修士論文
球面上のフー リエ解析 と偏微分方程式‑ のその応用
三重大学大学院教育学研究科 教科教育専攻 数学教育専修
No.208MO22 山本智紀
2010年2月15日
目次
概要 1 序章
2 フー リエ級数
2.1 複 素 フー リエ級数
2.2 フー リエ級数展 開で きる関数 2.3 平均2乗誤 差
2.4 補足
3 一般化 フー リエ級数
3.1 フー リエ級数 と線形代数 3.2 内積 空間 と基底
3●.3 ヒルベル ト空 間
3.4 正規 直交基底 と一般化 フー リエ級数 3.5 直交分解 定理
3.6 補足 4 直交関数系
4.1 い ろい ろな直交 関数 系 4.2 ル ジャン ドル 多項式系 4.3 ラゲ‑ル 陪多項 式
4.4 d次元球面調和 関数 (球 関数) 4.4.1 関数論 的 にみた フー リエ級数
4.4.2 球面調和 関数 と球面上の ラプ ラス作用素 4.4.3 球面上 の熱 方程式
謝辞 参考文献
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概要
フー リエは関数 を記述す る関数系 として三角関数系を発 見 したが,現在,関数 を記述できる関数系は さま ざまなものが発見 されてい る.その中で も球面上の関 数 を記述できる球面調和関数系に注 目し,偏微分方程式 に どのよ うに利用できる かを調べた.
1 序章
この論文は球面上のフー リエ解析 と偏微分方程式‑の具体的な応用についてであ る・フー リエは関数 を記述す る関数系 として三角関数系(sink7TX,COSk7TX)(ある いは(eikxI)があることを発見 したが,関数 を記述できる関数系はこれだけではな い・た とえば,ト1,1]上の関数 を記述す るル ジャン ドル多項式系,(‑∞ ,∞)上の 関数 を記述す るエル ミー ト関数系,(0,+∞)上の関数 を記述す るラゲ‑ル関数系, 球面上の関数 を記述す る球面調和関数系,(‑∞,∞)上の関数 を記述す るウェーブ
レッ ト関数系な どがある.この中で も特 に球面調和関数系に注 目し,具体的な応 用例 も調べた.
まず,第1章では,フー リエ級数展開の収束 について簡単にま とめてある.本 論文では複素系のフー リエ級数 を用いるので, この形の展開になっている.
第 2章では,フー リエ級数 の理論 をヒルベル ト空間上に一般化す る.そのため に無限次元のベ ク トル空間についても述べてある.この章 を通 して一般 の正規直 交基底 を用いたフー リエ級数展開が可能であるための必要十分条件 が得 られ る.
第3章では,teinx)n∈Z以外 の正規直交基底 を紹介す る・ここでは具体的に,ル ジャン ドル多項式, ラゲ‑ル陪多項式,球面調和関数 をとり挙 げた.球面調和関 数 については細か く述べてある.そ して最後に,球面調和関数 による展開の具体 的な応用例 として球面上の熱方程式 を とり上げた.この例 を通 して,球面調和関 数 による展開の有用性がみ られ るはずである.
2 フー リエ級数
2.1 複素 フー リエ級数
本論文 では主 として複素形 の フー リエ級数 を扱 うので,複 素 フー リエ級数 につ いての基本事項 をま とめてお く.
fはR上で定義 され た周期21の関数で,
/
̲llJf(x)ldx<∞ (2.1)を満た してい る とす る・本論文ではルベー グ積分 を仮定 してい るので,(2.1)が成 り立っ ことは,fが[‑i,I)で積分可能であることを意味す る.W‑7T/lとお く.こ の とき,f(I)eikLJXもトl,I)で積分可能であるか ら,
ck(I)‑u̲llI(i)eikwtdi (2.2)
が定義でき,ck(i)をfの複素 フー リエ係数 とい う.収束す るか どうかは考 えず に, 形式的に次の よ うな級数 をつ くる :
00
∑ ck(f)eikwx・ (2・3)
た=‑oo
この形式的な級数 をfのフー リエ級数の複素形,あるいは単 にfの フー リエ級数 と いい,(2.3)がJのフー リエ級数 であることを,記号
(X)
f(I)〜 k∑=‑(x)ck(f)eikwx
によって表す.一般 に,(2.1)の条件 だけか らは
00
f(x)‑k∑=‑(x)ck(i)eikwx
(2.4)
が成 り立っ とは結論 で きない・では, どの よ うなfに対 して(2.4)の両辺 は等号で 結 ばれ るか, この こ とを以下でみてい く.
