年 1980‑11‑25

その他のタイトル The Trend Analysis of the Formation of Land Values in the Metropolitan Areas ‑A Case Study of the Northwestern Part of Nara Prefecture‑

URL http://hdl.handle.net/10105/2423

(2)

大都市圏における地価形成の傾向分析

一大阪大都市圏奈良県北西部の事例一

決  野  明  彦 (地理学教室) (昭和55年4月30日受理)

1研究テーマの設定

土地は人間の生活と生産活動とに欠くことのできない基盤であり、資産である。土地がもつ生 産力・資源の包蔵力・積載力は、社会の成長と発展の可能性への潜在力であり、換言すれば土地 の効用である。土地は有限のものであり、土地の効用の度合いはすべての土地について均一的で はなく、地域的なアンバランスを示すため、有用な土地の相対的稀少性を生じさせ、それぞれの 土地に対する評価に差異が発生する。また、それぞれの土地に対する評価は固定的なものではな く、各時代における社会・経済・政治的要因、科学技術の水準等により変動的なものであり、こ れは土地の有用性に対する人間の需要の質的・量的な変化の反映とみることができる。土地は交 換・併合・分割が可能なものであるため、そこに人間の需要に基づいた取引があらわれ、価格メ カニズムを生じ、いわゆる地価が形成される。地価は、土地自体が有する有用性・土地の有限性 および土地に対する人間の有効需要の三者の相関により決定される諸要因の集積データーである ため、土地と人間のかかわりの重要性を示す定量的なスケールとみることができる。

地表における人間の諸活動について種々の要因との関連において分析をめざす地理学におい て、土地(地表)と人間のかかわりを示す一つのスケールである地価は、当然関心をもたざるを 得ないものであり、地域分析の重要な指標と考えることができる。ところが、地価は土地と人間 のかかわりを示す一つのスケールでありながら、取引等の際に個別的に決定されるものであり、

土地の有用性に対する人間の評価の与え方の主観性・再生産不可能な資源であることから生ずる 土地への投機性などから、地価形成には普遍的な要素が兄い出しにくく、一般財の価格形成とは 異なっていた。このため、何人にも容易に適正なものとして識別できる地価を形成することは困 難で、学問的分析の基礎データ‑として地価を用いることは、その普遍性と妥当性において問題 があった。日本において、適正な地価を設定しようとする動きは、高度経済成長期にみられた都 市およびその周辺の地価の無秩序な急騰状態を背景に、地価抑制策として具体化した。地価の適 正な価格を求めるためには、合理的な価格決定の規準に基づき、専門家による鑑定評価が必要な ことから、 1964 (S.39)年に「不動産鑑定士制度」が法制化された。続いて、 1970 (S.45)午 には地価公示法に基づく「地価公示制度」が発足し、選定された標準地における公示価格が設定 された1974 (S.49年)には「国土利用計画法および同施行令に基づく地価調査制度」が発足 し、地価公示地点以外に選定された基準地において、地価公示法の鑑定評価の規準に準じて標準 価格が設定された。このように根拠法令は異なるが、鑑定評価の規準を同‑にして設定された地 価(公示価格・標準価格)の全国的ネットワークの整備が行われ、地域分析の基礎データーとL

us

(3)

