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表情から推測される表出者による状況評価および情動 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)表情から推測される表出者による状況評価および情動 Key words; 表情認知face perception, 顔の構成要素facial component, 状況評価appraisal, 情動emotion. 行動システム専攻 柳田. 目 的. 光代. 撮 影 状 況 日光を遮断した部屋で被写体の顔に影ができ. 対人コミュニケ−ションの媒体として,顔は人物同定,年齢,. ないように照明を配置した.カメラは,NIKON製デジタルカメラ. 性別など多くの 情 報 を 提 供している.特に,その動 的側面で. E2,128 万 画 素(1280pixel×1000pixel)を用い,三脚で固 定. ある表情は情動の動的変化を反映することから,対人手行動. して撮影した.撮影距離は130㎝,頭部から肩上部までがフレ. 決定の大きな指標 となり得る.これまで表情と情 動カテゴリの. −ム一杯に収まるようにカメラを配置した.. 対応づけに関して様々な研究がなされてきたが,情動喚起の. 表出者 大学生,大学院生 男性2名,女性3名,計 5名. 背景に,状 況に対する一連の評価 過程が存在する(認知的. 評定者 大学生および大学院生10名. 評価理論:e. g. Arnold, 1960 )ことを鑑みれば対人行動の決. 手続き ベ−スラインの刺激画像(表情筋に特に力を入れ. 定指標としては,情動のみよりもその背景の状況評価を知るこ. ないで,目を軽く開け,口元を軽く閉じた表情:刺激画像番号. とがより具体的な指針となると考えられる.. E1M1)とタ−ゲット画像を並置して呈示し,ベ−スライン画像. 表情 と情 動 に 関する従来 の研 究 は ,表情を分離できない. と比較して,タ−ゲット画像について各構成要素の変化が充. パタンとして捉える基 本 情 動 理 論 に沿ったものであった(e. g.. 分認知できるかどうかを2段階(0−1)で評定させた.. Ekman, 1992).一方,状況 評価と表 情との対応を考えるとき,. 結 果. 個々の状況評価appraisalと顔の構成要素facial component との. ベ−スライン画像との変化が認められ た画像を実験刺激とし. 対応関係に着目する構成要素主義(e. g. Smith & Scott, 199. て採用した.目・眉部位(E1 -3 ) 3枚,口元部位(M1-8)8枚の3. 7; Scherer, 1992, 2001)が生まれた.. ×8=計24枚 (Table 2).これらのすべての部位において変. 表情の表出 に関しては,特定の状況評 価項目と顔の構成 要素との関連性が確かめられている(Scherer, 1992; Pope &. 化が明確に表現されている表出者男女それぞれ1名ずつの 画像を採用した.. Smith, 1994) が,表情認知において特定の構成要素と状況 評価の推測とがどのように 対応づけられるかについては,ほと んど検討されていない.. Table 2 実験で使用する刺激画像表 顔の部位 刺激No. 目・ 眉 . そこで本研究では,表情から状況評価ならびに情動を推測 する際にがどのように寄与しているかを検討した.. 予備調査 実験刺激の撮影および選定 方 法 実験者の指示に従い表出者が表情筋を動かして顔写真を 撮影.その写真を評定者に呈示し,顔の特定部位が充分変 化しているかどうかを評定させた.表出者への指示内容は,. 構成要素 Facial Component. E1. 目を軽く開ける(眉間にしわなし). E2. 目を大きく見開く(眉全体上がる). E3 眉間にしわをよせる( 目はやや細く開く). 口元 . M1. 軽く閉じる. M2. 口角を上げる(口は閉じる). M3. 口角を上げる(口は開く). M4. 小さく円く開ける(“ア”発音の型). M5. 大きく円く開ける(“ア”発音の型). M6. 大きく縦長に開ける(“オ” 発音の型). M7. 噛み合わせて,歯をむきだしにする. M8. 口角を下げる. Scherer (1992) のSEC(Stimulus Evaluation Check)モデルで 提出された表出における状況評価と顔の構成要素の対応 (Table 1)に即した表情筋の動きである. Table 1 Scherer(1992)のSECモデルから予測した 表出における状況評価と顔の構成要素の対応表 状況評価 Appraisal. 顔の構成要素 Facial Component. 新奇性 Novelty 快適性 Intrinsic Pleasantness 目標/欲求一致性 Goal/need Conduciveness 対処可能性 Coping Potential. 眉や瞼のつりあがり,口を開く 口の開閉 眉間のしわ 歯をむきだしにする 口元の緊張,口を開く. 刺激画像 例.

