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救急救命士

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Academic year: 2021

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(1)

40 搬送途上以外においての活用、活躍

1.

現在の医療機関での業務

先に述べたとおり救急救命士が医療機関に就 職する例は少なくないが、業務の場所と対象の 制限により、医療機関内で患者に対する業務は 限られ、それは看護助手として可能な範囲にと どまるxi。ただし、前述のとおりドクターカー、

ドクターヘリでの業務や、重症患者の転院搬送 への同乗、災害現場へのDMATとしての出動xii など医療機関から出向く業務については救急救 命士としての活用、活躍が可能である。また救 急医療の知識が豊富であることから救急医療機 関の医師の事務作業補助xiiiや、院内の職員への 心肺蘇生の教育訓練などにおいても活用、活躍 できる。

このように医療機関においては、医療機関か ら外に出向いた際には、その業務が可能であり、

直接的でなくても救急医療に関する知識や技能 を医療機関内において活用できる場面も多々あ る。ただし、長期的視点から生涯の仕事として の発展や個人のキャリアアップを考えたとき、

救急救命士の資格を持つ者の活用、活躍の場と して現状の医療機関は十分とはいえない。

2.

医療機関内での業務の今後の展望 救急救命士法の改正

医療機関内で救急救命士が患者に対して直接 行える業務は限られている原因が、業務を搬送 途上に制限している法第 44 条の規定にあると して、その改正の望む声が以前よりあるxiv。改正 によって救急救命士が看護師などと同等に医療 機関内で患者の診療に直接かかわれることを期 待しての声である。

しかし、第44条の改正だけでは救急救命士が 医療機関内において看護師などと同等に業務を 行う環境の整備は、いくつかの点で不十分であ る。

一つは、第44条だけが救急救命士の業務を現

場から搬送途上に制限しているわけではない点 である。前述のとおり法第2条は、「救急救命士」

を、「救急救命処置」を行うことを業とする者と し、その「救急救命処置」とは重度傷病者に対し て「搬送途上に実施するもの」と定義している。

そのため、救急救命士が医療機関内で業を行う とすれば、この第2条の「救急救命士」、「救急救 命処置」の定義から見直しが必要となる。ただ、

それは救急救命士制度の発足(平成3年)時に なされた救急救命士と看護師の業務と役割の整 理から見直すことを意味し、容易ではないだろ う。

次に大きな点は、救急救命士養成課程での教 育内容についてである。業務が搬送途上に限ら れている前提で教育内容が決められているため、

医療機関内で必要な教育は十分に行われていな い。国家試験でも問われない。例えば、(搬送途 上には不要な)放射線検査や内服薬などの知識 がそれにあたる。医療機関内で業務を行うとな ればそれらについての教育が必要である。

このように、救急救命士法の改正はハードル が高く、仮にそれがなされたとしても、追加教 育が求められるだろう。

看護師、准看護師の資格の取得

看護師の養成に係る法令には、救急救命士の 資格取得過程で既に履修した科目については看 護師や准看護師(以後、看護師等とする)になる のに必要な教育単位より免除することができる 旨の規定(保健師助産師看護師学校養成所指定 規則(昭和二十六年八月十日文部省・厚生省令 第一号)の備考)がある。

この規定を活用すれば、救急救命士の資格を 持つ者はより短期間に看護師等の国家試験の受 験資格を得られる可能性がある。それによって 受験資格を得て国家試験に合格すれば、救急救 命士の資格をもつ看護師等として医療機関内外 で業務が可能となる。前項のとおり、救急救命 士法の改正が容易には見通せず、仮にそれがな

(2)

41 されたとしても追加の教育が必要となるのであ れば、この方法も合理的な選択肢となりえる。

実効性の評価には、救急救命士の資格取得過 程で履修した科目をどの程度まで看護教育過程 で必要な教育単位に読み替えられるかが鍵とな る。今後、教育内容の詳細に踏み込んだ検討が 必要となる。

需給問題としてとらえた場合の対応 社会の需要よりも多くの救急救命士が誕生し ていることが、消防機関以外の救急救命士の活 用、活躍の場が十分でないことの原因であると の指摘がある。資格者の需給の問題として捉え た課題意識である。

医療資格の需給の問題は、歯科医師資格にお いて先んじて議論されておりxvその先例が参考 となろう。

V.

