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論 文 内 容 の 要 旨

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Academic year: 2021

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(1)

まつ もと

たか ひろ(1988323日)

氏 名(生年月日)

学 位 の 種 類 士( 学 位 記 番 号 160 学 位 授 与 の 日 付 2016319

学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当

学 位 論 文 題 目 メディシナルフラワーを素材として用いた新規生体機能性成分の探索 研究

論 文 審 査 委 員 (主査)

(副査) 西

(副査)

論 文 内 容 の 要 旨

はじめに

天然物からの生体機能性成分の探索研究は世界各国で盛んに行われており,医薬品シード化合物の 発見など,人類に大きく貢献している.加えて,クロマトグラフィーを用いた単離手法は長年に渡る 経験により効率化されている上,中でもHPLCを用いた分析,分離技術は近年大幅に進歩がみられる.

よって,最新の技術および蓄積された手法を応用した天然物からの医薬品シード化合物の探索は非常 に有意義であると考えられる.また,世界で最も高齢化の進んでいる日本において,予防医学領域に おける最終的な目標である抗老化作用を示す機能性素材やスキンケア剤の開発は社会的ニーズが高い.

そこで著者は伝承薬物の中でも特に研究例の少ないメディシナルフラワーを素材として用い,これま でに分離,精製されていない成分の単離および構造解析を行うとともに,それらの成分のメラニン生 成抑制作用等の構造活性相関を明らかとすることで新規生体機能性の開拓を指向した医薬品シード化 合物の探索を行った.

1. イランイランノキ (Cananga odorata) 花部における生体機能性成分の探索

バンレイシ科植物イランイランノキ (C. odorata) 花部は古来,タイ伝承薬として,降圧,鎮静薬等 に用いられてきた.含有成分としては,フェニルプロパノイド,アルカロイドおよびセスキテルペン 類などが知られている.また,これまでにイランイランノキ葉部含有成分について数多く報告されて いる一方で,実際に伝承薬として用いられている花部含有成分に関する報告は少なく,含有成分の生

1 1b: R1 = Glc, R2 = H

1c: R1 = H, R2 = H 1d: R1 = H, R2 = Me

OH OHOH HO

1) H2, Pd-C 2) NaBH4

hesperidinase

NaOMe O

O

OH OR2 O

OH R2O R2O

O

OR1

OCH3 O

OCH3 H3CO

H3CO H3CO

O 1e OH

HO

1f +

R1O (from 1d)

TMSCH2N2 O

O

OH OH O

OH HO HO

O

OGlc

GlcO OHC

CHO

OHC

H OH

O H O

OH

HO O

OMe

OMe R

3: R = H 4: R = OH 5: R = OMe Glc = β-D-glucopyranoside

H OH

OHC

6 7

O O

OH CHO

HO O

HO CHO HO

HO O OGlc

2 OGlc

O HO

H

O 8

H OH

H OHC OH

OHC OHC

H OH

H H

O

OHC

9 10 11 12

: IC50 (µM)

2.5 5.1 57.5

26.2

3.6

ca. 3

ca. 5

ca. 2

> 100

> 100

> 100

> 100

> 100

> 100

> 100 31.6

> 100

1. イランイランノキ花部成分 (1–12)と1の誘導化により得られた化合物の 化学構造およびメラニン生成抑制活性

(2)

体機能性評価は行われていない.そこで,含有成分の探索を行い,得られた成分のマウスメラノーマ

由来 B16 melanoma 4A5 細胞におけるメラニン生成抑制作用について検討を行った.その結果,15

の既知成分を単離,同定するとともに,2 種の新規リグナン canangalignan I (1), II (2) および6 種の新 規セスキテルペン canangaterpene I–VI (3–8) を単離し,各種誘導化を行うことでその構造を決定した (1).得られた成分の中では,テルペノイド類が細胞毒性を示すことなく有意なメラニン生成抑制作 用を示すことが明らかとなった.特に,4 [IC50: 3.6 µM], 9 [2.5 µM] および 10 [5.1 µM] には,比較対照 物質として用いたアルブチン [174 µM] と比べ,より低濃度で有意な抑制作用が認められた.また,

得られた成分において,種々の構造活性相関を明らかとした.