て客観的妥当性をもった地価の誕生をみた。

地理学における地価研究は、都市の人口増加に伴い生じてきた都市問題の台頭とともにあらわ れ、田辺健一(1951)、清水馨八郎(1957、1966)、脇田武光(1960、1972、1976)によって進め られ、都市の地価に関する一般的傾向、都市の地価と交通・人口・土地利用との関連等の考察が なされた。これらの研究(脇田、1976を除く)にデーターとして用いられた地価は、路線価(国 税庁)、固定資産税評価額(各地方自治体)で、実際の取引事例に基づいて鑑定評価されたもの ではないため、自ずと実態分析のデーターとして用いるには限界があった。脇田(1976)は上記 の二種類のデ‑ターの限界性を、実際の取引価格の事例と1970(S.45)年の第‑回地価公示の 公示価格とにより補い、東京大都市圏において地価形成の実態とその要因分析を行った。その結 果、宅地地価は巨視的にみれば、都心からの空間的距離・時間的距離のアクセシビリティ(近接 悼)に対応して形成される事実を明らかにした.また、分析のデーターとして地価公示価格を 用いることについては、公示価格も路線価・固定資産税評額価と同様に「つくられた地価」の 一つではあるが、公示価格の鑑定評価規準が実際の取引価格を勘案するしくみになっていること から、公示価格は「つくられた地価」の中では最も時価(ないしは市価)に近いと評価してい る(O。このように学問的分析の,基礎デ‑タ‑として客観的妥当性を備えた公示価格・標準価格を 用いた地理学的研究は、筆者の知りうる範囲では脇田の研究以後未見である。

本稿は、大都市圏における地価形成の実態を分析する基礎データ‑として公示価格・標準価格 を用い、地価の地域的変動および時系列的変動の傾向性を明らかにし、それらの変動に作用する 要因について若干の考察を試みた。研究対象地域として、大阪大都市圏に属する奈艮県北西部を 設定した(2)

2 都市における地価形成の動向と、地価公示および地価調査制度の実施

研究対象地域の具体的データーによる分析に先立ち、日本の都市における地価形成の地域的動 向と時系列的動向を概括し、加えて本稿の基礎データーである公示価格と標準価格とをうみ出す 地価公示および地価調査制度についてその概要を記しておく。

1)都市における地価形成の地域的・時系列的動向

公示価格・標準価格は設定された時期が新しく、長期的な変動をみることが困難であるため、

主要140都市を調査対象として計算された全国市街地価格指数(3)によって、 1955 (S.30)年〜

1979 (S.54)年の期間の都市における地価形成の動向をみた。全国市街地価格指数を1955年3 月を100とした値でみると、 1979年3月では2,977で25年間におよそ30倍の上昇を示している。実 質の変動率をみるために、同期間における日銀卸売物価指数で便宜的に物価修正を行っても、(4) 1979年では1,559でその急騰ぶりが明らかである。全国市街地価格指数を各年毎に卸売物価指数

で物価修正を行った実質価格指数を図1に示した。指数は1972 (S.47)年時ですでに1979年の 指数を凌いでおり、 1972年までの各年における対前年変動率は1964 (S.39)年と1965 (S.40) 年で‑ケタの上昇であった以外は、すべてニケタの上昇を示し、ことに1957 (S.32)年 ‑1962

(S.37)年においては毎年25%を越えていた。 1973 (S.48)年を上昇のピークとして、その後 の四年間は対前年変動率10%以下の下降をみたが、 1978 (S.53)年からはやや上昇に転じてい る。六大都市(東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸)について市街地価格指数をみると、全

(4)

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国 市 街 大 都 市 市 街 地 六 大 都 市 宅 地

1 95 5 1 9 6 0 1 9 6 5 1 9 7 0 1 9 7 5

図1 1955年 ‑1979年の全国市街地価格指数(筆者原図)

国市街地価格指数を1957 (S.32)年以降において常に上回る値を示し、大都市が地価形成のプ ライス・リーダーであるとみることができる。大都市における用途別価格指数をみると、 1967

(S.42)年までは工業地が最も高い値を示していたが、 1968年以降は住宅地が首位となってい る。以上のことから、 1956 (S.31)年 4972 (S.47)年の経済成長率が年平均ほぼ10%を達成

したいわゆる高度経済成長期に対応して市街地価格の急騰がみられ、今口の価格水準を作った。

その後、国内経済の低成長期に入り市街地価格も鎮静をみている。しかし、大都市の市街地価格 が全国の市街地価格の上昇に先行する状態、および大都市の住宅地価格が最も高い値を示す傾向 は変わっていない。このことは、大都市の住宅地価格が地価形成のキーであるといえよう。

