Title
器具の相違による液性限界値のちがいと一点法の適用に
ついて
Author(s)
上原, 万成
Citation
琉球大学理工学部紀要 工学篇(2): 111-126
Issue Date
1969-04
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12000/23830
Rights
1
1
1
器具 の相違 によ る液性限界債のちが い
I
と一点法 の適 用について
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Ⅰ
ま え が き 液性 限界試験 は,1
9
11年 のア ッターベルグ に よる 最初 の 研 究報告 が あ っての ち,A.カ サグ ラ ンデがその装置 の開発 を発 表 し具 体化 され て以来 ,最 もな じみ の深 い土質試験器 具 の 一 つ とな ってい る. しか しなが ら,今 日なお,国 に よって, あるい は研 究機関 によ って,そ の装 置お よび方法 に多少 の相違 がみ られ ,そのた めにお こる試鼓結 果 の ちがいは,避 け られt
受付 :1968年10月3
1
日*
琉球大学理工学部土木工学科1
1
2
器具の相違による液性限界値のちがいと一点法の適用について ない よ うである.一方,試験器具 および方法の不完全 さか ら生ずる必然的な実験誤差 も避 け られない もの とな っている.それ故 に,これ まで も,試験器具および方法 の相違 による試験 値 のちがい, 個人差 もふ くめた実験誤差 の間席 , 方法 の じん速簡便化, 更 には,器具 の改 1) 良,改変 な どについての多 くの報告がなされてきた. 本報文は, これ ら諸問題 の うち,器具 の相違 による試験値 のちがいに関す るもの と, じん 速簡便汝 としての一点法 に関するもの とである.前者 については,本学科所有 の米国製器具(ASTM
型) と日本製器具 (∫IS
型) を使 って,沖縄本島各地 か らとった試料土につい て,比較試験 を行 ない,後者 については,これ らの試験値 を利用 して,二種 の器具それぞれ に関 して,沖縄 の土 に対す る 一点法 の適用性(
t
a
n
βの決定) を検討 してみた. 本実験 の試 料数 は少ないけれ ども,かな り良好 な結果が得 られたので,一先ず報告することに した.正
器具の相違 によるL.
L.
価の ちがいT
託負器具 (1) 日本M.
T.
社製品 液性康 界測定装置J
I
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適用(2) 米国
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T.
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ASTM D
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AASHO
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適用2
おもなる相違点 (1) 硬 ゴム台S.
T.
製品は非常 に硬 くて,爪で押 して もめ りこむ ことがない.M.
T.
製品はS.
T.
輿 品に比 して軟 か く,爪で押 す とめ りこみあ とがのこる.都合 によ りゴム台の質および硬度 を 調べ ることはで きなかったが,S.
T.
製品は,カタ ログによる と,単 に,Har
dl
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とな っているが,反趣力が大で,其蝕皿 の落下音 は明 らかに高い.M.
T.
製品 はB.
S.
規格2
1-2
5
使用 とな っていて,落下音 はにぶ くて低い.なお,両者 ともゴム脚 をつけてある. (2) ミゾキ リpi
ct
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器具の相違による液性限界値のちがいと一点法の適用について 113
Pi
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ure2.Gr
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写真1 2に示 してあるように,S,T.奥品は 三角形断面 をな してい るが,M.T.製 品 はカ サグ ランデ捷案 の平板形 をな してい る.前者 は, ミゾをつ くる とき 試料土 を側方 に押 し分 け るよ うにな り, したが って ミゾ周辺 に圧力 が加 わ っている.後者 は,試料 土 を手前 にひ きず りこむ よ うに して ミゾをつ くるので, ミゾ周 辺 が乱 され ,や ゝ塑性 度 の低 い土 に対 しては正 しくミゾをきる こ とが困難 である. ミゾキ リ部 の形状 寸法イま,図- 1
に示 してあ る. 「一三 ヒ」
: -●l■・・l
MT器具 (JIS) MT器具6
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114 器具の相違による液性限界値のちがいと一点法の適用について (3) 真 ち ゅう皿
S.
