• 検索結果がありません。

類義表現 の意味論 的分析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "類義表現 の意味論 的分析"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

長崎 大学 留 学生 セ ン ター紀 要 10 2002

類義表現 の意味論 的分析

「さ っそ く」 と 「す ぐ (に)

25

前田 昭彦

キー ワー ド :前提、辞書 の用例、先行事態、後続事態、必然性

1

は じめ に

数年前、 日本語 中級 クラスで 「さっそ く」 の用法 を教 えて いて、学習者 に例 文 を作 成 させ た ところ、 「す ぐに」 では落 ち着 くが、 「さっそ く」 で は しっ く りこな い文が い くつかで きて きた。そ の とき 「さっそ く」 の正 しい用法 の決 め 手 とな る説明がで きなか った。辞書、 類義語 関係 の本な どを調べてみたが、 こ こを押 さえれば学習者が間違 いな くこの語 の使用 がで きる とい う要点 が書かれ た もの を探す ことがで きなか った。 本稿で は時間 に関す る 「す ぐ (に)

と対 比 させ なが ら、 「さっそ く」使用 の前提条件 を中心 に考察す る こととす る。

2 「さっそ く」指導上の問題

数年 前、 日本語 中級 レベル の授業で 「さっそ く」 とい う語 が教科書 にあ り、

学習者 か らそ の意 味 につ いて質 問が あ った。 そ こで、筆者 は概略以下 のよ うに 説明 した。

この語 は、

「 A

、 さっそ く

B」

の形で使用 され る。

A

を して、 または

A

あって、それ と関係のある Bをす ぐにす るとい う意味で使 う。

このように説明 した後、 「友達か らケーキをもらって、さっそ くそれを食べた。」

といった用例 を 2、 3提示 した あ と、学習者 に例文 を作 らせ てみた。 す る と次 のよ うな例文がで きた。以下、文頭 の *は不 自然で不適格 な文、? は間違 い とは いえな いまで も適格度が落 ちる不 自然な文 の意で用 いる。

授業で習 った 日本語 を、授業のあ とさっそ く使 った。

デパー トで シャツを買って、 さっそ くそれ を着た。

(2)

上 のよ うな適格 な用法 に安心 して いる と、かな りよ くで きる学習者が次 の例文 を作 った。

③ *私 は家へ帰って、 さっそ く洗濯 した。

そ こで、③ の不適格性 の理 由を前件 と後件の関わ りの弱 さにあると考 え、

Aをして、す ぐにBをするにおいて、AとBには強い関係がなければな らない。」

とい う説明 を付 け加 えた。 そ の後、 さ らに例文作成 を進 めて い くうち に、以下 のよ うな例文が混 じって きた。

?友達 に電話す ると、 さっそ く友達が電話 に出た。

(9 *私 はベ ッ ドに入 って、 さっそ く眠 ったO

?私 は

1

年 間 日本で 日本語 を勉強 します。 国へ帰 った ら、 さっそ く日本 語 を使 って仕事 を したいです。

*A

さんが好 きな女性 に手紙 を書 いた。彼女 は

A

さんの手紙 をさっそ く ごみぽ こに捨てた。

上の④ か ら⑦ は、 な るほ ど筆者 の説 明 に適 った文で ある。 なぜ不 自然な ので あろ うか。筆者 は これ らの文 が不 自然で ある とい う指摘 はで きて も、不 自然で ある理 由の説明ができなかった。

3

「さっそ く

と 「す ぐ(

)

」の類義性

前述 した③ か ら⑦ の文 は総 て 「さっそ く」 を 「す ぐ (に)

に置 き換 える と 適格 な文 にな る。両者 の本質 的な違 いは どこにあるのだ ろ うか。 辞書類 にあた ってみ る と、類義語 の記述 を持 つ ものでは 「す ぐ (に)」と 「さっそ く」 の類 義性 の扱 いは以下のよ うであった。

類語例解辞典

(小学館

、1994)

で 「さっそ く」 を引 くと、 「す ぐ」 の項 に関連語 としてあげてある。 この辞書では 「す ぐ

の類語 として 「じきに」 ちに」 を載せ、 「す ぐ

」の関連語 として 「

早速」をあげ、他 に 「じき

す ぐに」

す ぐさま」 即」 を関連語 として載せ て いる。類語 と関連語 の区別 は一見 し て分か らないが、共通する意味として、 「物事 を行なうのに時間をおかないさま。」

とあ り、そ の後 に類語 の用例、意 味 と使 い分 け、 さ らに関連語 に関す る解 説が な されている。だが、 「さっそ く

の正 しい用法 を導 く説明はない。

飛 田良文 ・浅 田秀子 『現代副詞用法辞典

』 ( 1999

、再版) には 「早速」 で見 出 しを立て、 関連語 として 「す ぐ

す ぐさま」 ただち に」 な どが あげ られ て いる。 「す ぐ

の項 の関連語 としては 「ただちに」 な どとともに 「さっそ く」

(3)

長崎 大学 留 学生 セ ン ター紀 要

1 0

2 0 0 2

27

が記載 されている。 「さっそ く」 の用法についての解説 もあるが、後述する。

一般 の辞書 の中では珍 しく類義語 の提示 を特色 の一つ として いる 『現代国語 辞典

(2版、三省堂、1996)では、 「す ぐを引 くと類義語 として 「ただちに ・

さっそ く ・じき (に) ・す ぐさま ・即刻」 とある。 ところが、 「さっそ く 項の類義語には 「至急 ・早急」 とあ り、 「す ぐ」が出て こない。 「至急