2. 蓮花 (Nelumbo nucifera, 花部) 含有成分におけるメラニン生成抑制作用の評価

ハス (N. nucifera) はハス科に分類されるインド,

中国原産の大型多年生水生草本であり,根茎はレン コンとして食用にされる他,その節部は止血薬とし て用いられる.また,その花部はベトナムなど東南 アジア地域で健康茶などの飲料素材として広く利用 されている.タイ産 (Khon Kaen province) 蓮花 (N.

nucifera, 花部) 抽出エキスにメラニン生成抑制作用

を見出したことから,花部および葉部含有成分の探 索を行った.また,構造活性相関研究を目的とし,

含有成分と類似した構造を有する種々のアルカロイ ド成分を簡便に合成し,そのメラニン生成抑制作用 について検討した.その結果,花部から 6 種の既知 アルカロイド (13–18) を単離,同定した (図2).そし

て葉部から花部と同様の 6 種の既知アルカロイド成分に加え,1 種の新規アルカロイド N-methylasimilobine N-oxideおよび6 種の既知アルカロイドを単離した.また,N 位にメチル基を有す るアポルフィン型アルカロイド 13 [IC50: 15.8 µM], 15 [14.5 µM], 16 [19.3 µM], および 18 [13.3 µM] 有意なメラニン生成抑制作用を示すことが明らかとなった.一方,14 [62.9 µM] は弱い活性しか示さ ず,17 [>100 µM] においてはほとんど活性が認められなかったことから,アポルフィン型アルカロイ ドにおいて,N 位のメチル基の存在は活性の発現に重要であることが明らかとなった.加えて,合成 により得られたイソキノリン型アルカロイド類についても,種々の構造活性相関を明らかとした.

3. 金針花における新規生体機能性成分の探索

ススキノキ科植物ワスレグサ花部は金針花と呼ばれ,東南アジアでは食用に用いられており,沖縄 では睡眠を改善する作用があると伝承されている.これまでにステロイドサポニンなどが単離,報告 されている一方で,高極性アミ

ノ酸誘導体に関する報告例は少 ない.そこで,高極性成分を重 点的に単離することで,これま でに生体機能性の報告がされて いない新規化学構造を有する機 能性成分が得られるのではない

かと考え,含有成分の探索を行 3. 金針花の新規成分の化学構造 (19–25) 19 ORTEP 2. 蓮花成分 (13–18) の化学構造と

メラニン生成抑制活性

N H3CO

H3CO CH3

N

O H3CO

H3CO

N CH3 HO

H3CO NH H3CO

H3CO

H

nuciferine (13)

lysicamine (17) N-nornuciferine (14)

H H

N-methylasimilobine (15)

N

O H3CO

H3CO CH3

N H3CO

HO CH3

H H

pronuciferine (18) ()-lirinidine (16)

: IC50 (µM)

15.8 62.9 14.5

19.3 > 100 47.9

N H3CO O

NH2 O

OH

O H3CO

N O

O HO

O N

OR2 O O R1O

N MeO

O O HO

N MeO

O O MeO

OH 22 R1 = H, R2 = Me 24

23 R1 = H, R2 = H 25

21 NH

CHO

20 O

19

19

(3)

った.その結果,7種の新規アルカロイドhemerocallisamine I–VII (19–25)を構造決定するとともに,7 の既知化合物の同定を行った. 中でもhemerocallisamine I (19) は類似した構造を有する化合物が報告 されていない珍しいアルカロイド成分であった (3).また,得られたヌクレオシド類が有意なPC12 細胞における神経分化促進様作用を,γ-ラクタム構造を有するアルカロイド類が凝集抑制作用を示 すことが明らかとなった.

