北 陸 の 植 物
第20巻 第3号 昭和47
年9月
大井次三郎
*植 物 分 類 雑 記
J. 0Aw1• : Taxonomic Notes from Eastern Asia.
ここの所, 日本の高等植物はどうやら曲りなりに判るようになったらし<.分類的には面 白いことがなくなってしまったとの理由で, 分類を止めたり, 高等植物を敬遠するような けはいが何やら見えるのは私のひが目のためであろうか。 ずっと歴史の古い欧州でさえ,
盛んに高等植物の分類研究が行なわれているのに, 日本の植物がもう片づいたというよう なことがあってよい筈がないと思っている。 国立科学博物館退職と 同 時 に庭に千草 を植えて楽しむだけのつもりであったが, ここに何かの話しのたたき台にでもと思って駄 文を記すことにした。
I. N. TzvELEV
は数年前, 私信で朝鮮北部産のPoa Okuyamae OHWI
について, こ れはP. sibirica ROSHEV. (1912)
と同種であるという。 綴毛のない点からよく似たもの で, 同種であってもおかしくはないが, 花序の枝かざらつかす, 小穂も小さいので全く同 ーの形でもないと思われる。Nov1tates Systematicae Plantarum Vascularium (Leningrad) 8 : 25 - 56. 1971
には
N. PROBATOVA
女史が極東のナガハグサ属の新種なる論文を発表, 同時にこの属の•横須賀市武
3-28-19 Take 3-28-19, Yokosuka, Kanagawa Prefecture
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Septemberl972TheJournalofGeobotany Vol.XX.No.3
綱要が発表されて,日本のこの属の分類に大きな影響を与えた。R及z"γ HAcK.や RS喀αzMmeOHwlには触れてはいないが,これらは護頴上縁に牙歯があり,側脈も並 行 , 綴 毛 も な い 変 な も の で 何 れ は 何 か の 形 で 論 文 が で る こ と と 思 わ れ る 。 こ こ に 述 べ た い のはんα 〃た0/αKoMAR.(1924)で,48頁に取扱われているが,これはPOα〃j"たo血 RIDL.(1916)かあるので用いることができず,従って,私が北千島で採集した標本をタ イプとするPoashumushuensisOHwlinAct.Phytotax.etGeobot、4:62.1935
−勘α〃j"たokzKoMAR.Not.Syst・Petrop.5:147.1927,nonRIDL.1916を正 し い と し な け れ ば な ら な い 。
2 . 九 州 の 種 子 島 に 近 い 馬 毛 島 か ら 記 載 し た ホ ソ バ ア リ ノ ト ウ グ サ は ナ ガ バ ア リ ノ ト ウ グ サ と と も に 同 名 が あ っ て , こ こ に タ ネ ガ シ マ ア リ ノ ト ウ グ サ と 改 め た い 。 学 名 に つ い て はこの植物が雄本ばかりであるので,花が単性であるLα"花加6"g"BERG.に属するよう に 思 わ れ 次 の よ う に 改 め た い 。 雌 雄 同 株 の は ず で あ る が , 九 州 の も の は 別 株 か も 知 れ な いし,もっとよく観察する必要がある。
LaurembergiaWalkeri(OHwI)OHwI,comb.nov.−Hn勿池g*W"腕〃j OHwIinJourn.Japan.Bot.33:212.1958.
3.GRuBov著,EGoRovA編集のPlantaeAsiaeCentralis,3.1967.は中央アジア のカヤツリグサ科を取扱い,興味深い。この中で私のE"oc"γおりα此c"んsQOHwlは中 央アジアから満州にかけて分布するE.29"煙/加γ獅応(MEINsH.)B.FEDTscH.である と い う 。 こ れ は 私 が か つ て 編 集 発 行 し た 交 換 標 本 を 調 査 し た 結 果 で は な い か と 思 わ れ る 。
Eleocharisequisetiformis(MEINsH.)B.FEDTscH.Plant.Turkest.165.1915.
‑Sc""se9"た"沈γ沈むMEINsH.inAct.Hort.Petrop.18:261.1901‑
E彪 ノロαγたりα此""sIzOHwIinAct.Phytot・etGeobot.2:29.1933.
4.シラタマノキの学名はGz"雌""M"""""TAKEDAinBot.Ma9.Tokyo, 32:195.1918が用いられている。これが多年通用していて,まちがいではないのであ るが,それよりも以前,例えば松村任三,植物名鑑2:2:454,1912なと.ではGtJ""力eγ
γoJbitjEsHooK.etTHoMs.exMIQ.inAnn.Mus・Bot.Lugd・一Bat.1:30.
1863(ProlusioFl.Japon.)の名が用いられていて,MAxIMowlcz(Bull.Acad.