早急」

を引 くと、 どち らにも類義語 として 「す ぐ」 も 「さっそ く」 も出ていない。

さっそ く」 と 「す ぐ」 を対比 させ て扱 って いるのは 『日本語学習使 い分 け 辞典

(講談社、 1994)である。 これ について も後述する。

編集の方針が分か りにくいものもあるが、おおむね 「さっそ く」 と 「す ぐ (に)」

は類義語 として扱われているといってよい。

4

「さっそ く」 に関する辞書類の記述

さっそ く」 を辞書 にあた ると、大小を問わず、 ほ とん どの辞書が語義 とし て 「す ぐ (に)」をあげて いる。例えば、小学館 の 『日本国語大辞典

(1版、

小学館、 1974) では副詞 として 「にわか に。すみやかに。す ぐに。」 と説明 し ている。 『大辞林

(2版、三省堂、 1995)、 『日本語大辞典

(初版、講談社、

1989)、 『大辞泉

(初版、小学館、 1995)、 『角川国語大辞典

(初版、角 川書店、 1982)、 『広辞苑

(2版、岩波書店、 1976)、 『国語辞典

(初版、

集英社、 1995)、 『現代国語例解辞典

』 (

3版、小学館、 1986)、 『国語辞典』

( 5

版、三省堂、2002)等 々、定義の しかたはほぼ 同じである。

筆者があたった辞書のなかでは、わずかに 『国語大辞典

』 ( 2

版、学習研究社、

1992)、 『現代国語辞典』

(2

版、三省堂、 1996)、 『新明解国語辞典

(4版、

三省堂、 1997) の三冊のみが、類義語使用 を避 けた定義付けを行なお うとして いる。 だが、 『国語大辞典』 は 「す ぐの呪縛か ら自由になっていな い。その 説明は、 「時間をおかずにす ぐ行なうようす。す ぐさま。す ぐに。すみやかに

。」

というものである。 『現代国語辞典』で も 「時間を置かずに、す ぐ。す ぐさま。」

と 「す ぐがや は り顔 を出す。 『新明解国語辞典』 は 「何 か事が有 ってか ら時 を置かず に、対応策 を講 じる ことを表す。」 と 「す ぐ」 の呪縛か ら解 き放たれ てはいるが、 「対応策 を講 じる」 という問題のある説明が入 って くる。

なお、 『日本語大辞典

(2版、講談社、 1995)では、 「早速」 について、

副詞 としては 「す ぐ、す ぐさま、すみやかに」 と類義語 による説明をしているが、

名詞 ・形容動詞 としては 「直ちに実行すること ・さま」 という説明になっている。

(4)

類義語使用 の説明か ら離れよ うとしているものの、それで も 「直ちに」 という 類義表現の使用か ら離れることができないでいる。

辞書 は限 られた紙数 にできるだけ多 くの語義 を載せ るという制約があ り、各 見出 し語 に詳細な解説 を付 ける ことは不可能である。倉島節尚

( 2000)

は、辞 書を作る立場から、特に語数に焦点を当てて辞書の制約について述べたなかで、 「 項 日当 りの記述量 を多 くすれば項 目数が減 り、項 目数 を増やす には簡潔な記述 が求め られ る。辞書の編集 は常 にスペース との戦いだ といわれ るのは、 こうし た事情 による。」 と述べて いる。だか らといって、語義 の説明を類義語 による 置 き換 えに頼 っていいものだろ うか。類義語 をいくつか並べて語義 の説明 とし て事足れ りという辞書のあ りかたでいいものだろうか。

5

意味記述 に関する辞書の問題点

辞書 に制約があることは分かる。 しか し、前 田

( 200

1)で も触れたよ うに、

従来の国語辞典 には改良すべき点が少な くない1'。 日本語教育に携わっていて痛 感す るのは、 日本語 の優れた学習辞典が欲 しい とい うことである。 中級、上級 の 日本語学習者 の要望 にも応 え られ、 日本語教師の必要 にも応 えて くれ るよ う な辞書である。現在では森 田良行 『基礎 日本語辞典』 (角川書店)、グループ ・

ジヤマシイ編著 『日本語文型辞典』 (くろ しお出版)、飛田良文 ・浅田秀子 『 代副詞用法辞典』 『現代形容詞用法辞典』 (東京堂 出版)な どがそれ に近 い役 割 を担 って いるが、 いずれ も通常の辞書ではない。例えば、前の二つで 「さっ そ く」 を調べよ うと思 って も、 この語は空見 出 しになって いて、取 り扱われて いないのである。

20

年ほど前、筆者は英英辞典

、L o n g ma nDi c t i o n a r yo fCo n t e mp o r a T yEn gl i s h

手 に して、学習機能 をそなえ、 しか も記述が平易である ことのすぼ らしさに驚 いた ことがある。外国人学習者 のための英英辞典か くあるべ Lという印象 を抱 いた ものである。 これは どうや ら筆者の個人的な印象 にとどま らないよ うで、

土肥一夫

( 1995)

にも、 この辞書 ほど 「文法記述 に力点 を置いた辞書はかつて な く」、 この辞書は 「言語理論 と辞書 との一体化 をはかろ うとした画期的な著 作であった」 と述べ られて いる。 これ に匹敵す るよ うな、 あるいはそれ以上の 日本語辞典がで きないものであろうか。我が国には学習機能 を持つ優れた英和 辞典の伝統 もある2)。それがなぜ 日本語辞典、あるいは国語辞典の編集には生か せないのだろうか3)0