総括

本研究により,イランイランノキ花部,蓮および金針花より計 16 種の新規化合物を単離するとと もに,絶対立体配置を含む詳細な化学構造を明らかにした.中でも,canangalignan I (1) および

hemerocallisamine I (19) は特有の構造を有する化合物であり,新規構造を有した医薬品シード化合物と

して有用であると考えられる.また,多様な構造を有する化合物においてメラニン生成抑制作用の検 討を行ったことにより,美白を目的とした化粧品や薬剤の開発において有益な知見となりうる様々な 構造活性相関を明らかとすることができた.

審 査 の 結 果 の 要 旨

天然物を素材とした医薬品シード化合物や新規生体機能性物質の探索を行うことは、医薬品や生体機 能性素材の開発において有用である。また、本邦は急速な高齢化社会を迎え、認知症、シワ、シミ等 の老徴への対応が強く求められている。申請者は、これまでに薬効解明が不十分であるメディシナル フラワー(薬用花)1) イランイランノキ (Cananga odorata) 花部 2) 蓮花 (Nelumbo nucifera, 花部) 3) 金針花 (Hemerocallis fulva var. kwanso, H. flava, H. minor) を素材とし、含有成分の単離および構造解析 を行うとともに、それらの成分のメラニン生成抑制作用等の構造活性相関を明らかとすることで新規 生体機能性の開拓を指向した医薬品シード化合物の探索を行った。

1) バンレイシ科植物イランイランノキ花部の含有成分の探索を行い、数種の新規リグナンおよびセス キテルペンを単離し、各種誘導化を行うことでその構造を決定した。得られた成分のマウスメラノー

マ由来 B16 melanoma 4A5 細胞におけるメラニン生成抑制作用について検討を行ったところ、

canangaterpene I [IC50: 3.6 mM] などのテルペノイド類が細胞毒性を示すことなく有意なメラニン生成

抑制作用を示すことが明らかとなった。これらの化合物は、比較対照物質として用いたアルブチン

[174 mM] よりも強い抑制作用を示した。また、含有する二環式セスキテルペン類のメラニン生成抑制

作用において、環上のカルボニル基の存在が活性の発現には必須であることや環の結合様式がトラン ス体であることが重要であることなど、構造と活性に関する知見が得られた。

2) ハス科植物ハス花部 (蓮花) から得られた種々のベンジルイソキノリンアルカロイド成分が有意な メラニン生成抑制作用を示すことを見出した。構造活性相関研究を目的とし、蓮葉のアルカロイド成 分の単離および種々のベンジルイソキノリンアルカロイド成分を簡便に合成し、そのメラニン生成抑 制作用について検討した。その結果、ベンジルイソキノリンおよびアポルフィン骨格が作用の発現に おいて必須であることやアポルフィン骨格の 2 位の酸素官能基が重要であることなど構造と活性に 関する知見が得られた。

3) ススキノキ科植物ワスレグサ花部(金針花)から、これまでに天然薬物からの単離報告例がない珍 しいグルタミン誘導体を単離し、X 線結晶構造解析などを駆使することでその立体構造を明らかにし

(4)

た。また、新規アルカロイドを含む十数種の化合物を単離するとともに、得られたヌクレオシド成分 が有意なPC12細胞における神経分化促進様作用を、g-ラクタム構造を有するアルカロイド類が Ab 凝集抑制作用を示すことを見いだした。

本研究は、3 種のメディシナルフラワー (イランイランノキ花部、蓮花、 金針花) からアルカロイ ド、セスキテルペンおよびリグナン類をはじめとする 16 種の新規化合物を単離し、各種スペクトル データの詳細な解析と化学的手法を適応した結果を考え合わせることによって絶対立体配置を含めた 化学構造を決定した。また、これらの成分にメラニン生成抑制作用などを有することを明らかにした ものであり、天然物化学分野をリードする研究として高く評価できる。

学位論文とその基礎となる報文の内容を審査した結果、本論文は博士 (薬学) の学位論文としての 価値を有するものと判断する。

参照

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