症 例
症 例:22歳 男性 現 病 歴:2004年 の 学 校 健 診 で 尿 蛋 白 定 性 で2+, 随 時 尿 で1.8g/g・creを 指 摘 さ れ 当 院 を受診した。受診時脂質代謝異常も見られ, atorvastatinを開始した。尿蛋白は随時尿で0.8g/ g・cre程度,定量で0.48g/日,血清Cre値は0.7mg/ dlで推移していた。 2005年12月 よ り 尿 蛋 白 は3+に 増 加 し た。 2009年3月より下肢浮腫が見られネフローゼ症 候群に進展し,同年8月3日に入院した。 既往歴:特記すべき事項なし 家族歴:父,叔父:リポ蛋白糸球体症による 慢性腎不全で維持透析中 入院時現症:意識清明,身長 176cm,体重 76.5kg,血圧 140/78mmHg,脈拍 78/min(整), 眼瞼軽度浮腫あり,眼瞼結膜貧血なし,眼球結 膜黄染なし,胸部所見:明らかな異常所見なし, 腹部所見:平坦且つ軟,圧痛なし,グル音やや 減弱,下肢浮腫 ++,アキレス腱肥厚,黄色腫 なし 電顕所見: ◦内皮下と思われる部位にdepositが見られる。 ◦指紋状配列を示すリポ蛋白顆粒 ◦内皮細胞の扁平化 図1 図2 PAS染色ベザフィブラートの積極的使用により蛋白尿の
減少効果を得たリポ蛋白糸球体症の一例
大 谷 隆 俊
1酒 井 謙
1高 須 二 郎
1鈴 木 康 紀
1服 部 吉 成
1田 中 仁 英
1大 橋 靖
1水 入 苑 生
1相 川 厚
1宮 城 盛 淳
2図5 HE染色 図6 図7 図8 図9 IgM 図10 C4
図3 PAS染色 図4 PAS染色 生化学 TP 4.5 g/dl Alb 2.1 g/dl AST 15 IU/l ALT 10 IU/l γ-GTP 13 IU/l LDH 145 IU/l T-cho 179 mg/dl TG 243 mg/dl BUN 16 mg/dl Cre 0.79 mg/dl Na 143 mM K 4.1 mM Cl 111 mM Ca 7.9 mg/dl IP 4.6 mg/dl IgG 219 mg/dl IgM 97 mg/dl IgA 137 mg/dl 血算 WBC 8900 /mm3 RBC 4.76×104 /mm3 Hb 14.6 g/dl Ht 43.4 % Plt 19.3×104 /mm3 血清・蛋白分画 Alb 56.5 % α1-G 5 % α2-G 17.8 % β-G 12.3 % γ-G 8.4 % 尿検査 糖 (-) 蛋白 (3+) 潜血 (+) 赤血球 10-19 /1F 顆粒円柱 + 変形赤血球 + 尿蛋白量 12.9g /day 24hrCCr 70.6ml/min/1.73m2 リポ蛋白分画 α 26 %↓ (29-50 %) preβ 37 %↑ (8-29 %) β 35 % (30-55 %) 75gOGTT OGTT-前 90 mg/dl OGTT-30 117 mg/dl OGTT-60 157 mg/dl OGTT-120 141 mg/dl 血清脂質分画 apoA1 129 mg/dl (119-155 mg/dl) apoA2 25.9 mg/dl (25.9-35.7 mg/dl) apoB 99 mg/dl (73-109 mg/dl) apoC2 7.1 mg/dl (1.8-4.6 mg/dl) apoC3 11.3 mg/dl (5.8-10.0 mg/dl) apoE 11.5 mg/dl (2.7-4.3 mg/dl) HDL-cho 42 mg/dl (36.0-80.0 mg/dl) LDL-cho 95.4 mg/dl (62.0-170.0 mg/dl) VLDL-cho 65.6 mg/dl (<44.0 mg/dl) Lp(a) 61 mg/dl (<40 /mg/dl) Laboratory data
図11 図12 図13 図14 PAS染色 図15 図16
蛍光抗体
Mesangial area Capillary area
IgG ― ― IgA ― ― IgM ± + IgE ― ― C3 ― + C4 + ― C1q ± ± fib ― ±
リポ蛋白糸球体症:
Lipoprotein glomerulopathy