(5)

長崎大 学留 学 生 セ ンター紀 要 10 2002

29

玉村文郎

( 1 995 )

は 「日本で刊行 される日本語の辞書は 「国語辞典と呼ばれ、

すべて 日本人 を利用者 と想定 して編集 されている。近年 「日本語辞典とい う 呼称 をもつ ものが刊行 され始 めたが、十指 に満たず、 「国語辞典」 と編集方針 の変わ らないもの もある。 「国語辞典」 な ら 「ある」や可能動詞 には命令形が な い との注記 は不要か もしれないが、 「外国人用 日本語辞書」であれば不可欠 である

。」

と述べ、 日本語辞典 に必要な要件 を検 討 して いる。 このよ うに 日本 語辞典 と国語辞典 には当然異なる編集方針が必要であ り、優れた 日本語辞典の 出現が待たれ るが、従来 の国語辞典 にも意味記述 の上でかな り改良の余地が残 されている。

前 に見たよ うに、国語辞典で 「さっそ く」 を引いて も、類義語 による説明が 多 く、基本義が示 されて いないものが多 い。 しか も、類義語 との差異 も分か ら ない。 これでは単な る言 い換 えであって、言葉 の意味 を説明 した ことにはな ら ない。 この辺の事情は森 田良行 (2000)にも詳 しく述べ られている。その一部

を引用 してみよ う。

(前略)た とえば、 「まず」 という副詞 を引 くと、おおかたの辞書は、

①第‑にO最初 に。② ともか くO何は ともあれ。③大体。

といった三つの意味が並 んでいる。そ して、意味理解 の手助 け としてい く つかの用例 を掲げ、 (中略)0

だが、 「最初 に

「ともか く

だ いたい」 といった言 い換 え的個 々の 説明か ら、 これ ら三つ を統括す る骨格 とも言 える中心意義は何一つ見 えて こない。 では一体 「まず」 の本 当の意味 とは何なのか。辞書 とは語 の意味 の記述 を本務 とす る書物 とす るな らば、 「まずの意味が記述 されて いな いか ら辞書 とはいえない ということになる。 これがおおかたの辞書 の実態 である。

森 田氏は この後 に、辞書 をめ ぐる 「理想 との闘 いの第一は、その見 出 し語 の 意味領域全域の背後 にある、真の 「意味」の神髄 に触れるための闘いである。」

と述べている4)0

辞書 には用例が付 きものである.赤野一郎 (2000)、倉島節尚 (前掲)、森 田良行 (前掲) な どで も言われているよ うに、 い くつかある用例 の役割 の中で、

最 も大切なのはスペースの制約 による意味記述 の不備 を補 い、用法 を教える こ

(6)

とであろう5)0

さっそ く」 の項 にある辞書の用例 を前述 の辞書 の中か らい くつか あげてみ ると次のようである。

参上いた します」 報告 して もらいたい」

(

大辞林』)

申し込 んでお こう

」 (『

新明解国語辞典』)

早速電話 してみます

」 (

現代国語例解辞典』)

行 ってみよ う

」 (『

三省堂現代国語辞典』)

上のよ うに前提抜 きで、 いきな り 「さっそ く」で始 まる文の用例が多 く、 「 話 をかけた ら一一 や って来た

。」

(『大辞泉』) のよ うに前提 をもつ用例は極 めて稀である。前提 をつけていない上のような例文 も勿論すべて正 しい。 しか し、

このよ うな用例 は語義説明の補完 のためにも、用法理解 のため にもほ とん ど役 に立たない。 スペースの制約 による ものか、辞書編集者 の落 ち度なのかよ く分 か らないが、 このような用例の提示 の仕方 もまた改良されなければな らない。

用例の挙げ方か らみると、 『外国人のための基本語用例辞典』

(2

版、文化庁、

1981)

はさすが によ く吟味 されていて、 「近 くにあた らしい店ができた という ので、 さっそ く行 ってみた。」 とい うよ うな 「さっそ く」使用 に必要な前提 を 明示 した例文がいくつか掲載 されている。 しか し、語義の説明はいたって簡略で、

時間をおかず にす ぐ行な うようす。‑す ぐ。」 とされている。そ こで、 「す ぐ

を引 くと

「1

、時間がかか らないよ うす。急 に。 「す ぐに」 の形で も使 う。 」

とされて いる。 これでは 「さっそ く」 と 「す ぐ

は全 く同意で、 どんな場合 も 置き換 え可能であると理解 されて も不思議はない。

6

「さっそ く」 と 「す ぐに」 に関する先行研究

さっそ く」 とい う副詞は これ まで さほ ど問題 になる ことがなか ったのか、

これ を正面切 って扱 った ものが探せ なか ったO また、類義語関係 の本 にも 「 っそ く

に関しては詳 しい記述が少ない。筆者が捜 した中ではわずかに前述の 『日 本語学習使 い分 け辞典』 と 『現代副詞用法辞典』 の

2

つだけがやや詳 しくこの語

につ いて解説 している。前者の解説は以下のよ うである。

ある ことが らに対 して、時間 をおかず に何 か をす るよ うす を表す とき使 い ます。人の意識的な行動 に使 います。

(7)