T.
製品は 重 さ1
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で,M.
T.
製品 は1
7
8.
1
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で ある. また,外 見上 ,前者 は丸妹 を おび てや ゝ深 いのに比 して,後者 はや ゝ浅い.皿 の傾斜角度 は前者 が約7
0
度 で,後者 は約7
5
度 である. (4) 衝動装置 カム 図- 1
に示 してあるよ うに,両者 の形状 は異 な ってい る.3
試料土 沖縄本島の南 ,中,北部 の各市町村 の畑地 ,原野 か ら,地表面下0.
5-1.
0
米 の深 さで サ ンプ リング し,実験室 に もちかえ って気乾 してJIS A 1
2
01
改訂案 に したが って試料羽毛 を行 な った. これ ら試料土 をカサグ ラ ンデの塑性 図 にプ ロッ トしたのが図-2a
お よびb
で ある. F】g2-a 60 50 ( 40 演 芸 30 ft t1 20 10 CM22C
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110 浪性閉 弗 (形 )器具の相違による酸性限界値のちがいと一点法の適用について 115
4
試験方法 まえが きで も述 べ た よ うに, JIS A-1
2
0
5
とASTM D-4
23
-5
4T
では,その方法 2) 3) の細部 にあ って規 定 の差異 があ る. これ は実 は重 大 な こ とで,内 田その他 の報 告 に よれ ば試 験値 に及 ぼす影響 は大 きい. 今 回 は,両器 具 に よる 試験値 の ちがい を -率 に比較 す るた め に,その方法 は根本的 にはJIS A 1
2
0
5
に準 じる もの とした が ,次 の よ うな条件 を加味 して 仝試料 の試験 を行 な った . (1) 多 くのた め しね りののち,最初 の注水量 をで きるだけ4
0
比 とし,や む をえぬ場 合 に, 粘性 の高低 に よって5
0
cJlあ るいは3
0
cJlとす る.(
2
)
最初 の注水後5
分間 よ くね り合 わせ ,以後落下回数 が3
0
付近 で ミゾが 約1.
5
m とじる よ うな状態 にな るまでは,毎 回2cAずつの水 を追加 して2分 間ね り合 わせ る操 作 を く り かえす . (8)(2)の操 作後3
0
分間 , しめ った布 でお ゝって放 置 す る. (4) 測定 は, これ までの例 か らみ て,流動 曲線 が直線 とな るよ うで きるだけ落下 回数 を1
5
-3
5
の範 囲で行 な う. (5) ミゾキ リは手前 にひ くよ うに して動 かす . なお,同一 サ ンプルは二種 の器具 で同 日に測定 したが,試験期 間 が長 くな り,その間 ,実 験室不備 のため気温 お よび湿度 に変動 があ った . また ,測定 は,すべ て同一 人 に よ って行 な われ たが,初心、者 であ ったた めある期 間試験 に馴 れ てか ら,本格的 な測定 に入 った こ とも断 わ ってお く.5
試 験結 果 試験結 果 は,試料採取 地 ,塑性 限界 ,分類 の結 果 とともに表- 1
に示 して ある.116 器具 の相違 による液性限界値 のちがい と一点法の適用 について 表- 1 測 定 結 果 一 党 表
∴
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料
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町
地
村
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4 33.1 MH MH 8.3 12.5 2′
′
34.8 32.3 56.4 64.7 32.2 MH CH8
.
3
12.9 3 西 原 7.2 14.4 58.0 65.9 26.8 CH CH 7.9 12.0 4 都 覇 19.5 14.8 63.4 73.0 29.0 CH CH9
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6
13.2 5 石 川 13.4 23.8 39.7 44.0 21.1 CL CL4
.
3
9.8 6′
′
15.4 10.9 45.0 50.9 24.0 CL C 5.9l
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5
7 ′′ 27.8 40.3 56.
