平成 24 年4月1日付けで長野県砂防課長に就任いたしました。 前任の富山県では、副幹事長として、社団法人日本地すべり学会 中部支部の皆様には大変お世話になっておりましたが、引き続きよろ しくお願いいたします。 さて、昨年は3月に東北地方太平洋沖地震、長野県北部の地震、静 岡県東部地震、さらに9月には、紀伊半島に甚大な被害を与えた台風 12 号により、地すべり等の土砂災害が全国各地に多数発生し、尊い 生命及び財産が奪われました。ここに被災された方々に謹んでお見舞 い申し上げます。 会員の皆様には、災害の発生直後から、被災地での踏査、観測機 器の設置等の迅速な対応、警戒避難体制の整備への助言、早期復旧に 向けた対策工法の検討等にご尽力いただき、感謝申し上げます。 (社)日本地すべり学会中部支部は、平成 10 年の発足以来、会員の皆様の活発な活動により、一般の方々 に対しましても、防災知識や被害軽減の取り組み等につきまして、着実に浸透を図っており、今後も、防災 意識が高まる中、ますます学会の活動の重要性が増すものと感じております。 平成 23 年度の活動内容につきましては、6月に長野市で総会・特別講演会(97人参加)を開催し、豊 田浩史 長岡技術科学大学准教授より「地震と地すべり・地盤災害」と題し、ご講演いただきました。8月 30 日から9月2日には、静岡市で日本地すべり学会研究発表・現地見学会が開催されました。学会研究発 表会では、当支部も最大限の協力を行った結果、全国から研究者、技術者、行政職員等約 530 名の方々が 集まり盛大に開催することができました。ご協力をいただいた方々のご尽力に改めて感謝申し上げます。 11 月には長野市においてシンポジウム(82人参加)を開催し、「すべり面の追跡 ことはじめ」と題し、 中村三郎 防衛大学校名誉教授の基調講演、そしてパイプ歪計による効果の確認方法に関する事例紹介、議 論が行われました。地すべり対策の最前線で携わっておられる方々の発表ということもあり、実践的な話題 を提供いただき大変有意義なシンポジウムが開催できたと考えております。また、10 月 21 日には平成 16 年台風 21 号災害で被害を受け復旧した、三重県大台町(旧宮川村)への現地検討会(32人参加)、平 成 24 年 1 月には台湾大規模地すべりの海外現地視察(18 人参加)を実施したところでございます。 今後とも土砂災害防止技術の研究や若手技術者への技術継承、防災啓発活動、防災教育などを軸に、地域 の皆様のニーズを捉え、地域社会へ貢献できる支部活動を積極的に行うことができればと考えております。 平成 24 年度は、愛知県にご協力いただきまして現地見学会を予定しております。今後もさらなる技術向 上を目指し、積極的な活動を行っていきたいと考えておりますので、引き続き会員皆様のご理解とご協力を お願い申し上げます。
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幹事長田中 秀基
(長野県建設部参事兼砂防課長)社団法人 日本地すべり学会
中部支部ニュース
〒 380-8553 長野市若里 4-17-1 信州大学工学部 社会開発工学科内 第 13号中部支部事務局
平成 23 年度現地見学会・検討会