(2) 実験1 表情から推測される状況評価と顔の構成要素との連関性. 3項目の結果の傾向はほぼ類似している.全体的にみると, 新奇性判断には“目を大きく見開いた”かどうかあるいはどん. 表情から表出者の状況評価を推測する際に顔の構成要素 はどのように寄与しているのかを検討した.. な型であれ “口が開いている”かどうかが新奇性の判断に貢 献することが示唆された. 快適性(Fig. 3) および. 方 法. 目標一致性(快適性と同様の結果のためFig. 3参照). 刺 激 画 像 予 備 調 査 で 選 定 さ れ た 顔 画 像 24 枚(表 出 者. -3. -2. -1. 0. 1. 2. 3. 目を軽く開く. 男女各1名ずつで,2種類で計48枚)(Table 2). 目を大きく見開く(眉全体上がる) 眉間にしわをよせる(目は細く開く). 被験者 大学生908名.. 口を軽く閉じる. 手続き 予備調査と同様,評定の基準となる表情−ベ−ス ライン画像とタ−ゲット刺激画像を並置して被験者に呈示した.. 口角を上げる(口は閉じる) 口角を上げる(口は開く) 小さく円く開ける(“ア”発音の型) 大きく円く開ける(“ア”発音の型) 大きく縦長に開ける(“オ”発音の型). そして,“何か出来事が起こった結果,ある人物の顔が左(ベ. 噛み合わせて歯をむきだしにする 口角を下げる. −スライン刺激画像)の顔から右(タ−ゲット刺激画像)の顔に. カテゴリ・ウェイト. Fig. 3 Intrinsic Pleasantness. 変化しました.この人物にとって,どのような出来事が起こった と思いますか”と教示し,タ−ゲット画像について状況評価( 7 項目; Table3,Scherer, 1992)を11段階(0 – 10)で評定させた. Table 3 状況評価Appraisalとその項目Item 状況評価 Appraisal 項目 Item 新奇性 Novelty. 快適性 Intrinsic pleasantness 目標・ 欲求一致性 Goal/need conduciveness 対処可能性 Coping potential. Suddenness Unfamiliarity Unpredictabilty Pleasantness Conduciveness Urgency Control/Power. 快適性と目標一致性は,非常に類似した傾向を示した.こ れらの評価に対応する顔の構成要素は,“眉間にしわをよせ る”である.眉間のしわに目標を阻む障害の知覚が反映され. 急に起きたか 知らないことが起きたか 意外なことが起きたか 良い(快適な)ことが起きたか 目標達成を促進することが起きたか 急いで対処する必要があることが起きたか 自分の力でなんとか対処することができるか. ることを示唆したPope & Smith(1994 )とも一致する.また眉間 のしわには,主観的快の影響も反映されると仮定していたが, この点については仮説を支持する結果は得られていなかった が,認知においては,彼らの仮説との共通点が示唆された. 緊急性(Fig. 4) および 対処可能性(Fig. 5). 結果および考察 数量化 Ⅰ 類 顔 の 構 成 要 素 が 状 況 評 価 の 判 断 に及ぼす 影響力の強さおよび影響の方向性を調べるために,顔の構 成要素を説明変数,状況評価を基準変数として,数量化Ⅰ. -3. -2. -1. 0. 1. 2. 3. 2. 3. 目を軽く開く 目を大きく見開く(眉全体上がる) 眉間にしわをよせる(目は細く開く) 口を軽く閉じる. 類による分析を行なった.それぞれの基準変数ごとに各アイ テム間のクロス集計を行なったところ,相関は認められなかっ た.結果の一部をFig. 1−Fig.5に示す.. 