序
本資料の目的は気象庁が提供する「気象統計情報J の気温データを用いてわが国の平均気温 の経年変化の特徴を統計的に調べることにある。
しかし気分としては、大気中のCO2濃度が"地球温暖化"の主因であるというIPCC (気候
変動に関する政府間パネル)の見解が絶対真理であるかのように扱われ、国を挙げて思考停止 に陥っている感のある現状1‑のささやかな抵抗である。世界に目を転じると温暖化やCO2主
因説に対する懐疑論も広く報じられ、そして論じられている。例えばBBCのWebsite2でもCO2 主因説に対する読者の賛否両論が掲載されている。 Newsweek(日本版) (2010.3.10, pp22‑25)によると「クライメート(気候)ゲート3」事件の発覚や地球の急激な温暖化を強調した「ホッ ケースティックグラフ4」の誤りの発覚などが続き、米国では気候変動が自然の変動によると考 える国民の割合が人為的原因によると考える国民よりも多くなったことを伝え、さらに「気象
問題は研究結果次第で何億ドルもの国家予算が動くほど政治化しているため科学的な客観性を 保つのが難しい」との見方を示している。この科学の政治化こそ温暖化議論の最大の欠陥であ るにも拘らず、何故かわが国の環境問題の専門家、主要なマスコミ、政治家はそれを公に論じ るのを避けてきた。結果、社会には上述した真理が定着したかに見えるが、同時に温暖化関係 の批判本や批判記事‑の根強い需要が存在する。このことは賢明な国民が温暖化議論に何か肺
に落ちないものを感じていることを示している。本稿は気象学や気候学の理論からIPCC ‑の反論を試みるものではないし、その能力もない。
専門家でもなければ、わが国の気温変化の実態を知る人はほとんどいないであろう。筆者もそ
の一人であった。 100年後の気温を心配するなら、せめてわが国の気温がどのような変化をた どり、また近年はどのような状況にあるのかを確認しておくことは意味のある作業だと考える。平成23年6月
兵庫県立大学経済学部 教授 植野和文
([email protected]‑hyogo.ac.jp )
1桜井よしこ『地球温暖化の詐欺を暴く』文峯春秋, 2009,5, p296‑305 2 http ://www.bbc.co.uk/search/news/globaLwarming̲debate
3英米の研究者らが、地球が温暖化していることを示すデータを担造したとされる騒ぎ。
4古気候に基づき見積もられた気温データに対して、過去の気候変動を過小評価するためにデータが改窟されていたので はないかという疑惑をめぐる論争のこと。気温変化のグラフの形状がホッケーのスティックに似ていることからそう呼ばれた。
IPCCの第三次報告書では重視されたが、第4次報告書では使用されなかった。