◦ リポ蛋白を構成するアポ蛋白(特にアポE) の遺伝子異常である。 ◦ 組織学的にはリポ蛋白顆粒を多く含むリポ蛋 白血栓により糸球体毛細管腔が著しく拡張し ている。 ◦ 血漿のリポ蛋白分析において,超低比重リポ 蛋白(VLDL)レムナント,中間比重リポ蛋 白(IDL)やアポE蛋白が高値となる家族性 高脂血症類似の所見を示すが中性脂肪の著し い上昇は見られない。 →診断:腎生検とリポ蛋白分析 Oil-red-O染色,Sudan染色,apoE蛋白の沈着 治療:まだ確立した治療はない。 ◦ bezafibrate,atorvastatin,valsartan(Matsunaga A:Clin Exp Nphrol 2009)◦ proteinA immunoabsorption(Zhan Xin:Nephrol Dial Transplant 2009) ◦ probucol
本症例の父の経過
症 例:33歳男性 主 訴:下肢浮腫 現病歴:高校生時の学校検尿で初めて尿蛋白 を指摘された。 1988年(25歳時)に蛋白尿精査の為,他施設 で腎生検を実施した。 その後も蛋白尿は持続し,ʻ96年に高血圧傾向, 下肢浮腫の出現が見られた為に当院へネフロー ゼ症候群精査の為,同年10月に入院した。 家族歴:弟(29歳)は8歳でネフローゼ症候 群を発症し,23歳で血液透析を導入した。両 親には腎疾患はない。 入院時現症:身長 171cm,体重 60kg,血圧 158/114mmHg,脈拍 100/min,貧血なし,胸腹 部異常所見なし,下肢浮腫(±)まとめ
≫ 本症例はべザフィブラート・ARB・statinの 積極的投与によって蛋白尿減少が得られた。 ≫ 本症例は父親と比較して発症から治療開始ま での期間が短期間であった。討 論
座長 次に演題II-2,「ベザフィブラートの積 極的使用により蛋白尿の減小効果を得たリポ蛋 白糸球体症の一例」。東邦大学医学部腎臓学教 室,大谷先生,お願いいたします。 大谷 よろしくお願いいたします。今回,われ われはベザフィブラートの積極的使用により蛋 白尿の減小効果を得たリポ蛋白糸球体症の一例 を経験したので報告いたします。 【スライド】 症例は22歳の男性。現病歴とし て2004年の学校健診で尿蛋白を定性で2+。こ のとき随時尿で1.8g/gCrを指摘され,当院を受 診されました。受診時,中性脂肪とVLDLが高 値の脂質代謝異常が見られ,アトルバスタチン を開始しております。尿蛋白は随時尿で0.8g/ gCr程度で定量で0.48g/day,血清クレアチニン は0.7mg/dLで推移しておりました。 2005年の12月より尿蛋白が3+に増加し, 2009年の3月より下肢浮腫が見られ,ネフロー ゼ症候群に進展し,同年8月3 日に入院されま した。既往歴は特記すべき事項はありません。 家族歴として父と叔父がリポ蛋白糸球体症によ る慢性腎不全で維持透析中です。 【スライド】 入院時の現症ですが,血圧が 140/78と軽度高値。また眼瞼に軽度浮腫が見ら れ,胸腹部所見は明らかな異常はありませんで した。下肢の浮腫が見られました。 【スライド】 次に生化学所見ですが,総蛋白 が4.5g/dL,アルブミンが2.1g/dLと低蛋白血症 が見られ,また中性脂肪有意の脂質代謝異常が 見られました。腎機能と電解質異常は特に問 題なく,血算,白血球8900と軽度高値を示し ておりました。免疫グロブリンはIgGが219mg/ dLと低下を示しておりました。尿検査では定 性で蛋白が3+,沈渣では赤血球が1視野に10 ~ 19,顆粒円柱,変形赤血球が見られました。 また尿蛋白が入院時,蓄尿した後ですが,1日 12.9g程度見られました。 【スライド】 次に脂質系の生化学検査ですが, リポ蛋白分画ではpreβが37%と高値を示して おり,75gOGTTでは境界型のパターンを示し ておりました。またアポC2,アポC3が高値を 示しており,アポEに関しては11.5と3倍弱, 高値を示しておりました。またVLDLコレステ ロールが高値を示しておりました。 【スライド】 続いて入院時までの臨床経過です が,2004年に先ほど申したように,当院を受 診し,アトルバスタチンと食事療法のみで経過 を見ておりました。2006年2月ごろより尿蛋白 が1g/gCrと増加しましたが,ネフローゼの域に 達しておらず,引き続き保存的加療で対応して おりました。2008年1月よりロサルタンの投与 を併用しましたが,尿蛋白の減少は見られませ んでした。その後も外来で経過を見ておりまし たが,2009年の2月ごろより尿蛋白が増加し, 同年8月には低アルブミン血症,下肢浮腫が見 られ,腎生検目的で入院されました。 【スライド】 次に病理所見です。まずPAS染色 の弱拡大ですが,糸球体は全部で23個。その うち4個が全硬化した糸球体です。 【スライド】 次にPAS染色の強拡大とHE染色 を示します。PAS染色では淡染性の無構造物質 がびまん性に血管腔内に観察され,係蹄腔が著 しく拡大しておりました。