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日本の大学と地域社会における留学生支援体制に関する研究 ―福岡都市圏を中心として― [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)日本の大学と地域社会における留学生支援体制に関する研究 ―福岡都市圏を中心として― キーワード:留学生、留学生政策大学の支援体制、地域社会の支援体制、大学と地域との連携. 教育システム専攻 孟 1.本論文の構成. 憲瑩. 1983 年に中曽根内閣が掲げた「留学生 10 万人計. 序章 本研究の概要と本論文の構成. 画」は 21 世紀初頭に実現された。これに引き続いて、. 第 1 章 日本政府の留学生政策における留学生支援施策. 2008 年日本政府(福田康夫内閣)は、 「日本を世界に. 第1節. より開かれた国とし、人の流れを拡大していくために. 留学生 10 万人計画における留学生支援体制. 1.外国人留学生の定義. 重要である」とし、 「留学生受け入れ 30 万人計画」を. 2.4つの留学生政策に見る留学生支援の展開. 発表した。これは留学生受入れを「グローバル戦略」. 3.国立大学留学生センターの設置と法人化による改革. 展開の一環とし、2020 年を目途に留学生 30 万人まで. 第2節. 留学生 30 万人計画における留学生支援施策. 1.留学生 30 万人計画とその理念モデル 2.在日留学生の就職支援の必要. 増やすことを目指すものであった。 一方、中国では、1978 年 12 月に、改革開放の方針 を決議し、海外留学を拡大する方針を取った。だが、. 第 2 章 福岡都市圏における留学生問題. 改革開放直後は、海外留学はまだ中国の国策のもとで. 第 1 節 大学の留学生受け入れ規模推移. なされていたので、留学は選ばれた一部のエリートの. 第 2 節 留学生問題の現状と課題. ものでしかなかった。しかし、その後、中国は急速に. ―留学生実態調査報告書の分析. 経済発展し、高度人材需要が高まっていた。現在、留. 第 3 章 福岡都市圏における大学の留学生支援体制. 学はもはやエリートのものではなくなり、一般的に若. 第 1 節 留学生支援体制の評価基準. 者の選択肢の一つになった。. 第 2 節 事例研究 1:九州大学. 中国の『改革開放』と日本の『国際化』とが相互効. 第 4 章 福岡地域における留学生支援体制. 果を発揮して、中国から日本への留学生数は大きな伸. 第 1 節 福岡県・福岡市による留学生支援. びを見せた。2011年(平成 23)現在、日本の受け入. 1.福岡県国際交流センターの設置と活動. れ留学生の出身国をみると、一番多いのは中国である。. 2.福岡国際交流協会の設置と活動. 中国人留学生受け入れ数は 87,533 人であり、全留学. 第 2 節 公的機関による留学生支援 ―福岡県留学生サポートセンター 第 3 節 留学生支援に関わる民間ボランティア団体 の活動. 生に占める割合は 63.4%(前年度 60.8%)と達し ている。中国人留学生の量的拡大は日本の大学の支援 体制にとって、大きな課題となっている。 しかしながら、問題は中国人留学生の支援だけでは. 1.福岡県におけるボランティア団体の活動. ない。近年、日本における留学生受け入れ総数は増加. 2.事例研究 1:福岡フレンドリークラブ. している。2011 年 5 月現在、138,075 人である「留. 3.事例研究 2:太宰府天満宮の交流活動. 学生受け入れ 30 万人計画」によって、2020 年までに. 終章 総括と今後の課題. これを約 2 倍以上増やすとなると、更に強力で有効な 支援体制が必要のではないだろうか。筆者は中国人留. 2.研究目的. 学生の一人として、中国人留学生の支援に特別の関心.

