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研究会報告書等 No.51

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Academic year: 2021

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4.観光産業の再生

株式会社 楽帆 代表取締役 CEO

北村 尚武

【変わりゆく観光業の在り方】 図表2-44のタイトルの「変化する時代:変わりゆく観光業の在り方」はまさに私自身 が産業再生機構に在籍していたときから、今まで一貫して感じていることである。多くの 地域で話をする機会があるが、観光業イコール宿泊業と思われている状況が多くみられる。 そして宿泊業がこの地域の観光を支えているという言葉をよく聞かされてきた。 図表2-44 変化する時代:変わり逝く観光業の在り方 従来の「点」「線」「面」という形で考えていくと、観光業=宿泊業という認識があった が、私は、「これはおかしいのではないか」と思っている。また、「行政が何もしてくれな い」、「田舎だから」、「魅力がない」、「観光になるようなものが何もない」などもよく聞か されるが、この事に関しても疑問に思うことがある。 本来あるべき観光業の姿は、地域の農業、漁業とか、地域の文化、例えば町並みなどを

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含めたものという意識は、今では当然のことになっている。そういう点において観光は立 体化しているのであり、宿泊業は、観光を立体として考えるなら一つの「面」でしかない ということである。地域の観光とは漁業、農業、歴史文化、そういったものが入りまじっ て、一つの地域性、観光というものがつくられているという意識が必要である。 宿泊業は一つの「面」でしかないということ、その上で本業に回帰し、試行錯誤を始め た時、その地にしかないホテル・旅館をつくる新しい手法が見えてくるのではないかとい うことである。 地域というものすべてをあらわすのが観光であり、それぞれの事業において、新たに観 光に向かってどういう体制をとれるのかを、それぞれの事業においてまず最初にお話しす ることにしている。 【ホテル・旅館経営に必要とされるもの】 ホテル・旅館の事業再生に取り組むときに、経営スタッフや従業員に、まず次のような 考え方を持ってくださいといつもお願いしている。 一つは、地域の宿泊業は、オーナーシップの経営体制が当たり前であるが、事業再生に 取り組んでいくときには、この一体型の経営体質から、所有と経営が分離していくこと、 資本と経営が分離していく形を頭の中に描けなければ、事業再生の投資をしても、うまく いかないということを認識してもらう。 事業再生に取り組む時点において、必要な認識として所有と経営の分離がある。さらに、 所有サイドでいう企業価値を意識しながら、運営サイドにおいても運営の価値というもの をどのように見出すかということを、常に最初に説いて回っている。 事業再生には、所有と経営が一体となっている現在のあり方から全く違う世界観、置か れる立場も全く変わっていくという意識が必要で、その意識を持たないで事業再生に飛び 込んでいくと、事業がばらばらと分解して、行く末が間違ってしまうことが多いと考える。 その点を踏まえ、まず、「全体で企業価値を上げていくことを目的とし、皆様はその中の 運営というパートを担っていただく」ということを必ず説明して、その認識をしてもらえ る先としか仕事をしないというやり方をしている。 商業サイドの価値は、企業価値、投資価値で表されるが、「運営サイドの価値って何です か」とよく聞かれる。私たちの事業再生請負人とか言われているターンアラウンド・マネ ジャーという仕事は、まさに運営・経営の価値を上げていくことである。 運営面での価値とはまさにブランドであり、ブランドを分りやすく言いかえると、「老舗」 という言葉ではないかと話している。そして日々本当の「老舗」というものを意識してほ しいと伝えている。本当の「老舗」とは、ただ年月がたっているだけが「老舗」ではなく て、「老舗」というものには、「いつも変わらぬ」とか「安心・安全」とか普遍的なキーワ ードが必ずあり、お客様から常に支持されるような特徴を持っているところと話している。

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図表2-45 変化する時代:ホテル・旅館経営に必要とされるもの そして自分たちは何が特徴か、売りは何か、どのような個性を持っているかを意識して 運営の特徴をつくっていってくださいと、事業再生の場では必ず話しながら進めている。 所有と経営は分離するというのは当たり前だが、所有の付加価値をつけていく世界観と いうのが投資の世界にはある。しかし、経営において付加価値をつけるという点について は意外に議論されていない。これが事業再生の現場では一番重要なキーワードだと思って いる。私たちは、運営サイドの企業価値、特徴、魅力づけというものを常に意識しながら 現場に臨むようにしている。 【ブランド力を生み出す源泉】 現場に入ると、企業をどのように強くしていくのかということになるが、4つと1つの 力と呼んでいることがある。これはどの産業にもかかわる話と思うが、4つの力というの は、「技術力」、「商品力」、「営業力」、「管理力」であり、1つの力はそれらから作られるブ ランド力である。

