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雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

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(1)

地域における乳幼児期から学童期までの継続した教 育・発達支援  −発達相談員としての取り組みをと おして−

著者 神野 歩, 嶋田 ながこ, 田村 浩子, 田辺 正友

雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

巻 16

ページ 41‑48

発行年 2007‑03‑31

その他のタイトル The following Support for Children with

Disabilities from Infant to Schoolage in their Residential District

URL http://hdl.handle.net/10105/496

(2)

1.はじめに

筆者ら(田辺ら、1999)は先に、奈良県における就 学前障害幼児をめぐる問題の検討を通して障害の早期 発見とそれに続く診断、早期からの療育などの対応は、

すべての乳幼児のすこやかな発達を保障していく上で 重要であることを指摘した。

乳幼児期は、障害の軽減と共に保護者が子どもの障 害と発達について正しく理解し、受容し、子どもと力 強く生きていく力をつけるたいせつな時期でもある。

そして、親も子も集団として育ちあえる場を保障し、

障害についても発達についても見通しを持って子育て が出来るような援助が必要である。

また、2003年3月に「今後の特別支援教育の在り方 について(最終報告)」が文部科学省より公表され、

そのなかで従来の学校教育の範囲を超えて、障害のあ る子どもを生涯にわたって支援する観点を強調し、

「教育、福祉、医療、労働等が一体となって乳幼児期

から学校卒業まで障害のある子ども及びその保護者等 に対する相談及び支援を行う体制の整備」をさらに進 めるとしている。しかし、それぞれのライフステージ にさまざまな専門職が関わっており、日本における縦 割り行政の問題もあり、連携や協力がスムーズになさ れているとは言いがたい現状にある。

筆者らはこれまでに大学や病院での療育活動や教 育・発達相談をとおして、子どもの発達を早期から長 期にわたって見守るとともに、家族や保育園・幼稚園、

学校への助言や発達支援を行ってきた。

本稿では、同じ考えのもとに、筆者らが発達相談員 としてW県K町で1996年から実施してきた、乳幼児期 から学童期までの一貫した教育・発達相談と、障害の ある子どもやちょっと気になる子どもを対象として実 施している保育実践などの取り組みについて、事例検 討をふまえて報告し、地域における教育・発達支援の あり方について考察する。

2.方法

K町において実施している乳幼児健診および発達相 談の実情について、表1−1、表1−2に示す事例検 討をふまえて紹介する。

−発達相談員としての取り組みをとおして−

神野歩*・嶋田ながこ**・田村浩子***・田辺正友

(奈良教育大学特別支援教育教室)

The following Support for Children with Disabilities from Infant to Schoolage in their Residential District

Ayumi JINNO・Nagako SHIMADA・Hiroko TAMURA・Masatomo TANABE

(Department of Special Needs Education,Nara University of Education,Nara,Japan)

要旨:障害の早期発見とそれに続く早期からの療育などの対応は、すべての乳幼児のすこやかな発達を保障してい

く上で重要である。本稿では、筆者らが発達相談員として一地域で実施してきた教育・発達相談とそのフォローの 場としての療育・保育実践などの取り組みについて事例検討をふまえて報告し、地域における乳幼児期から学童期 までの系統的な教育・発達支援システムのあり方について考察した。

キーワード:乳幼児健診、地域における教育・発達支援、

「軽度」発達障害

*   みみはら高砂クリニック発達相談員(臨床発 達心理士)

**  大和郡山市発達相談員(臨床発達心理士)

*** みみはら高砂クリニック発達相談員・本学非

常勤講師(臨床発達心理士)

(3)

表1−1 事例1群

表1−2 事例2群

3.結果

W県北東部に位置するK町は人口約15000人、年間 出生数約100人であり、長年大きな変動は見られない。

2006年3月に隣接するH市と合併、新H市となり人口 約70000人、出生数約500人の自治体となった。

K町には保健センターは設置されておらず、母子保 健事業は町役場住民課所属の保健師が主に事業を実施 している。また、保健師業務として母子保健・老人保 健・精神保健を分業にせず、基本的に地区担当制とし て一人の担当保健師が家族丸ごと(新生児から老人ま で)を把握したフォローアップ体制をとっている。K 町の乳幼児健診および発達相談事業については図1に 示すとおりである。

