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(1)

岩医大歯誌 2011−15,1995

一 回積層充填による改良サンドイッチテクニック法について

澤口 恵美子*,寺田 林太郎,久保田 稔

         さわぐち歯科医院*

   岩手医科大学歯学部歯科保存学第一講座        (主任:久保田 稔 教授)

       (受付二1994年12月1)

        (受理:1995年2月10)

 Abstract二The purpose of this investigation was to evaluate the new sandwich technique Single Filling . This method is a modified sandwich technique to apply the composite resin directly onto noncured glass ionomer cement without an etching procedure. The tensile bond strength between the glass ionomer cementand the composite resin was measured using an Instron test machine to compare single filling with a conventional sandwich technique. The tensile bond

strength by single filling was lower than that by a conventional sandwich technique but there was

no significant difference between single filling and the conventional sandwich technique. The tensile bond strength between the glass ionomer cement and composite resin was greater than the cohesive strength of the glass ionomer cement.

 Key words:sandwich technique, tensile bond strength, single filling, glass ionomer cement,

COmpOSite reSin

 コンポジットレジン修復後の不快症状の発現 は,臨床においてしばしば経験される1)。その原 因は,コンポジットレジンに含まれる成分によ る化学的刺激および窩洞と修復物の隙間に発生 する微小漏洩などによる歯髄刺激とされてい る。このため臨床家は,歯髄刺激を常に念頭に 入れ,何等かの方法で歯髄刺激を防止する対策 を行っている。歯髄刺激防止法の一つに sandwich techniqueがある。この方法は,酸

処理を施さずに象牙質と接着するグラスアイオ ノマーセメントで象牙質部を封鎖した後に,グ ラスアイオノマーセメントとエナメル質を同時 に酸処理し,その上にコンポジットレジンを積 層充填する方法であり,歯髄刺激が少ないとさ れている23)。

 グラスアイオノマーセメントを酸処理する時 期に関して,McLeanら2)はグラスアイオノ マーセメント練和開始5分後,安元ら3)は6分 後と報告してる。いずれの報告も,グラスアイ

オノマーセメント練和開始から比較的短時間で

The study of single filling for sandwich technique.

Emiko SAwAGucHI*, Rintaro TERATA, and Minoru KuBoTA

(*Sawaguchi Dental Clinic,2249−1,Nishisansai, Nagano,381 Japan.)

(Departmet of Operative Dentistry and Endodontics, School of Dentistry, Iwate Medical University, Morioka,020 Japan.)

岩手県盛岡市中央通1丁目3−27(〒020)        DθηLノ∫ωαεεM砿〃η 〃.20:11−15,1995

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酸処理が行われている。しかし,グラスアイオ ノマーセメントは練和開始から20〜25分以内 では極めて水に対して敏感であり,酸処理およ びその後の水洗により感水することが報告され

ている4−6)。

 著者らはそこで,従来のサンドイッチテク ニック法を改良し,グラスアイオノマーセメン トを酸処理なしでコンポジットレジンと接合さ せる方法を試みた。すなわち,事前にエナメル 質を酸処理した後,グラスアイオノマーセメン トを充填し,グラスアイオノマーセメント硬化 前にボンディング材を塗布しコンポジットレジ

ンを填塞する方法(以後,一回積層法と称す)

である。

 本研究においては,基礎的試験としてグラス ァイオノマーセメントの硬化時間をJIS T 6601に準じ測定すると共に,一回積層法と sandwich techniqueにおけるグラスアイオノ マーセメントとコンポジットレジンの接着状態 を引張り試験にて比較検討した。

実験材料ならびに方法 1.実験材料

実験に用いた材料をTable 1に示す。グラス アイオノマーセメントは充墳用のGC社製フジ アイオノマータイプH一種類と,コンポジット

Table l Tested materials

Materials Manufactures Batch number Fuji ionomer

typen

GC Co., Tokyo,

Japan

Powder 310771 Liquid 220871

Silar 3M, St. Pau1,

MN, USA

7B6

Silux 3Rl

Scotchbond 7AE

レジンはいずれもMFR型で3M社製の化学重 合型Silarと光重合型Siluxの二種類を用い た。ボンディング材は3M社製のScotchbond を用い,製造業者社指示に従って使用した。