口角を上げる(口は閉じる) 口角を上げる(口は開く) 小さく円く開ける(“ア”発音の型) 大きく円く開ける(“ア”発音の型) 大きく縦長に開ける(“オ”発音の型) 噛み合わせて歯をむきだしにする 口角を下げる. 新奇性 突然性(Fig. 1),非熟知性(Fig. 2),非予測性(非. カテゴリ・ウェイト. Fig. 4 Goal/ need conduciveness - Urgency. 熟知性と同様の結果のためFig. 2を参照) -3. -2. -1. 0. 1. 2. 3. 目を軽く開く 目を大きく見開く(眉全体上がる). -2. -1. 0. 1. 眉間にしわをよせる(目は細く開く). 眉間にしわをよせる(目は細く開く). 口を軽く閉じる. 口を軽く閉じる. 口角を上げる(口は閉じる). 口角を上げる(口は閉じる). 口角を上げる(口は開く). 口角を上げる(口は開く). 小さく円く開ける(“ア”発音の型). 小さく円く開ける(“ア”発音の型). 大きく円く開ける(“ア”発音の型) 大きく縦長に開ける(“オ”発音の型). 大きく円く開ける(“ア”発音の型) 大きく縦長に開ける(“オ”発音の型). 噛み合わせて歯をむきだしにする. 噛み合わせて歯をむきだしにする. 口角を下げる. 口角を下げる. カテゴリ・ウェイト. カテゴリ・ウェイト. Fig. 5 Copig Potetial. Fig. 1 Novelty1 - Suddenness -3. -3 目を軽く開く 目を大きく見開く(眉全体上がる). -2. -1. 0. 1. 目を軽く開く 目を大きく見開く(眉全体上がる). 2. 3. 緊急性と対処可能性の傾向は,逆の相関を示した. この2つの評価の意味的関係は,論理的には独立のはず. 眉間にしわをよせる(目は細く開く). である.しかし,認知的には急いで対応しなければならない緊. 口を軽く閉じる 口角を上げる(口は閉じる). 急性の高い出来事は,その出来事の対処可能性が低くくなり,. 口角を上げる(口は開く) 小さく円く開ける(“ア”発音の型). ゆっくりと対応すればよい出来事は,起こった出来事の対処. 大きく円く開ける(“ア”発音の型) 大きく縦長に開ける(“オ”発音の型) 噛み合わせて歯をむきだしにする. 可能性が高くなるという内的モデルの存在が示唆された.. 口角を下げる. カテゴリ・ウェイト. Fig. 2 Novelty 2 - Unfamiliarity.

(3) -2. 以上のように,状況評価と顔の構成要素との連関性が示さ れた.さらに,表情認知における顔の構成要素間に判断優位. -1. 0. 1. 2. 目を軽く開く 目を大きく見開く(眉全体上がる) 眉間にしわをよせる(目は細く開く). 関係が存在することも示唆された.. 口を軽く閉じる. 実験2 表情から推測される情動と顔の構成要素との連関性. 口角を上げる(口は閉じる) 口角を上げる(口は開く) 小さく円く開ける(“ア”発音の型) 大きく円く開ける(“ア”発音の型) 大きく縦長に開ける(“オ”発音の型). 実験1では,表情から表出者の状況評価と顔の構成要素と. 噛み合わせて歯をむきだしにする 口角を下げる. の関係性を検討した.本実験は,表情から表出者の情動を推. カテゴリ・ウェイト. Fig. 7 Irritation(cold anger). 測する際に顔の構成要素はどのように寄与しているのかを検 討することを目的とする.. 応づけられることが示された.. 方 法. な情動の判断として用いられる構成要素である“口角を上げ. “いらいら”と“激怒”の相違点として,喜びといったポジティヴ. 刺激画像 実験1で用いた刺激と同じものを用いた.. る(口は閉じる)” が全体的なウェイトとしては小さいが,判断に. 被験者 大学生486名. 対して正に作用していることである.これは,おそらく目元部位. 手続き 実験1に準ずる.