長崎 大学留 学生 セ ンター紀 要 10 2002

31

意識的な行動 という説明は通常の辞書 の解説 と異な り、一歩踏み込 んだ もの にな って いる。だが、 「さっそ く」 を不適格 として前述 した

「 A

さんが好 きな 人 に手紙 を書 いた。彼女はA さんの手紙 をさっそ くごみぽ こに捨てた0」 とい

う文は、意識的な行動であって、上の解説の要件 を総て満た して いる。 したが って上の解説は 「さっそ く

使用 の必要 に して十分な説明 にな って いない こと になる。なお、 「す ぐ」 に関 しては同書 に以下の解説がある。

ある ことが らと次 の ことが らの間の時間が短 いよ うす を表す とき使 います。

簡単に、 らくに、安易にという意味 も含みます。

現代副詞用法辞典』 の解説は 「す ぐ」 との違 い も含めて次 のよ うにな って いる。

ある行動の後、時間をおかず に次 の行動 に移 る様子 を表す。やや プ ラスイ メー ジの語, (例文 の解説があるが省略一筆者) まず ある行動があ って、そ の後次 の行動 に時間 をおかず に移 る点 にポイ ン トがあ り、次 の行動 に移 る主 体 の積極性 の暗示がある。単 に行動 にかかるまでの所要時間が短 い とい う意 味ではない点で、 「す ぐ

す ぐさま」 とは異なる。

この解説で も、先 に不適格 としてあげた、 「私 は家へ帰 って、 さっそ く洗濯 した。」という文の不適格性が説明できない。なお、上の解説の 「積極性の暗示」

という部分が分か りにくいが、後に書かれている以下のような 「ただちに」 と 「 っそ く

の違 いにこれ に関する執筆者の意図が表れているようである0

さっそ く」 は 「ただちに」 に似ているが、 「ただちに」はかな り客観的で、

次の行動に移 る所要時間は 「さっそ く」 よ り短 いが、積極性の暗示はない。

×話題のやせ る漢方薬 をただちに試 してみた。

‑話題のやせる漢方薬 をさっそ く試 してみた。

これ を読む と、 「積極性 の暗示

とい うのは 『日本語学習使 い分 け辞典』 に お ける 「意識的な行動」に重なる もので、上の例文では、 「試す」という動詞 が意識的行動 を表現 して いるので 「積極性 の暗示

にあた り、 「さっそ く」 は

(8)

適格であるが、 「ただちに」は不適格になるという説明と取れる。

す ぐ」 については同書は以下のように説明 している。

時間的に隔たっていない様子を表す。プラスマイナスのイメージはない。 ( 略)客観的な表現で、特定の感情 を暗示 しない。

島本 基 (

1 989 )

では、 「さっそ く」は 「早いほうがいいと感 じる場合に言 う。

す ぐに。」 と解説されている。時間に関す る 「す ぐに」 については 「直後 に」

と極めて簡単に、言い換えによる説明がなされている。

す ぐ (に)

に関 しては他 に詳 しい考察がある。国広哲弥

( 1 981 )

では、

タチマチ ・スグ二 ・キュウニが比較 されている。そ こでは、 タチマチ とスグ二 をキ ュウニ と比較す ると、前者 には先行す る出来事が必要であるが、キ ュウニ はそれを必要 としない点でまず両者は異なるとされている。

さ らに、 タチマチ とスグ二の違 いは微妙であるとして、タチマチ には

「 <

る結果をもた らす先行過程が予想以上に短い> ことを指 し、かつそ こに<驚き ・ 感嘆>の念が ともなっている」 とす る。スグ二は 「二つの事態 の間の時間が短 いことを 「客観的に描写する」のだ といえる」 と説明されている。

森田良行

( 1 989)

には 「す ぐ」の基本義 として 「ある状況が成立 した とき、

その状況の時点、地点か ら隔た りがないこと

。」

があげ られている6)

7

「さっそ く」 と 「す ぐ (に)

の差異

7.1

きっそ く」に関する先行研究 と用例

国広 (前掲)で、 「す ぐに」は 「きゆうに

と異な り、先行す る出来事 と後 続する出来事の

2

時点が必要であると説かれているが、 これは 「さっそ く

にも 該当する。

太郎は急 に食事 をやめ、 目をつぶって何事か考えはじめた。

*太郎はさっそ く食事 をやめ、 目をつぶって何事か考えは じめた。

(訓ま言えて も、②は言 えない。 これは先行す る事態がないか らである。 これ に先行事態 を加えると以下のように適格な文ができる。

食べてばか りいないで、何か意見 を言 うように言われた太郎はさっそ く食事をやめ、 目をつぶって何事か考えは じめた。

③のように、 「さっそ く」 と共起できる先行事態 とはいかなる条件 をもつ も

(9)

長崎 大学留 学生 セ ンター紀 要 10号 2002

33

のであろうか。 まず、先学の用例 と説明 を見てみよ う。

さっそ く」 につ いて、時間 をおかず にな にか をす る とい う意味 と、 人の意 識的な行動 に使 うとい う要件 を記載 した 『日本語学習使 い分 け辞典』 は次 のよ