またmesangium細胞 とmesangium基質の増殖が見られました。そし て糸球体の周囲の辺縁血管内や尿細管には淡染 性の無構造物質は見られておりませんでした。 HE染色でも同様に係蹄腔が著しく拡大してお りました。 【スライド】 マッソントリクローム染色,およ び,アロクローム染色でも係蹄腔内に青色に染 まった無構造物質が充満し,著しい係蹄腔の拡 大が見られます。またマッソントリクローム染 色で赤血球が辺縁に追いやられている像が見 られました。PAS染色でも,同様に係蹄腔内に PAS陽性の層状の物質が見られ,係蹄腔の拡大 が見られました。またPAM染色では一部,基 底膜の二重構造と思われる所見を呈しておりま した。【スライド】 電顕所見ですが,指紋状の濃淡の ある層状構造内に脂質のdropletが散在してお りました。また内皮細胞が辺縁に扁平化して見 られ,内皮下と思われる部位にdepositが見ら れました。 【スライド】 蛍光抗体に関しては,IgMとC4 でmesangial capillary areaに陽性を示していまし た。以上より家族歴,リポ蛋白分析,病理所見 よりリポ蛋白糸球体症と診断いたしました。 【スライド】 次にリポ蛋白糸球体症について簡 単に説明します。リポ蛋白を構成するアポ蛋白, 特にアポEの遺伝子異常である。組織学的には リポ蛋白顆粒を多く含むリポ蛋白血清により糸 球体の毛細管腔が著しく拡張する。血漿のリポ 蛋白分析ではVLDLやIDL,またアポE蛋白が 高値となる家族性の高脂血症類似の所見を示し ますが,中性脂肪の著しい上昇は見られません。 診断としては腎生検やリポ蛋白分析,特殊染色 としてオイルレッドO染色やスーダン染色,ア ポE蛋白の沈着です。治療はまだ確立したもの はありません。ただ,下記の論文では効果を示 した報告が見られました。 【スライド】 次に腎生検後の臨床経過ですが, 8月7日よりベザフィブラート200mgおよびバ ルサルタン80mgの投与を開始しております。 一時,尿蛋白が6g/day弱まで増加しましたが, 開始2週間後より徐々に蛋白尿の減少が見ら れ,2009年9月には3g以下,10月には2g以下 まで減少しました。血清アルブミンも徐々に回 復し,3g/dL前後を推移しておりました。 【スライド】 次に本症例の父親の経過を示した いと思います。これは当院受診時のときであり ますが,症例は33歳の男性で,主訴は下肢の 浮腫です。現病歴としては,高校生時に学校検 尿で蛋白を指摘され,1988年に蛋白尿精査の ため,他院で腎生検を実施しております。その 後も蛋白尿が持続し,96年にネフローゼ症候 群精査のために当院に入院されました。家族歴 は先ほど言った叔父さん,この方の弟が8歳で ネフローゼ症候群を発症し,23歳で血液透析 を導入しております。両親には腎疾患はありま せん。 【スライド】 この家系の家系図ですが,本例は 二重四角の部分でお父さんと叔父さんがpheno-typeとしてアポEの突然変異が見られておりま す。両親は正常男性で正常女性でした。 【スライド】 次に生化学検査の本例と父親と の比較ですが,血清脂質分画では父親はアポB が137mg/dLと高値を示しており,またLDLコ レステロールが異常高値を示しておりました。 父親の遺伝子系はアポE,phenotypeはE2/3で ApoE-Sendaiと同定されております。本例と父 親の蛋白尿発症から腎生検を実施するまでの期 間ですが,父親は約10年で本例は約5年でした。 【スライド】 これは父親の腎生検の所見です が,PAS染色で淡染性の無構造物質がびまん性 に血管腔に観察されております。また係蹄腔が 著しく拡大し,mesangium細胞の増殖や基質の 増殖が見られました。 【スライド】 電顕所見でも同様に指紋状の濃淡 のある層状構造内に脂質のdropletが散在して おり,内皮細胞と赤血球が辺縁に追いやられ, 内皮細胞は扁平化して見られておりました。 【スライド】 その後,父親ですが,発症後2年 間でLDL吸着とプロブコール投与を実施する も,徐々に腎機能が悪化し,血液透析を導入さ れております。 【スライド】 まとめです。本例はベザフィブ ラート,ARB,スタチンの積極的投与によっ て蛋白尿の減少が得られました。本症例は父親 と比較して,発症から治療開始までの期間が短 期間であり,それによって治療効果がある程度 得られたのではないかと考えられます。以上で す。 座長 ありがとうございます。では,臨床的な 点からご討議をお願いいたします。ご質問,ご 意見などございますか。安田先生,お願いいた します。 安田 聖マリアンナ医大の安田です。とても面 白い症例で,示唆に富む治療法をご呈示いただ
