焼結合金鋼歯車の高強度化に関する研究

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焼結合金鋼歯車の高強度化に関する研究

德岡, 輝和

https://doi.org/10.15017/1500724

出版情報:九州大学, 2014, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

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(様式2)

氏 名 :德岡 輝和

論 文 名 :焼結合金鋼歯車の高強度化に関する研究 区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

焼結部品は,金属粉末を出発原料とし,金型による粉末のプレス成形,焼結という少ない工程で ほぼ最終製品に近い形状 (ニアネットシェイプ) まで製造できるため,材料の歩留まりが高く,通 常の溶製材部品に比べて生産に要する時間やコストを大幅に削減できる.しかし,そのプロセスに 起因する気孔などの影響により,溶製鋼に比べて特に疲労強度は低いため,変速機用部品などの高 負荷用途への適用が進んでいない.本研究では自動車変速機用歯車に代表される高速・高荷重下で の使用に適する面圧疲労強度・歯元曲げ疲労強度を有する焼結合金鋼歯車の開発を目指して,焼結 合金鋼の高強度化について検討を行った.その手法としては,高い静的強度を示す微細不均質組織

(メゾヘテロ組織)を呈する焼結Ni-Mo鋼を対象材料として,通常の焼結鋼部品の製造で用いる圧 粉成形法の適用により高負荷用歯車を得ることが可能なプロセスの確立を目指した.

第2章では,メゾヘテロ組織を制御する方法として,粒子径の異なる純Ni粉末およびNi含有量

の異なる Fe-Ni合金粉末を用いた焼結サンプルを作製した.同時に Ni添加量も変化させ,先ず引

張試験により静的機械的特性への影響を評価した.その結果,メゾヘテロ組織の制御 法として,Ni 粉末粒径,Ni粉末合金成分,Ni添加量を変化させることにより,Ni濃度分布の異なるメゾヘテロ 組織を呈する材料を得ることができた.また,このメゾヘテロ組織を呈する焼結鋼は均質な組織を 呈する焼結鋼に比べて高強度,高延性化しており,メゾヘテロ組織の適用による引張特性の向上と いう当初の目標を達成できた.

第3章では,歯車設計において重要な特性である面圧疲労強度について,メゾヘテロ組織を呈す る焼結鋼での評価を行った.また,面圧疲労試験に供する焼結鋼ローラに転造を施し,表層部の気 孔量を低減させることによる疲労強度向上効果の評価も同時に実施した.また,一部の試料におい ては,ローラ中の気孔率分布の評価も行い,気孔の形態が面圧疲労強度に与える影響も評価した.

未転造の焼結鋼ローラでは焼入れ焼戻し処理をした焼結ローラにおける,1.0×107回での面圧疲 労強度は,合金粉ローラで 1.32GPa,混合粉ローラでは 1.45GPa となり,メゾヘテロ組織を呈す る材料の優位性が認められた.他の組成を有する焼入れ焼戻し処理をした焼結ローラにおいて,い ずれの組成でも1.0×107回での面圧疲労強度は,未転造ローラでは1.3~1.4GPa,転造ローラでは

1.5 GPa 程度,転造加工,浸炭焼入れを施した焼結鋼ローラでは JIS-SCM415 溶製鋼浸炭焼入れ

材の面圧疲労強度と同等の1.75 GPaを示した.ただし,転造量の増加によりローラ表層部の気孔 率が低減しても面圧疲労強度には大きな変化は見られなかった.そこで,気孔の大きさの分布につ いての解析を進めた結果,気孔率が低減しても,極値統計により予測される最大気孔面積の値には 大きな変化がなく,この最大気孔による影響が示唆された.今後,最大気孔面積を低減させること

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により,さらなる面圧疲労強度の向上が期待される. なお,メゾヘテロ組織と転造による緻密化の 適用のみでは,高負荷用としての面圧疲労強度は得られなかったものの,浸炭処理との組み合わせ により溶製鋼と同等の疲労的特性を実現することができた.

第4章では,焼結合金鋼歯車の歯元曲げ疲労強さの向上に向けて,各種組成の合金鋼素材の歯車 に転造を施し,油焼入れ焼戻し処理や浸炭処理を施した歯車の疲労強度を比較,検討した.その結 果,焼結材に転造を施すことで全ての素材において歯元曲げ疲労強度は向上し,4%Ni 添加材が最 も高い疲労強度を示し,押込み量500μmの転造を施すことで未転造の700MPaから1050MPaへ と疲労強度は大幅に上昇した.しかし,転造後に熱処理を施すと,全ての素材において疲労強さは 低下し,熱処理による疲労強度の改善は見られなかった.この理由として,歯車全体の硬度が上昇 したことによる素材の脆化と,転造により歯元部に発生していた圧縮残留応力が緩和されたことが 原因として考えられた.また,押込み量500μmの転造加工後に浸炭処理を施すと,全ての素材に おいて歯元曲げ疲労強度は向上し,最も高い値を示した2%Ni混合粉末材では1350MPaであり,

これは溶製鋼である JIS-SCM415 材製歯車の 90%の値に相当するものであった.これにより溶製 鋼歯車に匹敵する歯元曲げ疲労強度を得ることができたと考える.

以上の検討を通して,既存の焼結部品で用いられる金型プレス成形法により製造された焼結合金 鋼においても,純Ni 粉,ないし高濃度の Ni 合金粉を出発原料として用いることで、高硬度な Ni リッチ相を材料中に微細かつ不均質に析出させた網目状構造のメゾヘテロ組織を形成し,一般的に 用いられる予合金粉を用いた場合に比べて高強度であり,歯車の強度設計における重要な機械的特 性である,面圧疲労強度,および歯元曲げ疲労強度でもその効果は実証できた.また、Ni粉末の添 加量や粒径などが材料組織や機械的特性に与える影響も系統的に検討し,高価な添加元素や特殊な プロセスを用いずとも,さらなる強度向上が可能であることも確認した.これらの研究成果は,こ れまで危惧されてきた自動車用トランスミッションに代表される高負荷用歯車への焼結鋼の適用を 可能とし,焼結部品の応用展開に大きく貢献するものと思われる.

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