うな用例 を載せて いる。以下、 引用文の下線は総て筆者が記 した ものである。

彼女 に頼 んでお いた本が届 いたので、昨 日さっそ くお礼 の電話 を しま した。

皆 さんそ ろったので、 さっそ くですが会議 を始め ます。

彼は事務所へ来 ると、 さっそ く仕事 に取 りかかった。

テ レビで見た料理 を、 さっそ く今夜作 ってみ ます。

類似 の解説 を して いる飛 田 ・浅野 の 『現代副詞用法辞典』 には以下 のよ うな 例文があげ られている。

電話 の修理 を頼んだ らさっそ くや ってきて くれた。

⑨ (手紙 の返信) さっそ くのご返事恐縮です。

赴任そ うそ うさっそ くだが、君 に頼みがある。

このよ うな用例 だ けみ る と確 か に解 説通 りで あるが、上記 の要件 を備 えて い て も 「さっそ く」 にな じまな い場合がある ことは前述 した。 上 の要件 を備 えて いるに もかかわ らず、 「す ぐに」 な ら適格 で あって も 「さっそ くでは不適格 になる例文 をさ らに

2

つあげてみ る。

くず粉 が とけた ら中火 にか け、 て いね いにか き まぜ なが ら煮 る。 とこ ろ どころかた ま りがで きた ら、手早 くか きまぜ、全体 がぷ りぷ りと固 ま って透 明 にな った ら火か らお ろす。す ぐにへ らで手早 くひ とま とめ に寄 せ る。 (『なつか しい手作 りおやつ』主婦 の友生活 シ リーズ)

しょうが を湯 か ら出 して、作 ってお いた甘酢 にす ぐつ け込 む0 (『 べん とうとサ ン ドイ ッチ』、小学館

、1 980)

このよ うな例文では、積極性 を伴 う意識的行動で あって も、 「す ぐ (に)」

を 「さっそ く

に置 き換 える ことがで きな い。料理 な どの手順 を説明 した文で はほ とん どの場合 「す ぐ (に)

を 「さっそ く」 に置 き換 える と不 自然 にな る。

したが って、 「時間が短 い

積極性

意識的行動」 とい うだ けでは 「さっ そ く

使用 の十分な要件 とは言 えな いことになる。

島本 基 『副詞用例辞典』 は 「さっそ く

を 「早 い方 が いい と感 じる場合 に 言 う。す ぐに。」 と解説 し、例文 として次 の ものをあげて いる。

そんなにいい本な らさっそ く読んでみ ます。

(10)

電話局に電話をして聞いた ら、さっそ く番号を調べて くれました0

⑱⑭は確かに 「いいと感 じられ る場合」であろうが、以下のよ うな文では ど うであろうか。

最近空き巣が多いと聞いていたか ら気 をつけていたのだが、昨 日うっ か り窓の鍵 をかけわすれて外 出 した ところ、 さっそ く空 き巣 に入 られて しまった。

あいつの運転は車間距離 をとらず に危ないと思 っていたので、昨 日注 意 したばか りだったのに、注意 を聞かないものだか ら、今 日はさっそ く 追突事故を起 こして人に大怪我をさせて しまった。

上の⑥⑯は 「いいと感 じる場合」で もな く、 「意識的で もな く、 「積極性 を暗示す る」行動で もない。 しか し、 「さっそ く」 の用法は不 自然ではない。

特 に⑰のような被害感情 を表現す る構文では 「さっそ く

はかな り使用 されそ うである。 これ に関 して、 『現代副詞用法辞典』では次 の例文 をあげ、 「積極 性の暗示」 という観点か ら以下のような説明がなされている。

表で子供たちが野球 を始めたので、窓ガ ラスを割 らなきやいいが とお もっていた ら、 さっそ く割 って くれた。

⑰は 「主体そのものには積極的な意志はないが、行為 を受ける側 にとって、

まるで主体が積極的に行為 したように感 じられ るというニ ュアンスで、邦輪 と 皮肉が暗示 される表現になっている。」

⑯は この説明に該 当す るか もしれない。 しか し、⑥ の 「空き巣」 には空き巣 を働 こうという積極的な意志があるので、 このような考 え方では説明できな く なって しまう。

7. 2

さっそ く」使用の条件

では、 「さっそ く」 の用法 を如何 に説明すれば よいのだろうか。 これ までの ことか ら 「さっそ く」は次のようにまとめることができそ うである。

<明示 された、あるいは、暗示 された先行す る事態、状況があ り、そ こか ら 当然予期、予測 され る後続の行為、事態、状況が主観的に通常よ り早い と思わ れるほど短時間のうちになされた り、生 じた りすることを表す。>

上で言 う 「短時間」 とは、そのような状況下で通常行われた り、生 じた りす る場合よ り早い、すばや いと主観的に意識 され る時間の短 さであ り、それが他 者の行為 に関す るものであれば多少の驚 きをともな うほどの時間の短 さ、早さ

(11)

長崎大学留学生 セ ンター紀要 10 2002

年 35

となるであろう。 つ ま り、 「さっそ く」使用 には後続 の行為 ・事態 の生起 を必 然 と感 じさせ る前提 と、後続 の行為 ・事態 の生起が多少早す ぎる とさえ感 じら れ るほど早いという意識が必要であるといえる。

従来 の解説では説明がつきに くい として最初 にあげた以下の各例文 は どのよ うに考 えれば いいのだろうか。

*私は家へ帰って、 さっそ く洗濯 した。

① の 「家へ帰 る こと

と 「洗濯 をす る こと」 の間に必然的なつなが りを感 じ させ る ものが何 もな い。 これ に両者 のつなが りの必然性 を感 じさせ る前提 をつ けて次のよ うにすると落ち着 く。