2.2 フー リエ級数展開できる関数
fをR上で定義 され た周期 21の複素数値 関数 とす る・fがトl,I)上で積分可能 である とき,LJ‑7T/‖二して,
〟
sNlf](I)‑∑ck(I)eikwx (N‑0,1,2,・‑)
k=‑N
(2.5)
とおき, これ をJの第 Ⅳ フー リエ部分和 とい う.
もし,x∈トl,i)で lim sN[f](I)‑f(I)が成 り立っているとき,fのフー リエ
Ⅳ ぅ (X)
級数はJに∬で収束 しているとい う.これは,Jが∬でフー リエ級数展開可能であ ることに他 な らない.
本節では,
「どのようなJがすべての点∬∈上目 )でフー リエ級数展開できるか」
を考えてい く.
フランスの数学者J.B.I.Fourier(1768‑1830)はすべての関数がフー リエ級数展 開可能であると考 えていた. しか し,この考 えは正 しくはなかった.た とえば次 のよ うな関数 が知 られている
(1)周期21の連続関数fでsNlf](0)が発散す るよ うなものが存在す る.(duBois‑ Reymond,1876年).
(2)E⊂ トl,i)をトl,l)の中に含まれ る有理数全体のなす集合 とす る. この と き,周期21の連続 関数Jで,すべてのx∈Eに対 して
limsuplsNlf](I)I‑ ∞
Ⅳ一十()〇 (2・6)
となるものが存在す る(Kahne,Katznelson,1965年).
(3)fが周期21でトl,i)上でルベーグ積分可能で も,いたるところで(2.6)が成 り立っ よ うなものが存在す る(Kolmogolov,1923年)・
ゆえに,一般 の連続 関数 をすべての点でフー リエ級数展開す ることはあき らめ なければな らない. しか し,点∬で次のよ うな条件が満た されていれば,∬でフー
リエ級数展開が可能 になる.
定理 2.1.fをR上の周期21の連続 関数 とす る・ もしある点x∈[‑I,i)で
I(I+h)‑
I
(x )
dh<∞が十分小 さな ∂>0に対して
成り
立っているならば,l i
msNlf](x)‑I(x)・Ⅳ
1∞(2・7)
(2・8)
この定理 を証明す るために,ベ ッセルの不等式 を証明す る.まず はベ ッセル の 不等式の証明で用い る基本公式 をあげてお く.
命題 2.1.
u ̲lleikwxdx‑日 詰≡ 訂 ,士2,i3,・・・),
証明.k‑0の ときは明 らかである.k≠0の ときは,y‑wxと変数変換 をす るこ とによ り,
eikwxdx= 1
27T 1
27T
r qeikyd y
rqcos(ky)d y ・i左 上 sin(ky)dy ‑0
を得 る.
補題 2.1.(ベ ッセルの不等式)fをR上の周期21の関数 で,トl,i)上で2乗可積 分,す なわち
曝 L f ( I )
t2dx<∞を満 たす もの とす る. この とき,fの複素 フー リエ級数ck(f)は
k星 ・ck(I).2≦ a ̲ll.I(I)・2dx
を満 たす.
(2・9)
(2.10)
証明.軸【月とJとの差 の積分 を評価す ると次の よ うに して求 める不等式が得 られ る.
0<‑1
‑21 lsNlf](x)‑ f(I)l2dx
a ̲ll(IsNlf](x)L2・If(x)I2‑2Re(sNlf](x)77g )dx・ (2・11) ここで,
1
函
一方,
/̲ll,sNlf,(I,・2dx ‑a̲ll (kfNCk(f,e
i k w
xl (kfNCk(I,eikuxldxck(I)ck,(I)
ck(I)ck(I)‑
;.̲tl
ei(k‑k′)wxdx
∑ 〟
Lck(I)12<∞・k=‑N
u ̲llSNl f ]
〟
(I )爾 d x ‑ ∑ ck(I)
k=‑N 爾 eikwxdx
Ⅳ
k∑=‑Nck(I)ck(f)
〟
∑ Ick(I)I2<∞
k=‑N
である.以上の式 を(2.ll)に代入 してまとめると
O
‑ <a
̲ll.I(x).2dx‑kfNlck(I,[2を得 る.ここでNJ (刃 とすれば,ベ ッセルの不等式が導かれ る.
ベ ッセルの不等式のひ とつの帰結 として次が得 られ る.
系 2.1.fをR上の周期21の関数で,[‑i,i)上で2乗可積分であるとす る.この とき,
limck(I)‑lim IklJ∞ nJ∞
inh‑+m00
I(x)si
n n w
xdxI(I)cosnLJXdx‑0.