(2) を抱いているが、中国政府による中国人留学生の支援. れとも連携させながら、優秀な留学生を戦略的に獲得し. 政策については後日に譲ることにしたい。. ていくと述べており、高度人材獲得の立場を明確にして. 本論文では、日本の大学や地域の留学生支援体制の 現状と課題について考察する。. いる。一方で、従来からの、アジアをはじめとした諸外 国に対する知的国際貢献を果たすことも引き続き努めて いくとしている。 「留学生 30 万人計画」では、留学生の. 3.概要. 卒業・修了後の日本社会への受け入れの推進について、. <序章>. 具体的に 5 つの施策を提起した。この点は、1980 年代の. 本論文の研究目的、研究方法、先行研究を述べる。. 「留学生 10 万人計画」 が途上国の人材育成への協力ある いは知的国際貢献という文化政策的理念によって推進し. <第1章>. たのとは異なり、優秀な外国人材を日本に獲得するとい. 2009 年(平成 21)7 月 15 日、改正された「出入国管. う国益を追究している。つまり、日本の経済活動の担い. 理及び難民認定法」によって、在留資格「就学生」と在. 手として、労働市場に優秀な人材を確保するために、留. 留資格「留学生」が一本化され、新しく留学生の定義が. 学生の日本での就職・定着を推進するものである。いわ. 定められた。本論文はこれらの留学生に対する支援体制. ば人材獲得モデルである。日本の労働力不足に対応し、. を考察する。. また、アジア経済とのつながりを深めるため、新たな留. 第二次世界大戦後、欧米諸国及びソ連において、留学. 学生受け入れ理念を提出したのである。留学生増加とそ. 生受け入れが活発化した。 日本は 1980 年代からの高度経. の日本社会定住化のための、大学と地域社会の留学生支. 済成長期に本格的に留学生受け入れを始めた。留学生受. 援体制の確立がますます重要な課題となった。. け入れ数が急増する 1984 年(昭和 59) 「留学生 10 万計 画」を発表、それを達成した 2003 年(平成 15)までの 約 20 年間において打ち出された留学生支援政策につい て考察した。. <第 2 章> 福岡都市圏における大学の留学生受け入れ規模の推 移に関しては、1989 年(平成元)から 2011 年(平成 23). 国立大学の留学生支援体制は主に留学生センターを. までの 23 年間で、大学に在籍する留学生数は著しく増. 中心に展開された。留学生センターは初めは日本語教育. 加した。留学生在籍者数上位 10 校の合計の推移をみる. 機関であったが、1990 年(平成 2)省令により、入学前. と、 2011 年の留学生受け入れ数は 1989 年の約 13.4 倍、. の予備教育と入学後の日本語教育の有機的関連を確保で. 1999 年の約 4.4 倍となっている。因みに、九州大学は. きるよう、留学生受け入れ 200 人以上の国立大学に設置. 23 年間連続で第 1 位であり、留学生受け入れの絶対数. され始めた。1998 年(平成 10)頃に、国立大学における. も増えている。. 留学生センターは管理運営の慣行を確立し、組織・体制 の完成期を迎えた。日本語教育部門・短期留学部門・留. このような福岡都市圏の留学生規模の拡大傾向のた めに多様な留学生支援体制が重要となってきた。. 学生指導部門の機能を一層明確にし、部門間の相互協力. 全国的にみても留学生が多く暮らしている地域とし. により、留学生支援活動をより円滑的に展開するように. て、福岡都市圏における留学生の実際生活状況を捉える. なった。. ため、本論文は平成 8 年度、平成 11 年度、平成 21 年度. 2004 年(平成 16) 、国立大学法人化に伴い、留学生セ. の「留学生実態調査報告書」を分析し、この数年間留学. ンターは従来の省令施設でなくなり、設置形態が各大学. 生に関わる問題はどのように変化するのかを明らかに. に任された。各大学は自己評価・法人評価・教育評価な. した。 「卒業後の進路」に関しては、平成 8 年度から平. どを行い、留学生センターのあり方を模索するようにな. 成 23 年度まで留学生は日本に定着しようという希望が. った。この頃から各大学は自主運営の権利を行使して、. 強くなっていることが分かっている。 「日常生活の悩み」. 留学生受け入れに伴う多様な課題を積極的に解決するよ. では、 「物価が高い」ということは一番困るが、年度に. うになった。. 比べてみると、困る比率は数年間で減りという傾向が分. 「留学生 10 万人計画」を達成した約 5 年後、2008 年. かる。 「留学生の交流意欲」については、数年間で変わ. に世界のヒト、モノ、カネ、情報の流れを拡大する『グ. らず 9 割近くの留学生が日本人との交流を望んでいる. ローバル戦略』の一環として、2020 年を目途に留学生受. のが分かる。ある意味で、留学生側からの強く異文化接. け入れ 30 万人を目指す計画を発表した。いわゆる、 「留. 触しようという意欲が見えるだろう。. 学生 30 万人計画」である。日本社会への高度人材受け入.