0 60.7 31.2 MH CH 4.7 7.7 8 糸 満 0.2 14.9 49.1 53.6 !2
1.6 . CL CH4
.
5
ら.4 9 ′′ 26.3 ll.3 54.1 63.2 27.6 CH CH 9.1 14.5 1つ′
′
19.3 16.0 50.4 61.5 l22.0 CH CH ll.1 18.1 ll′
′
9.0 18.3 43.9 49.6 22.0 CL CL 5.7 ll.6 12′
′
24.2l
l.3 53.
2-
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.
2 25,4 CH CH6
.
0
10.1 13′
′ 9.8 i 18.ら 46.6 57.1 24.2 CL CH 10.5 18.4 14 ′′ 17.9 13.0 63.0 73.至
i1 31.3cH
CH
10.6 14.5 一二 ;-i ′
′
.ll.5 6.5 65.5 71.7 l35.0 MH MH 6.2 8.7 16′
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3
18 北中城 14.6 .23.1 61.6 64.9 35.5MH LMH
1
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.
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5
.2
19 中 城 7.9 14.6 l50.5 56.7 I22.5 cHI
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cH 6.2 10.9 20′
′
16.7 21.4 51.2 l59.62
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CH CH 8.4 14.1 21 西 原 33.0 ;32.2 51.45
6.22
5.0 CH CH 4.8 8.6 22与那原
ll.6 3.6 43.0
49.32
9
.
Oi M L M L 6.3 12.3 23′
′
8.4 6.6 49.0 59.2 28.8 M LCH
10.21
7
.
3
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佐
敷 15.2 8.4 46.3 l50.5 24.4 CL CH4
.
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CHL
A
6.7器具の相違による液性限界値のちがいと一点法の適用について 117 31
′
′
22.7 14.5 58.8 63.8 30.7 CH CH 5.0 7.8 32′
′
62.7 45.8 88.6 107.1 42.3 MH CH 18.5 17.3 33 ′ノ 19.0 ll.9 55.4 65.9 27.5 CH CH 10.5 ユ6.0 34′
′
21.5 26.9 69.1 77.0 29.4 CH CH 7.4.96 10.2 3 5′
′
12.8 6.4 43.2 47.8 27.0 ML CL 9.7 36′
′
12.6 9.7 39.8 42.9 26.7 ML M L 3.1 7.2 37′
′
4.7 8.9 57.9 60.4 36.6 MH MH 2.5 4.〇 38 美 里 20.6 5.9 39.0 44.8 27.8 ML ML 5.8 liz.9 39′
′
ll.5 12.0 34.2 38.9 22.9 CL CL 4.7 12.2 40′
′
12.5 ll.3 54.0 62.0 26.3 CH CH 9.0 12.9 41/
I
.
20.4 12.1 70.4 81.1 30.4 CH CH 10.7 15.3 43′
′
13.7 19.0 63.6 70.0 31.4 CH CH 6.4 9.2 44 45′
′
′
/
1l4.l.32 14.7.8ら 457.3.37 650.3.70 222.4.04 CLCH CHCH 5.7.34 110.2.20 46 勝 連 22.8 6.1 52.3 58.8 29.4 MH CH 6.5 ll.0 47 .石 川 14.8 33.9 23.5 CL 48′
′
10.1 32.5 21.0 CL こ ゝでは流動 指数Ifお よび L.L.値 の決 定 にすべ て最小二乗法 を適用 し, 塑性 限界 はJIS A 1206に した が って測 定 した .6
結果の検討および考察 (1) 塑性 図上 での土 の分類結果 にお よぼす影響 図- 2a,2b
か ら,器 具 の相違 に よって 土 の分類 結果 に 変動 を生 じて い る こ とがわか る.絶対的 な傾 向 として,M.
T.