証明・fl(x)‑Ref(I),f2(I)‑Imf(I)とお く・If3・(I)1≦げ(x)I(i‑1,2)である か ら,
/̲lllfj(I)[2dx≦/̲lllf(‑ <‑
が成 り立ち,各 f()○ jが2乗可積分であることがわかる・ したがって,ベ ッセルの不 等式 より,k∑=‑(x)lck(fj)[2<∞ が成 り立つ・この級数 は絶対収束 しているので,
00
lco(fj)I2+∑k=1(lck(fj)t2+ic‑ k(fj)t2)
1im(Ick(fi)I2+Ic̲k(fi)12)‑o kJ(X)
lim
図1∞lc鵡 )l2‑0
と表せ る.ゆえに,
つま り,
でなければな らない. したがって,
f
j(i)sinkwtdilim ck(f3・)‑0となる・また, 囲う∞
fj(i)coskLJidt であるか ら, これ よ り求 める系を得 る.
以上のことをふまえて,定理の証明にとりかかる.
̲
<lck(fj)I
定理2.1の証明.証明の方針は,sNlf](I)がこれか ら定義す るデ ィリク レ核 とよば れ るある関数DN(I)によ り,
sNlf](I)‑ DN(x‑i)f(i)dt (2・12)
と積分で表せ ることを示 し,次に,sNlf](x)‑i(I)の大きさをこの積分 を使 った 不等式にもち込んで評価す るとい うものである.まず はDN(x)を求めることか ら 始める.
〟
sNlf](x)‑ ∑ ck(I)eikwx
k=‑N kf N去 /̲llI(i)e‑ikwtdi・eikwx
去/̲ll(kf N eikw(x弓 f(i)di・ したがって,
〟
DN(x)‑∑ eikwx
k=‑N
とすれば,これが求めたかったものであ り,ディリク レ核 とよばれ る関数である.
ここで次の二つの ことを証明 してお く :
去 /̲llDN(x‑i)dt‑u̲llDN(i)dt‑1, (2113)
DN(i)‑ sin(N+喜)Lot
(2.14) (2.13)の一番 目の等号は,DNが周期21の関数であ り,DN(‑i)‑DN(i)である ことか ら,
u̲llDN(x‑i)di‑a̲ll‑̲XxDN(i)di‑u̲llDN(i)dt・ 二番目の等号は,次のように計算する.
/̲llDN(i,di‑kf Nu ̲lleikwtdi‑1・ (2.14)は少 し技巧的な変形 を用いて証明す る :
DN(i)‑e‑iNwt(1+eiwt+・・・+C2iNwt)
‑e‑iNwt
‑ e‑iNwt
1‑ei(2N+1)wt
1‑eiwt
1‑ei(2N+1)wt
eiwt/2(e‑iwt/2‑eiwt/2) e‑i(N+1/2)wt‑ei(N+1/2)wt
e‑iwt/2‑eiLJt/2
sin(N+喜)Lot (2.13),(2.14)を使 って,
sNlf](I)‑I(x)う0 (Nう∞)
を証 明す る.(2.13)よ り,
sNlf](I,‑f(I,‑u̲llDN(I‑i,I(i,dt一去/̲llDN(t,di・f(I,
FluJhu″r古了・古lt別ll別
DN(i)(I(I‑i)‑I(x))di sin(N+喜)Lot
sin
f(x‑i)‑f(x)
wi
sill‑{
g(i)
ここで,
とおく. 回 が 十分小さいとき ,
が成 り立っか ら,定理 の条件 (2.7)よ り,
/
̲66,g(t, I2dt‑/̲66・/̲66
(I(I‑i)‑ I(x))dt・
LJltl
>‑4
ある∂>0が存在 して,
lf(I‑i)‑I(x)I2
I(I‑i)‑I(I) 16
dt・誘く∞・ また,Ig(i)l2は非負値 可測 関数 だか ら,
/̲llLg(i,I2dt‑ I :6lg(i,.2di・/̲66,g(i,I2dtILl.g(i).2dt<‑
が成 り立つ.したがって,a(i)は [‑i,i)で 2乗可積分である・
さて,三角関数 の加 法定理 を用いることにより,
sNlf](‑ (I,‑ 紀 llSin(N +去)wt・g(i)dt
11割+
である. ここで,g(i)がトl,i)で2乗可積分である COS‑wt
2 Lot
Sln‑2・g(i) LJi
となり,cosす・g(i),sin より,
wf 2
了古
的lg(i)12dt<∞ ,
Ig(i)l2df<∞
g(i))dt
・g(i)もトl,i)で2乗可積分.ゆえに,先に示した系 fllSinNwt(cos等・g(i))dt‑0 (N‑‑),
/̲llCOSNwi(sin等・g(i,)di‑ 0 (N‑‑)
を得 る. よって,
sNlf](x)‑f(x)10 (Nぅ∞).
