福岡県工業技術センター 研究報告 No. 19 (2009)
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小豆煮汁の有効利用について
古田 正範*1 黒田 理恵子*1 塚谷 忠之*1 樋口 智子*1 廣藤 祐史*1
Effective Use of The Stock of Azuki Beans
Masanori Furuta,Rieko Kuroda,Tadayuki Tsukatani,Tomoko Higuchi and Yushi Hirofuji
製餡工程で排出される小豆の煮汁について,機能性の検索を行い食品素材としての利用を検討した。分析の結果,
小豆煮汁は凡そカテキン:2〜3 mM濃度溶液(580〜870mg/L)相当の抗酸化性を有すると推定され,抗酸化性を有 する飲料素材として,濃縮ジュースの希釈水としての利用や味付け加工により飲料化が可能ではないかと考えられ た。
1 はじめに
菓子製造業の製餡工程で排出される小豆煮汁につい て,食品機能性を検索し食品素材として利用の可能性 を検討した。はじめに,成分,食品機能性について検 討した。その結果,小豆の煮汁には栄養成分は0.1%以 下と極微量しか含まれていないが,機能性試験では,
高い抗酸化性(in vitro)が認められることなどを報 告1)した。そこで今回は抗酸化性の機能を有する素材 として小豆煮汁の有効利用を検討した。
2 研究,実験方法
2-1 小豆煮汁のグルタミン酸含有量の測定
F−キット−L グルタミン酸(ベーリンガーマンハ イム㈱)を用い小豆煮汁中のグルタミン酸量を測定し た。
2-2 ポリフェノール量及び抗酸性の測定
小豆煮汁中にはカテキングルコシド,カテキン,ル チンなどのポリフェノールが含まれていることが報告 されており 2),抗酸化性素材としての利用が期待でき る。そこで,小豆煮汁中のフェノール性水酸基の(+)- 相当ポリフェノール量を Folin-Ciocalteu 法により測 定した。
またラジカル消去能を測定 3)し,対照として同様に 抗 酸 化 性 が 高 い と 思 わ る カ テ キ ン 水 和 物 (Catechin hydrate minimum)M.W.(290.27+18n)12.5〜400μmol 濃度溶液のラジカル消去能を測定し検量線より相当量 を推定した。
2-3 小豆煮汁の有効利用検討
2-3-1 濃縮ジュースの希釈還元水として利用
リンゴ 5 倍濃縮ジュース(Brix50)を Brix10 に希 釈 還 元 す る の に オ ー ト ク レ ー ブ で 滅 菌 ( 105 ℃ , 5 分)した小豆煮汁を 50%,30%,10%,0%量の割合で添 加し残りを水で希釈し,煮沸殺菌してジュースを試作 した。これらサンプルの DPPH ラジカル捕捉能,βカ ロテンを用いた抗酸化性試験を行った。
2-3-2 味付けに加工よる飲料の試作
小豆煮汁に糖(ショ糖)及び有機酸(レモン汁)を 添加し味付け加工により飲料を試作した。
3 結果と考察
3-1 小豆煮汁中のグルタミン酸含量
小豆煮汁中のグルタミン酸量は 0.73mg/100ml と少 量であった。
3-2 ポリフェノール量及び抗酸化性
Folin-Ciocalteu 法 に よ り 測 定 の 結 果 , 煮 汁 中 の (+)-Catechin相当ポリフェノール濃度は1.3mMと見積 もられた。次に小豆煮汁のDPPHラジカル消去能につい て,対照として同様にカテキン溶液についてDPPHラジ カル消去能を測定,検量線を作成し相当濃度を求めた 結果,カテキン溶液での検量線は
Y=0.1258X+3.294(Y:ラジカル消去能(%),X:カテ キンμM濃度)(R2=0.9857)
と表された。煮汁の抗酸化性の測定結果を図1に示す。
小豆煮汁のDPPHラジカル消去能測定値は4倍希釈液:
71%,5倍希釈液:59%,10倍希釈液:46%で,この結果 より2〜3 mMカテキン濃度溶液相当と推測され高い抗 酸化性を有することがわかった。
*1 生物食品研究所
福岡県工業技術センター 研究報告 No. 19 (2009)
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図1 小豆煮汁のDPPHラジカル消去能