発達相談事業として、1990年代初めより非常勤 の発達相談員が年に数回発達相談を実施。1996年 から非常勤の発達相談員が4名となり、相談回数は年 間20回程度となり、合併前の2005年には、年間 40回程度発達相談を実施しており、相談件数は乳児 から中学校3年生まで延べ約200人である。発達相 談員は、乳幼児健診・相談の事後フォローの相談、就 学前児から中学生までの発達相談、保育所障害児保育

部会の研修会と保育実践検討会での助言、適正就学指 導委員会での発達状況の報告等の業務を担っている。

そこでは、心理専門職の立場から、保護者や保育者、

教育関係者など乳幼児期から学童期の子どもたちにか かわる人たちに指導、助言、発達支援を行い、関係者 の有機的連携を図ることを大切にしている。

1)健診・相談システムと健診後の対応

出生から就学までの健診・相談活動は、新生児訪問 から乳児健診(3,4カ月)、6カ月相談、10カ月 相談、1歳6カ月健診、3歳6ヵ月健診と系統的に実 施している。また、10カ月相談、1歳6カ月健診、

3歳6カ月健診では、全員に対して保健師が個別発達 スクリーニングテストを実施している。10カ月相談、

1歳6ヵ月、3歳6ヵ月健診の受診率は、90%前後 である。未受診児に対しては、保健師が電話チェック や家庭訪問を実施、全数把握している。

健診後の対応として、10カ月相談で発達にリスク がある児に対しては、個別の発達相談や毎月実施して いる健康相談でフォローする。1歳6カ月健診後は事 後フォロー教室として親子教室が設置されている。親 子教室は2004年度より筆者ら発達相談員がかかわ るようになる。それ以前は、教室対象児の基準、卒業 時期の基準が定かではなく、1歳6カ月健診後から就 園するまでの児が在籍していた。また、内容について も発達に即した活動内容の設定に課題を抱えていた。

そこで、対象児は、1歳6カ月健診で発達上何らかの 気になる点(発達の遅れ・対人関係の弱さ・ことばの 遅れなど)がある児に対して発達相談を実施し、入室 を決定した。教室は月1回実施、1クール6回で2ク ールまで在室できる。教室通室児については1クール 終了時に発達相談を実施し、教室での様子、発達相談 結果をもとにその後の進路をスタッフ全員で検討して

事例   性別   現在の 年齢   在籍   初回相談   C  女   10: 4   小 4  知的障害児学級   1:2   D  女   9: 7   小 3  情緒障害児学級   2:7  

発  達  相  談 

医  療  機  関 

出  生 

新生児訪問 

乳児健診 

6ヵ月相談 

10ヵ月相談 

1歳6ヵ月健診 

3歳6ヵ月健診 

健 康相 談   お よび   訪 問指 導 

1歳半健診後  フォロー教室 

通園事業 

保育所  幼稚園 

就 学指 導委 員会 

小学校 

養護学校  中学校 

図1 K町における乳幼児健診および発達相談事業

事例   性別   年齢  保育・療育教室   初回相談年齢  

A  男   3 : 8  親子教室→保育所   2:1   B  女   3 : 1  親子教室→通園事業   1:10  

(4)