2)地価公示制度と地価調査制度

地価公示制度は地価公示法(1969 (S.44)年施行)を根拠法令とする制度である。都市およ び都市周辺の地域において、標準地を選定しその正常な地価を公示することにより一般の土地の 取引価格に対し指標を与え、また、公示価格を公共用地の補償金額の算定などに資することによ

って適正な地価の形成に寄与することを目的とした制度である。公示地点となる標準地は、国土 庁の付属機関である土地鑑定委員会が、都市計画区域の市街化区域において自然的および社会的 条件からみて類似の土地利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況・環境等 が通常と認められる一団の土地に対して選定する。各標準地についての正常な価格は、土地鑑定 委員会が二人以上の不動産鑑定士または同鑑定士補に鑑定評価を求め、不動産鑑定士等は不動産 鑑定評価基準(昭和44年住宅宅地審議会答申)により鑑定評価し、委員会がその結果を審査し必 要な調整を行って判定され、一般に公示される 1970 (S.45)年から実施され、当初は東京・

名古屋・大阪の三大都市圏においてのみであったが、表1にまとめたようにその後公示地点数が 増加し、 1974 (S.49)年には公示地点の密度は市街化区域については1kdあたり一地点、市街 化調整区域については20kriあたり一地点、その他の都市計画区域については‑市あたり三地点の

(5)

割合となり、地価公示の当初の目標が達成された。

表1地価公示地点数の推移 iiigさぎ

A 市街化区域    計 東京圏

名古屋圏 大阪圏

人口50万人以上の地方都市*

人口30万人以上の地方都市**

その他の都市地域 B 市街化調整区域 C AB以外の区域

1970 i 1971  1972 CS45)'(S46) (S47)

970 1 ,350

0  0   0

4  6  6

7  1  3

0  0  0

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90

2,800 1,550 320 720 210

1973 (S48)

1974  1975 (S49) (S50)

5,490 i 12,080 3,100

460 3,170 1,140

12,400 3,170 1,140 1,440 1,650 ! 1,650

300

0  0

U

 

1

I 0611

1,340 3,620 1,630

1,160 1,340 3,940 1,810 860   800

合 計 (A+B+C)     970 1,350 2,800 5,490i14,570!15,010 資料:国土庁

* 人口50万人以上の地方都市 北九州C1971より実施)、札幌、仙台、広島、福 岡(1972より実施)

** 人口30万人以上の地方都市 新潟、金沢、静岡、岡山、絵山、熊本、宇都宮、

浜桧、姫路、和歌山、長崎、鹿児島(1973より実 施)、いわき(1974より実施)

国土利用計画法(1974 (S.49)年施行)は、土地の投機的取引および地価の高騰が国民生活 におよぼす影響を取り除き、また適正かつ合理的な土地利用を図るため、土地取引についての許 可制・届出制を創設して、土地取引について行政を直接に介入させ、価格と土地利用の両面から 審査を行い、全国的な土地取引の規制強化を図ることを目的とするものである。この法律の施行

によって、都市計画区域のみならず全国にわたって価格規制のための価格審査を行うことが必要 となった。地価公示の対象区域内にあっては、すでに実施されている公示価格を基準として価格 審査を行うとされたが、地価公示の対象区域外にあっては価格審査における拠り所が全くなく、

また地価公示区域内においても価格の個別審査を行うには公示地点だけでは十分でなかった。こ のため、国土利用計画法施行令によりあらかじめ全国にわたって各都道府県知事による基準地の 選定を行い、基準地価格についての標準価格を公示地点である標準地の補完として設定した。基 準地の選定および鑑定評価の基準は地価公示制度に準じた。

以上のように、公示価格・標準価格(いずれも1m2の単価表示)共に土地取引に関する価格審 査による価格規制を目的とする以上、取引の実勢を勘案した上で、適正な価格を示す必要がある ところから、必ずしも実際の取引価格に等しくないにしても、(5)時価(または市価)に近い価格 が示されるわけである。