P6tersb.18:44.1872)もこの名で日本の産地名をあげている。この論文ではG."0‑
c"加be"sL.とのちがいや,MIQuELが研究記載した印度産の標本に花がなかったため,
若 枝 を 含 む こ れ ら の 記 載 は 日 本 の シ ラ タ マ ノ キ の も の で 行 な っ た こ と な ど を 記 述 し て い る 。 学 名 は 原 記 載 と そ れ の 基 に な っ た 原 標 本 に よ っ て 裏 づ け さ れ て い な け れ ば な ら な い も の で ある以上,たとえG、Pw0ノojWsHooK.etTHoMs.がヒマラヤ原産の植物に命名された 名称であっても,植物の最も重要な部分である花部などが日本の植物に基づいたというこ とはタイプ標本が日本産であるということになI),ひいてはG..pWo/0沈允sHooK.et THoMs.exMIQ、の学名はシラタマノキのそれに冠すべきであると思われるがどうであ ろうか。
5.水島正美博士はかつて植物研究雑誌,44:372.1969および45:126.1970で,ヌカ
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ボの学名について論じて居られる。私も結論としては水島博士とほぼ同様で,変種のとき にはAg"os"c〃"α"TRIN.var.Mzたα加OHwlでよく,亜種のときには組合せが一番 はじめに作られたという理由のためにA・clavatasubsp.Matsumurae(HAcK.ex HoNDA)TATEoKAが正しいとする。Ag7os"sMMqお"抑"mgHAcK.は記載なしであっ たため,本田博士の論文(MonographiaPoaC.Japon.1930)によってはじめて有効に されたもので,これよりもA.c""""var.Mイルα加を基にした亜種名を建てる方が望ま しかったとする。これも水島博士の御説に賛成である。ただこのA.Mtz内"沈勿meの原標 本について,松村任三博士が東京目黒で1880年6月13日に採集,のちに重複品がHAcKEL に 送 ら れ た も の だ と し , 原 記 載 は 本 田 博 士 の 前 記 の 論 文 の こ の 種 の 検 索 表 に 書 か れ た ラ テ ン文であるとのことだが,私は本田博士の引用されたSynonymyの中で,有効に出版され た記載を求めてそれを原記載とし,それの基になった標本を原標本に撰びたい考えである。
そうすると第一番目に引用されたA.たれ"城"STEuD.Synops.1:163.1854の記事 がこれに当る。但しA・姥"""わ"STEuD.は前に同名があって使えないから,本田博士 のA.Mtzお"加況""HAcK.exHoNDAはこれを基にした新名としてはじめて生きること に な る 。 本 田 博 士 に よ れ ば こ れ は ヌ カ ボ で あ る こ と に な っ て い る 。 舘 岡 博 士 の 亜 種 名 は こ れを基にしている。STEuDELの原記載は長くないので全文を引用してみよう。原標本はオ ランダ,ライデンの国立膳葉館にあるという。glumissubaequalibusとあるから私もこ れ は ヌ カ ボ で あ る か も 知 れ な い と 思 う が 確 証 は な い 。
13.A(gl・ostis)tenuiHora.STEuD.Radicefibrosacaespitifera;culmisbasi geniculatiserectisstrictisteretibusstriatis(5‑12‑pollicaribus),foliatis;foliis angustelinearibuSacutis(1‑3!!longis,vix%"@latis)glabris;ligulaoblonga obtusaexserta;paniculacontracta(1‑2%‑pollicari);radiiscapillaribusbinis velternisraroi㎡erioribusquaternissubmedioHoriferis;pedicellisspiculas (%‑%‑lineales)longitudineplusminussuperantibus;hisalbidisvelleviter rubescentibus;glumissubaequalibuscarina(sublentevalidissima)denticulato‑
scabris,caeterumlaevissimis;valvulaglumisbrevioregenitalisarcteamplectente;
caryopsisoblongo.tereti.ExHrbo.Mus.Lug.Batav・Japonia.
6.四国の高山,石槌山などの高所には本州中部の深山に生えるミヤマウラジロイチゴ が生えているのが知られていた。しかし本州中部のものにくらべて全体,とくに小葉が小 さ く , そ の 上 面 に は 密 に 絹 毛 が あ り , 花 序 の 小 梗 な ど に は 腺 が な い か , と き に わ ず か に 生 えて居i),薯の外面には肉質の刺が生えている。考え方によってはエゾイチゴの亜種とす ることもできる。固有の一変種としてイシヅチキイチゴと呼びたい。
RubusYabeiLtv.etVAN.var.shikokianusOHwIetlNoBE,var.nov.
Atypodiffert,omnibuspartibusminoribus,foliolissupraconspicuesericeis, subtusniveis,inflorescentiahaudglandulosa,calyceextusspinulismollibus exasperato,intuslanatoniveo,petalisparviscuneatis.
Hab・Shikoku:m.Ishizuchil550‑1750m.alto,leg.T.INoBE,Julio28,1972,TNS
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