いる。進路は育児サークル、保育園、療育機関等さま ざまである。

事例 A児(男) 表2

乳児期後期より多動傾向が気になり、保健師による フォローを継続していた。1歳半健診では、課題はす べて通過するが多動傾向が残り、2歳1ヵ月で発達相談 となる。全体的には1歳半の発達的力量の獲得期に入 っているが、対人関係においては特定の第二者の形成 が不確かであり乳児期10ヵ月の発達的力量の獲得にお いて困難さがみられる。そして興味の移り変わりが目 立ち一方向的行動が多く見られたため親子教室対象と なる。2歳1ヵ月〜2歳5ヵ月の間の親子教室では当初 は部屋からの飛び出しが多くもみられたが、徐々に人 への志向性の高まりが見られ、共感関係が持てるよう になると共に飛び出しは減少する。1クール終了時点 の発達相談(2歳5ヵ月)では1歳半の発達的力量を獲 得している姿が確認できた。しかし教室場面では、一 方向的行動や対人関係の弱さを残すため教室は継続と なる。2歳5ヵ月〜2歳11ヵ月の教室では、一方向 的行動は改善され、活動を共有・共感し、最後まで活 動に参加できるようになる。2クール終了時点の発達 相談(2歳11ヵ月)では2歳中ごろから2歳後半の 発達的力量の世界へ入り始める。対人関係に困難さを 持ちつつも他者をある程度認識し、他者と一定の世界 を共有して楽しめるようになる。

2クール終了し、暦年齢相応の発達的力量の獲得が みられてきているため親子教室を卒業とし、3歳時よ り地域の保育園へ入園する。保育園入園に際しては、

保護者了解のもと保育園へ申し送りを行い、本児の様 子・課題・対応を伝える。また、発達相談は保育園入 所後も継続して行う。

このようにA児については、発達的力量はキャッチ アップしノーマルレンジとなり親子教室対象外となる が、対人関係の問題と行動上の問題が残り、教室卒業 後も何らかの継続した発達支援が必要なケースであ る。教室卒業後の集団が保障され、また、保護者の理 解が得られたため教室から保育園への申し送り等の連 携が可能となり、スムーズに保育園入園を迎えられた。

早期からの対応により母親が本児の問題に向き合い、

活動をともにするなかで本児とのかかわりを学んだこ とによる成長は母子ともに大きいと考えられる。

事例 B児 (女児) 表3

1歳6カ月健診では興味のある課題のみ遂行し対人 関係の弱さが指摘され1歳10ヵ月で発達相談となる。

全体的に1歳すぎ頃の発達的力量を獲得しているもの の物への志向が強く、対人関係においては特定の第二 者の形成には至らず乳児期後半10ヵ月の発達的力量 の獲得に困難さが認められたため親子教室対象となる。

表3 B児の新版K式発達検査結果と教室の様子

1歳10ヵ月〜2歳5ヵ月の間の親子教室では一方 向的行動が目立つが、回を重ねるにつれ母親への愛着 行動は見られ始める。しかし、教室スタッフが本児の リズムに寄り添って関わるが共感関係は持ちにくく特 定の第二者の広がりには至っていない。また、活動の 変わり目では、今している事を制されると見通しがも てずに泣く姿も多かった。1クール終了時点の発達相 談(2歳2ヵ月)の検査結果では、1歳半の発達的力 量の獲得には至らず、乳児期後半10ヵ月の発達的力量 の獲得に不確かさを残しつつ、1歳半の発達的力量の 獲得に向かう姿がみられている。物の操作の仕方は形 式的なものであって目的性・発展性をもった活動へと 展開されにくく、活動が自己展開していた。

1クール終了時点で、発達相談結果と教室での様子 をスタッフ全員で検討し、発達的視点から通園事業療 育対象とした。本児の場合、母親自身は乳児期、子ど もの育てにくさを感じながら子育てをしていた。しか し乳児健診・相談では問題点を認識・把握できておら フォロー理由:多動 

CA2:1

CA  2:1 

〜  2:5

1歳半の力獲得期  全領域 

姿勢・運動  認知・適応  言語・社会 

・10Mの力の弱さ 

・一方向的行動 

・教室からの飛び出し  多い 

・衝動的に他児を押す 

・リズムは見るのみ 

・物との関係強い 

・よく動く本児に対して距  離を持ってみている 

・本児に「させよう」とする  姿多くなる 

・一方向的行動改善 

・リズムは見る 

・積極的に参加し飛び  出しなくなる 

・活動を人と共に楽し  む 

・本児と共に活動を楽む 

・「子育てしんどい」と露 

・本児のリズムに寄り添  い、本児の気持ちを開き  受け止めつつ関わる  1歳半の力獲得〜 

2歳中ごろ〜2歳後  半の力  充実 

・行動面改善 

・対人関係弱さ残す 

・やりとり楽しむ  1:10 

1:5  1:10  1:11 CA2:5 全領域  姿勢・運動  認知・適応  言語・社会 

2:4  2:4  2:4  2:6 CA2:11 全領域  姿勢・運動  認知・適応  言語・社会 

2:7  2:4  2:7  2:8

検査結果  児の様子  母の様子 

   

