公表一様式
4学 位 論 文 の 要 約
一 重 大 学
科
︶ 野 究 程 分 研 課 学 系 期 護 学 後 看 医 士 域 院 博 地 学
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主論文の題名
乳児を育てる日本人母親と在日ブラジル人母親における災害準備教育プログラムの介入効果とそ の共通点および相違点
マルテイネス真喜子
主論文の要約
1.
背 景
大規模自然災害が起こった際に、災害時要配慮者に含まれる乳児とその母親は自らの命を守る ことが難しい最たる対象である。また、乳児を抱える外国人の母親は、文化や生活習慣の異なる 外国人であることに加えて、自分自身だけではなく乳児をケアしなければならない、二重の意味 での災害弱者となる。しかしながら、乳幼児を抱える外国籍の母親を対象とした災害準備行動に 関する先行研究は国内外において見当たらない。
和文献ならびに英文献の文献検討から、地域住民などを対象とした先行研究から、災害準備に 関連した要因として、被災経験、民族、学歴、経済状況などがあり、社会的にマイノリティな集団 が災害準備においても脆弱であることが示唆された。しかしながら、ブラジルを含む移民に対す る防災・減災研究は少なく、マイノリティ集団への災害準備プログラムの実施・強化のために、対 象の災害準備意図・行動を高める要因の構造を把握した上で、どのような内容のプログラムが適 しているか検討が必要である。対象の自然災害への準備行動を実行に移す看護職による教育介入 の効果の有無と日本人とブラジル人におけるその共通点と相違点を明らかにすることにより、二 重の災害弱者である乳児を育てるブラジル人母親と日本人母親に対する科学的根拠に基づいた災 害準備教育プログラムを提言することにつながる。
2.
研究目的
乳児を育てる日本人母親および在日ブラジル人母親への効果的な災害準備教育プログラムを提 案するために、両者における教育介入効果の有無とその共通点と相違点を明らかにする。
1)介入研究目的
乳児を育てる母親が被災後3 日間生き延びるための災害準備における行動意図・行動の促進を
目的とする災害準備教育プログラムが、日本人母親と在日ブラジル人母親において、教育介入効
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4果を有するのかどうか、有するのであれば両者にどのような共通点や差異点が存在するのかを明 らかする。
2
)観察研究目的
介入研究のアウトカムである災害準備意図・行動を促進する関連要因とその構造の現状につい て、日本人母親と在日ブラジル人母親の共通点と相違点を明らかにする。
3.
方法
調査期間は、
2018年
1月
21日〜
7月
21日である。
1 )介入研究
災害準備教育プログラムを受講する介入群と対照群の介入効果を評価した。乳児を育てる日本 人およびブラジル人母親を対象に介入(集団教育・個人メール)を実施し、介入前と介入開始
3か 月後に質問紙調査を行った。調査内容は、基本属性
11項目、災害準備行動
35項目(マルテイネス らの概念分析より抽出)、関連要因(
Pa旬nの社会認知的準備モテ寺ルとコミュニティ・エンゲージ メント・理論モデル(
CET)より抽出された
3分類
24要因)
159項目であった。日本人母親とブラ ジル人母親別に介入群と対照群の両群において、災害準備行動の行動実行
35項目ならびに災害準 備行動影響要因に含まれる各項目の介入前後の変動について平行座標プロットを用いて視覚化し た。得られた介入前後の差分について、介入群と対照群の
2群の聞に統計的に有意な差が生じてい るかどうかをウィルコクソンの順位和検定あるいは対応のない t 検定を用いて検討した。全て有意 水準を
0.05とし、全ての統計的計算および視覚化には
R version 3.4.4を用いた。
2群聞の比較を行 う介入研究に先立ち、介入研究と生活圏の異なる市の日本人母親を対象に教育介入を行うパイロ ット調査を実施した。また、ブラジル人母親への文書は全てポルトガル語とし、災害準備教育プ ログラムも筆者がポルトガル語で実施した。
2
)観察研究
介入研究と岡県に在住し、乳児を育てる日本人・ブラジル人母親を対象に介入研究と同じ質問 紙を用いた。災害準備行動の関連要因聞の構造について、関連要因毎に質問項目の得点を合計しー 観測変数とし、日本人・フ*ラジル人別に共分散構造分析を行った。上記モデルを元に観測変数の 投入を試み、探索的にモデリングを繰り返し、
χ2値 (
CMIN)、
Degreeof Freedom(D 町 、
p値 、
Comparative Fit Index (CFI、 )
Goodnessof Fit Index (GFI)、
AdjustedGFI (AGFI)、
Root Mean‑Square Error of Approximation (RMSEA)を確認し、日本人及びブラジル人母親におけ る最適モデルを検討した。モデルの適合度の判定には、
χ2検定の
pfi直>
0.05、
CFI>0.9、
GFI>o.9
、
RMSEA<0.05を基準とした。欠損{直については、バイアスが少ない推定値を得るための方法 として完全情報最尤推定法を用いで処理した。
本研究は三重大学医学部研究倫理審査委員会の承認(
No.3212)、および臨床研究利益相反審
査を受け、実施した。なお、同時に
UMINへの登録もおこなった(
000030130) 。
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44.