きありがとうございます。 ベザフィブラートを加えて効果が出た理由を 一番知りたいです。VLDLのコレストロールな ど,そういうふうなもので何か変化があったの でしょうか。 大谷 データとしても脂質代謝異常の改善は 軽度,見られておりました。リポ蛋白血栓が VLDLから供給されているという報告も何例か あって,そういう作用がベザフィブラートには あったのではないかな,そのVLDLを抑えるこ とによってリポ蛋白が減少して糸球体の拡大が 少し改善されるということが論文からも推察さ れていたので,今回もそういう機序があったの ではないかなと思われます。 安田 どうもありがとうございました。 座長 ほかにご質問は。 角田 横浜南共済病院の角田ですが,LDLの 吸着はどれぐらいのペースでやられていたので しょうか。 大谷 お父様ですか。 角田 はい。 大谷 全部で計10回ですね。それを最初は1週 間に2回を2週間やって,後は毎週1回だった と思います。 角田 継続的にずっとやっていたわけではない んですか。 大谷 そういうわけではないです。 角田 文献的にそういう継続してやっていると 良くなるとか,そういう話はあるのでしょうか。 大谷 この病気に関してはそういう報告は,す みません,そこまでは知りませんでした。 角田 どうもありがとうございました。 座長 お父さんはLDL吸着をされているとき に,蛋白尿が減ったとか,そういう改善は見ら れていたのでしょうか。 大谷 いや,見られていないと思います。 座長 ほかに何かご質問,ご意見などございま すでしょうか。お父様はフィブラートを使われ てはいませんか。 大谷 使ってないですね。プロブコールを。 座長 調べると,第一選択としてフィブラート 系の薬剤を使うというのは,確かに書かれては いて,LDL吸着も一時的には効果があるよう なことが書いてあったようですが,ほかに同じ ような症例をご経験されている方とか,ご意見 はございますでしょうか。非常に珍しい,しか も家族でこれだけ経過が違うということを考え ると,発症までの時間もあるでしょうが,治療 の選択によっては予後が変わってしまうかもし れない。 何か臨床的なところからの質問はよろしいで しょうか。診断としては明らかではあると思い ますが,それでは病理のほうからご意見をお願 いいたします。 重 松 lipoprotein glomerulopathyと い う の は, これも日本から発信して有名な病気になったわ けです。わたしも名古屋で1例,これに出会っ て変な病気だということを実感したことがある のですが,また久しぶりにこれにお目にかかれ たという感じです。 きょうの症例はお父さんに比べて若い息子さ ん,若いときに見つけて,そしてクロフィブラー トというものでリポ蛋白糸球体症の進展を,あ る程度,今のところは抑えているという非常に 嬉しいニュースであるわけですが,今の時点で のglomerulopathyの特徴を見てみたいと思いま す。 【スライド01】 二十いくつかの糸球体が,み んなこんなふうに腫大して同じようなパター ンで見られますね。そしてこの症例ではglobal sclerosisになっているようなものは見つからな かったということですね。だからsegmental le-sionは出てきて,それを後で説明しますが,要 するに早期病変というか,この病気の一番初め の様子を表している糸球体病変であろうと考え られます。 【スライド02】 PAS染色で見ても,要するに強 い血管内腔の拡大は,どの糸球体でも見られる けれども,まだ硬化病変はないですね。後でディ スカッションしますが,segmental.の癒着です
ね。それから染み込みとか,そういう病変が少 しずつ始まっています。これは二重化もところ どころあるということです。 【スライド03】 拡大した中に,前回のこのミー ティングでは,血栓なのかdepositionなのか光 顕では非常に分かりにくいという話が出たと思 いますが,この症例では一応,血液が流れてい ることは流れているんですね。その血液と一緒 に血栓様のmaterialが拡大した毛細血管の中に あるということですね。どこでも赤血球は緩や かには流れているということですね。この物質 は動脈の中にはないのです。これはだから糸球 体から出るとすると今度はどうなるかというこ となのですが,peritubular capillary内にもない のです。