(3) <第 3 章> まず、福岡都市圏における大学の留学生支援体制 についての評価基準を考察した。白土(2010)は、. 度、九大生協の「留学生支援のための保証制度」等 の支援を行っている。 就職支援について、留学生に対する就職支援活動. 大学における留学生に対する支援体制を 6 つのアプ. を留学生課・学務部キャリアサポート課は行ってい. ローチに分類している。それは、制度的アプローチ、. る。ところが、学務部キャリアサポート課は九州大. 問題解決的アプローチ、予防的アプローチ、教育的. 学全学の学生を支援対象としている。一方、留学生. アプローチ、研究的アプローチ、人員育成的アプロ. のみを対象とする場合、九州大学留学生課が実施し. ーチである。日本における留学生受け入れ数を増加. ている。. する現状に対して、各大学は留学生の受け入れの取 組みを把握するために、これらの 6 つのアプローチ に基づいて、検討する必要があると思われる。. 修学支援は指導教員の教育指導とサポートチーム 制度による支援活動を行っている。 問題解決的アプローチの内訳をみると、情報支援、. ここに、福岡都市圏における留学生受け入れ多く. 物質的支援、問題解決支援、情緒的支援を分けて、. のトップ大学である九州大学を事例とし、大学にお. 大学の各部門は各種の相談事項への助言・援助し(修. ける留学生支援体制を考察した。. 学・生活問題、進路、交通事故等)無料法律相談を. 戦後、九州大学の留学生受け入れ数の増加ととも. 紹介する。. に、留学生を受け入れる各学部に留学生担当の指導. 九州大学では、個別相談活動を行っている。留学. 教官が置かれ、1980 年には外国人留学生センター担. 生相談室では、授業の履修・入学・進学・住居・事. 当教官定員運用によって設けられ、箱崎地区に留学. 故・病気・家族の日本語学習・入園・入学などの相. 生の相互交流ならびに日本人との交流助成を行う. 談に応じ、相談できる。. ことを目的として留学生センターの業務を展開し、. 予防的アプローチは主にオリエンテーションを中. 留学生に対する全面的な支援活動を開始した。その. 心とする活動だと考えられる。九州大学では、例年. 後、20008 年(平成 20)に、 「留学生受け入れ 30 万. 通り、4 月と 10 月に、 「新入留学生オリエンテーシ. 人計画」が発表されたことを皮切りとして、2011 年. ョン」及び「サポーター・オリエンテーション」 (留. 11 月現在、九州大学に在籍する留学生数は 2,078 人. 学生課主催)が行われ、指導部門教員は適応問題等. であり、増加する傾向が明確であることが分かる。. についての講演を行っている。また、国際交流会館. このような現状に対して、2009 年 5 月に、 「外国人. もオリエンテーションを行っている。. 留学生・研究者サポートセンター」を設置した。2012. 教育的アプローチに関しては、留学生センターを. 年現在、九州大学においては、留学生支援を実施す. 中心として、展開している。運営組織によって、日. る機関は留学生センターだけでなく、留学生センタ. 本語教育部門、留学生指導部門、短期留学部門を分. ー・留学生課と外国人留学生・研究者サポートセン. けている。各部門はそれぞれの事業を分担し、留学. ターが協力し、留学生に対する支援活動を行ってい. 生に対する支援活動を実施している。. る。 ここに、九州大学の留学生受け入れの現状に基づ いて、白土(2010)の 6 つのアプローチの分類によ って、九州大学における留学生支援体制を明らかに した。. 研究的アプローチは、支援目的とし、支援施策の 検討である。留学生の修学・生活実態調査を通じて、 留学生の生活現状を把握できるようになった。 九州大学では、毎年、九州大学留学生センター・ 留学生指導部門報告書を提出ひている。. 制度的アプローチの内訳をみると、経済支援、健. 人員育成的アプローチは、スタッフの支援能力を. 康支援、住宅支援、就職支援、修学支援を含んでい. 高めるため、支援方法の基礎応用の学習や各種研究. る。. 会を指す。. 経済支援は、奨学金、授業料減免、アルバイト許 可、学習奨励費等を含めている。 健康支援は、学生教育研究災害傷害保険、健康科 学センターの設置、定期健診制度、国民健康保険制. JAFSA は民間非営利団体とし、さまざまな議論・ 政策提言・研究事業等を通じて、国際交流・国際教 育の発展を進めている。九州大学は JAFSA の団体正 会員として、JAFSA の活動に参加している。. 度等を実施している。 住宅支援は、九州大学国際交流会館、住宅保証制. <第 4 章>.