本稿での研究対象地域を含む奈良県における地価公示・地価調査は、地価公示にあっては大阪 圏の市街化区域として1971 (S.46)年から、地価調査にあっては1974 (S.49)年の法施行時点

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表2 奈良県における地価公示および地価調査各地点数の推移

資料:奈良県土木部監理課

*対象区域都市計画区域を定めている市町村(9市20町2村)

**〝県下全域(9市20町18村)

から、それぞれ実施され、毎年両制度に若干の地点数の増加が行なわれている(表2)。分析の 基礎データーとして公示価格・標準価格を用いるためには、地点数の点からみれば1974年以降が 妥当であり、地価調査の初年度である1974年を避けるならば1975年が妥当であろう。

3奈良県北西部における地価形成の地域的変動と時系列的変動

1)地価形成の地域的変動

1975(S.50)年の公示価格・標準価格により、奈良県北西部の地価形成の地域的変動につい て分析をすすめる。対象地域内には地価公示地点(標準地)が176地点、地価調査地点(基準地) が206地点それぞれ選定されている18)

。奈良市に多くの地点が集中しているため、各市町村毎の地

点数には精粗があり、厳密な議論はできないが、各市町村毎の傾向の大要を把握するために、そ れぞれの平均価格・最高価格・最低価格を示した(表3)。全体の平均価格に対して、奈良市・

生駒市・大和郡山市の奈良県北部の市域と大和高田市・橿原市の奈良県中部の地域で平均を上回 る二つの高価格グループがみられる。この二つのグループの中間では、平群町・三郷町・王寺 畔7)・河合町・香芝町・当麻町の県西部の町で平均価格が3万円を越えており、二つの高価格グ ループにつぐ次位の高価格グループが南北方向に形成されている。大和高田市・橿原市の南側は 平均価格2.5万円に達しない市町村である。つぎに最高価格をみると、対象地域内での最高価格 は奈良市東向両町の45万円で、このような10万円を越す高価格は各市と王寺町においてみられ る。奈良市東向南町は奈良市屈指の商店街である東向通商店街であるように、これらの地点はい ずれも各市町の中心商店街に位置する地点で、たとえば大和高田市本郷町二丁目(天神橋筋商店 街)、大和郡山市柳二丁目(近鉄駅前商店街)、天理市川原城町11ブロック(天理名店街)などで ある。最高価格が他の市町村の最低価格の水準に達しない高取町の低価格地域もあり、地域的変

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表3 1975 (昭和50)年における奈良県北西部の地価公示および地価調査の市 町村別地点数と平均価格・最高価格および最低価格

資料:国土庁「地価公示」、奈良県「奈良県地価調査基準地価格一覧表」

* 市域全域ではない。

** 全体の平均価格、最高価格、最低価格である。

動の大きさを示している。最低価格については、王寺町で3万円を越え、高取町で1万円を下回 る以外は、各市町村間で地域的変動の傾向をみい出すほどの差はない0

各市町村毎の傾向の大要は把握できたが、より詳細な地域的変動の傾向性を分析するために、

地域メッシュによる地価等充線図を作成した。地価分布を連続線で結んだ地図としては、民間の

(8)

地図出版社(日地出版(1979) :昭和54年度版公示地価図)によるものがあるが、地価公示地点 を用いているのみであり地点数が少ない制約上、等地価線を連続線として結ぶためにはかなりの 類推にたよらざるをえず、このため精度の低さをまぬがれえない。また、価格の段階区分が適切 でないため、より連続線を引く作業を困難にしている。本稿ではつぎの手法により、地価等充線 図を作成した。