どうも糸球体だけにとどまって,完全 に血行が停止するわけではなく,ちょろちょろ 流れている。そんな状態で進行しているのだろ うかというふうに病理的には見ざるを得ないと 思います。 【スライド04】 問題なのは,腎症の進展はど ういうことで起こってくるかということです ね。その一つが癒着病変があって,ここでは線 維が増えています。この癒着をして,この部 分にあったmaterialがどうもボーマン嚢の下に 入ってくるという事態があるのです。ここに癒 着があります。 【スライド05】 ここなんかはかなり分かり易 いと思いますが,FGSと同じように癒着をして 中のmaterialがボーマン嚢にcapsular drop様に ついている。あるいは線維化してしまっている ところもある。 【スライド06】 マッソン・トリクローム染色。 これでも見られる。 【スライド07】 ここではFGS的に硬化あるい は虚脱糸球体になってしまっていますね。まだ 物質は少し残っていますが,だんだんとこれが なくなってしまって,一つ一つの係蹄がつぶれ るということが少しずつ起こってくる。ここら へんはかなり良くなっていますね。だから血栓 がそのままずっと持続して,いつまでもあると いうのではなくて,一部はこういう癒着をする という形でmesangiumのmatrixが増えて,ある いは糸球体係蹄のそれ自体の虚脱が起こってく るというふうに進展していく可能性があるよう に見えます。 【スライド08】 ここではかなり硬化巣が多く なっていますね。お父さんみたいに結局は透析 とか移植という選択にならざるを得ないのはこ ういう硬化巣ができてくるということによるも のだろうと思います。 【スライド09】 一応,二次性の糸球体硬化巣 という形で出しましたが,この硬化巣がこの方 には数えるほどしかないということで,予後が 比較的いいというふうに今の時点では言えると 思います。 【スライド10】 hyalin巣が出たりして,全く FGSとよく似た病変になっています。 【スライド11】 ここもそうですね。ちょっと くどいようですが,硬化巣ができている。 【スライド12】 たまっているものはIgM,どれ もあまり有意ではないと思いますが,こういう ふうに,たまり方が染み込みを表せるような, そういう感じでありますね。comma状に出て いたりしていますので,染み込みによるimmu-noglobulinの沈着だろうと見ました。 【スライド13】 電顕では,これは極め付きの 典型的なもので,アポE染色とか,ズダンブラッ クあるいはズダンドライ,そういうのもやらな くても非常に特異性の高い組織像だと思いま す。 【スライド14】 すごい脂質の沈着ですね。 【スライド15】 でも,脂質にとんだ血栓様の ものがあるんだけれど内皮細胞が保たれてい て,辺縁には赤血球が流れているということで すね。 【スライド16】 わたしの写真では,上のほう に染み込み,(depositと演者はおっしゃったか な,それが写っている写真がありましたが,) あれは恐らく染み込みなのだろうと思います。 ということで,臨床的にちゃんと調べてあり
ますので,問題のない症例ですが,病変にストッ プが,かからなかった場合にどんなふうになっ ていくのかなということに少し視点を絞ってお 話ししました。以上です。 山口 私も診断的には特に問題ないということ と,今,重松先生が強調されました巣状糸球体 硬化症が目立っている。それから動脈病変もあ るのではないかなという見方です。それから1 例だけ,治療後,良くなった再生検を見たので すが,そうすると塞栓,血栓様の内容がきれい になくなってdouble contourだけが残った糸球 体になってしまっているというのを見たことは あります。 【スライド01】 このように分節状の硬化像が この症例は目立つのかな。もちろんlipoprotein がなぜ糸球体だけに,ターゲットになってどん どんたまってきてしまうのか,やはり内皮細胞 障害とかいろいろな,あるいは糸球体の限外ろ 過で圧が非常に高い状態で起きてくる現象なの か。いろいろなスペキュレーションは考えられ るのだろうと思います。間質も少し浮腫状に拡 大しています。 【スライド02】 HEですと赤血球がやはり外に 追いやられて,これでもろ過はされているのだ ろうと思うんですよね。形態的にわれわれは見 ているだけなので,全く内腔が詰まってしまっ ていますから,ろ過ができていないのかなと 思ってしまうんですが,ある程度の尿はできて いるわけで,そうするとどこから染み込んで, これはやはり固定後の状況でわれわれは見てい るわけで,癒着病変もあります。