製器具 を使 うとL L.値 が高 くな り, した が って シル ト質 土 や塑性 土 の低 い粘土 とい うものが塑性 土 の高 い粘 土 の部 に移動 してい る.その内訳は表-2
の通 りであ る. Table-2 Classificationresults完 h
l全体
CH CL IMH ML sT14
6
22 9 1 9 6 MT l 48 34 (64) ( 4 4lW 若緑tの和遠による液性擬界値のちがいと一点法の適用について これ か ら,吾 々が
ASTM
4
) に準 じた外 国 の報 告 に按 す る時 は,L・
L
・値 の割 引 き , したが っ てセ ン断 強 さの割 増 しを考慮 に入 れ るべ きで あ る こ とがわ か る. (2) L.L.僅 差 の検 討図- 3a, 3b
に ,両器 具 に よる液性 限界値 の差 お よびM .
T.
器 具 のL.
L.
値 に対 す る差 0 父り 6 ■ 勺 2 tl 1 1 算H.f平均値 7.012 標 準 偏 差2812 ∩-46 「「
12 △.(MTI.L -ST L L)(港) FIP3-8DIStrlbutLOnOEthedlffereneebetweenL LvaJueslnterTnSOfmoIStureContent
4 5 6 7 8 91
△
0111213141516171810M
T
一
日▲
Xloo(形)-I:lg3-bi)lstrlbutl0rLOfthed)EEerencebetween L LvalueslnterTnS。f △ MTlI 率 の分布 を ヒス トグ ラムで示 して あ る.試 料数 が少 ない ので,い づれ も凹凸 がみ られ るが, 4) 一 応 正規 分布的性 格 を もってい る. これ までの報告 例 の よ うに,単 に差 につい ての平均値 お よび標 準偏 差 を計算 してみ る と,次 の よ うにな る. 平 均 値
-7.
01
2(%)
標 準偏 差-2.
81
2
中 には か けは なれ た値 もあ った が仮 説 検 定 の結 果 それ らを除外 す る必 要 はな く,全 体 につ い て9
5%
信 頼 区間 はt
分布 表 を使 って7.
01
2
土0.
8
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・値 の ちが いは,含 水 比 で3-4%
とな ってい る. また,J.
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hel
lに よ れ ば ,ASTM
型 ミゾキ リは カサ グ ラ ンデ型 よ りも ミゾ を深 くき り,低 いL.
L.
値 を与 え 6)て い る.一方
,MI
D・
Mo
r
r
i
s
らに よれ ば ,ASTM
型 ミゾキ リとHar
dr
ub
be
rb
a
seの組 合 わ せ は カサグ ラ ンデ型 ミゾキ リとHar
dr
ubb
e
rb
a
seの組 合 わせ よ りも,平均 約4%
低いL L.
*
7
) 値 を与 え てい る. とは言 え, カサ グ ラ ンデ も指摘 してい る よ うに, ゴム台や ミゾキ リ以 外 に ち,
L・L・値 の変 動 を生 ず る要 因は 多 く,た とえば ,液性 限界 測 定値 自体 のバ ラ ツキ も問題i
:
・
'Nor
ma
n
はB・
S
・規格器具でL・
L・
-4
1
・
0-7
2
・
0
%
の土を,Mi
t
c
h
e
llはカサクランデ ミゾキリを使ってL・
L-1
8
・
5
-4
9
・
C
%
の土を,Mo
r
r
i
s
らはカサグランデミゾキリとHa
r
dr
ub
be
r
の組合わせでL.
L
-1
6
.
0-5
9.
C
O/,;の土を試験 したO器具の相違による液性限界値のちがいと一点法の適用について 119 8) を含 んでい る.
∫.
Fe
da
らに よれ ば,L.
L.
値 が3
0-3
5%
の試料 を使 ったTe
s
o
r
i
e
r
e
の くり返 し測定 で,平均変動係 数 は3.
3% (
ma
x.
6.
7
2%,mi
n.
0.
6
5%),L,L.