CA  2:5 

〜  2:11

表2 A児の新版K式発達検査結果と教室の様子

フォロー理由:対人関係の弱さ・課題に興味なし 

CA1:10

CA  1:10 

〜  2:5

1歳前半の力  全領域 

姿勢・運動  認知・適応  言語・社会 

・10Mの力の弱さ 

・物志向強い 

・一方向的行動目立つ 

・一方的行動多い 

・物との関係強くやりと  り成立しにくい 

・見てわかる活動には  参加 

・活動の見通し持てず、 

活動の区切りで泣く 

・母親へ愛着を見せ  始める 

・妊娠中であり、座って  本児の様子を見ること  多い 

・本児が母親へ戻ると  うれしい様子  1歳中ごろの力へ 

の移動期 

・愛着行動見え始  める 

・活動自己展開  1:4 

1:8  1:3  1:1 CA2:2 全領域  姿勢・運動  認知・適応  言語・社会 

1:9  2:0  1:9  1:9

検査結果  児の様子  母の様子 

   

(5)

ず、1歳6ヵ月健診後、はじめてフォローになったケー スである。親子教室をとおして、発達的視点に立って子 どもをとらえ、保護者への子育て支援をするなかで、保 護者とスタッフが子どもの発達・障害理解を共通認識す ることができ早期療育へつながったものと考える。

なおK町には療育施設は設置されていないが、K町 を含むI郡4町1村より障害児通園事業としての委託 を受けた通園事業T園(15名定員)があり、1歳児 から5歳児までが毎日通園している。

2)発達相談事業

発達相談を必要とするケースは、図1に示すとおり、

健診からのフォローだけでなく、乳児期から医療的ケ アを必要とする児、保育園や幼稚園の集団場面におい て気になる児、就学後学校場面で気になる児等必要に 応じて、適宜発達相談へとつながるシステムとなって いる。発達相談フォローとなったケースは、年1回か ら2回継続的に相談を実施し、相談時には他機関と連 携をもち、保護者、保健師、就園児は担任保育士、主 任または園長、就学児は担任教師等が同席する。発達 状況を確認し、同席している関係者から事情聴取し、

総合的にケースを把握、評価し、今後の課題を話し合 い、指導、助言等の発達支援を行っている。表4・図 2、表5・図3に示した事例について紹介する。

事例 C児 (女児) 表4・図2

事例C児は、現在小学校4年生の女児、知的障害児 学級に在籍している。生後9カ月時、発熱、痙攣重積 を起こし、Y病院で急性脳症と診断される。その後発

達相談・支援を継続している。C児は、急性脳症発症 まで発達状況は良好。急性脳症発症後、右半身痙性が みられA整肢園において週1回機能訓練が開始され る。1歳2ヵ月に乳幼児健診の一環である発達相談に おいて発達状況を確認、発達の遅れがみられた。

1歳10ヵ月より、通園事業T園に毎日通園を開始。

同時にA整肢園でPT(理学療法)、OT(作業療法)

の機能訓練も受けており、T園はA整肢園とは連携を とり、運動面でのかかわりのアドバイスを得ながら保 育をすすめていった。T園では、歩行の獲得とともに 自分で生活世界を広げていく姿みられた。全身運動で はバランス、調整力の未熟さがあり、また手指の操作 性機能においても不器用さがみられたが、自分でする という思いを主張してさまざまな活動に挑戦する姿が 多く見られていた。発達状況は表4に示すとおりであ