それからここ に細動脈があるのですが,平滑筋細胞に空胞状 の変化があるので,LCATもそうなのですが, 少し細動脈の病変もあるのではないかなと思い ます。 【スライド03】 PASで見ますと,segmentalな hyalinosisを伴う癒着病変がありまして,内腔 が非常に巨大化して癒合してしまって,一部は collapseするという非常に不規則な血管腔がで きて,ただ,remodelingしていますので,血管 腔がどんどんどんどん一部には新しい血管腔が できてくるのかなというような感じもします。 mesangiumが部分的に反応してmesangial
prolif-erationを伴ってきています。 【スライド04】 これもやはり癒着病変ですね。 あちこちに癒着が。上皮細胞の障害なのか,内 皮細胞による二次的な癒着病変なのか。両方 の可能性はあるのではないでしょうか。少し mesangiumが反応して,こういう小型の毛細血 管腔がやはりremodelingでどんどん,ですから 詰まったところには血流が行かなくて,こうい う小型の生きたところに血流が行ってろ過され ているのかなという印象です。 【スライド05】 これは随分mesangial matrixが 増えてcollapseしてしまって,血管腔が癒合し て大きな血管腔になって,ここはもうろ過され ないと思いますね。mesangiumとperipheryとの 関係が失われていますから,やはりこういうと ころでないとdouble contourになってきていま すので,こういうところはだいぶ硬化してきて しまっていますから,きちっとmesangiumと毛 細血管という構造が残っているところで,恐 らくろ過が行われているのだろうと思います。 mesangial stalkの硬化性の拡大,増殖もあると いうことでしょうか。 【スライド06】 しつこいようですが,mesan-giumがあって,ですから非常にcapillaryの小型 のところもあちこちに出てきている。ですから こういうところはもうどんどんたまってしまっ て動かなくなっているところで,小型のところ はまだ生きていてfunctionしているのかな。癒 着もある。 【スライド07】 似たようなものですかね,み んな毛細血管腔がある。ですからどんどん新た にできてくることは間違いないように思いま す。残ったところはdouble contourあるいは癒 合性に大きく拡大して,こんなにでかいcapil-lary lumenになってしまっているということだ ろうと思います。またボーマン嚢腔と関係のな いような血管腔もできてくるわけで,そこによ
くMPGNのときには,こういうところにも穴 が,血管腔にどんどん穴ができてくるという, いろいろなremodelingが起こっているというこ となのでしょう。 【スライド08】 硬化性病変のひどいところで す。 【スライド09】 先ほど言いましたが,これは 抜けてしまった空胞ですが,何か脂質様のもの が小動脈の平滑筋のところにたまっているのか なと思います。 【スライド10】 電子顕微鏡的には,先ほど染 み込みのdeposit,ここですか。これがそうかも しれないですね。内皮と上皮があって,癒着が あるのでしょうか。違いますね。ボーマン嚢腔 のほうですね。少し濃淡があるのは,脂質成分 はfineな泡状のもので,ほかの脂質異常のとき にも,こういうことが出てきますので,これは 非常に分かりやすいあれですが,単なる,もやっ もやっとした感じのものと少しベースに濃淡が あるんですよね。これが何なのかちょっと分か りません。 【スライド11】 このようにcoreみたいなもの があって,やっぱり一つのstructureをつくって いるのかちょっと分かりませんが,泡状のこ ういうものが脂質であることは間違いないと 思います。さらにdensityのあるものが一緒に aggregationして一つの塞栓をつくって,これが 本来の基底膜で内皮下の拡大がここにありまし て,mesangial interpositionを起こして,ここに 染み込みというんですか,dense depositがある。 それからmesangiumかmacrophageの反応がその 周辺に見られているということだろうと思いま す。 【スライド12】 同じように少しdensityのある ものがもやもやもやっとあるんですよね。赤 血球は確かに,ですからここはあまりろ過, mesangial cellが引っ張られて非常にdense patcht が引き延ばされたような感じになっていますの で,ここは引っ張られてfunctionしてない場所 だろうという感じがします。 【スライド13】 同じようなところですね。血 管腔がこのように見えていまして,interposi-tionあるいは内皮細胞が周辺に押しやられて,
