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多様な疾病,障害に対する理学療法

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 736 42 巻第 8 号 736 ~ 737 頁(2015 年) 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 大会シンポジウム 12. 多様な疾病,障害に対する理学療法* 横 田 一 彦**. 本稿では現在の理学療法を取り巻く疾病構造について資料な. 75 歳,女性で 55 ~ 65 歳をピークとしており,70 歳以降は肺. どを通して把握し,当院の理学療法対象患者の状況も示しなが. 炎での死亡の割合が増加している。. ら,多様な疾病・障害への対応に向けた理学療法での取り組み. このように,人口の高齢化が進んできており,医療そして福. の方向性を考えていきたいと考える。. 祉の対象者はますます増大してきている 2)。これらの背景に. 我が国の疾病構造の変化. は,医学の進歩,医療技術の発達があり,今後もこの傾向は続 いていくものと考える。入院では,脳血管疾患,がんなどの新. 厚生労働省の人口推計によれば平成 27 年 2 月における我が. 生物,神経系の疾患,呼吸器系の疾患,外来では消化器系の疾. 国の総人口は 1 億 2,697 万人とのことである。そのうち,65 歳. 患,次いで筋骨格系の疾患,循環器疾患が多く,高齢化への対. 以上の方は 3,334 万人,高齢化率は 26.3%で 4 人に 1 人を上回. 応と生活習慣病のコントロール,疾病予防はますます重要な課. る数字となっている。20 年前の平成 7 年は 14.5%,10 年前の. 題となってくると考える。. 平成 17 年は 20.2%であったので,その進展の早さは明らかで ある。10 年後には 30%を超えると予測されている。 このような超高齢化の進む我が国では,医療機関の入院,外 来患者も高齢化が進んでいる。厚生労働省の平成 25 年我が国 1). 理学療法を取り巻く疾病構造の変化 –5). 理学療法士協会の実態調査報告 3. のデータをもとに,2000. (平成 12)年,2005(平成 17)年,2010(平成 22)年のデー. によれば,入院患者においては 1999 年度以降は. タの推移について検討を行った。これは 1 週間のうちにどのよ. 65 歳以上が過半数を占め,2011 年度には 75 歳以上が過半数を. うな患者の理学療法を行ったか調査したもので,理学療法士. 占めるに至っており,外来患者でも同様に高齢患者が増加して. の何パーセントがその疾患,障害を担当したか,ということ. いる。同調査では原因疾患の分類も行っているが,入院におい. が推定できる。上位 4 つは脳血管障害(2000 年 90.4 → 2005 年. て 1 位は精神科関係のもので,次いで脳血管疾患,がんなどの. 91.0 → 2010 年 80.3%),骨折(69.1 → 74.0 → 69.9%),変形性関. 新生物,神経系の疾患,呼吸器系の疾患となっている。また,. 節症(72.2 → 66.5 → 65.9%),筋骨格系その他の疾患(61.9 → 63.0. 外来患者では 1 位には消化器系の疾患,次いで腰痛などの筋骨. → 58.2%)となっており,他の疾患を大きく引き離す形となっ. 格系の疾患,循環器疾患となっており,筋骨格系の問題や生活. ている。脳血管障害,骨折の比率が減少しているが,これは他. 習慣病の問題がよく現れていると考えられる。. の疾患部分が増加して相対的に減っているものと思われる。下. 死亡率の推移では,悪性新生物は 30 数年来 1 位となってお. 位のものでは呼吸器疾患の増加(16.2 → 21.0 → 28.5%)が目. り,その数は増加傾向である。肺炎は 1975(昭和 50)年に不. 立つ。これは高齢者の肺炎の増加を受けてのものかもしれな. 慮の事故にかわって第 4 位となり,徐々に上昇傾向を示し,. い。また,心疾患(7.8 → 12.0 → 12.5%),悪性新生物(4.1 →. 2011(平成 23)年には脳血管疾患にかわり第 3 位となった。. 6.5 → 9.9%)も着実に増加してきており,5 年前の 2010 年でも,. 脳血管疾患は,1951(昭和 26)年に結核にかわって第 1 位と. 理学療法士のうち 1 割強は,心疾患,悪性新生物を担当してい. なり,1970(昭和 45)年をピークに低下しはじめ,1981(昭. る,ということになる。. 和 56)年には悪性新生物に抜かれ第 2 位,1985(昭和 60)年. 当院での理学療法部門の状況では,昨年度の入院患者の依. には心疾患が代わって第 3 位となり,その後も死亡数・死亡率. 頼科は整形外科が 35%を占め,以下,神経内科,脳神経外科,. ともに低下傾向にはある。心疾患は第 2 位で,緩やかに増加傾. 循環器内科,老年病科と続いている。その他,ほぼ院内のすべ. 2) 向を示している 。. ての診療科から依頼があるが,その多くは,外科的手術や治療. 年代別の死亡原因では悪性新生物による死亡は男性で 60 ~. に伴う低体力,体力消耗状態という状況である。. の保険統計. 理学療法の対象となるおもな疾患名で分類すると,骨関節疾. *. The Physical Therapy Toward Various Types of Diseases and Disorders ** 東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 (〒 113–8655 東京都文京区本郷 7–3–1) Kazuhiko Yokota, PT: University of Tokyo Hospital, Rehabilitation Center キーワード:疾病構造,高齢化,理学療法. 患が 36%,次いで脳疾患(20%),呼吸器疾患(14%),循環 器疾患(12%),脊髄疾患(9%),神経筋疾患(4%)となって おり,悪性腫瘍も 4%という状況である。これを疾患分類ごと に,主疾患が悪性腫瘍・がんに起因するもの,悪性腫瘍・がん を合併しているものを調べたものを表に示す。悪性腫瘍と分類.