1:2  1:6  1:9  2:6  2:11  3:5  4:0  4:5  5:6  6:2  7:3  9:0

0:10  0:11  1:3  1:9  1:10  2:1  2:1  2:7  3:1  3:2  4:5  4:8

0:10  0:11  1:2  1:4  1:6  1:8  1:8  1:8  1:8  1:8  1:8  1:8

0:10  0:11  1:3  1:10  1:11  2:2  2:2  2:7  3:4  3:5  4:4  4:7

0:11  0:11  1:4  1:4  1:9  2:1  2:1  2:9  2:11  3:2  5:2  5:5

71  61  71  70  63  61  52  58  56  51  61  52

CA D A DQ

全領域  姿勢・運動  認知・適応  言語・社会 

地域小学校障害児学級  通園事業 T園 毎日通園  保育所 

A 整肢園  PT・OT   全領域 

姿勢・運動  認知・適応  言語・社会 

発 達 年 齢

 

(歳) 

6

5

4

3

2

1

0

1 2 3 4 5 6 7 8 9

生 活 年 齢 (歳) 

図2 C児の新版K式発達検査結果と療育・教育経過

表4 C児の新版K式発達検査結果

(6)

る。2歳後半に幼児期前期(発達年齢:1歳半)の発達 的力量を獲得。そして4歳中ごろに幼児期中期への移 行期(発達年齢:3歳過ぎ)の発達的力量を獲得する。

4歳10ヵ月、地域保育園入園。入園に当たっては、

発達支援のために加配保育士の設置を要望。集団保育 においての個別的援助が可能となった。この時期、A 整肢園での機能訓練は終了となる。入園当初は、みん なと一緒に活動に参加し、楽しむ姿が見られていたが、

徐々に一斉の活動に入ると不安な様子、引っ込み思案 な様子をみせるようになり、加配保育士に依存するよ うになった。家庭では、反抗的な態度が目立ち、苦手 なことはしないといった姿を多く見せている。この時 期のC児の発達状況は幼児期中期への移行期(3歳過 ぎ)の発達的力量の段階で、「したい、できたい。で も、できない」自分が見えてはじめて、葛藤を強めて いる姿が顕著であった。就学については、保護者は、

当初、障害児学級を拒否していたが、学校見学をし話 し合いを重ねるなかで、C児が主体的に生活できる場 として障害児学級が必要であると認識した。保護者の 了解のもと発達相談員が入学前の適正就学指導委員会 でC児の発達の状況を伝え、知的障害児学級在籍が妥 当という決定がなされる。

6歳10カ月、小学校入学。知的障害児学級に在籍。

小学校入学後も年1回程度、発達相談を実施。発達状 況を把握、評価し、日常生活、学校生活での課題を指 導、助言し発達支援を継続している。

事例D児(女児) 表5・図3

D児、女児、現在小学校3年生、情緒障害児学級在

籍。2歳4ヵ月から保育園に入園し2歳7ヵ月時に保 育園保育士から集団生活ができにくいという主訴で発 達相談を実施。その後発達支援を継続している。

町実施の4カ月健診、10カ月相談、1歳6カ月健 診では特に問題なし。2歳児で保育園に入園し、集団 生活をする中で、ことばでのコミュニケーションがと りにくく手を出す、気に入らないことがあると床に寝 転んで泣いて大暴れする、ひとり遊びを好み、友だち が自分の遊びに入ってくることを嫌う、午睡のとき音 に過敏に反応して熟睡できない、偏食がある等、気に なることが多くみられ、2歳7ヵ月時発達相談を受け る。発達状況は表5に示すとおりである。1歳半の発 達的力量を獲得しつつも、活動を相手と共有・共感し て楽しむ姿はみられにくく、活動が自己展開し、こと ばの表出はあるものの、コミュニケーション手段とし て確立するには至っていない姿が見られた。D児の発 達状況から、より専門的療育を受けることが必要と判 断し、通園事業T園に転園となった。T園では、すぐ

2:7  3:0  3:8  4:2  4:10  5:10  7:1  8:2   

1:9  2:1  3:2  3:3  3:10  5:5  6:10  8:1   

1:8  1:11  2:11  2:11  3:6  3:10+α  3:10+α  3:10+α   

1:10  2:3  3:5  3:5  3:9  5:10  7:7  8:5   

1:7  1:10  2:11  3:0  3:11  5:3  6:7  7:10

68  69  86  78  79  93  96  99

CA D A DQ

全領域  姿勢・運動  認知・適応  言語・社会 

表5 D児の新版K式発達検査結果

発 達 年 齢

 