mesangial cellあるいはmacrophageが少し寄って きているということですね。処理しようとして いるのでしょうが,無理なのでしょうね。 【スライド14】 そのようなことでlipoprotein
glomerulopathyでFGS様,double contour,癒着, あるいはmesangial proliferationとか,いろいろ なremodelingな変化を伴っているのと,ちょっ と動脈病変もあるのではないかなということで す。以上です。 座長 山口先生,ありがとうございました。で は,病理,それから臨床の点につきましてご質 問,ご意見などがございますでしょうか。診断 については,あまり異議がないところだろうと 思うのですが,治療がフィブラートが非常によ く効いているような印象があって,山口先生の 話ですと,寛解すると糸球体の病変も良くなる ということですか。 山口 糸球体の血栓はほとんどなくなってしま います。 座長 糸球体がかなり腫大しているように見え るのですが,再生検ではかなり小さくなるので しょうか。 山口 小さくなってdouble contourだけが残っ ている形です。 座長 ネフローゼになるような要因は,糸球体 が腫大することによる上皮の障害と考えたほう がよろしいのでしょうかね。 山口 どうでしょうか。それは内皮細胞障害の ……。 座長 ほかに何かご意見はありませんか。お願 いします。 酒井 共同演者の酒井です。この演題を神奈川 腎炎に出させていただいた理由だけを補足させ てください。 実は日本で第1例の症例が小板橋先生が発表 されたケースです。それを坂口先生とchurgが, いろいろなところでディスカッションをして提
唱されたということを聞いております。その第 1例目がこの人の叔父さんにあたります。その 叔父さんの現在ですが,透析クリニックでとて も元気に透析をされています。そしてお父さん ですが,この方もまた元気に透析をされていま す。 逆に何を言いたいかというと,xanthoma,黄 色腫,アキレス腱肥厚とか,あるいは動脈硬化 性病変というのはあまり強く出ない。つまり全 身病ではなくて,腎臓の本当に係蹄のcapillary の中だけで起こってくる病気であって,透析そ のものの予後はとてもいいんですね。しかし, 移植後に再発することは非常に有名なので,い ろいろな文献考察としては,移植後に再発する ので全身病であるとしているのですが,むしろ 移植後に再発するということは,やっぱり腎臓 の係蹄の中を好んで非常に障害するアポEの変 異だと思うわけです。 そのアポEの変異そのもののリポ蛋白がどう して糸球体障害,そこだけにくっついてくるの かというのが永遠の課題なのですが,そこをど ういうふうに解釈して,それを解釈することに よって何か治療に結び付くのではないかと思い ます。LDLアフェレーシスで良くなったとか, クロフィブラート,ベザフィブラートで良く なったというケースは散見されますが,結局, その後は一時的な効果だけで,nephroticになる ようケースに関しては,全例がやっぱり透析に なっていく。 しかし,トレースから1+ぐらいの蛋白尿で ずっとそのまま何も起こさないようなキャリア もいるそうです。お父さん,お母さん,すなわ ちおじいさん,おばあさんに関しては,小板橋 先生がよく詳細に検討されていまして,お母さ んがE2/3,ApoE-Sendaiを持っている。つまり この方のおばあさんですね。しかし,おばあさ んには何も腎障害が起こっていません。そうい う一家系です。ということで神奈川腎炎に出さ せていただきました。 座長 ありがとうございました。大変に歴史を 感じさせる症例であると言えますね。非常に貴 重な症例の呈示,ありがとうございました。ほ かに何かご意見,ご質問等はございますか。な いようでしたら,大谷先生,ありがとうござい ました。 大谷 ありがとうございました。
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重松先生_16 山口先生_01 山口先生_02 山口先生_03 山口先生_04 山口先生_05 山口先生_06 山口先生_07 山口先生_08 山口先生_11 山口先生_12 山口先生_13 山口先生_09 山口先生_10