(4) 福岡県国際交流センターに関しては、福岡県国際 交流センターでは留学生対して、経済上、生活上、. 5.主要参考文献・資料. 修学上等多様な支援活動を展開している。留学生に. ・横田雅弘・白土悟『留学生アドバイジング:学習・. とって、日本語の能力は非常に重要であると考えて. 生活・心理をいかに支援するか』ナカニシヤ出版、. いる。日本語が順調に使えなければ、友だちができ. 2004 年 ・石附実『日本の対外教育:国際化と留学生教育』. ないし、自分の勉学にもできなくなる。この問題に. 東信堂、1989 年. ついて、福岡県国際交流センターはかなりの力を入. ・白土悟「大学における留学生支援体制の再考」 、 『留. れた。特に、ボランティア団体が行う日本語教室に. 学交流』 、2010 年 4 月. 対して、人員育成から、会場、教学道具提供まで、 全面的に支援している。日本語を勉学する要望があ. ・ ・江淵一公『留学生受け入れと大学の国際化―全国大. る留学生にとって、役立てると思われる。. ・. 学における留学生受け入れと教育に関する調査報. ・. 告―』広島大学・大学教育研究センター、1989 年. 福岡国際協会は、多様な留学生支援活動を展開し、 留学生に対していろいろな情報や場などを提供し、 何に知らず留学生にとって、日本人との交流を始め る機会になっており、日本人や日本社会に興味関心 を起こすことは留学生自身の日本適応を促進する効 果があると考えられる。 福岡県におけるボランティア団体の活動は活発化 した。 『福岡県の国際交流団体等便覧』 (2005)によ れば、 「留学生との交流を行っている団体」は約 93 団体に上ぼる。地域には、留学生の支援をしたり、 異文化を理解したいと考えている人々が多い。ここ に、福岡フレンドリーグラブと太宰府天満宮を事例 とし、地域ボランティア団体の活動を考察した。 <終章> 1. 「留学生 10 万人計画」が発表されてから、留 学生 10 万人を受け入れる目標を達成するまでの留 学生に対する支援政策の変遷についてまとめた。. 2.福岡都市圏における大学の留学生受け入れ規模 の推移を明らかにした。 3.留学生支援体制の評価基準としての6つのアプロ ーチを活用し、九州大学を事例として、国立大学におけ る留学生支援体制の現状を分析した。 4.福岡都市圏における行政機関、民間団体による留 学生支援活動を考察した。 4.主要引用文献・資料. ・文部科学省高等教育局学生・留学生課『我が国の留 学生制度の概要―受け入れ及び派遣』 、平成 16 年度― 成 23 年度 ・留学交流事務研究会編『留学交流執務ハンドブック ー平成 14 年度』第一法規出版株式会社、2002 年 ・(独)日本学生支援機構「私費外国人留学生生活実 態調査」 、2005~2011 年度版.

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