□ 次に,フー リエ級数が絶対かつ一様収束す るための一つの十分条件 を示 してお く.
定義 2.1.(ヘルダー連続性) α>oとし,JをR上の関数 とす る・JがR上で一 様 にα次ヘルダー連続であるとは,ある正定数M が存在 し,すべての x,y∈Rに 対 して,
lf(x)‑I(y)l≦Mlx‑ylα (2・15)
が成 り立っ ことである.
任意のE>0に対 して,6‑(E/M)1/αとすれ ば,lx‑al<6を満 たすすべての
∬に対 して
If(x)‑I(a)l<̲Mtx‑alα<E
が成 り立っか ら,一様 にα次‑ル ダー連続 な関数 は連続 関数 である. さらに次の ことが成 り立つ.
命題 2.2.fを周期21の関数 とす る.
(1)0<α<β≦1とす る・Jが一様 にβ次‑ル ダー連続 な らば,一様 にα次‑
ル ダー連続である.
(2)JがC1級 関数 な らば,一様 に1次‑ル ダー連続 である・
(3)Jが一様 にα次‑ル ダー連続 な関数 とす る・α>1/2であれ ば,Jはすべて の点∬で条件(2.7)を満 たす.
証明.(1)fが周期21であることか ら,任意 のx,y∈Rに対 して,ある x',y'∈ 上目 )が存在 して,
f(I)‑f(x'),f(y)‑I(y'),Lx'‑y'J≦lx‑yl
を満たす.また,x',y′∈トl,i)に対 して,
lx'‑y'l
であるか ら,
が成 り立 ち, したがって,
を得 る.以上 よ り,
匝 ′‑y'Iβ ≦(21)β‑α匝′‑ y'Ia
If(x)‑f(y)I‑げ(x')‑I(y')l≦Mlx'‑yllβ
≦(21)β‑αMIx'‑y′lα≦(21)β αMIx‑ylα.
よって示 された.
(2)JはC1級 関数 よ り,J′はト刷 上で連続 であるか ら有界関数 である・ した がって,任意 のx,y∈Rに対 して,積分の平均値 の定理 よ り,あるC∈Rが存在
して,
Tf(x)‑I(y)l‑
‑If'(C)IIx‑yt
≦ suplf'(i)=x‑yl.
綻トl,i)
以上 よ り結論 を得 る.
(3)α>1/2の とき,十分小 さい∂>0に対 し,積分の収束性
より, I(I+h)‑I(x)
2dh≦/̲66M2.h,2(a‑1)dh
九2(α‑1)助 <∞
M2h2(α‑1)dh<∞ .
ここで,次の定理 を証明す るために必要 となる優級数定理 を示 してお く.
定理2・2・(優級数定理)I上で定義 された関数列00 (fn(x))に対 し,次の(i),(ii)を満 たす定数an(n‑1,2,‑ )が存在すれば,∑ fn(I)Eまある関数 に一様収束す る・
n=1 (i) If0n0(x)I≦an (x∈I),
(ii) ∑ anは収束す る・
n=1
証明・Eを任意に与え られた正の数 とす る.この とき,(ii)よ り,あるN >0が存 在 し,
m,n>N⇒ lam+1+am+2+・・・+anI<E を満たす.ゆえに,
m,n>N⇒ Ifm+1(x)+fm+2(x)+・・・+fn(I)I
≦lfm+1(I)I+Ifm+2(x)I+・・・+tfn(x)I
≦am+1+am+2+・‑+an<E となるので,題意は示 された.
定理 2.3.1/2<α≦1とす る.fがR上の周期21の一様 にα次‑ル ダー連続な 関数な らば,sNlf](I)はf(I)にR上で一様絶対収束 してい る・
証明.優級数定理 よ り (X)
∑ lck(f)l<∞
k=‑(x)
を示せば,定理が証明 され る・p(I)‑f(x+h)‑I(x‑h)とお くと, ck(p)‑a̲llI(叶ikw(x‑h)‑e‑ikw(x+h))dx
‑ck(f)leikwh‑e‑ikwh]‑2ick(I)sinkLJh.