2.グラスアイオノマーセメント硬化時間測定  グラスァイオノマーセメントの硬化時間測定 は製造業者社指定の粉液比および練和方法によ

岩医大歯誌 20:11−15,1995 り練和したセメント泥を用い,JIS T6601に準 じて行った。試料数は5個で,実験は室温24±

2.0℃,相対湿度57±2%で行った。

3.引張り接着試験

 グラスアイオノマーセメントとコンポジット レジンの接着試験は,一回積層法によって充填 されたSilar群(以下SR群と略す)とSilux 群(以下SX群と略す), sandwich technique Table 2 Classification of experimental groups

Code ResinGlass ionomer cement Filling method SR Silar

Fili ionomer type n Single filling

SR−E Silar

Fiji ionomer type H

Sandwich

  technique

SX Silux

Fiji ionomer type H Single filling

SX−E Silux

Fiji ionomer type n

Sandwich

  technique

によって充填されたSilar群(以下SR・E群と 略す)とSilux群(以下SX−E群と略す)の4 群について行った。試料数は各群10個で,総計 40個にっいて接着試験を行った(Table 2)。

 接着試験体は,アンダーカットを有する内径 6mm,深さ3mmのプラスチックモールドにグラ スアイオノマーセメントを製造業者社指示に従 い,40秒練和後上面が可及的に平坦になるよう に練和開始から2分以内で填塞し,下部構造と した。マスキングテープで接着面積を規定した

R;co叫x)sitθresln I;91ass ionomθr cement

Fig.1 Schema of tensile bond strength test

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岩医大歯誌 20:11−15,1995

接合部内径4.0皿の金属金型にコンポジットレ ジンを填塞した上部構造を,接合面が引張り方 向に対して直角になるように接着させた

(Fig.1)。

 一回積層法においては,グラスアイオノマー セメント填塞後セメント表面にbonding材を 塗布した。化学重合レジンを用いるSR, SR−E 群では,レジンを練和しレジン泥を金属金型に 墳塞し,接触面に気泡を生じないようグラスア イオノマーセメント表面に軽圧にて重ね接合し た。光重合レジンを用いるSX, SX・E群では,

金属金型にコンポジットレジン泥を填塞し,重 ねた状態で2分間放置した後に,光照射を60 秒行ないレジンを硬化させた。sandwich techniqueにおいては,グラスアイオノマーセ メントを填塞し,練和開始4分後に3M社製の Scotchbond etching gelを用い,60秒間酸処 理を通法に従って行いレジン填塞を行なった。

各試片は37℃水中に24時間保管し,その後引 張り試験に供した。

 Fig.1に突き合わせ接着引張り試験法の略図 を示す。接着試片はユニバーサルジョイントを 介し,インストロン万能試験機1123型を用い てcrosshead speed毎分0.5㎜にて引張り試験 を行なった。なお,測定結果はStudent・t検定

(p<0.05)により統計学的分析を行った。

4.破断面観察

 接着試験後の破断面状態は,Wild社製実態 顕微鏡M7Aで拡大倍率300にて破断後の接合 部を観察し,破断様式を識別した。

実 験 結 果

1.グラスアイオノマーセメントの硬化時間  JIS T6601に準じた方法で測定したフジァ

イオノマーセメントタイプ皿の硬化時間は,

3.83±0.35分であった。

2.引張り接着試験

 引張り試験の結果をTable 3に示す。一回積 層法群とsandwich technique群を比較する と,いずれのレジンを使用した場合でも一回積 層法群はsandw輌ch technique群に比べ7.4〜

20.5㎏f/(㎡小さい接着強さを示したが,統計 学的な有意差は認められなかった。また,一回 積層法群とsandwich technique群のいずれの 条件下でも化学重合型レジンSilarを使用した 群が,光重合型レジンSiluxを使用した群より

Tab]e 3 Tensile bond strength Experimental     Bond strength  groups   (㎏f/c㎡, Mean±SD, n=10)

SR

55.6±22.4

SR−E

63.0±28.5

Mean values with vertical lines are not

significantly different at p<0.05.