(2) 多様な疾病,障害に対する理学療法. 737. 表 理学療法の対象となる主疾患と悪性腫瘍・がんとの合併 疾患分類. 患者数. うち悪性腫瘍・がんに 起因するもの等. 骨関節疾患. 888. 80 ( 9.0%). 脳疾患. 506. 60 (11.9%). 呼吸器疾患. 335. 65 (19.4%). 循環器疾患. 289. 16. (5.5%). 脊髄疾患. 235. 15. (6.4%). 神経筋疾患. 109. 8. (7.3%). 悪性腫瘍. 101. –. ( – ). 33. 0. (0.0%). 2,496. 244. (9.8%). その他 合計. 悪性腫瘍(101 名)に,主疾患が悪性腫瘍・がんに起因するもの,悪性 腫瘍・がんを合併しているもの(244 名)を加えると,全体としては 13.8%(345 名)が悪性腫瘍・がんに関連する障害像を呈している.. されたもの以外の疾患群で,悪性腫瘍・がんに関連するもの,. うになり,臓器移植はより安全なものとなり,低侵襲手術の発. 合併したものは約 10%あり,全体としては 14%弱が悪性腫瘍・. 達も大きく理学療法にかかわってくるであろう。ロボットの活. がんに関連する障害像を呈していることがわかる。また,心不. 用も手術のみならず,理学療法の世界でも定着しつつある。そ. 全,呼吸不全の合併も多く認められていた。. のような中で,これからの理学療法の視点は,従来から見てき. 新規患者の年齢分布を,2003 年度,2008 年度,2014 年度で. た機能障害,運動障害はもとより,高齢化の影響から加齢によ. 比較すると,平均年齢は 2003 年度 60.8 歳,2008 年度 61.8 歳,. る影響を推し量り,疾患自体とその治療の中身をよく理解した. 2014 年度 63.0 歳で,微増のように感じられるが,実数として. 上で身体的侵襲の程度をも捉えた,多面的な捉え方で患者さん. は 60 歳以上の増加が著しいのが特徴である。また,昨年度の. の状況を見ることがますます求められてくると考える。また,. 入院患者の転帰を見てみると,自宅退院は 72%,転院が 24%,. 急性期においては,より早期から介入することが求められてい. 亡くなられた方は 4%となっていた。理学療法介入期間は 53%. るが,同時にかかわれる期間と必要とされるリハビリテーショ. が 10 日以内,70%が 20 日以内,78%が 30 日以内であった。. ン期間も考慮した具体的な目標設定とプログラム立案が求めら. これまでの協会の実態調査のまとめ,および当院の状況か. れる。実際の理学療法では評価・介入は,各診療科や院内の横. ら,現在の理学療法の対象疾患,障害像について考えると,全. 断的チームとの連携の中で進行していくため,多職種での連. 体としては患者さんの高齢化が進んでいること,これはすなわ. 携・協業は今後さらに重要性を増してくるものと考える。. ちもともと低体力である患者さんが入院してくる可能性が高い といえるのではないだろうか。また,がん・悪性腫瘍,慢性呼 吸不全,慢性心不全など病態が合併,複雑化している状況が示 されている。急性期の診療を行う一方で,多くの直接自宅退院 となる患者がいる状況は,複数診療科をもつ総合病院では,共 通の状況なのではないだろうか。. 今後の展望 医学・医療,そして関連分野の発展と進歩は,これからも続 いていく。再生医療の発展は今後,様々な治療に活かされるよ. 文 献 1) 厚生労働省ホームページ 平成 25 年我が国の保険統計.http:// www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/130-25_1.pdf(2015 年 7 月 7 日引用) 2) 厚生労働省ホームページ 平成 23 年人口動態統計月報年計(概数) の概況.http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/ nengai11/kekka03.html(2015 年 7 月 7 日引用) 3) 日本理学療法士協会白書委員会:理学療法士実態調査報告─ 2000 年 4 月実施─.理学療法学.2000; 27(7): 253–267. 4) 日本理学療法士協会白書委員会:理学療法士実態調査報告─ 2005 年 4 月実施─.理学療法学.2006; 33(6): 339–352. 5) 日本理学療法士協会白書委員会:理学療法士実態調査報告─ 2010 年 1 月実施─.理学療法学.2010; 37(3): 188–217..

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