①′溜 まって いる洗濯物が気 になっていたので、家へ帰 って、 さっそ く洗 濯 した。

このよ うに洗濯 の必然性が納得 されれば 「さっそ く

を使用 して も落 ち着 く わけである。

次 の②③④⑤ の文は前後 の関連 の強 さという点で一見 「さっそ く」使用 の条 件 を備えているよ うにみえる。

?友達 に電話すると、 さっそ く友達が電話 に出た。

*私はベ ッ ドに入って、 さっそ く眠った。

?私は

1

年間 日本で 日本語 を勉強 します。 国へ帰 った ら、 さっそ く日本 語 を使 って仕事 をしたいです。

*A

さんが好 きな女性 に手紙 を書いた。彼女は

A

さんの手紙 をさっそ く ごみぽ こに捨てた。

②か ら検討 してみよ う。② の 「さっそ くが しっ くりしな いのは友達 に電話 して即座 に友達が電話 に出る ことにはなんの不思議 もな く、驚 くに当た らない か らであろ う。そ の友達がいつ もはなかなか電話 に出ないのであれば話は別で ある。例 えば次 のよ うにそれが分か る文脈 にす る と、電話 の取 り方が通常 と異 なって早いという表現 にな り、 「さっそ く」使用の不 自然 さが緩和 され る。

②′ いつ もは電話 に出たが らな い友達 に電話 をかける と、待 ってで もいた かのように、 さっそ く友達が電話に出た。

③ではベ ッ ドに入 る ことは眠 るためであって、す ぐに眠 って も特別 に取 りた てて言 うほ どの ことで もない。③ も以下 のよ うに通常 と異 って早 い とい うこと に対す る多少の驚 き、意外 さを加 える と 「さっそ く」 の使用が成 り立たな い こ ともな い。 ただ し、動詞 を 「眠れた」と可能表現 にすれば さ らに落 ち着 くとこ

(12)

ろではある。

(診′ この ところ不眠に悩 まされて いたが、私はベ ッ ドに入 って、友人 に教 えて もらった睡眠用呪文 をとなえてみると、さっそ く眠った。

(参′ は これで も多少すわ りの悪 さが感 じられ るoそれは眠るという自然な生 理現象と、行為に移る時間の早さ、事態の出来の早さを表現するのに使われる 「 つそ く」 との相性が悪 いか らであろ う。 同 じ生理現象で も、次のよ うに自然で はない事態の生起 を表す ものでは 「さっそ く

使用 の不 自然 さが感 じられない。

和菓子 を食べ ると歯が痛 くなるか もしれないと思 ったが、 あま りにも 美味 しそ うだったので我慢で きな くな り、つい手 を出 して しまった。す るとさっそ く心配 していた奥歯が痛み出 した。

④ にお ける 「さっそ く」 の不 自然 さは 「帰国」 と 「仕事 をす る」 という先行 事態 と後続事態の繋が りにおける必然性 の希薄 さ、 あるいは飛躍 の大 きさに由 来す ると考え られ る。来 日前 にそ のよ うな約束で もない限 り、帰国さえ した ら 日本語 を使 った仕事が無条件 にできる というものではない。下 の 「捜す」のよ うに帰国後 の行為 として先行事態か ら飛躍 の感 じられないものであれば 「さっ そ く」 と無理な く共起できる。

④′私は1年間 日本で 日本語 を勉強 しますO国へ帰った ら、 さっそ く日本語 を使 う仕事 を捜 したいと思 っています。

⑤で 「さっそ く」が不 自然になるのは これ も先行す る行為 と後続す る行為の 間に必然性が感 じられないか らである。手紙 をもらえば通常は読む ものである。

内容が分かっている邪魔なダイ レク トメールな らいざ知 らず、知人にもらった 手紙 を読み もしないで捨て る ことは普通ではない。 したがって、彼女 の 「手紙

をごみ箱 に捨てる」 という普通ではない行為が次のように必然性 を持って くれば、

さっそ く」が うまく収 まる ことになる。

′ A

さんが好 きな女性 に手紙 を書 いた。 日ごろか ら

A

さんの気持 ちを察 しなが ら、

A

さんの態度 をうとましく思 い、嫌が って いた彼女は

A

さん の手紙 をさっそ くごみ箱 に捨てた。

7. 3

さっそ く」 と 「す ぐ (に)

さっそ く

も 「す ぐ (に)

も先行す る行為 ・事態 と後続す る行為 ・事態

2

つの時点 を必要 とし、 しか も、

2

時点 の時間が短 い ことを表す点では共通 している。 しか し、 「す ぐ (に)

が国広 (前掲)で指摘 され、飛田 ・浅野 (

(13)

長崎 大学留 学生 セ ンター紀 要 10号 2002

37

描)で も 「ある時点か ら次 の時点 までが隔た って いな い とい う意味である。客 観的な表現で、特定 の感情 を暗示 しない。」 と述べ られて いるよ うに、

2

時点 間の時間の隔た りが短 い ことを客観的 に述べ るのに対 し、 「さっそ く」 は通常 よ り

2

時点 の隔た りが短 い、短す ぎるほ ど短 い といった主観的な感情 を暗示 し ている。

さ らに、 「す ぐ (に)

が先行す る行為 ・事態 と後続す るそれ との間 に強 い 共起制限を持たないのに対 し、 「さっそ く」には厳 しい制限がある。 「さっそ く

は、 明示、暗示の先行行為 ・事態 と後続 の行為 ・事態 とが必然 と感 じられ る範 囲で繋が りを持 って いなければ な らない。言 い換える と、後続 の行 為 ・事態が 当然予期、予測 され るよ うな前提の明示、あるいは暗示がなければ 「さっそ く」