結果 1 )介入研究
対象は、日本人29 名(介入群
14名、対照群
15名)、ブラジル人22 名(介入群1
1名、対照群1
1名 ) 、 計51 名であった。介入前後の中央値比較において介入群のみが介入後にステージ上昇した項目は、
日本人67.6% 、ブラジル人91.2% とともに多く、介入前後の変化量中央値の差の2 群比較では、日 本人
12項目、ブラジル人8 項目に統計的な介入効果が認められ、特に、命を守る行動が多かった。
両者に共通して介入効果があった災害準備行動は、 「揺れているときに子どもの身を守る方法」
と揺れがおさまった後の「自分と子どもの避難の方法」、 「情報を得る手段」、 「入手すべき必要 な情報」を知ることであった。
CET24要因のうち、両者ともに介入後に有意に上昇した変化は、
アウトカムに相当する「行動意図・実行」要因のみであった。
日本人にのみ介入効果があった災害準備行動は、 「家具への耐震用具の取り付け」や「物品の 備え」など経費が必要な準備と災害に備えて日常的に「地域の人々とつながりをもっ」と「母親同 士で交流をもっ」であり、
CET24要因のうち、日本人のみの介入後の有意な上昇は「リスク・脅 威の認知」のみであった。
ブラジル人にのみ介入効果があった災害準備行動は、 「家屋の耐震」、 「応急処置の技術」と
「地震の与える影響の知識」の獲得、これらは大きな揺れによる影響への直接的な準備の内容で あり、物品の備えへの介入効果は認められなかった。
CET24要因のうち、ブラジル人のみの介入 後の有意な上昇は5 要因と多く、
3分類(個人要因、地域要因、地域・機関間関係要因)に分散し ていた。
2
)観察研究
調査に同意した294 名のうち、分析対象は254 名(日本人1
51名、ブラジル人103 名)であった
(有効回答率86.4% )。有意差のない関連要因のうち、両者とも「リスク・脅威の認知」が高かっ た。共分散構造分析では、 「行動意図・実行」の関連要因は両者ともに「リスク・脅威の認知」で あり、高い肯定的な結果予期は「資源の有無(対策の妨げ)」の低下を経て、行動意図・実行に繋 がった。関連要因の日本人の特徴は、 「自己効力感」と「エンパワメント」であったが、両平均値 は日本人の方がブラジル人より有意に低かった。ブラジル人の特徴は、 「危機意識」と「社会的支 援」であった。 「危機意識」と「肯定的な結果予期」がそれぞれ直接「行動意図・実行」に関連し たが、肯定的な結果予期の得点が日本人より低かった。
5.
考察
今回の乳児を育てる母親への教育介入プログラムは効果があったと言える。乳児の母親には、
リスク・脅威の認知を下げずに肯定的な結果予期を高める働きかけが必要である。また、日本人
の場合、自己効力感を高める介入が重要であり、地域の人々との交流の必要性を組み入れること
が必要である。一方、ブラジル人の場合、対策の妨げとなる経済的問題や知識・体験不足が影響し
た結果であると考えられ、肯定的結果予期を高める余地があるためその介入方法を考える必要性
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4が高い。危機意識と肯定的結果予期を高める働きかけが必要であり、これらが起点となり介入効 果が行動意図に向かう要因全般に及ぶことが期待できる。言語面で発災時に正しい情報が届きに
くいため、普段から地域の人々との交流を可能とする工夫が求められる。
6.