も18.2〜31.3㎏f/c㎡小さい接着強さを示し,

SRとSX間には統計学的有意差は認められな かったが,SR−EとSX−E間には統計学的な有 意差を認めた。

3.引張り接着試験後の破断面観察

 各群の破断面状態をTable 4に示す。いずれ の群においてもグラスアイオノマーセメント自 Table 4 Number of classified failure surface

Experimental Interface Cohesive  Mixed  groups   tal failure  failure    failure

SR 0 9

1

SR−E 0 9

1

SX 0 10 0

SX−E 0 10 0

(n=10)

体の凝集破壊が大半を占め,接合部の界面破壊 は1例も認められなかった。また,一回積層法 とsandwich technique法による破断様式の違 いは観察されなかった。

 コンポジットレジン修復に伴う歯髄刺激を軽 減する目的で,グラスアイオノマーセメントを 裏層材に用いてコンポジットレジンを直接象牙

質に触れさせないで充填するsandwich

techniqueが推奨されている23)。しかし,この 方法では,グラスアイオノマーセメントの感水

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期間中に接着操作の一部である酸処理,水洗を 行わなければならない。グラスァイオノマーセ メントは練和開始後20〜25分以内では水に対 して極めて敏感であるとの報告もあり4−6),

sandwich techniqueにおけるグラスアイオノ マーセメントの感水は避けられないものと推測 される。小山田7)は,sandwich techniqueにお いてコンポジットレジンとグラスアイオノマー セメントの界面に白濁したポーラスな感水層の 存在を確認している。本研究では,グラスアイ

ォノマーセメントを酸処理を施さずに

sandwich techniqueを行うことができないも のかと考え,グラスアイオノマーセメント硬化 前にコンポジットレジンを充填する一回積層法 を考案し,従来までのsandwich techniqueと 比較検討した。

1.グラスアイオノマーセメントの硬化時間  一回積層法ではグラスアイオノマーセメント

練和開始2分後にレジンを填塞し,sandwich techniqueではセメント練和開始4分後に酸処 理を行ってレジンを填塞した。フジアイオノ マーセメントの硬化時間は3.83±0.35分で あったので,一回積層法群はグラスアイオノ マーセメント硬化前にレジンが充填され,グラ スアイオノマーセメント硬化後にコンポジット レジンが填塞されたsandwich technique群と の比較検討は可能であると考えられる。

2.引張り接着試験

 化学重合,光重合型のいずれのコンポジット レジンを使用した場合でも,一回積層法群は sandwich technique群に比べ小さい接着強さ を示していた。一回積層法はグラスアイオノ マーセメント硬化前にコンポジットレジンを填 塞するためsandwich techniqueに比べて填塞 圧を充分加えることができず8),このことが両 材料間の密着性を弱めたものと考えられる。

 硬化終了後のグラスアイオノマーセメントに 直接コンポジットレジンを充填しても全く接着 性を示さないことは,安元ら3)の報告や予備実

験において確認されている。sandwich

techniqueにおける接着機構は,酸処理により

岩医大歯誌 20:11−15,1995 グラスアイオノマーセメントの表面が粗造化し そこにレジンが侵入硬化して物理的に接着する ものと考えられている蜘。一回積層法における 接着機構は,未硬化のグラスアイオノマーセメ

ントとbonding材が接するためグラスアイオ ノマーセメント泥中のカルボキシル基と bonding材中の反応基が水素結合,あるいは静 電気的なイオン架橋反応を起こし結合力を生じ る可能性がある。また,bonding材がリン酸エ ステル系で低いpHである11・12)ため,グラスア イオノマーセメント表面が溶解され機械的結合 力を発揮することなどが考えられる。