○日 時/平成 23 年 10 月 21 日(金) 12:00 ~ 18:00 ○場 所/三重県大台町(旧宮川村) 平成 16 年度発生地すべり事業実施箇所等 ○案内者/林 拙郎 副支部長(三重大学名誉教授)、 三重県県土整備部河川・砂防室 日本工営(株)名古屋支店、玉野総合コンサルタント(株) ○参加者/ 32 名 ○行 程/ 10 月 21 日 ( 金 ) 12:00 JR・近鉄津駅発 13:15 奥伊勢フォレストピア発→現地見学 (大井地区、滝谷地区、領内地区、天ヶ瀬地区) 15:00 奥伊勢フォレストピア着 15:10 講演会 ・ 討論会 〈 講演会 〉 1. 開 会 林 拙郎 (三重大学名誉教授、副支部長) 2. 挨 拶 大台町長 尾上 武義 氏 3. 講 演 永田 秀尚 「岩盤崩壊とせき止め湖 ― 宮川 2004 年、2001 年、 千年前、万年前 ―」 4. 講 演 諏訪 浩 「春日谷左支流の岩屑なだれと 西日本外帯の深層崩壊」 16:15 終 了 計 22 名 10 月 22 日(土) 大台町岩井地区の緊急調査(大台町、中部支部合同調査) 調査リーダー:林 拙郎 (三重大学名誉教授、副支部長) メ ン バ ー:大台町、三重大学、岐阜大学、 東京大学、中部支部企画幹事、 日本工営(株)、 玉野総合コンサルタント、 風水土、日本綜合建設 計 10 名 開 会/林 三重大学名誉教授 講 演/永田 先生 挨 拶/尾上 大台町長 講 演/ 諏訪 先生 〈 感 想 〉 現地検討会は 10 月 21 ~ 22 日、三重県大台町で行なった。あいにくの雨模様の天気であったが、すっ かり復旧されている災害現場を見学した。この災害は平成 16 年 9 月 29 日朝、九州に上陸した台風 21 号 がその夜に大阪付近を通過して、翌日東北へ抜けたときに発生した。進行方向右側に当たる宮川村では連続 800 mm弱(アメダス宮川)の雨量を記録した。流域各地に土砂崩壊や地すべりが発生し、7 名の死者 ・ 行 方不明者が出る悲惨な災害であった。見学はバスで移動し、宮川上流の大井地区、滝谷地区から順に領内地区、 天ヶ瀬地区へと下流に向かった。見学終了後、講演会及び自由討論を表記の内容で行われた。 北陽建設(株) 宮澤洋介 日本工営(株) 萩原陽一郎滝谷地区 東又谷の土石流、流木と山腹崩壊による 道路崩壊 宮川本川、上流から下流を見る。 写真右から桧原谷川が合流する。 支川土石流により河道が一部閉 そくし「せき止め湖」を形成する。 領内地区 東又谷の状況。写真奥に山腹の崩壊、 土石流、流木を確認する。 岩井地区(宮川との合流点)写真左が岩井の支流。写真中央で道 路が途切れているように見えるのは、土石流により支流を横断し ていた橋梁が破壊されたためである。 天ヶ瀬地区 宮川流域ではU字形に深くえぐられた河床が極めて印象的であり、その両側の段丘面に集落やライフライ ンが形成されている。この地形に見られるようにこの地域の最近における異常な隆起が深層崩壊発生の素因 となっているなども講演の中でお話されていた。 翌日 10 月 22 日は平成 23 年 9 月上旬(1ヶ月半前)の台風 12 号豪雨災害現場である岩井地区および 桧原谷川において大台町、中部支部の合同緊急調査を行った。調査前日の 21 日夜からの雨は、22 日朝ま でに連続降雨 196mm を記録し(アメダス宮川)、宮川本流も酷く濁っていた。濁りの原因は、台風によっ て崩壊が発生した岩井地区上流や東又谷(桧原谷川支流)であった。特に、桧原谷川と宮川の合流点では、 宮川本川上流の水は比較的澄んでいる一方で、桧原谷川からの水が濁水となり、下流の宮川が濁水化してい ることが確認できた。また、岩井地区上流で発生した崩壊は土石流化し、宮川との合流点付近にかかる橋梁 を吹き飛ばすこととなっていた。 清流と呼ばれた宮川も、未だ土砂災害の素因を多く有しており、記録的な豪雨ともなれば土砂災害を発 生し、直接的・間接的に住民に被害を及ぼすことを痛感した。 最後に見学場所の選定、計画、実施までの全てを執り行って頂いた大台町の皆さま、林先生、三重県県土 整備部河川・砂防室の皆さまのご尽力に大変感謝申し上げます。