① 対象地域をカバ‑する国土地理院発行「2.5万分の1地形図」に、標準地と基準地の位71を プロットしそれぞれに公示価格・標準価格を記した。

⑧ ①の地図の区域を行政管理庁告示による経緯線法に基づく「標準地域メッシュおよび標準メ ッシュコ‑ド」(8)により、 Ikrfの等積方形の小地域に分割し、 449メッシュ区分したO さらにD ID (人口集中地区)についてはlk通メッシュをさらに四分割し0.25k虎のメッシ.1に細区分L im

⑨ 各メッシ̲7̲に含まれる公示価格・標準価格をメッシュにおける地価とした。 1メッシュに複 数の価格がある場合はそれらの相加平均をとり、 1メッシュに標準地・基準地が共に含まれな い場合には、便宜的にそのメッシュに隣接するメッシュ(最大8メッシュ)の価格の相加平均 を求めその値を通用した(いずれも千円単位未満は四捨五入した)0

④ ⑧によって得られた各メッシュの価格をそのメッシュの中央にプロットし、 5万円以上、 3 万円以上4.9万円以下、 1.5万円以上2.9万円以下、 1.4万円以下の五段階区分により等充線を引 いた。

以上の手順により作成したのが図2の地価等充線図であるが、位置をわかりやすくするために 鉄道路線を重ねた。この結果、近鉄奈良線の富雄・学園前・あやめ池・西大寺を結ぶいわゆる西 奈良地域で最も大きな高価格ゾーンがとらえられた。また、先の市町村毎の考察より明らかにな った二つの高価格グループとそれに次ぐ西部の町の南北に連なる高価格グル‑プとによって、東 西方向の二本の高価格軸と、途中で不連続をみせるが南北方向に一本の次位の高価格軸が形成さ れていることが明確となった。この南北方向の次位の高価格軸は、生駒市を通る東西方向の高価 格軸の南への延伸、王寺町を核として三方向への高価格ゾーンの拡張および大和高田市を通る東 西方向の高価格軸の北への延伸のそれぞれの進行過程の結果、生じてきたものといえよう。生駒 市・奈良市を結ぶ東西方向の高価格軸が、奈艮市西大寺地区から南へ分岐し大和郡山市へと延 び、また橿原市八木地区から南北方向におよそそれぞれ5kmの高価格軸がのびているが、この中 間にある平端地区の高価格ゾーンが狭いため、もう一本の南北方向の次位の高価格軸の形成には 至っていない。天理市・桜井市の中心部にみられる高価格ゾーンが周辺に拡がっていないため、

東部地域に低価格ゾーンが形成されている。矢田丘陵、奈良盆地の河川の合流点である安堵村お よび三宅町、御所市・檀原市・桜井市の山地へと続く南部の地域のそれぞれにも低価格ゾーンが みられる。

2)地価形成の時系列的変動

1975 (S.50)年と四年経過後の1979 (S.54)年とのデ‑クーの比較により、時系列的変動の 傾向を分析したい1979年の標準地・基準地は1975年に比して若干の選定番えがみられるが、同 一地点の比較可能なものだけに限ったため地点数は303である。これらの地点の1979年の平均価 格は48,300円で1975年に比して10.5%の上昇率であるが、日銀卸売物価指数による物価修正を行 うと、実質の上昇率は3.!である。それぞれの地点の1975年の価格と1979年の卸売物価による 物価修正をほどこした価格とを比較して、全地点の実質の平均価格上昇率である3 < 以上の上

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図2 奈良県北西部の地価等充線回(筆者原図)

(10)

図3 1975年 ‑1979年において公示価格・標準価格の Q < 以上上昇または下降した地点(筆者原図)