(歳) 

9 8 7 6 5 4 3 2 1 0

3 4 5 6 7 8

生 活 年 齢 (歳) 

地域小学校障害児学級  保育所 

保育所  通園事業 T園  全領域 

姿勢・運動  認知・適応  言語・社会 

図3 D児の新版K式発達検査結果と療育・教育経過

(7)

一日の流れをみとおして生活できるようになった。し かし、集団の輪から少し離れたところに位置して活動 を見ていて、保育士が誘っても活動の輪に入ることを 拒否することが多かった。そこで、その場で一緒に活 動をみることを共有することから関わりを始めるとそ の人との関係で活動の輪に入るようになる。発達状況 は3歳中ごろに、幼児期中期への移行期(3歳過ぎ)

の発達的力量の獲得期に入り始める。

4歳4ヵ月、再び地域保育園に入園。入園に当たっ ては、発達支援のために加配保育士を要望。集団保育 において個別的援助が可能となった。保育園では、設 定保育や見通しをもって生活するという点では大きな 問題はみられなかった。しかし、自由遊びの時間は、

保育士を支えに遊びの中に入るが、友だちと関わって 遊ぶことは難しく、ひとり遊びをしていることが多か った。発達状況は、5歳10ヵ月時に幼児期後期への 移行期、3次元の世界の形成がなされ、発達の遅れの 問題はみられず、正常域の発達となる。しかし、対人 関係、コミュニケーション機能に未熟さを残すため、

就学前に医療機関を受診、「高機能広汎性発達障害」

と診断される。

就学時、保護者は、本児が主体的に安心して学習や 生活できる場所が必要であることを理解し、障害児学 級在籍を希望する。保護者の了解のもと、発達相談員 が就学指導委員会でK児の発達状況と保護者の思いを 伝える。委員会では、本児の発達状況、集団生活での 様子等から情緒障害児学級が妥当という結果を出す。

しかし、D児が入学予定の小学校には、情緒障害児学 級はなく、情緒障害児学級を新たにつくることを県教 育委員会に要望し、新設されることとなる。6歳4ヵ 月、地域小学校情緒障害児学級に在籍する。小学校入 学後も年1回程度、発達相談を実施。発達状況を把握、

評価し、日常生活、学校生活での課題を指導、助言し 発達支援を継続している

4. 考 察

1)乳幼児期から学童期までの系統的な教育・発達支 援システムの構築について

K町は、小規模都市であり、保健師が地域のすべて の子ども、すべての住民を把握している。子どもにな んらかの問題がある場合は、医療、福祉、保育、教育 等の関係機関との連絡、連携をとり、保護者を支え、

その子どもによりよいフォローのありかたを考え 乳 児期から幼児期、学童期と一貫して関わりをもち、さ まざまな支援していくことができている。発達相談員 も保健師とともに、心理専門職の立場から継続的な関 わりをもち、発達支援を行っている。このような関わ り、支援により、事例で示したように、障害の発見・

把握をする機関とその対応をする療育・保育、教育の

機関が行政的につながりをもつことが可能となり、機 関連携が強まっていった。そして、障害がいつどこで どのような状況で発見され、どのような医療的治療や 早期療育や家庭支援を受け、そこでどのような発達的 変化が見られ、そして、どのような障害や発達の状況 で就学を迎え、どのような学校生活を送っているかと いう、個人の一連の経過が、障害や発達の視点から系 統的に把握されるようになったと考えられる。K町に おいては、就学の前後で行政の担当課が変わるが、発 達相談員と保健師が共に就学前後も継続して関わるた めに一貫した支援が可能となっている。事例を通して、