ベ ッセルの不等式 と(2.15)よ り,
kを 2ick(I,sinkwh・2≦ u ̲ll・p(I)‑2dx≦4αM2・h・2a・
n‑0,1,2,.‥とす る.2n≦LkL≦2n+1に対 して,h‑2n‑21を考 えると,7T/4≦ IkwhI≦7T/2であるか ら,lsinkLJhL≧1/2である・ゆえに,
∑ Ick(I)l2̲<M212α22nα・
2n≦困≦2n+1
ここで,M12‑M212αとお く・す ると,シュヴァルツの不等式 よ り, 2n≦l∑kI<2n+1 ・ck(I)t211′2「
∑ 2n̲<固く2n+1
<M12‑(α‑1/2)n
00 (X)
∑ Icn(I)[≦Ml∑ 2(α‑1/2)n+lco(f)[<∞・
n=‑(x) n=0 よって,
[コ
2.3 平均2乗誤 差
いままでは,‑ル ダー連続性 といった,かな り強い連続性 をもつ関数のフー リ エ級数展開について述べてきた.ここでは,連続関数 あるいはもっ と弱い不連続 関数のフー リエ級数展開について考えてい く.
定義 2.2.I:RI Cが周期21の関数で積分可能であるとき,形式的に,
ENlf'‑(a ̲ll.f(x,‑ N lf'(I,・2
d
x ) 1′2を考える.この とき,ENlf]をfとsNlf]との平均2乗誤差 とい う.
ENlf]う 0(N ぅ ∞)となるとき,これはげ‑sNlf]I2のグラフの面積が0に収 束す ることを意味 してい る. したがって,JとNli‑lomo軸[月はだいたい同 じ形のグ ラフをもつ ことがわかる・ENlf]1 0(N J ∞)となることを,fは L2の意味で フー リエ級数展開可能,あるいはフー リエ級数はfにL2収束 す るとい う.
L2の意味でのフー リエ級数展開に関 して次が成 り立っ.
定理 2.4.fはR上の周期21の関数で,ト l,i)上で2乗可積分であるとす る.この とき,
ENlf]10 (Nう ∞) である.
この定理の証明には,い くつか補題が必要になる.まずはそれ をみてお く.
ここで,本論文でよく使 う記号を定義 してお く.
E⊂Rdをルベー グ可測集合 とす る.E上のCまたは ト∞,∞]に値 をとるル ベーグ可測関数f(I)に対 して,次のよ うな量を定める :
1≦p<∞ に対 して,
・f,,LP(E,‑(/E.f(I,Ipdx)1/p・
またp‑∞ に対 しては,
IげIIL‑(E)‑inft入:入>0,md(ttfI>入))‑0)・
ただ し, ここでmd(E)は E の d次元ルベー グ測度 を表す.
さて,L(E)をE上のCまたはRに値 をとるルベーグ可測関数全体 のなす集合 とす る.そ して,1<̲p≦∞ に対 して,
LP(E)‑(f・・f∈L(E),‖fHLP(E)<∞)
と表す ことにす る.
命題 2.3.f∈L∞(E)な らば,
lf(I)I≦lげIIL‑(E) a・e・X∈E・
証明・md(くけt>Hf‖L当E)))>0と仮定 し,矛盾 を導 く・
An‑(I:XEE" (x)I,=flIL‑ ,・三〉 (n‑ 1,2,‑・), A‑(x:x∈E,lf(x)I>IrfHL‑(E))
とお く・Al⊂A2。・ ・ ・ ,A‑UAnよ り
n l i m u
md(An)‑md(A),0・したがって,n
十分大 きなnに対 してmd(An)>0となる.このことか ら,
IIf‖L‑(E)‑inf(A:入>0,md((Ifl>入))‑0)≧lLfIIL
‑ ( E ) + ‑ n 1
でなければな らない.これは矛盾である.
補題 2.2.a>̲0,b≧0の とき,
al/pbl/q<̲a1 +lb. P q
この補題 は,相加平均 ・相乗平均の不等式の一般化 になってい る.
証明.b‑0な らば明 らかなので,b>0の ときを考える・この ときi‑a/bとす る と,示すべき不等式は,
1 1
il/p<‑i+‑
P q となる.tの関数f(i)
立はi●=1の ときで,
tl/p ̲̲t1」 はt=1の とき最大値 Oをもつか ら,等号成 P q
この不等式が成 り立っ.
命題 2.4.(ヘルダーの不等式)1≦p≦∞,1≦q≦∞ が
‑ + ‑1 1‑ 1
P q (2・16)