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昇をみた地点と、逆に平均上昇率にあたる率の下降をみた地点(すなわち、 1975年より3 < 以 上の下降地点)について、それぞれを地図上にプロットし時系列的変動をみた(図3)。プロ ットされた上昇地点は67で、これらの多くは地価等充線図にみられた東西方向の二本の高価格軸 と、南北方向の次位の高価格軸に沿う形で分布している。下降した地点は55で、大和高田市・桜 井市・天理市の中心部の特に高価格な地点においても下降がみられるが、地価等充線図にみられ た低価格ゾーンにその多くが分布する。全体として高価格地点がより高価格となる一方、低価格 ゾーンにある地点ではより実質的には低価格になるという背離現象がみられる.その状況を詳細 に検討するため、上昇地点の多い生駒市と、下降地点の多い天理市・桜井市とについて、それぞ れの地点の価格の推移をみた(図4)。生駒市では22地点中17地点で価格上昇がみられ、うち16地 点全地点の実質の平均価格上昇率以上の上昇を示している。上昇地点のいずれもが、過去におい

(万 円 ) 生 駒 市 6

5

4

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1975 1976 1977 1978 1979 (午)

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1979(年   1975 1976 1977 1978 19791年

図4 生駒市.天理市・桜井市の標準地.基準地の価格の推移(筆者原図)

・価格が6万円を越える地点をこついては略した0

1975年は公示もしくは標準価格をそのまま用いたが、 1976年以降は 1975年を100とする日銀却売物価指数による物価修正をおこなった 価格である。

て大手デベロッノヾ一によって規模の大きな住宅地として開発された地域(生駒台、新生駒台、旭 ヶ丘、新旭ヶ丘、桧美台)もしくは開発が現在も進ちょくしている地域(東生駒、あすか野、頁

弓、萩の台)であり、いずれも知名度の高い中級住宅地である。知名度の高い住宅地の価格は、

開発当初から高い価格が設定され年々上昇を続けていることがわかる。天理市については、 21地 点中20地点で価格の下降をみている。天理市は中心商店街にある3地点を除けば、いずれの地点

も3万円以下の価格で、在来の農村集落あるいは農村の問に点在する小規模な住宅地に存在し、

もともとの低い価格水準がその後も固定されている。桜井市は21地点中16地点で価格の下降をみ ている。天理市に比して3万円を越える地点が多いが、生駒市にみられたような高価格の地点が より高価格に向かうといった現象は、 Tif街地の2地点にみられるのみで、 1975年の価格水準が天 理市同様に田定されている。

(12)

4 地価形成の変動要因の若干の考察

これまでみてきた地価形成の地域的変動および時系的変動をもたらす原因は、種々の要因の複 合であり、容易にそのメカニズムを解明することは困難であるとおもえるが、あえて地域的変動 の要因について、人口集積と都心からの時間的距離をとりあげ若干の考察を試みたい。

1)地域的変動と人口集積との相関

人口集積の度合いが地価形成におよぼす影響をみるために、総理府統計局による1975 (S.50) 年実施の国勢調査に基づく地域メッシュ統計の人口総数の値を、地価等充線の作成に用いた各メ

ッシュに与えた。各メッシュの地価は、 1975年の公示価格・標準価格をもとに、地価等充線作成 の際の手法により求めた。各メッシュ人口総数を変数Ⅹとし、各メッシュの地価を変数Yとして 相関図を作った(図5)。人口の少ないメッシュに1万円〜5万円まで種々の価格があるため、ド

ットがX軸近くに多く集まっている。相関係数を求めるとr‑0.39でXYの間には高い相関があ (千人)

0

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γ = 0 . 39

10        15(万円) 図5 人口集積と地価との相関図(筆者原図)

るとはいえない。このことは人口集積の高い地域に必ずしも高い地価が生じるとは限らず、逆に その時点において人口集積が低い地域であっても、今後の開発にむけての将来性から高い地価が 計画あるいは開発当初から与えられる結果を示しているのではないかと考えられるが、詳細は個

々のケースの検討によらねばならない0

2)地域的変動と時間的アクセシビリティとの相関

(13)