平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災から 2 ヶ月後、中部支部では、地元 NPO の支援活動に参 画する機会を得ることができ、そこで被災地の過酷な現状を知りました。 津波被害が甚大であった宮城県亘理町の荒浜地区と長瀞地区の小学校児童は、校舎が使えないため、被害 を受けなかった別の小中学校に間借りをして学校生活を送っていました。 「今後の復興を担っていく子どもたちに元気になってもらいたい、何かできることはないだろうか?」と の思いから関係機関に働きかけを行い、名古屋市立矢田小学校において、東日本大震災に関する「おはなし 会」の実施と応援メッセージの製作が実現しました。 (社) 日本地すべり学会中部支部幹事 島田千亜紀・小野和行
「東日本大震災と防災教育」について報告します
今回活動にご協力いただいた名古屋市立矢田小学校の学区は、東日本 大震災と同じ海溝型地震である「東海地震・東南海地震」の発生が懸念 され、震度 5 強~ 6 弱の揺れが想定されています。津波による被害は考 えにくい地域ですが、液状化の危険が高く、隣接学区では土砂災害危険 箇所もあり、日頃から災害に対する意識を高めておくことが必要です。 1. 活動のきっかけ 2. おはなし会の実施 ★名古屋市立矢田小学校の児童が書いた「応援メッセージ」 平成23年6月15日、17日、22日開催「被災地の子どもたちに、矢田小学校の子どもたちのメッセージをいつも読んで元気になってもらいた い!」「思いっきり野外で遊んでもらいたい!」という思いから、このメッセージを「ドッジビー」というスポー ツ競技で使用する「ディスク」にプリントして、荒浜小学 校と長瀞小学校に届ける企画をたてました。 応援メッセージの製作には、日本ドッジ ビー協会の方にご協力をいただき、子ども たちの心・友情の証しとして、20 個の「応 援メッセージディスク」が完成しました。 平成 23 年 9 月 9 日、荒浜小学校と長瀞小学校にドッ ジビーのディスクにプリントした応援メッセージを届 けました。どちらの校長先生も、名古屋市立矢田小学 校の児童が一生懸命書いたメッセージや絵をみて、大 変喜ばれていました。 両校とも、津波により児童の家族で犠牲になられた方はいましたが、児童は全員無事だったということが なによりの救いであり、学校には少しずつ笑顔が戻ってきているそうです。 学校の復興に関しては、地域の雇用が確保され、町を離れている人たちが戻ってきてからになるというこ とです。また津波防災に関しては、数年で学校を転勤してしまう中、日頃から意識しておくことが困難だっ たという現状を課題としてあげられました。 中部支部では今回の取り組みを「支部活動と防災 教育」のモデル例として捉え、今後予想される東海 地震をはじめとする中部地域での大規模災害に備 え、地域貢献を核とした継続的な防災教育の推進に 努めていきたいと思います。 企画部では、学校教育における継続的な防災教育支援のきっかけとなるよう、矢田小学校の先生方に中部 支部の防災啓発活動やボランティア・ティーチャー制度について紹介し、ご理解をいただきました。 そこで「朝の会」の 15 分間をいただき、5 年生 3 クラスの子どもたちに、東日本大震災における地震 発生のしくみや亘理町荒浜地区・長瀞地区の被害のようす、地域で過去に発生した地震についての「おは なし会」を実施しました。 また、被害を受けた荒浜小学校・長瀞小学校のみなさんに送る応援メッセージの作成をお願いしたところ、 子どもたちによる 68 通ものメッセージが集まりました。 3. 応援メッセージディスクの製作 4. 応援メッセージディスクを届ける 5. まとめ ★完成したドッジビーの応援メッセージディスク ★活動にご協力いただいた協賛団体 日本ドッジビー協会 公式サイト