値 が8
4.
6%
と5
4.
8
%の試 料 を使 ったKo
ho
ut
e
k
の測定 では,平均変動係 数3.
5
6%
とな ってい る. そ こで,た ゞ単 に,両器具 の差 の平均値 を問題 にす るよ りも,各種 の土 に対 して給 体的 な しらえ方 と して,図-4
の よ うに,M.
T.
器 具 に よるL.
L.
値 に対 す る両器具 のL.
L
_値 の (% ) ( 1 1 ト S -1 T ト Pn V9
8 7 6 5 ■ 3 21 9 a7 6 5 4 3 2 20 30 40 50 60 70 80 丈) 100 110LL byMTdevL亡e (%l
Fi
g4Va
r
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a
t
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o
no
ft
h
edi
f
f
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c
e
(
△)wi
t
h
L.
L,v
a
l
u
e
so
ft
h
es
oi
l
s
.
9) 差 の関係 をプ ロ ッ トしてみ た.当然L.
L.
値 の個 人差 の問題 もあ るが, こ ゝでは同一 人 の テ ス ト結果のみか ら判断 した .図- 4
に よれ ば,L L.
値 の高 い土 ほ ど両器 具 のL.
L.
値 差 が 大 き くで る傾 向があ り,全体 と して次の よ うな関係 式 が見出 だ され る.△ - 0.
1
3
3L.L.- 1.
01
8
但 し,A
-両器具L.
L.
値 の差 (%)L.
L.
-M.
T.
器 具 に よるL.
L.
値 (%)皿
一点法 に関す る試 み 一点法 につい ては, カサグ ラ ンデの発議以来 ,栄 .英 , カナ ダな どで検 討 され ,実用化 し 10) 11) 12) てい る ところ もあ り,わが国 で も,藤 本 ,横瀬 ,柳瀬 らの報告 が あ ってその精度 は良好 の よ うであ る.本研 究 では,沖縄 の土 に対 す る一点法 の適用性 を前章 のデーター を利用 して器 具1
3) 別 に検討 した .一点法 は大別 して三 つの型 に分 け られ るが, こ ゝでは最 も多 く使 われ てい る 次式 につい てのみ倹 討 した .w
L -W
z(%
)t
a
m p
但 し,WL
-一 点法 に よるL.
L.
(%)Wx-Nx
に対 す る含水 比 (%)Nx
-測定 され た任 意 の打撃回数 (回)t
a
n
β
-両対数紙 上 の流動 曲線 の傾度120 器具の粕達による液性限界値のちがいと一点法の適用について カサグ ラ ンデ に よれ ば,一 点法 は共通 な地質学起源 の土 につい て有効 であ り, また,有機 質土 や火 山灰 土 のあ る もの には適用 しがたい とも言 われ てい る. しか し,米 国
Wat
e
r
way
s
14) 10.12)Expe
r
i
me
nt St
at
i
o
n
や 藤 本 らの報告 か ら一概 にそ うとは言 えない よ うである. したが っ て, こ ゝでは全試料 につい て一点法 が適用 可能 として算 定 を行 な った.勿論 ,資料数 が多い ほ どそ の精 度 は よ くな るが,後述 の よ うに,少 ない資料 で もかな りよい結果 が得 られた.1
実験式 の決 定 実験式 に採用 す るt
a
n
β の代 表値 を表 わす のに,算術平均 .幾何平軌 モー ド. メデ ィア ンな どがあ るが, こ ゝでは,算術平均 を と り,標 準偏差 と共 に表-3
に示 す . これ か ら,実Ta
bl
e
-3 Compa
r
i
s
onoft
heva
l
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soft
a
n
β
く
丁
ヽ
義-
\
\\ 資 料 数ia
n
# 値 l標準偏差 信9
頼 区 間5
%
ST
460
.
1
3
0 3
±0.
0
7
0 0
.
1
5
1
-0
.
1
0
9
験式 は次 の よ うに表 わ され る.S.
