論文内容要旨
Oxaliplatin induces prostaglandin E2 release in vascular endothelial cells.
オキサリプラチンによる血管内皮細胞からのプロスタグランジン
E2
産生 の誘導医薬情報解析学 松沼 悟
[背景]オキサリプラチン(L-OHP)による副作用の1つとして、末梢静脈 投与時における血管痛を主とする注射部位反応がある。過去の研究では、
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)投与患者において
L-OHP
の血管痛の発 症頻度が低くなる傾向があると報告されている。そこで本研究では、L-OHP
と血管内皮細胞の接触により産生されたPG
類、とりわけPGE
2が血管痛の 誘発因子であると想定し、L-OHP 刺激によるPGE
2等のPG
類の産生および 関連する合成酵素の発現を指標に、血管内皮細胞に対するL-OHP
の急性期 の細胞応答性を検討した。[方法]正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を 1.0×105
cells/mL
の濃度 で、37℃、5%CO2条件下で培養し、培地中L-OHP
が1 mM、100
μM、10 μM となるように添加した。NSAIDs 使用群では、L-OHP 1 mM を添加する1
時 間前にFur 20
μM を加えた。陰性対照(Vehicle)群では同量の培地を加 えた。比較対象であるシスプラチン(CDDP)群では1 mM
となるように添加 した。2 時間培養後、培地上清を 200μL 回収し遠心分離後、上清150μL
をPG
の測定サンプルとしてELISA
にて解析した。さらに上清回収後の細 胞をPBS
で洗浄後、SDS Sample Bufferを1 穴につき 50μL 加えたのちに
回収しWestern blotting
を行った。[結果]Vehicle 群 56.9 pg/mL に対して、L-OHP10 µM 群 117.0 pg/mL、
100
μM 群 225.9 pg/mL(p<0.05)、1 mM 群 263.8 pg/mL(p<0.05)とL-OHP
濃度依存的にPGE
2濃度が増加した。L-OHP 1 mM とNSAIDs(Fur 20 µM)
の併用群では
40.0 pg/mL
とPGE
2濃度の上昇は抑制された。CDDP 1mM群では
94.8 pg/mL
と有意な増加はみられなかった。また、他のPG
の濃度(6-keto PGF1α、
PGF
2α、PGD
2、15d-PGJ
2)は、L-OHP
及びCDDP
によるHUVEC
への刺激によって有意な影響を受けなかった。Western blotting によりPGE
2生合成に関与する酵素の発現を分析した結果、COX-1、mPGES-2、およ
びcPGES
がHUVEC
で発現されたが、COX-2およびmPGES-1
は発現されなかった。
[考察]L-OHP 刺激による血管内皮細胞からの
PG
産生について検討した 結果、HUVEC
がL-OHP
の用量依存的にPGE
2を産生することが明らかとなっ た。また、NSAIDsであるFur
による前処理がHUVEC
によるPGE
2産生を抑 制することが示された。さらに、同じ白金系薬剤で血管痛を引き起こさな いCDDP
では、HUVEC によるPGE
2産生を増加させなかった。それぞれの薬 剤による刺激は、他のPG
類の放出やPGE
2合成酵素(COX1、mPGES-2、 cPGES)
の発現に影響しなかった。
PGES
はPGE
2の即時産生ではCOX-1
と機能的に関連し、mPGES-1 は炎症 誘発性PGE
2放出でCOX-2
と関連するとされている。Western blotting の 結果、COX-1とcPGES
が発現し、COX-2 とmPGES-1
は発現していなかった ことから、本研究におけるPGE
2産生はCOX-1/cPGES
経路によるものであ ることが示唆された。本研究の結果より、