被験者には,呈示した人物が“ど. の意味が口元単独で有する意味に影響を及ぼしたことが推. のような感情を感じているとあなたは思いますか”と教示し,タ. 測される.郷田・宮本(2000)は,顔の上部および下部が情動. −ゲット画像について情動Emotion(14種類;幸せ,喜び,嫌悪,. 判断にどのように影響するかを検討している.しかしながら,こ. 軽蔑,悲しみ , 絶望,不 安,恐れ,いらいら(弱い怒り), 激怒(強. の結果から必ずしも情動判断に顔の上部ないしは下部のどち. い怒り),無関心,恥, 罪悪感,誇り)を11段階(0–10)で評定させ. らかが影響するかどうかは一概には結論づけることはできない. た.情動の種類は,Scherer(1992)に依拠した.. ことが示唆された.むしろ,上部・下部という分類よりも,顔のど の部分がどのように変化したのか,すなわち,本研究で行なっ たその顔の構成要素と情動判断とを対応づけ,それぞれの構. 結果および考察 数量化 Ⅰ 類 顔の構成要素が情動判断に及ぼす影響力 の強さおよび影響の方向性を調べるために,情動を基準変数. 成要素の相互作用を検討することにより新たな知見が期待で きるだろう.. として,実験1と同様に分析を行なった.結果の一部をFig. 6,. 以上のことから,“幸せ”,“喜び”,“いらいら”,“激怒”に関. Fig. 7に示す.それぞれの基準変数ごとに各アイテム間のクロ. しては,情動の判断と顔の構成要素との対応づけが認められ. ス集計を行なったところ,相関は認められなかった.ここで,説. た.しかしながら,その他の情動に関しては,少なくとも今回用. 明率が高い基準変数である“幸せ”,“喜び”,“いらいら(弱い. いたアイテムだけでは説明するには不十分だったと思われる.. 怒り)”,“激怒(強い怒り)” について詳しく述べる.. この理由の1つとして,Schererの提出したすべての構成要素 を扱っていないことが挙げられる.今後,今回用いた顔の構成. 幸せ(Fig. 6) および 喜び(幸せと同様のため,Fig. 6を参照) -2. -1. 0. 1. 要素に追加して実験を行なう必要があるだろう.. 2. 実験 3 および実験4. 目を軽く開く 目を大きく見開く(眉全体上がる) 眉間にしわをよせる(目は細く開く). 状況評価(実験 3) および 情動(実験 4)判断における. 口を軽く閉じる. 顔の構成要素間の優位関係の検討. 口角を上げる(口は閉じる) 口角を上げる(口は開く) 小さく円く開ける(“ア”発音の型) 大きく円く開ける(“ア”発音の型) 大きく縦長に開ける(“オ”発音の型). 実験1,2により,表情認知における状況評価および情動の. 噛み合わせて歯をむきだしにする 口角を下げる. カテゴリ・ウェイト. Fig. 6 Happiness. 判断に貢献する顔の構成要素間に判断の優位関係があるこ とが示唆された.すると,ある状況評価および情動判断に対し. “幸せ”および“喜び”の判断は,ほぼ類似した結果となった.. て正負両方に作用する顔の構成要素が混在しているときには,. 幸せと喜びとは,“口角を上げる(口は開ける)”および“眉間. この優位関係に従った“計算”がなされるのだろうか.. にしわをよせる” が対応づけられることが示された. いらいら(弱い怒り)(Fig. 7) および 激怒(強い怒り)(いらいらと同様のためFig. 7参照) “いらいら(弱い怒り)” および“激怒(強い怒り)” の判断と“眉 間にしわをよせる”,“噛み合わせて歯をむきだしにする”が対. 実験3,4では,判断に対して正負それぞれに作用する顔の 構成要素を組み合わせた顔画像を評定させる一対比較法に より,状況評価(実験3)および情動(実験4)の判断手がかりで ある顔の構成要素間の優位関係を量的に検討することを目 的とする..