T.
製器具 の場合 w L-W
x
(
%)
0
・
1
3
0
M.
T.
製器具 の場合 w L -Wx(%
)01
0
98
2
結果の検吋 (1) W LとIfの関係 一般 に,一 点法 が適用 で きる土 は,L.
L と流動 指数 との間 に相 関関係 がみ られ る と言 わ 10.12) れ てい るが, これ も必 らず Lもそ うとは言 いえない よ うであ る. 40 50 60 70 80 901
0
0
液性限界L.L (% )FI
E5-ARe
l
a
t
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o
n
s
h
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pb
e
t
we
e
nl
i
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mi
t
a
n
df
l
o
wi
n
d
e
x
(
ST)
器具の相違による液性限界債のちがいと一点法の適用について 50 45 40 35 30 25 旨 J20 15
.
1 30 40 50 60 70 80 90 液性棋界L L.(鶴) Fig5-bRclltionshipbctyeenIipidlimit ATIdnor indel(MT.) 121 本実鼓 について も図- 5a
.5b
に示 す よ うに,その明確 な関係 はみ られ ない . しか しその 精度 は良好 であ った. (2)全試料 のt
a
n
βの分布 全試料 について,その相対度数 の分布 を示 す と図-6a.6b
の よ うになる. いづれ もある毎度 の凹凸 がみ られ るが ,一応正規分布 をな してい る もの と考 え て よかろ う. (3)標準試 験債 と一点法債 との誤 差 碍準液性限界試掛 こよるL.
L.
値 と一点法 によるL.
L.
値 との間 には, 当然誤 差 が考 え ら 川 ST DtLl
3
l
ll2O9 ∩l -48■ q=-0.070 0ユ 0 07 ∼ 一 3 21
0
0
II JI l Fig6-a Tl】1βDistributionoLthevaluesof the index,tanβ(ST.)
122 器具の相違による液性限界値のちがいと一点法の適用について (% ) 世 擬 音 Bi 005 010 015 T&nP 020 0.25
Fig 6- ら Distribution oL the ya)ues oL the index,t
A
nP(
MT.
)
れ ,そ の誤差 は液性 限 界 の定義 か ら2
5
付近 で小 さ く,それ よ り落 下 回数 が 増 え るか また は減 るかに した が って誤差 も大 き くな る こ とは想 像 に難 くない . 詑 加 18 t6 14 12t0
8 6 4 20
(a/ a ) 1 S き \ (1 0 Ltt -'tS
Ltt X)O t I Ja 駄 棚 拡 5 6 1 3 4 Nの範囲(NtJmbersofb)ows) Fig 7- 8 Errors ofW(A)013L.L yalue, (W OL) from standardL,L.test.values(W SL)器具の相違による液性限界値のちがいと一点法の適用について 2 2 -1 -(% ) 1 S L Yt J へ亡 き J IS A 営 t-Ja ) 計 輔 拡 123
F・g7-らErrorsofW(卦o・09% yAlues(WoL)
Erom st且nd8rdL.L.t●styAIues.(W sL)(MT.) 図
- 7a, 7b
に, この関係 をプ ロ ツ トしてあ るが,誤差率 は これ までの報告例 にな らっ て, er(% ) - 100 (W sL- W oL) / W sL 但 し, er-誤差率 (%) W sL-標準試験L.L.
値 (%) W oL-一 点法L.L.