脇田は既述のどとく東京大都市圏の研究で、地価形成の基本的な要LAlとして都心からの空間的

・時間的アクセシビリティ(近接性)を指摘した。本稿では都心からの時間的アクセシビリティ と地価の相関をみるため、都心からの時間的距離を変数Xとし、地価を変数Yとして、相関図を 作成した(図6)。具体的には各標準地・基準地から通常の公共交通機関によって大阪環状線内

の一駅(鶴橋と天王寺にあたるが、近鉄阿倍野橋も天王寺と同じに扱った)までの到達所要時間 (分)

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2.5      7.5       10(万円) 地価

図6 時間的アクセシビリティと地価の相関図(筆者原図)

を一般式によって求め、(9)それぞれの1975年の地価との交点をプロットした 382のすべての地点 について、その相関係数を求めるとr‑‑0.37となり高い相関とはいえないが、奈良市・大和高 田市などの中心商店街に存在するきわめて高価格な地点(27地点)を除外して相関係数をもと めたところ、 r ‑‑0.61の負の相関がみられ、脇田が国鉄中央線において1975年の地価公示のデ ーターにより求めたrニー0.90ほど強い相関はあらわれなかったが、 ‑まず時間的距離と地価と の相関、すなわち都心からの時間的距離が長くなるに従って地価が低下するということがいえる であろう。各鉄道路線ごとや最寄駅ごとに区分して相関を求めれば、より興味ある結果が得られ るものと考えられるが、このような区分をした場合、サンプルとなる地点がそれぞれ少なくなる ため統計処理上の問題が生じるので、この点については今後の課題とした。

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5 ま と め

地価公示、地価調査制度に基づく公示価格・標準価格を基礎データーとして用い、大阪大都市 圏内の一地域である奈良県北西部の地価形成の地域的・時系列的変動の傾向分析を行ったとこ ろ、つぎのことが明らかになった。

① 地価形成の地域的変動の傾向分析をするために、初めての試みとして標準地・基準地のすべ ての地点について標準メッシュ区分により地価等充線図を描いたところ、西奈良地域に最も大 きな高価格ゾ‑ン、東西方向に二本の高価格軸、南北方向に一本の次位の高価格軸をとらえる ことができた。

⑧ 地価形成の時系列的変動の傾向をみると、地価の上昇は東西方向の二本の高価格軸と南北方 向の次位の高価格軸において顕著で、低価格ゾーンでは低価格での地価固定化がみられ、高価 格の地点との背離現象を強めている。

⑧ 地価形成の地域的変動の要因について若干の考察を加えたところ、人口集積と地価形成とに ついては強い相関を得ることができなかったが、時間的アクセシビリティと地価形成との負の 意味ある相関がみられた。

地価公示および地価調査制度による全国の地価のネットワークの整備に着手されて、短期間が 経過しただけであるが、地点の選定と鑑定評価において全国的に規準を統一したデーターは行政 上だけではなく研究上においても有効な基礎データーであり、より効果的なデーター分析が今後 の課題である。

(1)英語では現実の売買価格の地価は market (actual, current) land price であり、課税目的のために用 いられる「つくられた地価」をIand value とよんで区別する。

(2)本稿の研究対象とする地域は,市町村境界によって設定せず、地形的㌢こ奈良盆地と称する自然的区分を用 いたが、奈良盆地の範囲を150mの等高線によって画定した。ただし、他の地域との連続上、矢田丘陵お よび生駒谷・平群谷とよばれる近鉄生駒線沿線地域をも含めたため、特に奈良県北西部と名づけた。

(3)財民法人日本不動産研究所によって発表されている数値である。毎年9月末に主要都市140都市を対象と して市街地の各用途地域(商業地・住宅地.工業地)をそれぞれ品等別に三段階(上・中・下)に区分 し、各段階における中位の3.3m(秤)当り宅地価格の鑑定評価を行い、それを指数算出の基礎とし調査対 象都市数の平均を求めたものである。