(4) 方 法. 判断優位性をより明らかにできるだろう.. 呈示装置 Apple 社 Macintosh iMac, 15 インチディスプレ イ(800pixel×600pixel).観察距離は 30 ㎝.顔画像は,縦 1. 統 合 的 考 察 本研究では,表情認知における状況評価と顔の構成要素. 4.4°,横 11°の大きさ.顔画像を 2 つ並置した実験刺激は,. と連関性について検討してきた.その結果,状況評価および. 縦 14.4°,横 35°の大きさでディスプレイに呈示した.. 情動の判断に顔の構成要素が寄与していることが示唆された.. 被験者 大学生 140 名(実験 3),大学生 40 名(実験 4). すなわち,表出された顔の構成要素の変化を観察者が状況. 刺激画像 実験 1(状況評価)および実験 2(情動)におい. 判断の際の手がかりとして用いることが可能であることが示唆. て,判断に対して正負に最も強く作用する顔の構成要素であ. された.ただし,表出に関して体系的に仮説検証を行なって. る目・眉部位,口元部位を用いた.対呈示する画像としては,. いるScherer(2001)の結果と今回得られた“認知”の結果とを. 1)目・眉,口元それぞれの部位のみの画像,2)目・眉と口元の. 比較してみると,多くの評価については重なる部分も多かった. 組み合わせ画像(1-両部位が正の判断を示す画像, 2-負の. が,相違点も認められる.Schererは,評価の結果表出された. 判断を示す画像, 3-正負両方が混在した画像)を用いた.. 顔の構成要素を複数列挙しているが,これらすべての構成要. 手続き 被験者に顔画像 2 種を CRT モニタ上に並置して. 素が認知の際には意味を持つとは限らない.たとえば,Scher. 呈示し,当該条件−状況評価(実験 3)ないしは情動(実験. erが提出している “唇を左右に強く引っ張る”は,本研究の予. 4)に,よりよくあてはまる表情を選択させた.. 備調査でベ−スラインとの変化が認知されなかったため実験. 結果および考察. 刺激としては採用しなかった.このことからも表出されていても. 状況評価および情動の判断手がかりである顔の構成要素. 認知することができない構成要素が存在し,認知と表出にお. 間の優位関係を調べるために,一対比較法によって算出され. いてはその状況評価と構成要素との対応の違いが示唆され. た構成要素間の相対距離を求めた.その結果の一部を Fig.. た.. 8,Fig . 9 に示す.判断に対して正に作用する構成要素の組. 今後の展開として,まず,今回扱っていない Scherer および. み合わせ(目・眉 部 位 と口 元 部 位 )の顔画像が予測どおりに. 他の研究者が指摘する状況評価および顔の構成要素につい. 一番高く,判断に対して負に作用する構成要素の組み合わ. て再考し,実験刺激を追加して検討すべきだろう.もう一つは,. せの顔画像がもっとも低い値となった.. 文脈の問題である.本研究ではその表情を表出にいたる文 脈情報がなくても判断できるとする Scherer に準じてあえて文 脈を付与しなかった.しかしながら,文脈状況によってその表 情の意味が異なるとの指摘もある(e. g. Tanaka-Matsumi, Attivissimo, Nelson, & D'Urso 1995).今回,顔の構成要素との関係性が明 確にならなかった情動や状況評価の項目も文脈情報を加味. Fig. 8 快適性. することでと特定の関係性が生じる可能性がある.文脈の設 定によって顔の構成要素のもつ意味が異なるのかを検討して みる必要があろう.. Fig. 9 幸せ. “眉間にしわをよせる”が存在するとその影響が強いため,口 元から抽出される意味は“快適性”および“幸せ”判断にはほ ぼ影響しないことが示された.また,“口角を上げる”は,単独 では快適性が高いことを示す.しかしながら,目元が“眉間に しわをよせる”となると快適性が低いと認知されることが示され た.その他の評価判断においてはそれぞれの構成要素の示 す意味を相殺する結果となった. 本実験では,一部ではあるが構成要素間の判断優位性が 認められ た.しかしながら,刺激数および被験者数が充分とは いえなかったため,一部の傾向を把捉するにとどまった.今後 より多くの刺激を用いて実験を行なうことにより構成要素間の. 引 用 文 献 Ekman, P. 1992 An argument of basic emotions. Cognition and Emotion, 6, 169-220. 郷田 賢・ 宮本正一 2000 感情判断における顔の部位の効果, 心理学研究,71, 211-218. Pope, L. K., & Smith, C. A. 1994 On the distinct meanings of smiles and frowns. Cognition and Emotion, 8, 65-72. Scherer, K. R. 1992 What does a facial expression express? In K. T. Strongman (Ed.), International review of studies on emotion: Vol.2New York: Wiley. Scherer, K. R. 2001 Appraisal considered as a process of multilevel sequential checking. In K. R. Scherer, A. Schorr, and T. Johnstone (Eds.), Appraisal processes in emotion. New York: Oxford. Tanaka-Matsumi, J., Attivissimo, D., Nelson, S., & D'Urso, T. 1995 Context effects on the judgment of basic emotions in the face. Motivation and emotion, 19, 139-155..

(5)

Fig. 1 Novelty1 -  Suddenness
Fig. 7 Irritation(cold anger)

参照

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