値 (%) と した .落下回数Nの範 囲 を①13- 17,②18- 22,③ 23-27,④28-32,⑤33-37,⑥38-4
2
の6
グル -ブに区切 り,各範 囲 の中にあ る全試料 の誤差 のバ ラツキお よび平均値 を調べ て み た. 図 か ら明 らかな よ うに, N -25付 近⑨ を最低 に して,両者 ともNが大 き くな って も小 さ く な って も誤差率 は増加 してい る.その増加 の度合 いは,Nが小 さい側で は非常 に大 き く,N が大 きい側では小 さい . しか もそのバ ラツキの程度 も同様 な候 向 を示 してい る. また ,器具 の相違 による誤差率 の ちがい も見出 だ され る. この誤差率 はN -20- 30の範 囲 な らば3% 以 内 にお さえ られ ,標準試験値 の各種要因 によるバ ラツキ を思 えば,納得 で きる もの と考 え て よかろ う. また,両器具 の落下回数 がた また ま一致 してい るサ ンプル を と りあげて ,一点 法 によるL
・L
・値 と各落下回数 に対 す る誤差 ,誤差率 と落下回数 との関係 をプ ロ ッ トした の が,図- 8
お よび- 9
で ある.(% ) '1 .1 rj C・ 叫 り ︼増 せ '-( % ) 掛 軸 慈 54 53 52
5
53,4 WsL-4wL-W(△-WSL-WL(%)9.普3∫%)0,098(%)1
50 49q
l
く
一
>
● 48M
.
T
.
7
4 46A
I
46,4 wL- W(WsL-4△
芦JwsL-WL30%塞)oJ3-(%)(0/cL) 45 44 43 4412 40 - 1-
:v Z.6 Wlロくつー.-43.9 I5 18 23 32S.T. I ! SamNo22p一e 15 20 25 30 35 N H(・() Frg8J)lEferenctL50foTTe.POlntmethodI」ー fordlfferentnLJmbersofb一ows. 16 SaNo.mpl22e 14\
1120 V T.\
8 \ -6 4\ \
\
2 0 15 18 23 32N
(lpl)Fig9 Errorsofone-point
L.
L
va1nesfromstandardLL testvaluesfornumbersofblows
これ らか ら,両器具 とも先 に述べたよ うな,同僚向 をもってお り
,N
が2
5
前後では,器具 の 相違 によるちがいはあま りみ られない.次に,実鼻式決定 に用 いなかった資料 について,標準試験 による
L.
L.
値 と実験式 を使 っ て得たL L.
債 との関係 をプロッ トしたのが図-1
oa,b
,Cである.器具の相違による液性限界値のちがいと一点法の適用について (%
)
1 1 や T ; )増 ぜ -L∝) (学外)l
g
O
^
2
g
E
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80 21顎
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下回政 を示すl Jl 125 30
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50 60 70 80 獣) 100 7fiP拭JiによるLL(%)Fi
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c
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-
c
a
mp
usd
at
a
)
図
-1
0a
はS.
T.
器具 について本学科既存 の資料で,図-1
0b
はM・
T.
器具 について本学科 既存 の資料で調べた ものである.図-1
0
CはJ
iS
型器具 を使 った学外 の資料 による もので ある.いづれ も,落下回数 は,なるべ く20か ら40の範囲の もの を採用 して計算 した. これ ら の図か ら,落下回数 を適 当に とれば,本実験式 を適用 してかな りよい結果 が得 られ るよ うで ある.た ゞ,S.
T.
製器具 については,資料数 が少 ない上 に,精度 がJ
IS
型器具 に比 して 多少悪いよ うなので後 日確認 したい.更 に,落下回数 の と り方で も,N
を2
5
以下 に とるよ り はN
を2
5
以上 に とった方 が,精度 はよい よ うであるが,今後資料数 をふや して確認 してゆき たい.Ⅳ
あ と が き 液性限界試験 については,すでに述 べたよ うに,種 々の問題 が捷起 され ,現行試験法 の不 備 な ど指摘 されているが,いちがいに否定で きないだけの意義 をもち,現行試験装置お よび 規定 に準 じて実施 され てい る今 日,吾 々は,外 国特 に米 国の報文 にお けるL L.
値 に対す る 態度 を確認する必要 がある.その意味 において,今回の試験結果 は,その一助 にな る もの と 思 う.一点法 の適用 については, これ まで の報告 か らみ て,指数t
a
n
βの値 は その大 きさに よってASTM Type
とB.