おわりに

本報告書では、まず救急救命士の養成と採用 の現状を整理した。その上で消防機関以外の救 急救命士の知識や技能の活用のための対策を、

搬送途上とそれ以外に分けて示した。中でも、

救急救命士が看護の知識と技能を追加で修得す ることで、救急救命士の資格を持ちつつ看護師、

准看護師として医療機関内で活用、活躍するこ との展望について述べた。これは救急救命士の 資格取得者が医療機関内で活躍するための現実 的な対策として検討に値すると考える。

これらの取り組みを通じて、消防機関以外の 救急救命士が幅広く活用、活躍される社会が実 現することを期待する。

(3)

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V 参考文献など

i 「国家資格である救急救命士の働く場所 が救急車や救急現場に制限されているのは 大きな損失」黒岩祐治ナース専科

(NURSE SENKA) 2009年1月号

ii 平成25年「救急救命士国家試験 教育 施設別合格者状況(厚生労働省)」

iii 平成27年度「職員採用選考・試験結果

(消防官)」(東京消防庁)

iv 平成25年「救急救命士国家試験 教育 施設別合格者状況(厚生労働省)」

v 「救急救命士養成施設における病院実習 並びに就職状況の総量調査」平成26年度厚 生労働科学研究(研究分担者 田中秀治)

vi 荻野暁, 沼上清彦, 和田貴子他: 救急救命 士養成校卒業生の就職実態. 日臨救急医会誌  2009; 12: 548-552.

vii 「国家資格である救急救命士の働く場 所が救急車や救急現場に制限されているの は大きな損失」黒岩祐治ナース専科

(NURSE SENKA) 2009年1月号

viii 平成27年度「平成27年度救急業務の あり方に関する検討会資料(第2回)」(消 防庁)

ix 「医師が臨場する救急現場で救急救命士 は特定行為を行えるのか」北小屋裕、他 日臨救医誌(JJSEM)2013;16:702-6

x 平成27年度「平成27年度救急業務のあ り方に関する検討会資料(第1回)」(消防 庁)

xi 「国家資格である救急救命士の働く場所 が救急車や救急現場に制限されているのは 大きな損失」黒岩祐治ナース専科

(NURSE SENKA) 2009年1月号

xii 新庄貴文, 中森知毅, 木下弘壽他: 救急救 命士の病院職員・DMAT要員としての現状 と今後の可能性. 日臨救急医会誌

 2014; 17: 322.

xiii 本田崇晃, 串田早, 阿南英明: 救急救命士 有資格者による医師事務作業補助業務の有 用性. 日臨救急医会誌 2014; 17: 326.

xiv 大松健太郎,鈴木哲司: 全国救命救急セン ターにおける救急救命士の就業実態.日臨救 医誌2015; 18:645-9

xv 「歯科医師需給問題の経緯と今後への 見解」平成26年10月公益社団法人 日本 歯科医師会

(4)

必ずしも

救急救命士

としての

資格を生かせていない

主な養成課程① 地方公務員の 消防職員として採用

救急救命士の養成と採用の現状

2000時間 or 5年間の 救急業務

救急救命士養成所で 7ヶ月の教育の修了 救急救命士国家試験合格 消防職員

※1

の救急救命士と

して救急業務に従事

消防職員を希望

主な養成課程② 大学・専門学校等で 2~4年間の教育の修了

病院、警察、教員、県庁、

患者搬送業者、

企業等(ホテル、小売店等)

1,105人

※3

※1 海上保安庁職員も含む

※2 国家試験合格者、採用者がすべて救急業務に従事したと仮定

※3 平成25年3月実施の国家試験の実績

「救急救命士国家試験 教育施設別合格者状況(厚生労働省)」

※4 平成25年度に採用した救急救命士数

「平成27年度救急業務のあり方に関する検討会資料」(消防庁)

※5 平成27年度の数値「平成27年度 職員(消防官)採用選考・試験結果」(東京消防庁)

※6 教育修了後の国家試験受験者数

約 300 人

救急救命士国家試験合格

778人

※4

地方公務員の 消防職員

※1

として採用 1,115人

※3

1,100人

※3 推定

1,100人

※2

778人

+α ※4

採用試験の合格率 14.5倍※5

(東京消防庁)

採用競争率 1.4倍

1,559人

※3,6

平成27年度 厚生労働科学研究「救急医療体制の推進に関する研究」(山本班)研究協力者 田邉晴山)

図1

43

(5)

在宅医療での対応

※1

救急医療機関などで 院内では

看護業務

院外では 救命士業務

救命士の 資格を持つ

看護師

消防機関以外の

救急救命士の知識・技能の活用(案)

主な養成課程② 大学・専門学校等で 2~4年間の医学教育

約 300 人

救急救命士国家試験合格

必ずしも

救急救命士

としての

資格を生かせていない

病院、警察、教員、県庁、

患者搬送業者、

企業等(ホテル、小売店等)

准看護師学校での 追加教育 看護師学校での

追加教育

准看護師 知事試験 看護師 国家試験

救命士の 資格を持つ

准看護師

病院間搬送 民間患者搬送

救急救命士の養成学校では修得していない 教育と病院実習を修める

救急救命士の養成学校では修得していない 教育と病院実習を修める

救急隊到着までの 対応 ※1

※1 平成27年度救急業務 のあり方に関する検討会

(消防庁)で検討中 Dr.カー、ヘリでの

搬送途上 医師の診療補助

平成27年度 厚生労働科学研究「救急医療体制の推進に関する研究」(山本班)研究協力者 田邉晴山)

図2

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(7)
(8)
(9)
(10)
(11)
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参照

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