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図表2-46 変化する時代:ホテル・旅館経営のブランド力を生み出す源泉とは? 御社はどんな会社ですか、どんな力がありますか、どんな特徴があるのですか、と聞い ても、何十年も経営してこれたから、明確にあまり考えずにきましたという事が多くみら れる。その経営者や現場のスタッフに、あなたの会社の魅力という話をすると、これもし っかりとした答えは返ってこない。 我々の事業再生では、その逆を行くわけで、先に、ダイヤの原石を見つけ、それを磨い ていく。それぞれの光る石を本当のダイヤモンドに変えていくのが事業再生のあり方と思 っている。 ここで重要なのは、自分たちを知ることであり、あるべき姿、どこに向かうのかという のを知ることで、これが事業再生の現場における第一歩である。そして、これに向かって 進んでいくという経営理念に等しいものを掲げる。明確に方向性を固めることで、事業再 生の大きなレールが引かれて、後は走りやすい状況が生まれてくる。 【ホテル・旅館「経営」における課題と方向性】 次は、事業再生に我々が取り組むときに、この企業に何が足りないのかを最初に見る手 法を紹介する。

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スを見ることである。さまざまな企業を見ていると、この2つのてんびんで必ず傾向があ る。営業力と管理力のバランスは非常に重要で、うまくいっている企業・事業では、この 2つのバランスが非常に整っている。事業破綻するところは、この2つの力の一方がどち らかに極端に上がっているケースが多い。 ホテル・旅館で営業力の突出している企業は、設備への過剰投資という形で大体あらわ れる。どうしたらお客様が来てくれるのかという問いに対し、一番簡単な方法は、装置産 業としてハードの充実ということで、計画性のない設備投資を行っている例が多くみられ る。その結果は過剰債務という形であらわれる。 また、営業力の突出している会社の経営者は、ほとんどが現場にいないタイプが多くみ られた。例えば地域とかいろいろな諸団体への会合に出るとか、公職についているとか、 ほとんど現場にいないで周りの地域社会との交流を重視するため、営業力が突出するとい う傾向になるようだ。 一方で、逆に管理力が突出している企業は、例えば稼働率や集客の人数が、徐々に徐々 にダウンサイズしていく傾向がある。具体的には、創業時からの上顧客とともに年月を経 ており、創業以来変わらない顧客は高齢化している。この管理力が突出している会社は、 商品性の整備や、魅力づけがなかなか行えない。会社としてのルール、管理という点では パーフェクトだが、魅力づけの部分を怠っている。その結果、顧客が創業当初から変わっ ていないという形にあらわれてくる。 私たちが事業再生に取り組むときに、どちらのタイプなのかを必ず見据える。その上で、 必要な力をどう補っていくかという形を描きながらアプローチをしていく。この最初の大 きなふるい分けは重要である。 これを地域全体でみたときに、地域の営業力は強いが管理面の弱い地域は、基盤を整備 する部分の能力が非常に欠けているエリアと判断できる。 この典型が鬼怒川温泉である。鬼怒川温泉は、営業力が突出している地域で、大きな旅 館に5つほどにかかわったが、どの企業をとってみても、営業面が突出している傾向がみ られた。 そういった意味で、地域を再生するときでも、この営業力・管理力という形で分析をか けてみると、統一の傾向が見えてくるのではないかと思われる。我々は、まず第一歩を踏 み出すときに必ず分析をして、どっちに力を、重きを置いてやっていくべきなのか、その 比重を考える。

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図表2-47 変化する時代:ホテル・旅館「経営」における課題と方向性 【「経営」する力を育成するための課題】 我々が事業再生に取り組むときに、現在ぶち当たっている問題点は事業継承、もしくは 経営者の育成である 事業として、ターンアラウンド・マネジャーとして我々はかかわるわけだが、各現場で 今後を担っていく経営者、もしくは管理者の育成を行っていくようにしている。人を育て るという観点が新たな経営体制の指針になり、その上で新しいスタートを歩むというのが、 現在の事業再生の現場である。 ただ、その次のステップで課題になってくるのは、事業運営を担う次世代の育成である。 これは、事業再生の事業規模が大きくなればなるほど、新たに起きている問題だと思って いる。事業再生という新しい企業において求められる経営者像とは何なのか、それを継続 できる事業者像とは何なのかということが、現在我々が一番直面をしている問題である。 事業者の育成は現在事業再生の現場には大きくのしかかっている。 産業再生機構のかかわった事業でも、事業のターンアラウンドのファーストステップは

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図表2-48 変化する時代:「経営」する力を育成するための課題 ホテルや地域の経済を担う中小企業の多くにみられるのが、ピラミッド型のすごく鋭角 なピラミッド構造、トップダウン形式の経営である。このトップダウン形式の経営者構造 の中で、いかにジェネラリスト、いろいろな管理者を育てていけるか、行政でいうと中央 集権・地方分権のように、会社の中における分権制度をどうやってつくっていくかという ことである。職務権限を持ち、職責を担う人間をどう育てていくか、一つの解決の手法と して捉えている。 【「ターンアラウンド」に求められるスキル】 全く別の観点だが、図表2-49には投資家やターンアラウンド・マネジャーに必要とさ れる事業再生のプロセスやスキルについて簡単にまとめている。 AMというのはアセット・マネジャー、事業投資の管理を行う人間の目線である。事業 再生というと、投資サイドの目線、アセット・マネジャーの視点が当然に存在する。しか し、私たちが感じる事業再生では、今後、事業投資のサイドと再生事業を行うターンアラ ウンド・マネジャーのサイド、この2つに対して横断的な知識を持っておく必要性がある。 所有と経営が分離して、所有サイドの目線と、経営サイドの目線とが生ずるが、今後、 事業再生という事業が浸透していく中で、幅広い知識を持った事業再生ターンアラウン

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