S.
Type
とに大別 され る.沖縄 の土 の場合, S.T.
製器具 を使用 すれば値 が大 き くで てASTM Type
に属 し,
M.
T.
製器具 を使 えば値 はや ゝ小 さ くB.
S.
Type
に属す る .
今後 ,沖縄 の各島々の 土 について, 試験者 お よび 使用器具 (使用年月の長 ,短 もふ くめ て) を変 えて資料 をあつめて,器具 の相違 の問題 や一点法 の精度 を確謬 してい きたい _
終 りに,液性限界お よび塑性 限界測定 は,本学科卒業生比嘉勝三君 が卒業研究 テーマ とし て実施 して くれた ことを記 して謝意 を表す る.
126 器具の相違による液性限界値のちがい と一点法の適用について
拳 考 文 献
1)たとえば
ASTM STP No.254Symposium onAtterbergLimits,PapersonSoils1959meetings Geotechnique γol. 8 p.p.78-91(1958)
vol・ 9 p・p・1-8 (1959) 土 tA# vol・ 3-12p・p・22-27(1955) vol. 4- 6 p.p・24-26(1956) vol. 10- 3 p.p.ll-15(1962) vol. 12-9 p・p・33-36(1964) vol. 13- 9 p.p.13-15(1965) vol. 14- 6 p.p.15-19(1966) vol. 15-12p.p・15-25(1967) 土質工学会第10回シンポジウム p・p・63-67,85-85(昭40) 同上第11回 シンポジウム p・p・57-61,69-72(昭41) 土木学会誌 vol・ 38- 1p・p・9-14(昭28) vol. 40- 8p.p.50⊥′55(昭30) 港湾技術研究資料 No・22 p・p・1-25(昭41) 2) 土質工学会 土質試験法第 5章 (昭39)
ASTM Procedures for Testing Soils p・p・95-96(1958)
3) たとえば
内田、松本 :土木学会誌 vo1 38- 1 (1953) 松本 :土 と基礎 vo1 3-12(1955) 神 山:土 と基礎 vo1 7- 1 (1959) 安富 :土質工学会第11回シンポジウム(1965)
4) L・EIJ・ Norman:A ComparisonofVa一uesofLiquidLimitDeterminedwlth ApparatusHavingBasesofDifferentHardness,Geotechniquevol・8p.p.78-91
(1958)
5) ∫.E.Mitchell;LiquidLimitResultsfromVariousTypesofGroovingTools, ASTM STP No.254p.p.197-202(1959)
6) M・D・Morris,R・B・Ulp,RJ・Spinna;RecommendationsforChangesintheLiquid LimitTest,ASTM STP No・254p・p・203-211(1959)
7) A.Casagrande;NotesontheDesignofthe LiquidLimitDevice,Geotechnique vol.8 p.p.84-91(1953)
8) J・Feda,J・Skopek;Correspondence;Geotechniquevol・9 p・p・30-31(1959)
9) たとえば
松本錬三 ;土の物理的試験値の個人差について,土 と基礎 vol14- 6,vo
l
l
1
0
-
3 T.K,Liu,T.H.Thornburn;StudyoftheReproducibilityofAtterbergLimits,H.R.ら.RecordNo.63p.p・22-30(1964)
10) 藤本広 :液性限界一点決定法のための実験式,土 と基礎 vol・12- 9p・p33-36(1964) ll) 横瀬広司 ;液性限界の一点式決定法について,土 と基礎 vol・14- 6 p・p・15-19(1966)
12) 柳瀬,松本,石塚;本邦沖積粘土の液性限界一点法におけるtanβについて,港湾技研資料
No・22 p・p・1-25(昭41)
13) 土質工学会;土質試験法,p.p・91-92(昭39)
14) W.∫.Eden:UseofaOne-PointLiquidLimitProcedure,ASTM ST㌘ No・254 p・168(1959)