3-3 小豆煮汁の有効利用
3-3-1 希釈還元水に利用した飲料の抗酸化性
小豆煮汁を濃縮ジュース(リンゴ)の希釈水として 利用した還元ジュースの抗酸化性を測定した。DPPHラ ジカル捕捉能測定結果を図2に示す。リンゴ果汁には ポリフェノールが含まれることから,元々抗酸化性が 高く, 78.9%のラジカル捕捉能を示した。小豆煮汁 の添加量が多いほど捕捉能も高いが10%量の添加でも 捕捉能は84%と果汁自体の捕捉能78.9%より高くなっ
た。図1に示したように小豆煮汁の10倍希釈液でも捕
捉能46%と抗酸化性は高く,濃縮ジュースの希釈還元 水に利用すれば抗酸化性を高めることが出来ると考え られた。
また,β-カロテン退色法による測定の結果を図 3 に示す。小豆煮汁は BHA50ppm 相当かそれよりも強い 抗酸化性があり,一方リンゴ汁(brix10)は BHA10ppm 相当の抗酸化性が認められた。小豆煮汁 50%で還元し たサンプルはほぼ BHA30ppm 相当の抗酸化性が認めら れ , 煮 汁 の 添 加 量 が 10% と 少 な く て も BHA10ppm 〜 30ppm 相当の抗酸化性が認められた。
図2 DPPHを用いたラジカル消去能
84 84 83
71
59
46
0 20 40 60 80 100
小豆煮汁 小豆煮汁
2倍希釈
小豆煮汁 3倍希釈
小豆煮汁 4倍希釈
小豆煮汁 5倍希釈
小豆煮汁 10倍希釈
ラジカル消去能(%)
50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
ラジカル消去能(%)
ラジカル消去能(%) 83.2 85.5 84.1 84.2 84.1 84.0 78.9 小豆煮汁100%
リンゴ濃縮果汁 を小豆煮汁
50%で還元
リンゴ濃縮果汁 を小豆煮汁
40%で還元
リンゴ濃縮果汁 を小豆煮汁
30%で還元
リンゴ濃縮果汁 を小豆煮汁
20%で還元
リンゴ濃縮果汁 を小豆煮汁
10%で還元
リンゴ果汁100%
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図3 β-カロテン退色法による抗酸化性
3-2-3 味付け加工により飲料試作
市販のスポーツ飲料の糖酸比を参考に,添加するシ ョ糖及びレモン汁の量を検討し,小豆煮汁飲料を試作 した。その結果煮汁100mL当たりレモン汁凡そ6ml,シ ョ糖5g程度の添加で雑味が緩和され飲みやすくなった。
小豆煮汁にはカテキンなどのポリフェノール類に起因 する渋み等が若干あるが,これを分解する酵素の利用 や味付け加工により抗酸化性飲料の素材として利用が 可能ではないかと考えられた。
4 まとめ
小豆煮汁について,機能性の検索,有効利用につい て検討した結果次のことがわかった。
(1)小豆煮汁中のL-グルタミン酸量は0.73mg/100mlと 少ない。
(2)抗酸化性試験の結果,小豆煮汁にはDPPHラジカル 捕捉能で比較し凡そカテキン:2〜3 mM濃度溶液(580
〜870mg/L)の抗酸化性があると推定された。
(3)小豆煮汁の高い抗酸化性を活用し,濃縮ジュース の希釈還元水として利用し抗酸化性を測定した。その 結果抗酸化性を有する飲料素材として利用が可能では
ないかと考えられた。
5 参考文献
1)古田正範,黒田理恵子,塚谷忠之,樋口智子,廣藤 祐 史 : 福 岡 県 工 業 技 術 セ ン タ ー 研 究 報 告 , No.15 pp.52-54 (2005)
2)加藤 淳, 相 馬ち ひ ろ: 平 成16年 度食 品 試験 研 究成 績・計画概要集(公立編),(独)食品総合研究所編,
pp.5-6 (2005)
3)宮川雄太他4名:流木木酢液ベンゼン抽出物の燻集 成分とその抗酸化性,日本食品工業学会誌,Vol.50,
No.11,pp.531-532 (2003)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
10 20 30 40 50 60 経過時間(分)
吸光度の減少(470nm )
コントロールBHA10ppm BHA30ppm BHA50ppm 小豆煮汁100%
リンゴ濃縮果汁を小豆煮汁 50%で還元
リンゴ濃縮果汁を小豆煮汁 30%で還元
リンゴ濃縮果汁を小豆煮汁 10%で還元
リンゴ汁100%