改めて乳幼児期から学童期への継続的な支援のために は、行政の枠を超えた関係機関の連携が重要であるこ とが指摘される。

このようなシステムが形作られていく中で、障害の 早期発見、対応に関わる乳幼児健診・相談についても、

10カ月相談、1歳6カ月健診、3歳6カ月健診の事 後フォローに発達相談員が関わり、発達にリスクのあ る児については、発達相談を実施してその後の対応、

処遇のあり方を決めるといった形態が整備されてき た。また、1歳6カ月健診の事後フォローの親子教室 についても、発達相談員が関わり発達支援と子育て支 援の場としての教室として再スタートさせるに至り、

事例で示したように、一人ひとりの子どもの発達状況 を見極め、発達的視点に立った対応ができるようなっ た。

親子教室では、子どもの発達の援助のみならず、同 時に保護者の子育て支援をしていくことも重要であ る。そのためには、専門性をもったスタッフが必要で ある。K町では、保育士、保健師、発達相談員が多面 的に子どもをとらえ、保護者を支えていくといった、

それぞれの専門性を発揮しながら連携をとることがで きたと考える。そして、このような関わり、支援のな かで、子どもの発達・障害理解を保護者もスタッフも 共通認識することが可能となり、子どもにとって適切 な教室後の進路が決定され、その後も継続的な発達支 援へとつながっているものと考える。

ひとりの子どもの乳児期から幼児期、学童期までを 一貫してフォローできる体制作りの必要性を改めて強 く感じる。そして、障害乳幼児に関わる各専門機関が それぞれの専門性を発揮した連携によって、よりよい 対応がなされることが望まれる。乳幼児の早期診断、

早期療育とともに、一貫性、関連性、継続性のある相 談・支援が必要であり、それらを継続的にコーディネ イトできる地域に根ざした専門家の役割が重要であ る。

2)今後の課題について

近年、とりわけ注目されている「軽度」発達障害に

おいても早期からの支援が必要とされている。しかし、

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早期発見と早期対応に大きな役割を果たしてしてきた 乳幼児健診においても、その時期には特異的な所見が 少ない「軽度」発達障害に関してはまだ十分な対応が なされていないとの指摘がなされている(鈴木、2004) 。

健診、相談、発達相談の充実を図る中で、事例のD 児のように1歳6カ月健診ではフォロー対象にはなら ず保育園での集団生活を経験するなかで問題が顕在化 する子どもや3歳6カ月健診後にフォローになる子ど もがいる。このような子どもたちは『「軽度」発達障 害』の範疇に入る場合が多い。そして、生育歴を保護 者から聴取すると、「乳児期前半より睡眠に関するこ とで育てにくさがあった」 、 「乳児期後半になりハイハ イをし始めてからよく動き、歩き始めてからは目が離 せなかった」、「人見知りや後追いがほとんどなかっ た」 、 「ひとりでよく遊ぶ」といった訴えが多いのであ る。乳児期の健診・相談、1歳6カ月健診、3歳6カ 月健診において、発達状況の把握だけでなく育児上の 困難さや行動上の問題がみえるアンケート、問診表が 必要であり、さらには、健診に携わるスタッフが「軽 度」発達障害に対する認識を高め、系統的な健診を行 うことができる体制づくりが課題になる。また、「軽 度」発達障害児は個別の健診場面だけでは把握されに くい。しかし、事例D児のように、集団生活に入ると 問題がみられる場合が多い。それゆえに、集団生活で の様子を観察して助言・指導のできるような巡回相談 のシステムや、3歳6カ月健診以降の幼児期の力の育 ちの確認として就学前の5歳ごろに新たな健診システ ムが検討されることが課題となる。

また、早期に診断を見過ごされた「軽度」発達障害 のある子どもたちが思春期になって、学校生活になじ みにくいとか、さまざまな情緒的問題や行動上の問題 を呈することも報告されており、障害特性を理解した 上で、多様な側面からの早期から息の長い(ロングス パン)教育・発達支援が必要であると考える。

引用文献

鈴木周平、幼児期軽度発達障害児への支援−小児医療 の立場から−、発達、97、ミネルヴァ書房、2004、

33−36.

田辺正友・田村浩子・李初子、奈良県における就学前

障害幼児をめぐる問題−すべての障害乳幼児のす

こやかの発達をめざして−、奈良教育大学教育実

践研究指導センター研究紀要、8、1999、17−28.

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参照

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