は使 えない とい うことである。 ここにい う前提 の暗示 とは、例 えば、手紙 の返 事 をも らった ことに対 して、 「さっそ くのご返事 あ りが とうございます。 」 前置 き抜 きで も書 けるよ うに、状況 の中に先行事態が存在 して いる場合の こと である。

このよ うに、 「さっそ く」 と 「す ぐ (に)」

2

時点 間の時間が短 いという 意味では共通 しているが、それ に対す る感情 の有無、先行す る行為 ・事態 と後 続す るそれ との間の強い共起制限の有無 という点で裁然 と異なっている。

前述 したよ うに、料理な どの手順 の説明 には 「す ぐ (に)

は使 えて も 「 つそ く

は使 いづ らい。それは,

2

つの行為間の時間的隔た りが少ない ことを 感情 を込 めて述べ る必要がない こと、

1

つの作業が次 の作業の内容 を必然性 を 伴 って予測 させ ることはないという

2

つの理 由か らである。

7.1

で 「しょうが を湯か ら出 して、作 ってお いた甘酢 にす ぐつけ込む。 」 とい う文 を料理 の本か ら引用 したが、生妻 を湯か ら出す作業 と、作 ってお いた甘酢 につけ込む作業の 間 には この文脈では何 ら必然的な繋が りはな い。湯か ら出 した生妻 を冷 ます作 業があって もいいだ ろ うし、生妻 に砂糖 をまぶ して もいい。甘酢 は作 ってはお いたが、それは他の食材 をつけるためか もしれないのである。

後続事態の生起 を予測 させ る前提の必要性は次の例で もよ く分かる0

昔、 いち ょうの木 にたぬきが住 んで いました。 ひ とりの年 とった百姓 が大 きな弁 当袋 をさげて、 いち ょうの木 のそば の畑へ とや ってきま した。

いちょうだぬきはさっそ く見事な木の枝 に化 けました。

昔話でたぬきが化 ける ことを知 って いる人 にとって も① の 「さっそ くには 唐突な感 じをうけるであろ う。 しか し、 これ に必然性 を得心 させ る前提が付 く

(14)

と下 のように極 めて 自然な用法 となる。

このあた りの村では、 田んぼ に出る ときまって弁 当を風通 しのいい木 の 枝 にぶ らさげてお く習慣 があ りましたので、古 くか らいち ょうの木 に住み ついて いた いち ょうだぬきの一族は、みな木 の枝 に化 けるのが うまか った ものです。

ある 日の こと、ひ と りの年 とった百姓が 大 きな弁 当袋 をさげて、 いち ょ うの木 のそば の畑へ とや ってきま した。 いち ょうだぬきはさっそ く見事 な 木 の枝 に化 ける と、百姓が弁 当をぶ らさげ るのを、今か今か と心待 ちにし ていました。 (『お もしろ昔話』、 ささきよ うこ編、表現社

、1985

0 )

上 の 「さっそ く」 を 「す ぐ (に)」に置 き換 えて も文法上の問題 はない。 し か し、 ここで 「す ぐ (に)

とす る と、弁 当にあ りつ く好機到来 と勇んで変 身 す るたぬきの気持ちは伝わ って こない。

意 味が近 い こと、 「す ぐ (に)」 は 「さっそ く」 ほ ど強 い共起制限 を持 たな い ことか ら、 ほ とん どの 「さっそ く」 は 「す ぐ (に)

で置 き換 える ことがで きる。 同 じ理 由でその逆 は難 しい ことが多 い。 「さっそ く」 を 「す ぐ (に)

で置換 しに くいのは 「さっそ くのご返事」や 「さっそ くですが

といった名詞、

形容動詞7)の場合である。 このよ うな 「さっそ く」はたいてい先行過程 を状況の 中に持 っていて、暗示 された事態 を前提 に挨拶 として使用 されて いる0 「さっ そ く」 が 「驚 くほ ど短 い時間 に」 早す ぎる と感 じられ るほ ど早 く」 といった 感情 をともな う意味 を担 っているので、 この語 で感謝や恐縮 といった気持 ちの 表現 までで きるわけである。感情 を伴わな い 「す ぐ」だ けではそ のよ うな気持 ちの表現はできないことになる。 この ことはまた 「さっそ く」 と 「す ぐ (に)

の意味の違 いを裏付けて もいる。

8

おわ Uに

日本語 を教 えて いて、 「さっそ く」 の用法 を的確 に教 える ことができなか っ た経験がある。そ こか ら辞書 にあた り、文法書 にあたって この語 の用法 を教 え る手がか りを掴 もうとしたが、納得できるものに出会えなかった。そ こで、 「 っそ く」 を類義 の 「す ぐ (に)」と対比 させ なが ら考察 してみ る と、両者は、

先行す る行為 ・事態 と後続す る行為 ・事態 の

2

時点 を要 し、そ の

2

時点間の時

(15)

長崎 大 学 留 学 生 セ ン ター紀 要 10号 2002

39

間が短 い という意味 を表す ことでは共通 して いるが、 「さっそ く」 は、客観 的 な 「す ぐ (に)

と違 い、主観的な気持ちを表現す る機能 を持ち、 さ らに、明示、

暗示の先行行為 ・事態が前提 とな って後続 のそれ を必 然的 に呼び出す場 合でな ければ使用できないという制限 を持つ ことが分かった。

以上の点 を考 える と、 多 くの国語辞典が 「さっそ く」 の説明 に類義語 による 置 き換 えを用 い、用例 と して前提 を省略 した もの を載せて いるのは不親切で あ る といえる。 日本語 教師や 中、上級 の 日本語学習者の要請 に応 え られ るよ うな 優れた学習機能 を持つ 日本語辞典、国語辞典の出現が待たれる。