(4)物価修正には日銀卸売物価指数と総理貯消費者物価指数の二通りによる方法があるが、消費者物価指数は 季節的な変動が高いため、卸売物価指数を用いて修正した。

(5)業界では実際の取引価格の80%曙度とみなされているという。

(6)すべて宅地で林地は含まれていない。

(7)王寺町の6地点の中には22.5万円の特に高価格な地点が含まれており、これが対象市町村中で最高の平均 価格を示す要因となっている。この地点を除外して平均価格を求めると4.2万円である。

(8)メッシュを用いた地域分析は1930年頃から行なわれてきたが、メッシュをかける基準が不統一であったた め、多数の人が多方面から統一した研究や計画を実施する場合に不都合があったため、共通のメッシュを 設定することとなり「標準地域メッシュ」が行政管理庁より告示された。総理府統計局による国勢調査の メッシュデ‑ターもこれにならったものである。メッシュデ‑タ‑の利点は従来の行政区画単位のデータ

(15)

‑と違い、等形・等積の小地域単位のデ‑クーであるから、従来の地域統計の単位より詳しいデ‑タ‑を 得ることが可能で、行政単位に左右されないで地域間比較・時系列比較が容易であるo

(別所要時間の算定の一般式はnTi

i=iVi‑+ti)で計算される(T一起点より終点にいたる所要時間の合

計、Li‑全区間を任意にn個の区間にわけたそのi番目の実距離、Vi‑Liを通過する交通機関の速度、

ti‑旨ii‑‑の準備や連絡のために必要とする時間)o本稿では昔は列車・バスの標準所要時間とし、バ スから列車への乗り換えと列車の乗り継ぎに要するtiは一律に一回五分とし、最寄りの駅または停留所 までの徒歩は分速100mとした.列車・バスの待ち時間は乗り換え・乗り継ぎの場合以外は0とした。こ れは通勤時間には乗客は最も待ち時間の少ない列車やバスを選択するとみなしたからである。

文献

田辺健一(1951):地価分布の変化とその地理的意味。東北地理、4‑1,

清水馨八郎(1957):市街地価格の変動と大都市周辺の都市化。都市問題、48‑5.

(1966):宅地開発に伴う土地利用の混乱と地価問題。都市問題、57‑70

脇田武光(1960):東京都区部における地価変動とその地理的要因について。都市問題、51‑40 (1972):土地評価額における大都市の占有率。東北地理、24‑2,

〝(1976):「大都市の地価形成」。大明堂。

増子忠四郎(1965):「不動産鑑定評価の理論と実務」。文経堂銀行研究社。

国土庁土地局地価調査課C1978):「国土利用計画法一問‑答一価格評価編‑」。大成出版社。

地価調査研究会(1979):「改訂土地価格比準表の手引き」。住宅新報社。

(16)

The Trend Analysis of the Formation of Land Values in the Metropolitan Areas

‑A Case Study of the Northwestern Part of Nara Prefecture‑

Akihiko TaNNO

Department of Geography, Nara University of Education, Nara, Japan (Received April 30, 1980)

In the metropolitan areas, rising market land prices are one of serious problems awaiting solution. In order to restrain market land prices from rising, standard land values of selected lots are published by the National Land Agency and the prefectural authorities every year. These are named "Koji Kakaku" or HHyojyun Kakaku". By using standard land values as basic datum, the author analyzed the areal difference and the time‑seriestic one of the formation of land values in the northwestern part of Nara prefecture which is situated on the Osaka metropolitan areas.

The results of this study can be found in the following passages.

(1) The highest value zone widely distributes through the western part of Nara city.

Many higher valued lots form two horizontal axes (one stretches from Ikoma city to Nara city, the other stretches from Yamato‑Takada city to Kashihara city), and one vertical axis (it stretches from Ikorna city, via Oji cho, to Taima cho). (Fig. 2) (2) In the last four years (1975‑1979), land values of 303 lots are increased by3.9% on

an average.

(3) The formation of land values is correlative with the necessary time taking to Osaka.

参照

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