 一回積層法群とsandwich technique群の接 着強さには統計学的な有意差が認められず,両 者の接着力がほぼ同程度であった。それゆえ,

著者らが考案した一回積層法は臨床において も,従来のsandwich techniqueと何等遜色が 無いものと考えられる。

 一方,充填するコンポジットレジンの重合様 式の違いにより,一回積層法群とsandwich technique群のいずれの条件下でも化学重合型 Silarを使用した群が,光重合型レジンSilux を使用した群よりも小さい接着強さを示した。

これは,光重合型レジンは練和する必要がな く,化学重合型レジンと異なり気泡の混入が最 小限に抑えられることによるものと考えられ

る。

3.引張り接着試験後の破断面観察

 いずれの群においても接合部の界面破壊は1 例も認めらず,グラスアイオノマーセメント自 体の凝集破壊が大半を占あていた。これらの結 果より,いずれの方法においてもグラスアイオ ノマーセメントとコンポジットレジンの接着強 さは,グラスアイオノマーセメント自体の凝集 力よりも強いことが判明した。従って,使用す るグラスアイオノマーセメント自体の物性がグ ラスアイオノマーセメントとコンポジットレジ ンの接合修復時には問題となり,グラスアイオ ノマーセメントの選択には十分注意する必要が あるものと思われる。

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岩医大歯誌 20 11−15,1995

 著者らの考案した一回積層法におけるレジン とグラスアイオノマーセメントの引張り強さ は,sandwich techniqueよりノ]、さかったが,

統計学的には有意差が認められなかった。ま た,一回積層法とsandwich technique法によ る破断状態においても違いは観察されなかっ

た。以上の結果,一回積層法は従来の

sandwich techniqueの治療時間を短縮し,酸 処理過程の省略を可能とする新しい充填方法と なりうるものと考えられる。

1)安藤良彦,佐藤保,久保田稔:レジン修復後の歯 髄死に関する臨床的研究,日歯保誌,27:899−

904, 1984.

2)McLean, J. M., Powis, D R., Prosser, H. J.&

Wilson, A. D.:The use of glass−ionomer ce−

ments in bonding composite resins to dentine,

Br. Dent. J.158:410−414, 1985.

3)安元重実,木村昌美,齋庸雄,福光保之,河喜多 伸一,寺下正道,長野三代太:グラスアイオノマー セメントとコンポジットレジンによる接合修復一 接合修復材としてのグラスアイオノマーセメント の評価,日歯保誌,29:856−865,1986.

4)斎藤季夫:グラスアイオノマーの性質と臨床一  その1一硬化反応と水分との関係について;国際  歯科ジャーナル,8:458−468,1978.

5)子田晃一,川崎傳男,鞍立曉則,細田裕康:グラ  スァイオノマーセメントの白濁に関する研究,日  歯保誌,23:584−590,1980.

6)斎藤季夫,広田一男,赤羽正治:改良グラスアイ  オノマーの感水性について,日歯保誌,30:92,

 1987.

7)小山田勇樹:グラスアイオノマーセメント裏装  を施したコンポジットレジン修復の色素浸透性,

 日歯保誌,32:1523−1533,1989.

8)奥谷謙一郎:接着性コンポジットレジン修復に  おける象牙質接着強さと辺縁微小漏洩,日歯保誌,

 29 :879−889, 1986.

9)Sheth, J. J., Jensen, M. E., Sheth, P. J.&Verst−

 eeg, J.:Effect of etching glass−ionomer cements  on bond strength to composite resin, J. Dent.

 Res.68:1082−1087,1989.

10)Hinoura, K., Suzuki, H., Yoshimura. J.&Onose,

 H.:Factors of glass−ionomer cements influenc−

 ing the bond strength to resin composites, Dent.

 Mater.6:94−98,1990.

11)岡本明,小林裕二,岩久正明:ボンディング材の  象牙質における挙動一pHとその影響について一,

 日歯保誌,31:1013−1018,1988.

12)横田若生,今里聡,鳥居光男,土谷裕彦:各種光  重合型コンポジットレジン充填物の細胞毒性一特  にボンディング層の影響にっいて一,日歯保誌,

 35 :433−139, 1992.

参照

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