1) 前田 (2001) で も触れたよ うに、国語辞典の改良すべ き点 については、

国広哲弥 『理想の国語辞典』 (大修館書店、 1997)に詳 しく述べ られている。

改 良すべ き内容 に関 して、 日本語 教育 関係者 として も得心 のい くものば か りである。

2) 投野 由紀夫 (2000)は、 「日本 の英和辞典は世界中に類 を見ないほど語 法注記が充実 して いる。 」 と述べて いる。 同時 に、使 いやす さ、学習機能 とい う点で英 国の学習英英辞典 に大 きな影響 を及ぼ して きた 日本の英和辞 典ではあるが、 ここ

10

年程で、 コンピュー ター を駆使 した大規模 コーパス の利用 による英 国の学習英英辞典 の後塵 を拝す るよ うにな って きた とい う 指摘 もな されて いる。 いずれ にせ よ、我が国の英語 の辞書 は古 くか ら学習 機能の充実 に意 を用 い、それが本国の辞書編纂 に影響 を与 えた とい う事実 は注 目すべ きことである。

3) 日本語辞典、 国語辞典 の用語は、 日本語、国語 とい う用語 に対応 して使 用 して いる。すなわ ち、 日本語辞典は利用者 として 日本語学習者 を考慮 に 入れた辞書 であ り、 国語辞典 は従来通 り、 日本語 を母語 として いる人々を 対象 とした辞書である。

4)

ここで述べ られている 「意味の神髄」 とは、国広哲弥 『意味論の方法』 ( 修館書店、 1982)●や 『理想の国語辞典』 (大修館書店、1997)な どで繰 り 返 し説かれて いる 「意義 素」 に近 い概念である。筆者 は辞書 における言葉 の定義 には可能な限 り意義素の記述が必要である と考 える。

5) 赤野氏は用例 の役割 として、語義説明 を補足、補強 し、語 の意味の正確

(16)

で深 い理解 を学習者 に可能な らしめる 「受信型用例」 と、場面、文法、連 語な ど、語 の活用 に関す る情報 を総合的 に提示す る 「発信型用例」とをあ げている。 また、用例 は平易で、使用頻度 の高 い典型的な ものでなければ な らないと説いている。

6)

す ぐ」 と 「はや く」 の違 い、 「直ちに」 と 「立ち どころに」 と 「す ぐ」

との相違 について も記 されている。

7)

形容動詞 とい う呼称は実体 を表わ して いないので、学校文法、国文法で も使 うべ きではな い とい う持論であるが、 これ に変 る名詞形容詞 という名 称がまだ市民権 を得ていないよ うなのでそ のまま使用する。

参考文献

赤野 一郎

( 2000)

データ収集 をめ ぐる闘 い」 『月刊言語

』5

月号、大修館 書店。

国広 哲弥

( 1981 )

タチマチ ・スグ二 ・キ ュウニ」 言葉の意味』

3

、 ( 広哲弥編

、1 982 )

、平凡社。

倉島 節 尚

( 2000)

語数 をめ ぐるせ めぎ合 い

『月刊言語

』5

月号、大修館 書店。

島本

( 1 989 )

副詞用例辞典』、凡人社。

玉村 文郎

( 1995)

外 国人のための 日本語辞書構想」 『月刊言語

』6

月号、

大修館書店。

投野 由紀夫

( 2000)

使 いやす さをめ ぐる闘い‑英和辞典編

月刊言語』

5

月号、大修館書店。

土肥 一夫

( 1 995 )

ユーザーフレン ドリーな辞書の条件

月刊言語』

6

月号、

大修館書店。

飛田 良文 ・浅 田 秀子 (

1 994)

現代副詞用法辞典』、東京堂出版。

広瀬 正宜/庄 司香久子編

( 1 99 4)

『日本語学習使 い分け辞典』、講談社。

前 田 昭彦

( 200

1) 類義表現 の意味論的分析 ‑ 「そば」 と 「近 く」

‑ 」

崎大学留学生セ ンター紀要』第

9

号。

森 田 良行

( 1 989 )

基礎 日本語辞典』、角川書店。

森 田 良行

( 2000)

理想 との闘い

月刊言語』

5

月号、大修館書店。

(留学生セ ンター非常勤講師)

参照

関連したドキュメント

状態を指しているが、本来の意味を知り、それを重ね合わせる事に依って痛さの質が具体的に実感として理解できるのである。また、他動詞との使い方の区別を一応明確にした上で、その意味「悪事や欠点などを

の変化は空間的に滑らかである」という仮定に基づいて おり,任意の画素と隣接する画素のフローの差分が小さ くなるまで推定を何回も繰り返す必要がある

 地表を「地球の表層部」といった広い意味で はなく、陸域における固体地球と水圏・気圏の

式目おいて「清十即ついぜん」は伝統的な流れの中にあり、その ㈲

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

つの表が報告されているが︑その表題を示すと次のとおりである︒ 森秀雄 ︵北海道大学 ・当時︶によって発表されている ︒そこでは ︑五

歴史的にはニュージーランドの災害対応は自然災害から軍事目的のための Civil Defence 要素を含めたものに転換され、さらに自然災害対策に再度転換がなされるといった背景が

討することに意義があると思われる︒ 具体的措置を考えておく必要があると思う︒